説明

雑音発生源検出装置、情報提供システム及び雑音発生源検出方法

【課題】ツリー状に構成された伝送系ネットワークにおける流合雑音対策に関する技術に関し、既存の設備を利用できるとともに、ノイズの発生源を特定可能な技術を提供する。
【解決手段】複数の端末に対して、所定のコンテンツを提供する管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムにおいて、複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報として、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到着する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比とを取得し、取得した受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑音発生源検出装置、情報提供システム及び雑音発生源検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ツリー状に構成された伝送系ネットワーク(例えば、CATV(Common Antenna TeleVision)網)における流合雑音対策に関する技術が複数提案されている。例えば、特許文献1には、通信障害が雑音によるものである場合、幹線分岐増幅器のゲートスイッチを順次遮断し、このとき測定される雑音量の減少を検知することで雑音の発生箇所を特定する技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、双方向CATVシステムにおける回線に挿入される流合雑音検出遮断装置において、コントローラが、上り回線信号の所定の帯域の流合雑音レベルを検出し、検出した流合雑音レベルが所定の閾値以上となったとき、上記回線のうちの上り回線信号の帯域を遮断し、装置アドレスを有するエラー通知を含むデータ信号を送信するように制御する技術が開示されている。更に、例えば、特許文献3には、ケーブル回線の幹線に監視装置を設け、幹線から分岐・分配配線された支線に複数の検出装置を設け、監視装置によって検出された「電圧レベルの変動時間」と各検出装置によって検出された「電圧レベルの変動時間」とを比較することによって、探査対象となる雑音の伝送ルートを特定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−326916号公報
【特許文献2】特開2005−123870号公報
【特許文献3】特開2004−40737号公報
【特許文献4】特開平11−355755号公報
【特許文献5】特開平11−252526号公報
【特許文献6】特開2004−72477号公報
【特許文献7】特開2003−111043号公報
【特許文献8】特開平10−200875号公報
【特許文献9】特開平10−145771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ツリー状に構成された伝送系ネットワークにおける流合雑音対策に関する技術が複数提案されている。しかしながら、例えば、上記特許文献1に記載の技術の場合、ゲートスイッチの切り替え操作に時間や手間がかかり、また、場合によってはゲート操作によるサービス停止やサービス品質の低下を招くことが懸念される。また、ゲートスイッチなどのネットワーク操作ができない設備では、この技術は適用することができない。また、例えば、上記特許文献2に記載の技術の場合、装置アドレスを有するエラー通知を含むデータ信号を送信可能な装置が必要となる。すなわち、このような機能を持たないシステムでは、送信側にこのような機能をもつ装置を新たに設置することが必要となる。更に、上記特許文献3に記載の技術の場合、既存のシステムに別途検出手段を設ける必要がある。
【0004】
また、双方向端末の端末関連情報を取得し、端末のサービス品質劣化状況から伝送系ネットワークの不良箇所を絞り込むことも考えられる。しかし、端末からセンタへ向けて送信されるいわゆる上り信号に含まれるノイズを分析するだけでは、センタには加算されたノイズが流合雑音として報告されるため不良箇所を特定することは難しい。
【0005】
本発明では、上記した問題に鑑み、ツリー状に構成された伝送系ネットワークにおける流合雑音対策に関する技術に関し、既存の設備を利用できるとともに、ノイズの発生源を特定可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上述した課題を解決するために、管理装置によって、端末に関連する情報として、端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到着する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、取得した端末毎の、送信信号対雑音比と受信信号対雑音比との相関に基づいてノイズの発生箇所を絞り込むこととした。
【0007】
詳細には、本発明は、複数の端末に対して所定のコンテンツを提供する管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出する雑音発生源検出装置であって、前記複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報を取得する端末関連情報取得手段と、前記端末関連情報取得手段で取得される端末関連情報を分析して雑音の発生源を検出する発生源検出手段と、を備え、前記端末関連情報取得手段は、前記端末関連情報として、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到着する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、前記発生源検出手段は、前記各端末の、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する。
【0008】
本発明に係る雑音発生源検出装置では、所定のコンテンツ、例えば、映像および音声のコンテンツを提供する発生源検出手段が、各端末の端末関連情報、すなわち、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到着する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比とを取得し、これらの相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出することができる。そして、端末関連情報は、受信信号対雑音比送信信号対雑音比は、いずれも上り信号から取得可能である。なお、より詳細には、受信信号対雑音比は、各端末が受信する受信信号に対する雑音比として、端末からの上り信号から取得可能であり、送信信号対雑音比は、管理装置での端末送信信号の受信することで得ることができる。そして、本発明では、上り信号を送信する機能を有している既存の端末をそのまま利用することができる。従って、新たに設備等を設けることなく、上記情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出することができる。なお、管理装置は、所定のコンテンツに代えて、若しくは所定のコンテンツと共に、インターネット接続サービスや電話接続サービスと、いったサービスを提供するものでもよい。
【0009】
情報提供システムは、管理装置と、ツリー状の伝送路と、複数の端末と、によって構成される。管理装置は、上述したように、複数の端末に対して、例えば、映像および音声のコンテンツと、インターネット接続サービスと、電話接続サービスと、を提供する。また、管理装置は、複数の端末からの情報を受信して端末の状態や伝送路の状態等を管理することができる。映像および音声のコンテンツには、文字情報、音楽情報、映像情報等、種々の情報が含まれる。伝送路は、ツリー状であることから、複数の分岐点を有するが、この分岐点には、分岐や信号の増幅を行う増幅手段を設けることができる。ツリー状の伝送路には、例えばケーブルテレビジョンのネットワーク網が例示され、本発明に係る雑音発生源検出装置は、このようなケーブルテレビジョンのネットワーク網において起こりうる合流雑音を構成する雑音の発生源の検出装置として好適に用いることができる。端末は、少なくとも管理装置側へ信号を送信する送信機能を有していればよく、その構成は特に限定されるものではない。
【0010】
端末関連情報取得手段は、複数の端末から管理装置へ向けて送信される上り信号から端
末関連情報を取得する。端末関連情報には、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比(以下、受信SNR(Signal to Noise Ratio)とも言う。)と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置が受信する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比(以下、送信SNR(Signal to Noise Ratio)とも言う。)とが含まれる。
【0011】
発生源検出手段は、上記端末の端末関連情報と、上記管理装置の端末管理情報と、を分析、すなわち、各端末の、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する。相関とは、一方の変数が増加した場合に、他方の変数が増加又は減少することを意味し、本発明では、例えば、受信信号対雑音比が増加すると送信信号対雑音比が増加又は減少することを意味する。そして、本発明は、このような相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出することを特徴とする。より具体的には、本発明は、出願人が見出した、周波数が広帯域にわたる雑音において雑音の発生源が近い端末では正の相関が強くなる傾向があるといった特性を利用して雑音の発生源を絞り込むことを特徴とするものである。
【0012】
なお、この相関は、周波数が広帯域にわたる雑音において雑音の発生源から近い端末が、雑音の発生源から遠い端末よりも強くなる傾向がある。そこで、上述した本発明に係る雑音発生源検出装置において、前記発生源検出手段は、前記各端末の相関を比較し、相関が最も強い端末を雑音の発生源に最も近い端末と判断して、雑音の発生源を絞り込むようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る雑音発生源検出装置において、前記発生源検出手段は、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関が所定の閾値を上回ると、該所定の端末を上回る相関の端末の近傍に雑音の発生源が存在すると判断するようにしてもよい。所定の閾値は、実験等によって求めることができる。なお、このような閾値は、本発明に係る雑音検出装置によって雑音の発生源を検出した後、実際に雑音の発生源を確認し、この実際に確認した結果を反映させて閾値を調整するようにしてもよい。これにより、雑音の発生源の検出の検出精度をより高めることができる。なお、雑音の発生源を検出するに際しては、各端末の相関を比較し、相関が類似する場合、各端末に送られる雑音が同一の雑音源によるものと判断するようにしてもよい。これにより、雑音の発生源をより正確に特定することが可能となる。相関が類似するか否かは、例えば相関を示す線形のデータを比較し、相関が表れ始める開始時間等を比較することで判断することができる。相関が表れる開始時間が同じであれば、同一の雑音源による影響と判断することが可能となる。また、複数の雑音源についても複数の端末相互の相関関係により検出することが可能となる。
【0014】
なお、本発明は、上述した雑音発生源検出装置が設けられた管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を備える情報提供システムとしてもよい。具体的には、本発明に係る情報提供システムは、複数の端末に対して所定のコンテンツを提供する管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムであって、前記管理装置は、前記情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出する雑音発生源検出装置を有し、前記雑音発生源検出装置は、前記複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報を取得する端末関連情報取得手段と、前記端末関連情報取得手段で取得される端末関連情報を分析して雑音の発生源を検出する発生源検出手段と、を備え、前記端末関連情報取得手段は、前記端末関連情報として、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到達する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、前記発生源検出手段は
、前記各端末の、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する。
【0015】
また、本発明は、上述した雑音発生源検出装置で実行される処理を実現させる方法としてもよい。具体的には、本発明は、複数の端末に対して所定のコンテンツを提供する管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出する雑音発生源検出方法であって、前記複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報を取得する端末関連情報取得ステップと、前記端末関連情報取得ステップで取得される端末関連情報を分析して雑音の発生源を検出する発生源検出ステップと、を備え、前記端末関連情報取得ステップでは、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到達する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、前記発生源検出ステップでは、前記各端末からの、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する。
【0016】
また、本発明は、上述した雑音発生源検出装置で実行される処理を実現させるプログラムであってもよい。更に、本発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この場合、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。なお、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ツリー状に構成された伝送系ネットワークにおける流合雑音対策に関する技術に関し、既存の設備を利用できるとともに、ノイズの発生源を特定可能な技術を提供することができる。また、各端末の端末関連情報を取得し、かつ、雑音の発生源を検出することで、複数のノイズの発生源を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る雑音発生源検出装置の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る雑音発生源検出装置(流合雑音監視制御装置)をケーブルテレビジョンのネットワーク網(以下、CATV網とも言い、本発明の情報提供システムに相当する。)において起こりうる合流雑音を構成する雑音の発生源の検出装置として適用する場合を例に説明する。
【0019】
<全体構成>
図1は、実施形態に係る、CATV網の概略構成を示す。同図に示すように、CATV網には、センタ装置1と、CATV同軸ケーブルネットワーク2と、宅内同軸ネットワーク3と、が設けられている。なお、本書では、以下、センタ装置1から宅内同軸ネットワーク3方向への信号を下り信号と称し、宅内同軸ネットワーク3からセンタ装置1方向への信号を上り信号と称する。
【0020】
[センタ装置]
センタ装置1は、本発明の管理装置に相当し、本態様では、端末データ収集装置11、ケーブルモデムセンタ装置12、ヘッドエンド装置13、CATV同軸ケーブル監視制御装置14、上り信号測定装置15、IP電話系装置16、インターネット系装置17、映像系装置18によって構成されている。また、センタ装置1には、本発明の雑音発生源検
出装置に相当する流合雑音監視制御装置19が設けられている。
【0021】
端末データ収集装置11は、CATV同軸ケーブルネットワーク2に設けられている増幅装置21及びタップオフ装置22、宅内同軸ネットワーク3内に設けられているテレビジョン受像機31やケーブルモデム33等の各端末との接続が可能であり、上り信号から端末毎の端末関連情報を収集して各端末の管理を行う。
【0022】
流合雑音監視制御装置19は、端末データ収集装置11で収集された端末毎の端末関連情報の中から雑音の発生源の特定に必要な情報を抽出し、雑音の発生源を検出する。なお、流合雑音監視制御装置19の詳細については、後述する。
【0023】
ケーブルモデムセンタ装置12は、センタ装置1側に設けられるモデムであり、後述する上り信号測定装置15、IP電話系装置16、インターネット系装置17、及び映像系装置18と、前述した端末データ収集装置11と、電気的に接続され、各装置からの信号を、セットトップボックス32、ケーブルモデム33と、ヘッドエンド装置13とを介して通信を行うための変調や復調を行う。なお、図1では、説明の便宜上一つのケーブルモデムセンタ装置12が示されているが、複数のケーブルモデムセンタ装置12を設けてもよい。
【0024】
ヘッドエンド装置13は、光送受信機(図示せず)を有し、光送受信機には光ファイバーケーブルの一端が接続される。光ファイバーケーブルの他端にも光送受信機が接続され、この他端側の光送受信機には、幹線系23を構成する同軸ケーブルが接続される。すなわち、他端側の光送受信機において光ファイバから同軸ケーブルに変換され、ヘッドエンド装置13からの信号が、CATV同軸ケーブルネットワーク2を介して宅内同軸ネットワーク3へ配信される。なお、ヘッドエンド装置13は、光送受信機ならびに光ファイバーケーブルを介さず、直接幹線系23を構成する同軸ケーブルと電気的に接続されていてもよい。
【0025】
上り信号測定装置15は、上り信号の雑音レベルを測定する。上り信号測定装置15は、既存のスペクトラムアナライザによって構成することができる。上り信号測定装置15は、既存のCATV網において、雑音を検出するための装置、換言するとCATV網の品質管理用の装置として用いられているものである。従来の上りCATV網では、このような上り信号測定装置15からの情報に基づいて増幅装置やタップオフ装置内のゲートスイッチ若しくはスイッチ装置内のスイッチを切り替えることで雑音の発生源を特定していた。しかしながら、このような手法は、ゲートスイッチの切り替え操作に時間や手間がかかり、また、場合によってはゲート操作によるサービス停止やサービス品質の低下を招くことが懸念されていた。これに対し、本実施形態に係るCATV網では、流合雑音監視制御装置19が設けられており、流合雑音監視制御装置19が端末データ収集装置11に収集されている各端末毎(ケーブルモデム33等)の端末関連情報に基づいて雑音の発生源を特定する。従って、上り信号測定装置15は、雑音の発生源を特定するという意味では不要となるが、流合雑音の発生そのものを検知する装置として引き続き利用することができる。なお、流合雑音監視制御装置19は、上り信号測定装置15によって雑音が検出されたことをトリガとして起動するようにしてもよい。
【0026】
IP電話系装置16、インターネット系装置17、及び映像系装置18も、上り信号測定装置15と同じく従来のCATV網に設けられているものであるが、上り信号測定装置15がCATV網の品質管理用の装置として用いられているに対し、IP電話系装置16、インターネット系装置17、及び映像系装置18は、顧客に提供するサービスを実現するための装置である。具体的には、IP電話系装置16は、図示しないインターネット網と接続され、宅内同軸ネットワーク3内の電話機34に対してIP(Internet
Protocol)電話サービスを提供するための必要な機能を備える。インターネット系装置17も図示しないインターネット網と接続され、宅内同軸ネットワーク3内のパソコン35等を通じたインターネット接続を可能とするための必要な機能を備える。映像系装置18は、図示しない映像を伝送する映像伝送装置、インターネット網や映像情報が格納されたデータベース等に接続されており、宅内同軸ネットワーク3内のテレビジョン受像機31等に映像情報を提供するための機能を備える。なお、宅内同軸ネットワーク3の詳細については後述するが、宅内同軸ネットワーク3内に設けられている、テレビジョン受像機31、セットトップボックス32、ケーブルモデム33、電話機34及びパソコン35は、本発明の端末に相当する。なお、端末は、センタ装置1に対して上り信号を送信する機能、すなわち双方向通信機能を有していればよい。また、CATV同軸ケーブルネットワーク2におけるタップオフ装置22や、宅内同軸ネットワーク3内の分配装置37も端末に含めることができる。
【0027】
CATV同軸ケーブル監視制御装置14は、ヘッドエンド装置13に接続されており、CATV同軸ケーブルネットワーク2内の増幅装置21と通信可能である。そして、CATV同軸ケーブル監視制御装置14は、上り信号測定装置からの情報(例えば、流合雑音に関する情報)に基づいて、CATV同軸ケーブルネットワーク2内に設けられたゲートスイッチの切り替え等の制御を行う。ゲートスイッチは、増幅装置21やタップオフ装置22内に設けられており、図面では省略する。
【0028】
[CATV同軸ケーブルネットワーク]
CATV同軸ケーブルネットワーク2は、増幅装置21と、タップオフ装置22とこれらの各装置同士を電気的に接続する、幹線系23及び分配系24と、によって構成されている。幹線系23及び分配系24は、本発明の伝送路に相当し、共に同軸ケーブルによって構成されている。なお、本書では、センタ装置1内のヘッドエンド装置13から延びる光ファイバーケーブルに接続される上流側の伝送路を幹線系23と称する。また、幹線増幅装置21によって分岐後の伝送路であって、タップオフ装置22のみが設けられている伝送路を分配系24と称する。幹線増幅装置21は、幹線系23を流れる信号を増幅するとともに、幹線系23を流れる信号を分岐する機能を有する。分配系24は、タップオフ装置22を介して、最終的に宅内同軸ネットワーク3内の宅内増幅装置36に接続される。なお、本態様ではタップオフ装置22として信号を4分配するタップオフ装置を用いているが、タップオフ装置22は、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
[宅内同軸ネットワーク]
宅内同軸ネットワーク3は、宅内増幅装置36と、分配装置37と、テレビジョン受像機31と、セットトップボックス32と、ケーブルモデム33と、パソコン35と、これら各機器を電気的に接続する同軸ケーブル及びテレビジョン受像機用端子からなる宅内配線系38によって構成されている。宅内増幅装置36は、タップオフ装置22を介して宅内同軸ネットワーク3に引き込まれた信号を増幅する。分配装置37は、宅内同軸ネットワーク3内に引き込まれた信号を、テレビジョン受像機31、セットトップボックス32、ケーブルモデム33、及びパソコン35へ分配する。なお、図示では、説明の便宜上一つの宅内同軸ネットワーク3のみを示すが、タップオフ装置22の下流側には、夫々宅内同軸ネットワーク3が設けられる。宅内同軸ネットワーク3は、戸建内に設けられるものや集合住宅に設けられるものが例示される。宅内増幅装置36、分配装置37、テレビジョン受像機31、セットトップボックス32、ケーブルモデム33、パソコン35等は、既存の装置や機器であるため、その説明は割愛する。
【0030】
<流合雑音監視制御装置>
次に、本発明の雑音発生源検出装置に相当する流合雑音監視制御装置19について説明する。ここで、図2は、実施形態に係る流合雑音監視制御装置19の機能ブロック図を示
す。同図に示すように、実施形態に係る流合雑音監視制御装置19は、端末データ収集装置インターフェース部191と、上り信号測定装置インターフェース部192と、CATV同軸ケーブル監視制御装置インターフェース部193と、相関評価部194と、記憶部195と、雑音源出力部196と、設定入力部197と、操作装置198と、モニタ装置199と、によって構成されている。端末データ収集装置インターフェース部191、上り信号測定装置インターフェース部192、CATV同軸ケーブル監視制御装置インターフェース部193、相関評価部194、雑音源出力部196、及び設定入力部197は、CPU190上で実行されるコンピュータプログラムとして構成することができる。また、これらの各機能部は、専用のプロセッサとして構成してもよい。なおCPU190は、バスを介して各機能部としての各ハードウェアと接続されている。CPU190は、各ハードウェアを制御すると共に、例えば記憶部195としてのROMに格納された制御プログラムに従って、所定の処理を実行する。
【0031】
端末データ収集装置インターフェース部191は、本発明の端末関連情報取得部に相当し、端末データ収集装置11と接続され、端末データ収集装置11によって収集された各端末に関連する端末関連情報を取得する。より詳細には、端末データ収集装置インターフェース部191は、端末データ収集装置11へアクセスし、端末の端末関連情報として端末の受信SNRを、また端末データ収集装置を介してケーブルモデムセンタ装置12にアクセスし、ケーブルモデムセンタ装置12が収集した送信SNRを取得する。
【0032】
上り信号測定装置インターフェース部192は、上り信号測定装置15と接続され、上り信号測定装置15によって取得された流合雑音に関する情報を取得する。CATV同軸ケーブル監視制御装置インターフェース部193は、CATV同軸ケーブル監視制御装置14と接続され、CATV同軸ケーブル監視制御装置が監視制御を行う、増幅装置21やタップオフ装置22内のゲートスイッチの切り替え状態に関する情報等を取得する。
【0033】
相関評価部194は、本発明の発生源検出手段に相当し、端末データ収集装置インターフェース部191から取得した端末の端末関連情報(受信SNR及び送信SNR)を分析して雑音の発生源を検出する。より詳細には、相関評価部194は、端末毎の送信SNRと受信SNRとの相関(以下、単に相関とも言う。)を比較し、最も強い相関を示す端末を雑音の発生源に近い端末と特定して、雑音の発生源を検出する。なお、このような相関評価部194による雑音の発生源の検出は、以下の原理に基づく。
【0034】
すなわち、雑音の発生源から近い端末と雑音の発生源から遠い端末では、発生源の雑音と到達する雑音との相関の強弱が異なる傾向を示す。具体的には、雑音の発生源から遠い端末については、相関が弱くなり、雑音の発生源から近い端末については、相関が強くなる。ここで、図3Aは、雑音の発生源から遠いある端末の相関を示す図であり、図3Bは、雑音の発生源から近いある端末の相関を示す図である。図3A、図3Bにおいて、送信SNRとは対象となる端末から送信される信号に対する雑音比であり、送信SNRは、センタ装置1側からみると、センタ装置1で受信される信号に対する雑音比であるセンタ側受信SNRに相当する。また、図3A、図3Bにおける受信SNRとは、対象となる端末が受信する信号に対する雑音比である。図3A、図3Bに示すように、図3Aに示す雑音の発生源から遠い端末の相関は、図3Bに示す雑音の発生源から近い端末の相関に比べて弱くなっている。従って、このような相関の強弱を判断することで対象となる端末が雑音の発生源から近いか若しくは遠いかといった判断が可能となる。
【0035】
なお、相関の強弱は、以下の理由によって起こる。すなわち、雑音の多くが高帯域の周波数特性を有しており、分配装置や分岐器等を経由して下り信号へ回り込む特性を有し、受信SNR(端末で受信される信号に対する雑音比)に影響を及ぼす。例えば、ある端末A1の直近で雑音が発生した場合、端末A2においてもこの端末A1の直近で発生した雑
音の影響を受ける。すなわち、端末A1の受信SNRについては、以下の式(1)の関係が成り立ち、端末A2の受信SNRについては、以下の式(2)の関係が成り立つ。なお、Nr1、Nr2は、通常時の端末A1、端末A2の固有の受信雑音であり、f1(Nz1)は、端末A1の直近で発生した流合雑音Nz1による下り雑音値であり、f2(Nz
1)は分配装置や分岐器等を経由してNz1に影響される下り雑音値であり、端末A1受信SNRと端末A2受信SNRとはともにNz1に影響を受け相互に相関も持つが、f1、f2で示される条件によりNz1との相関に差異を生じる。ここで、Sr1、Sr2は端末A1、端末A2の受信信号レベルである。
【数1】

【数2】

【0036】
そして、このような受信SNRへの影響、すなわち受信SNRの変化は、雑音の発生に伴う送信SNRの変化と強い相関がある。一方、このような受信SNRの変化は、雑音の発生源からの距離が近いほど顕著に表れる。雑音も減衰することから距離が遠くなるほど減衰量も多くなるからである。なお、このような雑音の減衰は、例えばタップオフ装置22を経由する際により顕著となる。タップオフ装置22を経由すると、タップオフ装置22の結合損失の影響を受けるからである。ここで、図4は、タップオフ装置の結合損失の例を示す。図4に示すタップオフ装置22は、4分配式のタップオフ装置であり、本態様では、分配系24に設けられているものである。図4において、紙面左向きの矢印(←)は、上り信号を指し、紙面右向きの矢印(→)は、下り信号を指す。図4に示すタップオフ装置では、タップオフ装置を単に通過(幹線系を通過)する場合の通過損失が、上りにおいて0.9dBであり、下りでは1.6dBとなる。また、分配系24から宅内同軸ネットワーク3へタップオフ装置22を経由する際の結合損失は、20dBであり、宅内同軸ネットワーク3から分配系24へタップオフ装置24を経由する際の結合損失は、30dBである。また、ある宅内同軸ネットワーク3から他の宅内同軸ネットワーク3へタップオフ装置22を経由する際の結合損失は、25dBである。このように、タップオフ装置22を経由する際には、信号が減衰し、この時雑音も減衰の影響を受ける。従って、端末が、雑音をタップオフ装置22を経由して受信している場合には受信SNRの変化が小さくなり、端末が、雑音をタップオフ装置22を経由せずに受信すると受信SNRの変化が大きくなる。
【0037】
すなわち、送信SNRに関しては、センタ装置にツリー状の伝送路全体から到着するすべての雑音の合成したノイズが、一律ノイズ成分となることから、端末同士の間で差は見られないが、受信SNRに関しては、雑音源からの位置により受信SNRが一意的に差異を生じることになる。従って、端末ごとの受信SNRを比較して変化に相関があれば、同一の雑音源による影響であるか否かを判断することも可能となる。そして、ある端末の送信SNRと受信SNRとを比較すると、雑音源に近い端末ほど相関が強いことを確認することができる。つまり、端末A1の送信SNRと受信SNRについては、以下の式(3)と上述した式(1)の関係から雑音源Nz1に対し関係式fo(Nz1)とfr1(Nz1)を介して相関関係が成り立つ。また、端末A2の送信SNRと受信SNRについては、以下の式(4)と上述した式(2)の関係から雑音源Nz1に対し関係式fo(Nz1)とfr2(Nz1)を介して相関関係が成り立つ。
【数3】

【数4】

【0038】
つまり、fo(Nz1)(雑音Nz1のセンタ装置到達の雑音値)とfr1(Nz1)(端末A1の直近で発生した流合雑音による下り雑音値)の時間的挙動が等しく、変化量もより近ければ、受信SNR/送信の相関係数は1に近づくことになる。本発明では、このようなSNRの相関を利用して雑音の発生源からの影響度合いを検査することで、雑音発生源の位置を特定する。
【0039】
設定入力部197は、操作装置198を介して閾値等が入力される。操作装置198には、コンピュータの入力装置、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等が含まれる。キーボードは、ユーザの入力操作に応じて、入力されたキーに対応する電気信号をキーボードの不図示のキーボードコントローラに送信する。キーボードコントローラは、その電気信号に対応する符号をCPUに送信する。
【0040】
雑音源出力部196は、相関評価部194で特定された雑音源を出力する。出力された雑音源は、モニタ装置199の画面上に表示される。モニタ装置199は、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、CRT(Cathode Ray Tube)、エレクトロルミネッセンスパネル等である。
【0041】
記憶部195は、揮発性のRAM(Random Access Memory)と、不揮発性のROM(Read Only Memory)を含む。ROMには、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read−Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)のような書き換え可能な半導体メモリを含む。
【0042】
<処理フロー>
次に流合雑音監視制御装置19で実行される処理(以下、雑音監視処理ともいう。)について説明する。以下で説明する処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現される。また、以下の説明では、下り信号を4分配するタップオフ22の端子22aから22dのうち、端子22dの近傍において雑音が発生したと想定して説明する(図5参照。)。すなわち、端子22dに接続される端子22dより下流側の同軸ケーブルが破損したと想定して説明する。
【0043】
ここで図6は、流合雑音監視制御装置19で実行される雑音監視処理フローを示す。なお、同図では、流合雑音監視制御装置19で実行される雑音監視処理に関連する、他の装置で実行される処理も示されている。まず、流合雑音監視制御装置19で実行される処理の前提となる、端末データ収集装置11で実行されるデータ収集処理、及び上り信号測定装置15で実行される上り信号測定処理について説明する。
【0044】
[データ収集処理]
ステップS01では、端末データ収集装置11において、各端末が持つ端末データを上り信号から収集するとともにケーブルモデムセンタ装置12が持つ端末データが収集され
る。端末データには、端末毎の端末関連情報として、端末毎の受信SNRと送信SNRとが含まれている。収集された端末データは、流合雑音監視制御装置19へ送られ、流合雑音監視制御装置19による雑音監視処理(ステップS21からステップS25)が実行される。
【0045】
ここで、端末データを流合雑音監視制御装置19へ送るに際しては、閾値を設定し、設定された閾値を外れたもののみを流合雑音監視制御装置19へ送るようにしてもよい。ステップS02及びステップS03は、このような場合における処理を示す。具体的には、ステップS02では、所定の閾値が読み込まれる。この閾値は、送信SNRまたは受信SNRが劣化しているか否かを判断するための閾値であり、システムを維持すべき品質基準として設定することができる。閾値の設定は、端末データ収集装置に接続された操作部(例えば、キーボード等)を介して予め行えばよい。閾値の読み込みが完了すると、ステップS03へ進む。
【0046】
ステップS03では、端末データが設定された条件(閾値)を満たすか否か判断され、条件を満たさないデータ、換言すると閾値から外れた端末データが、劣化データとして流合雑音監視制御装置へ送信される。その後、流合雑音監視制御装置19による雑音監視処理が開始される。
【0047】
[上り信号測定処理]
次に上り信号測定装置15で実行される上り信号測定処理について説明する。まず、ステップS11では、流合雑音レベル(dBμV)が測定される。続いてステップ12では、流合雑音異常閾値が読み込まれる。この流合雑音異常閾値は、流合雑音が正常か異常かを判断する基準値として設定することができる。流合雑音異常閾値の設定は、上り信号測定装置に接続された操作部(例えば、キーボード等)を介して予め行うことができる。流合雑音異常閾値の読み込みが完了すると、ステップS13へ進む。
【0048】
ステップS13では、流合雑音レベルが正常か否かが判断される。具体的には、流合雑音レベルが、予め設定されている流合雑音異常閾値内にあるか否かが判断される。流合雑音レベルが流合雑音異常閾値内であれば、正常と判断される。一方、流合雑音レベルが流合雑音異常閾値を外れている場合、異常と判断され、その旨が流合雑音監視制御装置19へ報告される。なお、正常と判断された場合においてもその旨を流合雑音監視制御装置19へ報告するようにしてもよい。流合雑音監視制御装置19は、この異常との報告を受けた場合に、雑音監視処理の実行を開始する。つまり、この場合、上り信号制御装置15からの異常との報告は、雑音監視処理を実行する際のトリガとなる。
【0049】
[雑音監視処理]
次に、流合雑音監視装置において実行される雑音監視処理について説明する。まず、ステップS21では、雑音の発生源を絞り込むために必要なデータとして各端末に関連する端末関連情報が抽出される。より詳細には、端末毎の送信SNRと受信SNRとが端末毎の端末データとして抽出される。ここで、端末データは、端末送信レベル、端末受信レベル、送信SNR、受信SNR等を示し、評価すべき時間帯の一定間隔のデータを相関評価の対象として処理する。図7は、本態様での雑音(ノイズ)が発生したある時間帯におけるセンター到達SNRごとのタップオフ装置22の四つの端子(22aから22d)の信号・ノイズ・SNR、及び端子22aと端子22dの合成の試算結果が示されている。センター到達SNRとは、センタ装置1に到達するSNRであり、各端子(22aから22d)から送信される信号に対する雑音比、つまり送信SNRに相当する。本態様では、端子22dがノイズの発生源である。合成ノイズとは、タップオフ22を介して回り込んで各端子に影響を与える雑音の合成値である。なお、本態様では、条件として、信号には変動がないものとし、また、高レベルの変動するノイズは端子22dにおいてのみ発生する
ものとし、他のノイズは低レベル、かつ一定であるものとする。端末関連情報の抽出が完了するとステップS22へ進む。
【0050】
なお、合成ノイズの算出について簡単に説明すると以下のようになる。すなわち、本態様のようにタップオフ装置22の端子間結合損失が25dBの場合、タップオフ装置22のある端子(例えば端子22d)のノイズN4が、他の端子(例えば端子22a)のノイズN1に17.8分の1になって加算されることになる。すなわち、−25=20Log(1/17.8)(マイナスは減衰を意味する。)となる。従って、22a端子に現れるノイズN1tは自端子のノイズN1と他の22b、22c、22dから混入するノイズN2、N3、N4から端子間結合損失分の低減を伴って端子22aに合成されたノイズN1tは、電圧標記(μV)で仮に雑音が同相とした場合、
N1t=N1+N2/17.8+N3/17.8+N4/17.8
で表すことができる。なお、N1に対しN2〜N4のノイズ波形がランダムな場合、合成ノイズはこの電圧加算値より小さくなり、他端子からのノイズの回りこみの影響が更に小さくなり、自端子のノイズがより支配的になる。
【0051】
ステップS22では、相関係数が抽出される。換言すると、ステップS22では、端子ごとの送信SNRと受信SNRとの相関値が算出される。ここで、図7の試算値を基に、
図8は、端子22aと端子22dの相関をグラフ化したものを示す。横軸が送信SNRであり、縦軸が受信SNRである。同図に示すように、端子22aの相関値(相関係数)は、1.4458であり、端子22dの相関値は3.936である。相関値の算出が完了するとステップS23へ進む。
【0052】
ステップS23では、相関値に基づいて端子の順位付けが行われる。順位付けを行うことで雑音の発生源の特定を行うことが可能となる。本態様では、端子22aの相関値(相関係数)が、1.4458であり、端子22dの相関値が3.936であることから、端子22aに比べて端子22dの相関値が大きい。従って、端子22dが雑音の発生源に近いと特定することが可能となる。なお、図8では、例として端子22a、22dのみ表示しているが、同様に他の端子についても相関値を算出することで全ての端子との間での相関値に基づいて順位付けを行うことが可能となり、最も相関値が大きい端子が雑音の発生源に最も近いと特定することができる(但し、本態様では、端子22b、22cの条件が端子22aの条件と同じであるため、端子22b、22cの相関値は、端子22aの相関値と同じとなる。)。相関値に基づく端子の順位付けが完了すると、ステップS24へ進む。
【0053】
ステップS24では、所定の閾値が読み込まれる。この閾値は、雑音の発生源を特定するためのものであり、実験等によって算出することができる。例えば、閾値を3以上と設定すると、雑音の発生源である端末4のみが絞り込まれることになる。閾値の読み込みが完了すると、ステップS25へ進む。
【0054】
ステップS25では、雑音の発生源が特定され、出力される。具体的には、モニタ装置199に、雑音の発生源が表示される。その結果、例えば管理者(CATVネットワーク網を管理する者)は、雑音の発生源を認識することが可能となる。なお、本実施形態では、特定された雑音の発生源に関する情報は、CATV同軸ケーブル監視制御装置14へ送られる。
【0055】
[ゲート制御処理]
ステップS41では、CATV同軸ケーブル監視制御装置14において、ゲートスイッチ制御が実行される。具体的には、CATV同軸ケーブルネットワーク2内の増幅装置21やタップオフ装置22内のゲートスイッチの切り替え等の制御、例えば、雑音の発生源
のルートの遮断等が行われる。雑音の発生は一般的に同軸ケーブルの破損などの原因によることから、そのまま信号を流し続けると、CATV網全般に支障を来たすことも懸念される。そこで、本実施形態では、雑音の発生源に関する情報は、モニタ装置199に表示し管理者に警告するだけでなく、緊急を要する場合は、緊急レベルの閾値を設定することによりCATV同軸ケーブル監視制御装置14に自動的に送られ、CATV同軸ケーブル監視制御装置14によってCATV同軸ケーブルネットワーク2内のゲートスイッチの切り替え等が自動的に行うこともできる。なお、CATV同軸ケーブル監視制御装置14は、ゲート制御処理とは独立した処理として、ゲートスイッチ等の監視も行うことができる。
【0056】
以上説明した本実施形態に係るCATV網では、流合雑音監視制御装置19によって、タップオフ装置22の各端子ごとの受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出することができる。すなわち、タップオフ装置22の端子22d近傍が雑音発生源であると特定することができる。なお、端末関連情報は、上り信号に含まれるものであり、上り信号を送信する機能を有している既存の端末(ここでは、タップオフ装置22)をそのまま利用することができる。従って、新たに設備等を設けることなく、CATV網において発生する雑音の発生源を検出することができる。
【0057】
<変形例>
上述した態様では、タップオフ装置22の各端子レベルで雑音の発生源を特定した。但し、流合雑音監視制御装置19(本発明に係る雑音発生源検出装置に相当)は、タップオフ装置22に替えて宅内同軸ネットワーク3内における分配装置37レベルで雑音の検出を行うこともできる。ここで、図9は、宅内同軸ネットワーク3内において雑音が発生する場合の、送信SNRと受信SNRの相関状況を示す。同図に示すように、本態様では、宅内同軸ネットワーク3内の分配装置37の下流側に雑音の発生源が存在している。同図において、点線の四角で囲まれた領域が、戸建、集合住宅に設けられた宅内同軸ネットワーク3を示している。そして、この時の相関値を順位付けしたものが各端末(301から316)に付された番号である。なお、雑音の発生源を特定するための処理、すなわち、端末関連情報の抽出、相関係数の抽出、順位付け等の処理は、前述した処理フローに基づいて行われる。そして、本態様では、図9に示すように雑音の発生源に最も近い端末301の相関値が0.196と最も高くなっている。そして、この端末301に関しては、雑音の発生源と端末301との間に他の端末や分配装置等を介していない。すなわち、発生した雑音が直接端末301へ送られている。これに対し、例えば、2番目に相関値が大きい端末302については、分配装置37a、分配装置37bといったように二つの分配装置を介して雑音が送られており、夫々の分配装置で雑音を含む信号が減衰している。その結果、端末302の相関値は、端末301の相関値よりも小さくなっている。このように、流合雑音監視制御装置19によれば、タップオフ装置22以下の雑音源の特定だけでなく、宅内同軸ネットワーク3内の雑音源の特定も可能である。したがって、より正確な雑音源の特定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】CATV網の概略構成を示す。
【図2】流合雑音監視制御装置の機能ブロック図を示す。
【図3A】雑音の発生源から遠いある端末の相関を示す。
【図3B】雑音の発生源から近いある端末の相関を示す。
【図4】タップオフ装置の結合損失の例を示す。
【図5】端子近傍に雑音の発生源がある場合のタップオフ装置のイメージ図を示す。
【図6】流合雑音監視制御装置で実行される雑音監視処理フローを示す。
【図7】端末関連情報の一例を示す。
【図8】各端子の相関をグラフ化したものを示す。
【図9】宅内同軸ネットワーク内において雑音が発生する場合の、送信SNRと受信SNRの相関状況を示す。
【符号の説明】
【0059】
1・・・センタ装置
2・・CATV同軸ケーブルネットワーク
3・・・宅内同軸ネットワーク
11・・・端末データ収集装置
12・・・ケーブルモデムセンタ装置
13・・・ヘッドエンド装置
14・・・CATV同軸ケーブル監視制御装置
15・・・上り信号測定装置
16・・・IP電話系装置
17・・・インターネット系装置
18・・・映像系装置
21・・・増幅装置
22・・・タップオフ装置
23・・・幹線系
24・・・分配系
31・・・テレビジョン受像機
32・・・セットトップボックス
33・・・ケーブルモデム
35・・・パソコン
36・・・宅内増幅装置
37・・・分配装置
191・・・端末データ収集装置インターフェース部
192・・・上り信号測定装置インターフェース部
193・・・CATV同軸ケーブル監視制御装置インターフェース部
194・・・相関評価部
195・・・記憶部
196・・・雑音源出力部
197・・・設定入力部
198・・・操作装置
199・・・モニタ装置
301〜316・・・端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末に対して、所定のコンテンツを提供する管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出する雑音発生源検出装置であって、
前記複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報を取得する端末関連情報取得手段と、
前記端末関連情報取得手段で取得される端末関連情報を分析して雑音の発生源を検出する発生源検出手段と、を備え、
前記端末関連情報取得手段は、前記端末関連情報として、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到着する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、
前記発生源検出手段は、前記各端末の、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する、雑音発生源検出装置。
【請求項2】
前記発生源検出手段は、前記各端末の相関を比較し、相関が最も強い端末を雑音の発生源に最も近い端末と判断して、雑音の発生源を絞り込む、請求項1に記載の雑音発生源検出装置。
【請求項3】
前記発生源検出手段は、前記受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関が所定の閾値を上回ると、該所定の閾値を上回る相関の端末の近傍に前記雑音の発生源が存在すると判断する、請求項1又は請求項2に記載の雑音発生源検出装置。
【請求項4】
複数の端末に対して、所定のコンテンツを提供する管理装置と、
前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、
前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムであって、
前記管理装置は、前記情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出する雑音発生源検出装置を有し、
前記雑音発生源検出装置は、
前記複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報を取得する端末関連情報取得手段と、
前記端末関連情報取得手段で取得される端末関連情報を分析して雑音の発生源を検出する発生源検出手段と、を備え、
前記端末関連情報取得手段は、前記端末関連情報として、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到達する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、
前記発生源検出手段は、前記各端末の、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する、情報提供システム。
【請求項5】
複数の端末に対して、所定のコンテンツを提供する管理装置と、前記管理装置を基端として前記複数の端末に向けて延びるツリー状の伝送路と、前記ツリー状の伝送路の先端側に設けられる前記複数の端末と、を有する情報提供システムにおいて発生する雑音の発生源を検出する雑音発生源検出方法であって、
前記複数の端末から前記管理装置へ向けて送信される上り信号から、各端末に関連する端末関連情報を取得する端末関連情報取得ステップと、
前記端末関連情報取得ステップで取得される端末関連情報を分析して雑音の発生源を検出する発生源検出ステップと、を備え、
前記端末関連情報取得ステップでは、各端末が受信する受信信号に対する雑音比で表される受信信号対雑音比と、該各端末が前記管理装置へ向けて送信する送信信号の管理装置に到達する信号に対する雑音比で表される送信信号対雑音比と、を取得し、
前記発生源検出ステップでは、前記各端末からの、受信信号対雑音比と送信信号対雑音比との相関に基づいて雑音の発生源を絞り込むことで雑音の発生源を検出する、雑音発生源検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−81173(P2010−81173A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245538(P2008−245538)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509140618)株式会社JCN関東 (1)
【Fターム(参考)】