説明

離床予測装置及び離床予測方法

【課題】ベッド上の人体の離床動作の開始を早期且つ確実に検出する。
【解決手段】離床予測装置1は、天井に取り付けられた状態でベッドを含む管理エリアに超音波信号を継続的に送信する送波器2と、天井に取り付けられた状態で管理エリア内で反射した超音波信号を受信する受波器3と、送波器2から送信される超音波信号に対応して受波器3で所定時間毎に取得される反射波データからベッド上の患者の頭部三次元位置を時々刻々演算する位置演算手段4と、位置演算手段4の演算結果から患者の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド上の患者が離床動作を開始したか否かを判定する判定手段5と、判定手段5によって患者の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発する報知手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド上の人が離床動作を開始したか否かを判断する離床予測装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主として病院には、巡回監視の労力低減のため、ベッドからの患者の離床を自動検知する離床検知装置が設備される。離床検知装置には、ベッドの周囲の床面に感圧センサを敷設して、患者がそのセンサの上に足を下ろした際に生じる圧力変化により患者の離床を検出するものや、ベッドの足に荷重センサを取り付け、センサの出力変化により患者の離床の有無を検出するものなどがある。また、離床検出に類似する技術として、患者の体位の変化を検出する寝返り管理システムが提案されている(特許文献1参照)。このシステムは、患者の肩および腰に測定センサを取り付け、ベッドに設置された受信アンテナと超音波マイクとで前記測定センサから発信される電波と超音波をそれぞれ受信する。その受信の際に生じる時間差に基づいて、患者の体位の変化を検出するものである。さらに、このシステムには、測定センサと受信アンテナとの間での電波の通信可能範囲をベッドの上方空間に限定することで、当該電波の通信が途絶えた場合に、患者が離床したと判断するようにしている。
【特許文献1】特開2006−325683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の感圧センサや荷重センサを利用した離床検知装置では、ベッドから患者が足を下ろした段階で初めて患者の離床が検出されるため、看護士等が到着した段階では、既に患者が離床してから漫然と時間が経過しまっている。したがって、患者の離床を早期に発見し、患者の安全を十分に確保するという観点では課題がある。
【0004】
上記の特許文献1のシステムでは、患者がベッドの上方空間に存在しなくなった状態で、初めて患者の離床が検出される。このため、上述の感圧センサ等と同様に、患者の離床を早期に発見することはできない。
【0005】
また、患者の肩および腰に取り付けた測定センサは、布団の中に隠れると、超音波マイクに超音波が届かないので、患者の体位変化ないし離床動作を検出することができない。
【0006】
なお、上記のような問題は、病院に限らず、離床検知装置を設けた老人ホーム等の種々の施設や一般家庭等においても同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑み、ベッド上の人体の離床動作の開始を早期且つ正確に検出することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、静止系に取り付けられた状態で、ベッドを含む管理エリアに超音波信号を継続的に送信する送波器と、静止系に取り付けられた状態で、前記管理エリア内で反射した前記超音波信号を受信する受波器と、前記送波器から送信される前記超音波信号に対応して前記受波器で所定時間毎に取得される反射波データからベッド上の人体の頭部三次元位置を時々刻々演算する位置演算手段と、該位置演算手段の演算結果から人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド上の人体が離床動作を開始したか否かを判定する判定手段と、該判定手段によって人体の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発する報知手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
以上の構成により、ベッド上の人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化が検知されることから、例えばベッド上での起き上がり動作等の離床動作の開始を検知することができる。したがって、人体がベッドから足を下ろす前に、人体の離床を未然に予測して早期に検知することが可能となる。しかも、人体の頭部は、常時布団の外に出ているのが通例であり、人体の頭部で反射した超音波信号が布団によって阻害されることはない。そのため、人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知することで、患者の離床動作の開始を正確に検知することができる。なお、送波器及び受波器が、静止系に取り付けられるので、人体に直接センサを取り付けた場合のように患者に負担が掛かるという事態も回避することができる。
【0010】
上記の構成において、前記判定手段は、前記位置演算手段によって、ある瞬間に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を基準位置とすると共に、直後に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を対象位置として、前記基準位置から前記対象位置までの移動ベクトルを演算し、該移動ベクトルのうちその大きさが第1所定値以下となる場合を実報とし、この実報に基づいて前記基準位置から前記対象位置に人体の頭部が移動したと判断することにより、人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知するように構成されていることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、ある瞬間に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置と、その直後に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置とを、移動ベクトルの大きさに基づいて時系列で関連付けながら、人体の頭部三次元位置の横臥位置から時間的に変化をより正確に検知することが可能となる。
【0012】
上記の構成において、前記判定手段は、前記実報が連続的に得られない検知時間に対応して、前記第1所定値を増大するように構成されていることが好ましい。なお、ここでいう検知時間とは、なお、ここでいう検知時間とは、基準位置となる三次元位置が演算された反射波データが取得されてから、対象位置となる三次元位置が演算された反射波データが取得されるまでの時間を意味する。
【0013】
このようにすれば、例えばベッド上の人体からの反射波強度が微弱であったり、或いは突発的なノイズの影響などによって、反射波データから人体の頭部三次元位置が演算できない場合が生じたとしても、その検知時間に対応して第1所定値が増大される。そのため、人体の頭部三次元位置の捕捉率を低下させることなく、人体の頭部三次元位置からの横臥位置からの時間的変化の検知を確実に続行することができる。
【0014】
上記の構成において、前記位置演算手段は、1つの反射波データから複数の頭部三次元位置が演算された場合にこれらを暫定頭部三次元位置とすると共に、該暫定頭部三次元位置の相互間の変位ベクトルを演算し、この中から前記変位ベクトルの大きさが第2所定値以下となる暫定頭部三次元位置を選択し、この選択した暫定頭部三次元位置に基づいて人体の頭部三次元位置を設定するように構成されていることが好ましい。
【0015】
送波器から振幅減衰時間(振幅減衰開始の時刻(最大振幅の時刻)から振幅減衰終了の時刻までの時間)のない理想的なパルス波として超音波を送信することは困難であることから、実用上は所定の振幅減衰時間を有する超音波信号を送信する場合が多い。この場合には、送信する超音波信号の振幅減衰時間との関係から、同一の人体の頭部からの反射波が時間的に幅をもって受波器に受信されることがある。そのため、1つの反射波データから同一の人体を示す頭部三次元位置が複数箇所検出される場合がある。そこで、上記の構成では、1つの反射波データから複数の三次元位置が演算された場合に、これらを一旦暫定三次元位置として、暫定三次元位置の相互間の変位ベクトルを演算し、その演算した変位ベクトルの大きさに基づいて1又は複数の暫定三次元位置を選択する。これにより、複数の暫定頭部三次元位置の中から同一の人体の頭部を捉えたと推定される暫定頭部三次元位置を選択できる。そして、選択した暫定頭部三次元位置に基づいて人体の頭部三次元位置を設定することにより、演算処理の簡素化を好適に実現することができる。なお、上記の第2所定値は、例えば送波器から送信される超音波信号の振幅減衰時間に基づいて設定される。
【0016】
この場合、前記位置演算手段は、前記選択した暫定三次元位置のうち、前記受波器に最も近い暫定三次元位置を移動体の三次元位置に設定したり、或いは前記選択した暫定三次元位置の重心位置を、移動体の三次元位置に設定するように構成してもよい。
【0017】
上記の構成において、前記受波器は、複数の受波素子を配列したアレイセンサであることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、受波器を回動させる等して機械的に走査することなく、電子的走査のみで、管理エリアで反射した超音波信号を受信することが可能となる。
【0019】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、静止系に取り付けられた送波器からベッドを含む管理エリアに超音波信号を継続的に送信すると共に、静止系に取り付けられた受波器により前記管理エリア内で反射した前記超音波信号を受信して、前記送波器から送信される前記超音波信号に対応した反射波データを所定時間毎に取得する反射波データ取得工程と、該反射波データ取得工程で取得された反射波データからベッド上の人体の頭部三次元位置を時々刻々演算する位置演算工程と、該位置演算工程の演算結果から人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド上の人体が離床動作を開始したか否かを判定する判定工程と、該判定工程により、人体の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発する報知工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
以上の方法によれば、既に述べた段落[0009]に記載の事項と同様の作用効果を享受することができる。
【0021】
上記の方法において、前記判定工程では、前記位置演算工程によって、ある瞬間に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を基準位置とすると共に、直後に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を対象位置として、前記基準位置から前記対象位置までの移動ベクトルを演算し、該移動ベクトルのうちその大きさが第1所定値以下となる場合を実報とし、この実報に基づいて前記基準位置から前記対象位置に人体の頭部が移動したと判断することにより、人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知することが好ましい。
【0022】
このようにすれば、既に述べた段落[0011]に記載の事項と同様の作用効果を享受することができる。
【0023】
上記の方法において、前記判定工程で、前記実報が連続的に得られない検知時間に対応して、前記第1所定値を増大することが好ましい。
【0024】
このようにすれば、既に述べた段落[0013]に記載の事項と同様の作用効果を享受することできる。
【0025】
上記の方法において、前記位置演算工程は、1つの反射波データから複数の頭部三次元位置が演算された場合にこれらを暫定頭部三次元位置とすると共に、該暫定頭部三次元位置の相互間の変位ベクトルを演算し、この中から前記変位ベクトルの大きさが第2所定値以下となる暫定頭部三次元位置を選択し、この選択した暫定頭部三次元位置に基づいて人体の頭部三次元位置を設定することが好ましい。
【0026】
このようにすれば、既に述べた段落[0015]に記載の事項と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、ベッド上の人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化が検知されることから、例えばベッド上での起き上がり動作等の離床動作の開始を検知することができる。したがって、人体がベッドから足を下ろす前に、人体の離床を未然に予測して早期に検知することが可能となる。しかも、人体の頭部は、常時布団の外に出ているのが通例であり、人体の頭部で反射した超音波信号が布団によって阻害されることはない。そのため、人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知することで、人体の離床動作の開始を正確に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る離床検出装置を模式的に示すブロック図であり、図2はその取り付け態様を模式的に示す斜視図である。図に示すように、離床予測装置1は、送波器2と、受波器3と、位置演算手段4と、判定手段5と、報知手段6を備えている。
【0030】
送波器2は、天井に取り付けられた状態でベッド7を含む管理エリア8に超音波信号を所定の間隔を空けて継続的に送信するように構成される。受波器3は、同じく天井に取り付けられた状態で管理エリア8内で反射した超音波信号を受信するように構成される。送波器2と受波器3とでセンサユニット9が構成される。
【0031】
この実施形態では、送波器2は、超音波信号を管理エリア8内に拡散させて送信するように構成される。一方、受波器3は、複数の受波素子を配列したアレイセンサで構成される。例えば、このアレイセンサの一例としては次のような構成が挙げられる。すなわち、アレイセンサ3としては、図3(a),(b)に示すように、複数の受波素子3aを単一の平面(基板3b)上に、例えば格子状や十字状等に配列し、各受波素子3aで得られた信号を、管理エリア8内で反射した超音波信号の入射角度および各受波素子3aの位置に対応した時間分だけ遅延させた後に加算することで、電子的走査によって三次元反射波データを取得するように構成されたものが挙げられる。さらに、この場合、隣接する受波素子3aの中心間距離Xは、送波器2から送信される超音波信号の半波長以下に設定することが好ましい。このようにすれば、複数の受波素子3aで得られた信号を遅延加算して得られる三次元反射波データに、誤差の要因となる所謂ゴースト成分が発生するという事態を効果的に低減することができる。
【0032】
位置演算手段4は、送波器2から送信される超音波信号に対応して受波器3で所定時間毎に取得される反射波データからベッド7上の患者10の頭部三次元位置を時々刻々演算するように構成される。
【0033】
判定手段5は、位置演算手段4の演算結果から患者10の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド上の人体が離床動作を開始したか否かを判定するように構成される。
【0034】
報知手段6は、判定手段5によって患者10の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発するように構成される。
【0035】
次に、このように構成された離床予測装置1による離床予測手順を説明する。
【0036】
図4は、離床検出手順を示すフローチャートである。同図に示すように、この離床検出手順は、送波器2からベッド7を含む管理エリア8に超音波信号を所定の間隔を空けて継続的に送信すると共に、受波器3で管理エリア8内で反射した超音波信号を受信して、送波器2から送信される超音波信号に対応した反射波データを所定時間毎に取得する反射波データ取得工程S1と、反射波データ取得工程S1で取得された反射波データからベッド7上の患者10の頭部三次元位置を時々刻々演算する位置演算工程S2と、位置演算工程S2の演算結果から患者10の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド7上の患者10が離床動作を開始したか否かを判定する判定工程S3と、判定工程S3により患者10の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発する報知工程S4とを含む。この実施形態では、受波器3で反射波データ取得工程S1が実行される。また、位置演算手段4によって位置演算工程S2が実行される。さらに、判定手段5によって判定工程S3が実行される。また、報知手段6によって報知工程S4が実行される。
【0037】
反射波データ取得工程S1では、送波器2から超音波信号を送信するごとに、受波器3で受信される超音波信号から三次元反射波データを取得する。この反射波データは、管理エリア8を高さ方向に複数の平面に分割した平面データから構成されており、それぞれの平面データには、反射波の信号強度分布が記録される。
【0038】
位置演算工程S2は、差分処理工程S10と、ピーク演算工程S20と、グルーピング工程S30とに大別される。
【0039】
差分処理工程S10では、上記の反射波データ取得工程S1で取得された反射波データから、予め計測しておいた患者不在時または患者就寝時の管理エリア8の反射波データを減算する。これにより、反射波データに含まれる静止物体がデータ上削除され、静止物体と動体(患者10等)とを明確に区別することが可能となる。
【0040】
患者10の頭部を捉えた反射波データを構成する平面データでは、縦軸に信号強度をとると、例えば図5に示すように、患者10の頭部が凸部となって現れる。そのため、ピーク演算工程S20では、上記の差分処理工程S10後の反射波データを構成する複数の平面データのそれぞれにつき、信号強度のピーク値と、その位置を検出する。そして、信号強度が、所定のピーク判定閾値を超えるものを頭部三次元位置として記憶する。このようにすれば、患者10の頭部三次元位置をポイントで定義することができるので、患者10の頭部三次元位置を信号強度が凸部となる部分全体で定義する場合に比して、演算処理の簡素化を図ることができる。なお、この記憶された頭部三次元位置は、受波器3(センサユニット9)に近いものから順に配列された状態で頭部位置データとして記憶される。
【0041】
本実施形態では、上記のピーク演算工程S20で演算された頭部三次元位置が同一の患者10の頭部を捉えたものであるか否かを判断するために、グルーピング工程S30が実行される。これは、次のような理由による。一般に、空気中を伝搬する超音波が患者10の頭部などの物体に当たった場合には、直進することなく、その物体で反射して戻ってくる。しかし、送信する超音波信号を、振幅減衰時間(振幅減衰開始の時刻(最大振幅の時刻)から振幅減衰終了の時刻までの時間)のない理想的なパルス波として送信することは困難であり、実用上は、図6に示すように、所定の振幅減衰時間ΔTを有する超音波信号を送信する場合が多い。そのため、送信する超音波の振幅減衰時間ΔTとの関係から、同一の物体で反射した超音波信号が時間的に幅をもって検出される場合がある。この場合には、上記の反射波データを構成する複数の平面データのうち、連続する数枚の平面データに同じ物体による複数のピーク値が検出されることになる。そのため、演算処理の簡素化の観点からも、複数のピーク値のうち、どのピーク値が同一の患者10を捉えたものであるのかを判断する必要がある
【0042】
そこで、グルーピング工程S30では、上記のピーク演算工程S20で1つの反射波データから複数の頭部三次元位置が演算された場合に、これらを一旦暫定的な頭部三次元位置として、その頭部三次元位置の相互間の変位ベクトルを演算し、この中から変位ベクトルの大きさがグルーピング閾値(第2所定値)以下となる頭部三次元位置を選択する。この際、選択された頭部三次元位置は、同一の患者10の頭部を捉えたものと判断する。そして、選択した頭部三次元位置に基づいて患者10の頭部三次元位置(代表位置)を改めて設定する。
【0043】
このグルーピング工程S30は、図7に示す手順で実行される。同図に示すように、グルーピング工程S30では、まず、上記のピーク演算工程S20で記憶された頭部位置データのうち、センサユニット9に最も近い先頭の頭部三次元位置(暫定頭部三次元位置)を基準位置に設定すると共に、その頭部三次元位置を代表位置とした新規グループを登録し且つその新規グループを対象グループに設定する(ステップS31)。その後、頭部三次元位置データの中に、次の頭部三次元位置(暫定頭部三次元位置)が存在するか否かを判断する(ステップS32)。
【0044】
その結果、次の頭部三次元位置が存在する場合には、その頭部三次元位置を対象位置に設定する(ステップS33)。そして、基準位置から対象位置までの変位ベクトルを演算する(ステップS34)と共に、その変位ベクトルの大きさがグルーピング閾値以下であるか否かを判断する(ステップS35)。
【0045】
その結果、グルーピング閾値以下である場合には、対象位置を新たな基準位置とすると共に、対象グループに追加登録(ステップS36)し、上記のステップS32に戻る。
【0046】
一方、ステップS35で、グルーピング閾値を超えていると判断された場合には、対象位置を新たな基準位置とすると共に、次の頭部三次元位置を代表位置とした新規グループを登録し且つその新規グループを新たな対象グループに設定(ステップS37)し、上記のステップS32に戻る。以後、上記のステップS32で次の頭部三次元位置が存在しないと判断されるまで、上記のステップを繰り返し、ピーク演算工程S20で記憶された全ての頭部三次元位置を所定のグループに分類すると共に、グループごとに代表位置を設定する。
【0047】
ここで、上記のグルーピング閾値は、送信する超音波信号の振幅減衰時間ΔTに基づいて設定される。これは、振幅減衰時間ΔTから予め同じ患者10の頭部を捉えた信号がどの程度の範囲で検出されるかを予測することが可能であるためである。
【0048】
上記のグルーピング工程S30では、センサユニット9に近い順に頭部三次元位置が配列された頭部位置データのうち、先頭の頭部三次元位置から順に処理しているので、分類されたグループごとにセンサユニット9に最も近い頭部位置が代表位置として設定される。したがって、時間的に最初に物体(患者10の頭部)で反射したものを、各グループの代表位置として設定することができる。すなわち、センサユニット9から所定の振幅減衰時間を有する超音波信号を送信した場合であっても、振幅減衰時間のない理想的なパルス
波を送信した場合と同様の結果を得ることができる。
【0049】
このようにして処理されたグルーピング工程S30の処理結果を図8に概念的に示す。図示例は、ピーク演算工程S20で6つの頭部三次元位置a1,a2,a3,b1,b2,b3が検出され、グルーピング工程S30の結果、頭部三次元位置a1〜a3からなるグループA(例えば、患者10以外の第三者を示すグループ)と、頭部三次元位置b1〜b3からなるグループB(例えば、患者10を示すグループ)に分類された場合を例示するものである。この場合、各グループA,Bの代表位置は、センサユニット9に最も近い頭部位置a1,b1にそれぞれ設定される。なお、グループの代表位置は、センサユニット9に最も近い頭部位置に設定するものに限らず、例えば、頭部位置データに含まれる全ての頭部三次元位置を所定のグループに分類した後、各グループに属する頭部三次元位置の重心位置を演算し、その重心位置を代表位置に設定するようにしてもよい。
【0050】
判定工程S3は、移動判定工程S40と、エリア判定工程S50と、離床動作判定工程S60とに大別される。
【0051】
移動判定工程S40では、既に得られた一の反射波データから検出されたグループの代表位置と、新たに得られた他の反射波データから検出されるグループの代表位置との移動ベクトルを演算し、その変位ベクトルの大きさに基づいて、患者10の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知する。すなわち、上記のグルーピング工程S30は、同一の反射波データ内における処理であるが、この移動判定工程S40は、異なる2つの反射波データ(例えば前回の反射波データと今回の反射波データ)を比較して処理するものである。
【0052】
この移動判定工程S40は、図9に示す手順で実行される。同図に示すように、移動判定工程S40では、まず、上記のグルーピング工程S30で検出されたグループが存在するか否かを判断する(ステップS41)。その結果、グループが存在する場合には、そのグループの代表位置を取得して対象位置とする(ステップS42)。そして、前回の反射波データにおいて既に追跡済みグループが存在するか否かを判断する(ステップS43)。その結果、存在する判断された場合には、その追跡済みグループの代表位置を取得して基準位置に設定する(ステップS44)。その後、基準位置から対象位置までの移動ベクトルを演算する(ステップS45)と共に、この移動ベクトルの大きさが移動判定閾値(第1所定値)以下であるか否かを判断する(ステップS46)。その結果、移動判定閾値以下である場合には実報とし、対象位置を、判定基準位置とした追跡済みグループの新しい代表位置とする(ステップS47)と共に、上記のステップS41に戻る。すなわち、この場合には、代表位置(頭部三次元位置)が、基準位置から対象位置に移動したものと判断する。一方、移動判定閾値を超える場合には、代表位置が判定位置から対象位置に移動したものと判断せずに、ステップS41に戻る。
【0053】
また、上記のステップS43で、追跡済みグループが存在しないと判断された場合には、対象位置を、新規追跡済みグループの新しい代表位置とする(ステップS48)と共に、ステップS41に戻る。
【0054】
そして、ステップ41で、次のグループが存在しないと判断されるまで、以上のステップを繰り返し、各グループの代表位置の時間的な変化を追跡する。
【0055】
なお、上記の移動判定閾値は、患者10の移動速度に基づいて設定される。具体的には、移動判定閾値は、前回の反射波データが取得されてから今回の反射波データが取得されるまでの時間の間に、患者10が実際に移動できる最大推定移動量に基づいて設定される。
【0056】
また、患者10の姿勢などによっては、患者10で反射した超音波信号の信号強度が微弱であったり、或いはノイズが発生した場合には、ピーク演算工程S20で頭部三次元位置を検出できないことがある。そのため、グループごとに頭部三次元位置が検出できなかった検知時間を計測し、その検知時間に応じて、移動判定閾値を増大するようになっている。具体的には、例えば、上記の検知時間を反射波データの計測数で検出する。そして、時系列で連続する2つの反射波データ間で使用する移動判定閾値をαとし、検出できなかった反射波データの計測数をnとした場合、移動判定閾値を例えばα×(n+1)に設定するようになっている。
【0057】
このようにして処理された移動判定工程S40の処理結果を、図10に概念的に示す。同図例は、前回の反射波データに対するグルーピング工程S30で代表位置A1,B1が検出されると共に、今回の反射波データに対するグルーピング工程S30で、代表位置A2,B2が検出された状態を示している。そして、移動判定工程S40によって、前回の反射波データで検出された代表位置A1が、今回の反射波データで検出された代表位置A2に移動し、前回の反射波データで検出された代表位置B1が、今回の反射波データで検出された代表位置B2に移動したと判断された状態を示している。
【0058】
また、図11に示すように、今回の反射波データで得られた代表位置C2が、前回の反射波データで得られた代表位置A1,B1の双方に対して、移動判定閾値以内にあることも想定される。そこで、本実施形態では、上記の移動判定工程S40を行うに際して、前回の反射波データによって既に患者10の頭部位置を捕捉している場合には、当該患者10の頭部位置を示す代表位置を最初に処理することで、患者10の移動を優先的に追跡するようにしている。すなわち、上記のステップS43で、患者10を捕捉したグループを最初に設定するようにしている。これにより、患者10の補足率を向上させることができる。なお、患者10を優先的に処理することに代えて、図11に示すような場合に、実距離が近い代表位置が移動したものとして処理するようにしてもよい。
【0059】
エリア判定工程S50では、予め管理エリア8を複数のエリアに分割して定義し、上記の移動判定工程S40を経た各グループの代表位置が、管理エリア8のどのエリアに位置するかを検出すると共に、そのグループが患者10の頭部を捕捉したものであるか否かを判定する。ここで、管理エリア8は、図12,13に示すように、ベッド7に横臥した患者10の頭部が位置する横臥エリア11と、ベッド7に座った患者10の頭部が位置する座位エリア12と、ベッド7の上に立った患者10の頭部が位置する立位エリア13と、ベッド上の幅方向両端部に形成された報知エリア14と、報知エリア14の外側にベッド7の周囲を取り囲むように形成された離床エリア15とに分割された状態で定義される。なお、図12に示すように、横臥エリア11は、患者10の足などを頭部と誤って認識しないように、ベッド7の枕側のみに形成されている。
【0060】
このエリア判定工程S50は、図14に示す手順で実行される。同図に示すように、エリア判定工程S50では、上記の移動判定工程S40で追跡済みのグループが存在するか否かを判定する(ステップS51)。その結果、存在する場合には、その追跡済みのグループの代表位置を取得して対象位置とする(ステップS52)。次に、その対象位置が管理エリア8のどのエリアに該当するかを検出する(ステップS53)。そして、患者10を捕捉する前であれば(ステップS54)、その該当エリアが患者10の横臥エリア11であるか否かを判断する(ステップS55)。その結果、該当エリアが横臥エリア11に等しい場合には、対象位置としたグループを患者10とみなす(ステップS56)と共に、上記のステップS51に戻る。また、患者10を捕捉した後(ステップS54)、またはステップS55で該当エリアが横臥エリア11に等しくない場合にも、ステップS51に戻る。そして、上記のステップを、ステップ51で追跡済みのグループが存在しないと判断されるまで繰り返す。
【0061】
離床動作判定工程S60では、上記のエリア判定工程S50で患者10を示すグループが検知された後、その患者10を示すグループが報知エリア14に、予め定められた所定時間以上滞在しているか否かを判定する。患者10が寝返りによって報知エリア14に所定時間滞在する可能性もあるため、上記の移動判定工程S40で検知された患者10の頭部三次元位置の時間的な変化が、横臥エリア11から座位エリア12に至った後、報知エリア14に至り且つ所定時間以上滞在するように変化した場合に、患者10が離床動作を開始したと判定する。これにより、患者10の離床動作の開始を誤認することを防止できる。
【0062】
なお、ベッド7の幅方向両端部で起き上がることも想定されるので、横臥エリア11と、座位エリア12とを、ベッド7の幅方向両端部まで延長しておき、患者10の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化が、横臥エリア11から座位エリア12に移行した段階で、ベッド7上の幅方向両端部に報知エリア14を形成するようにしてもよい。
【0063】
また、患者10の離床動作の開始を早期に検出するという観点からは、座位エリア12を報知エリアに設定してもよい。すなわち、患者10の頭部三次元位置の時間的な変化が、横臥エリア11から座位エリア12に至り所定時間滞在するように変化した場合に、患者10が離床動作を開始したと判定するようにしてもよい。この場合、更に早期に検出する観点から、座位エリア12、横臥エリア11をベッド7の幅方向両端まで延長してもよい。
【0064】
また、段落[0061]に記載の本実施形態に係る離床動作の判定方法と、段落[0062]、[0063]に記載の離床動作の判定方法を互いに例えばスイッチ等により変更可能にしてもよい。
【0065】
報知工程S4では、上記の離床動作判定工程S60で患者10の離床動作の開始が判定された段階で報知信号を発し、ナースセンターの看護士等に患者10の離床動作の開始を報知する。具体的には、例えば、報知手段6をナースコールの信号系統に接続し、報知手段6から報知信号が出力された場合にナースコールが発令するようにする。その他に、報知信号を電波として発信し、その報知信号を特定の場所に設置された所定の端末或いは看護士等が所持する所定の端末(例えば携帯電話等)で受信するようにしてもよい。このような無線を利用して報知信号を発信する手法は、ナースコールがない一般家庭等において人体の離床動作の開始を報知する手段として有効となる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る離床予測装置1によれば、ベッド7上の患者10の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化が検知されることから、ベッド7上での離床動作の開始を検知することができる。したがって、患者10がベッド7から足を下ろす前に、患者10の離床を未然に予測して早期に検知することが可能となる。しかも、患者10の頭部は、常時布団の外に出ているのが通例であり、患者10の頭部で反射した超音波信号が布団によって阻害されることはない。そのため、患者10の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知することで、患者10の離床動作の開始を正確に検知することができる。
【0067】
本実施形態では、図12に示すようにセンサユニット9を直接天井16に取り付けているが、本発明はこれに限定されず、中間部材を介して天井16に取り付けてもよい。また、天井16に対するセンサユニット9の取り付けは、天井16に対して固定であってもよく、天井16に対して位置や角度を調節可能であってもよい。
【0068】
別の実施形態として、図15に示すように、センサユニット9’を壁17に中間部材18を介して取り付けた離床予測装置がある。この離床予測装置は、上記のセンサユニット9を天井16に設置した離床予測装置の構成に、座標変換を行なう座標変換手段を加えることにより構成できる。なお、センサユニット9’を壁17に埋め込むなどして直接壁17に取り付けてもよい。壁17に対するセンサユニット9’の取り付けは、壁17に対して固定であってもよく、壁17に対して位置や角度を調節可能であってもよい。
【0069】
上記の座標変換について詳述する。例えば図15に示した壁設置型センサユニット9’用の座標軸が図16(A)に示すものとする。Z’軸は、壁設置型センサユニット9’における超音波を送受波する面に垂直な方向で、同図右下の向きである。Y’軸が壁設置型センサユニット9’における超音波を送受波する面且つ紙面に沿った方向で,同図右上の向きである。X’軸は、紙面に垂直な方向で紙面の裏から表への向きである。
【0070】
例えば図12に示した天井設置型センサユニット9用の座標軸が図16(B)に示すものとする。Z軸は、天井設置型センサユニット9における超音波を送受波する面に垂直な方向で、同図下の向きである。Y軸がセンサユニット9における超音波を送受波する面且つ紙面に沿った方向で、同図左の向きである。X軸は、紙面に垂直な方向で紙面の表から裏への向きである。
【0071】
図16(A)に示す座標軸を有する壁設置型センサユニット9’が図15に示すように壁17に設置されている場合を考える。この壁設置型センサユニット9’を使用した離床予測装置におけるエリアベッド7に対するエリア11〜15の設定範囲は上記実施形態と同じとする。この図15に示す部屋に、図16(B)に示す座標軸を有する天井設置型センサユニット9が、天井16に設置されていることを仮定する。この天井設置型センサユニット9を使用した離床予測装置におけるエリアベッド7に対するエリア11〜15の設定範囲も上記実施形態と同じとする。
【0072】
この部屋における任意の位置に対する壁設置型センサユニット9’の座標軸での座標値を、天井設置型センサユニット9の座標軸での座標になるような数学的な座標変換の式を作成する。この座標変換式を使用すれば、壁設置型センサユニット9’を使用した離床予測装置において、天井設置型センサユニット9を使用した離床予測装置におけるアルゴリズムが使用可能になる。すなわち、この座標変換式を用いた座標変換を行なう座標変換手段、座標変換工程をそれぞれ、天井設置型センサユニット9を使用した離床予測装置、離床予測方法に加えることにより、壁設置型センサユニット9’を使用した離床予測装置及び離床予測方法が容易に構成できる。
【0073】
壁設置型センサユニット9’は、天井設置型センサユニット9に比較して、設置作業及び設置場所の変更が容易であるため、壁設置型センサユニット9’を使用した離床予測装置及び離床予測方法は利便性、受容性が向上する。
【0074】
また、壁設置型センサユニット9’を、壁17ではなく、例えば三脚架のような台に取り付け、その台を移動可能に床に配置してもよい。この場合、更に設置作業及び設置場所の変更が容易であるため、壁設置型センサユニット9’を使用した離床予測装置及び離床予測方法は、更に利便性、受容性が向上する。なお、壁設置型センサユニット9’は、直接台に取り付けてもよく、中間部材を介して台に対して取り付けてもよい。また、台に対する壁設置型センサユニット9’の取り付けは、台に対して固定でもよく、台に対して位置や角度を調節可能であってもよい。また、壁設置型センサユニット9’を取り付ける台が伸縮自在な台や屈曲可能な台等であることにより、壁設置型センサユニット9’が床に対して位置や角度を調節可能であってもよい。
【0075】
なお、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、患者10の離床動作を予測する場合について説明したが、老人ホームや一般家庭等における患者10以外の人に対しても同様に適用できる。
【0076】
また、上記実施形態では、ベッド上の動作で離床動作を判定しているが、ベッドに腰掛けた状態から腰を上げた時点又は床に立ち上がった時点を離床動作と判定する設定に、例えばスイッチ等により変更できるようにしてもよい。この離床動作の判定は、例えば報知エリアを離床エリア15に設定する、エリアの定義を変更することにより可能である。
【0077】
この離床動作設定の変更により、例えば自立歩行が困難で転倒の恐れがある高齢者の離床については、ベッド上の動作で判定すれば(例えば段落[0063]の方法を使用)、看護士や介護士が早期に対応することができ、高齢者の転倒が防止できる。一方、離床動作設定変更により、例えば自立歩行が可能であるが徘徊の恐れがある認知症患者の離床については、腰を上げた時点又は床に立ち上がった時点を離床動作と判定すれば、転倒の危険はなく、徘徊までには看護士や介護士は間に合う。また、ベッド上での動作で離床動作判定する場合より、報知回数が減少し、看護士や介護士の負担が減少する。すなわち、離床動作判定の設定の変更により、一つの離床予測装置で、看護・介護側のニーズや運用実態に合わせた離床判定を行なうことができる。
【0078】
なお、ベッドに腰掛けた状態から腰を上げた時点を離床動作と判定する設定と、床に立ち上がった時点を離床動作と判定する設定とを、例えばスイッチ等により互いに変更可能にしてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、患者10の頭部位置のみを追跡検知する場合を説明したが、患者10の頭部位置に加え、患者の肩などの他の体部位置を同時に追跡検知することにより、患者10の離床動作の開始を判定するようにしてもよい。
【0080】
さらに、上記の実施形態では、一つのベッド7を含む管理エリア8を、一つのセンサユニット9(一組の送波器2と受波器3)で管理する場合について説明したが、複数のセン
サユニット9を用いて管理するようにしてもよい。この場合、各センサユニット9から送信される超音波信号が、別のセンサユニット9から送信される超音波信号と干渉しないようにすることが好ましい。この対策としては、各センサユニット9から送信される超音波が干渉しないように所定の時間差を明けて各センサユニット9から順次超音波を送信することが挙げられる。別の対策としては、例えば、各センサユニット9から送信される超音波信号の波長を変え、受信した超音波信号をフィルタリング処理して各センサユニット9から送信された超音波信号の波長成分ごとに分離して計測することが挙げられる。また、一つのセンサユニット9で、複数のベッド7を含む管理エリア8を管理するようにしてもよい。この場合、管理エリア8を拡張するために、送波器2としては、無指向性の送波器を使用することが好ましい。
【0081】
また、ベッド7上(例えばベッド7の四隅)に、超音波信号を送信する送波器を別途取り付けて、センサユニット9に向かって所定のタイミングで超音波信号を送信することで、判定手段5にベッド7の位置を認識させるようにしてもよい。
【0082】
さらに、離床動作の予測は、手動に限らず、自動で開始するようにしてもよい。自動的に離床予測を開始する場合、例えば、別途赤外線センサを天井16等の静止系に取り付ける。この赤外線センサによって、ベッド7上から患者10等の人体の発する特定波長の赤外線を検出する。赤外線が所定時間に亘って検出された場合に、赤外線センサから判定手段5に信号を出力することにより、離床検出を自動的に開始する。さらに、離床検出は、報知手段6が報知信号を発した段階で一旦終了するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態に係る離床予測装置を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る離床予測装置の取り付け態様を模式的に示す斜視図である。
【図3】(a)は本実施形態に係る離床予測装置に利用される受波器の一例を模式的に示す平面図であって、(b)は受波器の他の一例を模式的に示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る離床予測装置による離床予測手順を示すフローチャートである。
【図5】反射波データの一例を示すグラフである。
【図6】送信する超音波信号の波形の一例を模式的に示すグラフである。
【図7】図4の離床予測手順に含まれるグルーピング工程を示すフローチャートである。
【図8】グルーピング工程の処理結果を概念的に示す図である。
【図9】図4の離床予測手順に含まれる移動判定工程を示すフローチャートである。
【図10】移動判定工程の処理結果を概念的に示す図である。
【図11】移動判定工程の処理結果を概念的に示す図である。
【図12】ベッドの側面から見た管理エリアの分割態様を示す側面図である。
【図13】ベッドの正面から見た管理エリアの分割態様を示す側面図である。
【図14】図4の離床予測手順に含まれるエリア判定工程を示すフローチャートである。
【図15】本発明の別の実施形態に係る離床予測装置を示す図である。
【図16】離床予測装置の座標軸例を示す図で(A)は、壁設置型センサユニットを使用した場合、(B)が天井設置型センサユニットを使用した場合のものである。
【符号の説明】
【0084】
1 離床予測装置
2 送波器
3 受波器
4 位置演算手段
5 判定手段
6 報知手段
7 ベッド
8 管理エリア
9、9’ センサユニット
10 患者
S1 反射波データ取得工程
S2 位置演算工程
S3 判定工程
S4 報知工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止系に取り付けられた状態で、ベッドを含む管理エリアに超音波信号を継続的に送信する送波器と、
静止系に取り付けられた状態で、前記管理エリア内で反射した前記超音波信号を受信する受波器と、
前記送波器から送信される前記超音波信号に対応して前記受波器で所定時間毎に取得される反射波データからベッド上の人体の頭部三次元位置を時々刻々演算する位置演算手段と、
該位置演算手段の演算結果から人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド上の人体が離床動作を開始したか否かを判定する判定手段と、
該判定手段によって人体の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発する報知手段とを備えていることを特徴とする離床予測装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記位置演算手段によって、ある瞬間に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を基準位置とすると共に、直後に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を対象位置として、前記基準位置から前記対象位置までの移動ベクトルを演算し、該移動ベクトルのうちその大きさが第1所定値以下となる場合を実報とし、この実報に基づいて前記基準位置から前記対象位置に人体の頭部が移動したと判断することにより、人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の離床予測装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記実報が連続的に得られない検知時間に対応して、前記第1所定値を増大するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の離床予測装置。
【請求項4】
前記位置演算手段は、1つの反射波データから複数の頭部三次元位置が演算された場合にこれらを暫定頭部三次元位置とすると共に、該暫定頭部三次元位置の相互間の変位ベクトルを演算し、この中から前記変位ベクトルの大きさが第2所定値以下となる暫定頭部三次元位置を選択し、この選択した暫定頭部三次元位置に基づいて人体の頭部三次元位置を設定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の離床予測装置。
【請求項5】
前記受波器は、複数の受波素子を配列したアレイセンサであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の離床予測装置。
【請求項6】
静止系に取り付けられた送波器からベッドを含む管理エリアに超音波信号を継続的に送信すると共に、静止系に取り付けられた受波器により前記管理エリア内で反射した前記超音波信号を受信して、前記送波器から送信される前記超音波信号に対応した反射波データを所定時間毎に取得する反射波データ取得工程と、
該反射波データ取得工程で取得された反射波データからベッド上の人体の頭部三次元位置を時々刻々演算する位置演算工程と、
該位置演算工程の演算結果から人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知し、その検知結果に基づいてベッド上の人体が離床動作を開始したか否かを判定する判定工程と、
該判定工程により、人体の離床動作の開始が検知された場合に報知信号を発する報知工程とを含むことを特徴とする離床予測方法。
【請求項7】
前記判定工程は、前記位置演算工程によって、ある瞬間に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を基準位置とすると共に、直後に取得される反射波データから演算される人体の頭部三次元位置を対象位置として、前記基準位置から前記対象位置までの移動ベクトルを演算し、該移動ベクトルのうちその大きさが第1所定値以下となる場合を実報とし、この実報に基づいて前記基準位置から前記対象位置に人体の頭部が移動したと判断することにより、人体の頭部三次元位置の横臥位置からの時間的な変化を検知することを特徴とする請求項6に記載の離床予測方法。
【請求項8】
前記判定工程は、前記実報が連続的に得られない検知時間に対応して、前記第1所定値を増大することを特徴とする請求項7に記載の離床予測方法。
【請求項9】
前記位置演算工程は、1つの反射波データから複数の頭部三次元位置が演算された場合にこれらを暫定頭部三次元位置とすると共に、該暫定頭部三次元位置の相互間の変位ベクトルを演算し、この中から前記変位ベクトルの大きさが第2所定値以下となる暫定頭部三次元位置を選択し、この選択した暫定頭部三次元位置に基づいて人体の頭部三次元位置を設定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の離床予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−307363(P2008−307363A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297167(P2007−297167)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者 システム制御情報学会 刊行物名 第51回 システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集 発行年月日 2007年5月16日 発行者 ライフサポート学会 日本生活支援工学会 刊行物名 第5回生活支援工学系学会連合大会 講演予稿集 第23回ライフサポート学会大会 第7回日本生活支援工学大会 発行年月日 平成19年10月1日
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(304030497)株式会社プロアシスト (22)
【Fターム(参考)】