説明

雌型管継手部材及び管継手

【課題】操作が簡単で構成部品が外れにくい雌型管継手部材。
【解決手段】管状の雌型継手本体19と、施錠子と、雌型継手本体の軸線方向で変位可能とされたスリーブ22と、該スリーブが施錠保持位置から解錠許容位置に変位するのを阻止するスリーブ変位阻止手段とを有する。スリーブ変位阻止手段は、スリーブに設けられ、該雌型継手本体の外周面と摺動可能とされたスリーブ変位阻止部材28を有し、スリーブは周方向で回動可能とされ、雌型継手本体の外周面が、その周方向で連続して設けられた第1面30と第2面32とを有する。該スリーブ変位阻止部材は、第1面と係合して第1形状となり、第2面と係合して第2形状となり、第1形状及び第2形状の一方の形状となることにより雌型継手本体に設けられた該係止部34と軸線方向で係合可能となり、スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手の雌型管継手部材に係り、特に、当該雌型管継手部材に挿入された雄型管継手部材と係合して該雄型管継手部材を施錠する(すなわち、雌型管状管継手に対して固定する)ための半径方向で変位可能な施錠子と、当該雌型管継手部材の外周面上に設けられ、雄型管継手部材を施錠する位置に施錠子を保持する施錠保持位置と同施錠子の解錠(すなわち、雄型管継手部材の雌型管状管継手に対する固定の解除)を許容する解錠許容位置との間を軸線方向で変位可能とされたスリーブとを有する雌型管継手部材、及び、該雌型管継手部材を備えた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の雌型管継手部材は、施錠保持位置とされたスリーブが解錠許容位置に不用意に変位するのを阻止するための種々の手段が開発されてきている。
【0003】
1つの例は、雌型管継手部材の外周面に、施錠保持位置とされたスリーブの一端縁に隣接する突起(スリーブ変位阻止部材)を設けて、該スリーブが解錠許容位置に向けて動こうとしても、該スリーブの該一端縁が該突起によって係止されるようにすると共に、該スリーブの該一端縁の周方向の所定位置に軸方向に延びる凹部を設け、スリーブを該凹部が該突起と軸線方向で整合するようにしたときにだけ、該凹部が該突起を受け入れるようにして、該スリーブを解錠許容位置に向けて軸線方向で動けるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
この場合の突起は、雌型管継手部材の外周面にボールを埋め込んだり、ピンを植設したりして形成するのが一般的である。このため、これら突起が外れてしまう虞がある。また、凹部には切り子などの異物が入りやすく、操作に支障を来す虞もある。
【0005】
別の例としては、雌型管継手部材に半径方向で変位可能とされたスリーブ変位阻止部材を設け、該スリーブ変位阻止部材が解錠許容位置に向けて動こうとするスリーブの一端縁に係合して該スリーブの動きを阻止すると共に、スリーブを解錠許容位置にするときには、作業者が手で該スリーブ変位阻止部材を半径方向内側に押し込んで、スリーブの変位を可能とするようにしたものがある(特許文献2〜4参照)。
【0006】
この形式のものにおいては、スリーブを解錠許容位置に動かすときに、スリーブを持って動かす手とは別の手でスリーブ変位阻止部材を動かさなくてはならず、作業が煩わしくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭51−69119
【特許文献2】特開平10−185056
【特許文献3】特開平11−37370
【特許文献4】特開2000−249280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑み、長期間使用されてもスリーブ変位阻止部材が外れたりする虞がなく、また、スリーブを解錠許容位置に変位するときの作業が簡単に行えるようにした雌型管継手部材及びそれを備えた管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
雄型管継手部材を受け入れる管状の雌型継手本体であって、外周面に周方向で連続して設けられた第1面と、該第1面よりも半径の小さい第2面とを有する雌型継手本体と、
雌型継手本体に半径方向で変位可能に装着された施錠子であって、該雌型継手本体内に挿入された雄型管継手部材と係合して該雄型管継手部材を施錠するための半径方向内側位置と、該雄型管継手部材の施錠を解除するための半径方向外側位置との間で変位可能な施錠子と、
該雌型継手本体の外周面上に設けられ、該施錠子を該半径方向内側位置に保持するための施錠保持位置と、該施錠子が該半径方向外側位置に変位するのを許容する解錠許容位置との間を当該雌型継手本体の軸線方向で変位可能とされたスリーブと、
該スリーブに設けられ、該雌型継手本体の外周面と摺動可能とされ、且つ、バネ付勢力により該外周面に押圧されているスリーブ変位阻止部材と、
該スリーブが施錠保持位置にあるときの該スリーブ変位阻止部材よりも、解錠許容位置側の位置で該雌型継手本体に設けられた係止部と
該スリーブが周方向で回動可能とされ、
施錠保持位置にあるときのスリーブが該雌型継手本体に対して周方向で回動されたときに、該スリーブ変位阻止部材は、該バネ付勢力により、該第1面と係合することにより第1形状となり、該第2面に係合することにより第2形状となり、該スリーブ変位阻止部材が、回動されることにより該第1形状及び第2形状の一方の形状となることにより該雌型継手本体に設けられた該係止部と軸線方向で係合可能となり、それにより、該スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位するのを阻止するようになされていることを特徴とする雌型管継手部材を提供する。
【0010】
この雌型管継手部材においては、スリーブ変位阻止部材がスリーブ自体に取りつけられており、該スリーブを回動することによって、当該スリーブ変位阻止部材を操作するようにしている。従って、該スリーブ変位阻止部材の操作が上述の二番目に述べた従来の雌型管継手部材に比べて容易になる。なお、上記において「該第2面が該第1面よりも半径が小さく」とあるのは、第2面の雌型継手部材の軸線からの距離が、第1面よりも小さいことを意味し、必ずしもこれらの面が円弧状であることを意味するものではない。
【0011】
具体的例としては、
該係止部が、該雌型管継手部材の外周面から半径方向外側に延びるように設けられ、
該スリーブ変位阻止部材は、該第1形状のときに該スリーブから半径方向外側に突出する部分を有し、該スリーブが該施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位しようとするときに、該部分が該係止部に係止することにより、該スリーブの該変位を阻止するようにすることができる。
【0012】
より具体的には、該係止部が、該雌型継手本体の外周面に該雌型継手本体と同心状に固定された筒状部材によって構成され、該筒状部材は、該スリーブ変位阻止部材が第2形状にあるときに、該施錠保持位置から解錠許容位置に変位する該スリーブを受け入れる内径を有し、該スリーブ変位阻止部材が第1形状にあるときに、該施錠保持位置から該解錠許容位置に変位する該スリーブから半径方向外側に突出する該スリーブ変位阻止部材の該部分と係合して該スリーブの変位を阻止する。
【0013】
これらの具体例では、スリーブ変位阻止部材の一部がスリーブから半径方向外側に突出した状態で、係止部と係合可能となり当該スリーブの軸線方向での動きを阻止できるようにするものである。
【0014】
また別の具体例としては、
該施錠保持位置にあるときの該スリーブが周方向で回動されたときに該スリーブ変位阻止部材と摺動する該雌型継手本体の外周面が全体的に円周面とされ、該円周面が該円周面に対して弦をなすような平面状に延びる面を有するようにされ、該円周面が該第1面、該平面状の面が該第2面となるようにすることができる。
【0015】
この場合、スリーブ変位阻止部材が、該雌型継手本体の軸線に平行な方向に延びる軸線の回りでコイル状に巻かれ、該スリーブにその半径方向で貫通するように形成された開口内に設定され、一部が該開口から半径方向外側に突出するように設定されたコイル部、及び、該コイル部の両端から該スリーブ内に、当該コイル部をその軸線方向で見て、相互に離れるように延び、該雌型継手本体の該外周面の該第1面の該円周面と接線方向で接するように延びる両端部を有するバネ材から形成され、該スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位しようとするときに、該開口から半径方向外側に突出するように設定されたコイル部の該一部が該係止部に係止することにより、該スリーブの該変位を阻止するようにされ、
該スリーブが回動されて該コイルの該両端部が該第2面と係合する位置とされたときに、該スリーブ変位阻止部材が該第2形状に変形して該コイル部の該一部が該スリーブの該開口内に引き込まれるようにすることができる。
すなわち、スリーブ変位阻止部材をバネ材で捻りバネ状に形成するものであり、その両端は当該スリーブ変位阻止部材が取りつけられるスリーブの内部に延びるように設定されるので、長期間使用しても、該スリーブ変位阻止部材が該スリーブから外れる可能性を少なくすることができる。
【0016】
また別の形態としては、スリーブ変位阻止部材が、該スリーブにその半径方向で貫通するように形成された開口内に半径方向で摺動可能に設けられた摺動ピン、及び、該摺動ピンと該スリーブとの間に設けられて該摺動ピンを半径方向内側に付勢し、該摺動ピンが該雌型継手本体の該外周面と摺動可能に係合するようにするバネ部材からなり、該摺動ピンは、該第1面と係合する位置とされているときには、該バネ付勢力に抗して押し出され、一部が該開口から半径方向外側に突出するようになされ、該スリーブが該施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位しようとするときに、該一部が該係止部に係止することにより、該スリーブの該変位すを阻止するようにされ、該第2面と係合する位置とされているときには、該一部が該開口の内側に引き込まれるようにすることができる。
【0017】
上記具体例においては、スリーブ変位阻止部材と係合して、スリーブの変位を阻止する係止部を、雌型継手本体の外周面から外側に延びるものとしたが、別の形態として次のようにすることができる。該施錠保持位置にあるときのスリーブが周方向で変位されたときに該スリーブ変位阻止部材と摺動する該雌型継手本体の該外周面が全体的に円周面とされ、該円周面が該円周面に対して弦をなすような平面状に延びる面と、該平面状に延びる面の該スリーブの該開錠許容位置側で該弦をなす方向に延びる縁から半径方向外側に延びて該係止部をなす側面とを有する凹部を有し、該平面状に延びる面が該第2面をなし、該平面の周方向で前後の該円周面が該第1面をなし、該スリーブ変位阻止部材は、該平面状に延びる面と係合して該第2形状とされて該係止部としての該側面と係合可能となることにより、スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位するのを阻止するようにすることができる。
【0018】
要するに、この実施形態では、スリーブ変位阻止部材が、半径方向内側に変位するように変形したときに、該スリーブ変位阻止部材が係止部に係合するようにしている。
【0019】
具体的には、スリーブ変位阻止部材が、該雌型継手本体の軸線に平行な方向に延びる軸線の回りでコイル状に巻かれ、該スリーブにその半径方向で貫通するように形成された開口内に設定されたコイル部、及び、該コイル部の両端から該スリーブ内に、当該コイル部をその軸線方向で見て、相互に離れるように延び、該雌型継手本体の該外周面の第1面と接線方向で接するように延びる両端部を有するバネ材から形成され、
該スリーブが回動されて該コイルの該両端部が該第2面と係合する位置とされたときに、該スリーブ変位阻止部材が該第2形状に変形するようにすることができる。
【0020】
上述の円周面を第1面とし、平面状に延びる面を第2面とする雌型管継手部材においては、該円周面から該弦をなすように平面状に延びる面が、その弦をなすように延びる方向での一方の端部側に段部を有し、該段部を介して円周面に接続されるようになされており、該スリーブが回動されて、該スリーブに設けられている該スリーブ変位阻止部材が該面状に延びる面にその他端側から入ってきたときに該段部によって係止され、スリーブの回動が阻止されるようにすることができる。
【0021】
このようにすることにより、スリーブ変位阻止部材を第2面である平面状に延びる面と確実に係合する位置とすることができる。
【0022】
本発明はまた、上記のような雌型管継手部材と、該雌型管継手部材の該貫通孔内に摺動挿入されるようにした雄型管継手部材であって、雌型管継手部材の該施錠子が該半径方向位置にされたときに該施錠子を受け入れる環状凹部を有する雄型管継手部材を有する管継手をも提供する。
【0023】
以下、本発明に係る雌型管継手部材及びそれを備えた管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る雌型管継手部材を備えた管継手の縦断面図であり、スリーブ変位阻止部材が雌型継手本体に設けた係止部によって係止されない状態を示す。
【図2】図1の雌型管継手部材の縦断面図であり、該スリーブ変位阻止部材が係止部によって係止される状態を示す。
【図3】図2におけるIII-III線断面図である。
【図4】図1におけるIV-IV線断面図である。
【図5】図1の雌型管継手部材におけるスリーブ変位阻止部材の平面図である。
【図6】図1の雌型管継手部材におけるスリーブ変位阻止部材の側面図である。
【図7】第2の実施形態に係る雌型管継手部材の縦断面図であり、スリーブ変位阻止部材が雌型継手本体に設けた係止部によって係止されない状態を示す。
【図8】図7におけるVII-VII線断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る雌型管継手部材の縦断面図であり、スリーブ変位阻止部材が雌型継手本体に設けた係止部によって係止される状態を示す。
【図10】図9におけるX-X線断面図である。
【図11】図7の雌型管継手部材におけるスリーブ変位阻止部材を構成する摺動ピンの側面図である。
【図12】図7の雌型管継手部材におけるスリーブ変位阻止部材を構成するコイルバネの側面図である。
【図13】第3の実施形態に係る雌型管継手部材の縦断面図であり、スリーブ変位阻止部材が雌型継手本体に設けた係止部によって係止されない状態を示す。
【図14】図13におけるXIIII-XIIII線断面図である。
【図15】第3の実施形態に係る雌型管継手部材の縦断面図であり、スリーブ変位阻止部材が雌型継手本体に設けた係止部によって係止される状態を示す。
【図16】図15におけるXVI-XVI線断面図である。
【図17】第4の実施形態に係る雌型管継手部材の図3に類似する図である。
【図18】第4の実施形態に係る雌型管継手部材の図4に類似する図である。
【図19】図17の雌型管継手部材におけるスリーブ変位阻止部材の平面図である。
【図20】図17の雌型管継手部材におけるスリーブ変位阻止部材の側面図である。
【図21】第1の実施形態に係る雌型管継手部材の一部切り欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す本発明に係る雌型管継手部材10は、周知のものと同様に、挿入される雄型管継手部材12をボール状の施錠子14を用いて施錠すなわち連結固定する形式のものである。すなわち、この雌型管継手部材10は、長手軸線方向で延びる貫通孔18を有する管状の雌型継手本体19を有し、該貫通孔18内にその右端から雄型管継手部材12を受け入れて、該雄型管継手部材12の外周面に形成された環状の施錠凹部20に施錠子14を係合させ、該施錠子14を雌型継手本体19の外周に設けたスリーブ22によって、当該施錠子14が抜けでないようにすることにより、雄型管継手部材12を雌型管継手部材10に施錠するようになっている。尚、これら雌型管継手部材及び雄型管継手部材に通常設けられる弁装置の図示は省略している。
【0026】
雄型管継手部材12を雌型管継手部材10内に挿入する場合には、作業者がスリーブ22を軸線方向で図1の位置からコイルバネ26に抗して左方へ摺動し、スリーブ22の内周面に設けられている環状の施錠子解放凹部24が、施錠子14と半径方向で整合する位置とし、該施錠子14が半径方向外側に変位可能として、雌型管継手部材10へ挿入される雄型管継手部材12が施錠子14を半径方向外側に押しのけて挿入されるようにする。雄型管継手部材12が雌型管継手部材10内に挿入されて施錠凹部20が施錠子14と半径方向で整合した状態になると、スリーブ22は作業者の手から離されることによりコイルバネ26によって図1の位置に戻される。
【0027】
雄型管継手部材12を雌型管継手部材10から外す場合には、作業者がスリーブ22を軸線方向で図1の位置からコイルバネ26に抗して左方へ摺動し、スリーブ22の内周面に設けられている環状の施錠子解放凹部24が、施錠子14と半径方向で整合する位置とし、該施錠子が半径方向外側に変位可能として、雄型管継手部材12の雌型管継手部材10からの引き出しを可能とする。雄型管継手部材12が雌型管継手部材10から引き出され、作業者がスリーブ22を離すことによりスリーブ22はコイルバネ26によって図1の位置に戻される。
【0028】
以上から分かるように、上記雌型管継手部材の構成において、施錠子14は、挿入された雄型管継手部材12と係合して該雄型管継手部材12を施錠するための半径方向内側位置(図1の位置)と、雄型管継手部材12の施錠を解除するための半径方向外側位置との間で変位可能とされ、スリーブ22は、雌型継手本体19の外周面上に設けられ、施錠子14を上記半径方向内側位置(図1の位置)に保持するための施錠保持位置(図1の位置)と、該施錠子14が上記半径方向外側位置に変位するのを許容する解錠許容位置(すなわち、施錠子解放凹部24が雄型管継手部材12の施錠凹部20と整合する位置)との間を当該雌型継手本体19の軸線方向で変位可能とされている。
【0029】
本願発明のこの実施形態に係る雌型管継手部材は、以下に述べるようにスリーブ22が施錠保持位置(図1の位置)から左側に変位して、解錠許容位置になるのを阻止するためのスリーブ変位阻止手段を備える。
【0030】
このスリーブ変位阻止手段は、スリーブ22に設けられ、雌型継手本体19の外周面に摺動可能とされた捻りバネ状のスリーブ変位阻止部材28を有する。スリーブ22は、周方向で回動可能とされ、該スリーブの回動によってスリーブ変位阻止部材が回動されるようになっている。施錠保持位置(図1及び図2の位置)にあるときのスリーブ22が周方向で回動されたときにスリーブ変位阻止部材28が摺動する雌型継手本体19の外周面の周方向部分には、その周方向で連続して設けられた第1面30と、該第1面よりも小さい半径の第2面32とが設けられる。図示の例では、第1面30は円周状面とされて直径方向で対向する位置に一対設けられ、第2面32は第1面30の円周状面に対して弦をなすように平面状に延びる面とされて直径方向で対向する位置に一対設けられている。後述するように、第1面30はそれに係合するスリーブ変位阻止部材28を該スリーブ変位阻止部材28が雌型継手本体19に設けられた筒状部材によって形成される係止部34と軸線方向で係合可能な第1形状に変形させ、それにより、スリーブ22が施錠保持位置(図1及び図2)から上記解錠許容位置に軸線方向で(図示の例では左方に)変位しようとするときに該スリーブ変位阻止部材28が該係止部34に係合して、スリーブ22の変位を阻止するようになっている。第2面32はそれに係合するスリーブ変位阻止部材28を、該スリーブ変位阻止部材28が雌型継手本体19の係止部34と軸線方向で係合しない第2形状に変形させ、それにより、スリーブ22が施錠保持位置(図1及び図2)から解錠許容位置に軸線方向で(図示の例では左方に)変位するのを許容するようになされている。
【0031】
スリーブ変位阻止部材28は、雌型管継手部材10の軸線に平行な方向に延びる軸線の回りでコイル状に巻かれ、該スリーブ22にその半径方向で貫通するように形成された開口36内に設定され、一部が該開口から半径方向外側に突出するように設定されたコイル部38、及び、該コイル部38の両端からスリーブ22内に、当該コイル部をその軸線方向(図3で紙面の表裏方向)で見て、相互に離れるように延び、それぞれ、該雌型継手本体19の外周面の第1面30と接線方向で接するように延びる両端部40を有するバネ材から形成されている。図21に示すように、開口36は、コイル部38が設定される部分からスリーブ22の図で見て左端縁まで延びるようにされており、スリーブ変位阻止部材28を該開口内に設定するのを容易にしている。また、開口36のコイル部38が設定される部分に対応するスリーブ22の内周壁には環状の凹部22−1が設けられて薄肉とされ、バネ材の両端部40が該環状の凹部22−1内で延びて、雌型継手本体19の外周面と係合するようにされており、更に、図5及び図6に示すように、バネ材の両端部40の先端がコイル部38の軸線と平行に該コイル部38と略同じ長さだけ伸びる部分40−1を含むL字状とされ、該L字状の部分が凹部22−1の当該スリーブの軸線方向両側に形成される側壁22−2,22−3に係合することにより、該バネ部材がスリーブ22に対して軸線方向で動かないようにされている。このバネ材は、両端部40がなす夾角が広がるように付勢されており(図6参照)、コイルの該両端部40が第2面32と係合する位置となるようにスリーブ22が回動されたときに、該スリーブ変位阻止部材28がそのバネ力により変形して両端部40がなす夾角が広がるように変形し、コイル部38の、スリーブ22の開口36の外側に突出していた部分が該開口36内に変位するようにされている。
【0032】
上述のように、この実施形態においては、雌型継手本体19に設けられる係止部34は、雌型継手本体19の外周面上に同心状にして取りつけられる筒状部材とされており、スリーブ22を受け入れる内径を有しているが、スリーブ変位阻止部材28が図2及び図3に示すような上述の第1形状にあるときは、スリーブ22の開口36から突出したコイル部38の一部が、該筒状の係止部34の端縁に係合するようになっている。
【0033】
図7乃至図10は、本発明に係る雌型管継手部材10の第2の実施形態を示している。上述の第1の実施形態における雌型管継手部材10と同じ若しくは類似の部材には、同じ参照番号を付して示した。
【0034】
この雌型管継手部材10は、いわゆるワンタッチ装着型のものである。すなわち、該雌型管継手部材10は、第1の実施形態に係る雌型管継手部材10における施錠子と同じ作用をなす施錠子14の外に、該施錠子と同様のボール11が設けられている。これは当業者には周知の雄型管継手部材のワンタッチ装着のためのものである。すなわち、ボール11は、雌型管継手部材10の周方向において、施錠子14とは異なる複数の位置で、施錠子14よりも図で見て右側の位置で半径方向で変位可能に設けられており、当該雌型管継手部材10内に雄型管継手部材12が挿入されてくると、該雄型管継手部材12は、その先端で先ずこのボール11を半径方向外側に押し出す。押し出されたボール11は、スリーブ22の施錠子解放凹部24に隣接したテーパ面25を押圧し、それによりスリーブ22を図7で見て左方に変位させる。雄型管継手部材12が更に進んで該施錠子14に至ると、その時点では、テーパ面25が施錠子14と半径方向で整合するようにスリーブ22が変位されており、該雄型管継手部材12が更に進むと、この施錠子14を半径方向外側に押し出してテーパ面25を押圧するようにし、それによってスリーブは更に左方に変位されて、施錠子14が施錠子解放凹部24の位置となり、雄型管継手部材12が雌型管継手部材10内に更に進むのを可能とする。すなわち、この雌型管継手部材10では、スリーブ22を操作することなしに、雄型管継手部材の雌型管継手部材への挿入連結が可能となる。
【0035】
この第2の実施形態においては、上述の第1の実施形態と同様に、スリーブ22が回動可能とされ、雌型継手本体19の外周面には第1の実施形態と同様の第1面30と第2面32が設けられており、また、雌型継手本体19に設けられた筒状の係止部34を有している。第1の実施形態と異なる点は、スリーブ変位阻止部材28にある。すなわち、第2の実施形態に係るスリーブ変位阻止部材28は、スリーブ22の直径方向で反対側の位置に、その半径方向で貫通するように形成された一対の開口36にそれぞれ半径方向で摺動可能にされた摺動ピン28−1と、該摺動ピン28−1の回りで該摺動ピン28−1とスリーブ22との間に設定されたバネ部材、具体的には圧縮コイルバネ28−2とからなる。摺動ピン28−1は、圧縮コイルバネ28−2によって半径方向内側に付勢され、雌型継手本体19の外周面と摺動可能とされている。摺動ピン28−1は、円周面状の第1面30と係合する位置(図9及び図10)とされているときには、バネ部材28−2に抗して押し出され、一部が該開口36から半径方向外側に突出するようになされ、平面状とされた上記第2面32と係合する位置(図7及び図8)とされているときには、摺動ピン28−1が開口36の内側に引き込まれるようにされている。
【0036】
図13乃至図16は、本発明に係る雌型管継手部材10の第3の実施形態を示している。この雌型管継手部材10は、第2の実施形態とは異なりワンタッチ装着型ではなく、第1の実施形態と同じく、雄型管継手部材12を装着するとき及び外すときには、作業者がスリーブ22を軸線方向で変位する必要のあるものである。この実施形態では、基本的構成は第1の実施形態のものと同じであるが、スリーブ変位阻止部材28と係合する雌型継手本体19に設けられる係止部34が相違している。
【0037】
すなわち、この第3の実施形態では、施錠保持位置(図13及び図15)にあるときのスリーブ22が周方向で変位されたときに捻りバネ状のスリーブ変位阻止部材28と摺動する雌型継手本体19の外周面に、上述の第1及び第2実施形態と同様に、円周面状の第1面30と、該第1面に対して弦をなすように延びる平面状の第2面32とが設けられるが、この弦をなすように延びる第2面32の当該雌型継手部材継手本体19における軸線方向での前後の側縁から半径方向外側に延びる側面35が形成されるように凹部37が形成され、スリーブ22の開錠許容位置側にある側面35を係止部34としている。この場合、凹部37の底面をなす第2面32がスリーブ変位阻止部材28を変形して係止部34に係合可能とする面をなし、スリーブ変位阻止部材28が該第2面32と係合する位置となり、該係止部34としての側面35と係合することにより、スリーブ22が施錠保持位置(図13及び図15)から該解錠許容位置に軸線方向で変位するのを阻止するようになっている。
【0038】
図17乃至図20に示す第4の実施形態に係る雌型管継手部材は、第1の実施形態のものと類似するものであるが、第1の実施形態における第2面32の一方の周方向端部(左端)と、それに続く円周面状の第1面30との間に段部33を設け、第2面32の他方の端部(右端)から該第2面32に入ってきたスリーブ変位阻止部材28が、段部33によって停止されるような形状とされている点で相違している。図19及び図20に示すように、コイル部38から伸びる両端部40は、コイル部38から伸びて直ぐに直角に曲げられて、該コイル部38の軸線と平行に、且つ、該コイル部38とほぼ同じ長さだけ伸び、その先端で雌型継手本体19の半径方向外側に上記段部33と係合可能な高さだけ伸びた後、第1の実施例における両端部40と同様の形態で伸びるようにされている。この実施形態では、スリーブを回動して、スリーブ変位阻止部材28が第1面30に係合する位置となったときに、該スリーブ変位阻止部材28が上記段部33と係合して、当該スリーブ変位阻止部材28の動きを止め、それにより、作業者は、そのことを確認することができる。
【符号の説明】
【0039】
雌型管継手部材10;ボール11;雄型管継手部材12;ボール状の施錠子14;貫通孔18;雌型継手本体19;施錠凹部20;スリーブ22;環状凹部22−1;側壁22−2,22−3;施錠子解放凹部24;テーパ面25;コイルバネ26;スリーブ変位阻止部材28;摺動ピン28−1;圧縮コイルバネ28−2;第1面30;第2面32;段部33;係止部34;側面35;開口36;凹部37;コイル部38;両端部40

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型管継手部材を受け入れる管状の雌型継手本体であって、外周面に周方向で連続して設けられた第1面と、該第1面よりも半径の小さい第2面とを有する雌型継手本体と、
雌型継手本体に半径方向で変位可能に装着された施錠子であって、該雌型継手本体内に挿入された雄型管継手部材と係合して該雄型管継手部材を施錠するための半径方向内側位置と、該雄型管継手部材の施錠を解除するための半径方向外側位置との間で変位可能な施錠子と、
該雌型継手本体の外周面上に設けられ、該施錠子を該半径方向内側位置に保持するための施錠保持位置と、該施錠子が該半径方向外側位置に変位するのを許容する解錠許容位置との間を当該雌型継手本体の軸線方向で変位可能とされたスリーブと、
該スリーブに設けられ、該雌型継手本体の外周面と摺動可能とされ、且つ、バネ付勢力により該外周面に押圧されているスリーブ変位阻止部材と、
該スリーブが施錠保持位置にあるときの該スリーブ変位阻止部材よりも、解錠許容位置側の位置で該雌型継手本体に設けられた係止部と
該スリーブが周方向で回動可能とされ、
施錠保持位置にあるときのスリーブが該雌型継手本体に対して周方向で回動されたときに、該スリーブ変位阻止部材は、該バネ付勢力により、該第1面と係合することにより第1形状となり、該第2面に係合することにより第2形状となり、該スリーブ変位阻止部材が、回動されることにより該第1形状及び第2形状の一方の形状となることにより該雌型継手本体に設けられた該係止部と軸線方向で係合可能となり、それにより、該スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位するのを阻止するようになされていることを特徴とする雌型管継手部材。
【請求項2】
該係止部が、該雌型継手本体の外周面から半径方向外側に延びるように設けられ、
該スリーブ変位阻止部材は、該第1形状のときに該スリーブから半径方向外側に突出する部分を有し、該スリーブが該施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位しようとするときに該部分が該係止部に係止することにより、該スリーブの該変位を阻止するようにした請求項1に記載の雌型管継手部材。
【請求項3】
該係止部が、該雌型継手本体の外周面に該雌型継手本体と同心状に固定された筒状部材によって構成され、該筒状部材は、該スリーブ変位阻止部材が第2形状にあるときに、該該施錠保持位置から解錠許容位置に変位する該スリーブを受け入れる内径を有し、該スリーブ変位阻止部材が第1形状にあるときに、該施錠保持位置から該解錠許容位置に変位する該スリーブから半径方向外側に突出する該スリーブ変位阻止部材の該部分と係合して該スリーブの変位を阻止するようにされている請求項2に記載の雌型管継手部材。
【請求項4】
該施錠保持位置にあるときの該スリーブが周方向で回動されたときに該スリーブ変位阻止部材と摺動する該雌型継手本体の外周面が全体的に円周面とされ、該円周面が該円周面に対して弦をなすような平面状に延びる面を有するようにされ、該円周面が該第1面、該平面状に延びる面が第2面とされている請求項1乃至3のいずれかに記載の雌型管継手部材。
【請求項5】
スリーブ変位阻止部材が、該雌型継手本体の軸線に平行な方向に延びる軸線の回りでコイル状に巻かれ、該スリーブにその半径方向で貫通するように形成された開口内に設定され、一部が該開口から半径方向外側に突出するように設定されたコイル部、及び、該コイル部の両端から該スリーブ内に、当該コイル部をその軸線方向で見て、相互に離れるように延び、該雌型継手本体の該外周面の該第1面の該円周面と接線方向で接するように延びる両端部を有するバネ材から形成され、該スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位しようとするときに、該開口から半径方向外側に突出するように設定されたコイル部の該一部が該係止部に係止することにより、該スリーブの該変位を阻止するようにされ、
該スリーブが回動されて該コイルの該両端部が該第2面と係合する位置とされたときに、該スリーブ変位阻止部材が該第2形状に変形して該コイル部の該一部が該スリーブの該開口内に引き込まれるようにされた請求項2又は3に記載の雌型管継手部材。
【請求項6】
スリーブ変位阻止部材が、該スリーブにその半径方向で貫通するように形成された開口内に半径方向で摺動可能に設けられた摺動ピン、及び、該摺動ピンと該スリーブとの間に設けられて該摺動ピンを半径方向内側に付勢し、該摺動ピンが該雌型継手本体の該外周面と摺動可能に係合するようにするバネ部材からなり、該摺動ピンは、該第1面と係合する位置とされているときには、該バネ付勢力に抗して押し出され、一部が該開口から半径方向外側に突出するようになされ、該スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位しようとするときに、該一部が該係止部に係止することにより、該スリーブの該変位すを阻止するようにされ、該第2面と係合する位置とされているときには、該一部が該開口の内側に引き込まれるようにされている請求項2又は3に記載の雌型管継手部材。
【請求項7】
該施錠保持位置にあるときのスリーブが周方向で変位されたときに該スリーブ変位阻止部材と摺動する該雌型継手本体の該外周面が全体的に円周面とされ、該円周面が該円周面に対して弦をなすような平面状に延びる面と、該平面状に延びる面の該スリーブの該開錠許容位置側で該弦をなす方向に延びる縁から半径方向外側に延びて該係止部をなす側面とを有する凹部を有し、該平面状に延びる面が該第2面をなし、該平面状に延びる面の周方向で前後の該円周面が該第1面をなし、該スリーブ変位阻止部材は、該平面状に延びる面と係合して該第2形状とされて該係止部としての該側面と係合可能となることにより、スリーブが施錠保持位置から該解錠許容位置に軸線方向で変位するのを阻止するようにした請求項1に記載の雌型管継手部材。
【請求項8】
スリーブ変位阻止部材が、該雌型継手本体の軸線に平行な方向に延びる軸線の回りでコイル状に巻かれ、該スリーブにその半径方向で貫通するように形成された開口内に設定されたコイル部、及び、該コイル部の両端から該スリーブ内に、当該コイル部をその軸線方向で見て、相互に離れるように延び、該雌型継手本体の該外周面の第1面と接線方向で接するように延びる両端部を有するバネ材から形成され、
該スリーブが回動されて該コイルの該両端部が該第2面と係合する位置とされたときに、該スリーブ変位阻止部材が該第2形状に変形するようにされた請求項7に記載の雌型管継手部材。
【請求項9】
該円周面から該弦をなすように平面状に延びる面が、その弦をなすように延びる方向での一方の端部側に段部を有し、該段部を介して該円周面に接続されるようになされており、該スリーブが回動されて、該スリーブに設けられている該スリーブ変位阻止部材が該平面状に延びる面にその他端側から入ってきたときに該段部によって係止され、スリーブの回動が阻止されるようにした請求項4又は7に記載の雌型管継手部材。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の雌型管継手部材と、該雌型管継手部材の該貫通孔内に摺動挿入されるようにした雄型管継手部材であって、雌型管継手部材の該施錠子が該半径方向位置にされたときに該施錠子を受け入れる環状凹部を有する雄型管継手部材とを有する管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−107681(P2012−107681A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256139(P2010−256139)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】