説明

難燃性ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物の製造方法及びその組成物

組成物はポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド及びホスフィネートを含む。この組成物はまた、耐衝撃性改良剤、強化用充填材、導電性添加剤又は以上の2種以上の組合せを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリ(アリーレンエーテル)樹脂はポリアミド樹脂とブレンドされて、耐熱性、耐薬品性、衝撃強さ、加水分解安定性及び寸法安定性のような多種多様の有益な性質を有する組成物が提供されている。
【0002】
これらの有益な性質は多種多様の用途で望ましいものであり、これらの用途に必要な部品の形状と大きさは広く変化する。その結果、射出成形、圧縮成形及び押出のような種々の形成又は成形方法が使用される。各々の成形方法では、成形されるポリマーに異なる組の物理的特性が要求される。射出成形のような高剪断/高圧プロセスに適切なポリマーブレンドは、ブロー成形、シート押出及び異形押出のような低圧/低剪断プロセスには適さないことがある。例えば、異形押出では、ポリマーブレンドを成形ダイ(異形断面ダイ)に押し通し、冷えるまでその押し出された形状を維持する必要がある。押し出された形状は、そのポリマーブレンドがまだ可鍛性である間に造形工具を用いてさらに細工することができ、その造形異形材は細工後にその形状を保持しなければならない。従って、低圧/低剪断プロセスで使用するポリマーブレンドは通例、かなり高い溶融粘度(低いメルトフローインデックス)及び高い溶融強度を有する。
【0003】
幾つかの用途では、押し出された形状が静電的に塗装可能であるのが望ましく、それには導電性材料を使用する必要がある。残念ながら、高い溶融粘度のブレンドに導電性添加剤を含ませるのは、特にポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンドのような多相ポリマーブレンドの場合問題が生じる可能性がある。また、導電性で高い溶融粘度のブレンドの難燃性は達成するのが困難であり得る。
【0004】
同様に、強化熱可塑性組成物の難燃性は、強化用充填材が存在するとその組成物の燃焼挙動が非強化組成物と比較して変化するので、達成するのが困難であることがある。
【特許文献1】米国特許第2071250号
【特許文献2】米国特許第2071251号
【特許文献3】米国特許第2130523号
【特許文献4】米国特許第2130948号
【特許文献5】米国特許第2241322号
【特許文献6】米国特許第2312966号
【特許文献7】米国特許第2512606号
【特許文献8】米国特許第3379792号
【特許文献9】米国特許第5132365号
【特許文献10】米国特許第5326805号
【特許文献11】米国特許第5543452号
【特許文献12】米国特許第5714550号
【特許文献13】米国特許第5741846号
【特許文献14】米国特許第5843340号
【特許文献15】米国特許第6166115号
【特許文献16】米国特許第6207736号
【特許文献17】米国特許第6255371号
【特許文献18】米国特許第6344158号
【特許文献19】米国特許第6365071号
【特許文献20】米国特許第6384128号
【特許文献21】欧州特許出願公開第0699708号
【特許文献22】国際公開第99/57187号
【特許文献23】国際公開第02/28953号
【特許文献24】米国特許第6414084号
【特許文献25】米国特許第6503969号
【特許文献26】米国特許第6509401号
【特許文献27】米国特許第6547992号
【特許文献28】米国特許第6558764号
【特許文献29】米国特許第6569974号
【特許文献30】米国特許第6576700号
【特許文献31】米国特許第6583315号
【特許文献32】米国特許第6593411号
【特許文献33】米国特許第6599446号
【特許文献34】米国特許第6600068号
【特許文献35】米国特許出願公開第2003/0073865号
【特許文献36】米国特許出願公開第2003/0166762号
【特許文献37】米国特許出願公開第2003/0176543号
【特許文献38】米国特許出願公開第2003/0216533号
【特許文献39】米国特許出願公開第2004/0049063号
【特許文献40】米国特許第5535600号
【特許文献41】米国特許第5760132号
【特許文献42】米国特許出願第11/271279号
【特許文献43】米国特許出願第11/271278号
【特許文献44】米国特許第4772664号
【特許文献45】米国特許第4863996号
【特許文献46】米国特許第6887930号
【特許文献47】米国特許出願公開第2005/0075427号
【特許文献48】米国特許出願公開第2005/0250885号
【特許文献49】米国特許出願公開第2006/0058432号
【特許文献50】欧州特許第1522551号
【特許文献51】欧州特許第0657498号
【特許文献52】欧州特許出願公開第0332965号
【特許文献53】特開2000−212434号公報
【特許文献54】米国特許出願第11/279143号
【特許文献55】米国特許出願第11/279148号
【特許文献56】米国特許第4970272号
【特許文献57】米国特許出願公開第20010007888号
【特許文献58】欧州特許出願公開第0183195号
【特許文献59】欧州特許出願公開第0501175号
【特許文献60】国際公開第2005/118698号
【特許文献61】国際出願第PCT/US2005/041724号に対する国際調査報告
【非特許文献1】UL94“Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances”
【非特許文献2】International Standard ISO 1133“Plastics−Determination of the melt mass−flow rate (MFR) and the melt volume−flow rate (MVR) of thermoplastics”Third Edition 1997−01−15,14頁
【非特許文献3】International Standard ISO 306“Plastics−Thermoplastic materials−Determination of Vicat softening temperature (VST)”Fourth Edition 2004−07−15,16頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のニーズが、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、導電性添加剤、耐衝撃性改良剤、及びホスフィネートからなる組成物により解決される。
【0006】
別の実施形態において、組成物の製造方法は、
ポリ(アリーレンエーテル)と相溶化剤からなる第1の混合物を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、
第1の溶融混合物並びにポリアミド、導電性添加剤及び難燃性マスターバッチからなる第2の混合物を溶融混合するからなっており、難燃性マスターバッチはホスフィネートと熱可塑性樹脂からなる。
【0007】
別の実施形態において、強化組成物はポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、強化用充填材、ホスフィネート、及び任意の耐衝撃性改良剤からなる。この組成物はさらに導電性添加剤を含んでいてもよい。本明細書で使用する場合、強化組成物は、強化用充填材を含む組成物である。
【0008】
もう1つ別の実施形態において、組成物の製造方法は、
ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤、ポリアミド、強化用充填材、及び難燃性マスターバッチを溶融混合することからなり、難燃性マスターバッチはホスフィネートと熱可塑性樹脂からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上に述べたように 低圧/低剪断成形プロセスでは、押出ダイ又は金型から出た後に所望の形状を維持するように充分に高い溶融強度と充分に低いメルトボリュームレート(MVR)を有する材料が必要とされる。また、その材料が、静電塗装が可能なように充分に導電性であり、かつ「Tests for Flammability of Plastic Materials,UL94」と題するUnderwriter’s Laboratory Bulletin 94(UL94)に従って厚さ2.0ミリメートル(mm)でV−1以上の難燃性等級を有するのが望ましい。強化組成物は、「Tests for Flammability of Plastic Materials,UL94」と題するUnderwriter’s Laboratory Bulletin 94(UL94)に従って厚さ1.5ミリメートル(mm)でV−1以上の難燃性等級を有する。
【0010】
1つの実施形態において、低圧/低剪断成形プロセスに有用な組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、耐衝撃性改良剤、導電性添加剤、及びホスフィネートからなる。本組成物のメルトボリュームレートは低圧/低剪断プロセスと適合性である。1つの実施形態において、本組成物は、300℃、荷重5キログラム(kg)で実施されるメルトボリュームレート試験ISO 1133により決定して25立方センチメートル(cc)/10min以下、又はより特定的には20cc/10min以下、又はさらにより特定的には16cc/10min以下のメルトボリュームレートを有する。
【0011】
本組成物は、170℃以上、又はより特定的には180℃以上、又はさらにより特定的には190℃以上のVicat B120を有し得る。Vicat B120はISO 306規格を用いて決定される。Vicat B120が170℃以上であると、その組成物は確実に静電塗装に適当な熱的性能を有する。
【0012】
比体積抵抗率(SVR)は、直接材料を通る漏れ電流の尺度であり、1センチメートル立方の材料の電気抵抗として定義され、オーム−cmで表される。ある材料の比体積抵抗率が低ければ低いほど、その材料はそれだけ導電性が高い。1つの実施形態において、本組成物は、10オーム−cm以下、又はより特定的には10以下、又はさらにより特定的には10以下の比体積抵抗率を有する。比体積抵抗率は実施例に記載されているようにして決定することができる。驚くべきことに、ホスフィネートを含ませることにより、ホスフィネートを欠く匹敵する組成物に対して抵抗率が低下する。その結果、ホスフィネートと導電性添加剤を含む組成物で、ホスフィネートを含まない導電性添加剤からなる組成物と同程度以下の抵抗率を達成することが可能である。
【0013】
幾つかの実施形態においては、組成物が、成形設備の蓄積量を抑制又は制限するように充分に低い揮発分を有するのが有利であることがある。
【0014】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、強化用充填材、ホスフィネート、任意の耐衝撃性改良剤及び任意の導電性添加剤からなる組成物から作成された物品は、低い反りと優れた耐火性を示す。
【0015】
本明細書中で単数を示す用語は、量の限定を意味するものではなく、参照されているものが1以上存在することを意味している。本明細書に開示されている範囲は全て包括的であり組合せ可能である(例えば、「25wt%以下、又はより特定的には5〜20wt%」という範囲は、その範囲「5〜25wt%」などの端点及びあらゆる中間値を包含する)。
【0016】
本発明で使用する「ポリ(アリーレンエーテル)」は、次式(I)の構造単位を複数含んでいる。
【0017】
【化1】

式中、各々の構造単位に対して、各Qと各Qは独立して水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル(例えば、1〜7個の炭素原子を含有するアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、アリール、炭化水素オキシ、並びに2個以上の炭素原子がハロゲン及び酸素原子を隔てているハロ炭化水素オキシである。幾つかの実施形態において、各々のQは独立してアルキル又はフェニル、例えばC1−4アルキルであり、各々のQは独立して水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、通例ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する1以上のアミノアルキル含有末端基を有する分子を含んでいてもよい。また、通例テトラメチルジフェニルキノン副生物が存在する反応混合物から得られるテトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)末端基が存在することも多い。
【0018】
ポリ(アリーレンエーテル)はホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、アイオノマー、例えばアリーレンエーテル単位及びアルケニル芳香族化合物から誘導されたブロックを含むブロックコポリマー、並びに以上のものを1種以上含む組合せの形態にあることができる。ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を場合により2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせたポリフェニレンエーテルが包含される。
【0019】
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール及び/又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造することができる。一般にかかるカップリングには触媒系を使用するが、これらは銅、マンガン又はコバルト化合物のような1種以上の重金属化合物を、通常は第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物又は以上の2種以上の組合せのような様々な他の物質と組み合わせて含有することができる。
【0020】
ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準、スチレンジビニルベンゼンゲルを用いて40℃においてクロロホルム1ミリリットル当たり1ミリグラムの濃度を有する試料でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定して3000〜40000グラム/モル(g/mol)の数平均分子量及び/又は約5000〜約80000g/molの重量平均分子量を有することができる。ポリ(アリーレンエーテル)は、クロロホルム中25℃で測定して0.10〜0.60デシリットル/グラム(dl/g)、又はより特定的には0.29〜0.48dl/gの初期固有粘度を有することができる。初期固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合する前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度として定義され、最終固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合した後のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度として定義される。当業者には理解されるように、ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は溶融混合した後に30%まで高くなり得る。増大割合(%)は(最終固有粘度−初期固有粘度)/初期固有粘度で計算することができる。2つの初期固有粘度を使用する場合の正確な割合の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的な物理的性質に幾らか依存する。
【0021】
1つの実施形態において、ポリ(アリーレンエーテル)は、示差走査熱量測定(DSC、20℃/分の上昇率)により決定して160〜250℃のガラス転移温度(Tg)を有する。この範囲内で、Tgは180℃以上、又はより特定的には200℃以上であり得る。また、この範囲内で、Tgは240℃以下、又はより特定的には230℃以下であり得る。
【0022】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)を15〜65重量パーセントの量で含む。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)は、30重量パーセント以上の量、又はより特定的には35重量パーセント以上の量、又はさらにより特定的には40重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)は60重量パーセント以下、又はより特定的には55重量パーセント以下、又はさらにより特定的には50重量パーセント以下の量で存在し得る。重量パーセントは熱可塑性組成物の総重量を基準とする。
【0023】
ナイロンともいわれるポリアミド樹脂は、アミド基(−C(O)NH−)の存在を特徴としており、米国特許第4970272号に記載されている。代表的なポリアミド樹脂としては、限定されることはないが、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4、ナイロン−4,6、ナイロン−12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6,12、非晶質ポリアミド樹脂、トリアミン含有率が0.5重量パーセント未満のナイロン−6/6T及びナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T、並びに以上のポリアミド2種以上の組合せがある。1つの実施形態において、ポリアミド樹脂はナイロン−6及びナイロン−6,6からなる。1つの実施形態において、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂の組合せは171℃以上の融点(Tm)を有する。ポリアミドが超強靱性ポリアミド、すなわちゴム−強靱化ポリアミドからなる場合、組成物は別の耐衝撃性改良剤を含有していてもいなくてもよい。
【0024】
ポリアミド樹脂は、米国特許第2071250号、同第2071251号、同第2130523号、同第2130948号、同第2241322号、同第2312966号及び同第2512606号に記載されているもののような幾つかの周知のプロセスにより得ることができる。ポリアミド樹脂は多種多様の供給元から市販されている。
【0025】
ISO 307に従って96wt%硫酸中0.5wt%溶液で測定して400ミリリットル/グラム(ml/g)までの固有粘度、又はより特定的には90〜350ml/gの粘度、又はさらにより特定的には110〜240ml/gの粘度を有するポリアミド樹脂を使用することができる。
【0026】
ポリアミドは、6までの相対粘度、又はより特定的には1.89〜5.43の相対粘度、又はさらにより特定的には2.16〜3.93の相対粘度を有し得る。相対粘度は、DIN 53727に従って96wt%硫酸中1wt%溶液で決定される。
【0027】
1つの実施形態において、ポリアミド樹脂は、HClを用いた滴定により決定して、ポリアミド1グラム当たり35マイクロ当量以上のアミン末端基(μeq/g)のアミン末端基濃度を有するポリアミドからなる。この範囲内で、アミン末端基濃度は40μeq/g以上、又はより特定的には45μeq/g以上であり得る。アミン末端基含有率は、場合により加熱しながら適切な溶媒にポリアミドを溶解することによって決定することができる。ポリアミド溶液は、適切な指示方法を用いて0.01規定の塩酸(HCl)溶液で滴定される。アミン末端基の量は、試料に添加した容積、ブランクに使用したHClの容積、HCl溶液のモル濃度及びポリアミド試料の重量に基づいて計算する。
【0028】
1つの実施形態において、ポリアミドは、ポリ(アリーレンエーテル)のガラス転移温度(Tg)の35%以内、又はより特定的には25%以内、又はさらにより特定的には15%以内の溶融温度を有するポリアミドを、ポリアミドの総重量を基準にして50重量パーセント以上含む。本明細書で使用する場合、ポリアリーレンエーテルのガラス転移温度の35%以内の溶融温度を有するとは、(0.65×ポリ(アリーレンエーテル)のTg)以上で、(1.35×ポリ(アリーレンエーテル)のTg)以下である溶融温度を有するものとして定義される。
【0029】
本組成物は、30〜85重量パーセントの量でポリアミドを含む。この範囲内で、ポリアミドは33重量パーセント以上の量、又はより特定的には38重量パーセント以上の量、又はさらにより特定的には40重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、ポリアミドは、60重量パーセント以下、又はより特定的には55重量パーセント以下、又はさらにより特定的には50重量パーセント以下の量で存在し得る。重量パーセントは熱可塑性組成物の総重量を基準にしている。
【0030】
本明細書で使用する場合、「相溶化剤」とは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド樹脂、又は両者と相互作用する多官能性化合物をいう。この相互作用は化学的(例えば、グラフト化)及び/又は物理的(例えば、分散相の表面特性への作用)であり得る。いずれの場合も、得られる相溶化されたポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物は、特に高まった衝撃強さ、金型ニットライン強度及び/又は伸びによって証明されるように、改良された相溶性を示すようである。本明細書で使用する場合、「相溶化されたポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンド」という表現は、上記作用物質により物理的に及び/又は化学的に相溶化されている組成物、並びに米国特許第3379792号に教示されているようにかかる作用物質を用いることなく物理的に適合性の組成物ヲいう。
【0031】
使用できる各種相溶化剤の例としては、液体ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、オルガノシラン化合物、多官能性化合物、官能化ポリ(アリーレンエーテル)及び以上のものを1種以上含む組合せがある。相溶化剤はさらに、米国特許第5132365号及び同第6593411号並びに米国特許出願公開第2003/0166762号に記載されている。
【0032】
1つの実施形態において、相溶化剤は多官能性化合物からなる。相溶化剤として使用できる多官能性化合物は3つのタイプがある。第1のタイプの多官能性化合物は、分子内に、(a)炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合と、(b)1以上のカルボン酸、無水物、アミド、エステル、イミド、アミノ、エポキシ、オルトエステル、又はヒドロキシ基との両方を有するものである。かかる多官能性化合物の例としては、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸グリシジル、イタコン酸、アコニット酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、ジアミンとマレイン酸無水物、マレイン酸、フマル酸、などとから得られる反応生成物、ジクロロマレイン酸無水物、マレイン酸アミド、不飽和ジカルボン酸(例えば、アクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、t−エチルアクリル酸、ペンテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸、など)、以上の不飽和カルボン酸のエステル、酸アミド又は無水物、不飽和アルコール(例えば、アルキルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3−ブテン−1,4−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール及び式C2n−5OH、C2n−7OH及びC2n−9OH[式中のnは30以下の正の整数]のアルコール)、以上の不飽和アルコールの−OH基(1以上)をNH基で置換することにより得られる不飽和アミン、官能化ジエンポリマー及びコポリマー、並びに以上の1種以上を含む組合せがある。1つの実施形態において、相溶化剤はマレイン酸無水物及び/又はフマル酸からなる。
【0033】
第2のタイプの多官能性相溶化剤は、(a)式(OR)[式中のRは水素又はアルキル、アリール、アシル若しくはカルボニルジオキシ基]で表される基と、(b)各々がカルボン酸、酸ハロゲン化物、無水物、酸ハロゲン化物無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ、及びこれらの各種塩から選択される同じでも異なってもよい2以上の基とを両方とも有することを特徴とする。この群の相溶化剤の典型例は、次式で表される脂肪族ポリカルボン酸、酸エステル及び酸アミドである。
(RO)R(COORII(CONRIIIIV
式中、Rは2〜20個、又はより特定的には2〜10個の炭素原子を有する線状又は枝分かれ鎖の飽和脂肪族炭化水素であり、Rは水素又は1〜10個、若しくはより特定的には1〜6個、若しくはさらにより特定的には1〜4個の炭素原子を有するアルキル、アリール、アシル、若しくはカルボニルジオキシ基であり、各々のRIIは独立して水素又は1〜20個、若しくはより特定的には1〜10個の炭素原子を有するアルキル若しくはアリール基であり、各々のRIII及びRIVは独立して水素又は1〜10個、若しくはより特定的には1〜6個、若しくはさらにより特定的には1〜4個の炭素原子を有するアルキル若しくはアリール基であり、mは1に等しく、(n+s)は2以上であるか、又はより特定的には2若しくは3に等しく、nとsは各々がゼロ以上であり、(OR)はカルボニル基に対してα又はβであり、2以上のカルボニル基が2〜6個の炭素原子により隔てられている。明らかに、R、RII、RIII、及びRIVは、それぞれの置換基が6個未満の炭素原子を有する場合、アリールであることはできない。
【0034】
適切なポリカルボン酸としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸があり、これらの例えば無水及び水和酸のような各種商業形態のものが包含され、また以上の1種以上を含む組合せもある。1つの実施形態において、相溶化剤はクエン酸からなる。本発明に有用なエステルの具体例としては、例えば、クエン酸アセチル、クエン酸モノ−及び/又はジステアリル、などがある。本発明に有用な適切なアミドとしては、例えば、N,N’−ジエチルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N,N’−ジドデシルクエン酸アミド及びN−ドデシルリンゴ酸がある。誘導体としては、これらの塩、例えば、アミンとの塩並びにアルカリ及びアルカリ性金属塩がある。適切な塩の代表例としては、マレイン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、マレイン酸カリウム、及びクエン酸カリウムがある。
【0035】
第3のタイプの多官能性相溶化剤は、分子内に、(a)酸ハロゲン化物基と、(b)1以上のカルボン酸、無水物、エステル、エポキシ、オルトエステル、又はアミド基、好ましくはカルボン酸又は無水物基とを両方とも有することを特徴とする。この群に入る相溶化剤の例としては、トリメリト酸無水物酸塩化物、クロロホルミルコハク酸無水物、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミルグルタル酸無水物、クロロホルミルグルタル酸、クロロアセチルコハク酸無水物、クロロアセチルコハク酸、トリメリト酸塩化物、及びクロロアセチルグルタル酸がある。1つの実施形態において、相溶化剤はトリメリト酸無水物酸塩化物からなる。
【0036】
幾つかのポリアミドは、特定のタイプの相溶化剤を必要とする。例えば、モノマー性相溶化剤又はポリ(アリーレンエーテル)と反応したモノマー性相溶化剤はナイロン9Tと共に用いるのに有用であるが、ポリマー性相溶化剤は一般にうまくいかない。
【0037】
以上の相溶化剤は、直接メルトブレンドに添加してもよいし、又はポリ(アリーレンエーテル)及びポリアミドのいずれか若しくは両方と、また組成物の製造に使用する他の樹脂状材料と予め反応させてもよい。以上の相溶化剤の多く、特に多官能性化合物で、相溶化剤の少なくとも一部分を溶融体又は適切な溶媒の溶液中でポリ(アリーレンエーテル)の全部又は一部と予め反応させると相溶性がさらに大きく改善される。かかる予備的反応により、相溶化剤がポリマーと反応し、その結果ポリ(アリーレンエーテル)を官能化することができると考えられる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)をマレイン酸無水物と予め反応させて無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)を形成することができ、これは非官能化ポリ(アリーレンエーテル)と比較して改良されたポリアミドとの相溶性を有する。
【0038】
組成物を製造するのに相溶化剤を使用する場合、その使用量は選択される特定の相溶化剤とそれを添加する特定のポリマー系に依存する。
【0039】
耐衝撃性改良剤は、アルケニル芳香族繰返し単位を含有するブロックコポリマー、例えばA−Bジブロックコポリマー及びA−B−Aトリブロックコポリマーであることができ、このブロックコポリマーは、通例スチレンブロックである1又は2のアルケニル芳香族ブロックA(アルケニル芳香族繰返し単位を有するブロック)と、通例イソプレン又はブタジエンブロックであるゴムブロックBとを有する。ブタジエンブロックは部分的に又は完全に水素化されていてもよい。これらのジブロック及びトリブロックコポリマーの混合物、並びに非水素化コポリマー、一部水素化されたコポリマー、完全に水素化されたコポリマー、ラジアル テレブロックコポリマー、テーパードブロックコポリマー、及び以上の2種以上の組合せの混合物も使用できる。
【0040】
A−B及びA−B−Aコポリマーとしては、限定されることはないが、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン−スチレン)−ポリスチレン、などがある。上記ブロックコポリマーの混合物も有用である。かかるA−B及びA−B−Aブロックコポリマーは幾つかの供給元から市販されており、例えば、Phillips Petroleumの商標SOLPRENE、Kraton Polymersの商標KRATON、Dexcoの商標VECTOR、Asahi Kasaiの商標TUFTEC、Total Petrochemicalsの商標FINAPRENE及びFINACLEAR、Kurarayの商標SEPTON、並びにChevron Phillips Chemical Companyの商品名K−RESINがある。
【0041】
1つの実施形態において、耐衝撃性改良剤はポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)又は以上のものの組合せからなる。
【0042】
別のタイプの耐衝撃性改良剤はアルケニル芳香族繰返し単位を本質的に含まず、カルボン酸、無水物、エポキシ、オキサゾリン、及びオルトエステルからなる群から選択される1以上の部分を含む。本質的に含まないとは、アルケニル芳香族単位がブロックコポリマーの総重量を基準にして5重量パーセント未満、又はより特定的には3重量パーセント未満、又はさらにより特定的には2重量パーセント未満の量で存在すると定義される。耐衝撃性改良剤がカルボン酸部分を含む場合、そのカルボン酸部分はイオン、好ましくは亜鉛又はナトリウムのような金属イオンで中和されていてもよい。アルキレン−(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーであってもよく、そのアルキレン基は2〜6個の炭素原子を有し得、また(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は1〜8個の炭素原子を有し得る。このタイプのポリマーは、オレフィン、例えばエチレン及びプロピレンを、各種(メタ)アクリレートモノマー及び/又は各種マレイン酸系モノマーと共に共重合させることにより製造することができる。用語(メタ)アクリレートは、アクリレート及び対応するメタクリレート類似体の両者を指す。また、用語(メタ)アクリレートモノマーには、(メタ)アクリル酸アルキルモノマー及び1以上の上記反応性部分を含有する各種(メタ)アクリレートモノマーが包含される。
【0043】
1つの実施形態において、コポリマーは、アルキレン成分としてのエチレン、プロピレン、又はエチレンとプロピレンの混合物と、(メタ)アクリル酸アルキルモノマー成分としてのアクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、又はアクリル酸プロピル及び対応する(メチル)アクリル酸アルキルと、追加の反応性部分(すなわち、カルボン酸、無水物、エポキシ)を提供するモノマーとしてのアクリル酸、マレイン酸無水物、メタクリル酸グリシジル又はこれらの組合せとから誘導される。
【0044】
代表的な第1の耐衝撃性改良剤は種々の供給元から市販されており、例えばELVALOY PTW、SURLYN、及びFUSABONDがあるが、これらは全てDuPontから入手可能である。
【0045】
上記耐衝撃性改良剤は単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0046】
本組成物は、耐衝撃性改良剤又は耐衝撃性改良剤の組合せを1〜15重量パーセントの量で含み得る。この範囲内で、耐衝撃性改良剤は、1.5重量パーセント以上の量で、又はより特定的には2重量パーセント以上の量で、又はさらにより特定的には4重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、耐衝撃性改良剤は、13重量パーセント以下、又はより特定的には12重量パーセント以下、又はさらにより特定的には10重量パーセント以下の量で存在し得る。重量パーセントは熱可塑性組成物の総重量を基準にしている。
【0047】
組成物は、場合により、さらにゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含んでいてもよい。ゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、1種以上の上記アルケニル芳香族モノマーから誘導されたポリマーを含み、さらに、ブレンド及び/又はグラフトの形態のゴム変性剤を含んでいる。このゴム変性剤は、ブタジエン又はイソプレンのようなC〜C10非芳香族ジエンモノマーの1種以上の重合生成物であり得る。ゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、約98〜約70重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)樹脂と約2〜約30重量パーセントのゴム変性剤、好ましくは約88〜約94重量パーセントのポリ(アルケニル芳香族)樹脂と約6〜約12重量パーセントのゴム変性剤からなる。
【0048】
代表的なゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂としては、約88〜約94重量パーセントのスチレンと約6〜約12重量パーセントのブタジエンを含有するスチレン−ブタジエンコポリマーがある。ハイインパクトポリスチレンともいわれるこれらのスチレン−ブタジエンコポリマーは、例えば、General Electric CompanyからGEH 1897として、またChevron Chemical CompanyからBA 5350として市販されている。
【0049】
組成物は、ゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂を、組成物の総重量を基準にして、25重量パーセントまで、又はより特定的には20重量パーセントまで、又はさらにより特定的には18重量パーセントまでの量で含み得る。
【0050】
導電性添加剤は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維又は以上の2種以上の組合せからなり得る。導電性カーボンブラックは商業的に入手可能であり、限定されることはないが、S.C.F.(Super Conductive Furnace)、E.C.F.(Electric Conductive Furnace)、Ketjen Black EC(Akzo Co.、Ltd.から入手可能)又はアセチレンブラックを始めとする種々の商標名で販売されている。幾つかの実施形態において、導電性カーボンブラックは、200ナノメートル(nm)以下、又はより特定的には100nm以下、又はさらにより特定的には50nm以下の平均粒径を有する。また、導電性カーボンブラックは、200平方メートル/グラム(m/g)より大きい、又はより特定的には400m/gより大きい、又はさらにより特定的には1000m/gより大きい表面積を有し得る。導電性カーボンブラックは、フタル酸ジブチル吸収により決定して、40立方センチメートル/100グラム(cm/100g)以上、又はより特定的には100cm/100g以上、又はさらにより特定的には150cm/100g以上の細孔容積を有し得る。
【0051】
使用することができるカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、蒸気成長炭素繊維(VGCF)及び以上の2種以上を含む組合せがある。カーボンナノチューブはまた、強化用充填材とも考えることができる。
【0052】
単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、グラファイトのレーザー−気化、炭素アーク合成又は高圧一酸化炭素変換(HIPCO)プロセスによって製造することができる。これらのSWNTは一般に、0.7〜2.4ナノメートル(nm)の外径を有するグラフェンシートからなる単一の壁を有する。SWNTは金属SWNTと半導体SWNTの混合物からなっていてもよい。金属SWNTは金属と類似の電気特性を示すものであり、半導体SWNTは電気的に半導体であるものである。幾つかの実施形態において、組成物は、可能な限り大きい割合の金属SWNTを含むのが望ましい。SWNTは、5以上、又はより特定的には100以上、又はさらにより特定的には1000以上のアスペクト比を有し得る。SWNTは一般に、それぞれのチューブの各末端に半球形のキャップを有する閉鎖構造であるが、単一の開放末端又は両方の開放末端を有するSWNTも使用できると考えられる。SWNTは一般に、中空であるが、非晶質炭素が充填されていてもよい中心部分を含んでいる。
【0053】
1つの実施形態において、SWNTは、金属ナノチューブを、SWNTの総重量の1wt%以上、又はより特定的には20wt%以上、又はより特定的には30wt%以上、又はさらにより特定的には50wt%以上、又はさらにより特定的には99.9wt%以上の量で含む。
【0054】
1つの実施形態において、SWNTは、半導体ナノチューブを、SWNTの総重量の1wt%以上、又はより特定的には20wt%以上、又はより特定的には30wt%以上、又はさらにより特定的には50wt%以上、又はさらにより特定的には99.9wt%以上の量で含む。
【0055】
MWNTは、レーザーアブレーション及び炭素アーク合成のようなプロセスで製造することができる。MWNTは、内側の中空コアの回りに結合した2以上のグラフェン層を有する。一般に、半球形のキャップがMWNTの両末端を閉鎖しているが、1つだけ半球形キャップを有するMWNT又は両方のキャップを欠いているMWNTを使用することも可能である。MWNTは一般に2〜50nmの直径を有する。この範囲内で、MWNTは、40nm以下、又はより特定的には30nm以下、又はさらにより特定的には20nm以下の平均直径を有し得る。MWNTは5以上、又はより特定的には100以上、又はさらにより特定的には1000以上の平均アスペクト比を有し得る。
【0056】
蒸気成長炭素繊維(VGCF)は一般に、化学蒸着プロセスで製造される。「年輪」又は「魚の骨」構造を有するVGCFは、微粒子状金属触媒の存在下適度な温度、すなわち800〜1500℃において蒸気相で炭化水素から成長し得る。「年輪」構造の場合、多数の実質的にグラファイトのシートがコアの回りに同軸に配列されている。「魚の骨」構造の場合、繊維は、中空コアの軸から延びるグラファイト層を特徴とする。
【0057】
3.5〜2000ナノメートル(nm)の直径と5以上のアスペクト比を有するVGCFを使用することができる。VGCFは3.5〜500nm、又はより特定的には3.5〜100nm、又はさらにより特定的には3.5〜50nmの直径を有し得る。VGCFは100以上、又はより特定的には1000以上の平均アスペクト比を有し得る。
【0058】
各種タイプの導電性炭素繊維も本組成物中に使用することができる。炭素繊維は一般に、その直径、形態、及びグラファイト化度に従って分類される(形態とグラファイト化度は相互に関連している)。これらの特性は、現在のところ、その炭素繊維を合成するのに使用する方法によって決定される。例えば、5マイクロメートルまでの直径と、繊維軸に平行な(ラジアル、平面状、又は円周状配列の)グラフェンリボンとを有する炭素繊維は、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、又はピッチを始めとする繊維状形態の有機前駆体の熱分解によって工業的に製造される。
【0059】
炭素繊維は一般に、1000ナノメートル(1マイクロメートル)〜30マイクロメートル以上の直径を有する。この範囲内で、2マイクロメートル以上、又はより特定的には3マイクロメートル以上、又はより特定的には4マイクロメートル以上の大きさを有する繊維を使用できる。また、この範囲内で、25マイクロメートル以下、又はより特定的には15マイクロメートル以下、又はさらにより特定的には11マイクロメートル以下の直径を有する繊維を使用できる。
【0060】
本組成物は10オーム−Cm以下の比体積抵抗率を達成するのに充分な量の導電性添加剤を含んでいる。例えば、組成物は導電性カーボンブラック及び/又は炭素繊維及び/又はカーボンナノチューブを1〜20重量パーセントの量で含み得る。この範囲内で、導電性添加剤は1.2重量パーセント以上の量、又はより特定的には1.4重量パーセント以上の量、又はさらにより特定的には1.6重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、導電性炭素充填材は15重量パーセント以下、又はより特定的には10重量パーセント以下、又はさらにより特定的には5重量パーセント以下の量で存在し得る。重量パーセントは熱可塑性組成物の総重量を基準にしている。
【0061】
特定のレベルの導電性を達成するのに必要な導電性添加剤の量は導電性添加剤におおいに依存することは重要である。例えば、組成物の総重量を基準にして1〜1.2重量パーセントの量のMWNT又はVGCFを含む組成物は、組成物の総重量を基準にして1.7重量パーセントより大きい量で導電性カーボンブラックを含む組成物と同程度の導電率を有する。導電性添加剤の量の差は可燃性、衝撃強さ及び引張伸びのような物理的性質に有意な影響を及ぼし得る。
【0062】
幾つかの実施形態において、組成物が静電気を消散するか又は熱的に消散することができるように充分な比体積抵抗率を達成するように充分な量の導電性添加剤を配合するのが望ましい。
【0063】
強化用充填材は熱膨張係数を低下させることにより寸法安定性を改良することができる充填材である。これらはまた、強化用充填材を含まない類似の組成物と比較したとき強化組成物の曲げ及び引張弾性率を増大させ、反りを低下させ、又はこれらの組合せを実現する。
【0064】
強化用充填材の非限定例としては、溶融シリカ及び結晶質シリカのようなシリカ粉末、ホウ素−窒化物粉末及びホウ素−ケイ酸塩粉末、アルミナ、及び酸化マグネシウム(又はマグネシア)、表面処理ウォラストナイトを始めとするウォラストナイト、硫酸カルシウム(その無水物、二水和物又は三水和物)、一般に粉砕微粒子の形態である、チョーク、石灰石、大理石及び合成、沈降炭酸カルシウムを始めとする炭酸カルシウム、繊維状、モジュール状、針状、及びラメラ状タルクを始めとするタルク、中空及び中実の両方のガラス球、硬質、軟質、カ焼カオリン、及びポリマー性マトリックス樹脂との相溶性を助けることが当技術分野で知られている各種コーティングを含むカオリンを始めとするカオリン、雲母、長石、ケイ酸塩球、煙塵、セノスフェア、フィライト、アルミノケイ酸塩(アーモスフェア(armosphere))、天然珪砂、石英、石英岩、パーライト、トリポリ石、ケイ藻土、合成シリカ、並びにこれらの組合せがある。以上の充填材は全て、シランで表面処理してポリマー性マトリックス樹脂との接着及び分散を改良することができる。
【0065】
追加の代表的な強化用充填材としては、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、及びスチールフレークのような強化を提供するフレーク状充填材がある。また、代表的な強化用充填材には、無機短繊維、天然繊維状充填材、単結晶繊維、ガラス繊維、及び有機強化用繊維状充填材のような繊維状充填材もある。無機短繊維としては、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び硫酸カルシウム半水和物の1種以上を含むブレンドから誘導されたものがある。天然繊維状充填材としては、木材を粉砕することにより得られる木粉、並びにセルロース、綿、サイザル麻、ジュート、デンプン、コルク粉、リグニン、挽いたナッツの殻、トウモロコシ、米粒殻のような繊維状生成物がある。単結晶繊維又は「ウィスカー」には、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、及び銅単結晶繊維がある。E、A、C、ECR、R、S、D、及びNEガラス及び石英、などのような織物用ガラス繊維を始めとするガラス繊維も使用できる。加えて、繊維を形成することができる有機ポリマーを始めとする有機強化用繊維状充填材も使用できる。かかる有機繊維状充填材の具体例としては、例えば、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド又はポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、及びポリ(ビニルアルコール)がある。かかる強化用充填材は、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の形態で提供され得、単独で、又は他のタイプの繊維と組み合わせて、例えば、共織り又はコア/シース、並べて、オレンジ−タイプ又はマトリックス及びフィブリル構造、又はその他繊維製造の当業者に公知の方法で使用することができる。典型的な共織り構造としては、ガラス繊維−炭素繊維、炭素繊維−芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、及び芳香族ポリイミド繊維−ガラス繊維がある。繊維状充填材は、例えば、ロービング、0〜90度織物のような織った繊維状強化材、連続ストランドマット、チョップトストランドマット、ティッシュー、紙及びフェルトのような不織繊維状強化材、並びに三次元に織った強化材、プリフォーム及びブレイド(紐)の形態で供給され得る。
【0066】
1つの実施形態において、強化用充填材はタルクからなる。タルクは3マイクロメートルの平均粒径を有し得る。
【0067】
強化用充填材は、組成物の一部であるとき、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、ホスフィネート、強化用充填材、任意の耐衝撃性改良剤、及び任意の導電性添加剤の総重量に対して5〜30重量パーセントの量で存在する。この範囲内で、強化用充填材は、10重量パーセント以上、又はより特定的には15重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、強化用充填材は、25重量パーセント以下、又はより特定的には20重量パーセント以下の量で存在し得る。
【0068】
ホスフィネートは次式II、III、又はIVの1種以上のホスフィネートからなり得る。
【0069】
【化2】

式中、RとRは独立してC〜Cアルキル、フェニル、又はアリールであり、Rは独立してC〜C10アルキレン、C〜C10アリーレン、C〜C10アルキルアリーレン、又はC〜C10アリールアルキレンであり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又は以上の1種以上を含む組合せであり、dは2又は3であり、fは1又は3であり、xは1又は2であり、各RとRは独立して水素基又は式−CR=CHRのビニル基であり、RはRは独立して水素、カルボキシル、カルボン酸誘導体、C〜C10アルキル、フェニル、ベンジル、又はC〜Cアルキルで置換された芳香族であり、Kは独立して水素又は原子価rの1/r金属であり、u、すなわちモノマー単位の平均数は1〜20の値を有し得る。
【0070】
とRの実例としては、限定されることはないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、及びフェニルがある。Rの実例としては、限定されることはないが、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert−ブチルナフチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、及びフェニルブチレンがある。
【0071】
これらのモノ−及びジホスフィネート(それぞれ式II及びIII)は、欧州特許第0699708号に教示されているように、対応するホスフィン酸を水性媒質中で金属酸化物及び/又は金属水酸化物と反応させることによって製造することができる。
【0072】
ポリマー性ホスフィネート(式IV)を製造するには、次亜リン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を次式(V)のアセチレンと反応させることができる。
【0073】
【化3】

得られるポリマー性ホスフィン酸又はポリマー性ホスフィン酸塩を次に、米国特許出願公開第2003/0216533号に教示されているように、周期律表の第IA、IIA、IIIA、IVA、VA、IIB、IVB、VIIB、VIIIB族の金属化合物と反応させる。
【0074】
1つの実施形態において、RとRはエチルである。
【0075】
1つの実施形態において、ホスフィネートは微粒子形態である。ホスフィネート粒子は、40マイクロメートル以下のメジアン粒径(D50)、又はより特定的には30マイクロメートル以下のD50、又はさらにより特定的には25マイクロメートル以下のD50を有し得る。また、ホスフィネートは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリアミドのようなポリマー、及び/又は耐衝撃性改良剤と組み合わせてマスターバッチを形成することもできる。ホスフィネートマスターバッチは、熱可塑性組成物中に存在するより多い量のホスフィネートを含む。組成物の他の成分にホスフィネートを添加するのにマスターバッチを使用すると、ホスフィネートの添加を助け分配を改良することができる。
【0076】
本組成物は、UL94に従って厚さ2.0ミリメートルでV−1以上の難燃性を達成するのに充分な量のホスフィネートを含む。1つの実施形態において、組成物は、UL94に従って厚さ2.0ミリメートルでV−0の難燃性を達成するのに充分な量のホスフィネートを含む。例えば、本組成物は、5〜25重量パーセントの量でホスフィネートを含むことができる。この範囲内で、ホスフィネートは、7重量パーセント以上の量で、又はより特定的には8重量パーセント以上の量で、又はさらにより特定的には9重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、ホスフィネートは、22重量パーセント以下、又はより特定的には17重量パーセント以下、又はさらにより特定的には15重量パーセント以下の量で存在し得る。重量パーセントは熱可塑性組成物の総重量を基準にしている。
【0077】
1つの実施形態において、強化組成物は、UL94に従って1.5ミリメートルの厚さでV−1以上の難燃性を達成するのに充分な量のホスフィネートを含む。1つの実施形態において、強化組成物は、UL94に従って1.5ミリメートルの厚さでV−0の難燃性を達成するのに充分な量のホスフィネートを含む。例えば、強化組成物は、5〜25重量パーセントの量でホスフィネートを含むことができる。この範囲内で、ホスフィネートは、7重量パーセント以上の量で、又はより特定的には8重量パーセント以上の量で、又はさらにより特定的には9重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、ホスフィネートは、22重量パーセント以下、又はより特定的には17重量パーセント以下、又はさらにより特定的には15重量パーセント以下の量で存在し得る。重量パーセントは熱可塑性組成物の総重量を基準にしている。
【0078】
本組成物は、場合により、ケイ素の酸素化合物、マグネシウム化合物、周期律表の第2主族の金属の金属炭酸塩、赤リン、亜鉛化合物、アルミニウム化合物又は以上の1種以上を含む組成物のような無機化合物を含んでいてもよい。ケイ素の酸素化合物はオルトケイ酸の塩若しくはエステル及びそれらの縮合生成物、ケイ酸塩、ゼオライト、シリカ、ガラス粉末、ガラス−セラミック粉末、セラミック粉末、又は以上のケイ素の酸素化合物を1種以上含む組合せであることができる。マグネシウム化合物は水酸化マグネシウム、ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム若しくは炭酸マグネシウムカルシウム又は以上のマグネシウム化合物を1種以上を含む組合せであることができる。赤リンは、元素状赤リン、又は、リンの表面がシリコーン油、パラフィン油又はフタル酸若しくはアジピン酸のエステルのような低分子量液体物質、又はポリマー性若しくはオリゴマー性化合物、例えばフェノール樹脂若しくはアミノプラスチック又はその他ポリウレタンで被覆されている調製品であることができる。亜鉛化合物は酸化亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛又は以上の亜鉛化合物を1種以上含む組成物であることができる。アルミニウム化合物は水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、又はこれらの組合せであることができる。
【0079】
1つの実施形態において、無機化合物はホウ酸亜鉛からなる。
【0080】
本組成物は、場合により、窒素化合物又は窒素化合物の組合せを含んでいてもよい。代表的な窒素化合物としては、次式(VI)〜(XI)を有するものがある。
【0081】
【化4】

式中、R〜R11は独立して水素、C〜C−アルキル、非置換であるか又はヒドロキシル官能性若しくはC〜C−ヒドロキシアルキル官能性で置換されたC〜C16−シクロアルキル、非置換であるか又はヒドロキシル官能性若しくはC〜C−ヒドロキシアルキル官能性で置換されたC〜C16−アルキルシクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アシル、C〜C−アシルオキシ、C〜C12−アリール、C〜C12−アリールアルキル、−OR20、−N(R20)R12、N−脂環式、N−芳香族系であり、
20は水素、C〜C−アルキル、非置換であるか又はヒドロキシル官能性若しくはC〜C−ヒドロキシアルキル官能性で置換されたC〜C16−シクロアルキル、非置換であるか又はヒドロキシル官能性若しくはC〜C−ヒドロキシアルキル官能性で置換されたC〜C16−アルキルシクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アシル、C〜C−アシルオキシ、C〜C12−アリール、又はC〜C12−アリールアルキルであり、
12〜R16はR20と同じ基又は−O−R20であり、
gとhは互いに独立して1、2、3又は4であり、
Gはトリアジン化合物(VI)と付加物を形成することができる酸の残基である。この窒素化合物はまた、イソシアヌル酸トリス(ヒドロキシエチル)と芳香族ポリカルボン酸のエステル、式(NH3−yPO若しくは(NHPO[式中のyは1〜3であり、zは1〜10000である]の窒素含有ホスフェート、又は以上の窒素化合物を1種以上含む組合せであってもよい。
【0082】
代表的な窒素化合物としては、メラミンポリホスフェート、メレムホスフェート、メラムホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミン、メラミンシアヌレート、以上の1種以上を含む組合せ、などがある。
【0083】
本組成物は、溶融混合、又はドライブレンドと溶融混合の組合せによって製造することができる。溶融混合は、単軸式若しくは二軸式押出機、又は成分に剪断力をかけることができる類似の混合装置で実施することができる。
【0084】
全部の成分を最初に加工処理系に加えることができる。幾つかの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)を相溶化剤と予めコンパウンディングしてもよい。また、耐衝撃性改良剤、ホスフィネート、任意の合成無機化合物、任意の窒素化合物、及びポリアミドの一部のような他の成分を相溶化剤及びポリ(アリーレンエーテル)と予めコンパウンディングしてもよい。1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)を相溶化剤と予めコンパウンディングして官能化ポリ(アリーレンエーテル)を形成する。次に、この官能化ポリ(アリーレンエーテル)を他の成分とコンパウンディングする。別の実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤、耐衝撃性改良剤、ホスフィネート、任意の合成無機化合物、及び任意の窒素化合物をコンパウンディングして第1の材料を形成し、その後この第1の材料とポリアミドをコンパウンディングする。ホスフィネート、任意の合成無機化合物及び任意の窒素化合物はマスターバッチとして加えてもよい。
【0085】
押出機を使用する場合、ポリアミドの全部又は一部を下流の供給口を介して供給してもよい。別々の押出機を用いて加工処理してもよいが、その長さに沿って様々なの成分の添加を受け入れる複数の供給口を有する単一の押出機での製造によりプロセスが単純化される。押出機内の1以上のベント口を介してメルトを真空に引くことによって、組成物中の揮発性の不純物を除去すると有利なことが多い。
【0086】
導電性充填材は、それだけで、他の成分と共に(場合により、ドライブレンドとして)、又はマスターバッチの一部として、加えることができる。1つの実施形態において、導電性充填材は、ポリアミドを含むマスターバッチの一部であることができる。導電性充填材は、ポリ(アリーレンエーテル)と共に、ポリアミド(2つの部分を使用する場合の第2の部分)と共に、又はポリアミド(2つの部分を使用する場合の第2の部分)の添加後に、加えてもよい。
【0087】
1つの実施形態においては、ホスフィネートを熱可塑性樹脂と組み合わせて難燃性マスターバッチを形成する。このマスターバッチを使用して組成物を形成する。1つの実施形態において、このマスターバッチを形成するのに使用する熱可塑性樹脂はポリアミド又はポリアミドと混和性の樹脂である。この樹脂は、ホスフィネートと共にブレンドするのに充分な低い粘度を有している。また、マスターバッチは、任意の無機化合物、任意の窒素化合物、又は任意の無機化合物と任意の窒素化合物の組合せを含んでいてもよい。マスターバッチは、ホスフィネートと熱可塑性樹脂の合わせた重量に対して20〜80重量パーセントのホスフィネートと20〜80重量パーセントの熱可塑性樹脂とを含み得る。この範囲内で、ホスフィネートは、マスターバッチ中に、25重量パーセント以上、又はより特定的には30重量パーセント以上の量で存在し得る。また、この範囲内で、ホスフィネートは、マスターバッチ中に、75重量パーセント以下、又はより特定的には70重量パーセント以下の量で存在し得る。
【0088】
1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)とマレイン酸無水物のような相溶化剤を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、微粒子形態で単離する。次に、微粒子状の第1の溶融混合物を含む第2の混合物及び場合によりポリアミドの一部分を溶融混合して第2の溶融混合物を形成し、これをさらにポリアミド、難燃性マスターバッチ、及び導電性添加剤と溶融混合する。任意の無機化合物及び任意の窒素化合物は、いずれかの点で独立に若しくは一緒に加えてもよいし、又は難燃性マスターバッチの一部であってもよい。耐衝撃性改良剤は、第2の溶融混合物の一部であってもよいし、又は第2の溶融混合物の形成後に加えてもよい。組成物が2種の耐衝撃性改良剤を含む場合、それらは一緒に又は別々に加えることができる。
【0089】
1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤及び場合によりポリアミドの一部分を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、これをさらにポリアミド、難燃性マスターバッチ、及び導電性添加剤と溶融混合する。任意の無機化合物及び任意の窒素化合物は、いずれかの点で独立して若しくは一緒に加えてもよいし、又は難燃性マスターバッチの一部であってもよい。耐衝撃性改良剤は、第1の溶融混合物の一部であってもよいし、又は第1の溶融混合物の形成後に加えてもよい。組成物が2種類の耐衝撃性改良剤を含む場合、それらは一緒に又は別々に加えることができる。
【0090】
1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)と相溶化剤を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、微粒子形態で単離する。微粒子状の第1の溶融混合物、難燃性マスターバッチ、及び場合によりポリアミドの一部分を含む第2の混合物をその後溶融混合して第2の溶融混合物を形成し、これをさらにポリアミド、及び強化用充填材と溶融混合する。任意の無機化合物及び任意の窒素化合物はいずれかの点で独立して若しくは一緒に加えてもよいし、又は難燃性マスターバッチの一部であってもよい。耐衝撃性改良剤は第2の溶融混合物の一部であってもよいし、又は第2の溶融混合物の形成後に加えてもよい。組成物が2種類の耐衝撃性改良剤を含む場合、それらは一緒に又は別々に加えてることができる。
【0091】
1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)と相溶化剤を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、微粒子形態で単離する。その後、微粒子状の第1の溶融混合物、及び場合によりポリアミドの一部分を含む第2の混合物を溶融混合して第2の溶融混合物を形成し、これをさらにポリアミド、難燃性マスターバッチ、及び強化用充填材と溶融混合する。任意の無機化合物はいずれかの点で加えればよい。任意の窒素化合物もいずれかの点で加えればよい。任意の無機化合物、任意の窒素化合物、又は両者は、難燃性マスターバッチと共に加えることもできるし、又は難燃性マスターバッチの一部であることもできる。耐衝撃性改良剤は第2の溶融混合物の一部であってもよいし、又は第2の溶融混合物の形成後に加えてもよい。組成物が2種類の耐衝撃性改良剤を含む場合、それらは一緒に又は別々に加えることができる。
【0092】
1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤、難燃性マスターバッチ、及び場合によりポリアミドの一部分を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、これをさらにポリアミド及び強化用充填材と溶融混合する。任意の無機化合物はいずれかの点で加えることができ、任意の窒素化合物もいずれかの点で加えることができる。任意の無機化合物、任意の窒素化合物、又は両者は難燃性マスターバッチと共に加えることもできるし、又は難燃性マスターバッチの一部であることもできる。耐衝撃性改良剤は第1の溶融混合物の一部であってもよいし、又は第1の溶融混合物の形成後に加えてもよい。組成物が2種類の耐衝撃性改良剤を含む場合、それらは一緒に又は別々に加えることができる。
【0093】
1つの実施形態においては、ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤、及び場合によりポリアミドの一部分を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、これをさらにポリアミド、難燃性マスターバッチ、及び強化用充填材と溶融混合する。任意の無機化合物はいずれかの点で加えることができ、任意の窒素化合物もいずれかの点で加えることができる。任意の無機化合物、任意の窒素化合物、又は両者は難燃性マスターバッチと共に加えることができるし、又は難燃性マスターバッチの一部とすることもできる。耐衝撃性改良剤は第1の溶融混合物の一部であってもよいし、又は第1の溶融混合物の形成後に加えてもよい。組成物が2種類の耐衝撃性改良剤を含む場合、それらは一緒に又は別々に加えることができる。
【0094】
別々の押出機を加工処理に使用してもよいが、その長さに沿って各種成分の添加を受け入れる複数の供給口を有する単一の押出機による製造によりプロセスが単純化される。押出機内の1以上のベント口を介してメルトを真空に引くことにより組成物中の揮発性不純物を除去すると有利なことが多い。
【0095】
導電性添加剤は、それだけで、他の成分と共に(場合によりドライブレンドとして)、又はマスターバッチの一部として、加えることができる。1つの実施形態において、導電性添加剤は、ポリアミドを含むマスターバッチの一部であることができる。導電性添加剤は、ポリ(アリーレンエーテル)と共に、ポリアミド(2つの部分を使用する場合の第2の部分)と共に、又はポリアミド(2つの部分を使用する場合の第2の部分)の添加後に、加えることができる。導電性添加剤は、難燃性マスターバッチの一部であってもよい。
【0096】
1つの実施形態において、組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、導電性添加剤、相溶化剤、耐衝撃性改良剤及びホスフィネートの反応生成物からなる。本明細書で使用する場合、反応生成物とは、組成物を形成するのに使用する条件下で、例えばコンパウンディング又は高剪断混合中に、以上の成分の2種以上の反応で得られる生成物と定義される。
【0097】
1つの実施形態において、組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、強化用充填材、任意の導電性添加剤、相溶化剤、任意の耐衝撃性改良剤、及びホスフィネートの反応生成物からなる。本明細書で使用する場合、反応生成物とは、組成物を形成するのに使用する条件下で、例えば溶融混合又は高剪断混合中に、以上の成分の2種以上の反応で得られる生成物と定義される。
【0098】
組成物を溶融混合した後、通例、ストランドに形成し、これを切断してペレットを形成する。ストランドの直径とペレットの長さは、通例、微細粒子(ペレットの50%以下の容積を有する粒子)の生成を防止又は低減するように、また異形押出のようなその後の加工処理の最大効率を得るように、選択される。代表的なペレットの長さは1〜5ミリメートルであり、代表的なペレットの直径は1〜5ミリメートルである。
【0099】
ペレットは吸湿性を示し得る。一旦水を吸収すると、除去するのが困難になることがある。通例乾燥を使用するが、長期の乾燥は組成物の性能に影響を及ぼし得る。同様に、0.01〜0.1%を超える水、又はより特定的には0.02〜0.07重量%の湿気は、幾つかの用途によってはその組成物の使用を妨げることがある。組成物を周囲の湿気から保護すると有利である。1つの実施形態において、ペレットは、50〜110℃の温度に冷えたら、金属層を含まないポリプロピレン樹脂の単層からなる容器内に包装される。ここで、この容器の壁の厚さは0.25〜0.60ミリメートルである。ペレットはまた、50〜110℃に冷えたら、フォイルを裏打ちした箱及びフォイルを裏打ちした袋のようなフォイルを裏打ちした容器内に包装することもできる。
【0100】
組成物は、フィルム及びシート押出、異形押出、押出成形、圧縮成形並びにブロー成形のような低剪断熱可塑性プロセスを用いて物品に変換することができる。フィルム及びシート押出プロセスとしては、溶融鋳造、ブロンフィルム押出及びカレンダー加工を挙げることができるが、限定されることはない。共押出及び積層プロセスを使用して、複合多層フィルム又はシートを形成することができる。さらに、単一又は複数の層のコーティングを単層又は多層基材に施して、引っ掻き抵抗性、紫外光 耐性、審美的魅力、などのような追加の性質を付与することができる。コーティングは、粉体塗装、ロール掛け、吹き付け、浸漬、ブラシ塗り、又は流し塗りのような標準的な施工技術によって設けることができる。
【0101】
配向フィルムは、ブロンフィルム押出によって、又は慣用の延伸技術を用いて熱変形温度付近でキャスト若しくはカレンダーフィルムを延伸することによって製造することができる。例えば、ラジアル延伸パンタグラフを多軸同時延伸に使用することができ、x−y方向延伸パンタグラフを使用して平面x−y方向に同時又は逐次延伸することができる。また、一軸及び二軸延伸を達成するのに、逐次一軸延伸セクションを有する装置、例えば、流れ方向に延伸するための差動速度ロールのセクションと横断方向に延伸するためのテンターフレームセクションとを備えた機械を使用することもできる。
【0102】
本組成物は、第1の面と第2の面を有し、熱可塑性ポリマーを含む第1のシートと、第1の面と第2の面を有し、熱可塑性ポリマーを含む第2のシートとを含んでなる多層シートに変換することができ、この場合、第1のシートの第1の面は複数のリブの第1の面上に配置され、第2のシートの第1の面は前記複数のリブの第2の面上に配置され、前記複数のリブの第1の面は前記複数のリブの第2の面に対向している。
【0103】
上記フィルム及びシートは、さらに熱可塑的に加工処理して、限定されることはないが、熱成形、真空成形、加圧成形、射出成形及び圧縮成形を始めとする造形及び成形プロセスにより成形品にすることができる。多層成形品はまた、以下に記載するように、単層又は多層のフィルム又はシート基材上に熱可塑性樹脂を射出成形することによっても形成することができる。
1.場合により、例えばスクリーン印刷又は移送染料(transfer dye)を用いて表面に1以上の色を付けた単層又は多層の熱可塑性基材を用意する。
2.例えば、基材を三次元形状に形成しトリミングし、その基材の三次元形状に合致する表面を有する金型に基材を嵌め込むことにより、基材を金型形状に当て嵌める。
3.金型キャビティー中の基材の後ろに熱可塑性樹脂を射出して、(i)永久に結合した一体の三次元製品を製造するか、又は(ii)パターン又は審美効果を印刷された基材から射出された樹脂に移し、その印刷された基材を除き、こうして成形された樹脂に審美効果を付与する。
【0104】
また、当業者には分かるように、限定されることはないが、ヒートセット、テキスチャー化、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び蒸着を始めとする一般的な硬化及び表面改質プロセスをさらに上記物品に施して、表面外観を変化させ、また追加の官能性を物品に付与することもできる。
【0105】
従って、別の実施形態は、上記組成物から製造された物品、シート及びフィルムに関する。
【0106】
代表的な物品として、以下の物品の全部又は部品がある。家具、パーティション、容器、軌道車、地下鉄車両、バス、トロリー車、飛行機、自動車、及びRV車を始めとする車両の内装、車両の外装付属品、例えばルーフレール、電気製品、炊事用具、エレクトロニクス、分析装置、窓枠、ワイヤー導管、フローリング、幼児用家具及び用具、通信装置、電子機器及び部品の静電防止用パッケージ、ヘルスケア物品、例えば病院のベッド及び歯科医用椅子、運動用器具、モーターカバー、ディスプレイカバー、事務機器の部品及びカバー、ライトカバー、信号、エアハンドリング装置及びカバー、自動車用アンダーフード部品。
【0107】
1つの実施形態においては、本組成物を押し出して所望の形状をもつ物品を形成する。次に所望により、これらの物品に粉体塗装又は塗装することができる。かかる物品の例としては、小部屋仕切り用キャップ、家具の部品、溝のタイル(ネットワーク配線用の被覆軌道)、電線の導管などがある。
【0108】
幾つかの実施形態において、本組成物から形成された物品が、高温に曝露されたときに反りを殆ど又は全く示さないことが重要である。例えば、ある部品を形成し、最も変形を示し易い点で測定し、その後160〜190℃で3時間以上老化させることができる。老化後、その部品を同じ点でもう一度測定する。老化後の測定点の全てが老化前の同じ測定点の10%以下である場合、その部品は実質的に反りを示さない。
【実施例】
【0109】
以下の非限定実施例により、本明細書に記載した各種実施形態をさらに例示する。
【0110】
以下の実施例では、表1に示す材料を用いた。実施例で使用する重量パーセントは、断らない限り組成物の総重量を基準にして決定される。
【0111】
【表1】

実施例1〜7及び比較例1〜11
PPE、0.1重量パーセント(wt%)のヨウ化カリウム、0.05wt%のヨウ化銅、0.3wt%のIrganox 1076(Ciba−Geigyから市販)、0.6wt%のクエン酸、及びナイロン6,6を溶融混合して混合物を形成した。この混合物をさらに、ナイロン6及びナイロン6中に導電性カーボンブラックを含むマスターバッチと溶融混合した。Exolit OP 1312、SF、BP、TPP、RDP、MC又は以上の2種以上の組合せを含有する組成物においては、これらの材料を供給口でポリフェニレンエーテルに加えた。組成物を可燃性試験のために厚さ2.0ミリメートルのバーに成形した。可燃性試験は、「Tests for Flammability of Plastic Materials、UL94」と題するUnderwriter’s Laboratory Bulletin 94の手順に従って実施した。消火した各バーは二回着火した。この手順に従い、材料を10個の試料で得られた試験結果に基づいてV0、V1又はV2に分類した。最初の5本のバーの3本より多くが>30秒の燃焼時間であったときは、5本のバーで燃焼を中止した。UL94に従ったこれらの可燃性分類の各判定基準を以下に示す。
V0:その長軸が火炎に平行になるように配置した試料で、着火用火炎を除いた後の平均燃焼期間及び/又は燻る時間が10秒を超えず、垂直に配置した試料のいずれも脱脂綿を着火させる燃焼粒子のドリップを生じない。5本のバーで、第1の燃焼時間と第2の燃焼時間を含めた総燃焼時間は50秒を超えない。
V1:その長軸が火炎に平行になるように配置した試料で、着火用火炎を除いた後の平均燃焼期間及び/又は燻る時間が30秒を超えず、垂直に配置した試料のいずれも脱脂綿を着火させる燃焼粒子のドリップを生じない。5本のバーで、第1の燃焼時間と第2の燃焼時間を含めた総燃焼時間は250秒を超えない。
V2:その長軸が火炎に平行になるように配置した試料で、着火用火炎を除いた後の平均燃焼期間及び/又は燻る時間が30秒を超えず、垂直に配置した試料が綿を着火させる燃焼粒子のドリップを生じる。5本のバーで、第1の燃焼時間と第2の燃焼時間を含めた総燃焼時間は250秒を超えない。
【0112】
結果を表2に示す。消炎時間(FOT)は、各着火したバーが燃焼する時間の量の合計の平均である。UL94等級の欄の「NA」は、その試料がUL94等級のいずれのパラメーターの範囲内にも入らなかったことを意味する。
【0113】
幾つかの実施例では、比体積抵抗率(SVR)を試験した。組成物をISO引張バーに成形した。これらのバーを、この引張バーの「首部」部分に沿って距離がおよそ6.35センチメートル離れた2点にマークした後、液体窒素中におよそ5分間沈めた。バーを液体窒素から取り出してすぐにスコアマークのところで折った。その末端に導電性銀塗料を塗り、乾燥した。これらのバーの各塗装末端に手持ち式マルチメーター(抵抗にセットしたFluke 187、True RMS Multimeter)のプローブを当てて抵抗を測定した。抵抗(オーム)×バーの幅(センチメートル(cm))×バーの奥行き(cm)をバーの長さ(cm)で割って抵抗率を計算した。結果を表2に示す。比較例はCEで表し、実施例はExで表す。
【0114】
メルトボリュームレートはISO 1133に従って決定した。Vicat BはISO 306に従って決定した。
【0115】
【表2】

比較例1〜5は、導電性カーボンブラックを含有しない幾つかのブレンドの難燃性挙動を立証する。比較例1は、一般的な相溶化されたポリアミド/ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを示す。難燃性添加剤は存在しなかった。難燃性は悪く、バー当たりの平均消炎時間(FOT)は100秒より長い。比較例2〜5では、他の周知の難燃剤を類似の充填量で添加した。メラミンシアヌレートを添加した比較例2とレゾルシノールジホスフェートを添加した比較例3はいずれも、平均FOTが100秒より長かった。トリフェニルホスフェートを有する比較例4は、平均FOTが23.5秒であり、V−1性能に近づき始めた。しかし、個々の燃焼時間の幾つかは30秒より長く、従ってこの材料は等級を受けられなかった。最後に、リン酸ホウ素とシリコーン流体の組合せ(比較例5)では、平均FOTが18.8秒の試料が得られた。この試料もV−1判定基準に極めて近かったが、1つの燃焼時間が30秒より長かったので基準を満たさなかった。
【0116】
比較例6〜11は、導電性カーボンブラックを含有する幾つかのブレンドの難燃性挙動を立証する。比較例6は、難燃剤を含まない導電性の相溶化されたポリアミド/ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの例である。見て分かるように、難燃性は極めて悪く、バー当たりの平均FOTは100秒より長い。比較例7は、比較例5と同じリン酸ホウ素/シリコーン流体難燃剤系を含んでいる。バー当たりの平均FOTはここでは48.8秒であるが、導電性カーボンブラックがない場合は18.8秒であった。これは、導電性カーボンブラックを含ませると実際には、ブレンドの全体としての難燃性能が低下することを示している。同様に、比較例10は難燃剤としてTPPを使用している。このブレンドは比較例4に匹敵している。ブレンド中に導電性カーボンブラックを入れると、バー当たりの平均FOTが23.5秒から45.9秒に増大する。
【0117】
実施例1〜7は、ホスフィネートを含有するブレンドを示す。これらの実施例各々の試料は全て、1.8〜2.2部の導電性カーボンブラックを含んでいてもバー当たりの合計平均FOTが5秒未満である。すなわち、ホスフィネートを使用することにより、導電性ブレンドでV−0性能が得られる。これは、ブレンドに導電性カーボンブラックを添加するとV−0性能を示さなかった全ての比較例で使用した難燃剤とは対照的である。
【0118】
また、比較例11の比体積抵抗率(およそ24000オーム−Cm)と実施例1〜7の比体積抵抗率とを比較すると、同じレベルのカーボンブラックを有するが、ホスフィネートも含んでいる類似のブレンドが顕著に低い抵抗率を示すことが分かる。実施例1〜7では全て、抵抗率が少なくとも97%低下している。すなわち、ホスフィネートを含ませると、予想外なことに、相溶化されたポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンドの抵抗率も低下し、又は導電性も増大する。
【0119】
実施例8〜27
この実施例は、表4に示す組成物を用いて30ミリメートルの押出機で作成した。成分の添加順も表4に示す。略号U/Sは、成分を上流で供給口に又は供給口に位置するフィーダーを用いて添加したことを意味する。略号D/Sは、成分を下流で、上流で添加した成分により形成された溶融混合物に添加したことを意味する。難燃性マスターバッチ(FR/N6)は、OP1230とナイロンを合わせた重量を基準にして40重量パーセントのOP 1230と60重量パーセントのナイロン6#1からなっていた。略号CCBMBは、導電性カーボンブラックがマスターバッチの一部であったことを意味する。このCCBMBは、カーボンブラックとナイロンを合わせた重量を基準にして10重量パーセントのカーボンブラックと90重量パーセントのナイロン6#1からなっていた。組成物は、0.3重量パーセント(wt%)のヨウ化カリウム、0.05wt%のヨウ化銅、0.3wt%のIrganox 1076(Ciba−Geigyから市販)、0.8wt%のクエン酸を含有しており、これらは全部上流で添加した。各実施例で全成分の総重量は100.25である。
【0120】
可燃性の結果は「第一回合格の確率」又はp(FTP)として示す。各々の組成物から20本のバーを成形し、UL 94の方法に従って燃焼し、消炎時間の平均と標準偏差を用いて、5本のバーの標準試験で試料が合格する確率を計算した。第一回で合格する確率90%(すなわち、p(FTP)が0.9)が許容できる性能と考えられる。0.9よりかなり低い値は許容できないと考えられる。p(FTP)は、ドリップにより不合格とされない試料についてのみ計算する。可燃性の結果は厚さ2.0ミリメートルのバーで得られた。
【0121】
物理的性質の試験は表3に挙げた方法を用いて行い、やはり表3に示した単位を用いて表す。比体積抵抗率(SVR)は上記のようにして決定し、オーム−センチメートル(オーム−Cm)で表す。
【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

実施例8〜12で、ホスフィネートはマスターバッチの一部ではなく、供給口で添加した。良好な難燃性挙動(2ミリメートルでV0がp(FTP)>0.9)は、14.0wt%のホスフィネートを用いた場合のみ達成することができた。この組成物はノッチ付き及びノッチなしアイゾット試験の両方で衝撃強さを大幅に損失した。実施例13〜17では、ホスフィネートはマスターバッチの一部ではなく、下流で添加した。良好な難燃性は14.0wt%のホスフィネートでも達成できなかった。対照的に、実施例18〜22は、実施例12より低い充填量のホスフィネートで強固な難燃性を示し、またより高いノッチ付き及びノッチなしアイゾット値を示している。実施例18〜22でホスフィネートはマスターバッチの一部として下流で添加した。実施例23〜27は、上流で添加したマスターバッチが、マスターバッチの一部ではなく上流で添加したホスフィネートの場合と変わりない結果を生じることを示している。
【0124】
実施例28〜31
これらの実施例は、表5に示す組成物を用いて30ミリメートルの押出機で作成した。成分の添加の順も表5に示す。略号U/Sは、成分を上流で供給口に、又は供給口に位置するフィーダーを用いて添加したことを意味する。略号D/Sは、成分を下流で、上流で添加した成分により形成された溶融混合物に添加したことを意味する。MWNTはマスターバッチの一部として添加した(MWNT MB)。MWNTマスターバッチは、MWNTとナイロンを合わせた重量を基準にして20重量パーセントの多層ナノチューブと80重量パーセントのナイロン6,6とからなっていた。これらの組成物は、0.3重量パーセント(wt%)のヨウ化カリウム、0.05wt%のヨウ化銅、0.3wt%のIrganox 1076(Ciba−Geigyから市販)、0.8wt%のクエン酸を含有しており、これらは全部上流で添加した。物理的性質の試験は、表3に掲げる方法を用いて、同様に表3に挙げる単位を用いて行った。比体積抵抗率(SVR)は上記のように決定し、オーム−センチメートル(オーム−Cm)で示す。
【0125】
【表5】

実施例28〜31は、導電性添加剤の選択が組成物の可燃性及び物理的性質に及ぼす影響を示している。実施例28〜31は、組成物の総重量に対して1.2重量パーセントのMWNTを用い、1.7〜2.2重量パーセントの導電性カーボンブラックを使用する組成物に匹敵する導電性を達成している。導電性添加剤の量の低減は、組成物の難燃性挙動に対する多大な効果であるように思われる。ホスフィネートを上流で添加することにより優れた難燃性を達成することができる。また、衝撃強さのような物理的性質が改良される。
【0126】
実施例32〜44
これらは実施例は、表6に示す組成物を用いて30ミリメートルの押出機で作成された。成分の添加の順も表6に示す。略号U/Sは、成分を上流で供給口に、又は供給口に位置するフィーダーを用いて添加したことを意味する。略号D/Sは、成分を下流で、上流に添加した成分により形成された溶融混合物に添加したことを意味する。この難燃性マスターバッチ(FR−MB)は、OP1230とナイロンを合わせた重量を基準にして50重量パーセントのOP 1230と50重量パーセントのナイロン6,6とからなっていた。タルクはマスターバッチ(タルクMB)の一部として添加したが、これはタルクとナイロンを合わせた重量を基準にして45重量パーセントのタルク及び11.6重量パーセントのナイロン6#1、並びに43.4重量パーセントのナイロン6/6#2からなっていた。これらの組成物は、0.15重量パーセント(wt%)のヨウ化カリウム、0.01wt%のヨウ化銅、0.3wt%のIrganox 1076(Ciba−Geigyから市販)、0.7wt%のクエン酸を含有しており、これらは全て上流で添加した。表示した量は組成物の総重量に対するものである。
【0127】
可燃性の結果は「第一回合格の確率」又はp(FTP)として示す。各々の組成物の20本のバーを成形し、UL 94の方法に従って燃焼し、消炎時間の平均と標準偏差を使用して、5本のバーの標準試験でその試料が合格する確率を計算した。第一回で合格する確率90%(すなわち、p(FTP)が0.9)は許容できる性能と考えられる。0.9よりかなり低い値は許容できないと考えられる。p(FTP)は、ドリップにより不合格とされない試料についてのみ計算する。厚さ1.5ミリメートルを有するバーで可燃性の結果を得た。p(FTP)は上記V1判定基準に合格する確率として計算される。
【0128】
物理的性質の試験は表7に掲げる方法を用い、やはり表7に示す単位により行った。
【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

実施例32〜44は全て17重量パーセントのタルクを含有していた。実施例32〜34では、ホスフィネートを(マスターバッチではなく)直接添加により添加した。実施例32ではホスフィネートをPPEと共に添加し、実施例33ではホスフィネートを上流でナイロン6,6#2と共に添加し、実施例34ではホスフィネートを下流でナイロン6,6#2と共に添加した。実施例32〜34は全て1.5mmでUL 94のV1の第一回合格の確率が0.9未満であった。35〜36では、ホスフィネートを全体をマスターバッチに入れて添加するか、又はマスターバッチ添加と直接添加の組合せを使用した。実施例35と36のどちらも、0.90より大きいp(FTP)値を有する優れた難燃性能を示した。
【0131】
実施例37と実施例38はどちらも、耐衝撃性改良剤と、耐衝撃性改良剤を含まない組成物と同等な多めの量のホスフィネートとを含有する。ここでも、難燃性マスターバッチを用いた実施例37は、ホスフィネートの直接添加を用いて組成物を調製した実施例38よりかなり良好な難燃性を示す。
【0132】
組成物の総重量を基準にして20重量パーセントのタルクを含有する実施例39〜41及び実施例42〜44は同様なことを立証している。すなわち、ホスフィネートの直接添加では難燃性が得られないのに対して、難燃性マスターバッチを使用すると得られる。また、実施例42〜44は難燃性マスターバッチの上流添加が下流添加又はマスターバッチ添加と直接供給の組合せと同様に有効であり得ることを立証している。
【0133】
代表的な実施形態を参照して本発明を説明して来たが、当業者には理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、また本発明の要素を等価物で置き換えることができる。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正が可能である。従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ本発明は特許請求の範囲に入るあらゆる実施形態を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリアミド、
導電性添加剤、
耐衝撃性改良剤、及び
ホスフィネート
を含んでなる組成物。
【請求項2】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリアミド、
強化用充填材、及び
ホスフィネート
を含んでなる組成物。
【請求項3】
ポリ(アリーレンエーテル)及び相溶化剤を含む第1の混合物を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、
第1の溶融混合物及びポリアミド、導電性添加剤並びに難燃性マスターバッチを含む第2の混合物を溶融混合する
ことを含んでなり、難燃性マスターバッチがホスフィネート及び熱可塑性樹脂を含んでなる、組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤、ポリアミド、強化用充填材、及び難燃性マスターバッチを溶融混合することを含んでなり、難燃性マスターバッチがホスフィネート及び熱可塑性樹脂を含んでなる、組成物の製造方法。
【請求項5】
組成物がさらに耐衝撃性改良剤を含む、請求項3又は請求項4記載の方法。
【請求項6】
難燃性マスターバッチがさらに、無機化合物、窒素化合物、又は無機化合物及び窒素化合物を含む、請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
組成物が、300℃において荷重5キログラム(kg)で実施されるメルトボリュームレート試験ISO 1133により決定して25立方センチメートル/10min以下のメルトボリュームレートを有する、請求項1又は請求項2記載の組成物、又は請求項3乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
組成物が、ISO 306により決定して170℃以上のVicat B120を有する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【請求項9】
ポリアミドの総重量を基準にして50重量パーセント以上のポリアミドが、ポリ(アリーレンエーテル)のガラス転移温度の35%以内の溶融温度を有する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【請求項10】
ホスフィネートが次式を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の組成物又は方法。
【化1】

式中、R及びRは独立してC〜Cアルキル、フェニル、又はアリールであり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又は以上の1種以上を含む組合せであり、dは2又は3である。
【請求項11】
及びRがエチルである、請求項10記載の組成物又は方法。
【請求項12】
請求項3乃至請求項11のいずれか1項記載の方法で製造された組成物。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の組成物を含んでなる物品。

【公表番号】特表2008−537556(P2008−537556A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543248(P2007−543248)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/041724
【国際公開番号】WO2006/055732
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】