説明

難燃性グリース組成物

【課題】本発明の目的は、堆積した潤滑グリース組成物に高温のスケールが飛散した場合にも着火しない難燃性に優れたグリース組成物を提供することである。
【解決手段】水とポリアルキレングリコールと吸水性ポリマーとを含む難燃性グリース組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れたグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄設備においては、潤滑グリース組成物が設備の下に垂れ落ちて堆積し、そこに高温のスケールが飛散した場合に着火し、それに起因する火災が問題視されている。
特許文献1には、自己消火性グリース組成物として、グリース組成物の液体成分の引火点が270℃以上であるグリース組成物が開示されている。特許文献1に記載の自己消火性グリース組成物は、着火した後燃焼が止まる時間までの時間が5分以下であるが、着火自体を防ぐことは出来ない。
特許文献2には、基油と増ちょう剤からなるグリースに水を配合することにより、難燃性グリース組成物が開示されている。しかしながら、基油及び増ちょう剤と水との馴染みがわるいために、製造時の作業性が悪く、水が分離するという問題がある。
特許文献3には、水とアルキレングリコールと二酸化珪素からなる潤滑剤が開示されている。しかしながら、二酸化珪素は粉体であるため、配管内でプラッキングが発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−67847号公報
【特許文献2】特開2010−18648号公報
【特許文献3】特開平5−132690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、堆積した潤滑グリース組成物に高温のスケールが飛散した場合にも着火しない難燃性に優れたグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水とポリアルキレングリコールと吸水性ポリマーとを含む難燃性グリース組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、難燃性と潤滑性を満足するグリース組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の難燃性グリース組成物は水とポリアルキレングリコールと吸水性ポリマーからなる。
本発明の難燃性グリース組成物において、水は、その冷却効果によって、火種及びその周囲の温度を下げて燃焼の継続を断ち切るという効果を有している。このような効果を充分に発揮するには、組成物中に30質量%以上の水を含有することが必要である。水の含有量は、好ましくは30〜50質量%であり、より好ましくは35〜40質量%である。
【0008】
水は、その粘度が低いため、潤滑剤基油としては適さないものである。そのため、水に高粘度の油を混ぜて高粘度化する必要がある。水に高粘度の油を混ぜて高粘度化した潤滑剤基油の好ましい動粘度は、40℃で50〜200mm2/sである。本発明の難燃性グリース組成物は、水に混合する高粘度の油として、水と均一に混合できるポリアルキレングリコールを含有する。ポリアルキレングリコールとしては、水と均一に混合できるものであれば本発明において使用できるが、好ましくはポリアルキレングリコールにおけるアルキレン基が、炭素数が2〜6個、好ましくは2〜3個の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であるポリアルキレングリコールが挙げられる。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド‐プロピレンオキシド(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体)、ポリ(メチル−エチレン)グリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられる。また、2種以上の異なるアルキレンオキシドを用いて得られるポリアルキレングリコールのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体及びその混合物のいずれも使用できる。これらのポリアルキレングリコールは単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用してもよい。中でも、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体が好ましい。前記共重合体は、エチレンオキシドの比率が高いほど、親水性が高くなる。前記共重合体における好ましいエチレンオキシドの比率は、35質量%以上であり、より好ましくは60〜100質量%であり、さらに好ましくは70〜80質量%である。本発明の難燃性グリース組成物において使用できるポリアルキレングリコールの具体例としては、例えばユニルーブ75DE−60(日油株式会社製)、ニューポール50HB−660(三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。本発明の難燃性グリース組成物におけるポリアルキレングリコールの含有量は、好ましくは50〜70質量%であり、より好ましくは55〜60質量%である。
【0009】
本発明の難燃性グリース組成物は水を含むため、通常のグリースにおいて増ちょう剤として使用されているリチウム石けんやジウレア化合物は、水との馴染み性が悪く、使用できない。本発明の難燃性グリース組成物においては、水を使用した基油を半固体状に固めるための増ちょう剤として吸水性ポリマーを使用する。吸水性ポリマーとしては、例えばイソブチレン−マレイン酸共重合体及び架橋イソブチレン-無水マレイン酸共重合体などのマレイン酸系吸水性ポリマー、ポリビニルアルコール架橋重合体及びポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体などのポリビニルアルコール系吸水性ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体及びアクリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体などのアクリル系吸水性ポリマー、エステル縮合系吸水性ポリマー、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物及び澱粉−アクリル酸グラフト重合体などの澱粉系吸水性ポリマー、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体及びセルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体などのセルロース系吸水性ポリマー、多糖類系吸水性ポリマー及びコラーゲンなどのタンパク質系吸水性ポリマー、ビニルピロリドン系吸水性ポリマー、ポリエチレングリコール・ジアクリレート架橋重合体などのポリエーテル系吸水性ポリマー、アミド縮合系吸水性ポリマーなどが挙げられる。好ましくは、吸水性ポリマーは架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体である。本発明の難燃性グリース組成物において使用できる吸水性ポリマーの具体例としては、例えばKIゲル−201K(株式会社クラレ製)、アクアリックTL300(株式会社日本触媒製)、VEMA A−103(ダイセル化学工業株式会社製)などが挙げられる。本発明の難燃性グリース組成物における吸水性ポリマーの含有量は、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
本発明の難燃性グリース組成物には、上記成分に加えて、極圧添加剤、酸化防止剤、錆止め剤、摩擦緩和剤、防食剤、固体潤滑剤などの通常グリース組成物に使用される添加剤を含有させることができる。
本発明の難燃性グリース組成物は、好ましくは軟膏缶燃焼試験において950℃で不燃性である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
【実施例】
【0010】
(実施例1及び比較例1〜5)
水、ポリアルキレングリコール及び吸水性ポリマーを下記表1に記載のとおり配合してグリース組成物を調製した。下記に示す方法により、グリース組成物の特性を評価した。結果を表1に示す。
(混和ちょう度)
JIS K 2220 7に従って測定した。
(基油の動粘度)
JIS K 2220 23に従って測定した。
(軟膏缶燃焼試験)
グリース組成物20gを内径65mm、深さ13mmの筒型の金属容器(軟膏缶)に入れ、これに950℃に加熱した直径19.05mmの鋼球を接触させ、着火の有無を調べた。
【0011】
【表1】

ポリアルキレングリコール:日油株式会社製 ユニルーブ75DE−60(エチレンオキシドの比率は75質量%)
吸水性ポリマー:株式会社クラレ製 KIゲル−201K
市販の自己消火性グリース:協同油脂株式会社製 FRグリースL No.0
【0012】
比較例1及び4の結果から、水の配合量が30質量%未満の場合には、グリース組成物は着火して難燃性を示さない。比較例2及び3の結果から、水の配合量が50質量%超の場合には、基油の粘度が低く潤滑剤としては適さない。比較例5の市販の品自己消火性グリースは、着火が認められたが、1分後には消火した。以上の結果から、水の配合量が30〜50質量%であるグリース組成物は、難燃性と潤滑性を満足することが出来ることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とポリアルキレングリコールと吸水性ポリマーとを含む難燃性グリース組成物。
【請求項2】
水の含有量が30〜50質量%の範囲にある、請求項1記載の難燃性グリース組成物。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールがエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体である、請求項1又は2記載の難燃性グリース組成物。
【請求項4】
ポリアルキレングリコールが35質量%以上のエチレンオキシドを含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃性グリース組成物。
【請求項5】
吸水性ポリマーが架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性グリース組成物。
【請求項6】
軟膏缶燃焼試験において950℃で不燃性である請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性グリース組成物。

【公開番号】特開2012−180406(P2012−180406A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42750(P2011−42750)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】