説明

難燃性化合物およびそれから連続的な材料を形成する方法

ハロゲンフリー難燃性化合物およびそれから連続的な材料を形成する方法は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を難燃性原料シアヌル酸メラミン(MC)およびポリリン酸メラミン(MPP)と混合するステップを含む。化合物は次いでペレットにされ、および/または、モノフィラメントおよびマルチフィラメントを含む薄膜またはシートとして、およびフィラメントまたは糸としても押出成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
この出願は、2006年9月25日に出願された米国仮出願連続番号第60/826,798号の利益を主張し、米国仮出願連続番号第60/826,798号は全文が引用によって本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して難燃性材料に関し、より特定的には、押出成形された難燃性化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
難燃性糸から織物を製造することは公知であり、その織物を用いて、品物を火炎に晒されることから保護できる。たとえば、スリーブ内に含まれるワイヤなどの細長い品物を保護するために、編組スリーブ、織りスリーブまたは編みスリーブを難燃性糸から作ることが公知である。望ましい難燃特性を有する1つの公知の化合物原料は、シアヌル酸メラミン(melamine cyanurate)(MC)である。
【0004】
本明細書における譲受人は米国特許第6,828,365号の譲受人でもあり、米国特許第6,828,365号では、MCは、難燃性ポリホスホン酸充填剤、ならびにポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート)からなる群から選択されるポリマーと混合され、次いで押出成形されて、難燃性モノフィラメントを形成する。ポリホスホン酸塩は、同様に難燃性であるため、結果として生じるモノフィラメントにさらなる難燃特性を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在市販されているハロゲンフリー難燃性ポリ(エチレンテレフタレート)(flame-retardant poly(ethylene terephthalate))(FR−PET)は、全文が引用によって本明細書に援用される米国特許第4,086,208号におけるようなPET重合プロセスの重縮合段階において有機リン化合物を添加することによって作られる。残念ながら、このリン含有PET(P−FR−PET)の難燃特性は、最も厳しい炎色試験要件を満たさない。特に、燃焼時間および火炎広がり距離が長すぎて、火炎ドリップ(flaming drips)を放出する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
ハロゲンフリー難燃性化合物は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ならびに難燃性原料シアヌル酸メラミン(MC)およびポリリン酸メラミン(melamine polyphosphate)(MPP)を含む。さらなる安定剤および処理剤を、それぞれ、約0.5重量%まで、および化合されたMCおよびMPPの重量部の1/3まで化合物に組入れることが意図される。化合物は、モノフィラメントおよびマルチフィラメントを含む薄膜またはシートとして、およびフィラメントまたは糸としても押出成形されることができる。
【0007】
この発明の別の局面は、押出成形プロセスで用いられるハロゲンフリー難燃性化合物を形成する方法を含む。この方法は、MC、MPPおよびPETを含む原料を供給するステ
ップと、概して均一な原料の化合物を形成するために原料を二軸押出機に導入するステップとを備える。化合物は次いで、モノフィラメントおよびマルチフィラメントを含む難燃性薄膜もしくはシートまたは糸フィラメントを押出成形するために、後のまたは下流の押出成形プロセスで用いられることができる。MC、MPPおよびPETの3つの原料に加えて、安定剤および処理剤を含む添加剤を混合段階中に組入れることが意図される。
【0008】
この発明のさらに別の局面に従って、押出成形プロセスで用いられるハロゲンフリー難燃性化合物を形成する方法は、MC、MPPおよびPET原料を微粉末の形態で供給するステップと、二軸押出機に導入する前に原料を予混合するステップとを含み得ることが意図される。
【0009】
この発明のさらに別の局面に従って、MC、MPPおよびPETは、100ppm以下の合算水分含有量を含むことが意図される。
【0010】
この発明のさらに別の局面に従って、MC、MPPおよびPETは、50ppm以下の合算水分含有量を含むことが意図される。
【発明の効果】
【0011】
したがって、この発明に従うハロゲンフリー難燃性化合物は、優れた難燃特性を有し、製造の際に経済的であり、防護服、家具、室内装飾材料、マットレスおよび寝具類、電子機器、電気通信および運送を含むがそれらに限定されないさまざまな業界で用いられる薄膜、シートおよび糸を形成する際に有用であり、フィラメント糸は、たとえば溶融堆積物モデリングプロセスでも用いられて部品を構築することができ、使用寿命が長い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
現時点で好ましい実施の形態の詳細な説明
この発明の現時点で好ましい1つの実施の形態に従うハロゲンフリー難燃性化合物は、PETならびに難燃性(FR)原料MCおよびMPPを含む。MCは化合物の約5〜12重量%を構成することができ、MPPは化合物の約5〜12重量%を構成することができ、PETは通常、化合物の残余を構成する。さらなる安定剤/酸化防止剤は化合物の多くとも約0.5重量%までを構成することができ、さらに、化合物は、化合されたMCおよびMPPの重量部の多くとも約1/3までの処理剤/鎖延長剤を含むことができることが意図される。化合物は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントを含む薄膜またはシートとして、および連続的なフィラメントまたは糸としても、混合プロセスから後のまたは下流の押出成形プロセスにおいて押出成形されることができる。
【0013】
現時点で好ましい1つの製造プロセスでは、混合段階においてMCおよびMPP原料を導入する形態が制御される。粒径が約2μmのMCが供給され、粒径が約5μmのMPPが供給される。MCおよびMPP粒子の大きさはある程度変化し得るが、粒径が小さければ小さいほど、得られる結果がよくなると考えられている。
【0014】
MCおよびMPP微粉末の拡散を容易にするため、および起こり得る凝集を低減または排除するため、MCおよびMPP微粉末はPET粉末と予混合されることができ、PET粉末は、化合されたMCおよびMPP微粉末の量の約2倍以上の割合で供給される。PET粉末の粒径は、好ましくは100μm未満であり、より好ましくは40μm未満である。PETを粉末の形態で供給することによって、MCおよびMPPが付着するためのキャリア表面積が増大すると考えられており、キャリア表面積は、この場合、PET粉末の露出表面積によってもたらされる。
【0015】
さらに、混合段階において導入されるときの原料の水分含有量が好ましくは制御される
。MC、MPPおよびPETの合計または合算水分含有量は通常、約100ppm未満になるように、より好ましくは約50ppm未満になるように制御される。別々の原料の各々をそれぞれの合計水分含有量レベル以下に維持することがさらに好ましい。
【0016】
この発明の別の局面に従って、押出成形プロセスで用いられるハロゲンフリー難燃性化合物を形成する方法を提供する。この方法は、MC、MPPおよびPETの原料を供給するステップと、次いで、原料を概して均一な化合物に混合するために原料を二軸押出機に導入するステップとを含む。原料は予混合され、次いで二軸押出機の前端におけるホッパーに導入され得ることが意図される。これにより、PET全体にわたるMCおよびMPPの拡散が向上し、それによって、凝集を低減または排除する。MC、MPPおよびPETの予混合物を供給することによって、押出機のスクリュを、原料上の最小限のせん断量を与える形状とし得るとも考えられる。PETの導入は二軸押出機の前端におけるホッパーによって混合の初期段階で行なわれることができ、一方、MCおよびMPPはサイドフィーダによって下流に導入できることも意図される。さらに、これらにかかわらず、原料は所望の如く混合段階の任意の段階で導入できることが意図される。
【0017】
混合中、原料の温度を約250〜260℃の間に維持することが好ましいと考えられている。さらに、ポリマー鎖上の最小限のせん断量を与える一方で依然としてすべての原料を完全に混ぜ合わせて均一な化合物を提供できるスクリュ構成を利用することが有益であると考えられている。原料を混合すると、化合物は次いで、たとえば後の押出成形プロセスのためにペレットにされることができる。
【0018】
次いで、化合物ペレットは、難燃性薄膜もしくはシートまたは連続的な糸フィラメントを押出成形するために、後のまたは下流の押出成形プロセスで用いられることができる。糸フィラメントはモノフィラメントまたはマルチフィラメントのいずれかとして形成されることができ、フィラメントは最終的には、たとえば防護難燃性スリーブまたは他の難燃性製品用としての織物を所望の如く形成するためなど、さまざまな編成、製織または編組プロセスでの使用に好適である。フィラメント糸は、たとえば溶融堆積物モデリングプロセスでも用いられて部品を構築することができる。
【0019】
明らかに、上記の教示に鑑みて、この発明の多くの修正および変更が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、およびこの出願に関連する許可されたその他の特許請求の範囲内で、具体的に記載されるものとは別の態様でこの発明を実施してもよいことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンフリー難燃性化合物であって、
シアヌル酸メラミンと、
ポリリン酸メラミンと、
ポリ(エチレンテレフタレート)とを含む、化合物。
【請求項2】
前記シアヌル酸メラミンは、前記化合物の約5〜12重量%を構成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリリン酸メラミンは、前記化合物の約5〜12重量%を構成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
安定剤をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記安定剤は、前記化合物の約0.01〜0.5重量%を構成する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
処理剤をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記処理剤は、化合された前記シアヌル酸メラミンおよび前記ポリリン酸メラミンの約1/6〜1/3重量部を構成する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、100ppm以下の合算水分含有量を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、50ppm以下の合算水分含有量を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
さらに、前記シアヌル酸メラミンは、粒径が約2μmの微粉末である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記ポリリン酸メラミンは、粒径が約5μmの微粉末である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、粒径が約100μm未満の粉末である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記ポリ(エチレンテレフタレート)は、粒径が約40μm未満の粉末である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
ハロゲンフリー難燃性連続材料を形成する方法であって、
シアヌル酸メラミンを供給するステップと、
ポリリン酸メラミンを供給するステップと、
ポリ(エチレンテレフタレート)を供給するステップと、
前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)の化合物を形成するステップと、
前記化合物を押出成形するステップとを備える、方法。
【請求項15】
前記化合物を形成するために、前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよ
び前記ポリ(エチレンテレフタレート)を二軸押出機に導入するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記導入ステップ中、前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)の水分含有量を100ppm以下に維持する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記導入ステップ中、前記シアヌル酸メラミン、前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)の水分含有量を50ppm以下に維持する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物の約5〜12重量%で前記シアヌル酸メラミンを供給する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物の約5〜12重量%で前記ポリリン酸メラミンを供給する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物の約0〜0.5重量%を構成する安定剤を前記化合物に添加するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
化合された前記シアヌル酸メラミンおよび前記ポリリン酸メラミンの約1/6〜1/3重量部を構成する処理剤を前記化合物に添加するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
連続的なフィラメントとして前記化合物を押出成形する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
粒径が約2μmの微粉末として前記シアヌル酸メラミンを供給する、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
粒径が約5μmの微粉末として前記ポリリン酸メラミンを供給する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
粒径が約100μm未満の粉末として前記ポリ(エチレンテレフタレート)を供給する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
粒径が約40μm未満の粉末として前記ポリ(エチレンテレフタレート)を供給する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記押出機に導入する前に、前記シアヌル酸メラミンおよび前記ポリリン酸メラミンおよび前記ポリ(エチレンテレフタレート)を予混合するステップをさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ハロゲンフリー難燃性化合物であって、
前記化合物の約5〜12重量%の間のシアヌル酸メラミンと、
前記化合物の約5〜12重量%の間のポリリン酸メラミンと、
前記化合物の約76〜90重量%の間のポリ(エチレンテレフタレート)と、
前記化合物の約0〜0.5重量%の間の安定剤と、
化合された前記シアヌル酸メラミンおよび前記ポリリン酸メラミンに対して1/6〜1/3重量部の間の処理剤とからなる、化合物。

【公表番号】特表2010−504413(P2010−504413A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529425(P2009−529425)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/079273
【国際公開番号】WO2008/094315
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】