説明

難燃性ミネラルウールをベースにした絶縁製品、製造方法および好適なサイズ剤組成物

本発明は、ミネラルウールと有機バインダとからなる難燃性の熱および/または音響絶縁製品であって、難燃剤としてカルボン酸金属塩、特にアルミニウム、亜鉛およびマグネシウムからなる群より選択される金属のカルボン酸塩を含有する製品に関する。また、本発明は、前記難燃性の絶縁製品の製造方法とその製造での使用に好適な結合組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ミネラルウール、特にグラスウールまたはロックウールと、有機バインダとをベースにした難燃性の熱および/または音響絶縁製品の分野に関する。より正確には、本発明は、難燃剤としてカルボン酸金属塩を含有する絶縁製品に関する。
【0002】
また、本発明は、前記絶縁製品の製造方法およびその製造に好適なサイズ剤組成物にも関する。
【0003】
ガラス繊維をベースにした製品は、特に、これら繊維がミネラルウールの形態にある熱および/または音響絶縁製品の製造のために広く使用されている。
【0004】
絶縁製品において、繊維は、熱硬化性樹脂、殆どの場合レゾール族に属するフェノール樹脂によって結合されており、これは熱的に容易に架橋でき、水溶性であり、鉱物繊維に対する強い親和性を有しかつ比較的安価である。この樹脂は、絶縁製品に必要な性質、たとえば寸法安定性、引張強度、圧縮永久歪み(圧縮後の厚さの回復)および均一な色を与える。
【0005】
絶縁製品が高温に曝される(家庭用設備、加熱パイプなど)かまたは厳しい規制(船、公共の建築物など)を満たさなければならない幾つかの用途では、優れた耐火性をさらに有することが必須である。言い換えると、繊維を結合させる架橋樹脂が高温に曝されて燃焼するかまたは直接炎に曝された場合に、延焼を防ぐかまたはそれを少なくとも遅らせることが必要であることが分かっている。
【0006】
鉱物繊維を含有する製品の耐火性を向上させるための解決策が提案されており、この策は、難燃剤、たとえばリン化合物(US 4159139を参照のこと)、ハロゲン化化合物、特に塩素化もしくは臭素化化合物、窒素化合物(US 5840413を参照のこと)または金属水酸化物(US 6368991およびUS 2007/0105467を参照のこと)を添加することにある。
【0007】
しかしながら、これらの解決策は完全に満足いくものではない:
−リン含有化合物は高価である;
−ハロゲン化化合物は、それらが引き起こしうる作業者に対するリスク(毒性のハロゲン化ガスの放出を伴う部分的な分解)および製造ラインに対するリスク(腐食)のせいで望ましくない。加えて、ハロゲン化化合物は、それらが直接炎に曝された場合、毒性ガスを含有する大量の煙を発生させる;および
−金属水酸化物は処理するのが難しい。それらの水への難溶性のせいで、金属水酸化物は、水性分散液の形態で、およびさらには難燃性効果を得るために大量に用いられる。ミネラルウールに一般にスプレーされる水性分散液の塗布に関連する欠点は、スプレーノズルが詰まるおそれと、最終製品における金属水酸化物粒子の不均一な分布とである。
【0008】
本発明の目的は、難燃性の熱および/または音響絶縁製品であって、前記製品中に均一に分布した水溶性難燃剤を含有する製品を提供することにある。
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、難燃剤として、カルボン酸金属塩、特にアルミニウム、亜鉛およびマグネシウムから選択される金属の、好ましくはマグネシウムのカルボン酸塩を使用する。
【0010】
本発明の第1の実施形態によると、カルボン酸金属塩は、非ポリマー有機酸の金属塩、たとえばモノカルボン酸の金属塩、たとえば酢酸塩、ジカルボン酸の金属塩、たとえばコハク酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩もしくはフタル酸塩、またはトリカルボン酸の金属塩、たとえばクエン酸塩もしくはトリメリト酸塩、またはテトラカルボン酸、たとえば1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートである。
【0011】
ポリカルボン酸の金属塩が好ましい。
【0012】
有利には、カルボン酸金属塩は、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の環状脂肪酸、環状酸または芳香族酸の金属塩である。
【0013】
有利には、カルボン酸金属塩は、酢酸アルミニウム、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、アジピン酸アルミニウム、アジピン酸マグネシウム、シトラコン酸マグネシウム、フタル酸アルミニウム、フタル酸マグネシウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸亜鉛、クエン酸マグネシウム、トリメリト酸マグネシウム、またはマグネシウム1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートである。フタル酸マグネシウムおよびクエン酸マグネシウムが最も特に好ましい。
【0014】
本発明の第2の実施形態によると、カルボン酸金属塩は、ポリマー有機酸、たとえばアクリル酸(メタクリル酸)ホモポリマーのまたはコポリマーの金属塩である。好ましくは、金属塩は、20ないし30のアクリル酸(メタクリル酸)残基を含有するポリマーの塩である。
【0015】
本発明によるカルボン酸金属塩は、カルボン酸と対応する金属水酸化物、すなわち水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化亜鉛との間の塩化反応によって得ることができる。
【0016】
上に示したように、カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸もしくはテトラカルボン酸の非ポリマー有機酸か、またはアクリル酸(メタクリル酸)ポリマーである。有利には、非ポリマーのカルボン酸は、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の環状脂肪酸、環状酸または芳香族酸であり、ポリマーカルボン酸はポリアクリル酸である。
【0017】
特に有利には、カルボン酸はフタル酸、クエン酸またはアクリル酸/ヒドロキシエチルアクリレートコポリマーであり、金属水酸化物は水酸化マグネシウムである。
【0018】
塩化反応は、水に溶解させたカルボン酸に金属水酸化物を室温、約25ないし30℃かまたはそれより高い温度(しかしながら、100℃を超えない)で単純に混合することによって行われる。
【0019】
有機酸および金属水酸化物は、化学量論条件下か、またはカルボン酸が僅かに過剰な状態で反応させる。用語「僅かに過剰な」は、適度な酸pH、たとえば約6(7まででありうる)をもたらすカルボン酸の量を意味すると理解される。このようなpHは、絶縁製品の製造ラインにおける腐食と、後段で説明するように難燃剤がサイズ剤組成物に導入されたときの樹脂の沈殿とのおそれを防止する。
【0020】
また、非ポリマーカルボン酸金属塩は、カルボン酸のアンモニウム塩を対応する金属硫酸塩と反応させることによって、好ましくはフタル酸アンモニウムまたはクエン酸アンモニウムを硫酸マグネシウムと反応させることによっても得ることができる。
【0021】
この反応は、上述の化合物を約25ないし30℃の水中で、好ましくは化学量論条件下で単純に混合することによって行われる。適切な場合には、反応生成物を精製する追加工程を行って、生じる硫酸アンモニウムを除去する。
【0022】
このようにして得られる難燃溶液は、50重量%まで、好ましくは30重量%まで、有利には10ないし20重量%までの固形分を含有していてもよい。
【0023】
難燃剤の量は、絶縁製品の総重量の0.05ないし5%、好ましくは多くとも2%、有利には0.1ないし2%を占める。
【0024】
最終絶縁製品中でミネラルウールを結合させる有機バインダは、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)樹脂、たとえばアクリル酸(メタクリル酸)ホモポリマーもしくはアクリル酸(メタクリル酸)/ヒドロキシエチルアクリラートコポリマーを含有するもの、ポリウレタン樹脂またはアルキド樹脂の熱架橋によって得られる生成物であるか、または少なくとも1種の糖類と少なくとも1種の蛋白質とを含有する混合物の熱反応によって得られる生成物である。好ましくは、樹脂はフェノール樹脂またはポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)樹脂である。
【0025】
好ましくは、樹脂はフェノール樹脂であり、有利には、フェノール化合物、好ましくはフェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの塩基性触媒の存在下での、1より大きいホルムアルデヒド/フェノールのモル比での縮合によって得られるレゾールである。レゾールは尿素との反応によって予め改質されていてもよい。
【0026】
樹脂の量は、絶縁製品の総重量に対して、1ないし10固形分重量%、好ましくは多くとも5固形分重量%を占める。
【0027】
遊離ホルムアルデヒド含有量が低い(0.05%未満)のレゾールとフタル酸マグネシウムとを共に有する絶縁製品は、難燃性の観点で特に有利であることが分かる。
【0028】
ミネラルウールは、ガラス繊維から構成されていてもよいし、またはロックウールから構成されていてもよい。
【0029】
ガラス繊維は、如何なる種類のガラスから構成されていてもよく、特に、WO 00/17117に記載されたそれのような高いアルミナ含有量を有するガラスから構成されていてもよく、これは、以下の成分を、重量百分率で表した以下の割合で含む:
SiO2 39−55%、好ましくは40−52%
Al23 16−27%、好ましくは16−25%
CaO 3−35%、好ましくは10−25%
MgO 0−15%、好ましくは0−10%
Na2O 0−15%、好ましくは6−12%
2O 0−15%、好ましくは3−12%
2O(Na2O+K2O) 10−17%、好ましくは12−17%
25 0−3%、好ましくは0−2%
Fe23 0−15%、
23 0−8%、好ましくは0−4%
TiO2 0−3%、
2O含有量が13.0%以下である場合には、MgO含有量は0ないし5%の間にある。
【0030】
有利には、ガラスは、WO 2005/033022に記載された組成を有し、これは以下の成分を以下の割合(wt%)で含む:
SiO2 39−44%、好ましくは40−43%
Al23 16−27%、好ましくは16−26%
CaO 6−20%、好ましくは8−18%
MgO 1−5%、好ましくは1−4.9%
Na2O 0−15%、好ましくは2−12%
2O 0−15%、好ましくは2−12%
2O(Na2O+K2O) 10−14.7%、好ましくは10−13.5%
25 0−3%、特に0−2%
Fe23 1.5−15%、特に3.2−8%
23 0−2%、好ましくは0−1%
TiO2 0−2%、好ましくは0.4−1%。
【0031】
また、本発明の主題は、上に説明した難燃性絶縁製品の製造方法でもある。
【0032】
ミネラルウールをベースにした絶縁製品の製造は周知である:それはウール自体を製造する工程と、ミネラルウールに糊付けをする工程と、ミネラルウールを結合させる目的の処理工程とを含む。
【0033】
ミネラルウールを製造する第1の工程は、種々のプロセス、たとえば内部または外部遠心分離を用いる既知の繊維化技術を使用して行うことができる。
【0034】
内部遠心分離は溶融した鉱物(ガラスまたは岩石)材料を複数の小さな穴を有するスピナーに導入することにあり、この材料は、遠心力の作用を受けてこのスピナーの周壁に向けて押し付けられて、そこから単繊維の形態で出て行く。スピナーを出て行くと、短繊維は引き伸ばされ、高温高速のガス流によって受け取り部材へと伴出され、前記部材において繊維のウェブ(すなわちミネラルウール)を形成する。
【0035】
外部遠心分離は、溶融材料をローターと呼ばれる回転部材の外周表面上に流すことにあり、ここから溶融材料が遠心力の作用を受けて射出される。また、ガス流によって引き伸ばす手段および受け取り部材上で収集する手段も提供される。
【0036】
第2の工程では、サイズ剤組成物を、スピナーの出口から受け取り部材までに至るパスに沿って繊維上にスプレーし、前記サイズ剤組成物は、繊維を1つにしてミネラルウールに粘着力を提供することを目的として熱硬化性樹脂を含有している。
【0037】
第3の工程では、集められてウェブにされサイズ剤でコーティングされた繊維に、通常100℃を超える温度での熱処理を施し、樹脂を重縮合させてそれにより不溶融性でありかつ水に難溶なバインダによって繊維を結合させる。
【0038】
熱処理デバイスを出て行くと、絶縁製品は、ロールまたはパネルの形態で集められ、所望の形状に切り出され、包装される。
【0039】
本発明による方法は、カルボン酸金属塩をミネラルウールに塗布することにある工程をさらに含む。
【0040】
好ましい実施方法によると、カルボン酸金属塩をサイズ剤組成物に組み込み、それによりそれを1回の工程で塗布できるようにする。カルボン酸金属塩は、サイズ剤組成物の即時の塗布のために即席で添加してもよいし、またはサイズ剤組成物で使用する前に可変量の期間にわたって約10ないし20℃の温度で保存される樹脂(またはプレミックス)中に添加してもよい。
【0041】
もう1つの実施方法によると、カルボン酸金属塩を、サイズ剤組成物とは別に塗布する。
【0042】
このような塗布は、水中に溶解させたカルボン酸金属塩を使用する種々の方法で行うことができる。
【0043】
第1の好ましい変形によると、カルボン酸金属塩水溶液を、鉱物繊維を形成した直後に、好ましくはサイズ剤組成物を塗布する前に鉱物繊維に塗布する。
【0044】
第2のおよび同様に好ましい変形によると、カルボン酸金属塩水溶液を、ミネラルウールが樹脂を硬化させるためのデバイスに入る前にそれに塗布し、それにより、前記塩の溶液中およびサイズ剤組成物中の両方に含有されている水を除去することを可能にする。
【0045】
第3の変形によると、カルボン酸金属塩水溶液を、絶縁製品に、好ましくはそれを集める前に塗布する。この場合、追加の乾燥デバイスを、カルボン酸金属塩を塗布するためのデバイスの下流でありかつ収集部材の上流であるところに設置することが好ましい。
【0046】
カルボン酸金属塩組成物は一般にスプレーによって塗布される。前記塩が水溶性であるという事実は、それを首尾よく塗布することを助ける:スプレーのオリフィスを詰まらせることがある固形分の堆積はこのようにして防がれ、前記薬剤はミネラルウール上に均一に分配される。さらに、溶液中のカルボン酸金属塩の量は大きくてもよく、それにより水の量が制限され、結果として排水を処理するコストが削減される。
【0047】
実施方法が何であれ、カルボン酸金属塩は、樹脂と任意に尿素またはグリセロールとの100(固形分)重量部あたり、5ないし50重量部、好ましくは多くとも30重量部、有利には少なくとも10重量部およびさらに良いのは8ないし20重量部の(固形分の)量で使用する。
【0048】
本発明のさらなる主題は、上に説明した難燃性絶縁製品の製造に好適なサイズ剤組成物である。
【0049】
ミネラルウール、特にグラスウールまたはロックウールをベースにした絶縁製品のためのサイズ剤組成物は:
−少なくとも1種のカルボン酸金属塩、好ましくは、アルミニウム、亜鉛およびマグネシウムからなる群より選択される金属のカルボン酸塩;
−少なくとも1種の熱硬化性樹脂、好ましくはフェノール樹脂、特にレゾール族に属するそれ、またはポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)樹脂;および
−任意に、尿素またはグリセロール
を含む。
【0050】
好ましくは、サイズ剤組成物は、熱硬化性樹脂と、場合によっては、樹脂がレゾールである場合には尿素、または樹脂がポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)樹脂である場合にはグリセロールとの100(固形分)重量部あたり、8ないし20重量部のカルボン酸金属塩を含有する。
【0051】
本発明によるサイズ剤組成物は、以下の通常の添加剤を、熱硬化性樹脂と尿素またはグリセロールとの100重量部に基づいて計算した以下の割合でさらに含む:
−0ないし2部のシラン、特にアミノシラン;
−0ないし20部、好ましくは4ないし15部のオイル;
−0ないし10部、好ましくは7部未満の重縮合触媒、たとえば硫酸アンモニウム;
−0ないし20部、好ましくは12部未満のアンモニア水溶液(20wt%溶液);
−0ないし50部の有機リン酸塩;および
−0ないし20部のシリコーン。
【0052】
添加剤の役割は知られているが、ここで手短に述べる:シランは、繊維とバインダとの間を結合させるカップリング剤であり、アンチエージング剤として働く;オイルは疎水性の防塵剤である;硫酸アンモニウムは、(高温のホットオーブンにおいて)サイズ剤組成物を繊維上にスプレーしたあとの重縮合触媒として役立つ;アンモニア水溶液は低温で重縮合抑制剤として働く;有機リン酸塩は、鉱物繊維が高温で焼結するのを防ぐ;およびシリコーンは疎水性剤として働く。
【0053】
以下の例は本発明を例示する助けになるものであるが、それを限定するものではない。
【0054】
例1ないし7
a)カルボン酸金属塩水溶液の調製
以下のカルボン酸および金属水酸化物を、化学量論量で、25℃で1時間にわたって攪拌しながら混合した。
【表1】

【0055】
得られたカルボン酸金属塩水溶液は、45%の固形分を有していた。
【0056】
b)サイズ剤組成物の調製
表1に挙げたサイズ剤組成物は、a)で得られた20乾燥重量部のカルボン酸金属塩水溶液と、100乾燥重量部の以下のうちの1種の熱硬化性樹脂とを含有する:
G:ホルムアルデヒドおよびフェノール(ホルムアルデヒド/フェノールのモル比が3.2)を触媒(NaOH;フェノールに対して6重量%)の存在下で、上に説明した温度条件下で、97%を超えるフェノール変換度が得られるまで反応させることによって調製したフェノール樹脂。次に、この樹脂をスルファミン酸によって中和してpH7.3にした。次に、40重量部の尿素を60重量部のフェノール樹脂に添加した;
H:WO 2008/043960の例1によって調製された樹脂;
I:ポリアクリル酸樹脂:Rohm and Haasによって整理番号QRXP 1736の元で販売されているアクリル酸/ヒドロキシエチレンアクリラートコポリマー。
【0057】
サイズ剤組成物を皿の中に入れ、オーブン内で60分間にわたり110℃で加熱して水分を除去し、その後20分間にわたり180℃で加熱して樹脂を硬化させた。
【0058】
硬化後皿の中に残った残留物を以下の条件でTGA(熱重量分析)によって分析した:10mgの残留物を取り出してアルミナのるつぼ内に入れ、次に、25℃から700℃までの範囲の10℃/分での温度サイクル中の重量減少を連続的に測定するための装置に入れた。記録した曲線上の最初の有機物質の50%の重量減少に対応する温度を判定した。
【0059】
本発明によるサイズ剤組成物の温度を、カルボン酸金属塩も含有していないし対応する金属水酸化物も含有していない参照のサイズ剤組成物と比較して、表1に挙げている。
【0060】
例1ないし7にしたがってカルボン酸マグネシウムをサイズ剤組成物に添加することは、耐熱性を向上させるのを助ける:最初の有機物質の50%の重量減少に対応する温度は、熱硬化性樹脂のみを含有する参照のサイズ剤組成物1、3および5のそれよりも高い。
【0061】
例1ないし3のサイズ剤組成物は、水酸化マグネシウムを含有する参照2のそれよりも高い耐熱性を有する。
【0062】
例4のサイズ剤組成物は、水酸化マグネシウムを含有する参照4のそれと非常に近い耐熱性を有する。
【0063】
例8
溶融組成物を保持するためのチャンバを形成するバスケットと複数の穴が開けられている周辺帯とを具備するスピナーと呼ばれる道具によって溶融ガラス組成物を繊維に変換する内部遠心分離技術により、グラスウールを製造した:スピナーは垂直なその対称軸を軸に回転した;組成物は、遠心力の作用のおかげで、オリフィスを通して放出された;および穴から出て行く材料は、引き伸ばしガス流(un courant de gaz d'etirage)の助けによって引き伸ばされて繊維となった。
【0064】
通常どおり、サイズ剤組成物のスプレーリングを、形成したばかりのグラスウール上に均一にサイズ剤組成物を分配させるように、繊維化スピナーの下に設置した。
【0065】
このようにして糊付けされたミネラルウールをベルトコンベア上で収集し、このコンベアは、このミネラルウールをコンベアの表面上でフェルトまたはウェブの形態で保持する内部吸引ボックスを備えていた。その後、コンベアは250℃に維持されたオーブン内に入り、そこでサイズ剤組成物の成分が重合し、バインダを形成した。
【0066】
2つの絶縁製品を製造した:第1は例3(例8)によるサイズ剤組成物を使用したものであり、第2は参照1によるサイズ剤組成物を使用したものである。
【0067】
これらの絶縁製品は、66kg/m3の密度と60mmの厚さとを有していた。
【0068】
例8による絶縁製品は、0.2重量%のクエン酸マグネシウム(絶縁製品の総重量に対する乾燥重量として計算した)を含有しており、2%の強熱減量(製品の有機分の重量割合に対応する強熱減量(これは有機分を分解させるための熱処理の前後での製品の秤量値の差によって決定される))を有していた。
【0069】
IMO(国際海事機構)が草案したFTP規約(耐火試験手順の適用のための国際規約)の案A754(18)に記載された基準の条件下で、絶縁製品に耐火試験を施した。
【0070】
絶縁製品が達した最高温度(発熱ピークの最大値に対応)は、例8による製品の場合は190℃であり、参照の製品の場合は202℃であった。試験を開始した後20分でこれらの温度に達した。
【0071】
クエン酸マグネシウムを含有する例8による絶縁製品は、達した最大温度がクエン酸マグネシウムを含有しない参照製品のそれより22℃低かったので、優れた耐火性を有していた。
【0072】
この向上した性能は、製品の全体的な性質、特に機械的性質を劣化させることなく達成されたことに気付かれたい。たとえば、例8による絶縁製品は、5.3kPaの圧縮強さを有しており、これは、参照1によるサイズ剤組成物を使用した製品のそれと類似していた。圧縮強度は、EN826基準(建築用途のための絶縁製品;圧縮挙動の判定)での条件下で測定した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラルウール、特にロックウールまたはグラスウールと、有機バインダとをベースにした難燃性の熱および/または音響絶縁製品であって、難燃剤としてカルボン酸金属塩を含有することを特徴とする製品。
【請求項2】
前記カルボン酸金属塩は、アルミニウム、亜鉛およびマグネシウムから選択される金属のカルボン酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記金属はマグネシウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
前記カルボン酸金属塩は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸もしくはテトラカルボン酸の非ポリマー有機酸、またはポリマー有機酸の金属塩であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の製品。
【請求項5】
前記非ポリマーカルボン酸金属塩は、分枝または非分枝の、飽和または不飽和の環状脂肪酸、環状酸または芳香族酸の金属塩であり、前記ポリマー有機酸の金属塩は、アクリル酸(メタクリル酸)ホモポリマーまたはコポリマーの金属塩であることを特徴とする請求項4に記載の製品。
【請求項6】
前記カルボン酸金属塩は、酢酸アルミニウム、酢酸亜鉛、コハク酸マグネシウム、アジピン酸アルミニウム、アジピン酸マグネシウム、シトラコン酸マグネシウム、フタル酸アルミニウム、フタル酸マグネシウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸亜鉛、クエン酸マグネシウム、トリメリト酸マグネシウム、マグネシウム1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートまたは20ないし30のアクリル酸(メタクリル酸)残基を含有するポリマーであることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の製品。
【請求項7】
前記カルボン酸金属塩は、フタル酸マグネシウムまたはクエン酸マグネシウムであることを特徴とする請求項6に記載の製品。
【請求項8】
カルボン酸金属塩の量は、絶縁製品の総重量の0.05ないし5%、好ましくは多くとも2%、有利には0.1ないし2%を占めることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の製品。
【請求項9】
前記有機バインダは、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)樹脂、ポリウレタン樹脂またはアルキド樹脂の熱架橋によって得られる生成物であるか、または少なくとも1種の糖類および/または少なくとも1種の蛋白質を含有する混合物の熱反応によって得られる生成物であることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の製品。
【請求項10】
前記樹脂は、絶縁製品の総重量に対して、1ないし10固形分重量%、好ましくは多くとも5固形分重量%を占めることを特徴とする請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記ミネラルウールはガラス繊維から構成されており、そのガラスは、以下の成分を、重量百分率で表した以下の割合で含むことを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の製品:
SiO2 39−55%、好ましくは40−52%
Al23 16−27%、好ましくは16−25%
CaO 3−35%、好ましくは10−25%
MgO 0−15%、好ましくは0−10%
Na2O 0−15%、好ましくは6−12%
2O 0−15%、好ましくは3−12%
2O(Na2O+K2O) 10−17%、好ましくは12−17%
25 0−3%、好ましくは0−2%
Fe23 0−15%、
23 0−8%、好ましくは0−4%
TiO2 0−3%;
(R2O含有量が13.0%以下である場合には、MgO含有量は0ないし5%の間にある)。
【請求項12】
前記ガラスは、以下の成分を以下の割合(wt%)で含むことを特徴とする請求項10に記載の製品:
SiO2 39−44%、好ましくは40−43%
Al23 16−27%、好ましくは16−26%
CaO 6−20%、好ましくは8−18%
MgO 1−5%、好ましくは1−4.9%
Na2O 0−15%、好ましくは2−12%
2O 0−15%、好ましくは2−12%
2O(Na2O+K2O) 10−14.7%、好ましくは10−13.5%
25 0−3%、特に0−2%
Fe23 1.5−15%、特に3.2−8%
23 0−2%、好ましくは0−1%
TiO2 0−2%、好ましくは0.4−1%。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか1項に記載の絶縁製品の製造方法であって、前記ウール自体を製造する工程と、前記ミネラルウールに糊付けをする工程と、前記ミネラルウールを結合させる目的の熱処理工程とを含み、カルボン酸金属塩を前記ミネラルウールに塗布する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記カルボン酸金属塩を前記サイズ剤組成物に組み込むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カルボン酸金属塩は前記サイズ剤組成物とは別に、前記鉱物繊維を形成した直後に、好ましくは前記サイズ剤組成物を塗布する前に該鉱物繊維に塗布するか、または前記ミネラルウールが前記樹脂を硬化させるためのデバイスに入る前に該ミネラルウールに塗布するか、または熱処理した絶縁製品に、好ましくはそれを集める前に塗布することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボン酸金属塩を、樹脂と任意に尿素またはグリセロールとの100(固形分)重量部あたり、5ないし50重量部、好ましくは多くとも30重量部、有利には少なくとも10重量部およびさらに良いのは8ないし20重量部の(固形分)量で使用することを特徴とする請求項1ないし15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1ないし12の何れか1項に記載の絶縁製品の製造を目的としたサイズ剤組成物であって、
−少なくとも1種のカルボン酸金属塩、好ましくは、アルミニウム、亜鉛およびマグネシウムからなる群より選択される金属のカルボン酸塩;
−少なくとも1種の熱硬化性樹脂、好ましくはフェノール樹脂、特にレゾール族に属するそれ、またはポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)樹脂;および
−任意に、尿素またはグリセロール
を含むことを特徴とするサイズ剤。
【請求項18】
熱硬化性樹脂と場合によっては尿素またはグリセロールとの100(固形分)重量部あたり、8ないし20重量部のカルボン酸金属塩を含有することを特徴とする請求項17に記載のサイズ剤組成物。
【請求項19】
以下の添加剤を、熱硬化性樹脂と尿素またはグリセロールとの100重量部に基づいて計算した以下の割合でさらに含むことを特徴とする請求項17または18に記載のサイズ剤組成物:
−0ないし2部のシラン、特にアミノシラン;
−0ないし20部、好ましくは4ないし15部のオイル;
−0ないし10部、好ましくは7部未満の重縮合触媒、たとえば硫酸アンモニウム;
−0ないし20部、好ましくは12部未満のアンモニア水溶液(20wt%溶液);
−0ないし50部の有機リン酸塩;および
−0ないし20部のシリコーン。

【公表番号】特表2012−514141(P2012−514141A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544073(P2011−544073)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052710
【国際公開番号】WO2010/076533
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】