説明

難燃性フレキシブルフラットケーブル

【課題】フラットケーブルを構成する絶縁フィルムの熱融着性接着層の組成配合の自由度があり、ハロゲンフリー化され、且つ十分な難燃性を持った難燃性フラットケーブルを提供する。
【解決手段】片面に熱融着性接着層を有し、両端末の導体を所定長露出させて接続端末部(端末導体露出部)を設ける長さ分のみ片方のフィルム長さを短くした2枚の絶縁フィルム(1a,1b)を、接着層面を互いに内側にし、この間に複数本の平角導体(2)を所定間隔に並列配置して加熱融着したフラットケーブル体(A)の両絶縁フィルム面を、熱融着難燃フィルム(3)で覆いUL94耐燃性試験基準に適合する難燃性フラットケーブル(5)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブルに関し、更に詳しくはハロゲンフリー化され、且つ難燃性を有するフレキシブルフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブル(以下、フラットケーブルともいう)は配線材の省スペース性と簡便な接続により、プリンター、スキャナー等の電子機器類のプリント基板、内部配線材、或は自動車の内部配線材として多用されている。また液晶TV、プラズマTVなどの映像機器においてはフラットケーブルにシールド材を被覆した高速伝送ケーブルとして広く用いられている。従来のフラットケーブルは、2枚の絶縁フィルム間に複数本の導体を該導体の両端部を露出させて平行に配列させた構造をしており、このフラットケーブルと挿入型コネクターを組み合わせた配線方式が普及している。従来のフラットケーブルの一例について、図2を用いて説明する。
片面に熱融着性接着層(図示せず)を有する2枚の絶縁フィルム(1、1)を、接着層面を互いに内側にして、この間に複数本の平角導体(2)を所定間隔(ピッチ)(p)に並列配列し、両端部の導体(2)を所定長露出させて、接続端末部(端末導体露出部)(t)を設けて加熱融着させ、好ましくは該接続端末部(t)に補強テープ(h)を貼り付けフラットケーブル(5’)としている。この従来のフラットケーブルについては下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2001−43743
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のフラットケーブルは上記した様に各種の分野に多用されている。また一方では多くの分野でハロゲンフリー化が進んでおり、近年はフラットケーブルにおいても同様の要望が高まっている。またフラットケーブルの難燃化の要望も高まっている。
従来の難燃性フラットケーブルでは、例えばフラットケーブルを構成する絶縁フィルムの熱融着性接着層に、塩素系化合物或は臭素系化合物等(以下、ハロゲン化合物等と略記する)の難燃剤を添加することにより難燃性を持たせている。近年においては、非ハロゲン系難燃剤等による難燃化の検討が行われているが、非ハロゲン系難燃剤等では難燃性付与効果が低く、この非ハロゲン系難燃剤等で十分な難燃性を持たせるためには多量の添加が必要であった。そのため熱融着性接着層の組成配合は限られたものになってしまうため、難燃化以外の特性の制御には制限が大きいという問題点があった。
本発明は、上記従来技術が有する各種問題点を解決するためになされたものであり、フラットケーブルを構成する絶縁フィルムの熱融着性接着層の組成配合の自由度があり、ハロゲンフリー化され、且つ十分な難燃性を持った難燃性フラットケーブルを提供することを目的とする。なお、電線、ケーブルの難燃性に関する規格としては、例えばUL94 VW−1耐燃性試験基準がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点として本発明は、片面に熱融着性接着層を有し、両端末の導体を所定長露出させて接続端末部(端末導体露出部)を設ける長さ分のみ片方のフィルム長さを短くした2枚の絶縁フィルムを、接着層面を互いに内側にし、この間に複数本の平角導体を所定間隔に並列配置して加熱融着したフレキシブルフラットケーブル体の両絶縁フィルム面を、片面に熱融着性接着層を有する難燃性基材フィルム(以下、熱融着難燃フィルムと略記する)、若しくは片面に熱融着性接着層を有する金属箔フィルム(以下、熱融着金属箔フィルムと略記する)、若しくは片面に熱融着性接着層を有し金属箔と樹脂フィルムが一体化してなる金属箔樹脂フィルム(以下、熱融着金属箔樹脂フィルムと略記する)で覆ったことを要因として難燃性が付与された難燃性フレキシブルフラットケーブルであって、前記難燃性フレキシブルフラットケーブルの構成材料の全てがハロゲンフリー化しており、また該フラットケーブルはUL94 VW−1耐燃性試験基準(以下、UL94耐燃性試験基準と略記する)に適合している難燃性フレキシブルフラットケーブルにある。
上記第1観点の難燃性フラットケーブルでは、該フラットケーブルの構成材料の全てがハロゲンフリー化しており、また従来の一般的なフラットケーブルと同一構造であるフラットケーブル体の両絶縁フィルム面を、熱融着難燃フィルム、若しくは熱融着金属箔フィルム等で覆うことによりUL94耐燃性試験基準に適合する難燃性フラットケーブルとなる。
【0005】
第2の観点として本発明は、前記難燃性基材フィルムがポリイミドフィルム、難燃性ポリエステルフィルムまたはポリフェニレンサルファイドフィルムであることを特徴とする難燃性フラットケーブルにある。
上記第2観点の難燃性フラットケーブルでは、前記難燃性基材フィルムとしてポリイミドフィルム、難燃性ポリエステルフィルム等を好ましく用いることができる。
前記ポリイミドフィルムとしては、例えば宇部興産社製 ユーピレックス(登録商標)25Sが挙げられる。また前記難燃性ポリエステルフィルムとしては、例えば東レ社製 ルミラー(登録商標)ZV10 #25が挙げられる。また前記ポリフェニレンサルファイドフィルムとしては、例えば東レ社製 トレリナ(登録商標) 25μmが挙げられる。しかしながら難燃性の基材フィルム材料であれば、その材質、構造構成によって制限されない。
【0006】
第3の観点として本発明は、前記熱融着金属箔フィルム、若しくは熱融着金属箔樹脂フィルムの金属箔がアルミ箔または銅箔であることを特徴とする難燃性フラットケーブルにある。
上記第3観点の難燃性フラットケーブルでは、前記熱融着金属箔フィルム等の金属箔にアルミ箔または銅箔を好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の難燃性フラットケーブルは、前記フラットケーブル体の両絶縁フィルム面を熱融着難燃フィルム、若しくは熱融着金属箔フィルム等で覆うことにより難燃性を持たせているため、内包されるフラットケーブル体を構成する絶縁フィルムの熱融着性接着剤層に難燃性を求めていない。従って熱融着性接着剤層への難燃化のための化合物添加が不必要となり、フラットケーブルを構成する絶縁フィルムの熱融着性接着剤層は、接着力等の求める特性を得るための最適な組成配合を自由に選択することができるようになった。また、熱融着性接着剤層にハロゲン化合物等の難燃剤を使用する必要がなくなったために、容易にハロゲンフリー化することができ、且つUL94耐燃性試験基準に適合する難燃性フラットケーブルを得ることが出来るようになった。
従って、本発明は産業に寄与する効果が極めて大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の難燃性フラットケーブルの一例を示す斜視図である。
この図1において、1a,1bは絶縁フィルム、2は平角導体、3は熱融着難燃フィルム、若しくは熱融着金属箔フィルム、若しくは熱融着金属箔樹脂フィルム、5は難燃性フラットケーブル、Aはフラットケーブル体、またtは接続端末部(端末導体露出部)である。
【実施例1】
【0009】
本発明のフラットケーブルの第一実施形態(実施例1)について図1を用いて説明する。
先ず、片面にハロゲンフリー熱融着性接着層(図示せず)を有する厚さ0.100mm×幅10mmの2枚の絶縁フィルム(上方のフィルム(1a)が全長110mm、下方のフィルム(1b)が全長120mm)を、接着層面を互いに内側にして、この間に平角導体(2)として、厚さ0.035mm×幅0.3mmの錫めっき平角銅線を用い、この平角銅線(2)の19本(図では3本のみ示す)をピッチ0.5mmで並列配列し、両端部の導体(2)を各5mm長露出させて接続端末部(t)を設け、150℃の熱ロールによって加熱融着させてフラットケーブル体(A)とした。
次に、熱融着難燃フィルム(3)として、片面に0.020mm厚さのハロゲンフリー熱融着性接着層(図示せず)を有する厚さ0.025mm×幅10mm×長さ100mmの熱融着難燃ポリエステルフィルムを用い、この難燃ポリエステルフィルムを前記フラットケーブル体(A)の両絶縁フィルム(1a,1b)面に、140℃の熱ロールによって加熱融着して難燃性フラットケーブル(5)を製造した。
なお、前記難燃ポリエステルフィルムは厚さ0.025mmのものを用いたが、薄くなると難燃性が落ちるので厚さ0.020mm以上が好ましい。また厚くなるとコストアップとなるうえに得られたフラットケーブルが硬くなるので厚さ0.050mm以下が好ましい。また前記難燃ポリエステルフィルムの替わりに、熱融着ポリイミドフィルム或は熱融着ポリフェニレンサルファイドフィルムを使用しても良い。
【実施例2】
【0010】
本発明のフラットケーブルの第二実施形態(実施例2)について図1を用いて説明する。
フラットケーブル体として、上記実施例1と同様のフラットケーブル体(A)を用いた。
次に、熱融着金属箔樹脂フィルム(3)として、片面に0.020mm厚さのハロゲンフリー熱融着性接着層(図示せず)を有する厚さ0.025mm×幅10mm×長さ100mmのアルミ−ポリエステルラミネートフィルム(以下、熱融着Al−PETと略記する)を用い、この熱融着Al−PETを前記フラットケーブル体(A)の両絶縁フィルム(1a,1b)面に、140℃の熱ロールによって加熱融着して難燃性フラットケーブル(5)を製造した。
なお、前記熱融着Al−PETの替わりに、熱融着アルミ箔フィルム或は熱融着銅箔フィルムを使用しても良い。
【0011】
(比較例1)
上記実施例1の中間製品であるフラットケーブル体(A)を比較例1のフラットケーブルとした。
【0012】
―燃焼試験―
上記実施例1、2および比較例1により得られたフラットケーブルについて、UL94 VW−1(垂直状態の保持した試験品)耐燃性試験基準に従い燃焼試験を行った。その結果、実施例1、2のフラットケーブルは試験基準をクリアしたが、比較例1のフラットケーブルは、いずれも燃え尽きてしまい、試験は不合格であった。
UL94 VW−1耐燃性試験の試験基準の概略について説明する。
・垂直状態に保持した試験品に対して15秒間の標準試験炎の接炎を5回行ったとき、何れの時点においても以下が生じてはならない。(a)試験品全体への炎の伝播、(b)近隣の可燃物に対する炎の伝播
・5回接炎の何れかの時点で試験品に取り付けたインジケータフラッグに25%を超える燃え尽き又は炭化(布又は指で取り去ることのできるすすの発生及び茶色の焦げは炭化と見なさない)が生じた場合には、当該電線、ケーブル又はコードは試験品全体に炎が伝播するものと見なす。何れかの時点で試験品の有炎小片、赤熱小片若しくは有炎滴下物によりバーナー、ウエッジ又は試験面の上に敷いた脱脂綿が着火した場合(炎の発生に至らない脱脂綿の焦げは着火とは見なさない)及びガス炎の接炎休止時間中又は接炎終了後試験品が60秒を越えて有炎燃焼を継続する場合には、当該電線、ケーブル又はコードは近隣の可燃物に炎が伝播するものと見なす。(不合格)
また実施例1、2の難燃性フラットケーブルの一般特性について試験したところ、全て良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の難燃性フラットケーブルは、ハロゲンフリー化され、且つUL94耐燃性試験基準に適合する難燃性フラットケーブルであるので、電子機器類のプリント基板、内部配線材、或は自動車の内部配線材として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の難燃性フラットケーブルの一例を示す斜視図である。
【図2】従来のフラットケーブルの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
1a,1b 絶縁フィルム
2 平角導体
3 熱融着難燃フィルム、若しくは熱融着金属箔フィルム、若しくは熱融着金属箔樹脂フィルム
5 難燃性フラットケーブル
A フラットケーブル体
t 接続端末部(端末導体露出部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に熱融着性接着層を有し、両端末の導体を所定長露出させて接続端末部(端末導体露出部)を設ける長さ分のみ片方のフィルム長さを短くした2枚の絶縁フィルムを、接着層面を互いに内側にし、この間に複数本の平角導体を所定間隔に並列配置して加熱融着したフレキシブルフラットケーブル体の両絶縁フィルム面を、片面に熱融着性接着層を有する難燃性基材フィルム、若しくは片面に熱融着性接着層を有する金属箔フィルム、若しくは片面に熱融着性接着層を有し金属箔と樹脂フィルムが一体化してなる金属箔樹脂フィルムで覆ったことを要因として難燃性が付与された難燃性フレキシブルフラットケーブルであって、
前記難燃性フレキシブルフラットケーブルの構成材料の全てがハロゲンフリー化しており、また該フラットケーブルはUL94 VW−1耐燃性試験基準に適合していることを特徴とする難燃性フレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記難燃性基材フィルムがポリイミドフィルム、難燃性ポリエステルフィルムまたはポリフェニレンサルファイドフィルムであることを特徴とする請求項1記載の難燃性フレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
前記金属箔フィルム、若しくは金属箔樹脂フィルムの金属箔がアルミ箔または銅箔であることを特徴とする請求項1記載の難燃性フレキシブルフラットケーブル。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−26678(P2009−26678A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190583(P2007−190583)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】