説明

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および光反射部材

【課題】ハロゲンや燐を含有する難燃剤を使用せずに、高度の光反射性と難燃性を有し、良好な外観と光線反射率、遮光性、熱伝導性(放熱性)、機械特性(剛性)、寸法安定性を有する成形品が得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び光反射部材を提供する。
【解決手段】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)白色顔料及び(c)アルカリ中和処理及びシランカップリング表面処理されたタルクを含有し、(a)〜(c)成分合計量100質量部における(a)成分:(b)成分:(c)成分の質量比が、91〜40:4〜40:4〜20であることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び該ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板及びその周辺部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物および光反射部材に関する。さらに詳しくは、優れた耐熱性、難燃性を有し、成形品の光線反射率、遮光性、放熱性、機械特性(剛性)、寸法安定性、成形性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及び該組成物を成形してなる光線反射板及びその周辺部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年液晶ディスプレー(LCD)の用途は、ノートパソコン、モニター、テレビへと拡大しており、特に、最近では液晶テレビにおいて、大型化、軽量化、薄型化の開発競争が著しい。それと共に高画質化が進み、LCDの照明装置であるバックライトも、より大型化、薄型化、軽量化のみならず、光源についてもLED化が進み、さらに機械特性(剛性)、寸法安定性、放熱性に対する要求、即ち、耐熱寸法安定性への要求が高まっている。
【0003】
優れた機械的性質を有しているポリカーボネート樹脂は、酸化チタン等の白色顔料を配合することにより、反射性能、遮光性能を高めて、広くこれら分野で使用されている。
一方、これら機器に使用される樹脂材料には、難燃性が必要であり、多数の難燃処方が開発されているが、特に成形用金型の腐食や環境への負荷を低減させる目的から、ハロゲン系、リン系難燃剤を含まないことが求められている。
また、大型化、薄型化、軽量化の開発動向に応えるために、光線反射性、遮光性、機械特性(剛性)、寸法安定性、放熱性(熱伝導性)などの要求を同時に満たすことがポリカーボネート樹脂に求められている。
【0004】
高度の光反射性と難燃性を有し、良好な外観と寸法精度を有する成形品が得られるポリカーボネート樹脂組成物及び該難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板及びその周辺部材に関する樹脂材料として、例えば、特許文献1には、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100 重量部に対し、(b)酸化チタン3〜30重量部、(c)シリコーン系化合物0.1〜10重量部、(d)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜1重量部、(e)板状無機充填剤0.5〜15重量部を含有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、(c)成分に、シリカを基材としたシリコーン系化合物を用いているので、ハロゲン系化合物を含有することなく難燃性については、確保可能であるが、(e)板状無機充填剤に用いられているタルクは、アルカリ性を呈するためにポリカーボネート系樹脂は加水分解するため、分子量劣化に伴う機械特性の低下をもたらし、タルクを高濃度に配合できないという問題がある。
【0006】
このため、特許文献1においては、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100 重量部に対し、(b)酸化チタンが3〜30重量部、(e)板状無機充填剤が0.5〜15重量部に限定されることになり、光線反射率、遮光性、放熱性、機械特性(剛性)及び寸法安定性が十分満足できるものではない。
【特許文献1】特開2005−15659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下でなされたもので、ハロゲンや燐を含有する難燃剤を使用せずに、高度の光反射性と難燃性を有し、良好な外観と光線反射率、遮光性、熱伝導性(放熱性)、機械特性(剛性)、寸法安定性を有する成形品が得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び該ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板及びその周辺部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定の処理を行ったタルクを用い、白色顔料として酸化チタンを用いて、特定比率で含有させたポリカーボネート樹脂組成物が、上記の目的に沿うものであることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の芳香族リカーボネート樹脂組成物および光線反射部材を提供するものである。
1.(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)白色顔料及び(c)アルカリ中和処理及びシランカップリング表面処理されたタルクを含有し、(a)〜(c)成分合計量100質量部における(a)成分:(b)成分:(c)成分の質量比が、91〜40:4〜40:4〜20であることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
2.(a)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、高流動ポリカーボネート共重合体及び/又はポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含有する上記1の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
3.(a)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体を含有する上記2の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
4.(c)成分のタルクのシランカップリング表面処理が、アミノ変性シラン、カルボキシ変性シラン、アクリル変性シラン、エポキシ変性シランより選ばれた少なくとも1種のシランカップリング表面処理である上記1又は2の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
5.(a)〜(c)成分100質量部に対して、(d)オルガノポリシロキサン0.1〜3質量部及び(e)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体0.1〜5質量部を含有する上記1〜4のいずれかの難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
6.(d)オルガノポリシロキサンが、アルキル水素シリコーン又はアルコキシシリコーンである、上記5の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
7.アルコキシシリコーンが、シリコーン主鎖に対してメチレン基を介してアルコキシ基と結合する分子構造を有するオルガノポリシロキサンである上記6の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
8.(e)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90質量部の存在下に、(Y)多官能性単量体(y−1)100〜50質量%及びその他の共重合可能な単量体(y−2)0〜50質量%からなるビニル系単量体0.5〜10質量部を重合し、さらに(Z)その他のビニル系単量体5〜50質量部を重合して得られたものである〔但し、(X)、(Y)及び(Z)の合計量が100質量部とする〕上記5の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
9.上記1〜8のいずれかの難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られる光反射部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、独自の酸化チタンの安定化技術に基く特定のタルクを用いることにより、従来のタルクによるポリカーボネート系樹脂の加水分解劣化が抑制されるので、タルク及び酸化チタンの高濃度の配合が可能となる。
その結果、ポリカーボネート樹脂組成物において、ハロゲン系難燃剤、金属塩系の難燃促進剤を含有させることなく、難燃性を確保し、さらには、高いレベルの光線反射率、遮光性、熱伝導性(放熱性)、機械特性(剛性)、寸法安定性を発現することができるので、高い光線反射性能と剛性を要求する構造部品や、発熱の大きいLEDを光源とする反射基材、反射部材などの耐熱寸法安定性を要求する分野で広く使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[(a)芳香族ポリカーボネート樹脂]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物における(a)芳香族ポリカーボネート樹脂は、高流動ポリカーボネート共重合体(a−1:高流動共重合PCとも云う)、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−2:ポリオルガノシロキサン共重合PCとも云う)および一般の芳香族ポリカーボネート樹脂(a−3:一般PCとも云う)のポリカーボネート系樹脂を任意の組合せで混合することで、成形品の形状、成形方法に合わせて任意の成形流動性、機械物性、耐熱性に調整することができる。
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物における(a)芳香族ポリカーボネート樹脂として、高流動共重合PC(a−1)及び/又はポリオルガノシロキサン共重合PC(a−2)を含有させることにより、(b)成分のタルク配合による機械特性(耐衝撃性)の低下の影響を少なくするので、好適に利用できる。
中でも、ポリオルガノシロキサン共重合PC(a−2)としてポリジメチルシロキサン共重合ポリカーボネート樹脂(PC-PDMSとも云う)が、(b)成分のタルク配合による機械特性(耐衝撃性)の低下を改善するのに好適に利用できる。
【0012】
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂に用いられる高流動共重合PC(a−1)は、フェノール変性ジオール共重合ポリカーボネートであり、界面重合法と呼ばれる慣用の製造方法により製造することができる。すなわち、二価フェノール、フェノール変性ジオール及びホスゲン等のカーボネート前駆体を反応させる方法により製造することができる。具体的には、例えば、塩化メチレン等の不活性溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、さらに必要により触媒や分岐剤を添加し、二価フェノール、フェノール変性ジオール及びホスゲン等のカーボネート前駆体を反応させる。
【0013】
高流動共重合PC(a−1)は、下記一般式(I)及び(II)
【化1】

で表される繰り返し単位を有する。
一般式(I)中、R1、R2、a、b及びXについては、下記一般式(Ia)と併せて説明する。また、一般式(II)中、R3、R4、c、d、n及びYについては、後述する一般式(IIa)と併せて説明する。
【0014】
高流動共重合PCの製造に用いる二価フェノールとしては、下記一般式(Ia)
【化2】

で表される化合物を挙げることができる。
【0015】
一般式(Ia)において、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。a及びbは、それぞれR1及びR2の置換数を示し、0〜4の整数である。なお、R1が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよく、R2が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0016】
Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチリレン基、ヘキシレン基等)、炭素数2〜8のアルキリデン基(例えば、エチリデン基、イソプロピリデン基等)、炭素数5〜15のシクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等)、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基(例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等)、−S−、−SO−、−SO2−、−O−、−CO−結合又は下記式(III)もしくは下記式(IV)
【化3】

で表される基を示す。
【0017】
上記一般式(Ia)で表される二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称:ビスフェノールA]が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4'−ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4'−ジヒロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のジヒドロキシジアリールフルオレン類、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等のジヒドロキシジアリールアダマンタン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
分子量調節剤としては通常、ポリカーボネート樹脂の重合に用いられるものであれば、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−ヘキシルフェノール、m−n−ヘキシルフェノール、p−n−ヘキシルフェノール、p−t−オクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−n−ノニルフェノール、m−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノール等が挙げられる。これらの一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール等が好ましく用いられる。
【0019】
触媒としては、相間移動触媒、例えば、三級アミン又はその塩、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等を好ましく用いることができる。三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられる。また、三級アミン塩としては、例えば、これらの三級アミンの塩酸塩、臭素酸塩等が挙げられる。四級アンモニウム塩としては、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等が、四級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド等が挙げられる。これらの触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記触媒の中では、三級アミンが好ましく、特にトリエチルアミンが好適である。
【0020】
不活性有機溶剤としては、各種のものがある。例えば、ジクロロメタン(塩化メチレン);トリクロロメタン;四塩化炭素;1,1−ジクロロエタン;1,2−ジクロロエタン;1,1,1−トリクロロエタン;1,1,2−トリクロロエタン;1,1,1,2−テトラクロロエタン;1,1,2,2−テトラクロロエタン;ペンタクロロエタン;クロロベンゼン等の塩素化炭化水素や、トルエン、アセトフェノン等が挙げられる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、特に塩化メチレンが好適である。
【0021】
分岐剤として、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α',α'−ビス(4"−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール;フロログリシン、トリメリト酸、イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物;フロログリシン、トリメリト酸、イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることもできる。
【0022】
高流動共重合PCの製造に用いるフェノール変性ジオールは、下記一般式(IIa)
【化4】

で表されるフェノール変性ジオールである。
【0023】
一般式(IIa)において、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示し、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。R3が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよく、R4が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよい。Yは、炭素数2〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基及びイソペンチレン基等のアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基及びイソペンチリデン基等のアルキリデン基が挙げられる。c及びdは0〜4の整数であり、nは2〜200の整数である。nは、好ましくは6〜70である。
【0024】
上記一般式(IIa)で表されるフェノール変性ジオールは、例えば、ヒドロキシ安息香酸又はそのアルキルエステル、酸塩化物とポリエーテルジオールから誘導される化合物である。このフェノール変性ジオールは、特開昭62−79222号公報、特開昭60−79072号公報、特開2002−173465号公報等で提案されている方法により合成がすることができるが、これらの方法により得られるフェノール変性ジオールに対し適宜精製を加えることが望ましい。精製方法としては、例えば、反応後段で系内を減圧にし、過剰の原料(例えば、パラヒドロキシ安息香酸)を留去する方法、フェノール変性ジオールを水又はアルカリ水溶液(例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液)等で洗浄する方法等が望ましい。
【0025】
ヒドロキシ安息香酸アルキルエステルとしては、ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、ヒドロキシ安息香酸エチルエステル等が代表例である。ポリエーテルジオールは、HO−(Y−O)n−H(Y及びnは前記と同じである。)で表され、炭素数2〜15の直鎖状又は分岐状のオキシアルキレン基からなる繰返し単位を有するものである。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。入手性及び疎水性の観点からポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。ポリエーテルジオールのオキシアルキレン基の繰返し数nは2〜200、好ましくは6〜70である。nが2以上であると、フェノール変性ジオールを共重合する際の効率が高く、nが200以下であると、(a−1)ポリカーボネート共重合体の耐熱性の低下が小さいという利点がある。
【0026】
酸塩化物としては、ヒドロキシ安息香酸とホスゲンから得られるものが代表例である。より具体的には、特許2652707号公報等に記載の方法により得ることができる。ヒドロキシ安息香酸又はそのアルキルエステルはパラ体、メタ体、オルト体のいずれでも良いが、共重合反応の面からはパラ体が好ましい。オルト体は水酸基に対する立体障害のため共重合の反応性に劣るおそれがある。
【0027】
高流動共重合PCの製造工程において、フェノール変性ジオールは、その変質等を防ぐため、可能な限り塩化メチレン溶液として用いるのが好ましい。塩化メチレン溶液として用いることができない場合、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液として用いることができる。
高流動共重合PCの製造工程において、フェノール変性ジオールの共重合量を増やせば流動性は改善されるが耐熱性が低下する。従って、フェノール変性ジオールの共重合量は所望の流動性と耐熱性のバランスにより選択することが好ましい。フェノール変性ジオール共重合量が多すぎると、特開昭62−79222号公報に示されているように、エラストマー状となり、一般のポリカーボネート樹脂と同様の用途への適用ができなくなるおそれがある。100℃以上の耐熱性を保持するには、高流動共重合PC(a−1)ポリカーボネート共重合体中に含まれるフェノール変性ジオール残基の量は、1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。
【0028】
高流動共重合PCは、粘度数が30〜71[Mv(粘度平均分子量)=10,000〜28,100に相当]であり、好ましくは34〜62(Mv=12,000〜24,100に相当)である。粘度数が30以上であると機械物性が良好であり、粘度数が71以下であると、フェノール変性ジオール(コモノマー)の共重合効果が良好に発揮される。
また、高流動性を発現させようとすると多量のコモノマーが必要となるが、粘度数が71以下であると、コモノマーの使用量に対して耐熱性が大きく低下することがない。なお、粘度数は、ISO 1628−4(1999)に準拠して測定した値である。
【0029】
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂に用いられるポリオルガノシロキサン共重合PC(a−2)としては、様々なものがあるが、好ましくは、下記一般式(V)
【化5】

[式中、R5及びR6は、それぞれハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素、沃素)又は炭素数1〜8のアルキル基であり、e及びfは、それぞれ0〜4の整数である。R5が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよく、R6が複数ある場合、互いに同一でも異なっていてもよい。そして、Zは、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基又は−SO2−、−SO−、−S−、−O−、−CO−結合、単結合もしくは下記一般式(VI)
【0030】
【化6】

で表される基を示す。]
で表される構造を有する繰り返し単位を有するポリカーボネート部と、下記一般式(VII)
【0031】
【化7】

[式中、R7、R8及びR9は、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、g及びhは、それぞれ0又は1以上の整数である。]
で表わされる繰返し単位を有するポリオルガノシロキサン部とからなるものである。
このポリオルガノシロキサン部の重合度は、5〜1000が好ましく、より好ましくは20〜300であるものが、難燃性、成形品の外観の点から好ましい。ポリオルガノシロキサン共重合PCは、上記一般式(V)で表わされる繰返し単位を有するポリカーボネート部と、上記一般式(VII)で表わされる繰返し単位を有するポリオルガノシロキサン部とからなるブロック共重合体であって、粘度平均分子量10,000〜50,000、好ましくは15,000〜35,000のものである。また、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のn−ヘキサン可溶分が1.0質量%以下であることが好ましい。
このポリオルガノシロキサン共重合PCは、難燃性の観点からポリオルガノシロキサン部の含有量は好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0032】
このポリオルガノシロキサン共重合PCは、例えば、予め製造されたポリカーボネート部を構成するポリカーボネートオリゴマー(PCオリゴマー)と、ポリオルガノシロキサン部を構成する、末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサン[例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジエチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサンあるいはポリメチルフェニルシロキサン等]とを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールの水酸化ナトリウム水溶液を加え、触媒としてトリエチルアミンやトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等を用い、界面反応することにより製造することができる。また、特公昭44−30108号公報や特公昭45−20510号公報に記載された方法によって製造されたポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いることもできる。
【0033】
ポリオルガノシロキサン共重合PCとして用いられる一般式(V)で表わされる繰返し単位を有するポリカーボネートオリゴマーは、溶剤法、すなわち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調節剤の存在下、一般式(VIII)
【0034】
【化8】

[式中、R5、R6、Z、e及びfは、前記と同じである。]
で表わされる二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。上記一般式(VIII)で表わされる二価フェノールとしては様々なものがあるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔所謂ビスフェノールA〕が好ましい。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の二価フェノールで置換したものであってもよい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ハイドロキノン;4,4’−ジヒドロキシジフェニル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンのような化合物又はビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類等を挙げることができる。
【0035】
ポリオルガノシロキサン共重合PCの製造に供されるポリカーボネートオリゴマーは、これらの二価フェノール1種を用いたホモポリマーであってもよく、また2種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。なお、n−ヘキサン可溶分が1.0質量%以下のポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を製造するには、例えば、共重合体中のポリオルガノシロキサン含有率を10質量%以下にするとともに、上記一般式(VII)で表わされる繰返し単位の数が5以上のものを用い、かつ第3級アミン等の触媒を5.3×10-3モル/(kg・オリゴマー)以上用いて上記共重合を行うことが好ましい。
【0036】
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂に用いられる一般PC(a−3)は、慣用された製造方法、すなわち、通常、二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物等のポリカーボネート前駆体とを反応させることにより製造したものを挙げることができる。具体的には、例えば、塩化メチレン等の溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、さらに必要により分岐剤を添加し、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造されたものである。
【0037】
一般PCの製造に用いられる二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、前述のポリカーボネート共重合体で例示したものが使用できる。
【0038】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。分子量調節剤としては通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものなら、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール等、前述のポリカーボネート共重合体で例示したものが用いられる。一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール等が好ましく用いられる。
【0039】
その他、分岐剤として、前述のポリカーボネート共重合体同様、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α',α'−ビス(4"−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;フロログリシン、トリメリト酸、イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることもできる。
【0040】
本発明において用いられる一般PCは、通常、粘度平均分子量が10,000〜100,000のものが好ましく、より好ましくは13,000〜40,000である。一般PCとしては、前述で説明したもの、あるいは市販品を用いることができる。
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂に含有される高流動PC(a−1)、ポリオルガノシロキサン共重合PC(a−2)及び一般PC(a−3)の混合割合(a−1):(a−2):(a−3)は、質量比で好ましくは1〜100:99〜0:99〜0であり、より好ましくは10〜90:90〜10:80〜0、更に好ましくは20〜60:80〜10:70〜10である。
【0041】
[(b)白色顔料]
(b)白色顔料には、様々なものを用いることができる。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、硫化亜鉛、鉛白等が挙げられる。これらの中では、着色力が優れている酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、ルチル型及びアナターゼ型のいずれであってもよいが、熱安定性,耐候性に優れるルチル型を用いるのが好ましい。酸化チタンは、各種表面処理剤で処理し、その表面を被覆すると効果的である。その処理剤としては、水和アルミ、シリカ、亜鉛等が通常用いられる。その他、酸化チタンの樹脂中での分散性を向上させるために、シリコーンオイルやポリオール等を用いることもできる。
【0042】
[(c)タルク]
本発明において無機充填剤として、アルカリ中和処理及びシランカップリング表面処理されたタルクを使用する。
前述したように、通常のタルクはアルカリ性であり、ポリカーボネート系樹脂を加水分解させる。このため、ポリカーボネート系樹脂の分子量劣化に伴う機械特性の低下をもたらす。本発明では、タルクを事前に酸によりアルカリ中和処理を施したものを適用することで、この問題が解決される。また、この中和処理による分子量劣化の抑制により、本発明において(b)白色顔料と(c)タルクの無機粒子を高濃度に配合できる。
また、本発明に用いられるタルクは、アルカリ中和処理後にシランカップリング表面処理を施したものを使用する。このシランカップリング表面処理により、樹脂界面との密着強度の向上による機械特性の向上、微量に残留するアルカリ金属イオンの溶出分の抑制に有効である。
シランカップリング表面処理に用いられるカップリング剤としては、アミノ変性シラン、カルボキシ変性シラン、アクリル変性シラン、エポキシ変性シランなどが挙げられ、何れも好適に利用できる。
【0043】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、(a)〜(c)成分合計量100質量部における(a)成分:(b):(c)成分の質量比は、91〜40:4〜40:4〜20であり、好ましくは80〜50:10〜30:10〜20である。
(a)成分の質量比を91以下とすることにより、酸化チタンやタルクの含有量が確保され、十分な光線反射率、遮光性、熱伝導性(放熱性)、機械特性(剛性)、寸法安定性を発現することができ、また、40以上とすることにより、十分な成形流動性を確保することができる。
(b)成分の質量比を4以上とすることにより、光線反射率、遮光性が向上し、40以下とすることにより、溶融混練時での配合の困難や、機械特性(耐衝撃性)の低下が小さくなる。
(c)成分の質量比を4以上とすることにより、機械特性(剛性)や寸法安定性が向上し、40以下とすることにより、機械特性(耐衝撃性)の低下が小さくなる。
【0044】
[(d)オルガノポリシロキサン]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、(d)オルガノポリシロキサンを配合することができる。
(d)オルガノポリシロキサンとしては、アルキル水素シリコーン及びアルコキシシリコーンが好適に用いられ、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSH1107、SR2402、BY16−160、BY16−161、BY16−160E、BY16−161Eを挙げることができる。
(d)オルガノポリシロキサンとして、アルコキシシリコーンが、シリコーン主鎖に対してメチレン基を介してアルコキシ基と結合する分子構造を有するオルガノポリシロキサンであるもの(BY16−161)が、特に好適に用いられる。
(d)成分の含有量は、(a)〜(c)成分の合計量100質量部に対して、0.01〜3質量部配合することが好ましく、更に好ましくは0.05〜3質量部、より好ましく0.1〜2質量部、特には好ましくは0.4〜2質量部である。
(d)オルガノポリシロキサンを0.01質量部以上配合することにより、(a)ポリカーボネート樹脂が劣化して分子量が低下するのを抑制することができ、3質量部以下とすることにより、成形体表面にシルバーが発生して製品外観を低下させるおそれがない。
【0045】
[(e)難燃剤]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、(e)難燃剤を配合することができる。(e)成分には特に制限はなく、リン系、金属塩系、シリコーン系等の難燃剤を使用することができるが、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が好適に使用される。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の好ましい具体例としては、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90質量部の存在下に、(Y)多官能性単量体(y−1)100〜50質量%及びその他の共重合可能な単量体(y−2)0〜50質量%からなるビニル系単量体0.5〜10質量部を重合し、さらに(Z)その他のビニル系単量体5〜50質量部を重合して得られたものが挙げられる。〔但し、(X)、(Y)及び(Z)の合計量が100質量部とする〕
【0046】
(X)ポリオルガノシロキサン粒子は、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められる数平均粒子径が、好ましくは0.008〜0.6μm、さらに好ましくは0.01〜0.2μm、特に好ましくは0.01〜0.15μmである。該数平均粒子径が0.008μm未満のものをうることは困難な傾向にあり、0.6μmを超える場合には、難燃性が悪くなる傾向にある。
また、(X)ポリオルガノシロキサン粒子のトルエン不溶分量(該粒子0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量)が95%以下、さらには50%以下、特には20%以下であるものが難燃性、耐衝撃性の点から好ましい。
【0047】
多官能性単量体(y−1)は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む化合物であり、具体例として、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性および効果の点で、メタクリル酸アリルの使用が好ましい。
【0048】
その他の共重合可能な単量体(y−2)の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
(Z)その他のビニル系単量体は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を得るために使用される成分であり、さらに該グラフト共重合体を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合して難燃性及び耐衝撃性を改良する場合に、グラフト共重合体と芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性を確保して芳香族ポリカーボネート樹脂にグラフト共重合体を均一に分散させるために使用される成分でもある。
このため、(Z)その他のビニル系単量体としては、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが、好ましくは9.15〜10.15[(cal/cm31/2]であり、より好ましくは9.17〜10.10[(cal/cm31/2]、特に好ましくは9.20〜10.05[(cal/cm31/2]である。溶解度パラメーターが前記範囲にあると難燃性が向上する。かかる溶解度パラメーターの詳細については、特開2003−238639号公報に記載されている。
【0050】
(e)成分の平均粒子径は、電子顕微鏡観察から求めた値で0.1〜1μmで分散可能であることが好ましい。この平均粒子径が1μmより大きいと、十分な難燃性、剛性及び衝撃強度が得られず、0.1μmより小さいと、衝撃強度の向上が不十分となる。
(e)成分の配合量は、(a)〜(c)成分の合計量100質量部に対して、通常0.1〜5質量部程度、好ましくは0.2〜4質量部、より好ましくは0.4〜3質量部である。0.1質量部以上とすることにより、難燃性や衝撃強度が得られ、5質量部以下とすることにより難燃性や剛性が低下しない。
但し、(e)成分は、難燃性レベルの要求に応じて無配合とすることが可能である。(e)成分が無配合であっても、(c)タルクの配合量が10質量部程度を超えると、試験片の厚みにもよるが、UL規格に定められた難燃性を確保することができる。
【0051】
[その他]
また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、リン系安定剤、ポリテトラフルオロエチレン及び各種添加剤を配合することができる。
リン系安定剤は、製造時または成形加工時の熱安定性を向上させ、機械的特性、色相および成形安定性を向上させる。かかるリン系安定剤としては、リン酸系化合物及び/又は芳香族ホスフィン化合物が挙げられる。
【0052】
リン酸系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキシレニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4'−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、下記の化合物1〜10等が挙げられる。
【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
【化13】

【0058】
【化14】

【0059】
【化15】

【0060】
【化16】

【0061】
【化17】

【0062】
【化18】

【0063】
これらの中で、上記化合物1、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製、商品名:PEP−36)及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカル社製、商品名:Irg168)が好ましい。
【0064】
芳香族ホスフィン化合物としては、例えば、下記一般式(IX)
P−(W)3 (IX)
[式中、Wは、炭化水素基であり、少なくともその1つは置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。]
で表わされるアリールホスフィン化合物が挙げられる。
【0065】
上記一般式(IX)のアリールホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルオクタデシルホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィン、トリス−(p−ノニルフェニル)ホスフィン、トリス−(ナフチル)ホスフィン、ジフェニル−(ヒドロキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(アセトキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(β−エチルカルボキシエチル)−ホスフィン、トリス−(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリス−(p−フルオロフェニル)ホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、ジフェニル−β−シアノエチルホスフィン、ジフェニル−(p−ヒドロキシフェニル)−ホスフィン、ジフェニル−1,4−ジヒドロキシフェニル−2−ホスフィン、フェニルナフチルベンジルホスフィン等が挙げられる。中でも、特にトリフェニルホスフィンを好適に用いることができる。
リン系安定剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明で用いられるリン系安定剤の配合量は、(a)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常、0.001〜1質量部、好ましくは0.005〜0.5質量部、より好ましくは0.01〜0.1質量部である。リン系安定剤の配合量が上記範囲内であると、成形時の熱安定性が向上する。
【0067】
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に配合されるポリテトラフルオロエチレンは、フィブリル形成能を有するものであれば特に制限はない。ここで、フィブリル形成能とは、せん断力等の外的作用により、樹脂同士が結合して繊維状になる傾向を示すことをいう。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、本発明の樹脂組成物に溶融滴下防止効果を付与し、優れた難燃性を発現させる。具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)等を挙げることができる。これらの中では、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ということがある)が好ましい。
【0068】
フィブリル形成能を有するPTFEは、極めて高い分子量を有し、標準比重から求められる数平均分子量で、通常50万以上、好ましくは50万〜1500万、より好ましく100万〜1000万である。かかるPTFEは、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウムあるいはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合することによって得ることができる。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
【0069】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEとしては、例えば、ASTM規格によりタイプ3に分類されるものを用いることができる。このタイプ3に分類される市販品としては、例えば、テフロン(登録商標)6−J(商品名、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1及びポリフロンF−103(商品名、ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。また、タイプ3以外では、アルゴフロンF5(商品名、モンテフルオス社製)及びポリフロンMPA FA−100(商品名、ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。
ポリテトラフルオロエチレンは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ポリテトラフルオロエチレンの配合量は、(a)成分と(b)成分との合計100質量部に対して、0.1〜0.5質量部程度であり、好ましくは0.2〜0.4質量部である。
【0070】
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に配合される各種添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、エステル系等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、通常用いられる離型剤、帯電防止剤、蛍光増白剤等が挙げられ、これらを適宜含有させることができる。
【0071】
[難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び光反射部材]
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、既知の種々の成形方法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等を適用して、種々の形状の成形体とすることができる。また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を用いて押出成形し、加熱成形又はプレス成形して、良好な成形体を得ることができる。
加熱成形の方法としては、具体的には予備成形体を加熱し、真空および/または圧縮空気の圧力で成形する方法を挙げることができる。ここで加熱の際は、予備成形体の片側又は両側のいずれからでもよく、熱源に直接接触させて加熱することもできる。このとき、加熱温度が150℃未満の場合は均一に成形できない場合があり、200℃を越えると発泡が生じやすく、好ましくない。
熱成形の方法は、特に限定されないが、例えば、単純な真空成形法、ドレープホーミング法、マッチドダイ法、プレッシャーバブルプラグアシスト真空成形法、プラグアシスト法、真空スナップバック法、プレッシャーバブル真空スナップバック法、エアースリップホーミング、トラップドシート接触加熱−プレッシャーホーミング、単純圧空成形法等が挙げられる。
この成形時の圧力は、真空成形法の場合は0.1MPa以下、圧空成形法の場合は0.3〜0.8MPaが好ましく、真空成形法と圧空成形法は組み合わせて行うことができる。この熱成形により光源のタイプ、個数に応じた形状、均質な面反射が可能な形状にすることができる。
この成形体は、機械特性(剛性)、放熱性(熱伝導性)耐熱性(寸法安定性)、や難燃性に優れるとともに、高い光線反射性、及び遮光性を有するものであり、液晶ディスプレイの光反射板等の成形品、あるいは光学素子等の分野の成形品や部品を製造するのに好適に使用することができる。
【0072】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を異型押出成形することにより反射板とシャーシ機能を兼ね備えた成形体の製造も可能である。
さらには、このようにして得られた本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を、通常の成形方法、例えば、射出成形法や圧縮成形法等を用いて平面板又は曲面板に成形することにより、本発明の光反射部材が得られる。
この光反射部材は、例えば、照明装置用や液晶ディスプレイバックライト用等に好ましく用いられるが、特に液晶ディスプレイバックライト用反射板として好適である。本発明の光反射部材は、材料に臭素化合物を含有していないため、耐光性に優れ、長期間利用しても反射率の低下が少なく、良好な特性を示す等、従来にない優れた特性を備えたものである。さらに、本発明の光反射部材は、材料に臭素化合物を含有していないため、耐光性に優れ、長期間利用しても反射率の低下が少なく、良好な特性を示す等、従来にない優れた特性を備えたものである。
【実施例】
【0073】
次に、本発明を実施例により、更に詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例における性能評価は、下記の測定方法に従って行なった。
【0074】
(1)機械特性
曲げ弾性率(剛性);ASTM D790(測定条件23℃)に準拠した。
Izod衝撃強さ(耐衝撃性);ASTM D790(測定条件23℃)に準拠した。
(2)光線反射率Y
各実施例及び比較例で得られたペレットを、各々120℃で5時間熱風乾燥した後、成形機[住友重機械株式会社製,住友ネスタールN515/150]を用いて、300℃の成形温度、80℃の金型温度で、140mm×140mm×3.2mmの反射率測定用の平板を作製した。
光線反射率は、LCM分光光度計MS2020プラス(Macbeth社製)によるY値で評価した。
【0075】
(3)遮光性:全光線透過率(%)
成形機[住友重機械株式会社製,住友ネスタールN515/150]を用いて、300℃の成形温度、80℃の金型温度で、80mm×80mm×1.0mmの全光線透過率測定用の平板を作製した。JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製の試験機により、平行光線透過率を測定した。
(4)放熱性(熱伝導性)
IS80EPN(80t)射出成形機を用い、表に示す樹脂温度及び金型温度で、各実施例及び比較例で得られたペレットからなる60mm×60mm×厚さ2mmの角板成形品を成形し、熱伝導率測定装置TPA−501(京都電子工業株式会社製)を用いてホットディスク法スラブモードにて熱伝導係数を測定した。
【0076】
(5)耐熱性(耐熱寸法安定性)
1.6mm厚みのUL規格の試験片を使用し、90℃で480時間保持後の試験片の長手方向の寸法変化を測定し、初期寸法に対する変化率(%)を算出した。
(6)難燃性評価試験
各実施例及び比較例で得られたペレットを、各々120℃で5時間熱風乾燥した後、住友重機械株式会社製、ネスタールN515/150を用いて、成形温度300℃、金型温度80℃で、127mm×12mm×1mm厚さの燃焼試験用試験片を作製した。作製した試験片はUL94準拠の難燃性試験〔難燃性:UL94V-0(厚み1.6mmt)準拠試験〕により評価した。
なお、UL94とは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間から難燃性を評価する方法であり、V−0試験合格の場合を○、V−0試験不合格の場合を×とした。
【0077】
<製造例>
〈共重合コモノマーの製造例1〉
〔ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の合成:PTMG鎖の平均分子量=2000〕
窒素下でポリテトラメチレングリコール(PTMG、Mn=2000)100質量部とp−ヒドロキシ安息香酸メチル16.7質量部をジブチル錫オキシド0.05質量部の存在下、210℃で加熱し、メタノールを留去した。
反応系内を減圧にし、過剰のp−ヒドロキシ安息香酸メチルを留去した。反応生成物を塩化メチレンに溶解後、この塩化メチレン溶液に8質量%炭酸水素ナトリウム水溶液を加え20分間激しく混合後、遠心分離により塩化メチレン相を採取した。塩化メチレン相を減圧下で濃縮し、ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)を得た。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりp−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸メチルを定量した結果、p−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%であった。
なお、HPLC測定方法は、GLサイエンス社製ODS−3カラムを用い、カラム温度40℃、0.5%リン酸水溶液とアセトニトリルの1:2混合溶媒、流速1.0mL/分の条件で測定した。定量は標品による検量線を元に算出した。
【0078】
〈共重合コモノマーの製造例2〉
〔ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の合成:PTMG鎖の平均分子量=1000〕
ポリテトラメチレングリコール(PTMG、Mn=1000)100質量部、p−ヒドロキシ安息香酸メチル33.4質量部とした以外は製造例1と同様に行った。
p−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.3質量%であった。
【0079】
〈共重合コモノマーの製造例3〉
〔ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の合成:PTMG鎖の平均分子量=600〕
ポリテトラメチレングリコール(PTMG、Mn=600)100質量部、p−ヒドロキシ安息香酸メチル50質量部とした以外は製造例1と同様に行った。
p−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%であった。
【0080】
〈共重合コモノマーの製造例4〉
〔ポリテトラエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の合成:PTEG鎖の平均分子量=1000〕
ポリテトラエチレングリコール(PTEG、Mn=1000)100質量部、p−ヒドロキシ安息香酸メチル33.4質量部とした以外は製造例1と同様に行った。
p−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.3質量%であった。
【0081】
〈ポリカーボネートオリゴマー溶液の製造〉
5.6質量%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するビスフェノールA(BPA)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5質量%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。このBPAの水酸化ナトリウム水溶液40L/hr、塩化メチレン15L/hrの流量で、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64L/hrで添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは、濃度329g/L、クロロホーメート基濃度0.74mol/Lであった。
【0082】
〈高流動共重合PC:PCC1の製造〉
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン8.9L、前記で製造したポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)325g(PTMG鎖の平均分子量=2000)及びトリエチルアミン8.7mLを仕込み、攪拌下でここに6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液1710gを加え10分間、ポリカーボネートオリゴマーとポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の反応を行った。
この重合液に、p−t−ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP225gを塩化メチレン2.0Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH617gと亜二チオン酸ナトリウム1.9gを水9.0Lに溶解した水溶液にBPA930gを溶解させたもの)を添加し50分間重合反応を実施した。
希釈のため塩化メチレン15Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
【0083】
こうして得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/LNaOH水溶液、0.2mol/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下100℃で乾燥した。
NMRにより求めたポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)残基の量は4.0質量%であった。
ISO 1628−4(1999)に準拠して測定した(以下、同様に粘度数を測定)粘度数は38.1(Mv=13500)であった。
【0084】
〈高流動共重合PC:PCC2の製造〉
ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)325g(PTMG鎖の平均分子量=2000)をポリテトラエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)163g(PTEG鎖の平均分子量=1000)に変更した以外はPCC1の製造と同様に行った。
NMRにより求めたポリテトラエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)残基の量は2.0質量%であった。
粘度数は38.0(Mv=13500)であった。
【0085】
〈高流動共重合PC:PCC3の製造〉
ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)(PTMG鎖の平均分子量=2000)の添加量を813gに、PTBPの使用量を246gに、乾燥温度を100℃から80℃に変更した以外はPCC1の製造と同様に行った。
NMRにより求めたポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)残基の量は10.7質量%であった。
粘度数は35.6(Mv=12400)であった。
【0086】
〈高流動共重合PC:PCC4の製造〉
ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)(PTMG鎖の平均分子量=2000)325gを、ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)(PTMG鎖の平均分子量=600)813gに、PTBPの使用量を、213gに、乾燥温度を、80℃に変更した以外はPCC1の製造と同様に行った。
NMRにより求めたポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)残基の量は9.9質量%であった。
粘度数は39.6(Mv=14200)であった。
【0087】
〈ポリオルガノシロキサン共重合PC(PC-PDMS):PCC5の製造〉
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン8.9L、ジメチルシラノオキシ単位の繰返し数が90であるアリルフェノール末端変性PDMS625g及びトリエチルアミン8.7mLを仕込み、攪拌下でここに6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液1390gを加え10分間、ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、PTBPの塩化メチレン溶液(PTBP172gを塩化メチレン2.0Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH566gと亜二チオン酸ナトリウム2.2gを水8.3Lに溶解した水溶液にBPA1116gを溶解させたもの)を添加し50分間重合反応を実施した。
希釈のため塩化メチレン15Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
【0088】
こうして得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/LNaOH水溶液、0.2mol/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。
NMRにより求めたPDMS残基の量は10.0質量%であった。
粘度数は41.5(Mv=15000)であった。
【0089】
実施例1〜16及び比較例1〜6
下記の原料を第1表〜第3表に示した質量部で配合し、ベント付き二軸押出成形機(東芝機械株式会社製、機種名:TEM35)によって、温度280℃で混練し、ペレット化した。得られたペレットを前記の方法によって性能評価し、その結果を第1表〜第3表に示す。なお、比較例6は混練不能で、性能評価ができなかった。
【0090】
(a)成分:芳香族ポリカーボネート樹脂
(a−1)成分:高流動共重合PC、PCC1〜4(製造例により製造したもの)
(a−2)成分:ポリオルガノシロキサン共重合PC(PC−PDMS)
タフロンFC1700
(出光興産株式会社製、Mv=17500、PDMS含有量3.5質量%)
PCC5(製造例により製造したもの)
(a−3)成分:ポリカーボネート樹脂(一般PC)
タフロンFN1700(出光興産株式会社製、Mv=17500)
(b)成分:酸化チタン粉末
PF726(石原産業株式会社製、商品名:PF726、平均粒径0.21μm)
PC3(石原産業株式会社製、商品名:PC3、平均粒径0.21μm)
(c)成分:タルク
13T(B);アミノ変性シランカップリング剤表面処理品
13T(C);ビニル変性シランカップリング剤表面処理品
13T(D);エポキシシ変性ランカップリング剤表面処理品
(上記、何れも、浅田製粉(株)製:アルカリ中和処理品)
TP−A25〔富士タルク(株)製、比較用〕
(d)成分:オルガノポリシロキサン
BY−16−161(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
(e)成分:難燃剤:ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体
MR−01(株式会社カネカ製、商品名)
KFBS(有機金属系難燃剤)
難燃化助剤:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
PTFE(旭硝子株式会社製、商品名:CD076)
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
上記第1表〜第3表より、以下のことが判明した。
(1)各実施例に示されるように、本発明により、ポリカーボネート樹脂に、特定のタルクと酸化チタンを配合することにより、優れた光反射率、遮光性、放熱性、耐熱寸法安定性を有し、難燃性の優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
(2)本発明においては、特定のタルクを用いることによって、従来のタルクによるポリカーボネート系樹脂の加水分解劣化が抑制されるので、タルク及び酸化チタンの高濃度の配合が可能となり、例えば、実施例6〜8に示されるように、さらに優れた光線反射率および遮光性を有し、且つ、耐熱寸法安定性にも優れた光反射部材が得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、優れた耐熱性、難燃性を有し、成形品の光線反射率、遮光性、放熱性、機械特性(剛性)、寸法安定性にも優れるので、液晶ディスプレイバックライト等の部品(反射板・フレーム・ランプ支持体等、シャーシ一体化反射板)、一般照明装置用部品(ハウジング、反射板、フレーム等)、LED反射ケース、自動車等の操作パネルなど、光源から発する光の反射、遮光と難燃性を同時に要求される製品に好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)白色顔料及び(c)アルカリ中和処理及びシランカップリング表面処理されたタルクを含有し、(a)〜(c)成分合計量100質量部における(a)成分:(b)成分:(c)成分の質量比が、91〜40:4〜40:4〜20であることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
(a)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、高流動ポリカーボネート共重合体及び/又はポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含有する請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
(a)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体を含有する請求項2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
(c)成分のタルクのシランカップリング表面処理が、アミノ変性シラン、カルボキシ変性シラン、アクリル変性シラン、エポキシ変性シランより選ばれた少なくとも1種のシランカップリング表面処理である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
(a)〜(c)成分100質量部に対して、(d)オルガノポリシロキサン0.1〜3質量部及び(e)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体0.1〜5質量部を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
(d)オルガノポリシロキサンが、アルキル水素シリコーン又はアルコキシシリコーンである、請求項5に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
アルコキシシリコーンが、シリコーン主鎖に対してメチレン基を介してアルコキシ基と結合する分子構造を有するオルガノポリシロキサンである請求項6に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
(e)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90質量部の存在下に、(Y)多官能性単量体(y−1)100〜50質量%及びその他の共重合可能な単量体(y−2)0〜50質量%からなるビニル系単量体0.5〜10質量部を重合し、さらに(Z)その他のビニル系単量体5〜50質量部を重合して得られたものである〔但し、(X)、(Y)及び(Z)の合計量が100質量部とする〕請求項5に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られる光反射部材。

【公開番号】特開2009−280725(P2009−280725A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135403(P2008−135403)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】