説明

難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物

【課題】非常に剛性が高く、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、成形性に優れた樹脂組成物である。特に、電気・電子分野の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料、家電製品の部品などに好適に用いられる難燃性強化ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリアミド樹脂20〜60質量%、(B)無機充填材40〜70質量%、(C)ハロゲン元素を含まない難燃剤5〜20質量%からなり、その難燃剤が特定のホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩であり、0.2≦(C)/(A)≦0.4である樹脂組成物であって、(A)、(B)、(C)を配合してなる樹脂組成物を100質量部としたとき、(D) シリコーンオイル0.05〜2質量部含み、0.001≦(D)/(A)≦0.1であることを特徴とする難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に剛性が高く、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、成形性に優れた樹脂組成物である。特に、電気・電子分野の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料、家電製品の部品などに好適に用いられる難燃性強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的物性や耐熱性などに優れているため、電気・電子、自動車、機械、建材など多岐にわたり利用されている。最近では金属代替による樹脂化が進み、樹脂に金属同等の強度、剛性が求められている。特に、コネクターなどの電装部品やノートパソコンなどの家電製品に対しては、高度な難燃性が要求される。樹脂を難燃化する場合は、一般にハロゲン系難燃剤やトリアジン系難燃剤を添加する方法や樹脂にMg蒸着する方法が取られている。しかし、ハロゲン系難燃剤は燃焼時発生する腐食性のハロゲン性ガスや有害物質など、環境や人体に対する悪影響があるとされ、ハロゲン系難燃剤の使用を規制する動きがあり、Mg蒸着もコストが高く好ましくない。
【0003】
このことから、ハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤が注目され数多く検討がなされている。例えば、難燃剤としてメラミンを使用する技術(特許文献1)、シアヌル酸を使用する技術(特許文献2)、シアヌル酸メラミンを使用する技術(特許文献3)がよく知られている。これらの技術では、強化材を配合しない系では1/32インチの厚みでUL94 V-0規格に適合する難燃性を達成できるが、ガラス繊維等で強化した場合は、難燃剤を多量に配合したとしても、綿着火を起こし、UL94 V-0規格に適合しない問題がある。
【0004】
一方、イントメッセント型難燃剤であるリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、あるいは、ポリリン酸メラミンをガラス繊維強化ポリアミド樹脂に使用する難燃技術(特許文献9)が提案されているが、1/32インチの厚みでUL94 V-0規格を満足するためには、やはりこれらのリン酸メラミン系難燃剤を多く配合する必要があるため、靭性をはじめとして機械的特性や耐トラッキング性などの電気特性が低下する場合があり、実用上満足なものとは言えなかった。
【0005】
さらには、ホスフィン酸塩と(メラミンとリン酸の反応物)を組み合わせた技術(例えば、特許文献5)、また、ホスフィン酸塩と(メラミンとリン酸の反応物)、金属化合物を組み合わせた技術(例えば、特許文献6、特許文献7)が提案され、1/16inchの成形品において難燃規格UL94V-0規格を満足することが知られている。この技術では、二種以上の難燃剤による相乗効果のために、難燃剤を減量することが可能になり、機械特性(特に曲げ撓み等の靭性)、電気特性(耐トラッキング性)の改良ができる。しかし、無機充填材を40%以上含有すると押出時の操業性が大きく低下する。さらには、成形時の流動性や離型性等の改良には燃焼性の良い脂肪酸金属塩を含有しており、難燃性に不安が残り満足なものとは言えなかった。
【特許文献1】特公昭47−1714号公報
【特許文献2】特開昭50−105744号公報
【特許文献3】特開昭53−31759号公報
【特許文献4】特表平10−505875号公報
【特許文献5】特開2004−263188号公報
【特許文献6】特願2005−209678号公報
【特許文献6】特願2005−209679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非常に剛性が高く、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、成形性に優れた難燃性強化ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、ポリアミド樹脂と無機充填材を組み合わせた系において、ホスフィン酸塩とシリコーンオイルを特定の割合で配合することで、上記目的を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0009】
(1)(A)ポリアミド樹脂20〜60質量%、(B)無機充填材40〜70質量%、(C)ハロゲン元素を含まない難燃剤5〜20質量%からなり、その難燃剤が式(I)で表されるホスフィン酸塩および/または式(II)で表されるジホスフィン酸塩であり、0.2≦(C)/(A)≦0.4である樹脂組成物であって、(A)、(B)、(C)を配合してなる樹脂組成物を100質量部としたとき、(D)シリコーンオイル0.05〜2質量部含み、0.001≦(D)/(A)≦0.1であることを特徴とする難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

(式中、R1、R4およびR2、R5はそれぞれ直鎖あるいは分岐鎖のC1〜C16アルキル、好ましくはC1〜C8アルキル、特にメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、フェニルであり、R1とR2およびR4とR5は互いに環を形成してもよい。R3は直鎖あるいは分岐鎖のC1〜C10アルキレン、特にメチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、n-オクチレン、n-ドデシレン;アリーレン、特にフェニレン、ナフチレン、アルキルアリーレン、特にメチルフェニレン、エチルフェニレン、tert-ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert-ブチルナフチレン;アリールアルキレン、特にフェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、フェニルブチレンであり、Mはカルシウムまたはアルミニウムイオンであり、mは2または3であり、nは1または3であり、xは1または2である。式(II)ではmx=2nである。)
【0012】
(2) 無機充填材が、長径/短径の比が1.5〜10である偏平断面を有する偏平ガラス繊維であることを特徴とする(1)の難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【0013】
(3) シリコーンオイルが、比重(25℃)1.03〜1.06、動粘度(25℃)100〜300mm/sである、メチルフェニルシリコーンオイルであることを特徴とする(1)または(2)の難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【0014】
(4) 難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる厚み1/32inchの成形品が、安全規格UL94に準じた燃焼性試験によりV-0であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかの難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非常に剛性が高く、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン性ガス等の発生がなく、成形性に優れた樹脂組成物を提供することができ、電気・電子分野の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料、家電製品の部品などに好適に用いることができるため、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0017】
本発明における(A)ポリアミド樹脂の樹脂としては、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸(それらの一対の塩も含まれる)を主たる原料とするアミド結合を主鎖内に有する重合体である。ポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)およびこれらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。中でもナイロン6、ナイロン66、およびその混合物が特に好ましい。
【0018】
(A) ポリアミド樹脂の配合量は20〜60質量%である必要がある。20質量%未満であると、成形加工性、機械的物性が低下し、60質量%を超えると剛性が劣るため好ましくない。また、相対粘度(96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定)は1.7〜2.7の範囲であり、1.9〜2.6の範囲であることがさらに好ましい。相対粘度が1.7未満であると、機械的特性が低下する場合があり、また、2.7を超える場合は溶融混錬時にガスや分解物が発生しやすく難燃性が達成できない場合があるため好ましくない。
【0019】
本発明における(B)無機充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、玄武岩繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられる。これらの強化材は二種以上組み合わせて用いてもよい。特に、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、焼成カオリン、マイカが好ましく使用され、中でもガラス繊維がさらに好ましい。
【0020】
また、ガラス繊維は、長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して用いることができる。ガラス繊維はポリアミド用に表面処理したものを用いるのが好ましい。さらに、ガラス繊維の断面は、円形、偏平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品など限定されるものではないが、ガラス繊維配合ポリアミドに特有の反りを低減させるには、偏平状の繊維が長径/短径の比が1.5〜10のものが使用され、2.0〜6.0のものがさらに好ましい。長径/短径比が1.5以下では断面を偏平状にした効果が少なく、10以上のものはガラス繊維自体の製造が困難である。
【0021】
(B)無機充填材の配合量は40〜70質量%であり、好ましくは40〜60質量%である。40質量%未満であると強度、剛性、耐熱性が満足されず、70質量%を超えると溶融混錬加工性や成形加工性が悪くなるため好ましくない。
【0022】
本発明におけるホスフィン酸塩とは、ホスフィン酸およびジホスフィン酸並びにそれらの重合体の塩を意味する。ホスフィン酸塩とはホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水溶液中で製造され、本質的にモノマーとして存在するが、反応条件に依存して、縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩の形として存在する場合もある。本発明において、好ましいホスフィン酸塩の形態としては、ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩であり、樹脂との混練において分散性の観点から、ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩、それらの混合物であることが特に好ましい。
【0023】
ホスフィン酸塩の構成成分として適したホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。また、金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、および/または、亜鉛イオンを含む金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物が挙げられる。
【0024】
ホスフィン酸塩としてはジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0025】
また、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。特に難燃性、電気特性の観点からジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
【0026】
(C)ハロゲン元素を含まない難燃剤の配合量は5〜20質量%であり、(A)ポリアミドとの比率は0.2≦(C)/(A)≦0.4である必要があり、好ましくは0.25≦(C)/(A)≦0.35である。0.2>(C)/(A)であると、難燃性を達成できず、(C)/(A)>0.4であると、押出時の操業性の低下、機械的強度の低下や金型汚染が起こるため好ましくない。
【0027】
本発明で用いられる(D)シリコーンオイルとは、シロキサン結合を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物である。ケイ素に直接結合した有機基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基およびそれらの併用などが知られているが、これらを有する公知のシリコーンオイルを特に制限なく使用できる。また有機基の一部がエポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、エステル基、クロロアルキル基、炭素数3個以上のアルキル基、ヒドロキシル基などを有する置換基で置換されたシリコーンオイルも使用可能である。
【0028】
本発明のシリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーン オイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーン オイル、メルカプト変性シリコーンオイルなどのオイル状シリコーン類が挙げられる。
【0029】
中でも、メチルフェニルシリコーンオイルは、フェニル基の導入によりジメチルシリコーンオイルの耐熱性が改善されたものであり、動粘度の上昇を適度に抑制しつつ樹脂や難燃剤との混練に用いることができ、好適に用いることができる。更には、比重(25℃)1.03〜1.06、動粘度(25℃)100〜300mm/sである、メチルフェニルシリコーンオイルを用いることがもっとも好ましい。比重が1.03未満の場合には、樹脂組成物を成形品としたときのシリコーンオイルのブリードアウトの懸念があり、比重が1.06を超える場合は、樹脂や難燃剤との混練においてシリコーンオイルの分散性が不十分になる。また、動粘度が100mm/s未満の場合にはシリコーンオイル骨格へのフェニル基の導入が不十分であり耐熱性が劣り、動粘度が300mm/sを超える場合にはフェニル基の導入は十分なものの樹脂や難燃剤との混練においてシリコーンオイルの分散性が不十分になる。
【0030】
本発明の(D) シリコーンオイルは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、(A)ポリアミド樹脂、(B)無機充填材、(C)ハロゲン元素を含まない難燃剤を配合してなる樹脂組成物100質量部に対して0.05〜2.0質量部であり、好ましくは0.1〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部である。配合量が0.05重量部未満では、充分な離型性の改善効果が得られない。また、2.0重量部を超えると、モールドデポジット(MD)量が増えて金型のメンテナンスの回数が増えるため、樹脂組成物の成形加工性が劣る他、ガス発生量が増えて外観が悪化し、更に塗膜密着性も低下する。また、(A)ポリアミド樹脂、(D) シリコーンオイルの配合につき、0.001≦(D)/(A)≦0.1であることを必要とする。0.001>(D)/(A)であると、離型性が不十分であり、(D)/(A)>0.1であると、ブリードアウトが生じやすい。
【0031】
シリコーンオイルは主に流動性、離型性改善に効果がある。流動性、離型性改善するには、一般的に脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、エチレンビスアミド化合物、脂肪族アミドを添加するが、燃焼性が増すため、難燃効果が発現しない。そのため、本発明に係る難燃性強化ポリアミド樹脂組成物には、シリコーンオイルを用いる必要がある。
【0032】
さらにシリコーンオイルは難燃効果も発現するため、(C)ハロゲン元素を含まない難燃剤と(D)シリコーンオイルを併用することによって、高い難燃性と良好な成形性を両立することができ、難燃剤の添加量を少なくすることもできるため、難燃剤を多量に配合することにより起こりやすい押出時の操業性の低下、機械的強度の低下や金型汚染を防止することができる。
【0033】
本発明の難燃性強化ポリアミド樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば顔料、染料等の着色剤や、熱安定剤、耐候性改良剤、核剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤、他の樹脂ポリマー等を添加することが出来る。
【0034】
本発明の難燃ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定はないが、2軸押出機を用いて200〜350℃の温度で溶融混錬することが好ましく、難燃性と機械的特性を両立させるためには、無機質充填材以外の原料を十分に溶融混合した後に、無機質充填材を添加し、減圧脱気することが好ましい。
【0035】
最適な製造方法は、(1)ポリアミド樹脂ペレットにシリコーンオイルをブレンドし、(2)
次に難燃剤をブレンドして押出機に供給することである。難燃剤をブレンドする前にポリアミド樹脂ペレット表面にシリコーンオイルを付着させておくことで、樹脂ペレット表面に粘着性を付与し、粉体である難燃剤をペレットに添着しやすくし、溶融時に樹脂とのなじみを良くするばかりか、樹脂に対して均一に分散させることができる。そのため、シリコーンオイルの粘性は高い方が好ましい。ブレンド順を変えると、難燃剤が凝集しやすく、またシリコーンオイルの分散性も悪くなるため好ましくなく、溶融混練時の操業性が悪くなり、成形時の離型性が低下することがある。また、十分な難燃性を発現させることも出来ない。
【0036】
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形など公知の方法によって、たとえば、コネクター、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチ等の電気、電子、自動車用途の各種成形品等に成形される。
【実施例】
【0037】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例ならびに比較例での使用材料および評価方法は次の通りである。
(1) 使用材料
(A)ポリアミド樹脂
(A)-1:ポリアミド66 ローディア社製 24AD1
(A)-2:ポリアミド6 ユニチカ社製 1015
(B)無機充填材
(B)-1:ガラス繊維 旭ファイバーグラス社製 CS03JAFT692(平均繊維径10μm)
(B)-2:ガラス繊維 日東紡社製 CSG3PA820S(長短径の比が4の長円形型断面を有する偏平ガラス繊維)
(B)-3:ウァラストナイト Nyco社製Nyglos8
(C)難燃剤
(C)-1:フォスフィン酸塩 ジエチルホスフィン酸アルミニウム(DEPALと略す)
(C)-2:ポリリン酸メラミン チバ・スペシャリティーケミカル社製 Melapur200/70(PMPと略す)
(C)-3:シアヌル酸メラミン チバ・スペシャリティーケミカル社製 MC25(MCと略す)
(D)シリコーンオイル
(D)-1:メチルフェニルシリコーンオイル GE東芝シリコーン社製 TSF4300 (比重1.05、動粘度140mm/s)
(D)-2:ジメチルシリコーンオイル GE東芝シリコーン社製 TSF400 (比重0.951、動粘度3.0mm/s)
(D)-3:ポリエーテル変性シリコーンオイル GE東芝シリコーン社製 TSF4446 (比重1.02、動粘度1400mm/s)
(2) 評価方法
a)溶融混練時の操業性
実施例、比較例を2軸押出機(東芝機械製TEM37)を用いてシリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量35kg/hの条件下で10kg生産した時、ストランドの状況を目視にて確認した。操業時にストランドがまったく切れずストランドの形状が安定しているものを◎、ストランドがまったく切れないが、ストランド形状がバラバラで安定していないものを○、1度でも切れたものを×とし、ストランドがまったく切れないもの(◎、○)を操業性が良好と判断し、合格とした。
b)曲げ強度および曲げ弾性率
ファナック製射出成形機(α-100iA)にて、樹脂温度280℃、金型温度100℃で試験片を成形し、ASTM D790に準じて測定した。曲げ強度200MPa以上、曲げ弾性率12GPa以上を合格とした。
c)難燃性
ファナック製射出成形機(α-100iA)にて、樹脂温度280℃、金型温度100℃で試験片を成形し、UL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。なお試験片の厚みは1/32インチ(約0.8mm)とした。V-0であることが望ましい。
d)成形性
ファナック製射出成形機(α-100iA)にて、樹脂温度280℃、金型温度100℃にて、サイクル25秒で、浅いコップ形状(肉厚1.5mm、外径40mm、深さ30mm)を用いて成形品を30ショット連続成形したときの成形状況と成形品の突き出しピンの痕の有無を目視観察した。問題なく成形でき、成形品に突き出しピン痕が認められないものを◎、問題なく成形できるが、若干突き出しピン痕が認められるものを○、金型が開く際に金型の固定側に成形品が残ってしまい連続成形に支障が出る場合や、問題なく成形できても突き出しピンの痕が大きく認められるものを×とした。◎、○を合格とした。
【0038】
実施例1
ポリアミド樹脂(A)-1が45質量%、無機充填材(B)-1が55質量%を100質量部としたとき、難燃剤(C)-1が13質量部、シリコーンオイル(D)-1が0.8質量部になるように2軸押出機(東芝機械製TEM37)を用いてシリンダー設定温度280℃、スクリュー回転200rpm、吐出量35kg/hの条件下で、溶融混練し、ストランド状に取り出し、冷却後カッターで造粒し、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。その際、(1) ポリアミド樹脂とシリコーンオイルをブレンドし、(2) 次に難燃剤をブレンドしたものを基部より投入し、ガラス繊維をサイドフィードより押出機に供給した。得られたペレットを前記した測定方法にて諸特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

実施例2〜10
各成分の配合割合を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。ただし、実施例4は、ポリアミド樹脂と難燃剤をブレンド後、シリコーンオイルをブレンドし、基部より供給した以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを用いて実施例と同様に成形し、諸特性を評価した。その結果を表1に示す。
比較例1〜6
各成分の配合割合を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを用いて実施例と同様に成形し、諸特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例1〜10は本発明の要件を満足するため、機械特性、難燃性に優れた樹脂組成物が得られた。
【0042】
しかし、比較例1〜2は本発明に基づいた難燃剤以外を併用したため操業性が悪く、比較例3では無機充填材が少ないため曲げ弾性率が低く、比較例4はシリコーンオイルが含有されていないため、離型性に劣るものとなり、比較例5は無機充填剤が多いために溶融混練ができず、ペレットが得られず諸物性が測定できず、比較例6はシリコーンオイル量が多いためにモールドデポジットが増え、成形に支障が発生し、実用上問題が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂20〜60質量%、(B)無機充填材40〜70質量%、(C)ハロゲン元素を含まない難燃剤5〜20質量%からなり、その難燃剤が式(I)で表されるホスフィン酸塩および/または式(II)で表されるジホスフィン酸塩であり、0.2≦(C)/(A)≦0.4である樹脂組成物であって、(A)、(B)、(C)を配合してなる樹脂組成物を100質量部としたとき、(D)シリコーンオイル0.05〜2質量部含み、0.001≦(D)/(A)≦0.1であることを特徴とする難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(式中、R1、R4およびR2、R5はそれぞれ直鎖あるいは分岐鎖のC1〜C16アルキル、好ましくはC1〜C8アルキル、特にメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、フェニルであり、R1とR2およびR4とR5は互いに環を形成してもよい。R3は直鎖あるいは分岐鎖のC1〜C10アルキレン、特にメチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、n-オクチレン、n-ドデシレン;アリーレン、特にフェニレン、ナフチレン、アルキルアリーレン、特にメチルフェニレン、エチルフェニレン、tert-ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert-ブチルナフチレン;アリールアルキレン、特にフェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、フェニルブチレンであり、Mはカルシウムまたはアルミニウムイオンであり、mは2または3であり、nは1または3であり、xは1または2である。式(II)ではmx=2nである。)
【請求項2】
無機充填材が、長径/短径の比が1.5〜10である偏平断面を有する偏平ガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
シリコーンオイルが、比重(25℃)1.03〜1.06、動粘度(25℃)100〜300mm/sである、メチルフェニルシリコーンオイルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる厚み1/32inchの成形品が、安全規格UL94に準じた燃焼性試験によりV-0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
























【公開番号】特開2009−120701(P2009−120701A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295562(P2007−295562)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】