説明

難燃性と耐候性を向上させたセルロ−ス系組成物の製造方法。

【課題】木質及び植物質を原料とした環境にやさしく人体等に害を与えない難燃性と耐候性をそなえた、セルロ−ス系組成物の製造方法を提供することと、リサイクルできるセルロ−ス系組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】木質・植物質原料に水溶性難燃剤と耐候剤を木質・植物質原料に添加し、よく撹拌した後、混合溶融装置で成形するが、水溶性難燃剤はリン系難燃剤を使用するのが好ましく、また耐候剤はカルボジイミド基を含有する化合物を使用することが最も好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部加熱等を一切せず、木質・植物質の材料に難燃剤、及び耐候剤を添加、含浸させた木質系・植物質系材料から成形される難燃性、耐候性のある組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセルロ−ス系プラスチックの製造工程に於いて、一般には水溶性の添加剤を使用することが出来ず、成形にあたっては水分率を極力減少させた原材料が必要であったので乾燥工程にコストが掛っていた。又、特許文献1には、水蒸気に接触させた後に難燃剤を添加し加熱・加圧するとあるが、これもコスト高となる。又、特許文献2で、含水率に関係なくセルロ−ス系組成物を製造できる方法が発明されているが、難燃性や、耐候性を高く求めることはできない。
【特許文献1】特開2007−8000
【特許文献2】特開2006−263727
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の石油からなるプラスチックの代替として、セルロ−ス系組成物が求められるが、燃え易く劣化が早いという問題があり、建築素材、自動車部品、家電、及びOA器機に需要拡大を求めれば、これらの製品毎の定められた難燃性・耐候性の規格を満たすことが要求される。
【0004】
そこで、本発明は、木質及び植物質の原料に、特に環境にやさしく人体等に害を与えない難燃性と耐候性をそなえたセルロ−ス系組成物の製造方法を提供することと、リサイクル出来るセルロ−ス系組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
木質及び植物質原料に、水溶性の難燃剤、又は水溶性の耐候剤を添加し、撹拌後、数時間もしくは数日含浸させて、そのまま特許文献2で発明された混練機に投入する製造方法である。
【0006】
上記の難燃剤は、リン系、無機系、臭素系であり、例えばポリ燐酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の食品添加物が望ましく、木質・植物質原料に含浸させることを特徴とする。
【0007】
また、耐候剤とは、アクリル系、カルボジ系であり、水溶性又は、乳化・粒状状態で撹拌して添加することを特徴とする。
【0008】
木質・植物質原料に対して、上記難燃剤、耐候剤のいずれか又は両方を、それぞれ固形分1%乃至30%(セルロ−ス系組成物に対する重量%)を含有する成形体である。
【0009】
木質・植物質に難燃剤、耐候剤を添加、又は含浸させて、セルロ−ス系組成物を成形する混合溶融装置に投入する。又この装置(特許文献2)を利用し、成形体を作り出すものである。
【0010】
さらに生分解性セルロ−ス系の組成物を求める場合に、バインダ−として、生分解性樹脂を混合溶融装置に投入して、セルロ−ス系生分解組成物を作る。
【0011】
また、リサイクルのできるセルロ−ス系組成物を求める時は、バインダ−として、熱可塑性樹脂を混合溶融装置に投入してリサイクル出来るセルロ−ス系組成物ができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地球環境にやさしいセルロ−ス系組成物に於いて、製造工程を増加させることなく難燃性と耐候性を付加することが可能で、結果として建築材料、自動車部品、家電、OA器機の部品として使用することが可能となり、セルロ−ス系組成物の需要の拡大と工業的価値が大きくなる。耐候性が良くなることでリサイクル(加熱溶解によって再成形すること)が可能になり、さらに環境にやさしい材料を得ることができる。
【0013】
また、製造段階に於いて、従来に比べ加熱によるエネルギ−消費がないのでCO2の排出量が大きく減少される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、木質・植物質原料に難燃剤、耐候剤を充分に添加、含浸させることが重要である。例えば難燃剤に於いては付加可能な物質であれば特に限定はしないが、水溶性のリン系難燃剤は木質・植物質に対する浸透性が特に高いので、木質・植物質原料の細部まで均一に混和されるため特に適している。
【0015】
また、上記耐候剤に於いては、アクリル系、カルボジ系が適当であるが、カルボジイミド基を含有する水溶性又は乳化・粒状剤が、耐候性と耐熱性も向上されるため適当である。尚、セルロ−ス系組成物は生分解性であり用途により耐加水分解性が求められる成形体にもよい。しかも耐候性と耐加水分解性があるため、リサイクル可能となる。
【0016】
上記難燃剤、耐候剤は、その他の難燃性、耐候性を付加可能な物質であれば何でも良く、これらに限定されるものではない。さらに難燃性、耐候性の特性に適合するよう単独、又は複数個の難燃剤、耐候剤を混合使用してもよい。
【実施例】
【0017】
図1は本発明の配合順序の一例で、難燃剤、耐候剤が共に水溶液の場合は、木質・植物質材に添加、又は含浸し混合粉砕装置に投入し、剪断、摩擦及び圧縮による発熱により脱水されたところで、バインダ−の熱可塑性樹脂を投入し混合溶融工程で混練し、ペレットとして取り出すことでセルロ−ス系組成物ができる。
【0018】
図2は、難燃剤、耐候剤のどちらかが含水率0.02%以下であれば、バインダ−としての熱可塑性樹脂と共に混合溶融工程で投入すれば良い一例である。
【0019】
図3は難燃剤、耐候剤共に含水率0.02%以下であれば、バインダ−としての熱可塑性樹脂と共に混合溶融工程で投入する一例である。また、難燃剤において少量で有効なものとして有機金属鉗体、例えばアセチルアセナト鉄、酸化亜鉛などいずれか一つ以上の配合を用い、少量添加によって難燃性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】難燃剤、耐候剤が水溶液の場合である。
【図2】難燃剤、耐候剤のどちらかが、含水率0.02%以下の場合である。
【図3】難燃剤、耐候剤共に、含水率0.02%以下の場合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質または植物質からなる主原料を、内部で羽が回転している容器内に供給して粉砕し、摩擦と圧縮による発熱により含有水分を脱水させた後、熱可塑性樹脂を添加し混練するセルロ−ス系組成物の製造方法に於いて、主原料の木質または植物質に予め水溶性難燃剤を含浸させるか、又は初期の工程で前記主原料に水溶性難燃剤を添加することにより、前記原料を発熱させる工程で前記難燃剤に含まれる水分をも脱水させることを特徴とする難燃性を向上させたセルロ−ス系組成物の製造方法。
【請求項2】
木質または植物質からなる主原料を、内部で羽が回転している容器内に供給して粉砕し、摩擦と圧縮による発熱により含有水分を脱水させた後、熱可塑性樹脂を添加し混練するセルロ−ス系組成物の製造方法に於いて、主原料の木質または植物質に予め水溶性耐候剤を含浸させるか、又は初期の工程で前記主原料に水溶性耐候剤を添加することにより、前記原料を発熱させる工程で前記耐候剤に含まれる水分をも脱水させることを特徴とする耐候性を向上させたセルロ−ス系組成物の製造方法。
【請求項3】
木質又は植物質からなる主原料を、内部で羽が回転している容器内に供給して粉砕し、摩擦と圧縮による発熱により含有水分を脱水させた後、熱可塑性樹脂と含水率0.02%以下の難燃剤を添加し混練することを特徴とする難燃性を向上させたセルロ−ス系組成物の製造方法。
【請求項4】
木質または植物質からなる主原料を、内部で羽が回転している容器内に供給して粉砕し、摩擦と圧縮による発熱により含有水分を脱水させた後、熱可塑性樹脂と含水率0.02%以下の耐候剤を添加し混練することを特徴とする耐候性を向上させたセルロ−ス系組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項3に記載した難燃性を向上したセルロ−ス系組成物に於いて、難燃剤の固形分の含有率が1%乃至30%(いずれも重量比)であることを特徴とするセルロ−ス系組成物。
【請求項6】
請求項2又は請求項4に記載した耐候性を向上したセルロ−ス系組成物に於いて、耐候剤の固形分の含有率が1%乃至30%(いずれも重量比)であることを特徴とするセルロ−ス系組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4に記載した製造方法のうち少なくとも2つを組み合わせて、難燃性と耐候性の両方を向上させたことを特徴とするセルロ−ス系組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−291119(P2008−291119A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138475(P2007−138475)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(502121247)西田殖産株式会社 (5)
【出願人】(307015415)株式会社日本地域産業 (1)
【出願人】(307015873)株式会社 グロー ケミカル (4)
【Fターム(参考)】