説明

難燃性化合物、難燃性粒子、樹脂組成物及び樹脂成形体

【課題】 非ハロゲン系であっても、難燃性に優れる難燃性化合物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される構造を有する難燃性化合物。
−X−A(−O−CO−O−Ar …(1)
[式中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性化合物、難燃性粒子、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難燃性が要求される樹脂材料には、難燃化のために難燃剤が混合されている。樹脂材料に混合する難燃剤としては、例えば、ハロゲン系化合物、アンチモン系化合物、リン系化合物、水和金属化合物、無機系化合物等が知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
上記ハロゲン系化合物、アンチモン系化合物、リン系化合物は、難燃性が高いため広く利用されている。一方、近年、環境保全の観点から上記水和金属化合物や無機系化合物の使用が増えてきている。
【特許文献1】特開昭53−74557号公報
【特許文献2】特開昭54−91557号公報
【特許文献3】特公昭60−264313号公報
【特許文献4】特開昭62−15256号公報
【特許文献5】特開昭62−15256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、非ハロゲン系であっても、難燃性に優れる難燃性化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、下記一般式(1)で表される構造を有する難燃性化合物にある。
−X−A(−O−CO−O−Ar …(1)
[式中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
【0006】
請求項2に記載の発明は、下記一般式(2)で表される構造を有する、請求項1記載の難燃性化合物にある。
(Ar−O−CO−O−)−X−A(−O−CO−O−Ar …(2)
[式中、A及びAは各々独立に、置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Ar及びArは各々独立に、置換もしくは未置換のフェニル基を示し、m及びnは各々独立に、1〜3の整数を示す。]
【0007】
請求項3に記載の発明は、粒子表面に請求項1又は2記載の難燃性化合物を含有する被覆層が形成されてなる難燃性粒子にある。
【0008】
請求項4に記載の発明は、粒子表面に下記一般式(1)で表される構造を導入してなる難燃性粒子にある。
−X−A(−O−CO−O−Ar …(1)
[式中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
【0009】
請求項5に記載の発明は、樹脂と、請求項1若しくは2記載の難燃性化合物、及び/又は、請求項3若しくは4に記載の難燃性粒子と、を含有する樹脂組成物にある。
【0010】
請求項6に記載の発明は、樹脂と、請求項1若しくは2記載の難燃性化合物、及び/又は、請求項3若しくは4に記載の難燃性粒子と、を含有する樹脂成形体にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明は、非ハロゲン系であっても、本構成を有しない難燃性化合物と比較して、難燃性に優れるという効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、非ハロゲン系であっても、本構成を有しない難燃性化合物と比較して、より難燃性に優れるという効果を有する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、本構成を有しない難燃性粒子と比較して、樹脂への分散性に優れるという効果を有する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、本構成を有しない難燃性粒子と比較して、樹脂への分散性に優れるという効果を有する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、本構成を有しない樹脂組成物と比較して、機械的強度と難燃性とを両立することが可能となり、また、樹脂成形体の成形性及び機械的強度の低下を抑制することができるという効果を有する。
【0016】
請求項6に記載の発明は、本構成を有しない樹脂成形体と比較して、機械的強度と難燃性とを両立することが可能となるという効果を有する。また、環境問題の観点で非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照しつつ、好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(難燃性化合物)
第1実施形態に係る難燃性化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有するものである。
−X−A(−O−CO−O−Ar …(1)
[式中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
【0019】
本実施形態に係る難燃性化合物は、従来の難燃剤と同様の用途に用いられる。例えば、樹脂中に分散させて難燃性を付与する用途に用いられる。そして、樹脂中に分散させた場合、本実施形態に係る難燃性化合物は、燃焼時に上記一般式(1)で表される構造が炭化層(チャー)を形成するため、燃焼反応の連鎖が防止され、難燃性が発現される。
【0020】
上記一般式(1)中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示す。ここで、置換基は特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、アリール基、アシル基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシ基、エステル基及びカルボキシル基等が挙げられる。また、その置換基の数及び位置は特に限定されない。
【0021】
上記一般式(1)中、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示すが、燃焼時に炭化層を形成し、難燃性の向上に寄与することから、−S−、−CN−、−SO−、−SO−であることが好ましい。なお、第1実施形態に係る難燃性化合物においては、上述したようなAの置換基がXを構成していてもよい。更に、上記一般式(1)中の−O−CO−O−Arで表される特性基が2以上存在する場合、一方の特性基中の−O−がXを構成していてもよい。すなわち、Aに結合する−O−CO−O−Arで表される特性基が2以上存在する化合物は、上記一般式(1)で表される構造を満たすものとなる。
【0022】
上記一般式(1)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示す。ここで、置換基は特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、アリール基、アシル基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシ基、エステル基及びカルボキシル基等が挙げられる。また、その置換基の数及び位置は特に限定されない。また、上記一般式(1)中、mは1〜3の整数を示す。
【0023】
上記一般式(1)で表される構造を有する難燃性化合物を作製するには、例えば、以下に示す芳香族化合物が用いられる。かかる芳香族化合物としては、例えば、クレゾール、アミノフェノール、ヒドロキシベンゾニトリル、ヒドロキシベンズアルデヒド、ジメチルフェノール、ニトロソフェノール、5−アミノ−2−メトキシフェノール、2−メトキシ−5−ニトロフェノール、2−メトキシ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−3−メチルフェノール、ジフロロフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゼンフェノン、ヒドロキシベンジルアルコール、フェニルヒドロキノン、4−ニトロ1,2−ベンゼンジオール、3,5−ジニトロ−1,2−ベンゼンジオール、3−メチル−1,2−ベンゼンジオール、フロログルシノール、フロログルシノールカルボキシリックアシッド、4,6−ジニトロ−1,2,3−ベンゼントリオール、硫酸基を含むものとしてはヒドロキシベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−ニトロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシ−3−ニトロソ−1−ナフタレンスルホン酸、4,5−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、4,5−ヒドロキシ−5−ニトロ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、及び、それらの塩等が用いられる。これらの中でも、難燃性の観点から、硫酸基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0024】
これらの芳香族化合物と、上記一般式(1)中の−CO−O−Arで表される特性基を有する化合物とを反応させることにより、上記一般式(1)で表される構造を有する難燃性化合物が得られる。
【0025】
上記特性基を有する化合物としては、例えば、クロロギ酸フェニルエステル、ブロモギ酸フェニルエステル等が挙げられる。
【0026】
上記芳香族化合物と上記特性基を有する化合物との反応は、反応促進剤としてのアミンの存在下で行われる。かかるアミンとしては特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン、ジメチルアニリン、キノリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0027】
また、他の反応としては、炭酸ジアリールを、塩基性触媒の存在下で、溶融エステル交換反応させることでも行われる。炭酸ジアリールとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸ジフェニルなどが挙げられる。また、塩基性触媒としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化亜鉛などの塩基性金属化合物、金属炭酸塩、金属酢酸塩、金属水素化物、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
【0028】
第2実施形態に係る難燃性化合物は、下記一般式(2)で表される構造を有するものである。
(Ar−O−CO−O−)−X−A(−O−CO−O−Ar …(2)
[式中、A及びAは各々独立に、置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Ar及びArは各々独立に、置換もしくは未置換のフェニル基を示し、m及びnは各々独立に、1〜3の整数を示す。]
【0029】
本実施形態に係る難燃性化合物は、従来の難燃剤と同様の用途に用いられる。例えば、樹脂中に分散させて難燃性を付与する用途に用いられる。そして、樹脂中に分散させた場合、本実施形態に係る難燃性化合物は、燃焼時に上記一般式(2)で表される構造が炭化層(チャー)を形成するため、燃焼反応の連鎖が防止され、難燃性が発現される。
【0030】
上記一般式(2)中、A及びAは各々独立に、置換もしくは未置換の芳香族基を示す。ここで、置換基は特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、アリール基、アシル基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシ基、エステル基及びカルボキシル基等が挙げられる。また、その置換基の数及び位置は特に限定されない。
【0031】
上記一般式(2)中、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示すが、燃焼時に炭化層を形成して難燃性の向上に寄与することから、−S−、−CN−、−SO−、−SO−であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(2)中、Ar及びArは各々独立に、置換もしくは未置換のフェニル基を示す。ここで、置換基は特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、アリール基、アシル基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシ基、エステル基及びカルボキシル基等が挙げられる。また、その置換基の数及び位置は特に限定されない。また、上記一般式(2)中、m及びnは各々独立に、1〜3の整数を示す。
【0033】
上記一般式(2)で表される構造を有する難燃性化合物を作製するには、例えば、以下に示す芳香族化合物が用いられる。かかる芳香族化合物としては、例えば、4,4’−チオジフェノール、レゾルシノールスルフィド、4,4’−スルフォニルジフェノール、レゾルシノールスルフォキシド、4,4’−スルフォニルビス(2−メチルフェノール)、4,4’−スルフォニルビス(2,6−ジメチルフェノール)、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−プロピリデンビスフェノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が用いられる。
【0034】
これらの芳香族化合物と、上記一般式(2)中の−CO−O−Ar又は−CO−O−Arで表される特性基を有する化合物とを反応させることにより、上記一般式(2)で表される難燃性化合物が得られる。
【0035】
上記特性基を有する化合物としては、第1実施形態において先に説明したものと同様のものが用いられる。また、上記芳香族化合物と上記特性基を有する化合物との反応は、反応促進剤としてのアミンの存在下で行われる。かかるアミンとしては第1実施形態において先に説明したものと同様のものが用いられる。
【0036】
また、他の反応としては、炭酸ジアリールを、塩基性触媒の存在下で、溶融エステル交換反応させることでも行われる。炭酸ジアリールとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸ジフェニルなどが挙げられる。また、塩基性触媒としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化亜鉛などの塩基性金属化合物、金属炭酸塩、金属酢酸塩、金属水素化物、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
【0037】
第1及び第2実施形態に係る難燃性化合物は、そのまま樹脂に分散させてもよく、粒子化した状態で樹脂に分散させてもよい。
【0038】
(難燃性粒子)
第3実施形態に係る難燃性粒子は、粒子(以下、「核粒子」という)表面に、上述した第1又は第2実施形態に係る難燃性化合物を含有する被覆層が形成されてなるものである。
【0039】
本実施形態に係る難燃性粒子は、従来の難燃剤と同様の用途に用いられる。例えば、樹脂中に分散させて難燃性を付与する用途に用いられる。そして、樹脂中に分散させた場合、本実施形態に係る難燃性粒子は、燃焼時に上記難燃性化合物が炭化層(チャー)を形成するため、燃焼反応の連鎖が防止され、難燃性が発現される。
【0040】
ここで、上記核粒子としては、無機物、無機物の錯体、有機高分子、デンドリマー、粘土、フラーレン、及び、カーボンナノチューブ等からなる粒子が挙げられる。
【0041】
被覆層は、少なくとも上記難燃性化合物を含有してなる層であれば特に限定されない。例えば、被覆層は、上記難燃性化合物の他、合成物として、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、及び、これら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)等の高分子材料、天然由来の有機高分子からなるキサンタンガム、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等を含有していてもよい。
【0042】
表面被覆層の形成方法は特に制限されないが、例えば、上記難燃性化合物を溶解する溶媒に溶かして被覆する湿式被覆法、溶融被覆や機械的に被覆する乾式法などが挙げられる。
【0043】
表面被覆層の被覆量は、表面被覆難燃性粒子全体の5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満では難燃性を効果的に得ることはできない。
【0044】
なお、本実施形態に係る難燃性粒子において、核粒子として多孔質粒子を用いる場合、該多孔質粒子の孔内に表面被覆層の構成材料を充填してもよい。また、本実施形態に係る難燃性粒子は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、核粒子上に表面被覆層以外の他の層を更に備えていてもよい。
【0045】
第4実施形態に係る難燃性粒子は、粒子(核粒子)表面に、上記一般式(1)で表される構造を導入してなるものである。
【0046】
本実施形態に係る難燃性粒子は、従来の難燃剤と同様の用途に用いられる。例えば、樹脂中に分散させて難燃性を付与する用途に用いられる。そして樹脂中に分散させた場合、本実施形態に係る難燃性粒子は、燃焼時に核粒子表面に結合した上記一般式(1)で表される構造が炭化層(チャー)を形成するため、燃焼反応の連鎖が防止され、難燃性が発現される。また、樹脂成形体の燃焼時のドリップが抑制される。
【0047】
ここで、上記核粒子としては、無機物、無機物の錯体、有機高分子、デンドリマー、粘土、フラーレン、及び、カーボンナノチューブ等からなる粒子が挙げられる。
【0048】
なお、核粒子としては、表面に官能基を有し、上記一般式(1)で表される構造を導入し得るものであれば特に制限されない。核粒子表面の官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ビニル基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、エーテル結合、エステル結合、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン基、アルキル基、シアノ基など、化学結合できるものであれば特に制限されないが、特に反応の簡便さや工程の簡便さから、ヒドロキシル基が好ましい。
【0049】
上記核粒子に上記一般式(1)で表される構造を導入する方法としては特に制限されず、公知の方法により上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を核粒子表面の官能基と反応させることで導入する。
【0050】
また、核粒子表面に予め上記一般式(1)中の−X−又は−X−A1’で表される構造を導入し、その後、−A(−O−CO−O−Ar又は(−O−CO−O−Arで表される構造を導入してもよい。この場合、例えば、核粒子に対してシランカップリング剤による処理を行うことにより、−X−又は−X−A1’で表される構造を導入し、その後、−A(−O−CO−O−Ar又は(−O−CO−O−Arで表される構造を導入する方法を用いる。なお、上記A1’は、(−O−CO−O−Arで表される構造と結合してAとなる基である。
【0051】
ここで、シランカップリング剤としては、ラジカル重合性を持つビニル官能基を有するビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン;アクリロキシ官能基を有する3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;メタクリロキシ官能基を有する3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン;重縮合性を持つエポキシ官能基を有する2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;アミノ官能基を有するN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン;クロロプロピル官能基を有する3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が用いられる。
【0052】
また、核粒子をシランカップリング剤で処理した後に、芳香族化合物を反応させて芳香族基を導入し、次いで、(−O−CO−O−Arで表される構造を導入してもよい。
【0053】
また、本実施形態において、粒子表面の官能基と上記一般式(1)で表される構造とは必ずしも直接結合していなくてもよく、任意の基を介して結合していてもよい。
【0054】
第3及び第4実施形態における難燃性粒子の体積平均粒子径(難燃性粒子が非球状の場合にはその外接円の平均径)は、500nm以上5μm以下であることが好ましく、600nm以上5μm以下であることがより好ましく、600nm以上1μm以下であることが特に好ましい。なお、上記体積平均粒径は、レーザードップラーヘテロダイン型粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:MICROTRAC−UPA150)により測定される。体積平均粒子径が500nm未満であると、樹脂に添加した際の難燃性の保持能力が低下する傾向があり、5μmを超えると、十分な難燃性を得るために難燃性粒子を樹脂中に多量に添加することが必要となり、樹脂成形体の機械物性が低下する傾向がある。
【0055】
(樹脂組成物)
第5実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂と、上述した難燃性化合物及び/又は上述した難燃性粒子と、を含有するものである。
【0056】
樹脂組成物に用いられる樹脂としては特に制限されないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メチルペンテン、熱可塑性加硫エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、シリコーン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリメチルペンテン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリロニトリル、ポリメトキシアセタール、ポリイソブチレン、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブタジエンスチレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリ−n−ブチルメタクリレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリブタジエンアクリルニトリル、ポリブテン−1、ポリアリルスルホン、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリエステルアルキド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリアミド、天然ゴム、ニトリルゴム、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体、ポリエチレン、イソプレンゴム、アイオノマー、ブチルゴム、フラン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、プロピオン酸セルロース、ヒドリンゴム、カルボキシメチルセルロース、クレゾール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、ビスマレイミドトリアジン、シス1・4ポリブタジエン合成ゴム、アクリロニトリルスチレンアクリレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、アクリル酸エステルゴム、ポリ乳酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
本実施形態に係る樹脂組成物において、上記難燃性化合物及び/又は上記難燃性粒子の合計の含有量は、樹脂100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。この含有量が1質量部未満であると、難燃性が不十分となる傾向があり、100質量部を超えると、得られる樹脂成形体の機械的強度が低下する傾向がある。
【0058】
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、その効果が損なわれない限りにおいて、上記難燃性化合物及び/又は上記難燃性粒子以外の難燃剤(以下、便宜的に「その他の難燃剤」という)をさらに含有してもよい。その他の難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機粒子系難燃剤などが挙げられる。難燃性と機械的強度との両立の観点からは、その他の難燃剤の合計の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、その他の難燃剤を含有しないことが特に好ましい。
【0059】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、強化剤、相溶化剤、耐候剤、強化剤、加水分解防止剤等の添加剤、触媒などをさらに含有してもよい。これらの添加剤及び触媒の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、それぞれ5質量%以下であることが好ましい。
【0060】
(樹脂成形体)
第6実施形態に係る樹脂成形体は、樹脂と、上述した難燃性化合物及び/又は上述した難燃性粒子と、を含有するものである。また、上述した樹脂組成物を成形してなるものである。なお、本実施形態に係る樹脂成形体の構成成分は、上述した第5実施形態に係る樹脂組成物の構成成分と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0061】
本実施形態に係る樹脂成形体は、例えば、上述した樹脂組成物を、射出成形、射出圧縮成形、プレス成形、押出成形、ブロー成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形等の公知の方法により成形することで得られる。
【0062】
本実施形態に係る樹脂成形体の用途は特に制限されないが、例えば、家電製品や事務機器などの筐体又はそれらの各種部品、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材等が挙げられる。
【0063】
ここで、図1は、本実施形態に係る樹脂成形体を用いて構成された筐体及び事務機器部品を備える画像形成装置の一例を示す図であり、画像形成装置を前側から見た外観斜視図である。図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作できるよう開閉可能となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりすることができる。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0064】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、及び、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を自動的に搬送することができる自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置及び制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱可能なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0065】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーを補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0066】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙トレイ136が備えられており、必要に応じてここからも用紙が供給される。
【0067】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に当接する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙トレイ136が設けられている側と反対側に排出トレイ138が複数備えられており、これらのトレイに画像形成後の用紙が排出される。
【0068】
画像形成装置100において、フロントカバー120a,120bは、開閉時の応力及び衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、プロセスカートリッジ142は、着脱の衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、筐体150及び筐体152は、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。そのため、本実施形態に係る樹脂成形体は、画像形成装置100のフロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、及び筐体152として用いられるのが好適である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
1000mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、ヒドロキノン20gを導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン70mlをそれぞれ加えてヒドロキノンを溶解した。次に、系内をアイスバスで冷やしながら50mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール50mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノールの中に投入することで目的物を沈殿させ、ろ過により回収し、さらにメタノールで数回洗浄した。これにより、下記式(3)で表される難燃性化合物Aを得た。
【0071】
【化1】



【0072】
次に、得られた難燃性化合物A50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、二軸押出し機を用いて180℃で溶融混合した後、200℃でプレスにより溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0073】
[実施例2]
1000mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、フロログルシノール25gを導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン120mlをそれぞれ加えてフロログルシノールを溶解した。次に、系内をアイスバスで冷やしながら100mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール100mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノールの中に投入することで目的物を沈殿させ、ろ過により回収し、さらにメタノールで数回洗浄した。これにより、下記式(4)で表される難燃性化合物Bを得た。
【0074】
【化2】



【0075】
次に、得られた難燃性化合物B50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0076】
[実施例3]
1000mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、ヒドロキシベンゼンスルホン酸25gを導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン120mlをそれぞれ加えてヒドロキシベンゼンスルホン酸を溶解した。次に、系内をアイスバスで冷やしながら40mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール40mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノールの中に投入することで目的物を沈殿させ、ろ過により回収し、さらにメタノールで数回洗浄した。これにより、下記式(5)で表される難燃性化合物Cを得た。
【0077】
【化3】



【0078】
次に、得られた難燃性化合物C50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0079】
[実施例4]
1000mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、ビスフェノールSを25g導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン100mlをそれぞれ加えてビスフェノールSを溶解した。次に、系内をアイスバスで冷やしながら80mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール80mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノール/水混合液(質量比:70/30)の中に投入することで目的物を沈殿させ、ろ過により回収し、さらにメタノールで数回洗浄した。これにより、下記式(6)で表される難燃性化合物Dを得た。
【0080】
【化4】



【0081】
次に、得られた難燃性化合物D50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0082】
[実施例5]
シリカ粒子をビニルトリエトキシシランで処理し、粒子表面にビニル基を導入した。次に、フェノールにパラトルエンスルホン酸触媒を添加して130℃まで昇温した後、上記のビニル基導入シリカ粒子を添加して1時間反応を行った。反応終了後、メタノールで洗浄、ろ過して、フェノール導入シリカ粒子を得た。
【0083】
500mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、上記フェノール導入シリカ粒子20gを導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン70mlをそれぞれ加えた。次に、系内をアイスバスで冷やしながら50mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール50mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノールの中に投入し、目的物をろ過により回収し、さらにメタノールで数回洗浄した。これにより、シリカ粒子の表面に下記式(7)で表される構造を導入してなる難燃性粒子Eを得た。
【0084】
【化5】



【0085】
次に、得られた難燃性粒子E50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0086】
[実施例6]
シリカ粒子を3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで処理し、粒子表面にエポキシ基を導入した。次に、500mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、4−アミノフェノールを20g導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン70mlをそれぞれ加えて4−アミノフェノールを溶解した。次に、系内をアイスバスで冷やしながら50mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール50mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノールの中に投入することで、下記式(8)で表される化合物を得た。
【化6】



【0087】
この化合物15gをテトラヒドロフラン100mlに溶解させ、上記のエポキシ基導入シリカ粒子10gを添加して50℃で10時間反応させる事により、シリカ粒子の表面に下記式(9)で表される構造を導入してなる難燃性粒子Fを得た。
【0088】
【化7】



【0089】
次に、得られた難燃性粒子F50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0090】
[実施例7]
ヒドロキノン35gとパラトルエンスルホン酸触媒0.35gとをメチルエチルケトン150mlに添加して130℃まで昇温した後、ジビニルベンゼン41gを滴下添加して6時間反応を行った。反応終了後、メタノールで洗浄、ろ過して、下記式(10)で表される繰り返し単位を有する化合物を得た。
【0091】
【化8】



【0092】
1000mlのガラスフラスコに攪拌子を入れ、上記式(10)で表される繰り返し単位を有する化合物35gを導入した後、容器内を窒素で置換した。そこに、脱水したテトラヒドロフラン300ml及び脱水したトリエチルアミン70mlをそれぞれ加えた。次に、系内をアイスバスで冷やしながら60mlのクロロギ酸フェニルエステルをゆっくりと加えた。その後、室温で6時間攪拌し、メタノール50mlを投入することにより反応を停止した。反応溶液を多量のメタノールの中に投入し、目的物をろ過により回収し、さらにメタノールで数回洗浄した。これにより、下記式(11)で表される難燃性化合物Hを得た。
【0093】
【化9】



【0094】
次に、得られた難燃性化合物H50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0095】
[比較例1]
ヒドロキシベンゼンスルホン酸25gに代えてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善化学社製、重量平均分子量:約5000)25gを用いた以外は実施例3と同様にして、下記式(12)で表される繰り返し単位を有する難燃性化合物G(重量平均分子量:1万)を得た。
【0096】
【化10】



【0097】
次に、得られた難燃性化合物G50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0098】
[比較例2]
ヒドロキノン50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0099】
[比較例3]
フロログルシノール50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0100】
[比較例4]
ビスフェノールS50質量部を、100質量部のABS樹脂(商品名:AT−05、日本A&L社製)に添加し、実施例1と同様の条件で溶融混合した後、溶融成形し、UL−94燃焼試験用試験片(幅13mm、長さ125mm、厚さ2.0mm)を作製した。
【0101】
<残存率の測定>
難燃性化合物A〜D及びG、難燃性粒子E〜F、ヒドロキノン、フロログルシノール、並びに、ビスフェノールSの熱重量分析(TGA)を下記のように行った。すなわち、セイコー社製TGA−DTA2000S(商品名)を用いて、窒素気流下、20℃/minの昇温速度で室温から600℃まで昇温し、600℃における残存率を測定した。その結果を表1に示す。
【0102】
【表1】



【0103】
<難燃性の評価>
上記UL−94燃焼試験用試験片を用いて、UL−94の垂直燃焼試験を行い、UL−94規格の判定基準に従って、V−0、V−1、V−2及び燃焼の4つのランクで判定した。その結果を表2に示す。
【0104】
<機械的強度(シャルピー耐衝撃強度)の評価>
上記UL−94燃焼試験用試験片について、JIS K7111に従ってシャルピー衝撃強さの測定を行った。その結果を表2に示す。
【0105】
【表2】



【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の樹脂成形体の一実施形態に係る筐体を備える画像形成装置を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0107】
100…画像形成装置、110…本体装置、120a,b…フロントカバー、142…プロセスカートリッジ、150,152…筐体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有する難燃性化合物。
−X−A(−O−CO−O−Ar …(1)
[式中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表される構造を有する、請求項1記載の難燃性化合物。
(Ar−O−CO−O−)−X−A(−O−CO−O−Ar …(2)
[式中、A及びAは各々独立に、置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Ar及びArは各々独立に、置換もしくは未置換のフェニル基を示し、m及びnは各々独立に、1〜3の整数を示す。]
【請求項3】
粒子表面に請求項1又は2記載の難燃性化合物を含有する被覆層が形成されてなる難燃性粒子。
【請求項4】
粒子表面に下記一般式(1)で表される構造を導入してなる難燃性粒子。
−X−A(−O−CO−O−Ar …(1)
[式中、Aは置換もしくは未置換の芳香族基を示し、Xは−S−、−O−、−CO−、−CN−、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−NH−、−SO−又は−SO−で表される2価の基を示し、Arは置換もしくは未置換のフェニル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
【請求項5】
樹脂と、
請求項1若しくは2記載の難燃性化合物、及び/又は、請求項3若しくは4に記載の難燃性粒子と、
を含有する樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂と、
請求項1若しくは2記載の難燃性化合物、及び/又は、請求項3若しくは4に記載の難燃性粒子と、
を含有する樹脂成形体。


【図1】
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【公開番号】特開2009−84513(P2009−84513A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259087(P2007−259087)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】