離型層形成装置および離型層形成方法
【課題】厚みの均一性が高い離型層を備えた、シリコンインゴット形成用の鋳型を提供する。
【解決手段】鋳型用基体の内表面に離型材スラリーをスプレー塗布する塗布手段と、四角錐状をなし、四角錐の4つの斜辺位置に発熱部を備えており、該発熱部が、鋳型用基体の内部に配置された状態で鋳型用の内面に対向し、かかる配置状態で離型材スラリーが塗布された鋳型用基体への加熱を行うことにより、離型材スラリーを乾燥させる加熱手段31,311と、を備える離型層形成装置を用いて、スプレー塗布と加熱乾燥とを複数回繰り返すことにより離型層を形成する。
【解決手段】鋳型用基体の内表面に離型材スラリーをスプレー塗布する塗布手段と、四角錐状をなし、四角錐の4つの斜辺位置に発熱部を備えており、該発熱部が、鋳型用基体の内部に配置された状態で鋳型用の内面に対向し、かかる配置状態で離型材スラリーが塗布された鋳型用基体への加熱を行うことにより、離型材スラリーを乾燥させる加熱手段31,311と、を備える離型層形成装置を用いて、スプレー塗布と加熱乾燥とを複数回繰り返すことにより離型層を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンインゴットを作製するための鋳型に、離型層を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から太陽電池素子を形成するための半導体基板の一種として多結晶シリコン基板が用いられている。多結晶シリコン基板は、シリコンインゴットを、所定の厚みに切断することによって得られる。このようなシリコンインゴットは、高温で加熱溶融させたシリコン融液を鋳型内に供給して凝固させることによって形成する方法、または、シリコン原料自体を鋳型内で溶融した後にそのまま凝固させることによって形成する方法などを用いて作製される。
【0003】
上述のような方法でシリコンインゴットを作製する場合、内表面に離型層が形成された鋳型が用いられる。通常、シリコンインゴットの鋳型からの脱型性を確保する目的で、炭素系またはシリカ系の材料からなる離型層を内表面に形成した鋳型が用いられる。一般的に、離型層の構成材料(離型材)としては、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)または二酸化珪素(SiO2)等の粉末が用いられ、特に窒化珪素が多用されている。
【0004】
離型層の形成手法として、上述の粉末を所定のバインダーと溶剤(例えば水)とから構成される溶液中に混合してスラリー化したもの(離型材スラリー)を、鋳型の内表面にスプレーやハケ等の手段で塗布し、これを乾燥させることによって形成する手法が公知である(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−239682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スプレー塗布により離型層を形成する場合、塗布後の乾燥状態を好適なものにするとともに、塗布膜の厚みを均一にする必要がある。乾燥が不十分で離型層に未乾燥部分が残った鋳型を用いて鋳造を行うと、離型層が剥離するという不具合が生じ得る。また、通常、スプレー塗布は、ハケによる塗布よりも溶剤量が多く粘度が低い離型材スラリーを用いる必要があるが、スラリー粘度が低過ぎると、塗布後、乾燥するまでの間にスラリーが垂れてしまい、離型層の厚みが不均一になるという不具合が生じる。一方で、溶剤量を少なくし、スラリー粘度を高めた離型材スラリーを用いると、スプレーノズル内で離型材スラリーが詰まってしまい、離型層の形成自体が困難となる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、厚みの均一性が高い離型層を備えた、シリコンインゴット形成用の鋳型できる離型層形成装置および離型層形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る離型層形成装置は、鋳型用基体の内表面に離型層を形成する装置であって、
前記内表面に離型材スラリーを塗布する塗布手段と、
前記鋳型用基体の内部に配置された状態で、前記鋳型用基体への加熱を行う加熱手段と
、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一形態に係る離型層形成方法は、鋳型用基体の内表面に離型層を形成する方法であって、
前記鋳型用基体の内部に加熱手段を配置した状態で前記鋳型用基体への加熱を行うことにより前記鋳型用基体を予熱する第一の工程と、
前記内表面に離型材スラリーを塗布する第二の工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態に係る離型層形成装置および離型層形成方法によれば、鋳型用基体の内表面への離型層の形成に際して、鋳型用基体の内部に配置した加熱手段を加熱させた後に、離型材スラリーを塗布することで、離型材スラリーの乾燥状態の均一性を高めることができ、膜厚均一性の優れた離型層を形成した鋳型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る鋳型を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る離型層形成装置の構成を模式的に示す概略図である。
【図3】(a),(b)のそれぞれは、図2に示す加熱手段を模式的に示す斜視図である。
【図4】図3に示す加熱手段が鋳型の内部に配置した状態を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る離型層の形成の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一実施形態に係る加熱手段を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る離型層形成装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る離型層形成装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図9】離型層形成装置の要部を示す斜視図である。
【図10】シリコンインゴット製造用の鋳型を模式的に例示する断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る太陽電池素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<シリコンインゴット製造用鋳型とその製造方法>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る鋳型1の斜視図であり、図1(b)は、図1のA−A断面図である。図1(a),(b)に示すように、鋳型1は、上方開放型の形状を有する。鋳型1は、シリコン融液を貯留する内部空間を有する。その内部空間が上面視正方形の直方体状である。
【0014】
鋳型1内に高温で加熱溶融させたシリコン融液を供給し、鋳型1内で一方向凝固させることによって、シリコンインゴットを製造することができる。あるいは、シリコン原料自体を鋳型1内で溶融した後にそのまま鋳型1内で凝固させることによって、シリコンインゴットを製造してもよい。得られたシリコンインゴットを所定の厚みに切断することで多数のシリコン基板が得られる。得られたシリコン基板は、後述する方法により、太陽電池
素子用の基板として用いることができる。
【0015】
鋳型1は、鋳型用基体20と、鋳型用基体20の表面に形成された離型層2と、を有する。
【0016】
鋳型用基体20の材料は、黒鉛、炭素繊維強化材料等の炭素系材料、石英、シリカあるいはセラミックなどを用いることができる。鋳型用基体20は、一体成形のものであってもよいし、底部および側部等の部材からなる組立式のものであってもよい。
【0017】
離型層2は、鋳型用基体20からの脱型性を確保するための層であり、主に窒化珪素からなる。離型層2は、後述する方法にて作製された、窒化珪素粉末を含むスラリー(離型材スラリー)を用いて形成される。具体的には、離型層2は、前記スラリーを、へら、あるいは刷毛などによる塗布、またはスプレー法などで、鋳型用基体20の内表面に付着させ、自然乾燥させるかまたはホットプレートを用いて乾燥させることによって形成される。
【0018】
以下、鋳型1の形成方法について順に具体的に説明する。
【0019】
<セラミック粉末準備工程>
まず、離型層2の構成材料であるセラミックス粉末を準備する。セラミックス粉末は、少なくとも窒化珪素粉末を含む。窒化珪素粉末としては、例えばイミド分解法により得られた平均粒径が0.1〜10μm程度の窒化珪素粉末を用いることができる。窒化珪素粉末は、結晶質であっても非晶質であってもよい。また、窒化珪素粉末の形状は、例えば球状のような定形であっても無定形であってもよい。
【0020】
また、窒化珪素粉末に表面酸化処理を行ってもよい。表面酸化処理は、具体的には、容器に窒化珪素粉末を入れ、バッチ式の電気炉または連続式のトンネル炉などを用いて酸化雰囲気下で窒化珪素粉末を所定時間加熱する処理である。この際、容器としては、高温に強く、不純物の混入を低減することのできる石英等からなるものを用いることができる。加熱温度は、700℃〜1300℃であってもよい。
【0021】
この表面酸化処理により、窒化珪素粉末粒子の表面に、酸化膜である非晶質二酸化珪素層が形成される。
【0022】
なお、窒化珪素粉末は、粒子同士が付着して形成された数cm程度のサイズを有する窒化珪素集合体を含むかもしれない。この場合、表面酸化処理の前に、窒化珪素集合体を粉末状に戻し、その得られた粉末粒子に表面酸化処理を行う。これにより、窒化珪素粉末粒子に均一な厚みの酸化膜を形成することができ、粉末粒子ごとの酸化の度合いのバラツキを低減できる。
【0023】
以下においては、このように粒子表面に酸化膜が形成された窒化珪素粉末を表面酸化窒化珪素粉末と称し、係る粉末の粒子を表面酸化窒化珪素粒子と称する場合がある。
【0024】
離型層2は、上述のように表面酸化処理を施した窒化珪素粉末を用いて形成することができる。これにより、シリコンインゴット作製の際に比較的高温(例えばシリコンの融点近傍)にまで鋳型1が加熱されたときに、離型層2を構成する窒化珪素粉末粒子表面の酸化膜が軟化・酸化改質してシラノール基(Si−OH)が生成される。そして、このシラノール基同士が互いに結合してシロキサン結合(Si−O−Si)が生成される。その結果、窒化珪素粉末粒子同士の密着性が向上し、離型層2の強度が向上する。
【0025】
また、セラミックス粉末は、窒化珪素粉末に加えてさらに二酸化珪素粉末を含んでもよい。これにより、表面酸化窒化珪素粉末と同様に窒化珪素粉末粒子同士の密着性を向上させて、離型層2の強度をより大きくすることができる。これにより、シリコンインゴット作製中に離型層2の一部が剥離してシリコン融液に脱落混入することが低減される。このような二酸化珪素粉末としては、例えば、石英ガラスを粉砕して得られる平均粒径20μm程度の粉末を用いることができる。
【0026】
窒化珪素粉末と二酸化珪素粉末は予め混合してもよい(粉末混合工程)。これらの粉末をある程度均一に混合しておくことによって、次工程において用いられる第一バインダー溶液との混ざり具合におけるバラツキを低減することができる。このとき、攪拌装置を用いて各粉末を装置内に入れ混合すればよい。攪拌装置としては、プラネタリーミキサー等のブレードが遊星運動する混練攪拌装置を用いることができる。混練攪拌装置は、次工程においても用いることができるため、生産性を向上させることができる。また、低い回転数で攪拌することで、混合時の粉末の舞い上がりを低減することができる。
【0027】
この工程における攪拌装置の回転数は、例えば、5〜20rpmであってもよい。
【0028】
<ペレット形成工程>
次に、少なくとも窒化珪素粉末を含むセラミック粉末と、バインダーと溶媒とを含む第一バインダー溶液とを混練して、セラミック粉末の複数のペレットを形成する。
【0029】
バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはワックスなどを用いることができる。溶媒としては、水、メタノールまたはジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0030】
バインダー溶液は、窒化珪素粉末に対し、スラリー状態とならない量で加えられ混練される。例えば、最終的に投入される所定総量の40〜73質量%程度のバインダー溶液を窒化珪素粉末に加えて混練する。
【0031】
粉末中に溶液を加えて混練すると、この溶液が粒子の一部を捕獲して塊を形成する、いわゆる造塊現象が起きる。そして、一部の粒子は造塊してペレット状(塊)となり、複数のペレットが形成される。
【0032】
このとき、粉末混合工程に比べて混練攪拌装置は高速に回転させて混練してもよい。すなわち、ペレット形成工程における混練攪拌装置の回転数は、粉末混合工程におけるそれより大きくすることができる。これにより、セラミック粉末と第一バインダー溶液との接触の機会が多くなり、早く造塊して複数のペレットが効率よく形成されるため生産性が向上する。また、第一バインダー溶液を投入したことにより、セラミック粉末が舞い上がることを低減することができる。
【0033】
この工程における攪拌装置の回転数は、例えば、30〜60rpmであってもよい。
【0034】
この工程において装置にかかる負荷は粉末混合工程に比べ大きくなる。なお、装置にかかる負荷はモーターに流れる電流値で判断することができる。
【0035】
<坏土形成工程>
形成された複数のペレットをさらに混練することによって、ペレット同士が結合して更に大きなペレットが形成される。これを繰り返していくことによって、複数のペレットが
固着されてなる坏土(一つのかたまり)が形成される。
【0036】
坏土形成工程においては、混練により圧力をかけて、セラミックス粉末に第1バインダー溶液をなじませる。これにより、徐々にセラミック粒子の間に第一バインダー溶液が分散して入り込む。これにより、セラミック粒子同士が接着されて坏土が形成される。
【0037】
そして、上記混練においては、セラミック粒子同士の衝突によりせん断応力が生じる。そのため、セラミック粒子同士の付着や凝集等によって粗大な粒子が生じる事を低減させることができる。
【0038】
この工程において装置にかかる負荷は、セラミック粒子間の衝突の際に生じる摩擦力の影響により、一旦、ペレット形成工程に比べて急激に増加する。そして、坏土が形成されるとセラミック粒子間に滑りが出る。このため、装置にかかる負荷はあるピーク値に到達した後、低下し始める。
【0039】
また、この工程における混練攪拌装置の回転数は装置負荷の増大に合わせて、ペレット形成工程に比べて低い回転数とすることができる。この低い回転数で回転させて混練することにより、坏土が形成されるが、さらに続けて一定時間混練することにより坏土の粘度を低下させる。
【0040】
この坏土の粘度を低下させるための混練においては、回転数を一定にしてもよいが、装置にかかる負荷の低減に伴い回転数を増加させてもよい。これにより、この工程において、粗大な粒子が生じる事をさらに低減させることができる。
【0041】
坏土形成の為の混練時の攪拌装置の回転数は、例えば、25〜40rpmであってもよい。坏土の粘度調整の為の攪拌装置の回転数は、例えば、40〜60rpmであってもよい。
【0042】
<スラリー形成工程>
前記低い粘度を有する坏土に、第二バインダー溶液を滴下しながら攪拌することによって、坏土をスラリー状に変化させる(スラリー化工程)。具体的には、ホッパーに第二バインダー溶液を貯留し、ホッパーより混練攪拌装置内の坏土に第二バインダー溶液を少しずつ滴下しながら攪拌する。これにより、坏土に第二バインダー溶液が馴染み、坏土がペースト状に、そしてスラリー状に変化していく。
【0043】
次に、スラリー化が確認できた後に、追加の第二バインダー溶液または/および溶媒を添加してスラリーの粘度を調整する(粘度調整工程)。この工程において、スラリーを最適な粘度に調整することによって、鋳型用基体20に均一な厚みでスラリーを塗布することができる。
【0044】
この工程において装置にかかる負荷は、坏土形成工程におけるそれよりもさらに低減する。そのため、混練攪拌装置はスラリーが装置から飛散しない程度に高速に回転させて攪拌することができる。
【0045】
この工程における攪拌装置の回転数は、例えば、40〜60rpmであってもよい。
【0046】
第二バインダー溶液の種類、すなわち、第二バインダー溶液の組成は、第一バインダー溶液のそれと同一であっても、異なってもよい。第二バインダー溶液の組成が第一バインダー溶液の組成と同一の場合、坏土と第二バインダー溶液とが馴染み易い。
【0047】
また、この工程において、スラリー化工程後または粘度調整工程後に、スラリーをふるいにかけてもよい。これにより、スラリーに残存する粗大な粒子を除去することができる。特に、後述する工程において、スラリーをスプレーにて塗布する際にはスプレー装置の詰まりの問題を低減することができる。なお、前記ふるいは、10〜500μm目開きのメッシュを有するものを用いることができる。
【0048】
<離型層の形成>
上述のようにして得られたスラリーを、鋳型用基体20の内表面に付着させる。スラリーの付着は、得られたスラリーを、へらや刷毛などによって塗布するかあるいはスプレー法などを用いることによって行う。このように付着させたスラリーを自然乾燥させるかまたはホットプレートに載せて乾燥させる。これによって、鋳型用基体20に離型層2が形成され、鋳型1が得られる。離型層2の厚みは、0.3〜2mm程度とすることができる。
【0049】
本実施形態においては、上述のように、少なくとも窒化珪素粉末を含むセラミック粉末の坏土を形成した後にスラリー化を行う。それにより、粗大な粒子を低減し、さらにセラミック粉末とバインダー溶液との混ざり具合がよくなり、セラミック粉末の凝集を低減することができる。
【0050】
また、表面酸化処理がなされた窒化珪素粉末は、一部の粉末粒子同士が互いの酸化膜を結合部とすることで凝集するが、坏土形成工程において窒化珪素粉末の凝集が解消される。よって、別途、窒化珪素粉末の凝集体を粉砕する工程を設けることなく、窒化珪素粉末が好適に分散してなる離型層2を形成することができる。
【0051】
すなわち、表面酸化処理後に、窒化珪素粉末中に存在した凝集体が坏土工程において残存しにくく、窒化珪素粉末が均一に分散してなる離型層2を形成できる。
【0052】
その結果、以上のような工程により鋳型1を形成することで、シリコンインゴット製造時の不純物の混入が低減でき、生産性に優れる鋳型が得られる。
【0053】
次に、図2乃至図4を用いて、本発明の一実施形態に係る離型層形成装置100について説明する。図2は、離型層形成装置100の構成を模式的に示す概略図である。図3(a),(b)は、図2に示す加熱手段を模式的に示す斜視図である。図4は、図3に示す加熱手段が鋳型用基体の内部に下降した状態を示す斜視図である。
【0054】
図2に示す離型層形成装置100は、鋳型用基体20の内表面に離型層2を形成するための装置である。具体的には、離型層形成装置100は、スプレー塗布による鋳型用基体20の内表面へのスラリーSの塗布と、その後の乾燥処理とによって、離型層2を形成する。
【0055】
図2に示すように、離型層形成装置100は、筐体であるブース11、このブース11内に配置された回転台12および搬送テーブル13と、を備える。
【0056】
ブース11は、内部にスプレー塗布処理用の第1処理空間11aと乾燥処理用の第2処理空間11bとが設けられている。
【0057】
回転台12は、スプレー塗布処理および乾燥処理の際の鋳型1(鋳型用基体20)が載置される台であり、本実施形態においては、矢印AR1にて示すように水平方向に回転自在である。すなわち、回転台12は、スプレー塗布処理時および乾燥処理時に水平回転することができる。回転台12は、移動せず固定されてもよく、また、第2処理空間11b
には回転台12を設けなくても構わない。
【0058】
搬送テーブル13は、鋳型1(鋳型用基体20)が載置された回転台12を第1処理空間11aと第2処理空間11bとの間で矢印AR2の方向へ水平搬送するためのものである。
【0059】
なお、回転台12および搬送テーブル13は、図示しない駆動機構によって駆動される。
【0060】
第1処理空間11aと第2処理空間11bとは扉14aを有する隔壁14にて隔てられている。これにより、第1処理空間11aにおけるスプレー塗布処理の雰囲気が第2処理空間11bへと流出することが低減される。なお、隔壁14に設けられた扉14aを開き、搬送テーブル13によって回転台12を第1処理空間11aと第2処理空間11bの間で搬送することができる。
【0061】
離型層形成装置100は、飛沫処理機構であるウォーターカーテン15と、排気手段16と、を備える。
【0062】
排気手段16は、第1処理空間11aの上部に設けられ、ブース11内部の雰囲気を排気する。
【0063】
ウォーターカーテン15は、周囲に飛散するスラリーを回収したり、スラリーによるブース11内の汚染を軽減したりするためのものである。ウォーターカーテン15は、第1処理空間11aの上端部であって隔壁14の近傍に設けられた多数の噴射口(不図示)から、鉛直下方に向けて、噴射された噴射水である。ウォーターカーテン15は、後述するノズル25のスプレー方向の先方に形成される。
【0064】
図2に示すように、本実施形態においては、スプレー方向が第2処理空間11bの方であることから、ウォーターカーテン15が第2処理空間11bの側に設けられているが、これに限らない。例えば、ノズル25からのスプレーはブース11を形成する他の壁に向けて行われてもよく、係るスプレー方向の先方に対してウォーターカーテン15を配置すればよい。
【0065】
また、ウォーターカーテン15の代わりに、第1処理空間11aの雰囲気をフィルターパスして排気する排気装置を設けて、飛散するスラリーを回収するようにしてもよい。また、飛沫処理機構を備えていれば、隔壁14を設けなくても構わない。
【0066】
離型層形成装置100は、さらに、ノズル25のスプレー方向の先方に配置された離型材回収板と、離型材回収板の下部に配置された離型材回収容器を備えてもよい。離型材回収板および離型材回収容器は、ウォーターカーテン15とスプレー25との間に配置してもよい。鋳型用基体20の外側に飛散したスラリーが離型材回収板に衝突し、固まった離型材が離型材回収板の下部に落下して、離型材回収容器に回収される。このように回収された離型材は、溶剤成分が少なく、純度の高い窒化珪素等のセラミック粉末とバインダーからなる。このため、このように回収された離型材は、再度、スラリーにして再利用することができる。離型材回収板や離型材回収容器の材料は、ステンレスやフッ素樹脂等であってもよい。離型材回収板や離型材回収容器は、特に、表面凹凸が小さいものを用いることが好ましい。
【0067】
第1処理空間11aには、スプレー塗布手段21が設けられている。スプレー塗布手段21は、循環供給経路である第1供給経路L1によって、ブース11の外部に設けられた
タンク22と接続されている。スプレー塗布手段21は、タンク22に貯留されているスラリーSを、ノズル(スプレーガン)25から鋳型用基体20に向かって吐出する。
【0068】
スラリーSは、第1供給経路L1上に備わる例えばダイヤフラムポンプなどのポンプ23によって汲み出され、第1供給経路L1上に備わる流量調整機構24によってその流量が調整される。
【0069】
流量調整機構24は、塗布されるスラリーの流量を流量計でモニターしながら、塗布量を調整する機構を配してもよい。
【0070】
ノズル25は、第1処理空間11aに配置され、かつ、第1供給経路L1から分岐する第2供給経路L2の先端部に配置されている。ノズル25から、流量調整機構24における流量調整結果に応じた吐出圧にて、スラリーSが吐出される。
【0071】
また、ノズル25は、例えば矢印AR3に示すように可動自在である。これにより、回転台12に載置された鋳型用基体20の任意の箇所に対して、スラリーSを効率的に付着させることができる。ノズル25の移動と回転台12の回転とを併用することで、鋳型用基体20の内表面の広い範囲にスラリーSを吐出させることができる。
【0072】
ノズル25は、スラリーSの吐出のオン/オフおよび吐出圧の調整を行う機構を備えてもよい。また、ノズル25はブース11の外部に移動可能であってもよい。
【0073】
なお、第2供給経路L2およびノズル25は、離型層2の非形成時にノズル25からタンク22の内部に向けてスラリーSの吐出が行えるような構成を有していてもよい。これにより、離型層2の形成の有無にかかわらずノズル25からスラリーSをほぼ常時吐出させることができる。このようにスラリーSをノズル25から常時吐出させることにより、第1供給経路L1および第2供給経路L2内や、ノズル25内でのスラリーSの詰まりや、スラリーSの粘度変化が低減される。なお、スラリーSをノズル25からタンク22内に吐出する際には、タンク22の内壁面に向けてスラリーSを吐出することができる。これにより、タンク22内のスラリーSへのエアーの混入を低減することができる。また、タンク22内へのスラリーSの吐出の流量は、離型層2を形成する際の吐出の流量よりも小さくすることが可能である。
【0074】
第1供給経路L1には、必要に応じて、スラリーSの粘度を調整する調整機構を配してもよい。具体的には、スラリーSの粘度をモニターし、粘度上昇を感知した場合、タンク22内に溶剤を添加して粘度上昇を低減する、粘度コントローラー等の機器を配置してもよい。
【0075】
図2においては、タンク22はブース11の外部に配置されているが、タンク22はブース11の内部に設けられても構わない。
【0076】
なおまた、タンク22は、攪拌棒26aを回転動作させることでスラリーSを攪拌する攪拌手段26を備える。離型層2の形成時に連続的或いは断続的に攪拌手段26による攪拌を行うことで、タンク22におけるスラリーSの粘度変化が低減される。タンク22または攪拌棒26aの構成材としては、洗浄性のよい材質を選択することができる。具体的には、表面をフッ素樹脂コートしたもの、または表面をバフ研磨仕上げされたステンレスなどを用いることができる。これにより、スラリーS中への不純物の混入を低減することができる。また、攪拌手段26としては、タンク22の容量、スラリーSの残量に応じて、タンク22内のスラリーSを効率よく攪拌できる手段を選択すればよい。例えば、タンク22内に入れられた攪拌子を、タンク22の外部からマグネットスターラーで回転させ
てスラリーSを攪拌する等の方法で攪拌するようにしてもよい。
【0077】
第2処理空間11bには、加熱手段31が設けられている。加熱手段31は、鋳型用基体20の内表面に塗布されたスラリーSを乾燥させ、離型層2を形成させるための乾燥処理手段である。
【0078】
図3(a)に示すように、加熱手段31は、概略、頂点部31aを下方に配置した四角錐状の構造(逆ピラミッド構造)を有している。加熱手段31は、4つのヒータ(発熱部)32と蓋部33とを備える。ヒータ32は、四角錐の4つの斜辺に相当する位置に配置される。蓋部33は、最上部に位置する、四角錐の底面に相当する位置に配置される。蓋部33およびヒータ32を支持するための支持部材(不図示)などは、所定の金属材料等によって構成することができる。
【0079】
加熱手段31は、ヒータ32が、図2に示す加熱電源34からの通電により発熱することで、ヒータ32の周囲を加熱する。ヒータ32は、加熱手段31の外方への加熱が効率的になされるように配置されるかもしれない。
【0080】
図3(b)は、他の実施形態に係る加熱手段311の斜視図である。図3(b)に示すように、加熱手段311は、加熱効率をより高めるために、それぞれのヒータ32の側方に配置された反射部材32aを備える。反射部材32aは、ヒータ32から加熱手段311の内部に向かう輻射熱を加熱手段311の外方へと反射させる。反射部材32aは、蓋部33と同一の構成材料にて蓋部33と一体に設けることができる。
【0081】
ヒータ32は、ランプヒータ等の、放射する光の波長が赤外線領域にある光加熱手段であるかもしれない。ヒータ32は、例えば、温度応答性に優れた近赤外線ランプ(近赤外線加熱手段)であってもよい。
【0082】
また、加熱手段としては、ヒータ32とヒータ32の側方に設けた反射部材32aを備えるもの以外に、反射膜コート付きで加熱方向に指向性を有するランプヒータを用いてもよい。この場合、光加熱手段により支持部材等が昇温されることを低減して、離型材を塗布する鋳型用基体の内表面の温度を昇温することができる。そのため、短時間でほぼ均一な加熱を行うことができる。
【0083】
加熱手段31は、図2において矢印AR4にて示すように、上下方向に移動自在である。加熱手段31による加熱は、加熱手段31の下方位置に鋳型用基体20を配置したうえで、加熱手段31をこの鋳型用基体20の内部空間へと下降させた状態で行う。加熱手段31は、蓋部33が鋳型用基体20の最上部20aと略同一の高さとなるまで下降させる。すなわち、鋳型用基体20の上面が蓋部33によって塞がれるようにした状態で加熱を行う。
【0084】
図4に示すように、加熱手段31は、4つのヒータ32のいずれもが、鋳型用基体20の内側の側辺部および内側底面の角部(以降、これらを内側端部とも称する)と対向する位置にくるように配置される。このような配置状態が実現されるように、加熱手段31は、蓋部33を上述の位置にまで下降させた場合に、頂点部31aが鋳型用基体20の底面に接触せず、かつ、蓋部33と鋳型用基体20との間に隙間3が確保される形状およびサイズを有する。
【0085】
このように、鋳型用基体20の内表面に塗布されたスラリーSの加熱乾燥を、鋳型用基体20の内部に加熱手段31を配置させた状態で行うので、塗布されたスラリーSがほぼ均一に乾燥される。これにより、鋳型用基体20の外側から加熱を行う手法に比べ、加熱
のばらつきが起きにくく、厚みの均一性の優れた離型層2を形成することができる。また、設備コストを低減し、装置間の鋳型用基体20の搬送を容易にできる。これにより、鋳型用基体20の加熱から塗布までの間に鋳型温度が低下することを低減することできる。
【0086】
特に、スラリーSの加熱乾燥の際に、上述のように4つのヒータ32が鋳型用基体20の内側端部と対向する位置に配置される。このため、乾燥が進みにくいこれらの箇所についても、良好にスラリーSが乾燥される。加えて、図3(b)に示すように、加熱手段31が反射部材32aを備える場合には、ヒータ32からの熱(輻射熱)を、より効率的に上述の内側端部に与えることができる。
【0087】
また、各ヒータの出力設定を適宜に調整することによって、鋳型内表面を所望の最適温度分布になるよう加熱することが可能となる。例えば、加熱後、塗布処理を行うまでの間に温度が低下しやすい鋳型用基体20の内側端部を、側面部や底面部よりも高い温度まで加熱することも可能になる。そのため、より厚みのバラツキが少ない離型層を形成することができる。
【0088】
離型層形成装置100は、鋳型用基体20の外周に配置された鋳型用基体20を固定する治具や断熱材を備えていてもよい。このような離型層形成装置100においても、概ね数十秒〜数分で、鋳型用基体20の内表面を所望の温度に加熱することができる。
【0089】
また、図3および図4においては図示されていないが、加熱手段31は、図2に示すように、蓋部33に接続するガスノズル(ガス供給手段)35を備える。ガスノズル35は、ブース11の外部に設けられたガスボンベ36から送られるガスを蓋部33の下方へと供給する。
【0090】
上述した加熱処理(乾燥処理)の際に、ガスノズル35からガスを供給することで、鋳型用基体20の内部に熱循環を生じさせて内部における温度分布のバラツキを低減することができる。また、加熱によってスラリーSから溶媒が揮発することにより鋳型用基体20の内部の空気は揮発溶媒成分を含むようになる。例えば、溶媒が水の場合であれば鋳型用基体20の内部の空気が湿気を多く含むようになる。この場合、ガスノズル35から鋳型用基体20の内部にガスを供給することで、そうした内部の空気が鋳型用基体20と加熱手段31の蓋部33との隙間3から排出される。これにより、溶媒揮発成分が鋳型用基体20の内部に残留することによる乾燥の遅れや離型層の厚みの不均一の発生が低減される。なお、使用されるガスとしてはアルゴンや窒素等の不活性ガスや空気などが用いられる。
【0091】
次に、離型層形成装置100を用いた鋳型用基体20への離型層2の形成方法について図5を用いて説明する。
【0092】
まず、離型層2の形成前の鋳型1、すなわち、鋳型用基体20を回転台12の上に載置し、第2処理空間11bの所定の加熱処理位置に配置する(ステップS1)。そして、加熱手段31を鋳型用基体20の内部に下降させる。そして、加熱電源34からヒータ32に通電してヒータ32を発熱させることにより、鋳型用基体20の内部を加熱する(ステップS2)。
【0093】
このような加熱は、次工程でスラリーを塗布した際に溶媒成分を瞬時に揮発させてスラリーの垂下を低減し、また、離型層2の鋳型用基体20側、すなわち、離型層2の内部側における未乾燥を低減する。すなわち、この加熱は、鋳型用基体20の内表面に対するスラリーの付着性を高める予熱に相当する。
【0094】
加熱温度は、80℃〜300℃程度、さらには、160℃〜260℃とすることができる。この加熱温度は、鋳型用基体20の材質、サイズ、塗布しようとするスラリーの種類など、種々の条件に応じて適宜に定めることができる。なお、ここでいう加熱温度とは、スラリーが塗布される鋳型用基体20の内表面の温度をいう。
【0095】
このような予熱の終了後、搬送テーブル13を作動させて、回転台12ごと鋳型用基体20を搬送させ、第1処理空間11aの所定の塗布処理位置に配置する(ステップS3)。そして、スプレー塗布手段21により、ノズル25の先端から鋳型用基体20の内表面にスラリーSを塗布する(ステップS4)。スラリーSの塗布は、ノズル25を適宜にあるいは所定の順序で移動させつつ、所定の塗布厚のスラリーSが塗布されるまで行う。このとき、必要に応じて回転台12を回転させてもよい。またこの際に、スラリーSは鋳型1の上部から下部に向かって塗布されることが好ましく、スラリーSの垂れ下がりを低減することができる。
【0096】
スラリーSの塗布が完了すると、搬送テーブル13を作動させて、回転台12ごと鋳型用基体20を搬送させ、再び第2処理空間11bの加熱処理位置に配置する(ステップS5)。そして、加熱手段31をスラリーが塗布された鋳型用基体20の内部に下降させる。そして、加熱電源34からヒータ32に通電してヒータ32を発熱させることにより、鋳型用基体20の内部を加熱する(ステップS6)。係る加熱により、鋳型用基体20の内表面に塗布されたスラリーSを乾燥させる。
【0097】
加熱温度は、80℃〜300℃程度であればよく、鋳型用基体20の材質、サイズ、塗布しようとするスラリーSの種類など、種々の条件に応じて適宜に定めることができる。加熱手段31を用いた加熱乾燥を行うことにより、鋳型用基体20の内部において均一性の優れた加熱乾燥を行うことができる。
【0098】
また、ヒータ32として近赤外線ランプを用いる場合、加熱開始後、すばやく所望の温度範囲にまでスラリーSを昇温させることができる。このため、未乾燥のスラリーSが垂れ下がりにくくなるとともに、乾燥処理にかかる時間を低減できる。
【0099】
また、乾燥を終了させるタイミングは、適度な乾燥状態が得られるように、適宜の基準で定められてよい。ただし、後述のようにスラリーSを重ね塗りする場合においては、後から塗布したスラリーSが先に形成された離型層2に定着せずに、層剥離が生じることを低減するよう、乾燥条件(終了条件)を定めればよい。すなわち、未乾燥部分が残らないように過度に乾燥させないようにすればよい。
【0100】
乾燥処理の終了後、さらに上からスラリーSを塗布する(重ね塗りする)場合は(ステップS7でYES)、ステップS3に戻り、鋳型用基体20の温度を室温に戻すことなく加熱状態を維持したままスプレー塗布を行う。すなわち、鋳型用基体20の内表面の温度が高温に維持された状態でスプレー塗布を行う。これにより、離型材スラリーの垂れ下がりが低減され、一度に多くの量のスラリーを塗布した場合でも離型層2の鋳型用基体20側における未乾燥が低減する。すなわち、離型層2と鋳型用基体20または離型層2同士の付着力の低下、離型層2の剥離、または浮き等の発生が低減する。結果として、繰り返し塗布する回数が少なくなる。
【0101】
乾燥処理の終了後、さらなるスラリーSの塗布を行わない場合は(ステップS7でNO)、ブース11から鋳型用基体20を取り出す(ステップS8)。これにより、鋳型用基体20への離型層2の形成処理が終了する。これにより、鋳型1が得られる。
【0102】
なお、塗布処理および乾燥処理を複数回(例えば10回程度)繰り返す重ね塗りを行う
ことにより、乾燥しにくい鋳型用基体20側の離型層2の未乾燥を低減し、離型層2の膜厚の均一性をより高め、離型層の剥離を低減することができる。
【0103】
また、複数回繰り返す重ね塗りを行う場合には、1回目の塗布量を2回目以降の塗布量よりも少なくする、つまり1回目に形成する膜厚を2回目以降に形成する膜厚よりも小さくすることが好ましい。鋳型基体20と離型層2との界面に水分が残ると離型層2が剥がれ落ちる可能性があるため、1回目に形成する膜厚を薄くすることにより、乾燥処理において過度に乾燥することなく鋳型基体20と離型層2との界面に水分が残る問題を低減することができる。
【0104】
以上、説明したように、本実施形態によれば、鋳型用基体20内表面への離型層の形成に際して、スプレー塗布後のスラリーの乾燥を、鋳型用基体20内部に配置した加熱手段によって行う。これにより、乾燥状態の均一性を高めることができる。特に、加熱手段は、逆ピラミッド構造で、且つ、4つの斜辺に相当する位置に配置されたヒータを備える。これにより、乾燥が進みにくい鋳型の内側端部についても、良好な乾燥を行うことができる。また、塗布処理および乾燥処理を複数回繰り返す重ね塗りを行うことで、形成される離型層の膜厚の均一性をより高めることができる。
【0105】
次に、図6(a)乃至(c)を用いて、本発明の他の実施形態に係る加熱手段について説明する。後述するように、加熱手段において、ヒータの配置を種々に調整することができる。これによって、鋳型用基体20の内表面を所望の温度分布に加熱することが可能となる。
【0106】
図6(a)は、一実施形態に係る加熱手段312の斜視図である。加熱手段312は、蓋33と、4つのヒータ32と、ヒータ37と、を備える。4つのヒータ32は、四角錐の斜辺位置に配置され、ヒータ37は、この四角錐の頂点部31aを重心位置とする矩形の4辺に配置される。ヒータ37は、頂点部31aとの間に設けられた支持部材37aによって支持される。また、図6(a)では、4つのヒータ32が四角錐の斜辺位置に設けられているが、これに代わり、それぞれのヒータ32は、蓋部33の頂点と4つのヒータ37がなす矩形の頂点との間に配置してもよい。すなわち、加熱手段は、側面視台形になるようにしてもよい。
【0107】
図6(b)は、一実施形態に係る加熱手段313の斜視図である。加熱手段313は、蓋部33と3つのヒータ38とを備える。ヒータ38は、蓋部33から下方に延在する支持部材38aの途中の複数の高さ位置および最下端部に配置される。そして、ヒータ38は、図6(a)に示すヒータ37のように、矩形をなす。この場合、ヒータ38は、支持部材38aと支持部材38bとによって支持される。
【0108】
図6(c)は、一実施形態に係る加熱手段314の斜視図である。加熱手段314は、蓋部33と3つのヒータ39とを備える。ヒータ39は、蓋部33から下方に延在する支持部材39aの途中の複数の高さ位置および最下端部に配置される。そして、ヒータ39は、支持部材39aの位置を中心とする環状をなす。この場合、ヒータ39は、支持部材39aと支持部材39bとによって支持される。図6(c)に示す加熱手段31は、鋳型用基体20の内部が円筒形を有する場合に特に採用することができる。
【0109】
加熱手段が備えるヒータの個数は、鋳型用基体20の各側辺部に1本ずつの4本に限定されない。例えば、鋳型用基体20の各側面の中央部と側辺部のそれぞれに対応させてヒータを配置することにより、合計8本のヒータを設けてもよい。使用する鋳型用基体20の内表面のサイズ、深さ等を勘案し、加熱手段31におけるヒータの本数や配置を最適のものとすればよい。
【0110】
次に、図7を用いて、本発明の一実施形態に係る離型層形成装置200について説明する。
【0111】
図7に示す離型層形成装置200は、回転機構201を備える。回転機構201は、第1処理空間11aと第2処理空間11bとの間の鋳型用基体20の搬送を行う。回転機構201は、その回転中心に対して対象な位置に複数の鋳型載置台202を備えている。図7においては、回転機構201は、鋳型載置台202を2つ備える。このような回転機構201を備える離型層形成装置200においては、相異なる鋳型用基体20に対して、第1処理空間11aにおける塗布処理と第2処理空間11bにおける乾燥処理とを並行して行う。そして、それぞれの処理が終了すると、回転機構201を鋳型載置台202の個数に応じた回転角度で回転させ、第1処理空間11aと第2処理空間11bとにおいて、それぞれ次の鋳型用基体20に対して処理を行うことができるようになっている。これにより、離型層形成のスループットの向上が実現されている。
【0112】
次に、図8を用いて、本発明の一実施形態に係る離型層形成装置300について説明する。
【0113】
図8に示す離型層形成装置300は、第2処理空間11bにおいて、搬送経路301と、複数の加熱処理位置301a〜301dを備える。搬送経路301は複数に分岐し、それぞれの終端に、加熱処理位置301a〜301dが配置されている。加熱処理位置301a〜301dは、各々加熱手段31を備える。
【0114】
このような搬送経路301を備える離型層形成装置300においては、第1処理空間11aにおいて塗布処理を施した鋳型用基体20が、鋳型載置台302とともに加熱処理位置301a〜301dのいずれかに搬送される。そして、これと入れ替わりに、他の加熱処理位置から第1処理空間11aに鋳型用基体20が鋳型載置台302ごと搬送され、塗布処理に供される。これにより、離型層形成のスループットの向上が実現されている。
【0115】
また、スプレー塗布処理用の第1処理空間11aと乾燥処理用の第2処理空間11bとは、それぞれ別の筐体として設け、それぞれを搬送系で接続してもよい。
【0116】
また、塗布手段21と加熱手段31とが一の筐体に配置されてもよい。この場合、鋳型用基体20を搬送せずに筐体内に固定し、塗布手段21による塗布と加熱手段31による加熱とを交互に行うことにより離型層を形成することができる。また、この場合、加熱手段31として光加熱手段を用いることができる。これにより、装置を大型化することなく設備コストを低減することができる。さらに、塗布手段21と加熱手段31が相異なる鋳型用基体20を同時に処理できるように、各手段を離型層形成装置内に配置してもよい。
【0117】
次に、本発明の一実施形態に係るシリコンインゴットの製造方法について説明する。本実施形態においては、以上のようにして形成された鋳型1を用いてシリコンインゴットを製造する。
【0118】
まず、鋳型1を9〜12kPaに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中に置き、鋳型1
をシリコンの融点と同程度か若干低い温度、例えば、融点を数十℃程度下回る温度となるまで加熱する。鋳型1がこのような温度に達すると、あらかじめ作製しておいたシリコン融液を鋳型1内に注ぎ込む。なお、鋳型1内にシリコン原料を入れて加熱溶解するようにしてもよい。シリコン融液は、例えばボロン等のドーパントを混入させることによって、p型にドーピングされているものを用いることができる。
【0119】
その後、鋳型1を、その底部から徐々に降温させることによってシリコン融液を鋳型1の底部側から徐々に一方向凝固させる。シリコン融液が完全に凝固することにより、シリコンインゴットが得られる。
【0120】
本実施形態においては、上述のような工程により離型層2を形成してなる鋳型1を用いる。そのため、シリコンインゴット製造中に離型層2の一部が剥離してシリコン融液中に異物となって混入することや、シリコン融液と鋳型1が接触して融着することを低減することができる。また、スプレー塗布により形成された離型層2は鋳型1の内表面に適用した形状と成り、形成されたシリコンインゴットの角部は直角に形成される。そのため、シリコンインゴットを最適な大きさに切断する工程において位置合わせが行い易く、精度よく切断することができる。
【0121】
また、上記説明においては一体成型または組立てた後の鋳型用基体20に離型層2を形成しているが、これに限定されず、鋳型用基体20の組立部材であり、底部および側部を構成する例えば板状の部材に離型層2を形成した後に鋳型1に組立てても構わない。なお、鋳型1に組立てた後に、鋳型1の辺にあたる部分に離型層2を形成することが好ましい。
【0122】
図9に示す離型層形成装置400は、第2処理空間11bにおいて搬送経路401と、搬送経路401の上部に複数のヒータ32を備えた構成を有する。第1処理空間11aにおいて、鋳型用基体20の底部または側部を構成する板状部材20aに塗布処理を施した後、板状部材20aは第2処理空間11bに搬送され、離型層2が形成された面をヒータ32側に向けて搬送経路401により搬送されながらヒータ32により加熱される。これと入れ替わりに、乾燥処理が完了した板状部材20aが第2処理空間11bから第1処理空間11aに搬送され、塗布処理に供される。これにより、離型層形成のスループットの向上が実現されている。
【0123】
図9では、第1処理空間11aにおいて、1枚の板状部材20aに対して塗布処理を行っているが、複数枚の板状部材20aを設置して塗布処理を行ってもよく、さらに搬送機構を設けて搬送方向に複数の部材を並べ、ノズル25のスプレー方向に部材を搬送しながらスラリーSを塗布するように離型層形成装置を構成してもよい。
【0124】
また、板状部材20aが載置される鋳型載置台402に、板状部材20aを下部から加熱するヒータをさらに備えることにより、板状部材20aを一定温度に保持してスラリーSを塗布することができる。また、下部から加熱するヒータを利用して板状の部材1aを予熱して、一定温度に保持してスラリーSを塗布した後、第2処理空間にて乾燥処理を行ってもよい。
【0125】
また、第1処理空間11aにおいて、離型材を回収する機構を設けるようにしてもよく、例えば、板状部材20a以外にスラリーSが塗布される塗布領域をメッシュ形状にした鋳型載置台と、鋳型載置台の下部に離型材回収容器と、を設けることにより、板状部材20aの周囲に飛散したスラリーSは、メッシュ部分を通り抜けて離型材回収容器に回収される。
【0126】
なお、鋳型組み立ての際、離型層の形成が不要な領域となる板状部材20aの端部には、板状部材20aを固定する固定治具やカバー部材を設けるようにすればよい。
【0127】
<離型層形成の変形例>
図10に示すように、鋳型1は鋳型用基体20と離型層2との間に吸水層4を有するような態様であってもよい。吸水層4は、PVA等からなるバインダーと溶剤から構成され
る溶液を塗布することにより形成することができる。スラリーSに用いられるPVA溶液を用いることにより、鋳型1内で形成されるシリコンインゴットの不純物濃度を抑えることができる。乾燥処理においてスラリーSの表面側から溶媒が揮発することから、鋳型用基体20と離型層2との界面に水分が残りやすいが、吸水層4を設けることにより鋳型側に位置するスラリーSの溶媒が吸水層4により一部吸収されることから、鋳型用基体20と離型層2との界面に水分が残る問題を低減することができる。
【0128】
<太陽電池素子用基板の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る太陽電池素子用基板の製造方法について説明する。一実施形態に係る太陽電池素子用基板は、上述のようにして得られたシリコンインゴットを所定の大きさに切断し、例えば、9分割に切断し、さらに、マルチワイヤーソーなどを用いてスライスすることによって得られる。
【0129】
本実施形態によれば、太陽電池素子用基板は、鋳型1を用いて製造されたシリコンインゴットから得られる。すなわち、シリコンインゴット製造時にシリコン融液と鋳型が接触することや不純物がシリコン融液中に混入することが低減される。そのため、これらに起因する特性の低下が低減された太陽電池素子を作製可能な太陽電池素子用基板を、高い歩留まりで得ることができる。
【0130】
<太陽電池素子とその製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る太陽電池素子110とその製造方法について説明する。図11に示すように、太陽電池素子110は、基板101と、拡散層102と、裏面電極108と、表面電極106と、反射防止膜107と備える。
【0131】
基板101は、上述した鋳型1を用いて製造したシリコンインゴットを切断して得られた多結晶のシリコン基板である。
【0132】
拡散層102は、基板101の表面全体に形成され、n型の導電型を有する層である。拡散層102は、基板101の表面から一定の深さまでn型不純物を拡散させることにより形成される。図11において、拡散層102は、基板101の上側主面に形成されている。
【0133】
裏面電極108は、集電電極104と取出電極105とを備える。集電電極104と取出電極105とは、いずれも、例えば銀を主成分として形成される。集電電極104はアルミニウムを主成分として形成されてもよい。
【0134】
表面電極106は、基板101の表面側に形成された、例えば銀を主成分とする電極である。
【0135】
反射防止膜107は、例えば酸化珪素、窒化珪素、酸化チタンなどからなり、拡散層102の上面に設けられている。
【0136】
次に、太陽電池素子110の製造方法の一例について説明する。
【0137】
まず、上述の工程によって作製されたシリコンインゴットを切断して得られた、p型の導電型を有する太陽電池素子用の基板101を準備する。この基板101の表面(受光面)側に凹凸形状を形成する。そして、凹凸形状を有する基板101の表面から一定の深さまでn型の不純物を拡散させることによって、基板101に拡散層102を設ける。これにより、基板101と拡散層102の間にpn接合が形成される。さらに、拡散層102の表面に、酸化珪素、窒化珪素、酸化チタンなどによって反射防止膜107を形成する。
【0138】
一方、アルミを主成分とする電極ペーストを基板101の裏面に塗布して焼成することにより、集電電極104を形成する。その後、基板101の表面側、裏面側に、それぞれ、銀を主成分とする電極ペーストを所定のパターンにて塗布して焼成することにより、表面電極106および取出電極105を形成する。これによって、太陽電池素子110が形成される。
【0139】
なお、高濃度のp型拡散層であるBack Surface Field(BSF)層103が基板101の裏面側に配置されていてもよい。BSF層103は、集電電極104をアルミニウムにて形成する場合であれば、集電電極104の形成過程、すなわち、アルミニウムペーストの塗布・焼成過程においてアルミニウムが基板101に拡散することによって形成される。
【0140】
また、太陽電池素子110が裏面側のみに電極が設けられる構造を有するようにしてもよい。
【0141】
本実施形態に係る太陽電池素子110は、上述の方法によって作製した鋳型1を用いて製造したシリコンインゴットから得られた基板101を有する。これにより、シリコンインゴット製造時にシリコン融液と鋳型が接触することや不純物がシリコン融液中に混入することに起因する特性の低下が低減された太陽電池素子を得ることが出来る。さらに、本実施形態に係る太陽電池素子110の製造方法により、このような優れた特性を備える太陽電池素子を高い歩留まりで得ることができる。
【0142】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることが出来る。
【0143】
例えば、ペレット形成工程、坏土形成工程においては、水分揮発による温度上昇を低減するために、混練攪拌装置に冷却機構を設けてもよい。
【0144】
また、上記説明においてはシリコン融液をp型にドーピングしているが、n型にドーピングしても構わない。
【実施例】
【0145】
以下に、上述した実施形態をより具体化した一実施例について説明する。
【0146】
平均粒径が0.5μm程度の窒化珪素粉末を表面酸化処理した表面酸化窒化珪素粉末と、平均粒径が20μm程度の二酸化珪素粉末とを準備した。これらの粉末をプラネタリーミキサーにより混合して、セラミックス粉末を得た。そして、PVA水溶液を有するバインダー溶液を上記セラミック粉末に追加して混練し、坏土を形成した。得られた坏土を混練し続けた後、バインダー溶液を坏土に滴下してスラリーを作製した。このとき、坏土を形成するために用いたバインダー溶液の投入量をセラミック粉末に対し41質量%〜51質量%で調整することにより、スラリー中に存在する平均粒径が100μm以上の粒子の比率を調整した。このようにして得られたスラリーを用いて離型層を形成することにより、形成された離型層の密度を変化させることができた。
【0147】
実施例1〜8、および比較例1〜3においては、100μm以上の粒子比率が3.7質量%のスラリーを用いた。実施例9においては1.6質量%、実施例10においては2.5質量%、実施例11おいては5.7質量%、および実施例12おいては9.2質量%のスラリーをそれぞれ用いた。なお、平均粒径が100μm以上の粒子比率とは、100μmの目開きのふるいを用いて、スラリーをふるいにかけた時に、ふるい上に残存した粒子
の質量の比率である。
【0148】
次に、1つの底面と4つの側面からなる鋳型用基体を準備した。この鋳型用基体の内表面に、スプレー装置を用いてスラリーを塗布し、乾燥させた。
【0149】
このときの乾燥方法は、実施例1および比較例1,2においては、炉内温度が180℃の乾燥炉に鋳型用基体を配置して加熱した。また、実施例2〜12および比較例3においては、図3(b)に示される近赤外線ランプを有する加熱手段を鋳型用基体の内表面に対応するよう配置して加熱した。また、実施例1〜12はスラリーを塗布する前に各条件の温度で鋳型用基体を予備加熱した後、スラリーを塗布した。また、実施例1〜12および比較例2,3は、塗布処理および乾燥処理を10回繰り返し行って離型層を形成した。比較例1は1度の塗布処理および乾燥処理を行って離型層を形成した。
【0150】
そして、各条件で10個の鋳型を作製し、形成された離型層を目視で確認して不良率を確認した。また、各条件の離型層の水分残量をエー・アンド・ディ製加熱乾燥式水分計(ML−50)を用いて測定した。ただし、比較例1以外においては、塗布処理および乾燥処理を5回繰り返し行った後の離型層(5層目)について水分残量を測定した。
【0151】
これらの結果を表1に示す。表1において、内面到達温度は、鋳型用基体の乾燥温度であり、乾燥処理後、直ぐに鋳型用基板を測定した温度である。具体的には、内面到達温度は、鋳型の内表面における側部の中心部付近を放射温度計で測定した。密度は、形成した離型層を約0.07〜0.1gとなるサイズで一部除去して、アルキメデス法を用いて測定した結果である。乾燥処理の時間(min/回)は、比較例1以外は乾燥処理が10回行われることになるため、塗布後に行われた1回の乾燥処理の時間を意味している。
【0152】
【表1】
【0153】
表1の結果から、鋳型用基体を予備加熱した後にスラリーを塗布することにより、不良率を低くすることができ、膜厚均一性の優れた離型層が形成できることを確認した。
【符号の説明】
【0154】
1 :鋳型
2 :離型層
3 :鋳型と加熱手段の蓋部の)隙間
4 :吸収層
11 :ブース
11a:第1処理空間
11b:第2処理空間
12 :回転台
13 :搬送テーブル
14 :隔壁
14a:扉
15 :ウォーターカーテン
16 :排気手段
20 :鋳型用基体
20a:板状部材(組立部材)
21 :スプレー塗布手段
22 :タンク
23 :ポンプ
24 :流量調整機構
25 :ノズル
26 :攪拌手段
26a:攪拌棒
31 :加熱手段
31a:(加熱手段の)頂点部
32、37、38、39:ヒータ
32a:反射部材
33 :(加熱手段の)蓋部
34 :加熱電源
35 :ガスノズル
36 :ガスボンベ
100、200、300、400:離型層形成装置
201:回転機構
202、302、402:鋳型載置台
301,401:搬送経路
301a〜301d:加熱処理位置
110:太陽電池素子
S :スラリー
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンインゴットを作製するための鋳型に、離型層を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から太陽電池素子を形成するための半導体基板の一種として多結晶シリコン基板が用いられている。多結晶シリコン基板は、シリコンインゴットを、所定の厚みに切断することによって得られる。このようなシリコンインゴットは、高温で加熱溶融させたシリコン融液を鋳型内に供給して凝固させることによって形成する方法、または、シリコン原料自体を鋳型内で溶融した後にそのまま凝固させることによって形成する方法などを用いて作製される。
【0003】
上述のような方法でシリコンインゴットを作製する場合、内表面に離型層が形成された鋳型が用いられる。通常、シリコンインゴットの鋳型からの脱型性を確保する目的で、炭素系またはシリカ系の材料からなる離型層を内表面に形成した鋳型が用いられる。一般的に、離型層の構成材料(離型材)としては、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)または二酸化珪素(SiO2)等の粉末が用いられ、特に窒化珪素が多用されている。
【0004】
離型層の形成手法として、上述の粉末を所定のバインダーと溶剤(例えば水)とから構成される溶液中に混合してスラリー化したもの(離型材スラリー)を、鋳型の内表面にスプレーやハケ等の手段で塗布し、これを乾燥させることによって形成する手法が公知である(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−239682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スプレー塗布により離型層を形成する場合、塗布後の乾燥状態を好適なものにするとともに、塗布膜の厚みを均一にする必要がある。乾燥が不十分で離型層に未乾燥部分が残った鋳型を用いて鋳造を行うと、離型層が剥離するという不具合が生じ得る。また、通常、スプレー塗布は、ハケによる塗布よりも溶剤量が多く粘度が低い離型材スラリーを用いる必要があるが、スラリー粘度が低過ぎると、塗布後、乾燥するまでの間にスラリーが垂れてしまい、離型層の厚みが不均一になるという不具合が生じる。一方で、溶剤量を少なくし、スラリー粘度を高めた離型材スラリーを用いると、スプレーノズル内で離型材スラリーが詰まってしまい、離型層の形成自体が困難となる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、厚みの均一性が高い離型層を備えた、シリコンインゴット形成用の鋳型できる離型層形成装置および離型層形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る離型層形成装置は、鋳型用基体の内表面に離型層を形成する装置であって、
前記内表面に離型材スラリーを塗布する塗布手段と、
前記鋳型用基体の内部に配置された状態で、前記鋳型用基体への加熱を行う加熱手段と
、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一形態に係る離型層形成方法は、鋳型用基体の内表面に離型層を形成する方法であって、
前記鋳型用基体の内部に加熱手段を配置した状態で前記鋳型用基体への加熱を行うことにより前記鋳型用基体を予熱する第一の工程と、
前記内表面に離型材スラリーを塗布する第二の工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態に係る離型層形成装置および離型層形成方法によれば、鋳型用基体の内表面への離型層の形成に際して、鋳型用基体の内部に配置した加熱手段を加熱させた後に、離型材スラリーを塗布することで、離型材スラリーの乾燥状態の均一性を高めることができ、膜厚均一性の優れた離型層を形成した鋳型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る鋳型を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る離型層形成装置の構成を模式的に示す概略図である。
【図3】(a),(b)のそれぞれは、図2に示す加熱手段を模式的に示す斜視図である。
【図4】図3に示す加熱手段が鋳型の内部に配置した状態を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る離型層の形成の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一実施形態に係る加熱手段を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る離型層形成装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る離型層形成装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図9】離型層形成装置の要部を示す斜視図である。
【図10】シリコンインゴット製造用の鋳型を模式的に例示する断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る太陽電池素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<シリコンインゴット製造用鋳型とその製造方法>
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る鋳型1の斜視図であり、図1(b)は、図1のA−A断面図である。図1(a),(b)に示すように、鋳型1は、上方開放型の形状を有する。鋳型1は、シリコン融液を貯留する内部空間を有する。その内部空間が上面視正方形の直方体状である。
【0014】
鋳型1内に高温で加熱溶融させたシリコン融液を供給し、鋳型1内で一方向凝固させることによって、シリコンインゴットを製造することができる。あるいは、シリコン原料自体を鋳型1内で溶融した後にそのまま鋳型1内で凝固させることによって、シリコンインゴットを製造してもよい。得られたシリコンインゴットを所定の厚みに切断することで多数のシリコン基板が得られる。得られたシリコン基板は、後述する方法により、太陽電池
素子用の基板として用いることができる。
【0015】
鋳型1は、鋳型用基体20と、鋳型用基体20の表面に形成された離型層2と、を有する。
【0016】
鋳型用基体20の材料は、黒鉛、炭素繊維強化材料等の炭素系材料、石英、シリカあるいはセラミックなどを用いることができる。鋳型用基体20は、一体成形のものであってもよいし、底部および側部等の部材からなる組立式のものであってもよい。
【0017】
離型層2は、鋳型用基体20からの脱型性を確保するための層であり、主に窒化珪素からなる。離型層2は、後述する方法にて作製された、窒化珪素粉末を含むスラリー(離型材スラリー)を用いて形成される。具体的には、離型層2は、前記スラリーを、へら、あるいは刷毛などによる塗布、またはスプレー法などで、鋳型用基体20の内表面に付着させ、自然乾燥させるかまたはホットプレートを用いて乾燥させることによって形成される。
【0018】
以下、鋳型1の形成方法について順に具体的に説明する。
【0019】
<セラミック粉末準備工程>
まず、離型層2の構成材料であるセラミックス粉末を準備する。セラミックス粉末は、少なくとも窒化珪素粉末を含む。窒化珪素粉末としては、例えばイミド分解法により得られた平均粒径が0.1〜10μm程度の窒化珪素粉末を用いることができる。窒化珪素粉末は、結晶質であっても非晶質であってもよい。また、窒化珪素粉末の形状は、例えば球状のような定形であっても無定形であってもよい。
【0020】
また、窒化珪素粉末に表面酸化処理を行ってもよい。表面酸化処理は、具体的には、容器に窒化珪素粉末を入れ、バッチ式の電気炉または連続式のトンネル炉などを用いて酸化雰囲気下で窒化珪素粉末を所定時間加熱する処理である。この際、容器としては、高温に強く、不純物の混入を低減することのできる石英等からなるものを用いることができる。加熱温度は、700℃〜1300℃であってもよい。
【0021】
この表面酸化処理により、窒化珪素粉末粒子の表面に、酸化膜である非晶質二酸化珪素層が形成される。
【0022】
なお、窒化珪素粉末は、粒子同士が付着して形成された数cm程度のサイズを有する窒化珪素集合体を含むかもしれない。この場合、表面酸化処理の前に、窒化珪素集合体を粉末状に戻し、その得られた粉末粒子に表面酸化処理を行う。これにより、窒化珪素粉末粒子に均一な厚みの酸化膜を形成することができ、粉末粒子ごとの酸化の度合いのバラツキを低減できる。
【0023】
以下においては、このように粒子表面に酸化膜が形成された窒化珪素粉末を表面酸化窒化珪素粉末と称し、係る粉末の粒子を表面酸化窒化珪素粒子と称する場合がある。
【0024】
離型層2は、上述のように表面酸化処理を施した窒化珪素粉末を用いて形成することができる。これにより、シリコンインゴット作製の際に比較的高温(例えばシリコンの融点近傍)にまで鋳型1が加熱されたときに、離型層2を構成する窒化珪素粉末粒子表面の酸化膜が軟化・酸化改質してシラノール基(Si−OH)が生成される。そして、このシラノール基同士が互いに結合してシロキサン結合(Si−O−Si)が生成される。その結果、窒化珪素粉末粒子同士の密着性が向上し、離型層2の強度が向上する。
【0025】
また、セラミックス粉末は、窒化珪素粉末に加えてさらに二酸化珪素粉末を含んでもよい。これにより、表面酸化窒化珪素粉末と同様に窒化珪素粉末粒子同士の密着性を向上させて、離型層2の強度をより大きくすることができる。これにより、シリコンインゴット作製中に離型層2の一部が剥離してシリコン融液に脱落混入することが低減される。このような二酸化珪素粉末としては、例えば、石英ガラスを粉砕して得られる平均粒径20μm程度の粉末を用いることができる。
【0026】
窒化珪素粉末と二酸化珪素粉末は予め混合してもよい(粉末混合工程)。これらの粉末をある程度均一に混合しておくことによって、次工程において用いられる第一バインダー溶液との混ざり具合におけるバラツキを低減することができる。このとき、攪拌装置を用いて各粉末を装置内に入れ混合すればよい。攪拌装置としては、プラネタリーミキサー等のブレードが遊星運動する混練攪拌装置を用いることができる。混練攪拌装置は、次工程においても用いることができるため、生産性を向上させることができる。また、低い回転数で攪拌することで、混合時の粉末の舞い上がりを低減することができる。
【0027】
この工程における攪拌装置の回転数は、例えば、5〜20rpmであってもよい。
【0028】
<ペレット形成工程>
次に、少なくとも窒化珪素粉末を含むセラミック粉末と、バインダーと溶媒とを含む第一バインダー溶液とを混練して、セラミック粉末の複数のペレットを形成する。
【0029】
バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはワックスなどを用いることができる。溶媒としては、水、メタノールまたはジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0030】
バインダー溶液は、窒化珪素粉末に対し、スラリー状態とならない量で加えられ混練される。例えば、最終的に投入される所定総量の40〜73質量%程度のバインダー溶液を窒化珪素粉末に加えて混練する。
【0031】
粉末中に溶液を加えて混練すると、この溶液が粒子の一部を捕獲して塊を形成する、いわゆる造塊現象が起きる。そして、一部の粒子は造塊してペレット状(塊)となり、複数のペレットが形成される。
【0032】
このとき、粉末混合工程に比べて混練攪拌装置は高速に回転させて混練してもよい。すなわち、ペレット形成工程における混練攪拌装置の回転数は、粉末混合工程におけるそれより大きくすることができる。これにより、セラミック粉末と第一バインダー溶液との接触の機会が多くなり、早く造塊して複数のペレットが効率よく形成されるため生産性が向上する。また、第一バインダー溶液を投入したことにより、セラミック粉末が舞い上がることを低減することができる。
【0033】
この工程における攪拌装置の回転数は、例えば、30〜60rpmであってもよい。
【0034】
この工程において装置にかかる負荷は粉末混合工程に比べ大きくなる。なお、装置にかかる負荷はモーターに流れる電流値で判断することができる。
【0035】
<坏土形成工程>
形成された複数のペレットをさらに混練することによって、ペレット同士が結合して更に大きなペレットが形成される。これを繰り返していくことによって、複数のペレットが
固着されてなる坏土(一つのかたまり)が形成される。
【0036】
坏土形成工程においては、混練により圧力をかけて、セラミックス粉末に第1バインダー溶液をなじませる。これにより、徐々にセラミック粒子の間に第一バインダー溶液が分散して入り込む。これにより、セラミック粒子同士が接着されて坏土が形成される。
【0037】
そして、上記混練においては、セラミック粒子同士の衝突によりせん断応力が生じる。そのため、セラミック粒子同士の付着や凝集等によって粗大な粒子が生じる事を低減させることができる。
【0038】
この工程において装置にかかる負荷は、セラミック粒子間の衝突の際に生じる摩擦力の影響により、一旦、ペレット形成工程に比べて急激に増加する。そして、坏土が形成されるとセラミック粒子間に滑りが出る。このため、装置にかかる負荷はあるピーク値に到達した後、低下し始める。
【0039】
また、この工程における混練攪拌装置の回転数は装置負荷の増大に合わせて、ペレット形成工程に比べて低い回転数とすることができる。この低い回転数で回転させて混練することにより、坏土が形成されるが、さらに続けて一定時間混練することにより坏土の粘度を低下させる。
【0040】
この坏土の粘度を低下させるための混練においては、回転数を一定にしてもよいが、装置にかかる負荷の低減に伴い回転数を増加させてもよい。これにより、この工程において、粗大な粒子が生じる事をさらに低減させることができる。
【0041】
坏土形成の為の混練時の攪拌装置の回転数は、例えば、25〜40rpmであってもよい。坏土の粘度調整の為の攪拌装置の回転数は、例えば、40〜60rpmであってもよい。
【0042】
<スラリー形成工程>
前記低い粘度を有する坏土に、第二バインダー溶液を滴下しながら攪拌することによって、坏土をスラリー状に変化させる(スラリー化工程)。具体的には、ホッパーに第二バインダー溶液を貯留し、ホッパーより混練攪拌装置内の坏土に第二バインダー溶液を少しずつ滴下しながら攪拌する。これにより、坏土に第二バインダー溶液が馴染み、坏土がペースト状に、そしてスラリー状に変化していく。
【0043】
次に、スラリー化が確認できた後に、追加の第二バインダー溶液または/および溶媒を添加してスラリーの粘度を調整する(粘度調整工程)。この工程において、スラリーを最適な粘度に調整することによって、鋳型用基体20に均一な厚みでスラリーを塗布することができる。
【0044】
この工程において装置にかかる負荷は、坏土形成工程におけるそれよりもさらに低減する。そのため、混練攪拌装置はスラリーが装置から飛散しない程度に高速に回転させて攪拌することができる。
【0045】
この工程における攪拌装置の回転数は、例えば、40〜60rpmであってもよい。
【0046】
第二バインダー溶液の種類、すなわち、第二バインダー溶液の組成は、第一バインダー溶液のそれと同一であっても、異なってもよい。第二バインダー溶液の組成が第一バインダー溶液の組成と同一の場合、坏土と第二バインダー溶液とが馴染み易い。
【0047】
また、この工程において、スラリー化工程後または粘度調整工程後に、スラリーをふるいにかけてもよい。これにより、スラリーに残存する粗大な粒子を除去することができる。特に、後述する工程において、スラリーをスプレーにて塗布する際にはスプレー装置の詰まりの問題を低減することができる。なお、前記ふるいは、10〜500μm目開きのメッシュを有するものを用いることができる。
【0048】
<離型層の形成>
上述のようにして得られたスラリーを、鋳型用基体20の内表面に付着させる。スラリーの付着は、得られたスラリーを、へらや刷毛などによって塗布するかあるいはスプレー法などを用いることによって行う。このように付着させたスラリーを自然乾燥させるかまたはホットプレートに載せて乾燥させる。これによって、鋳型用基体20に離型層2が形成され、鋳型1が得られる。離型層2の厚みは、0.3〜2mm程度とすることができる。
【0049】
本実施形態においては、上述のように、少なくとも窒化珪素粉末を含むセラミック粉末の坏土を形成した後にスラリー化を行う。それにより、粗大な粒子を低減し、さらにセラミック粉末とバインダー溶液との混ざり具合がよくなり、セラミック粉末の凝集を低減することができる。
【0050】
また、表面酸化処理がなされた窒化珪素粉末は、一部の粉末粒子同士が互いの酸化膜を結合部とすることで凝集するが、坏土形成工程において窒化珪素粉末の凝集が解消される。よって、別途、窒化珪素粉末の凝集体を粉砕する工程を設けることなく、窒化珪素粉末が好適に分散してなる離型層2を形成することができる。
【0051】
すなわち、表面酸化処理後に、窒化珪素粉末中に存在した凝集体が坏土工程において残存しにくく、窒化珪素粉末が均一に分散してなる離型層2を形成できる。
【0052】
その結果、以上のような工程により鋳型1を形成することで、シリコンインゴット製造時の不純物の混入が低減でき、生産性に優れる鋳型が得られる。
【0053】
次に、図2乃至図4を用いて、本発明の一実施形態に係る離型層形成装置100について説明する。図2は、離型層形成装置100の構成を模式的に示す概略図である。図3(a),(b)は、図2に示す加熱手段を模式的に示す斜視図である。図4は、図3に示す加熱手段が鋳型用基体の内部に下降した状態を示す斜視図である。
【0054】
図2に示す離型層形成装置100は、鋳型用基体20の内表面に離型層2を形成するための装置である。具体的には、離型層形成装置100は、スプレー塗布による鋳型用基体20の内表面へのスラリーSの塗布と、その後の乾燥処理とによって、離型層2を形成する。
【0055】
図2に示すように、離型層形成装置100は、筐体であるブース11、このブース11内に配置された回転台12および搬送テーブル13と、を備える。
【0056】
ブース11は、内部にスプレー塗布処理用の第1処理空間11aと乾燥処理用の第2処理空間11bとが設けられている。
【0057】
回転台12は、スプレー塗布処理および乾燥処理の際の鋳型1(鋳型用基体20)が載置される台であり、本実施形態においては、矢印AR1にて示すように水平方向に回転自在である。すなわち、回転台12は、スプレー塗布処理時および乾燥処理時に水平回転することができる。回転台12は、移動せず固定されてもよく、また、第2処理空間11b
には回転台12を設けなくても構わない。
【0058】
搬送テーブル13は、鋳型1(鋳型用基体20)が載置された回転台12を第1処理空間11aと第2処理空間11bとの間で矢印AR2の方向へ水平搬送するためのものである。
【0059】
なお、回転台12および搬送テーブル13は、図示しない駆動機構によって駆動される。
【0060】
第1処理空間11aと第2処理空間11bとは扉14aを有する隔壁14にて隔てられている。これにより、第1処理空間11aにおけるスプレー塗布処理の雰囲気が第2処理空間11bへと流出することが低減される。なお、隔壁14に設けられた扉14aを開き、搬送テーブル13によって回転台12を第1処理空間11aと第2処理空間11bの間で搬送することができる。
【0061】
離型層形成装置100は、飛沫処理機構であるウォーターカーテン15と、排気手段16と、を備える。
【0062】
排気手段16は、第1処理空間11aの上部に設けられ、ブース11内部の雰囲気を排気する。
【0063】
ウォーターカーテン15は、周囲に飛散するスラリーを回収したり、スラリーによるブース11内の汚染を軽減したりするためのものである。ウォーターカーテン15は、第1処理空間11aの上端部であって隔壁14の近傍に設けられた多数の噴射口(不図示)から、鉛直下方に向けて、噴射された噴射水である。ウォーターカーテン15は、後述するノズル25のスプレー方向の先方に形成される。
【0064】
図2に示すように、本実施形態においては、スプレー方向が第2処理空間11bの方であることから、ウォーターカーテン15が第2処理空間11bの側に設けられているが、これに限らない。例えば、ノズル25からのスプレーはブース11を形成する他の壁に向けて行われてもよく、係るスプレー方向の先方に対してウォーターカーテン15を配置すればよい。
【0065】
また、ウォーターカーテン15の代わりに、第1処理空間11aの雰囲気をフィルターパスして排気する排気装置を設けて、飛散するスラリーを回収するようにしてもよい。また、飛沫処理機構を備えていれば、隔壁14を設けなくても構わない。
【0066】
離型層形成装置100は、さらに、ノズル25のスプレー方向の先方に配置された離型材回収板と、離型材回収板の下部に配置された離型材回収容器を備えてもよい。離型材回収板および離型材回収容器は、ウォーターカーテン15とスプレー25との間に配置してもよい。鋳型用基体20の外側に飛散したスラリーが離型材回収板に衝突し、固まった離型材が離型材回収板の下部に落下して、離型材回収容器に回収される。このように回収された離型材は、溶剤成分が少なく、純度の高い窒化珪素等のセラミック粉末とバインダーからなる。このため、このように回収された離型材は、再度、スラリーにして再利用することができる。離型材回収板や離型材回収容器の材料は、ステンレスやフッ素樹脂等であってもよい。離型材回収板や離型材回収容器は、特に、表面凹凸が小さいものを用いることが好ましい。
【0067】
第1処理空間11aには、スプレー塗布手段21が設けられている。スプレー塗布手段21は、循環供給経路である第1供給経路L1によって、ブース11の外部に設けられた
タンク22と接続されている。スプレー塗布手段21は、タンク22に貯留されているスラリーSを、ノズル(スプレーガン)25から鋳型用基体20に向かって吐出する。
【0068】
スラリーSは、第1供給経路L1上に備わる例えばダイヤフラムポンプなどのポンプ23によって汲み出され、第1供給経路L1上に備わる流量調整機構24によってその流量が調整される。
【0069】
流量調整機構24は、塗布されるスラリーの流量を流量計でモニターしながら、塗布量を調整する機構を配してもよい。
【0070】
ノズル25は、第1処理空間11aに配置され、かつ、第1供給経路L1から分岐する第2供給経路L2の先端部に配置されている。ノズル25から、流量調整機構24における流量調整結果に応じた吐出圧にて、スラリーSが吐出される。
【0071】
また、ノズル25は、例えば矢印AR3に示すように可動自在である。これにより、回転台12に載置された鋳型用基体20の任意の箇所に対して、スラリーSを効率的に付着させることができる。ノズル25の移動と回転台12の回転とを併用することで、鋳型用基体20の内表面の広い範囲にスラリーSを吐出させることができる。
【0072】
ノズル25は、スラリーSの吐出のオン/オフおよび吐出圧の調整を行う機構を備えてもよい。また、ノズル25はブース11の外部に移動可能であってもよい。
【0073】
なお、第2供給経路L2およびノズル25は、離型層2の非形成時にノズル25からタンク22の内部に向けてスラリーSの吐出が行えるような構成を有していてもよい。これにより、離型層2の形成の有無にかかわらずノズル25からスラリーSをほぼ常時吐出させることができる。このようにスラリーSをノズル25から常時吐出させることにより、第1供給経路L1および第2供給経路L2内や、ノズル25内でのスラリーSの詰まりや、スラリーSの粘度変化が低減される。なお、スラリーSをノズル25からタンク22内に吐出する際には、タンク22の内壁面に向けてスラリーSを吐出することができる。これにより、タンク22内のスラリーSへのエアーの混入を低減することができる。また、タンク22内へのスラリーSの吐出の流量は、離型層2を形成する際の吐出の流量よりも小さくすることが可能である。
【0074】
第1供給経路L1には、必要に応じて、スラリーSの粘度を調整する調整機構を配してもよい。具体的には、スラリーSの粘度をモニターし、粘度上昇を感知した場合、タンク22内に溶剤を添加して粘度上昇を低減する、粘度コントローラー等の機器を配置してもよい。
【0075】
図2においては、タンク22はブース11の外部に配置されているが、タンク22はブース11の内部に設けられても構わない。
【0076】
なおまた、タンク22は、攪拌棒26aを回転動作させることでスラリーSを攪拌する攪拌手段26を備える。離型層2の形成時に連続的或いは断続的に攪拌手段26による攪拌を行うことで、タンク22におけるスラリーSの粘度変化が低減される。タンク22または攪拌棒26aの構成材としては、洗浄性のよい材質を選択することができる。具体的には、表面をフッ素樹脂コートしたもの、または表面をバフ研磨仕上げされたステンレスなどを用いることができる。これにより、スラリーS中への不純物の混入を低減することができる。また、攪拌手段26としては、タンク22の容量、スラリーSの残量に応じて、タンク22内のスラリーSを効率よく攪拌できる手段を選択すればよい。例えば、タンク22内に入れられた攪拌子を、タンク22の外部からマグネットスターラーで回転させ
てスラリーSを攪拌する等の方法で攪拌するようにしてもよい。
【0077】
第2処理空間11bには、加熱手段31が設けられている。加熱手段31は、鋳型用基体20の内表面に塗布されたスラリーSを乾燥させ、離型層2を形成させるための乾燥処理手段である。
【0078】
図3(a)に示すように、加熱手段31は、概略、頂点部31aを下方に配置した四角錐状の構造(逆ピラミッド構造)を有している。加熱手段31は、4つのヒータ(発熱部)32と蓋部33とを備える。ヒータ32は、四角錐の4つの斜辺に相当する位置に配置される。蓋部33は、最上部に位置する、四角錐の底面に相当する位置に配置される。蓋部33およびヒータ32を支持するための支持部材(不図示)などは、所定の金属材料等によって構成することができる。
【0079】
加熱手段31は、ヒータ32が、図2に示す加熱電源34からの通電により発熱することで、ヒータ32の周囲を加熱する。ヒータ32は、加熱手段31の外方への加熱が効率的になされるように配置されるかもしれない。
【0080】
図3(b)は、他の実施形態に係る加熱手段311の斜視図である。図3(b)に示すように、加熱手段311は、加熱効率をより高めるために、それぞれのヒータ32の側方に配置された反射部材32aを備える。反射部材32aは、ヒータ32から加熱手段311の内部に向かう輻射熱を加熱手段311の外方へと反射させる。反射部材32aは、蓋部33と同一の構成材料にて蓋部33と一体に設けることができる。
【0081】
ヒータ32は、ランプヒータ等の、放射する光の波長が赤外線領域にある光加熱手段であるかもしれない。ヒータ32は、例えば、温度応答性に優れた近赤外線ランプ(近赤外線加熱手段)であってもよい。
【0082】
また、加熱手段としては、ヒータ32とヒータ32の側方に設けた反射部材32aを備えるもの以外に、反射膜コート付きで加熱方向に指向性を有するランプヒータを用いてもよい。この場合、光加熱手段により支持部材等が昇温されることを低減して、離型材を塗布する鋳型用基体の内表面の温度を昇温することができる。そのため、短時間でほぼ均一な加熱を行うことができる。
【0083】
加熱手段31は、図2において矢印AR4にて示すように、上下方向に移動自在である。加熱手段31による加熱は、加熱手段31の下方位置に鋳型用基体20を配置したうえで、加熱手段31をこの鋳型用基体20の内部空間へと下降させた状態で行う。加熱手段31は、蓋部33が鋳型用基体20の最上部20aと略同一の高さとなるまで下降させる。すなわち、鋳型用基体20の上面が蓋部33によって塞がれるようにした状態で加熱を行う。
【0084】
図4に示すように、加熱手段31は、4つのヒータ32のいずれもが、鋳型用基体20の内側の側辺部および内側底面の角部(以降、これらを内側端部とも称する)と対向する位置にくるように配置される。このような配置状態が実現されるように、加熱手段31は、蓋部33を上述の位置にまで下降させた場合に、頂点部31aが鋳型用基体20の底面に接触せず、かつ、蓋部33と鋳型用基体20との間に隙間3が確保される形状およびサイズを有する。
【0085】
このように、鋳型用基体20の内表面に塗布されたスラリーSの加熱乾燥を、鋳型用基体20の内部に加熱手段31を配置させた状態で行うので、塗布されたスラリーSがほぼ均一に乾燥される。これにより、鋳型用基体20の外側から加熱を行う手法に比べ、加熱
のばらつきが起きにくく、厚みの均一性の優れた離型層2を形成することができる。また、設備コストを低減し、装置間の鋳型用基体20の搬送を容易にできる。これにより、鋳型用基体20の加熱から塗布までの間に鋳型温度が低下することを低減することできる。
【0086】
特に、スラリーSの加熱乾燥の際に、上述のように4つのヒータ32が鋳型用基体20の内側端部と対向する位置に配置される。このため、乾燥が進みにくいこれらの箇所についても、良好にスラリーSが乾燥される。加えて、図3(b)に示すように、加熱手段31が反射部材32aを備える場合には、ヒータ32からの熱(輻射熱)を、より効率的に上述の内側端部に与えることができる。
【0087】
また、各ヒータの出力設定を適宜に調整することによって、鋳型内表面を所望の最適温度分布になるよう加熱することが可能となる。例えば、加熱後、塗布処理を行うまでの間に温度が低下しやすい鋳型用基体20の内側端部を、側面部や底面部よりも高い温度まで加熱することも可能になる。そのため、より厚みのバラツキが少ない離型層を形成することができる。
【0088】
離型層形成装置100は、鋳型用基体20の外周に配置された鋳型用基体20を固定する治具や断熱材を備えていてもよい。このような離型層形成装置100においても、概ね数十秒〜数分で、鋳型用基体20の内表面を所望の温度に加熱することができる。
【0089】
また、図3および図4においては図示されていないが、加熱手段31は、図2に示すように、蓋部33に接続するガスノズル(ガス供給手段)35を備える。ガスノズル35は、ブース11の外部に設けられたガスボンベ36から送られるガスを蓋部33の下方へと供給する。
【0090】
上述した加熱処理(乾燥処理)の際に、ガスノズル35からガスを供給することで、鋳型用基体20の内部に熱循環を生じさせて内部における温度分布のバラツキを低減することができる。また、加熱によってスラリーSから溶媒が揮発することにより鋳型用基体20の内部の空気は揮発溶媒成分を含むようになる。例えば、溶媒が水の場合であれば鋳型用基体20の内部の空気が湿気を多く含むようになる。この場合、ガスノズル35から鋳型用基体20の内部にガスを供給することで、そうした内部の空気が鋳型用基体20と加熱手段31の蓋部33との隙間3から排出される。これにより、溶媒揮発成分が鋳型用基体20の内部に残留することによる乾燥の遅れや離型層の厚みの不均一の発生が低減される。なお、使用されるガスとしてはアルゴンや窒素等の不活性ガスや空気などが用いられる。
【0091】
次に、離型層形成装置100を用いた鋳型用基体20への離型層2の形成方法について図5を用いて説明する。
【0092】
まず、離型層2の形成前の鋳型1、すなわち、鋳型用基体20を回転台12の上に載置し、第2処理空間11bの所定の加熱処理位置に配置する(ステップS1)。そして、加熱手段31を鋳型用基体20の内部に下降させる。そして、加熱電源34からヒータ32に通電してヒータ32を発熱させることにより、鋳型用基体20の内部を加熱する(ステップS2)。
【0093】
このような加熱は、次工程でスラリーを塗布した際に溶媒成分を瞬時に揮発させてスラリーの垂下を低減し、また、離型層2の鋳型用基体20側、すなわち、離型層2の内部側における未乾燥を低減する。すなわち、この加熱は、鋳型用基体20の内表面に対するスラリーの付着性を高める予熱に相当する。
【0094】
加熱温度は、80℃〜300℃程度、さらには、160℃〜260℃とすることができる。この加熱温度は、鋳型用基体20の材質、サイズ、塗布しようとするスラリーの種類など、種々の条件に応じて適宜に定めることができる。なお、ここでいう加熱温度とは、スラリーが塗布される鋳型用基体20の内表面の温度をいう。
【0095】
このような予熱の終了後、搬送テーブル13を作動させて、回転台12ごと鋳型用基体20を搬送させ、第1処理空間11aの所定の塗布処理位置に配置する(ステップS3)。そして、スプレー塗布手段21により、ノズル25の先端から鋳型用基体20の内表面にスラリーSを塗布する(ステップS4)。スラリーSの塗布は、ノズル25を適宜にあるいは所定の順序で移動させつつ、所定の塗布厚のスラリーSが塗布されるまで行う。このとき、必要に応じて回転台12を回転させてもよい。またこの際に、スラリーSは鋳型1の上部から下部に向かって塗布されることが好ましく、スラリーSの垂れ下がりを低減することができる。
【0096】
スラリーSの塗布が完了すると、搬送テーブル13を作動させて、回転台12ごと鋳型用基体20を搬送させ、再び第2処理空間11bの加熱処理位置に配置する(ステップS5)。そして、加熱手段31をスラリーが塗布された鋳型用基体20の内部に下降させる。そして、加熱電源34からヒータ32に通電してヒータ32を発熱させることにより、鋳型用基体20の内部を加熱する(ステップS6)。係る加熱により、鋳型用基体20の内表面に塗布されたスラリーSを乾燥させる。
【0097】
加熱温度は、80℃〜300℃程度であればよく、鋳型用基体20の材質、サイズ、塗布しようとするスラリーSの種類など、種々の条件に応じて適宜に定めることができる。加熱手段31を用いた加熱乾燥を行うことにより、鋳型用基体20の内部において均一性の優れた加熱乾燥を行うことができる。
【0098】
また、ヒータ32として近赤外線ランプを用いる場合、加熱開始後、すばやく所望の温度範囲にまでスラリーSを昇温させることができる。このため、未乾燥のスラリーSが垂れ下がりにくくなるとともに、乾燥処理にかかる時間を低減できる。
【0099】
また、乾燥を終了させるタイミングは、適度な乾燥状態が得られるように、適宜の基準で定められてよい。ただし、後述のようにスラリーSを重ね塗りする場合においては、後から塗布したスラリーSが先に形成された離型層2に定着せずに、層剥離が生じることを低減するよう、乾燥条件(終了条件)を定めればよい。すなわち、未乾燥部分が残らないように過度に乾燥させないようにすればよい。
【0100】
乾燥処理の終了後、さらに上からスラリーSを塗布する(重ね塗りする)場合は(ステップS7でYES)、ステップS3に戻り、鋳型用基体20の温度を室温に戻すことなく加熱状態を維持したままスプレー塗布を行う。すなわち、鋳型用基体20の内表面の温度が高温に維持された状態でスプレー塗布を行う。これにより、離型材スラリーの垂れ下がりが低減され、一度に多くの量のスラリーを塗布した場合でも離型層2の鋳型用基体20側における未乾燥が低減する。すなわち、離型層2と鋳型用基体20または離型層2同士の付着力の低下、離型層2の剥離、または浮き等の発生が低減する。結果として、繰り返し塗布する回数が少なくなる。
【0101】
乾燥処理の終了後、さらなるスラリーSの塗布を行わない場合は(ステップS7でNO)、ブース11から鋳型用基体20を取り出す(ステップS8)。これにより、鋳型用基体20への離型層2の形成処理が終了する。これにより、鋳型1が得られる。
【0102】
なお、塗布処理および乾燥処理を複数回(例えば10回程度)繰り返す重ね塗りを行う
ことにより、乾燥しにくい鋳型用基体20側の離型層2の未乾燥を低減し、離型層2の膜厚の均一性をより高め、離型層の剥離を低減することができる。
【0103】
また、複数回繰り返す重ね塗りを行う場合には、1回目の塗布量を2回目以降の塗布量よりも少なくする、つまり1回目に形成する膜厚を2回目以降に形成する膜厚よりも小さくすることが好ましい。鋳型基体20と離型層2との界面に水分が残ると離型層2が剥がれ落ちる可能性があるため、1回目に形成する膜厚を薄くすることにより、乾燥処理において過度に乾燥することなく鋳型基体20と離型層2との界面に水分が残る問題を低減することができる。
【0104】
以上、説明したように、本実施形態によれば、鋳型用基体20内表面への離型層の形成に際して、スプレー塗布後のスラリーの乾燥を、鋳型用基体20内部に配置した加熱手段によって行う。これにより、乾燥状態の均一性を高めることができる。特に、加熱手段は、逆ピラミッド構造で、且つ、4つの斜辺に相当する位置に配置されたヒータを備える。これにより、乾燥が進みにくい鋳型の内側端部についても、良好な乾燥を行うことができる。また、塗布処理および乾燥処理を複数回繰り返す重ね塗りを行うことで、形成される離型層の膜厚の均一性をより高めることができる。
【0105】
次に、図6(a)乃至(c)を用いて、本発明の他の実施形態に係る加熱手段について説明する。後述するように、加熱手段において、ヒータの配置を種々に調整することができる。これによって、鋳型用基体20の内表面を所望の温度分布に加熱することが可能となる。
【0106】
図6(a)は、一実施形態に係る加熱手段312の斜視図である。加熱手段312は、蓋33と、4つのヒータ32と、ヒータ37と、を備える。4つのヒータ32は、四角錐の斜辺位置に配置され、ヒータ37は、この四角錐の頂点部31aを重心位置とする矩形の4辺に配置される。ヒータ37は、頂点部31aとの間に設けられた支持部材37aによって支持される。また、図6(a)では、4つのヒータ32が四角錐の斜辺位置に設けられているが、これに代わり、それぞれのヒータ32は、蓋部33の頂点と4つのヒータ37がなす矩形の頂点との間に配置してもよい。すなわち、加熱手段は、側面視台形になるようにしてもよい。
【0107】
図6(b)は、一実施形態に係る加熱手段313の斜視図である。加熱手段313は、蓋部33と3つのヒータ38とを備える。ヒータ38は、蓋部33から下方に延在する支持部材38aの途中の複数の高さ位置および最下端部に配置される。そして、ヒータ38は、図6(a)に示すヒータ37のように、矩形をなす。この場合、ヒータ38は、支持部材38aと支持部材38bとによって支持される。
【0108】
図6(c)は、一実施形態に係る加熱手段314の斜視図である。加熱手段314は、蓋部33と3つのヒータ39とを備える。ヒータ39は、蓋部33から下方に延在する支持部材39aの途中の複数の高さ位置および最下端部に配置される。そして、ヒータ39は、支持部材39aの位置を中心とする環状をなす。この場合、ヒータ39は、支持部材39aと支持部材39bとによって支持される。図6(c)に示す加熱手段31は、鋳型用基体20の内部が円筒形を有する場合に特に採用することができる。
【0109】
加熱手段が備えるヒータの個数は、鋳型用基体20の各側辺部に1本ずつの4本に限定されない。例えば、鋳型用基体20の各側面の中央部と側辺部のそれぞれに対応させてヒータを配置することにより、合計8本のヒータを設けてもよい。使用する鋳型用基体20の内表面のサイズ、深さ等を勘案し、加熱手段31におけるヒータの本数や配置を最適のものとすればよい。
【0110】
次に、図7を用いて、本発明の一実施形態に係る離型層形成装置200について説明する。
【0111】
図7に示す離型層形成装置200は、回転機構201を備える。回転機構201は、第1処理空間11aと第2処理空間11bとの間の鋳型用基体20の搬送を行う。回転機構201は、その回転中心に対して対象な位置に複数の鋳型載置台202を備えている。図7においては、回転機構201は、鋳型載置台202を2つ備える。このような回転機構201を備える離型層形成装置200においては、相異なる鋳型用基体20に対して、第1処理空間11aにおける塗布処理と第2処理空間11bにおける乾燥処理とを並行して行う。そして、それぞれの処理が終了すると、回転機構201を鋳型載置台202の個数に応じた回転角度で回転させ、第1処理空間11aと第2処理空間11bとにおいて、それぞれ次の鋳型用基体20に対して処理を行うことができるようになっている。これにより、離型層形成のスループットの向上が実現されている。
【0112】
次に、図8を用いて、本発明の一実施形態に係る離型層形成装置300について説明する。
【0113】
図8に示す離型層形成装置300は、第2処理空間11bにおいて、搬送経路301と、複数の加熱処理位置301a〜301dを備える。搬送経路301は複数に分岐し、それぞれの終端に、加熱処理位置301a〜301dが配置されている。加熱処理位置301a〜301dは、各々加熱手段31を備える。
【0114】
このような搬送経路301を備える離型層形成装置300においては、第1処理空間11aにおいて塗布処理を施した鋳型用基体20が、鋳型載置台302とともに加熱処理位置301a〜301dのいずれかに搬送される。そして、これと入れ替わりに、他の加熱処理位置から第1処理空間11aに鋳型用基体20が鋳型載置台302ごと搬送され、塗布処理に供される。これにより、離型層形成のスループットの向上が実現されている。
【0115】
また、スプレー塗布処理用の第1処理空間11aと乾燥処理用の第2処理空間11bとは、それぞれ別の筐体として設け、それぞれを搬送系で接続してもよい。
【0116】
また、塗布手段21と加熱手段31とが一の筐体に配置されてもよい。この場合、鋳型用基体20を搬送せずに筐体内に固定し、塗布手段21による塗布と加熱手段31による加熱とを交互に行うことにより離型層を形成することができる。また、この場合、加熱手段31として光加熱手段を用いることができる。これにより、装置を大型化することなく設備コストを低減することができる。さらに、塗布手段21と加熱手段31が相異なる鋳型用基体20を同時に処理できるように、各手段を離型層形成装置内に配置してもよい。
【0117】
次に、本発明の一実施形態に係るシリコンインゴットの製造方法について説明する。本実施形態においては、以上のようにして形成された鋳型1を用いてシリコンインゴットを製造する。
【0118】
まず、鋳型1を9〜12kPaに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中に置き、鋳型1
をシリコンの融点と同程度か若干低い温度、例えば、融点を数十℃程度下回る温度となるまで加熱する。鋳型1がこのような温度に達すると、あらかじめ作製しておいたシリコン融液を鋳型1内に注ぎ込む。なお、鋳型1内にシリコン原料を入れて加熱溶解するようにしてもよい。シリコン融液は、例えばボロン等のドーパントを混入させることによって、p型にドーピングされているものを用いることができる。
【0119】
その後、鋳型1を、その底部から徐々に降温させることによってシリコン融液を鋳型1の底部側から徐々に一方向凝固させる。シリコン融液が完全に凝固することにより、シリコンインゴットが得られる。
【0120】
本実施形態においては、上述のような工程により離型層2を形成してなる鋳型1を用いる。そのため、シリコンインゴット製造中に離型層2の一部が剥離してシリコン融液中に異物となって混入することや、シリコン融液と鋳型1が接触して融着することを低減することができる。また、スプレー塗布により形成された離型層2は鋳型1の内表面に適用した形状と成り、形成されたシリコンインゴットの角部は直角に形成される。そのため、シリコンインゴットを最適な大きさに切断する工程において位置合わせが行い易く、精度よく切断することができる。
【0121】
また、上記説明においては一体成型または組立てた後の鋳型用基体20に離型層2を形成しているが、これに限定されず、鋳型用基体20の組立部材であり、底部および側部を構成する例えば板状の部材に離型層2を形成した後に鋳型1に組立てても構わない。なお、鋳型1に組立てた後に、鋳型1の辺にあたる部分に離型層2を形成することが好ましい。
【0122】
図9に示す離型層形成装置400は、第2処理空間11bにおいて搬送経路401と、搬送経路401の上部に複数のヒータ32を備えた構成を有する。第1処理空間11aにおいて、鋳型用基体20の底部または側部を構成する板状部材20aに塗布処理を施した後、板状部材20aは第2処理空間11bに搬送され、離型層2が形成された面をヒータ32側に向けて搬送経路401により搬送されながらヒータ32により加熱される。これと入れ替わりに、乾燥処理が完了した板状部材20aが第2処理空間11bから第1処理空間11aに搬送され、塗布処理に供される。これにより、離型層形成のスループットの向上が実現されている。
【0123】
図9では、第1処理空間11aにおいて、1枚の板状部材20aに対して塗布処理を行っているが、複数枚の板状部材20aを設置して塗布処理を行ってもよく、さらに搬送機構を設けて搬送方向に複数の部材を並べ、ノズル25のスプレー方向に部材を搬送しながらスラリーSを塗布するように離型層形成装置を構成してもよい。
【0124】
また、板状部材20aが載置される鋳型載置台402に、板状部材20aを下部から加熱するヒータをさらに備えることにより、板状部材20aを一定温度に保持してスラリーSを塗布することができる。また、下部から加熱するヒータを利用して板状の部材1aを予熱して、一定温度に保持してスラリーSを塗布した後、第2処理空間にて乾燥処理を行ってもよい。
【0125】
また、第1処理空間11aにおいて、離型材を回収する機構を設けるようにしてもよく、例えば、板状部材20a以外にスラリーSが塗布される塗布領域をメッシュ形状にした鋳型載置台と、鋳型載置台の下部に離型材回収容器と、を設けることにより、板状部材20aの周囲に飛散したスラリーSは、メッシュ部分を通り抜けて離型材回収容器に回収される。
【0126】
なお、鋳型組み立ての際、離型層の形成が不要な領域となる板状部材20aの端部には、板状部材20aを固定する固定治具やカバー部材を設けるようにすればよい。
【0127】
<離型層形成の変形例>
図10に示すように、鋳型1は鋳型用基体20と離型層2との間に吸水層4を有するような態様であってもよい。吸水層4は、PVA等からなるバインダーと溶剤から構成され
る溶液を塗布することにより形成することができる。スラリーSに用いられるPVA溶液を用いることにより、鋳型1内で形成されるシリコンインゴットの不純物濃度を抑えることができる。乾燥処理においてスラリーSの表面側から溶媒が揮発することから、鋳型用基体20と離型層2との界面に水分が残りやすいが、吸水層4を設けることにより鋳型側に位置するスラリーSの溶媒が吸水層4により一部吸収されることから、鋳型用基体20と離型層2との界面に水分が残る問題を低減することができる。
【0128】
<太陽電池素子用基板の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る太陽電池素子用基板の製造方法について説明する。一実施形態に係る太陽電池素子用基板は、上述のようにして得られたシリコンインゴットを所定の大きさに切断し、例えば、9分割に切断し、さらに、マルチワイヤーソーなどを用いてスライスすることによって得られる。
【0129】
本実施形態によれば、太陽電池素子用基板は、鋳型1を用いて製造されたシリコンインゴットから得られる。すなわち、シリコンインゴット製造時にシリコン融液と鋳型が接触することや不純物がシリコン融液中に混入することが低減される。そのため、これらに起因する特性の低下が低減された太陽電池素子を作製可能な太陽電池素子用基板を、高い歩留まりで得ることができる。
【0130】
<太陽電池素子とその製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る太陽電池素子110とその製造方法について説明する。図11に示すように、太陽電池素子110は、基板101と、拡散層102と、裏面電極108と、表面電極106と、反射防止膜107と備える。
【0131】
基板101は、上述した鋳型1を用いて製造したシリコンインゴットを切断して得られた多結晶のシリコン基板である。
【0132】
拡散層102は、基板101の表面全体に形成され、n型の導電型を有する層である。拡散層102は、基板101の表面から一定の深さまでn型不純物を拡散させることにより形成される。図11において、拡散層102は、基板101の上側主面に形成されている。
【0133】
裏面電極108は、集電電極104と取出電極105とを備える。集電電極104と取出電極105とは、いずれも、例えば銀を主成分として形成される。集電電極104はアルミニウムを主成分として形成されてもよい。
【0134】
表面電極106は、基板101の表面側に形成された、例えば銀を主成分とする電極である。
【0135】
反射防止膜107は、例えば酸化珪素、窒化珪素、酸化チタンなどからなり、拡散層102の上面に設けられている。
【0136】
次に、太陽電池素子110の製造方法の一例について説明する。
【0137】
まず、上述の工程によって作製されたシリコンインゴットを切断して得られた、p型の導電型を有する太陽電池素子用の基板101を準備する。この基板101の表面(受光面)側に凹凸形状を形成する。そして、凹凸形状を有する基板101の表面から一定の深さまでn型の不純物を拡散させることによって、基板101に拡散層102を設ける。これにより、基板101と拡散層102の間にpn接合が形成される。さらに、拡散層102の表面に、酸化珪素、窒化珪素、酸化チタンなどによって反射防止膜107を形成する。
【0138】
一方、アルミを主成分とする電極ペーストを基板101の裏面に塗布して焼成することにより、集電電極104を形成する。その後、基板101の表面側、裏面側に、それぞれ、銀を主成分とする電極ペーストを所定のパターンにて塗布して焼成することにより、表面電極106および取出電極105を形成する。これによって、太陽電池素子110が形成される。
【0139】
なお、高濃度のp型拡散層であるBack Surface Field(BSF)層103が基板101の裏面側に配置されていてもよい。BSF層103は、集電電極104をアルミニウムにて形成する場合であれば、集電電極104の形成過程、すなわち、アルミニウムペーストの塗布・焼成過程においてアルミニウムが基板101に拡散することによって形成される。
【0140】
また、太陽電池素子110が裏面側のみに電極が設けられる構造を有するようにしてもよい。
【0141】
本実施形態に係る太陽電池素子110は、上述の方法によって作製した鋳型1を用いて製造したシリコンインゴットから得られた基板101を有する。これにより、シリコンインゴット製造時にシリコン融液と鋳型が接触することや不純物がシリコン融液中に混入することに起因する特性の低下が低減された太陽電池素子を得ることが出来る。さらに、本実施形態に係る太陽電池素子110の製造方法により、このような優れた特性を備える太陽電池素子を高い歩留まりで得ることができる。
【0142】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることが出来る。
【0143】
例えば、ペレット形成工程、坏土形成工程においては、水分揮発による温度上昇を低減するために、混練攪拌装置に冷却機構を設けてもよい。
【0144】
また、上記説明においてはシリコン融液をp型にドーピングしているが、n型にドーピングしても構わない。
【実施例】
【0145】
以下に、上述した実施形態をより具体化した一実施例について説明する。
【0146】
平均粒径が0.5μm程度の窒化珪素粉末を表面酸化処理した表面酸化窒化珪素粉末と、平均粒径が20μm程度の二酸化珪素粉末とを準備した。これらの粉末をプラネタリーミキサーにより混合して、セラミックス粉末を得た。そして、PVA水溶液を有するバインダー溶液を上記セラミック粉末に追加して混練し、坏土を形成した。得られた坏土を混練し続けた後、バインダー溶液を坏土に滴下してスラリーを作製した。このとき、坏土を形成するために用いたバインダー溶液の投入量をセラミック粉末に対し41質量%〜51質量%で調整することにより、スラリー中に存在する平均粒径が100μm以上の粒子の比率を調整した。このようにして得られたスラリーを用いて離型層を形成することにより、形成された離型層の密度を変化させることができた。
【0147】
実施例1〜8、および比較例1〜3においては、100μm以上の粒子比率が3.7質量%のスラリーを用いた。実施例9においては1.6質量%、実施例10においては2.5質量%、実施例11おいては5.7質量%、および実施例12おいては9.2質量%のスラリーをそれぞれ用いた。なお、平均粒径が100μm以上の粒子比率とは、100μmの目開きのふるいを用いて、スラリーをふるいにかけた時に、ふるい上に残存した粒子
の質量の比率である。
【0148】
次に、1つの底面と4つの側面からなる鋳型用基体を準備した。この鋳型用基体の内表面に、スプレー装置を用いてスラリーを塗布し、乾燥させた。
【0149】
このときの乾燥方法は、実施例1および比較例1,2においては、炉内温度が180℃の乾燥炉に鋳型用基体を配置して加熱した。また、実施例2〜12および比較例3においては、図3(b)に示される近赤外線ランプを有する加熱手段を鋳型用基体の内表面に対応するよう配置して加熱した。また、実施例1〜12はスラリーを塗布する前に各条件の温度で鋳型用基体を予備加熱した後、スラリーを塗布した。また、実施例1〜12および比較例2,3は、塗布処理および乾燥処理を10回繰り返し行って離型層を形成した。比較例1は1度の塗布処理および乾燥処理を行って離型層を形成した。
【0150】
そして、各条件で10個の鋳型を作製し、形成された離型層を目視で確認して不良率を確認した。また、各条件の離型層の水分残量をエー・アンド・ディ製加熱乾燥式水分計(ML−50)を用いて測定した。ただし、比較例1以外においては、塗布処理および乾燥処理を5回繰り返し行った後の離型層(5層目)について水分残量を測定した。
【0151】
これらの結果を表1に示す。表1において、内面到達温度は、鋳型用基体の乾燥温度であり、乾燥処理後、直ぐに鋳型用基板を測定した温度である。具体的には、内面到達温度は、鋳型の内表面における側部の中心部付近を放射温度計で測定した。密度は、形成した離型層を約0.07〜0.1gとなるサイズで一部除去して、アルキメデス法を用いて測定した結果である。乾燥処理の時間(min/回)は、比較例1以外は乾燥処理が10回行われることになるため、塗布後に行われた1回の乾燥処理の時間を意味している。
【0152】
【表1】
【0153】
表1の結果から、鋳型用基体を予備加熱した後にスラリーを塗布することにより、不良率を低くすることができ、膜厚均一性の優れた離型層が形成できることを確認した。
【符号の説明】
【0154】
1 :鋳型
2 :離型層
3 :鋳型と加熱手段の蓋部の)隙間
4 :吸収層
11 :ブース
11a:第1処理空間
11b:第2処理空間
12 :回転台
13 :搬送テーブル
14 :隔壁
14a:扉
15 :ウォーターカーテン
16 :排気手段
20 :鋳型用基体
20a:板状部材(組立部材)
21 :スプレー塗布手段
22 :タンク
23 :ポンプ
24 :流量調整機構
25 :ノズル
26 :攪拌手段
26a:攪拌棒
31 :加熱手段
31a:(加熱手段の)頂点部
32、37、38、39:ヒータ
32a:反射部材
33 :(加熱手段の)蓋部
34 :加熱電源
35 :ガスノズル
36 :ガスボンベ
100、200、300、400:離型層形成装置
201:回転機構
202、302、402:鋳型載置台
301,401:搬送経路
301a〜301d:加熱処理位置
110:太陽電池素子
S :スラリー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型用基体の内表面に離型層を形成する装置であって、
前記内表面に離型材スラリーを塗布する塗布手段と、
前記鋳型用基体の内部に配置された状態で、前記鋳型用基体への加熱を行う加熱手段と、
を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、前記加熱の際に前記鋳型用基体の内面に対向する発熱部を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の離型層形成装置であって、
前記発熱部が、前記加熱の際に前記鋳型用基体の内側端部に対向することを特徴とする離型層形成装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が四角錐状をなしており、四角錐の4つの斜辺位置に前記発熱部を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、前記発熱部の側方に、前記発熱部からの輻射熱を前記内側端部に向けて反射させる反射部材を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、赤外線領域の波長を放射する光加熱手段であることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、前記鋳型用基体の内部に配置された状態において前記鋳型用基体の上部を隙間を有しつつ塞ぐ蓋部を備えており、
前記蓋部に、前記加熱の際に前記鋳型用基体の内部にガスを供給可能なガス供給手段が設けられていることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記塗布手段がスプレー塗布により前記離型材スラリーを塗布するスプレー塗布手段であることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記塗布手段と前記加熱手段とが一の筐体に設けられてなり、
前記塗布手段による塗布処理位置と、前記加熱手段による加熱処理位置との間で前記鋳型用基体を搬送する搬送手段、
をさらに備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記塗布手段と前記加熱手段とが一の筐体に設けられてなり、
前記鋳型用基体を固定し、前記塗布手段と前記加熱手段が前記鋳型用基体の固定位置に移動することを特徴とする離型層形成装置。
【請求項11】
鋳型用基体の内表面に離型層を形成する方法であって、
前記鋳型用基体またはその組立部材の表面に対する加熱手段を配置した状態で前記鋳型用基体または前記組立部材への加熱を行うことにより前記鋳型用基体または前記組立部材を予熱する第一の工程と、
前記鋳型用基体または前記組立部材の表面に離型材スラリーを塗布する第二の工程と、を備えることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項12】
請求項11に記載の離型層形成方法であって、
前記鋳型基体または前記組立部材の表面に前記離型材スラリーが塗布された前記表面に対する加熱手段を配置した状態で前記鋳型用基体または前記組立部材への加熱を行うことにより前記離型材スラリーを乾燥させる第三の工程と、
を備えることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体または前記組立部材の表面に前記加熱手段の発熱部を対向させて前記加熱を行う、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体の内側端部に前記加熱手段の発熱部を対向させて前記加熱を行う、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、四角錐状をなしており、四角錐の4つの斜辺位置に前記発熱部を備える加熱手段を前記加熱手段として用いる、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項16】
請求項13ないし請求項15のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記発熱部の側方に、前記発熱部からの輻射熱を前記内側端部に向けて反射させる反射部材を備えた前記加熱手段を用いることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項17】
請求項11ないし請求項16のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、赤外線領域の波長を放射する光加熱手段を前記加熱手段として用いることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項18】
請求項11ないし請求項17のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体または前記組立部材の表面にガスを供給しつつ前記加熱を行う、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項19】
請求項11ないし請求項18のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体または前記組立部材を160℃〜260℃の温度範囲で加熱することを特徴とする離型層形成方法。
【請求項20】
請求項11ないし請求項19のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第二の工程においては、スプレー塗布により前記離型材スラリーを塗布することを特徴とする離型層形成方法。
【請求項21】
請求項12に記載の離型層形成方法であって、
前記第二の工程と前記第三の工程とを複数回繰り返すことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項22】
請求項21に記載の離型層形成方法であって、
1回目に塗布する離型材スラリーの塗布量が、2回目以降に塗布する離型材スラリーの塗布量よりも少ないことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項23】
請求項11ないし請求項22のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程の前に、前記鋳型用基体または前記組立部材の表面に吸水層を形成する第四の工程と、
を備えることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項1】
鋳型用基体の内表面に離型層を形成する装置であって、
前記内表面に離型材スラリーを塗布する塗布手段と、
前記鋳型用基体の内部に配置された状態で、前記鋳型用基体への加熱を行う加熱手段と、
を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、前記加熱の際に前記鋳型用基体の内面に対向する発熱部を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の離型層形成装置であって、
前記発熱部が、前記加熱の際に前記鋳型用基体の内側端部に対向することを特徴とする離型層形成装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が四角錐状をなしており、四角錐の4つの斜辺位置に前記発熱部を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、前記発熱部の側方に、前記発熱部からの輻射熱を前記内側端部に向けて反射させる反射部材を備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、赤外線領域の波長を放射する光加熱手段であることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記加熱手段が、前記鋳型用基体の内部に配置された状態において前記鋳型用基体の上部を隙間を有しつつ塞ぐ蓋部を備えており、
前記蓋部に、前記加熱の際に前記鋳型用基体の内部にガスを供給可能なガス供給手段が設けられていることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記塗布手段がスプレー塗布により前記離型材スラリーを塗布するスプレー塗布手段であることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記塗布手段と前記加熱手段とが一の筐体に設けられてなり、
前記塗布手段による塗布処理位置と、前記加熱手段による加熱処理位置との間で前記鋳型用基体を搬送する搬送手段、
をさらに備えることを特徴とする離型層形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の離型層形成装置であって、
前記塗布手段と前記加熱手段とが一の筐体に設けられてなり、
前記鋳型用基体を固定し、前記塗布手段と前記加熱手段が前記鋳型用基体の固定位置に移動することを特徴とする離型層形成装置。
【請求項11】
鋳型用基体の内表面に離型層を形成する方法であって、
前記鋳型用基体またはその組立部材の表面に対する加熱手段を配置した状態で前記鋳型用基体または前記組立部材への加熱を行うことにより前記鋳型用基体または前記組立部材を予熱する第一の工程と、
前記鋳型用基体または前記組立部材の表面に離型材スラリーを塗布する第二の工程と、を備えることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項12】
請求項11に記載の離型層形成方法であって、
前記鋳型基体または前記組立部材の表面に前記離型材スラリーが塗布された前記表面に対する加熱手段を配置した状態で前記鋳型用基体または前記組立部材への加熱を行うことにより前記離型材スラリーを乾燥させる第三の工程と、
を備えることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体または前記組立部材の表面に前記加熱手段の発熱部を対向させて前記加熱を行う、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体の内側端部に前記加熱手段の発熱部を対向させて前記加熱を行う、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、四角錐状をなしており、四角錐の4つの斜辺位置に前記発熱部を備える加熱手段を前記加熱手段として用いる、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項16】
請求項13ないし請求項15のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記発熱部の側方に、前記発熱部からの輻射熱を前記内側端部に向けて反射させる反射部材を備えた前記加熱手段を用いることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項17】
請求項11ないし請求項16のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、赤外線領域の波長を放射する光加熱手段を前記加熱手段として用いることを特徴とする離型層形成方法。
【請求項18】
請求項11ないし請求項17のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体または前記組立部材の表面にガスを供給しつつ前記加熱を行う、
ことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項19】
請求項11ないし請求項18のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程においては、前記鋳型用基体または前記組立部材を160℃〜260℃の温度範囲で加熱することを特徴とする離型層形成方法。
【請求項20】
請求項11ないし請求項19のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第二の工程においては、スプレー塗布により前記離型材スラリーを塗布することを特徴とする離型層形成方法。
【請求項21】
請求項12に記載の離型層形成方法であって、
前記第二の工程と前記第三の工程とを複数回繰り返すことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項22】
請求項21に記載の離型層形成方法であって、
1回目に塗布する離型材スラリーの塗布量が、2回目以降に塗布する離型材スラリーの塗布量よりも少ないことを特徴とする離型層形成方法。
【請求項23】
請求項11ないし請求項22のいずれかに記載の離型層形成方法であって、
前記第一の工程の前に、前記鋳型用基体または前記組立部材の表面に吸水層を形成する第四の工程と、
を備えることを特徴とする離型層形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−260099(P2010−260099A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33288(P2010−33288)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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