説明

難燃剤としてのボロキシン誘導体

本発明は、ボロキシン誘導化合物、例えばトリプロパルギルボロキシン、該化合物の製造、並びにポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂における難燃剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロキシンから誘導される化合物、並びに、ポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂における難燃剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂、例えばエポキシ、ベンゾオキサジン、シアネート、又はポリイミド(熱可塑性のものもある)樹脂における難燃性は、多くの用途に関して未だ不十分である。ポリマー樹脂を難燃性にするために、臭素、リン、又は塩素を含む化合物又は充填剤を加えることが必要である。非常に多くの場合において、組成物を難燃性にするために提案されている解決法は、不活性充填剤又はハロゲン含有化合物或いは他の添加剤をベースとするものであるが、これらは概して一つ又は複数の欠点を有している。
−それらは、系中に反応しない不活性物質であるので、加工の見地から問題点を起こす可能性がある。
−それらは、樹脂の熱特性を低下させる。
−それらは、有機溶媒中に可溶でない可能性がある。
−それらは、しばしば、1を超えるタイプの樹脂系において作用させるための柔軟性に欠ける。
−特にハロゲン化化合物が存在する場合には、火災の場合に有害な燃焼ガスが形成する可能性がある。
【0003】
したがって、難燃/耐熱ポリマー樹脂はハロゲン含有化合物を含まないことが好ましい。
ボロキシンは、アルケン重合触媒の調製における共触媒として知られ始めている。この目的のためには、主としてトリメトキシボロキシンが用いられている。米国特許出願20030207757を参照。これらの化合物は、更に、塩アニオンを捕捉する能力に関して知られている。EP898319を参照。また、ホウ素化合物を用いることによる保護被覆も製造されている。EP791029を参照。WO2003011583においては、層間接着を増大させることができるトリメトキシボロキシンをベースとする系が記載されており、米国特許4,343,928においては、エポキシ樹脂、トリメトキシボロキシン、及びフェニル置換アルキルアルコール、特にベンジルアルコールから形成される透明な耐熱性中間層を有する透明な複合体が記載されている。
【0004】
難燃剤としても機能するホウ素化合物を用いることによって木材を処理することが、WO2002102560に記載されている。
ボロン酸エステルは、難燃剤として知られ始めている。WO200026288を参照。
【0005】
更に、トリメトキシボロキシンが、発泡系において用いられた。米国特許5,474,721を参照。
ハロ置換ボロキシンは、難燃組成物として言及されている。WO 9842802を参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、例えばトリプロパルギルボロキシンのような、ホウ素原子の少なくとも一つが脂肪族不飽和鎖のオキシ誘導体によって置換されているボロキシンから誘導される化合物を含む、ポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂から製造される物品が、機械的及び熱的特性を保持しながら大きく低下した燃焼性を示すことができることが見出された。したがって、かかる物品は、航空宇宙、工業、電子技術、或いは自動車、接着剤、シーラント、プレプリグ、及びラミネート、被覆、及びPCBのような他の用途において用いるのに特に好適である。これらは、また、RTM(樹脂トランスファー成形)、又は真空RTM(VaRTM)のような注入法を用いることによって加工することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、環の三つのホウ素原子の少なくとも一つが、(1)ホウ素原子、及び(2)不飽和の非芳香族炭素−炭素結合を含む部分に結合したオキシ官能基を含む置換基を有する、ボロキシン環を有する化合物(A)である。この部分(2)は、また、不飽和非芳香族炭素−炭素結合含有部分とも称する。
【0008】
IUPAC規則によれば、脂肪族化合物は、「芳香族化合物を除く、非環式又は環式で飽和又は不飽和の炭素化合物」である。好ましくは、置換基は、不飽和脂肪族化合物のオキシ誘導体である。好ましくは、本発明による化合物は、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有するアルケノキシボロキシンか、或いはより好ましくは、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有するアルキノキシボロキシンのいずれかである。
【0009】
好ましくは、置換基は、次式:
【数1】

(式中、
【数2】

は不飽和結合であり;n≧0であり、n>1の場合には、R1及び/又はR2は、n個の炭素原子のそれぞれに関して異なっていてもよく;不飽和結合が三重炭素−炭素結合である場合にはo=p=0であり、或いは不飽和結合が二重炭素−炭素結合である場合にはo=p=1であり;R1〜R6のそれぞれは、独立して、H、或いは任意の他の有機又は非有機誘導体である)
のような一般式を有する。
【0010】
好ましくはn=1〜20であり、好ましくはn=1である。
置換基がアルケノキシ誘導体である場合には、以下のリスト:トリス(2−プロペニルオキシ)−、トリス(3−ブテニルオキシ)t−、トリス(2−ブテニルオキシ)−、トリス[(2−メチル−2−プロペニル)オキシ]−、トリス[(1−メチル−2−プロペニル)オキシ]−、トリス(4−ペンテニルオキシ)−、トリス[(1−メチル−3−ブテニル)オキシ]−、トリス[(1−メチル−2−ブテニル)オキシ]−、トリス[(1−エチル−2−ブテニル)オキシ]−、トリス(9−オクタデセニルオキシ)−、から選択しないことが好ましい。
【0011】
好ましくは、置換基の不飽和結合は、ボロキシン環に対して閉じている。長鎖脂肪族鎖が存在しないことが、ボロキシン誘導体化合物の安定性並びに樹脂マトリクス中への分散性又は可溶性の点で好ましいと考えられる。したがって、好ましくは、上記の一般式が適用される場合にはn=1である。
【0012】
置換基は、芳香族部分の一部でない不飽和結合を有する。好ましくは、置換基は芳香環を有さず、より好ましくは環を全く有しない。
いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明者らは、これによって不飽和結合が樹脂の更なる重合において関与して、硬化樹脂全体に化合物(A)が分散するのを促進し、適当な難燃性又は耐熱性を与える役割を果たすことができると考えている。
【0013】
好ましくは、置換基の不飽和結合は炭素−炭素三重結合である。好ましくは、ボロキシン環の三つの酸素原子の全てが置換されている。これにより、高い割合の不飽和部分が更なる樹脂の重合に関与することができるようになる。好ましくは、不飽和結合に関与するか或いはそれに隣接する炭素原子上の置換基は、全て水素である。これは、化合物の適度な安定性及び樹脂中におけるその分散性及び適合性に寄与すると考えられる。本発明の他の態様は、トリアルコキシボロキシンのアルコキシ部分の少なくとも一つを、好ましくは加熱によって、不飽和脂肪族アルコール部分、好ましくはアルケニル又はアルキニルアルコール部分で置き換えることを含む、化合物(A)の製造方法である。
【0014】
好ましくは、トリアルキルボロキシンの三つのアルコキシ部分の全てを置き換える。
本発明の好ましい態様は、次式:
【0015】
【化1】

【0016】
の化合物であるトリプロパルギルボロキシン(トリスプロパルギルボロキシンとも称する)である。
式(I)の化合物の好都合な製造方法は、トリアルコキシボロキシンのアルコキシ部分を加熱によってプロパルギルアルコール部分に置き換えることを含む。好ましくは、トリアルコキシボロキシンとプロパルギルアルコールとを、約1〜3のモル比で、25重量%以下の過剰のプロパルギルアルコールを用いて反応させる。好ましくは、トリアルコキシボロキシンは、トリ−C〜Cアルコキシボロキシンであり、最も好ましくはトリメトキシボロキシンを用い、得られるメタノールは留去する。
【0017】
本発明の他の態様は、ポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂をベースとする難燃性の注型品、プレプリグ、ラミネート、又は注入系の製造方法における化合物(A)の使用である。
【0018】
本発明に関しては、「難燃性」という用語は、好ましくは、UL94標準規格(「Underwriters laboratory」試験法UL94)規準V0を満足することを意味する。
【0019】
上記に記載のようにして製造されたポリマー樹脂の特性は、通常の添加剤を加えることによって想定される用途に対して調整することができる。以下の添加剤が特に重要である。
【0020】
短繊維、ステープル繊維、撚糸、布帛、又はマットの通常の形態の、ガラス、石英、炭素、無機及び合成繊維(Keflar、Nomex)、(亜麻、黄麻、サイザル麻、大麻)のような天然繊維などの強化繊維;
可塑剤、特にリン化合物;
カーボンブラック又はグラファイト;
充填剤;
染料;
微細中空球体;
金属粉末。
【0021】
プレプリグ、SMC(シート成形化合物)の加熱圧搾;成形;注型;フィラメント巻き取り;注入法又は真空含侵(RTM、VaRTM);のようなポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂に関して公知の方法が、本発明の組成物を加工するのに好適である。真空含侵に関しては、0.2〜0.001mmの粒径を有する極めて微細な添加剤が特に好適である。
【0022】
組成物において用いる難燃剤の重量は、配合物中の成分がUL−94標準規格による所望のV0規準を達成する有効性に依存する。樹脂組成物を基準として0.1〜50重量%の化合物(A)の重量範囲を考慮すべきである。特に好適な組成物は、樹脂組成物を基準として、1重量%より多く、より好ましくは5重量%よりも多い量を含む。
【0023】
本発明の他の態様は、エポキシ、ベンゾオキサジン、シアネート、又はポリイミド樹脂、及び化合物(A)を含むポリマー樹脂組成物、特に熱硬化性ポリマー樹脂組成物である。好適な組成物は、ポリマー樹脂の混合物、特に熱硬化性ポリマー樹脂の混合物を含んでよい。
【0024】
特に有用な代表的なエポキシ樹脂は、ビスフェノールA及びビスフェノールFをベースとするエポキシ樹脂、エポキシクレゾールノボラック、エポキシフェノールノボラック、及び脂環式エポキシ樹脂である。特に有用なエポキシ樹脂は、例えば多官能性エポキシ樹脂を含む市販されているもの(Tactix 742、Tactix 556、及びTactix 756、PT 810、MY 720、及びMY 0500)である。
【0025】
特に有用な代表的なベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA及びビスフェノールFをベースとするベンゾオキサジン、チオジフェノールベンゾオキサジン、フェノールフタレインをベースとするか又はジシクロペンタジエン構造を有するベンゾオキサジン、並びにスルホンベンゾオキサジンである。好適なアルデヒド反応物質としては、気体状ホルムアルデヒド;パラホルムアルデヒド;ポリオキシメチレン;並びに、一般式:RCHO(式中、Rは望ましくは1〜12個の炭素原子を有する脂肪族である)を有するアルデヒドが挙げられる(かかるアルデヒドの混合物を含む)。好適なアミン反応物質は、少なくとも一つの第1級アミン基が必要である。フェノール化合物が1以上のアミン置換基を有することも可能である。
【0026】
特に有用な代表的なシアネート樹脂は、それぞれの分子上に少なくとも一つのシアネートエステル基を有するアリール化合物から選択することができ、概して、式:Ar(OCN)(式中、mは2〜5の整数であり、Arは芳香族基である)によって表すことができる。芳香族基Arは、少なくとも6個の炭素原子を有していなければならず、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどのような芳香族炭化水素から誘導することができる。芳香族基Arは、また、少なくとも二つの芳香環が結合基を介して互いに結合している多核芳香族炭化水素から誘導することもできる。また、ノボラックタイプのフェノール樹脂から誘導される芳香族基、即ちこれらのフェノール樹脂のシアネートエステルもまた包含される。また、芳香族基Arは、更に、環に結合した非反応性の置換基を有していてもよい。
【0027】
かかるシアネートエステルの例としては、例えば、1,3−ジシアナトベンゼン;1,4−ジシアナトベンゼン;1,3,5−トリシアナトベンゼン;1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−、又は2,7−ジシアナトナフタレン;1,3,6−トリシアナトナフタレン;ビス(4−シアナトフェニル)メタン及び3,3’,5,5’−テトラメチルビス(4−シアナトフェニル)メタン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4−シアナトフェニル)エーテル;ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン;トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト;トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート;ビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン;シアネート化ノボラック;1,3−ビス[4−シアナトフェニル−1−(メチリデン)]ベンゼン及びシアネート化ビスフェノール末端ポリカーボネート、或いは他の熱可塑性オリゴマーが挙げられる。
【0028】
他のシアネートエステルとしては、米国特許4,477,629及び4,528,366(それぞれの開示は参照として本明細書中に包含する)において開示されているシアネート;英国特許1,305,702において開示されているシアネートエステル及び国際特許公開WO85/02184において開示されているシアネートエステル(それぞれの開示は参照として本明細書中に包含する)が挙げられる。
【0029】
特に有用なシアネート樹脂は、例えばビスフェノールAベース、ビスフェノールEベースの物質をはじめとする市販されているものである。
特に有用な熱可塑性ポリイミドタイプの代表的なポリイミド樹脂は、一般式(1):
【0030】
【化2】

【0031】
(式中、aは、1より大きな、例えば約10〜約10,000又はそれ以上の範囲の整数であり;Vは、結合基が熱可塑性ポリイミドの合成又は使用を妨げない限りにおいて制限のない四価の結合基である)
のものである。
【0032】
好適な結合基としては、(a)約5〜約50個の炭素原子を有する、置換又は非置換で、飽和又は不飽和か又は芳香族の単環又は多環基;(b)1〜約30個の炭素原子を有する、置換又は非置換で、線状又は分岐鎖で、飽和又は不飽和のアルキル基;或いはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な置換基及び/又は結合基としては、エーテル、エポキシド、アミド、エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい結合基としては、例えば式(2):
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、C2y(yは1〜5の整数である)、及びそのハロゲン化誘導体、例えばペルフルオロアルキレン基、或いは式:−O−Z−O−(式中、−O−又は−O−Z−O−の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’、又は4,4’位であり、Zとしては、式(3):
【0035】
【化4】

【0036】
(式中、Qとしては、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、C2y(yは1〜5の整数である)、及びそのハロゲン化誘導体、例えばペルフルオロアルキレン基からなる群から選択される二価の基が挙げられるが、これらに限定されない)
の二価の基が挙げられるが、これらに限定されない)
からなる群から選択される二価の基である)
の四価芳香族基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
式(1)におけるRとしては、(a)約6〜約20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、及びそのハロゲン化誘導体;(b)約2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基;(c)約3〜約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;或いは、一般式(4):
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、Qは上記に定義した通りである)
の二価の基;のような置換又は非置換の二価の有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
特に有用なポリイミド樹脂は、ビスマレイミド樹脂、特に例えば4,4’−メチレン−ビス−(N−フェニルマレイミド)、並びに、4,4’−メチレン−ビス−(N−フェニルマレイミド)及びジアリルビスフェノールA(フェノールOHに対してオルト位にアリル基が存在する)の改良型などである。
【0041】
また、EP 356379及び米国特許5,200,452において記載されているようなアンモニウムポリホスフェート並びに無機及び有機リン化合物のような充填剤を含ませることができる。
【0042】
他の態様においては、本発明は、エポキシ、ベンゾオキサジン、シアネート、又はポリイミド樹脂、及び化合物(A)を含むポリマー樹脂組成物を硬化することによって得られる物品を提供する。
【0043】
他の態様においては、本発明は、ボロキシン誘導化合物、例えばトリプロパルギルボロキシン、かかる化合物の製造、並びにポリマー樹脂、特に熱硬化性ポリマー樹脂における難燃剤としての使用に関する。
【0044】
本組成物は、繊維強化材及びマトリクス樹脂から電子ラミネート及び他の複合体を製造するのに特に有用である。好適なプロセスの例は、通常、以下の工程を含む。
溶媒ベースの含侵プロセス
(1)ポリマー樹脂配合物を、ロール、射出、浸漬、噴霧、他の公知の方法、及び/又はこれらの組み合わせによって、基材に施すか又は基材中に含侵する。基材は、通常、例えばガラス繊維又は紙を含む織成又は不織繊維マットである。
【0045】
(2)含侵した基材を、ポリマー樹脂配合物中の溶媒を除去し、場合によってはポリマー樹脂配合物を部分的に硬化させるのに十分な温度に加熱することによって「Bステージ化」して、含侵基材を容易に取り扱うことができるようにする。「Bステージ化」工程は、通常、90℃〜210℃の温度で1分〜15分行う。「Bステージ化」から得られる含侵基材は、「プレプリグ」と呼ばれる。温度は、最も通常的には、複合体に関しては100℃、電子ラミネートに関しては130℃〜200℃である。
【0046】
(3)1以上のプレプリグのシートを、電子ラミネートが所望の場合には、銅箔のような導電性材料の1以上のシートと交互の層にして積層又はレイドアップする。
(4)積層されたシートを、高温及び高圧で、樹脂を硬化させてラミネートを形成し且つ空気及び溶媒を除去するのに十分な時間加圧する。このラミネート化工程の温度は、通常100℃〜250℃であり、最も多くは165℃〜200℃である。また、ラミネート化工程は、第1段階を100℃〜150℃で第2段階を165℃〜200℃のような、2以上の段階で行うこともできる。圧力は、通常、50N/cm〜500N/cmの間である。ラミネート化工程は、通常、1分〜200分、最も多くは45分〜90分の時間行う。ラミネート化工程は、場合によっては、より高い温度でより短い時間(例えば連続ラミネート化法の場合)、或いはより低い温度でより長い時間(例えば低エネルギー加圧法の場合)行うこともできる。
【0047】
(5)場合によっては、得られたラミネート、例えば銅クラッドラミネートを、高温及び雰囲気圧力で所定時間加熱することによって後処理することができる。後処理の温度は、通常、120℃〜250℃の間である。後処理時間は、通常、30分〜16時間の間である。
【実施例】
【0048】
全ての試験は、IPC TM 650にしたがって行った。
IPC試験法は、以下の電子ラミネート産業標準規格である(The Institute For Interconnection and Packaging Electronic Circuits,3451 Church Street,Evanston,Illinois 60203)。
【0049】
【表1】

【0050】
(A)トリプロパルギルボロキシン(化合物(I))の調製
3モルのプロパルギルアルコール及び1モルのトリメトキシボロキシンの混合物を、メタノールの蒸留が終了するまで、120〜150℃の温度に加熱した。
【0051】
沸点:85〜88℃(カラム圧10mmHgにおいて)。
(B)ラミネート
ガラス繊維ラミネート複合体を、溶媒含侵法によって製造した。成分を溶媒中に溶解し、次にガラスストランド、ガラス編の厚さ及び重量によって定義される工業規格のガラス繊維編成タイプの7628布帛(Porcher SA 7628:シラン又はポリイミド仕上げ)の上に被覆した。次に、溶媒を蒸発させ、組成物をBステージ化した。次に、銅を有するプレプリグを加熱及び加圧下で積層して、銅クラッドラミネート(表3)を製造した。オーブン中の加熱空気の温度は150〜180℃であり、Bステージ化を生起させる時間は2〜5秒の間であった。樹脂含量は35〜42%の範囲であった。次に、これらのラミネートをその熱特性及び燃焼特性に関して評価した。
【0052】
全ての特性は、IPC TMI 3949による8パイルの7628ガラス布帛ラミネートに基づく。ラミネートは、全てのパイルが同じ充填方向及び縦方向に配置されるように配向されたガラス繊維パイルを常に有していた。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環の三つのホウ素原子の少なくとも一つが、(1)ホウ素原子、及び(2)不飽和の非芳香族炭素−炭素結合を含む部分に結合したオキシ官能基を含む置換基を有する、ボロキシン環を有する化合物。
【請求項2】
アルキノキシ又はアルケノキシ置換基を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
次式:
【化1】

(トリプロパルギルボロキシン)
のトリプロパルギルボロキシンである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
アルコキシボロキシンの少なくとも一つのアルコキシ部分を、好ましくは加熱によって不飽和の脂肪族アルコール部分に置き換えることを含む、請求項1又は2に記載の化合物の製造方法。
【請求項5】
トリプロパルギルボロキシンを形成するために、トリアルコキシボロキシンの三つのアルコキシ部分を加熱によってプロパルギルアルコール部分に置き換える、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
トリアルコキシボロキシンとプロパルギルアルコールとを、約1〜3のモル比で、25重量%以下の過剰のプロパルギルアルコールを用いて反応させる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
トリアルコキシボロキシンが、トリ−C〜Cアルコキシボロキシン、好ましくはトリメトキシボロキシンである請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
難燃性物品、好ましくはポリマー樹脂をベースとする注型品又はラミネートの製造方法における、ホウ素原子の少なくとも一つがアルケノキシ又はアルキノキシ置換基を有するボロキシン環を有する化合物の使用。
【請求項9】
エポキシ、ベンゾオキサジン、シアネート又はポリイミド樹脂、及び、ホウ素原子の少なくとも一つがアルケノキシ又はアルキノキシ置換基を有するボロキシン環を有する化合物を含むポリマー樹脂組成物。
【請求項10】
ホウ素原子の少なくとも一つがアルケノキシ又はアルキノキシ置換基を有するボロキシン環を有する化合物0.1〜50重量%を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
1重量%より多い、ホウ素原子の少なくとも一つがアルケノキシ又はアルキノキシ置換基を有するボロキシン環を有する化合物を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
5重量%より多い、ホウ素原子の少なくとも一つがアルケノキシ又はアルキノキシ置換基を有するボロキシン環を有する化合物を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載のポリマー樹脂組成物を硬化することによって得られる物品。

【公表番号】特表2009−527457(P2009−527457A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556612(P2007−556612)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060237
【国際公開番号】WO2006/089937
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】