説明

離型フィルム

【課題】離型層表面が平滑であり、セラミックグリーンシートの作製に好適な離型フィルムに関する。
【解決手段】二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型層を有する離型フィルムであって、該離型フィルムがポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含む水系塗布液を塗布した後、少なくとも1方向に延伸することにより得られるものであり、該離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)が1〜7nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関する。特に、離型層表面が平滑であり、セラミックグリーンシートの作製に好適な離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸配向ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムが積層セラミックコンデンサー、セラミック基板等のセラミック成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサーの小型化・大容量化が進むに伴い、セラミックグリーンシートの厚みも益々薄膜化する傾向にある。セラミックグリーンシートのさらなる薄膜化に伴い、特に厚みが1μm以下の薄膜グリーンシートを成型しようとした場合、離型フィルムの離型層表面に粗大突起があると、離型フィルム上にセラミックスラリーを塗布する時にスラリーのはじき、あるいは、ピンホールなどの欠点が発生し、グリーンシート剥離時にはグリーンシート破断等の不具合を生じる。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1、特許文献2では、実質的に粒子を含まない平滑な二軸配向ポリエステルフィルム基材を用いる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−305806号公報
【特許文献2】特開2007−62179号公報
【0004】
一方、二軸配向ポリエステルフィルムの製造時に、ポリエステルフィルムの片面に離型剤を塗布し、乾燥した後少なくとも1方向に延伸、熱処理することによって形成された離型層を設ける方法(いわゆるインラインコート法)が検討されている。例えば、アクリル−シリコーン系ポリマーを塗布積層する方法(特許文献3、4、5)、ポリエステルフィルム表面に長鎖アルキル基含有樹脂を塗布積層する方法(特許文献6、7)、無溶剤系または有機溶剤系のポリシロキサン系塗剤を塗布積層する方法(特許文献8、9、10)が提案されている。
【特許文献3】特開平8−197687号公報
【特許文献4】特開平8−197688号公報
【特許文献5】特開平8−198987号公報
【特許文献6】特開2003−300283号公報
【特許文献7】特開2006−22136号公報
【特許文献8】特開2003−192987号公報
【特許文献9】特開2003−292894号公報
【特許文献10】特開2003−292895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2の方法では、オフライン工程において離型層を積層するため、製膜工程で巻き取られた二軸配向ポリエステルフィルムロールを再度巻きだす必要がある。そのため、工程数の多さから、後加工工程の環境によっては、異物がフィルムロールに混入する可能性が高くなり、セラミックグリーンシートを作製する際に、異物に由来するピンホールが発生しやすいという問題があった。さらに、オフラインコートではロールの巻きだし、離型剤塗布後、熱風により乾燥されるが、近年の生産性の向上に対応して、より高温での乾燥処理がなされることが予想される。このような状況においては、乾燥工程において基材フィルムの熱収縮により平面性が低下し、平滑な離型層を得ることが困難になる場合があった。
【0006】
一方、特許文献3〜10にようにインラインコート法により離型層を設ける方法が開示されているが、アクリル−シリコーン系ポリマー、長鎖アルキル基含有樹脂からなる離型層ではセラミックとの剥離性に乏しい場合がある。また、無溶剤系のポリシロキサン系塗剤では塗布液の粘度が高いため塗布斑が生じやすく、平滑な離型層を得ることが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の技術の問題点に鑑み、表面が平滑な離型層を有し、剥離性が良好な、薄層セラミックグリーンシートの作製に好適な離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
すなわち、第一の発明は、二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型層を有する離型フィルムであって、該離型フィルムが、ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含む水系塗布液を塗布した後、少なくとも1方向に延伸することにより得られるものであり、該離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)が1〜7nmである、離型フィルムである。
また、第二の発明は、該離型フィルムの離型層の反対側表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa2)が20nm以上40nm以下である前記離型フィルムである。
また、第三の発明は、該二軸配向ポリエステルフィルムが、離型層と積層する層(A層)と、離型層とは反対側の最外層(B層)の少なくとも2層を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、A層は粒子を実質的に含有せず、B層は粒子を0.5〜1.5質量%含有する前記離型フィルムである。
また、第四の発明は、離型層の反対面に粒子と樹脂成分とを含む塗布層を有する前記離型フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の離型フィルムは、離型層表面が平滑であり、セラミックとの剥離が良好である。よって、本願発明の好ましい実施態様として、本願離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートの作製した場合に、粗大突起によるピンホールの発生が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
[基材フィルム]
本発明の離型フィルムの基材を構成するポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートのモノマー単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。
【0012】
上記ポリエステルフィルムの固有粘度は0.4〜0.8dl/gが好ましく、0.5〜0.7dl/gがより好ましい。固有粘度が0.4dl/g未満の場合、延伸工程で破断することが多くなるため好ましくない。逆に、0.8dl/gを超える場合、破断低減効果が飽和するばかりでなく、押出時の負荷が大きくなるため好ましくない。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0013】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが20〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは25〜38μmである。フィルムの厚みが20μmよりも薄い場合、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形しやすいので好ましくない。逆に、フィルムの厚みが50μmよりも厚いと、使用後に廃棄するフィルムの量が増加してしまい環境負荷が増大してしまい、好ましくない。
【0014】
本発明の離型フィルムは、超平滑な離型層表面を有するフィルムであるが、そのような平滑な表面を有する場合、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や耐摩耗性、耐擦傷性などが悪くなる場合がある。そのため、フィルムとしての加工性の点から、離離型層の反対側表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa2)が、20nm以上40nm以下であることが好ましい。SRa2の上限は38nmがより好ましく、35nmがさらに好ましい。
【0015】
離型層の反対面のSRa2が20nm以上である場合、フィルムの滑り性がよく、フィルムがロール上に積層されても空気の抜けがよく、フィルムの加工性の点で好適である。離型層の反対面のSRa2が40nm以下である場合、フィルムロールとして巻き取った際、離型層表面側への粗大突起による転写による、離型層表面の柚肌状微小凹凸(欠点)の形成が抑制されて好ましい。
【0016】
離型層の反対面のSRa2を上記範囲にするためには、例えば、後述のようにポリエステルに添加する粒子の含有量及び/又は平均粒径及び/又は粒度分布等によって制御したり、もしくは、離型層の反対面に粒子および樹脂成分を含む塗布層を積層することによりに制御することができる。
【0017】
本発明の離型フィルムの基材を構成するポリエステルフィルムは、単層、もしくは2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いることができる。後者の場合、離型層を積層する側の層をA層、その反対面を形成する最外層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。
【0018】
本発明の離型フィルムの基材を構成するポリエステルフィルムの好ましい実施態様としては、離型層を積層する層(A層)と、離型層とは反対側の最外層(B層)の少なくとも2層を有する積層ポリエステルフィルムにおいて、A層には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。
【0019】
この「粒子を実質的に含有しない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0020】
また、B層については、SRa2を上記範囲にするために、B層を形成するポリエステル樹脂に粒子を添加することが好ましい。B層を形成するポリエステル樹脂に添加する粒子としては、不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子を用いることができる。無機粒子としては、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。これらの粒子を単独若しくは複数組み合わせて用いることが好ましい。また、フィルムの透明性の点では、ポリエステルと屈折率の近いシリカ粒子または炭酸カルシウム粒子が好適である。
【0021】
B層に添加する粒子の濃度としては、0.5〜1.5質量%含有させることが好ましく、特に好ましくは0.6〜1.2質量%である。粒子濃度が0.5質量%未満では、離型層の反対面のSRa2を20nm以上とすることは困難となり、滑り性が低下する場合がある。また、粒子濃度が1.5質量%より多いと、離型層表面に粗大粒子によるピンホールが発生しやすくなる場合がある。
【0022】
B層に添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。不活性粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、離型層の反対面のSRa2を20nm以上とすることは困難となり、滑り性が低下する場合がある。また、平均粒子径が2.0μmより大きいと離型層表面に粗大粒子によるピンホールが発生しやすくなる場合がある。
【0023】
なお、本発明の平均粒子径は、後述の実施例に記載の測定により計測される。
また、製膜後のフィルムに含有される粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による計測することもできる。この場合は、電子顕微鏡写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を求める。
【0024】
B層には平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。いずれにしても、粒子の平均粒径、および総含有量が前記の範囲とすればよい。
【0025】
本発明の好ましい実施態様としては、B層に添加する粒子としてシリカ粒子および/または炭酸カルシウム粒子を用いる。平均粒子径の異なる2種類の粒子を用いる場合、平均粒子径の大きい方(P1)の濃度を(a)質量%、平均粒子径の小さい方(P2)の濃度を(b)質量%とすると、(a)/(b)は1/10〜1/1であることが好ましく、1/8〜1/2であることがさらに好ましい。これにより、P1は主として耐ブロッキング性を付与し、P2は主として耐スクラッチ性を付与することになり、透明性を損なわずに高い耐ブロッキング性、耐スクラッチ性を得ることができる。
【0026】
また、離型層が設けられる側の層(A層)の厚み比率は、全層厚みの10%以上50%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがさらに好ましい。20%未満では、離型層が設けられる層の反対側の層に含まれる粒子の影響を、フィルム内部から受けやすくなり、三次元中心面平均表面粗さ(SRa2)を、上記の条件を満足することが難しくなり好ましくない。全層厚みの50%より厚くすると、再生原料の使用比率が低くなり、経済的でないため好ましくない。
【0027】
さらに、離型フィルムロールのコストを下げるために、3種3層(A/C/Bの積層構造)の積層フィルムの、芯層(C層)や裏層(B層)に50〜90質量%のフィルム屑やペットボトルからの再生原料を使用することも好ましいが、この場合でも裏層(離型層のの反対面を形成する層)(B層)の滑剤の種類・量・粒径やフィルムの三次元中心面平均表面粗さ(SRa2)などは、上記の条件を満足することが重要である。
【0028】
一方、本発明の離型フィルムの基材として実質的に粒子を含まない単層のポリエステルフィルムを用いる場合、もしくは、3層以上の積層ポリエステルフィルムについて最表層に実質的に粒子を含まないポリエステルからなる層を用いる場合は、離型面の反対側の面に粒子および樹脂を含む塗布液を塗布することにより、前記SRa2を20nm以上40nm以下に調整することができる。
【0029】
塗布層を構成する樹脂としては、ポリエステルフィルムとの接着性の点から、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂のうち少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分とする」とは塗布層を構成する樹脂成分の50%以上を占めることをいう。
【0030】
上記塗布層を設ける塗布液に用いる溶剤は、水の他にエタノール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が50質量%未満となるまで混合してもよい。有機溶剤の添加量が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比較して塗布膜の外観向上の効果がある。50質量%を越えると、溶剤の蒸発速度が速く塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす恐れがあり、さらには火災などの危険性も考えられる。
【0031】
上記塗布層を設ける塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
【0032】
上記塗布層には、前記SRa2を上記範囲に制御するために、適宜、前記B層に添加する粒子の記載に準じて、粒子の含有量及び/又は平均粒径及び/又は粒度分布等を選択する。上記塗布層中の粒子の含有量としては、固形分濃度として0.05〜30質量%、具体的には0.08〜20質量%とすることが好ましい。また、上記塗布層中の粒子の平均粒子径としては、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.3μm以上1.0μm以下が特に好ましい。かかる範囲内で適宜選択することにより、前記SRa2を上記範囲に制御することができる。
【0033】
上記塗布層の最終的な乾燥後塗布量は、好ましくは0.01〜0.20g/m、より好ましくは0.05〜0.10g/mに管理する。塗布量が0.01g/m未満であると、前記SRa2を20nm以上にすることが困難になる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、透明性が低下し、欠点検査が困難になる場合がある。
【0034】
上記塗布層の塗布方法は離型層と同時に塗工することが望ましいが、離型層形成前にあらかじめ塗布および乾燥処理を行ってもかまわない。また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0035】
本発明の離型フィルムの基材を構成するポリエステルフィルムは、機械的強度、耐薬品性の点から二軸配布向ポリエステルフィルムであることが必要である。ポリエステルフィルムの延伸方法としては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することができる。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。
【0036】
[離型層]
本発明の離型フィルムは、離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)が、1nm以上7nm以下である。離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)の上限は、より好ましくは6nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。
【0037】
離型層表面に微小な凹凸が存在し、SRa1が、7nmを以下である場合、薄膜セラミックグリーンシート成型においてピンホール発生などが少なく好適である。また、SRa1は、小さい程好ましいが、フィルムの厚みむら、離型剤の塗布むら、測定時のフィルムのうねり等を考慮すると、1nmが下限である。
【0038】
本発明において、ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含む水系塗布液を塗布した後、少なくとも1方向に延伸することにより、離型層を設ける。本方法では、オフラインにより離型層を設ける方法と比較して熱処理工程が少なくすむため、セラミックコンデンサー製作工程において加熱による平面性の悪化の懸念が少ないという利点がある。また、総工程数の少なさから異物の入り込みが抑えられるため、異物由来のピンホールの発生を抑制できるほか、その工程の少なさからコストの低減にもつながる。
【0039】
塗布液を塗工するには、「最新コーティング技術の進歩」(原崎勇次著、(株)総合技術センター発行)に記載されている装置を用いることができる。水性塗液の塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用でき、例えばグラビアコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて適用することができる。
【0040】
本発明における離型剤は、セラミックとの剥離性の点から、硬化型シリコーン樹脂を使用する。硬化型シリコーン樹脂としては、熱付加型シリコーン、熱縮合型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン、電子線硬化型シリコーンが挙げられる。熱付加反応型としては分子両末端あるいは両末端及び側鎖にビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンと、メチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させたものが挙げられる。熱縮合型としては、両末端シラノール官能性ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはメチルメトキシシロキサンとを有機錫系触媒の存在下で反応させたものが挙げられる。また、紫外線硬化型はアルケニル基とメルカプト基を含有するポリオルガノシロキサンに光重合剤を加えたもの、(メタ)アクリル基を含有するポリオルガノシロキサンに光重合剤を加えたもの、エポキシ基を含有するポリオルガノシロキサンにオニウム塩光開始剤を添加したものなどが例示され、電子線硬化型はラジカル重合性基含有ポリオルガノシロキサンが挙げられる。本発明では、工程及び設備上の観点から上記の硬化型シリコーン樹脂を使用することができる。
【0041】
また、塗布液の溶媒としては水系溶媒を用いる。この時、使用する硬化型シリコーンは水に溶解する水溶性硬化型シリコーン樹脂、あるいは水にエマルジョンまたはサスペンジョンとして安定的に分散する水分散性硬化型シリコーン樹脂が好ましい。ここでエマルジョンとは、水溶媒中で一粒の粒子の周囲に乳化剤分子が疎水基を粒子側に、親水基を水溶媒側に配位してミセルを形成して存在する状態をいい、サスペンジョンとは、水溶媒中で一粒の粒子がその表面に存在する親水基の作用で水溶媒中に安定して分散する状態をいう。
【0042】
本発明において、SRa1を上記範囲にするためには、エマルジョンタイプの水系硬化型シリコーンが好適である。水系のエマルジョンタイプが好適であることについての理由はよくわかっていないが、乾燥工程において分散媒が蒸発することによりエマルジョンが崩壊し、離型層面上で均一で流動性のある塗膜が形成された上で、延伸硬化することで、平滑な離型層面が得られるものと推測される。

【0043】
上記塗布液に使用する溶媒としては、水が好ましいが、水の他にエタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を配合してもよい。さらに、アルコール類を使用する場合、塗布液全量に対するアルコール類の割合は、好ましくは50質量%未満あり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。アルコール類の塗布液全量に対する配合割合が50質量%以上であれば、塗布液の粘度が上昇により塗布性が低下したり、エマルジョンが経時的にゲル化したりするために、離型層のSRa1を上記範囲に制御することが難しい。また、アルコール類の配合割合が、5質量%以下であれば、塗布液の乾燥に時間を要するため、乾燥むらが生じやすく、離型層のSRa1を上記範囲に制御することが難しい。
【0044】
硬化型シリコーンとして熱付加型シリコーンを用いる場合、塗布液には、硬化触媒を添加することが好ましい。フィルムの延伸前、もしくは延伸中で離型層の硬化反応が開始すると、硬化した離型層が延伸により塗膜に亀裂が生じ、剥離性が低下する場合がある。そのため、硬化触媒を添加することで、工程後の熱固定処理において付加重合反応が開始するように制御することが好ましい。付加反応を促進する触媒としては、具体例は、白金系化合物触媒であり、例えば、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とメチルビニルシロキサンとの錯体、ロジウム化合物、パラジウム化合物が用いられる。これらの白金系化合物触媒の添加量は、通常、硬化型シリコーン成分1万質量部に対して白金系金属として0.1〜500質量部の範囲である。
【0045】
塗布液には、性能向上のために、複数の他の樹脂等を塗布液に添加してもよい。さらに、塗布液中には、レベリング性、ハンドリング性、帯電防止性、抗菌性など、他の機能性をフィルムに付与するために、界面活性剤、無機及び/又は有機粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの添加剤を含有させることができる。
【0046】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、延伸および熱処理後の離型層の乾燥後塗布量が0.02〜0.2g/mであることが好ましく、0.05〜0.15g/mであることがさらに好ましい。乾燥後塗布量が0.02g/m未満であると、剥離性能が低下しやすい。また、乾燥後塗布量が0.2g/mを超えると、ポリエステルフィルムとの密着性に必要な硬化時間が長くなり、生産上不都合となりやすい。
【0047】
本発明で水系塗布液を塗布するポリエステルフィルムとは、例えばポリエステルを熱溶融し、そのままフィルム状とした未延伸フィルム;未延伸フィルムを縦方向(長手方向)または横方向(幅方向)の何れか一方に延伸した一軸延伸フィルム; 縦方向或いは横方向の一軸延伸フィルムを横方向或いは縦方向に逐次延伸し、更に延伸可能な二軸延伸フィルム; または未延伸フィルムを縦方向および横方向の二方向に同時延伸し、更に延伸可能な二軸延伸フィルムなどを挙げることができる。なかでも、未延伸フィルムを縦方向(長手方向)に延伸した一軸延伸フィルムに水系塗布液を塗布するのが好ましい実施態様である。塗布液を塗布する前に、フィルムをコロナ処理したり、プラズマ処理してもよいが、このような表面処理を施さなくてもよい。
【0048】
一軸延伸フィルムに水系塗布液を塗布する場合、その後の横延伸により塗布後の表面が引き伸ばされるため、平滑な離型層を形成する上で好ましい。しかし、未延伸フィルムを縦方向(長手方向)に延伸した一軸延伸フィルムに水系塗布液を塗布する場合、横延伸完了前に硬化シリコーンの硬化反応が完遂すると、延伸により硬化した離型層にヒビ割れが生じて、離型層表面に粗大突起が生じやすい。そのため、硬化シリコーンの硬化反応は、横延伸完了後に行われることが好ましく、特に、熱固定工程において硬化反応が行われることが好ましい。
【0049】
未延伸フィルムを縦方向(長手方向)に延伸した一軸延伸フィルムに水系塗布液を塗布する場合、横延伸倍率は2.5〜5.0倍が好ましく、3.0〜4.5倍がより好ましい。横延伸倍率が2.5倍に満たない場合は、塗布層の延展性の低下により、表面の平滑性が低下する場合がある。また、延伸温度は、80〜140℃が好ましく、90℃〜130℃がより好ましい。延伸温度が140℃を超えると、硬化反応により離型層が硬化し、延伸によるひび割れが生じる場合がある。延伸後、160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0050】
本発明の離型フィルムの基材となるポリエステルフィルムの製造方法について3種3層(A/C/Bの積層構造)の場合は、例えば以下のように行う。
【0051】
A層用、B層用、C層用それぞれのPETのペレットを乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、3台の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、離型面側を構成するフィルム層(A層)、反離型面側を構成するフィルム層(B層)中間層を構成するフィルム層(C層)を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、溶融押し出しの際、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。
【0052】
溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。
【0053】
本発明の離型フィルムはインラインコート法により離型層を設けるため、長尺のロール体としても安定的な厚みを得ることができる。本発明の離型フィルムロールの幅は、特に限定しないが、200mm以上3000mmであることが好ましい。幅が200mm未満では、作業量が増大して生産性に支障をきたし、また輸送のための荷材・包材の無駄が多くなる。逆に、幅が3000mmを超えると、ニキビ状の凸状欠点やシワのない、フィルムロールを生産することが困難となり、好ましくない。
【0054】
また、本発明の離型フィルムロールの長さは、特に限定しないが、長さ1000〜12000mであることが好ましい。長さが000m未満では、作業量が増大して生産性に支障をきたし、また、輸送のための荷材・包材の無駄が多くなる。逆に、長さが12000mを超えると、巻きずれなどの問題が発生し易くなり、好ましくない。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を用いて更に詳細に本発明の説明をするが、本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。
【0056】
(1)耐ピンホール性の評価
【0057】
(セラミックスラリーの調製)
下記の材料からなる組成物を攪拌・混合し、2.0mm径のガラスビーズを分散媒として用いてペイントシェーカーで2時間分散し、セラミックスラリーを得た。
・トルエン 22.5質量%
・エタノール 22.5質量%
・チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT−1 ) 50質量%
・ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBH−3 ) 5質量%
【0058】
(セラミックグリーンシートの作製)
得られた離型フィルムサンプルの離型層の表面にアプリケーターを用いて乾燥後のセラミック厚さが4μmになるようにコートし、90℃で2分間乾燥してセラミックグリーンシートを得た。
【0059】
(セラミックグリーンシートのピンホール評価)
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域について100cmの範囲でセラミックスラリー塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を全てのサンプルについて観察し、下記基準で目視判定した。
A:ピンホールなし。
B:ピンホールはほとんどなし。
C:ピンホールが多数あり。
【0060】
(2)セラミック剥離性の評価
上記セラミックグリーンシートを幅3cm、長さ10cmにカットし、セラミックシート面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニットー31B)を貼り、ピール法(剥離速度:500mm/分、T型剥離)によりセラミックシートを離型フィルムから剥離したときの剥離後のセラミックシート全面を目視観察した場合、セラミックシートの状態について、下記基準により評価し、セラミック剥離性とした。
A:セラミックシートの破損が5回の試験で全くなかった場合
B:5回の試験で1回でもセラミックシートの一部に破損があった場合
C:5回の試験で1回でもセラミックシートが完全に破れ破損があった場合
【0061】
(3)粒子の平均粒径
粒子粉体をエチレングリコールスラリー中に高速撹拌によって十分に分散させ、得られたスラリー中の粒度分布を、光透過型遠心沈降式粒度分布測定機(島津製作所社製、商品名「SRA−CP3型」)を用いて測定し、この分布における積算50%の値を読み取って平均粒径(μm)とした。なお、平均粒径の測定は、1種類ずつ測定した。
【0062】
(4)離型層表面及びその反対表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)
50mm×50mmの面積の離型フィルムを切り出し、三次元表面形状測定装置(菱化システム社製、マイクロマップ550N(測定条件:waveモード、測定波長560nm、対物レンズ10倍))を用いて、フィルム面に対して垂直方向から測定し、400μm×400μmのCCDカメラ画像取り込み領域を指定し、下記式1により与えられるSRaを求めた。フィルム両面において、測定数をそれぞれ16回行い、それらの平均値を求めた。また、小数点以下の端数は、四捨五入によりまるめた。
【式1】
【0063】


【0064】
ここで、S=L×Mであり、L, Mは、x, y方向の範囲、f(x, y)は、測定点(x, y)の平均面からの高さである。
【0065】
(実施例1)
平均粒径0.9μmの多孔質シリカを0.2質量%、および、平均粒径0.6μmの炭酸カルシウム粒子0.4質量%を含むポリエチレンテレフタレートチップ(固有粘度 0.60dl/g(フェノール:1,1,2,2−テトラクロルエタン=6:4混合溶媒で溶解し30℃で測定)以後、PET(I)と略す。)と、実質的に粒子を含まないポリエチレンテレフタレートチップ(固有粘度0.62dl/g、以後、PET(II)と略す。)をそれぞれ135℃・1.3hPaで6時間乾燥し、別個の溶融押出し機押出機により280℃で溶融し、フィードブロック内で合流して、PET(I)をB層(離型層とは反対面側の層)、PET(II)をA層(離型層面側の層)となるように積層しシート状に押し出した。次いで、表面温度30℃に保った金属ロール上で急冷固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。この際、溶融樹脂中の異物および、粗大粒子凝集物を除去するため、濾過粒子サイズ15μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、濾過粒子サイズ15μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール粒子を焼結したフィルターを用いて2段の濾過を行った。また、層厚み比率はB層:A層=PET(I):(II)=6:4となるように調整した。
【0066】
次いで、この未延伸シートを表面温度80℃に加熱されたロール群によって予熱し、次いでフィルム温度を全体として100℃に加熱しながら、周速差の異なるロールにより縦方向に3.5倍延伸した。
【0067】
ついで、硬化型シリコーンの水系エマルジョン(信越シリコーン社製、KM3951)4質量部と、白金触媒0.04質量部を、水とイソプロピルアルコールの8:2(重量/重量)混合液95.8質量部で希釈した離型層形成水系塗布液Aを、ロールコート法を用いて、乾燥後重量が0.10g/mになるように塗布し、90℃のドライヤーにて乾燥した後、テンターに導き、100℃で横方向に4.0倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、220℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μm、長さ4000m、幅4000mmの離型フィルムロールを得た。
【0068】
このミルロールをスリッターに移動し、長さ4000m、幅500mmにスリットした。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0069】
(実施例2)
実施例1において、PET(I)中の粒子濃度・粒径を表1のように変更し、層比率を各押出機の吐出量計算で、B層:A層=PET(I):(II)=8:2となるように調整したこと以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを製造した。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0070】
(実施例3)
実施例1において、PET(I)中の粒子濃度・粒径を表1のように変更し、フィルム層構成をA/C/Bとし、A層、B層には実施例1の原料を、芯層(C層)には実施例1の回収原料(以後、PET(III)と略す。)を使用すること以外は実施例1と同様にして、フィルムロールを製造した。層比率は各押出機の吐出量計算で、B層:C層:A層=PET(I):(III):(II)=2:4:4となるように調整した。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0071】
(実施例4)
(塗布液Bの調製)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。
次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。
さらに、平均粒径0.45μmのシリカ粒子3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部に凝集体シリカの水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、塗布液Bを得た。
【0072】
実施例3において、B層としてPET(II)を用い、フィルム層構成およびPET構成の層比率を、B層:C層:A層=PET(II):(III):(II)=2:4:4フィルム層構成をB/C/A層となるように押出し、1軸延伸した後に、離型面に離型層形成水系塗布液Aを、反離型面相に塗布液Bをロールコート法によって塗工すること以外は実施例3と同様にして、フィルムロールを製造した。このとき、離型面相の最終膜厚が0.10g/mに、反離型面相の最終膜厚が0.08g/mとなるように塗布した。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0073】
(比較例1)
実施例3において、PET(I)の粒子濃度・粒径を表1のように変更し、A層としてPET(I)を用い、フィルム層構成およびPET構成の層比率を、B層:C層:A層=PET(I):(III):(I)=2:4:4になるように変更すること以外は実施例3と同様にして、フィルムロールを製造した。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0074】
(比較例2)
実施例2において、縦方向に延伸されたシートに対してコーティングを行わずに製造されたスリット後のフィルムロールに対して、オフラインにより、改めてA層表面に硬化型シリコーンの水系エマルジョン(信越シリコーン社製、KM3951)4質量部と白金触媒0.04質量部を、水とイソプロピルアルコールの8:2(重量/重量)混合液95.8質量部で希釈した離型層形成塗剤を、バーコート法により乾燥後重量が0.10g/mになるように塗布し、ドライヤーにて乾燥して離型フィルムロールを製造した。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0075】
(比較例3)
実施例2において、縦方向に延伸されたシートに対して非シリコーン系水系剥離剤(中京油脂製、レゼムM−647)4質量部を、水とイソプロピルアルコールの5:5(重量/重量)混合液96質量部で希釈した離型層形成水系塗布液を、バーコート法により乾燥後重量が0.10g/mになるように塗布すること以外は実施例2と同様にして、フィルムロールを製造した。得られたフィルムの特性の評価結果を表2に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
以上、本発明の離型フィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の離型フィルムは、離型層面に微小な凹凸が無く、平面性も良好なため、ピンホール発生が少なく均一な厚みのセラミックグリーンシート製造する分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型層を有する離型フィルムであって、
該離型フィルムが、ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含む水系塗布液を塗布した後、少なくとも1方向に延伸することにより得られるものであり、
該離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)が1〜7nmである、
離型フィルム。
【請求項2】
該離型フィルムの離型層の反対側表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa2)が20nm以上40nm以下である、請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
該二軸配向ポリエステルフィルムが、離型層と積層する層(A層)と、離型層とは反対側の最外層(B層)の少なくとも2層を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、
A層は粒子を実質的に含有せず、
B層は粒子を0.5〜1.5質量%含有する、
請求項1または2記載の離型フィルム。
【請求項4】
離型層の反対面に粒子と樹脂成分とを含む塗布層を有する、
請求項1または2記載の離型フィルム。

【公開番号】特開2010−17932(P2010−17932A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180130(P2008−180130)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】