説明

離型シート

【課題】貫通孔を形成すべき樹脂シートに対して、高い寸法精度、位置精度で貫通孔を形成することが可能な離型シートを提供すること。
【解決手段】本発明の離型シートは、貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着され、貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成するのに用いる離型シートであって、基材フィルムと、基材フィルムの貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面とは反対の面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第1の樹脂層と、基材フィルムの貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第2の樹脂層とを有し、基材フィルムの熱機械分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される軟化温度Aが、180℃以上であり、第1の樹脂層の熱重量分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される10%質量減少温度Bが、180〜280℃であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸ガスレーザを直接照射して貫通孔をあける方法が知られている(例えば特許文献1参照)が、この方法では、加工屑の表層への付着、孔形状が円形でない、孔があかない等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−99596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、貫通孔を形成すべき樹脂シートに対して、高い寸法精度および位置精度で貫通孔を形成することが可能な離型シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記(1)〜(2)の本発明により達成される。
(1) 貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着され、前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成するのに用いる離型シートであって、
基材フィルムと、
前記基材フィルムの前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面とは反対の面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第1の樹脂層と、
前記基材フィルムの前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第2の樹脂層とを有し、
前記基材フィルムの熱機械分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される軟化温度Aが、180℃以上であり、
前記第1の樹脂層の熱重量分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される10%質量減少温度Bが、180〜280℃であることを特徴とする離型シート。
(2) 前記軟化温度Aが、180〜500℃である上記(1)に記載の離型シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、貫通孔を形成すべき樹脂シートに対して、高い寸法精度で貫通孔を形成することが可能な離型シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の離型シートの好適な実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
《離型シート》
まず、本発明の離型シートの好適な実施形態について説明する。
【0009】
本発明の離型シートは、貫通孔を形成すべき樹脂シートに熱圧着により仮着され、該樹脂シートに貫通孔を形成するのに用いるものである。貫通孔を形成すべき樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂シート、接着性樹脂シートなどの樹脂シートが挙げられる。
【0010】
図1は、本発明の離型シートの好適な実施形態を示す縦断面図である。
図1に示すように、離型シート1は、基材フィルム10と、基材フィルム10の貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面とは反対の面側に設けられた第1の樹脂層11と、基材フィルム10の貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面側に設けられた第2の樹脂層12とを備えている。
【0011】
本発明の離型シートは、基材フィルムの貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面とは反対の面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第1の樹脂層11と、基材フィルムの貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第2の樹脂層12とを有し、基材フィルムの熱機械分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される軟化温度Aが、180℃以上であり、第1の樹脂層の熱重量分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される10%質量減少温度Bが、180〜280℃であることに特徴を有している。
【0012】
上記のような特徴を有することにより、効率よく貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成することができるとともに、高い寸法精度および位置精度で貫通孔を形成することができる。
【0013】
以下、本発明の離型シートの各構成について詳細に説明する。
基材フィルム10は、第1の樹脂層11および第2の樹脂層12を支持する機能を有している。
【0014】
上述したように、この基材フィルム10は、熱機械分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される軟化温度Aが、180℃以上であるが、180〜500℃であるのがより好ましく、200〜500℃であるのがさらに好ましい。
【0015】
基材フィルム10を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスルホン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂等で構成されている。上述した中でも、加工のしやすさや、耐久性、耐熱性、コスト等の観点から、ポリエステル樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート)を用いるのが好ましい。
【0016】
また、基材フィルム10は、成膜時に延伸されたフィルムであることが好ましく、二軸延伸されたフィルムが好ましい。特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【0017】
基材フィルム10の平均厚さは、特に限定されないが、10〜60μmであるのが好ましく、12〜50μmであるのがより好ましい。
【0018】
第1の樹脂層11は、主として樹脂材料で構成されている。
上述したように、この第1の樹脂層11は、熱重量分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される10%質量減少温度Bが、180〜280℃である。
【0019】
このように第1の樹脂層11は、熱重量分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される10%質量減少温度Bが、180〜280℃であるが、190〜270℃であるのがより好ましく、200〜260℃であるのがさらに好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【0020】
第1の樹脂層11を構成する樹脂材料としては、基材フィルム10との密着性に優れ、かつ、ロール状で保管された際に、第2の樹脂層12とブロッキングを生じないものであれば、特に限定されないが、アルキド樹脂またはエポキシ樹脂を主剤として含む材料で構成されているのが好ましい。さらに、第1の樹脂層11を構成する樹脂材料がアルキド樹脂またはエポキシ樹脂である場合、アルキド樹脂またはエポキシ樹脂は架橋されていることが好ましい。
【0021】
アルキド樹脂としては、特に限定されず、従来アルキド樹脂として知られている公知のものの中から適宜選択して用いることができる。このアルキド樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物または不乾性油脂肪酸で変性したものである不転化性アルキド樹脂、および二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性アルキド樹脂があり、本発明においては、いずれも使用することができる。
【0022】
アルキド樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールを用いることができ、これのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
また、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン− 無水マレイン酸付加物、テルペン−無マレイン酸付加物、ロジン− 無水マレイン酸付加物等のディールズ・アルダー反応による多塩基酸等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
一方、変性剤としては、例えば、オクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいは、ヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油およびこれらの脂肪酸等を用いることができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明においては、アルキド樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂エステル等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。さらに、分子内に開環反応により生じる水酸基を有しているエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。このようなエポキシ樹脂を選択することにより、後述する架橋剤との反応性を向上させることができ、架橋後の皮膜硬度が上昇し、基材フィルムとの密着性を向上させることができる。
【0027】
上記エポキシ樹脂、アルキド樹脂等の主剤を架橋させるために用いられる架橋剤としては、特に制限は無く、公知のもの、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂の他、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂の中から適宜選択して用いることができる。これらの中でも、エポキシ樹脂またはアルキド樹脂との反応性や基材との密着性の点からアミノ樹脂が好ましい。アミノ樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するメラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−メラミン樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド-ホルムアルデヒド樹脂、エチレン尿素-ホルムアルデヒド樹脂などを挙げることができる。これらの架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記主剤100質量部に対する架橋剤の配合割合は、10〜200質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。
【0029】
上記架橋剤に加えて、所望により塩酸、p-トルエンスルホン酸などの公知の酸性触媒を用いることができる。
【0030】
このような第1の樹脂層11中には、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線防止剤などを含んでいてもよい。
【0031】
また、第1の樹脂層11中には、実質的にシリコーン化合物を含まないことが好ましい。これにより、本発明の離型シートをロール状にして保管した際に、第1の樹脂層11から第2の樹脂層12の表面にシリコーン化合物が移行することが防止される。その結果、接着性樹脂シートなどの樹脂シートを用いた加工製品に発生する接着不良などの不具合を防止することができる。
【0032】
なお、実質的にシリコーン化合物を含まないとは、シリコーン化合物の量が、好ましくは、500μg/m2以下、より好ましくは、100μg/m2以下のことをいう。
【0033】
第1の樹脂層11中における樹脂材料の含有量は、60〜100質量%であるのが好ましく、70〜100質量%であるのがより好ましい。
【0034】
第1の樹脂層11の平均厚さは、0.1〜5.0μm程度であるのが好ましく、0.3〜3.0μm程度であるのがより好ましい。これにより、効率よく貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成することができるとともに、高い寸法精度および位置精度で貫通孔を形成することができる。
【0035】
第2の樹脂層12は、貫通孔の形成に供される貫通孔を形成すべき樹脂シートと接する層であり、主として、樹脂材料で構成された層である。
【0036】
この第2の樹脂層12は、離型シート1と貫通孔を形成すべき樹脂シートとの接合(仮着)に寄与する層で、具体的には、熱圧着することにより、離型シート1と貫通孔を形成すべき樹脂シートとを接合する機能を有する層である。
【0037】
上述したような第2の樹脂層12を構成する樹脂材料としては、基材フィルム10との密着性に優れ、かつ、貫通孔を形成すべき樹脂シートとの適度な密着性および適度な離型性を備えたものであれば、特に限定されないが、アルキド樹脂またはエポキシ樹脂を含む材料で構成されているのが好ましい。さらには、第2の樹脂層12を構成する樹脂材料がアルキド樹脂またはエポキシ樹脂である場合、アルキド樹脂またはエポキシ樹脂は架橋されていることが好ましい。これにより、熱圧着によって、貫通孔を形成すべき樹脂シートと容易に接合させることができるとともに、使用後には容易に貫通孔を形成すべき樹脂シートから剥がすことができる。また、離型シート1の耐熱性および耐溶剤性をより高いものとすることができる。
【0038】
上記アルキド樹脂またはエポキシ樹脂を含む材料としては、第1の樹脂層11を構成する樹脂材料として述べたものと同様のものが使用できる。
【0039】
このような第2の樹脂層12中には、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線防止剤などを含んでいてもよい。
【0040】
また、第2の樹脂層12中には、実質的にシリコーン化合物を含まないことが好ましい。これにより、本発明の離型シートから、該離型フィルムと接合される接着性樹脂シートなどの樹脂シートにシリコーン化合物が移行することが防止される。その結果、接着性樹脂シートなどの樹脂シートを用いた加工製品に発生する接着不良などの不具合を防止することができる。
【0041】
また、第2の樹脂層12を構成する樹脂材料としては、第1の樹脂層11の熱膨張率に近い値が得られる樹脂材料を用いるのが好ましく、同種材料でも異種材料でもよいが同種材料を用いるのが好ましい。これにより貫通孔を形成すべき樹脂シートに離型シートを熱ラミネートした際に離型シートの反りを防止することができ、孔開けの位置精度、寸法精度をより高いものとすることができる。
【0042】
第2の樹脂層12中における樹脂材料の含有量は、60〜100質量%であるのが好ましく、70〜100質量%であるのがより好ましい。
【0043】
第2の樹脂層12の平均厚さは、0.1〜5.0μm程度であるのが好ましく、0.3〜3.0μm程度であるのがより好ましい。これにより、効率よく貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成することができるとともに、高い寸法精度および位置精度で貫通孔を形成することができる。
【0044】
このように基材フィルム10の両面に、第1の樹脂層11および第2の樹脂層12をそれぞれ設けることにより、薄い基材であってもその耐熱性を向上させることができ、寸法安定性に優れた離型シートとすることができる。
【0045】
《離型シートの製造方法》
次に、上述したような離型シートの製造方法について説明する。
【0046】
まず、基材フィルム10を準備する(基材フィルム準備工程)。
次に、基材フィルム10の一方の面に第1の樹脂層11を形成するための第1の塗工液を、例えばグラビアコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター等の公知の塗工装置を用いて塗工し、80〜150℃程度の温度で数十秒〜数分間加熱硬化させることにより、第1の樹脂層11を形成する(第1の樹脂層形成工程)。
【0047】
第1の塗工液中には、上述したような第1の樹脂層11を構成する材料および溶剤を含んでいる。
【0048】
第1の塗工液の固形分濃度は、5〜50質量%であるのが好ましく、10〜40質量%であるのがより好ましい。これにより、第1の塗工液の塗工性を高いものとすることができる。
【0049】
第1の塗工液に用いる溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0050】
次に、基材フィルム10の他方の面に第2の樹脂層12を形成するための第2の塗工液を、例えばグラビアコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター等の公知の塗工装置を用いて塗工し、80〜150℃程度の温度で数十秒〜数分間加熱硬化させることにより、第2の樹脂層12を形成する(第2の樹脂層形成工程)。これにより、離型シート1(本発明の離型シート)が得られる。
【0051】
第2の塗工液は、上述したような第2の樹脂層12を構成する材料および溶剤を含んでいる。
【0052】
第2の塗工液中に含まれる樹脂材料は、前述した第1の塗工液中に含まれる樹脂材料と同じものを用いるのが好ましい。これにより、最終的に得られる離型シート1の熱による反り等を容易に防止することができ、貫通孔を形成すべき樹脂シートに、より高い寸法精度、位置精度で貫通孔を形成することができる。
【0053】
また、第2の樹脂層12を形成する基材フィルム表面のJIS−K6768による濡れ指数が30mN/m以上であるのが好ましく、40〜70mN/mであるのがより好ましい。
【0054】
第2の塗工液の固形分濃度は、5〜50質量%であるのが好ましく、10〜40質量%であるのがより好ましい。これにより、第2の塗工液の粘度をより好適なものとすることができ、第2の塗工液の塗工性をより高いものとすることができる。
【0055】
第2の塗工液に用いる溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0056】
以上、本発明の離型シートおよびその製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0057】
例えば、前述した実施形態では、第1の樹脂層を形成した後に、第2の樹脂層を形成するものとして説明したが、これに限定されず、第2の樹脂層を先に形成してもよい。
【0058】
《レーザ加工方法》
本発明の離型シートを用いてレーザ加工を行う方法としては、本発明の離型シートを、貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着する工程と、レーザを照射することにより、前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成する工程とを含むレーザ加工方法が挙げられる。
【0059】
具体的には、貫通孔を形成すべき樹脂シートの両面に、本発明の離型シートを通常50〜150℃の温度で加熱ラミネートして仮着させる工程と、炭酸ガスレーザなどを用いて貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成する工程とを含むレーザ加工方法である。
【0060】
このようなレーザ加工方法により、高い寸法精度および位置精度で貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成することができる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]離型シートの作製
【0062】
(実施例1)
主剤としての水酸基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル樹脂溶液(固形分濃度60質量%):100質量部に、架橋剤としてのメチル化メラミン樹脂(固形分濃度100質量%):40質量部と、カーボン顔料の分散液(固形分濃度18質量%):15質量部と、触媒としてのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液(固形分濃度50質量%)を5質量部添加攪拌し、固形分濃度15質量%の第1の塗工液を調製した。
【0063】
一方、主剤としての水酸基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル樹脂溶液(固形分濃度60質量%):100質量部に、架橋剤としてのメチル化メラミン樹脂(固形分濃度100質量%):40質量部と、触媒としてのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液(固形分濃度50質量%)5質量部とを添加し、トルエン/MEK混合溶媒(トルエン:MEK=50質量%:50質量%)で希釈、混合して固形分濃度30質量%の第2の塗工液を調製した。
【0064】
次に、基材フィルムとしての厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(フィルム表面の濡れ指数:43mN/m)に、マイヤバー#4を用いて第1の塗工液を塗布し、150℃で40秒間乾燥させて、厚さ0.8μmの第1の樹脂層を形成した。
【0065】
次に、PETフィルムの第1の樹脂層を形成した面とは反対に、第2の塗工液を、マイヤバー#4を用いて塗布し、150℃で40秒間乾燥させて、厚さ0.8μmの第2の樹脂層を形成した。
以上の工程により、離型シートを得た。
【0066】
(実施例2)
主剤としてのステアリン酸変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度60質量%):100質量部に、架橋剤としてのメチル化メラミン樹脂(固形分濃度100%):40質量部と、触媒としてのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液(固形分濃度50質量%)10質量部とを添加し、トルエン/MEK混合溶媒(トルエン:MEK=50質量%:50質量%)で希釈、混合して固形分濃度30質量%の第2の塗工液を調製した以外は前記実施例1と同様にして離型シートを作製した。
【0067】
(実施例3)
第1の塗工液中における主剤、架橋剤の含有量等を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして離型シートを作製した。
【0068】
(実施例4)
基材フィルムとして、厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えて、厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムを用い、実施例1の第1の塗工液と実施例2の第2の塗工液とを用いた以外は、前記実施例1と同様にして離型シートを作製した。
【0069】
(比較例1)
基材フィルムとして、厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えて、厚さ30μmのポリプロピレンフィルムを用いた以外は、前記実施例1と同様にして離型シートを作製した。
【0070】
(比較例2)
第1の樹脂層を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして離型シートを作製した。
【0071】
(比較例3)
第2の樹脂層を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして離型シートを作製した。
【0072】
上記各実施例および各比較例における、第1の樹脂層および第2の樹脂層の構成成分およびその含有量等を表1に示した。
【0073】
また、上記各実施例および各比較例で用いた、基材フィルムの軟化温度Aを、熱機械分析装置(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)を用いて測定し、次いで、第1の樹脂層の10%質量減少温度Bを、熱重量分析装置(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)を用いて測定し、基材フィルムの軟化温度A、第1の樹脂層の10%質量減少温度Bを表2に示した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
[2]評価
[2−1]離型シートのラミネート後の反りの評価
各実施例および比較例で作製した離型シートを、貫通孔を形成すべき樹脂シートとしての接着性樹脂シート(繊維集合シートに半硬化エポキシ樹脂が含浸したもの)に、第2の樹脂層側が接着性樹脂シートに接するように、130℃にて19.6Nローラーでラミネートした。
【0077】
離型シートをラミネートした接着性樹脂シートを目視により観察し、反りの発生の有無を評価した。
【0078】
反りが生じていないか許容範囲であるものを合格「○」と評価し、反りが大きく生じているものを不合格「×」と評価した。
【0079】
[2−2]剥離力評価
[2−1]で作製した各実施例および比較例の離型シートをラミネートした接着性樹脂シートから、30mm幅×150mm長の試験片をそれぞれ採取した。次に、接着性樹脂シートと離型シートとの剥離力をJIS−Z0237に準拠して、23℃50%RHの雰囲気下で、引張試験機を用いて離型シートを180度方向に100mm/分の速度で剥離させることにより測定した。
【0080】
上記で測定された剥離力が50mN/30mm以上になると、接着性樹脂シートの凝集破壊が生じるおそれがあるため、50mN/30mm以上を不合格「×」、50mN/30mm未満を合格「○」と評価した。
【0081】
[2−3]貫通孔を形成すべき樹脂シートに形成した貫通孔の寸法精度
各実施例および各比較例で作製した離型シートを、接着性樹脂シートに、第2の樹脂層側が接着性樹脂シートに接するように、130℃にて19.6Nローラーでラミネートした。
【0082】
離型シートの第1の樹脂層側から、炭酸ガスレーザを用いて、レーザの照射を行って貫通孔(目標値:φ100μm)を10個設け、接着性樹脂シートに形成した各貫通孔の実寸を測定し、平均値を求めた。
【0083】
測定した実寸の目標値からのずれ(%)を算出し、以下の基準に従い評価した。
◎:目標値からのずれが10%以下であった。
○:目標値からのずれが10%よりも大きく、20%以下であった。
△:目標値からのずれが20%よりも大きく、30%以下であった。
×:目標値からのずれが30%よりも大きかった。
これらの結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
表3から明らかなように、本発明の離型シートでは、貫通孔を形成すべき樹脂シートに熱ラミネートを行っても反りが生ぜず、貫通孔を形成すべき樹脂シートからの剥離性が良好であり、さらに、高い寸法精度および位置精度で貫通孔を形成することが可能であった。これに対して、比較例では全てを満足するような結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0086】
1 離型シート
10 基材フィルム
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着され、前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに貫通孔を形成するのに用いる離型シートであって、
基材フィルムと、
前記基材フィルムの前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面とは反対の面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第1の樹脂層と、
前記基材フィルムの前記貫通孔を形成すべき樹脂シートに仮着される面側に設けられ、主として樹脂材料で構成された第2の樹脂層とを有し、
前記基材フィルムの熱機械分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される軟化温度Aが、180℃以上であり、
前記第1の樹脂層の熱重量分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される10%質量減少温度Bが、180〜280℃であることを特徴とする離型シート。
【請求項2】
前記軟化温度Aが、180〜500℃である請求項1に記載の離型シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−37036(P2011−37036A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183879(P2009−183879)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】