説明

離型フィルム

【課題】柔軟性、離型性、耐熱性、非汚染性に優れ、特に、精密なパターンを有するプリント基板に対する埋込み性が良好で、且つ、シートの巻取りや裁断時の取扱作業性に優れる離型フィルムを提供する。
【解決手段】表層に配されたポリエステル系エラストマー(A)層と、ポリエステル(B)層とを有し、ポリエステル系エラストマー(A)は、ガラス転移温度が0〜20℃、かつ結晶化速度指標が20〜50℃であり、ポリエステル(B)は、結晶性芳香族ポリエステル(B1)および1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(B2)からなり、質量比(B1)/(B2)が5/95〜50/50の範囲であって、ポリエステル(B)のガラス転移温度が40〜80℃、かつ結晶融解熱量が5〜40J/gであることを特徴とする離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルム、とりわけ、プリント基板製造時に使われる離型フィルムに関する。特に、精密なパターンを有するプリント基板に熱硬化性接着剤によってカバーレイフィルムを高温熱プレス接着する際に有用な離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは工業的に広く使用されている。特に、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、多層プリント配線板等の製造工程においてプリプレグ又は耐熱フィルムを介して銅張積層板又は銅箔を熱プレスする際にプリプレグや耐熱フィルムがプレス熱板と接着するのを防止するためや、フレキシブルプリント基板の製造工程において電気回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に熱硬化型接着剤によってカバーレイフィルムを熱プレス接着する際にカバーレイフィルムがプレス熱板と接着するのを防止するのに用いられる。
【0003】
前記の用途の離型フィルムとしては、フッ素系フィルム、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、従来から離型フィルムとして用いられているフッ素系フィルムは、耐熱性、離型性、非汚染性には優れているが、高価である上、使用後の廃棄焼却処理において燃焼しにくく、かつ、有毒ガスを発生するという問題点があった。また、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルムは、フィルム組成にシリコーンや低分子量体を含んでおり、この移行によって、プリント配線基板、とりわけ基板上の銅回路の汚染を引き起こし、品質を損なうおそれがあった。また、ポリプロピレンフィルムは耐熱性に劣り離型性が不充分であった。
【0005】
そこで、柔軟性、耐熱性、離型性、非汚染性を改善し、廃棄焼却可能な離型フィルムとして、例えば、ポリプロピレン系樹脂と、ビニル系芳香族系エラストマーとを含有するクッション層の両面に結晶性芳香族ポリエステルからなる離型層を積層したフィルム(特許文献1)や、ポリブチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレート、さらに、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体を離型層とするフィルム(特許文献2)やクッション層とするフィルム(特許文献3)が開示されている。
【0006】
また、耐熱性、成形加工性に優れる積層化粧シートとして、非晶性ポリエステル系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂をブレンド、あるいは積層したフィルム(特許文献4、特許文献5)が開示されている。
【特許文献1】特開2008−049504号公報
【特許文献2】国際公開第05/002850号パンフレット
【特許文献3】特許第4099355号公報
【特許文献4】特開2003−231761号公報
【特許文献5】特開2008−162058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、こうした技術においては、離型性および耐熱性と、柔軟性との両立が未だ十分ではなく、離型性と耐熱性を重視した場合は、柔軟性が犠牲となり精密なパターンを有するプリント基板に対する埋込性に劣っていた。一方、柔軟性を重視した場合には、離型性の低下やフィルム表面の滑り性悪化が生じるほか、弾性率が低いためにフィルムの巻取や裁断時に伸びたりシワが入るなど、総合的な取扱作業性に劣っていた。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の処方において、離型性、埋込み性に優れるものの、クッション層樹脂の融点が低いために耐熱性が不充分であり、熱プレスの際にクッション層がフィルム端部よりはみ出したり、低分子量体の移行によってプリント配線基板の製造工程が汚染される問題があった。
【0009】
特許文献2、特許文献3においては、埋込み性向上を目的として、柔軟な共重合ポリブチレンテレフタレートを用いており、離型性、非汚染性に優れるものの、内層、あるいは外層にポリブチレンテレフタレートを用いているため、その硬さゆえに従来使用されているポリメチルペンテン系フィルムよりも熱プレス時の埋込み性に劣っていた。
【0010】
特許文献4、特許文献5に記載の処方においては、化粧シートの成形加工性向上を目的として、結晶性ポリエステル樹脂に非晶ポリエステル系樹脂をブレンドしており、埋込み性に優れるものの、表層樹脂は成形性重視により、積極的に結晶化されておらず、そのため本件用途のような高温熱プレス時には、耐熱性や離型性に劣るといった問題があった。
【0011】
本発明は従来技術の前記問題点を解決し、柔軟性、離型性、耐熱性、非汚染性に優れ、特に、精密なパターンを有するプリント基板に対する埋込み性が良好で、かつ、シートの巻取りや裁断時の取扱作業性に優れる離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の結晶性を有するポリエステル系エラストマーとそれよりガラス転移温度の高いポリエステルを積層し、表層を結晶化させることで離型性を付与し、内層の結晶性樹脂の結晶性を特定の範囲に制御することにより、高温での熱プレス時の埋込み性とはみ出し性の相反する特性を両立できることを見出し本発明に至った。高温熱プレスとは、100℃以上に加熱した熱板を用いたプレス加工のことをいう。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
【0013】
(1)表層に配されたポリエステル系エラストマー(A)層と、ポリエステル(B)層とを有し、ポリエステル系エラストマー(A)は、ガラス転移温度が0〜20℃、かつ結晶化速度指標が20〜50℃であり、ポリエステル(B)は、結晶性芳香族ポリエステル(B1)、および1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(B2)からなり、質量比(B1)/(B2)が5/95〜50/50の範囲であって、ポリエステル(B)のガラス転移温度が40〜80℃、かつ結晶融解熱量が5〜40J/gであることを特徴とする離型フィルム。
【0014】
(2)ポリエステル系エラストマー(A)が、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体である(1)の離型フィルム。
【0015】
(3)結晶性芳香族ポリエステル(B1)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートのいずれか、あるいは2種以上の混合物である(1)または(2)の離型フィルム。
【0016】
(4)積層フィルムの構成が(A)/(B)/(A)の2種3層、または(A)/(B)の2種2層である(1)の離型フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の離型フィルムは、表層に配されたポリエステル系エラストマー(A)層と、ポリエステル(B)層とを有する積層フィルムである。
【0019】
<ポリエステル系エラストマー(A)>
ポリエステル系エラストマー(A)層は、離型フィルムの表層に配されて離型層として機能する。ポリエステル系エラストマー(A)層がなければ、熱プレスにおける離型性が低下し、たとえばカバーレイフィルムを用いた積層板の熱プレス工程において、フィルムが容易に剥がれず、積層板やプレス熱板にフィルムが接着することで、これらを汚染してしまう。
【0020】
ポリエステル系エラストマー(A)は、高融点結晶性セグメントと低融点セグメントのブロック共重合体からなる。高融点結晶性セグメントは主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなり、低融点セグメントは脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる。
【0021】
ポリエステル系エラストマー(A)における高融点結晶性セグメントと低融点セグメントの共重合比率は、各セグメントを構成するモノマーを選択したうえで、後述する融点、ガラス転移温度、結晶化速度指標、結晶融解熱量を満たす範囲で決定され、特に限定されないが、ポリエステル系エラストマー(A)中に低融点セグメントが5〜50質量%とすることが適当である。
【0022】
ポリエステル系エラストマー(A)において、高融点結晶性セグメントを構成する結晶性芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とから形成されるポリエステルであることが好ましい。耐熱性や高結晶性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)が好ましい。
【0023】
上記したPET、PBT、PTTの他にも、以下のような芳香族ジカルボン酸成分、ジオール成分から得られるポリエステルを結晶性芳香族ポリエステルとして用いることができ、また、そのような結晶性芳香族ポリエステルを、PET、PBT、PTTのいずれかと共重合してもよい。芳香族ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。ジオール成分としては、分子量300以下のジオールが好ましく、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオ−ターフェニルなどの芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分およびジオール成分は、2種以上併用してもよい。
【0024】
また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0025】
ポリエステル系エラストマー(A)において、低融点セグメントを構成する脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。また、低融点セグメントを構成する脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかでも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましく、特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが好ましく使用される。また、これらの低融点セグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
【0026】
ポリエステル系エラストマー(A)のガラス転移温度は0〜20℃の必要がある。ガラス転移温度が0℃を下回ると熱プレス時の離型性と耐熱性に劣り、さらには製膜作業性も低下する。20℃を超えると埋込性に劣る。ポリエステル系エラストマー(A)のガラス転移温度は0〜15℃が好ましい。
【0027】
ポリエステル系エラストマー(A)の融点は200℃以上であることが好ましい。融点が200℃を下回ると熱プレス時の耐熱性に劣ることがある。
【0028】
ポリエステル系エラストマー(A)は、製膜時にキャスティングロールで十分に結晶化させる必要がある。このためにポリエステル系エラストマー(A)の結晶化速度指標は20〜50℃とすることが必要である。結晶化速度指標とは、溶融後の冷却時の結晶化の速さを示す指標である。結晶化速度指標が50℃を超えると、すなわち、溶融後の冷却時の結晶化速度が遅いと、積層フィルムとしたときの耐熱性付与が困難になり、結晶化処理をロールで直接加熱した場合に剥離不良が生じる。結晶化速度指標が上記範囲内であると、溶融押出後の冷却ロールで結晶化が可能で、しかもキャスティングロールの温度や速度でシートの結晶状態の制御が可能となる。結晶化速度指標は25〜50℃が好ましい。
【0029】
ポリエステル系エラストマー(A)は結晶融解熱量が25〜45J/gであることが好ましい。25J/g未満では耐熱性や離型性が不十分であり、一方、45J/gを越えると埋込性が低下する。
【0030】
上記結晶化特性を有するポリエステル系エラストマー(A)の好ましい構成としては、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体が挙げられ、ポリエーテルの共重合量は、好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。ポリエーテルの共重合量が少ないと柔軟化効果が小さく、一方、多すぎると耐熱性や結晶性が低下し過ぎる。このような範囲であると、ポリエステル系エラストマー(A)の融点、ガラス転移温度、結晶化速度指標、結晶融解熱量等を調整しやすい。
【0031】
ポリエステル系エラストマー(A)は公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、および低融点セグメント成分を触媒の存在下にエステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点セグメント成分を触媒の存在下にエステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、また、あらかじめ高融点結晶性セグメントを作っておき、これに低融点セグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化せしめる方法、高融点結晶性セグメントと低融点セグメントを鎖連結剤でつなぐ方法、さらにポリ(ε−カプロラクトン)を低融点セグメントに用いる場合は、高融点結晶性セグメントにε−カプロラクトンモノマーを付加反応させる方法などが挙げられ、いずれの方法をとってもよい。
【0032】
<ポリエステル(B)>
本発明の離型フィルムにおいては、離型層として機能する前記ポリエステル系エラストマー(A)層の支持層、および高温での熱プレスにおける埋込み層として、ポリエステル(B)層が積層されていることが必要である。(B)層がなければ、フィルム製造時のロール巻取りにおいてフィルムのコシが弱いために、シワが発生し、製膜作業性が著しく低下するため、工業的な生産が困難となる。また、高温での熱プレス時における埋込み性が不充分になる。
【0033】
ポリエステル(B)層を構成する成分として、結晶性芳香族ポリエステル(B1)と、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(B2)を用いることが必要である。
【0034】
ポリエステル(B)層を構成する、結晶性芳香族ポリエステル(B1)と1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(B2)の質量比(B1)/(B2)は5/95〜50/50の範囲であることが必要であり、30/70〜50/50の範囲が好ましい。結晶性芳香族ポリエステル(B1)が5質量%未満であると(B)層の結晶性が低くなりすぎるために高温熱プレス時の耐熱性が低下する傾向にあり、(B)層のはみ出しによって工程内が汚染される場合がある。(B1)が50質量%を超えると(B)層の結晶性が高くなりすぎるために高温熱プレス時の埋込性に劣る傾向がある。
【0035】
ポリエステル(B)のガラス転移温度は40〜80℃である必要がある。ガラス転移温度が25℃を下回ると、常温でフィルムが軟化するためにシートの巻取り時にシワが入ったり、裁断時のカット性等の取扱作業性が不充分となる。一方、ガラス転移温度が80℃を超えると熱プレス時においてフィルムの軟化が不充分となるために埋込み性に劣る。ポリエステル(B)のガラス転移温度は45〜75℃が好ましく、50〜70℃が特に好ましい。
【0036】
ポリエステル(B)の結晶融解熱量は5〜40J/gである必要がある。このような範囲内であると、(B)層が(A)層の支持層としての機能を十分に果たすことができ、かつ、高温熱プレス時の耐熱性、埋込性等を両立させることができる。結晶融解熱量が5J/gを下回ると、結晶性が低くなりすぎるために高温熱プレス時の耐熱性に劣り、フィルム端部より(B)層のはみ出しが生じる場合がある。一方、結晶融解熱量が40J/gを超えると高温熱プレス時のフィルムの軟化が不充分となるために埋込み性に劣る。ポリエステル(B)の結晶融解熱量は10〜35J/gが好ましく、15〜30J/gが特に好ましい。
【0037】
<結晶性芳香族ポリエステル(B1)>
結晶性芳香族ポリエステル(B1)としては、耐熱性や高結晶性の観点から、PET、PBT、PTT、およびこれらとイソフタル酸等との共重合体、あるいはこれら2種以上の混合物を適宜使用できる。
【0038】
結晶性芳香族ポリエステル(B1)の融点は200℃以上であることが好ましい。融点が200℃を下回ると熱プレス時の耐熱性に劣ることがある。
【0039】
結晶性芳香族ポリエステル(B1)としてイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、融点が上記範囲内となるように共重合の割合を選択すればよいが、全ジカルボン酸成分に対し、イソフタル酸の割合は20モル%以下が好ましく、特に10モル%以下が好ましい。20モル%を超えると、(B)層の融点、および結晶性が低下しすぎるために高温熱プレス時の耐熱性に劣る傾向がある。
【0040】
結晶性芳香族ポリエステル(B1)は、(B)層の融点、および結晶性を損なわない範囲で共重合してもよい。
【0041】
共重合成分としては、特に限定されないが、酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンや乳酸などが挙げられる。
【0042】
また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0043】
さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物等を少量用いてもよい。これらの共重合成分は2種以上併用してもよい。
【0044】
また、これら結晶性芳香族ポリエステルを2種以上混合して用いる場合、その混合比は(B1)樹脂の結晶性を考慮し、適宜選択すればよい。
【0045】
結晶性芳香族ポリエステル(B1)は公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコールを触媒の存在下にエステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールを触媒の存在下にエステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法が挙げられる。
【0046】
重合後のポリエステルは、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセトアルデヒドやテトラヒドロフラン等を含有しているため、そのまま使用すると熱プレス時にこれらの低分子量物が基板に移行する問題が発生する。そのため、減圧もしくは不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合した原料を使用することが好ましい。
【0047】
<1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(B2)>
1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、「CHDM−PET」と略す。)はエチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換したPET共重合体である。ポリエステル(B)層の非晶化度を高め、熱プレス時の埋込性を満足させるには、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を全ジオール成分に対して10モル%以上、好ましくは12モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上含むことが望ましい。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの耐熱性に乏しくなるため、上限は50モル%とすることが好ましく、45モル%以下とすることがより好ましく、40モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0048】
このようなCHDM−PETの具体例としては、イーストマンケミカル社製PETG6763等が挙げられる。
【0049】
ポリエステル系エラストマー(A)、結晶性芳香族ポリエステル(B1)およびCHDM−PET(B2)には、実用性を損なわない範囲で、熱安定剤、帯電防止剤、結晶造核剤などを添加してもよい。このうち、熱安定剤を含むことが好ましい。熱安定剤として5価または/および3価のリン化合物や、ヒンダードフェノール系化合物などが好ましい。
【0050】
本発明の離型フィルムは、ポリエステル系エラストマー(A)層の厚みが5〜50μmであることが好ましい。ポリエステル系エラストマー(A)層の厚みが5μm未満であると押出しの際に(A)層と(B)層の間の流動バランスが悪化し、フローマークが発生しやすくなり、製膜困難となる。50μmを超えると埋込み性が不足しやすい。
ポリエステル系エラストマー(A)層の厚みは10〜30μmがより好ましい。ここでいう(A)層の厚みとは、2種3層構成のように(A)層が2層以上含まれている場合には、その1層分の厚みである。
【0051】
本発明の離型フィルムは、ポリエステル(B)層の厚みが15〜160μmであることが好ましい。ポリエステル(B)層の厚みが15μm未満だと、常温で軟質な(A)層が相対的に厚くなり、フィルムのコシが弱くなるためにフィルムを巻取る際にシワが入りやすくなったり、熱プレス時における柔軟性が不充分となるために埋込み性の低下を招く。160μmを超えると押出しの際に(A)層と(B)層の間の流動バランスが悪化し、フローマークが発生しやすくなり、製膜が困難になる傾向がある。ポリエステル(B)層の厚みは20〜100μmがより好ましい。
【0052】
本発明の離型フィルムは、全体の厚みが30μm〜200μmであることが好ましい。全体の厚みが30μmを下回ると、シートの強度・剛性が低下し、取扱いが困難になる。一方、200μmを超えると熱プレス時におけるプリント基板の表面パターンへの追従性が低下するため、微細なパターンを有したプリント基板製造には適さない場合がある。全体の厚みは 30μm〜150μmであることがより好ましく、40μm〜100μmであることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の離型フィルムの好ましい構成としては、ポリエステル系エラストマー(A)とポリエステル(B)を用いた、(A)/(B)/(A)の2種3層構成や、(A)/(B)の2種2層構成が挙げられるが、これに限定されず、(A)層が表層に配されていれば、さらに他の層を有していてもよい。
【0054】
(A)/(B)/(A)の2種3層構成における好ましい厚み構成比率としては、1/2/1〜1/5/1であり、この範囲内であれば(B)層が(A)層の支持層としての機能を十分に果たすことができ、かつ、高温での熱プレス時の耐熱性、埋込性等を両立させることができる。
【0055】
次に本発明の離型フィルムの製造方法について説明する。
本発明の離型フィルムの製造においては、共押出Tダイ法で製膜する方法を採ることが好ましい。この方法によれば、各層の厚みを制御することや、(A)層を所望の結晶化状態とすることが容易となる。
【0056】
本発明の離型フィルムの製造においては、フィルムに所定の熱特性を付与し、耐熱性、離型性、寸法安定性を向上させる目的で、結晶化工程を設けることが必要である。結晶化方法としては、加熱結晶化、配向結晶化が挙げられるが、本用途では高温での寸法安定性が必要なため、実質的に配向させることなく、加熱による結晶化することが好ましい。加熱結晶化の方法としては、Tダイから押出後に冷却と同時に結晶化する方法が工程の簡便性やフィルム品位を制御する点において好ましい。冷却と同時に結晶化する場合には、結晶化速度を考慮してキャスティングロールの温度を適切に設定する必要があり、本発明の樹脂構成であれば、50〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。なお、離型性と埋込性の性能を制御するには離型層となるポリエステル系エラストマー(A)をキャスティングロール側に配置することが必要である。
【0057】
本発明の離型フィルムは180℃における熱収縮率が、MD方向においては2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。TD方向においては1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。このような熱収縮率とすることでプレス時に熱板と接触してもシワになりにくく、プリント基板を製造する際の耐熱性と寸法安定性が良好となる。
【0058】
本発明の離型フィルムにおいて、表層に配されたポリエステル系エラストマー(A)層の表面状態は用途に応じて平滑であってもよいし、作業性のためにスリップ性、アンチブロッキング性が付与されていてもよい。また、熱プレス成形時の空気抜けを目的として、少なくとも片面に適度のエンボス模様が設けられてもよい。このようなエンボス加工は、キャスティングロールの表面加工により付与することができる。
【0059】
本発明の離型フィルムは、高温熱プレス時の埋込み性、耐熱性、離型性、非汚染性に優れ、安全かつ容易に廃棄処理できることから、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、又は、多層プリント配線板等の製造工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムを介して銅張積層板又は銅箔を熱プレスする際に、プレス熱板とプリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、又は、多層プリント配線板等との接着を防ぐ離型フィルムとして好適に用いられる。また、フレキシブルプリント基板の製造工程において、熱プレス成形によりカバーレイフィルムを熱硬化性接着剤で接着する際に、カバーレイフィルムと熱プレス板、又は、カバーレイフィルム同士の接着を防ぐ離型フィルムとしても好適に用いられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、これに限定されるものではない。
【0061】
(A)ポリエステル系エラストマー
(A−1)ハイトレル5557;東レ・デュポン社製、Tm208℃、Tg−20℃
(A−2)ハイトレル6347;東レ・デュポン社製、Tm221℃、Tg3℃
(A−3)ハイトレル7247;東レ・デュポン社製、Tm221℃、Tg12℃
(A−4)ハイトレル6347M;東レ・デュポン社製、Tm215℃、Tg3℃
Tmは融点、Tgはガラス転移温度を意味する。
上記4種のポリエステル系エラストマーは、いずれもポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体である。
【0062】
(B1)結晶性芳香族ポリエステル
(B1−1)ポリブチレンテレフタレート;三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバデュラン5010CS、Tm223℃、Tg34℃
(B1−2)ポリトリメチレンテレフタレート;シェルケミカルズジャパン社製コルテラ9200、Tm223℃、Tg52℃
(B1−3)ポリエチレンテレフタレート;日本エステル社製NEH−2050、Tm255℃、Tg:80℃
(B1−4)イソフタル酸4mol%共重合ポリエチレンテレフタレート、Tm246℃、Tg:75℃
【0063】
(B2)CHDM−PET
・イーストマンケミカル社製PETG6763、Tg80℃
(C)その他
・ポリメチルペンテン;三井化学社製DX845、Tm233℃、Tg20℃
【0064】
本発明における測定法を以下に示す。
【0065】
<結晶化速度指標>
示差走査型熱量計(Perkin Elmer社製 Pyris1 DSC)を用い、サンプル10mgを速度20℃/minで260℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶融解熱量(△Hm)を測定した。さらに、260℃で3分間ホールドした後、速度20℃/minで冷却し、結晶化ピーク温度(Tc)を測定した。融点と降温時結晶化ピーク温度の差を結晶化速度指標とした。
融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、結晶化速度指標の測定におけるサンプルは、原料樹脂を一度溶融してから急冷して得た非晶化したサンプルを用いた。(A)層の結晶融解熱量は、ポリエステル系エラストマー(A)単独樹脂を、厚み、押出速度、キャスティングロール温度を積層フィルムと同条件になるようにして単層フィルムサンプルを作成し、これを用いて測定した。(B)層の結晶融解熱量においても同様に、結晶性芳香族ポリエステル(B1)とCHDM−PET(B2)とをブレンドした樹脂から積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、これを用いて測定した。
【0066】
<製膜作業性>
得られたフィルムの端部をカットした後のロール巻取り性を以下の基準に従って評価し、○を合格(良好)とした。
○:ロール巻取り性に問題ない。
△:ロール巻取り時に少々シワが入る
×:ロール巻取り時にシワなく巻き取ることが困難であった
【0067】
<耐熱性、中間層はみ出し性、埋込性、離型性>
両面に20μmのエポキシ系接着剤(東亜合成社製AS−60)を塗布した25μmポリイミドフィルム(デュポン社製カプトン100V)の両側に、厚さ35μmの銅箔を積層して3層タイプの銅張積層板を作成した。その片面に20μmのエポキシ系接着剤(東亜合成社製AS−60)を塗布した25μm厚のポリイミドフィルム(デュポン社製カプトン100V)カバーレイフィルムをのせ、さらに両側を離型フィルムで挟んだ。このとき、離型フィルムのポリエステル系エラストマー面が内側になるように配置した。その後、温度180℃、圧力3MPaで5分間熱プレスした。プレス後、素早く取り出して放冷した後、離型フィルムを剥し、以下の基準に従って耐熱性、中間層はみ出し性、埋込性、離型性の評価を行い、○以上を合格(良好)と判断した。その際、カバーレイフィルムには直径5mmの真円状の孔を開けて接着剤のはみ出しの評価に用いた。
【0068】
(耐熱性)
○:プレス後のフィルムにシワが認められない
△:プレス後のフィルムに少々シワが認められる
×:プレス後のフィルムに顕著にシワが認められる
【0069】
(中間層はみ出し性)
○:プレス後のフィルム端部より中間層ポリマーのはみ出しが認められない
△:プレス後のフィルム端部より中間層ポリマーのはみ出しが認められる
×:プレス後のフィルム端部より中間層ポリマーのはみ出しが顕著に認められ、積層板やプレス熱板へのポリマー付着が認められる
【0070】
(埋込性)
カバーレイフィルム孔部の接着剤のはみ出しを顕微鏡にて観察し、以下の基準にて評価した。
◎:接着剤のはみ出しが50μm以下
○:接着剤のはみ出しが50μmを越え70μm以下
△:接着剤のはみ出しが70μmを越え100μm以下
×:接着剤のはみ出しが100μmを越える
【0071】
(離型性)
◎:抵抗なく剥せる
○:やや抵抗はあるが積層板に影響なく剥がれる
△:抵抗はあるが、積層板の変形なく剥せる
×:抵抗が強く、剥離時に積層板の変形が伴う
【0072】
<耐汚染性>
熱脱着GC−MSを用い、180℃、10分間の加熱でフィルムから発生するガスを無極性キャピラリーカラムを用いて分離し、検出されたピーク総面積のヘキサン換算量をフィルム重量で規格化し、これをアウトガス発生量とした。アウトガス発生量は少ない程好ましく、400ppm以下を合格(良好)と判断した。
【0073】
<熱収縮率>
次の手順に従い、フィルムMD方向、およびTD方向の熱収縮率を測定した。
サンプルフィルムを10mm×150mmにカットし、これに間隔100mmとなるように2本の標線を入れた試験片を5本作成した。
得られた試験片を無荷重下で170℃のオーブン中に30分間熱処理した後、試験片を取り出して室温に戻して標線間距離を測定した。熱収縮率を下式に従い求め、5本の平均値を各サンプルフィルムの熱収縮率とした。
熱収縮率(%)=(L−L´)/A×100
L:熱処理前の標線間距離(mm)、L´:熱処理後の標線間距離(mm)
【0074】
[実施例1]
2台の独立した押出機に、(A)層樹脂としてA−2を、(B)層樹脂として、B1−1とB2を40/60の質量比となるように、それぞれ供給し、いずれの層の樹脂も260℃で溶融混練し、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前でA/B/Aの3層状に合流積層した後、Tダイ出口より押出し、80℃に調整したキャスティングロールに密着させて冷却して、層厚みがA/B/A=20/60/20(μm)の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0075】
[実施例2〜12、比較例1〜5]
実施例1において、(A)層および(B)層の各層に用いる樹脂の種類、B層の配合比率、層厚み構成を表1〜3記載のように変更し、実施例2〜7、実施例10、比較例1〜5は260℃、実施例8〜9は280℃で溶融させてTダイ出口より押出し、表1〜2に示す温度に調整したキャスティングロールに密着させた。そのほかの条件は実施例1と同様にして、A/B/Aの構成を有する2種3層の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0076】
[実施例13]
2台の独立した押出機に、(A)層樹脂としてA−2を、(B)層樹脂として、B1−1とB2を40/60の質量比となるように、それぞれ供給し、いずれの層の樹脂も260℃で溶融混練し、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前でA/Bの2層状に合流積層した後、Tダイ出口より押出し、80℃に調整したキャスティングロールに密着させて冷却して、層厚みがA/B=30/60(μm)の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0077】
[実施例14〜15、比較例6]
実施例13において、(A)層および(B)層の各層に用いる樹脂の種類、B層の配合比率、層厚み構成を表2〜3記載のように変更し、260℃で溶融させてTダイ出口より押出し、表2〜3に示す温度に調整したキャスティングロールに密着させた。そのほかの条件は実施例1と同様にして、A/Bの構成を有する2種2層の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0078】
[比較例7〜10]
押出機に表3に示す樹脂を供給し、260℃で溶融混練して押出し、表3に示す温度に調整したキャスティングロールに密着させて冷却して、表1に示す厚みを有する単層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。なお、比較例7〜10において作成したフィルムに関しては単層フィルムであるため、中間層のはみ出し性の評価は行わない。
【0079】
実施例1〜15、比較例1〜10の層構成、樹脂組成、各種特性、性能評価結果を表1〜3に示す。なお、各表においてB層配合比率は質量比を示している。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
実施例1〜15のシートは、各種特性が本発明で規定した範囲内にあったため、離型フィルムとしての要求性能を全て満足し、特に、高温熱プレス時の離型性および埋込性に優れるため精密なパターンを有するプリント基板にも対応でき、かつ、アウトガスも少なく耐汚染性にも優れるものであった。
【0084】
比較例1は、離型層がポリブチレンテレフタレート、中間層がポリエステル系エラストマーであり、離型性は良好であったが、ガラス転移温度と結晶融解熱量が高いために埋込み性に劣っていた。
【0085】
比較例2は、離型層がポリエステル系エラストマー、中間層がポリブチレンテレフタレートであり、結晶融解熱量が高いために埋込み性に劣っていた。
【0086】
比較例3は、中間層に結晶性芳香族ポリエステルを含有していないため、中間層が非晶状態であり、埋め込み性は良好であったが、耐熱性に劣り、特に中間層からのポリマーのはみ出しが顕著であった。
【0087】
比較例4は、中間層の結晶性芳香族ポリエステルの含有量が高く、中間層の結晶性が高すぎるため、埋込み性に劣っていた。
【0088】
比較例5、6は、離型層のガラス転移温度が低すぎるために、埋込み性は良好であったが耐熱性や離型性に劣り、製膜時の巻取りにおいてフィルムにシワが入った。
【0089】
比較例7は、ポリエステル系エラストマー単層であり、中間層であるポリエステル層を有していないため、フィルムのコシが弱く、製膜作業性に劣り、また、熱プレス時における柔軟性が不足するため、埋込み性も不充分であった。
【0090】
比較例8は、ポリブチレンテレフタレート単層であり、結晶性が高すぎるために、離型性や耐熱性は良好であったが埋込み性に劣っていた。
【0091】
比較例9は、離型フィルムとして広く使用されているポリメチルペンテンからなるフィルムであるが、アウトガス発生量が本発明のフィルムの約10倍と著しく多く、耐汚染性に劣るものであった。
【0092】
比較例10は、ポリエステル系エラストマーからなる離型層を有しておらず、熱プレス時の埋込み性に優れるが、フィルムの結晶性が低いために耐熱性や離型性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層に配されたポリエステル系エラストマー(A)層と、ポリエステル(B)層とを有し、ポリエステル系エラストマー(A)は、ガラス転移温度が0〜20℃、かつ結晶化速度指標が20〜50℃であり、ポリエステル(B)は、結晶性芳香族ポリエステル(B1)および1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(B2)からなり、質量比(B1)/(B2)が5/95〜50/50の範囲であって、ポリエステル(B)のガラス転移温度が40〜80℃、かつ結晶融解熱量が5〜40J/gであることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
ポリエステル系エラストマー(A)が、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体である請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
結晶性芳香族ポリエステル(B1)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートのいずれか、あるいは2種以上の混合物である請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
積層フィルムの構成が(A)/(B)/(A)の2種3層、または(A)/(B)の2種2層である請求項1記載の離型フィルム。

【公開番号】特開2011−88351(P2011−88351A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243491(P2009−243491)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】