説明

難燃性樹脂組成物およびその製造方法

【課題】必要に応じて任意の色に加色可能な非ハロゲン系の熱可塑性樹脂組成物であって、機械強度や成形性、混練加工性、更には経済性の面において十分満足される難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)水和数nが0.6〜3.0のホウ酸塩水和物を含む難燃性樹脂組成物。特定範囲の水和物を有する(C)ホウ酸塩水和物は、(A)熱可塑性樹脂の燃焼温度付近においてガラス化すると共に(B)無機フィラーとセラミックス化することにより、難燃性向上に有効な酸素遮断膜を形成し、これにより優れた難燃性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン含有化合物を使用せずに、かつ少ない無機充填材配合量で高い難燃性を示す難燃性樹脂組成物と、この難燃性樹脂組成物を用いた樹脂成形体並びに難燃性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、一般に耐衝撃性、耐水性、耐薬品性に優れているために種々の用途に広く使用されており、特に化学的特性、機械的特性に優れるため、自動車部品、建材、包装用資材、家電製品用材料等に幅広く用いられている。
しかし、合成樹脂は一般的に樹脂自体が可燃性であるため、用途によっては使用が制限されることから、種々の難燃化処理が検討されている。
【0003】
合成樹脂の具体的な難燃化処理の方法としては、例えば、合成樹脂にハロゲン含有化合物を添加する方法がある。この方法では高度な難燃性を付与することが可能であるが、ハロゲン含有化合物は加工成形や燃焼時にハロゲン含有ガスなどの有害ガスを発生するため、環境安全性の観点から使用が規制される方向に進んでいる。
【0004】
ハロゲン含有化合物を用いずに難燃性を付与する方法としては、燃焼時に腐食性ガスを発生しない水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属酸化物を用いる方法がある。しかし、上記の水和金属酸化物を用いた場合、熱可塑性樹脂、特に燃焼しやすいポリオレフィン樹脂に十分な難燃性を付与するためには、多量の水和金属酸化物を添加する必要がある。そのため樹脂の成形性が悪く、結果として得られる成形品は機械強度が著しく低下するという問題があった。
【0005】
この水和金属酸化物の必要添加量を低減するために、赤燐、カーボンブラック、金属酸化物等の助剤の併用が報告されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)中に、発泡剤および架橋剤と、カーボンブラックと水酸化マグネシウムを併用して配合することにより、少ない水酸化マグネシウム量で良好な難燃性を示すことができたと報告されている。また、特許文献2では、主鎖および側鎖に酸素原子を有しない合成樹脂中に、金属水酸化物と赤燐と、主鎖および/または側鎖に酸素原子を含有する合成樹脂を併用配合することにより、難燃性が改善されたことが報告されている。
しかし、いずれの場合も無機充填材総量として考えた場合の配合量が多いため、依然として機械強度や成形性が悪いという問題がある。
【0007】
特許文献3では、ポリオレフィン樹脂に、赤燐もしくは燐化合物と熱膨張性黒鉛を配合する方法が開示されている。しかし、熱膨張性黒鉛は、その製造過程で無機酸と強酸化剤で処理されたものであるため、ポリオレフィン樹脂と混練および成形する際に機械を腐食させるという問題がある。また、カーボンブラックや膨張黒鉛を使用すると必然的に樹脂の色は黒色となってしまい、一方で、赤燐を使用すると樹脂は赤系の色となることから、所望の色に着色することは困難であった。しかも、燐は高価であり枯渇の可能性が問題視されている資源の一つであって、工業的にはその使用はできるだけ少ない方が好ましい。
【0008】
上記のように、必要に応じて任意の色に加色可能な非ハロゲン系の熱可塑性樹脂組成物であって、機械強度や成形性、混練加工性、更には経済性の面において十分満足される難燃性樹脂組成物は未だ見出されていなかった。
【0009】
一方、ホウ酸塩類は古くから材料に難燃性を付与する添加物として知られており、熱可塑性樹脂用の難燃剤としては、一般的にホウ酸亜鉛が使用されている。しかし、ホウ酸亜鉛単独で十分な難燃性を発現させるためには、多量の添加が必要であった。そのため、添加量を低減するための検討もなされており、例えば特許文献4では、金属水和物と併用することによって難燃性が向上し、ホウ酸亜鉛の使用量が低減できると報告されている。
また、特許文献5では、複合水酸化物とホウ酸亜鉛を併用する方法が報告されている。
これらの方法では、無機充填材が白色または白に近い色なので、その樹脂組成物を任意の色に着色することは可能である。しかし、いずれの場合も無機充填材総量として考えた場合の配合量が多いため、依然として機械強度や成形性が悪いという問題がある。
【0010】
ところで、ホウ砂として知られる四ホウ酸ナトリウムの水和物は、無色または白色の無機塩であり、前述のホウ酸亜鉛に比べて安価であることから、それを使用することの工業的価値は高く、木や紙用の難燃剤として有用であることが知られている。例えば、特許文献6では、ホウ砂および助剤を熱水に溶解した溶液に晒紙を浸漬した後乾燥して耐炎上材を製造する方法が報告されている。
【0011】
特許文献6に記載されるように、通常、四ホウ酸ナトリウムの水和物は、水または熱水に溶解した後に、難燃性を付与したい部材へ浸漬、含浸、またはコーティングした後に、乾燥して使用される。
しかし、熱可塑性樹脂に添加物を添加する場合、一般的に熱可塑性樹脂が溶融する温度以上、すなわち熱可塑性樹脂の融点以上の温度で添加物を添加して溶融混練する方法が採用される。そのため、四ホウ酸ナトリウムの水和物を水溶液として、熱可塑性樹脂に添加しようとすると、高温の熱可塑性樹脂の溶融物に添加されることで、水が蒸発、気化し、得られる樹脂材料中に気泡が発生する。このため、このようにして四ホウ酸ナトリウムの水和物を熱可塑性樹脂に配合することは困難である。
また、四ホウ酸ナトリウムの水和物、例えば十水和物は融点が75℃であり、粉末状態で熱可塑性樹脂の溶融物に添加した場合でも同様に気泡が発生するので、事実上、四ホウ酸ナトリウムの水和物は熱可塑性樹脂用の難燃剤としては使用されていない。
【0012】
これに対して、四ホウ酸ナトリウムの無水物を添加する方法も報告されている。例えば、特許文献7では、樹脂に添加された四ホウ酸ナトリウムの無水物は600〜800℃で溶融してガラス化することにより耐火性を発現するが、一般的な熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンのようなポリオレフィン樹脂では、樹脂の分解温度が約350℃であるため、四ホウ酸ナトリウムの無水物を添加するだけでは十分な難燃性を得ることはできなかった。
【0013】
更に特許文献8では、メタホウ酸ナトリウム水和物を分子構造が破壊しない温度で緩加熱して乾燥した加工メタホウ酸ナトリウムを合成樹脂に添加、混合することが報告されている。しかし、この方法でも添加物の総量は多く、依然として機械強度や成形性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−208870号公報
【特許文献2】特開平7−033990号公報
【特許文献3】特開平6−025476号公報
【特許文献4】特開2006−001988号公報
【特許文献5】特開2004−149792号公報
【特許文献6】特開昭49−085887号公報
【特許文献7】特開2002−313154号公報
【特許文献8】特開昭51−045145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ハロゲン含有化合物を使用せずに、かつ少ない無機充填材配合量で高い難燃性を示し、必要に応じて任意の色に加色可能な難燃性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意研究の結果、熱可塑性樹脂に、無機フィラーと共に水和物量を調整したホウ酸塩水和物を配合することにより、少ない無機充填材配合量で優れた難燃性を有すると共に、必要に応じて任意の色に加色可能であり、更には経済性の面においても十分満足される難燃性樹脂組成物とすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
本発明の第一の要旨は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)ホウ酸塩水和物とを含む難燃性樹脂組成物であって、(C)ホウ酸塩水和物の水和数nが0.6〜3.0であることを特徴とする難燃性樹脂組成物、に存する。
【0018】
本発明の第二の要旨は、この難燃性樹脂組成物を用いた樹脂成形体、に存する。
【0019】
本発明の第三の要旨は、この難燃性樹脂組成物を用いた被覆材、に存する。
【0020】
本発明の第四の要旨は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)ホウ酸塩水和物とを含む難燃性樹脂組成物の製造方法であって、(C)ホウ酸塩水和物の水和数nを、n=0.6〜3.0の範囲に調整する調整工程と、該調整工程で得られた(C)ホウ酸塩水和物と(A)熱可塑性樹脂とを混練する混練工程とを有することを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法、に存する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、(A)熱可塑性樹脂に、(B)無機フィラーと、水和物量が調整された(C)ホウ酸塩水和物を配合することにより、従来よりも少ない無機充填材添加量で、より優れた難燃性と成形性および機械的物性を両立し、しかも必要に応じて任意の色に加色することも可能で、更には経済性の面においても十分満足される難燃性樹脂組成物が提供される。本発明によれば、更に、従来、難燃化が困難であった樹脂についても、高い難燃性を有する樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
[難燃性樹脂組成物]
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記の通り、(A)熱可塑性樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)ホウ酸塩水和物とを含み、(C)ホウ酸塩水和物の水和数nが0.6〜3.0であることを特徴とする。
【0024】
{作用機構}
本発明者らによる検討によると、(A)熱可塑性樹脂と(B)無機フィラーのみを含有する樹脂組成物では十分な難燃性を得ることができず、また(A)熱可塑性樹脂と本発明で規定される特定の範囲の水和物を有する(C)ホウ酸塩水和物のみを含有する樹脂組成物でも十分な難燃性を示さない。
また、(A)熱可塑性樹脂と(B)無機フィラー並びに本発明で規定された特定の範囲外の水和物量を有するホウ酸塩水和物(またはホウ酸塩無水物)を含む樹脂組成物でも十分な難燃性を示さない。
【0025】
これに対して、(A)熱可塑性樹脂と、(B)無機フィラーと、特定の範囲の水和物を有する(C)ホウ酸塩水和物を含む熱可塑性樹脂組成物においては、特異的な難燃性を示し、無機充填材配合量が少ない条件で優れた難燃性を発現させることが可能となる。
【0026】
本発明において、(A)熱可塑性樹脂と、(B)無機フィラーと、水和数nが0.6〜3.0の(C)ホウ酸塩水和物を含む熱可塑性樹脂組成物が、少ない無機充填材配合量で優れた難燃性を示す理由の詳細は明らかとなっていないが、以下のように推定される。
【0027】
即ち、特定範囲の水和物を有する(C)ホウ酸塩水和物は、(A)熱可塑性樹脂の燃焼温度付近においてガラス化すると共に(B)無機フィラーとセラミックス化することにより、難燃性向上に有効な酸素遮断膜を形成すると考えられる。(C)ホウ酸塩水和物の水和物量が多過ぎると、ホウ酸塩のみが溶融して単独でのガラス化が進行することにより、膜形成が不完全となってしまい、逆に水和物量が少な過ぎると(B)無機フィラーとの反応性が低下し、やはり膜形成が不完全となると推測される。
【0028】
なお、水和数nが0.6〜3.0の(C)ホウ酸塩水和物は、通常、その融点が130℃以上であり、粉末状態で(A)熱可塑性樹脂に添加混練した場合における気泡発生の問題はなく、(A)熱可塑性樹脂に対して良好な作業性のもとに混練することができる。
【0029】
{(A)熱可塑性樹脂}
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する(A)熱可塑性樹脂(以下「(A)成分」ということがある。)は、熱可塑性の合成樹脂であれば特に限定されず、例えばポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、合成ゴム等が挙げられ、これらの樹脂の1種を単独で用いても良く、異なる樹脂種または同種の樹脂種のものの2種以上を組み合わせて用いても良い。
上記(A)熱可塑性樹脂の中では、樹脂そのものの燃焼性が高く、本発明による難燃性の改善効果が著しい点でポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0030】
以下に(A)熱可塑性樹脂の各々の樹脂について詳細に説明するが、以下の(A)熱可塑性樹脂は、それ自体既知の通常用いられるものであり、市販品を購入することができ、また公知の方法によって製造することもできる。
【0031】
<ポリオレフィン樹脂>
本発明におけるポリオレフィン樹脂とは、例えばエチレン、プロピレン等の炭素数3から20のα−オレフィン、炭素数3から20の環状オレフィン(例えばシクロペンテン、メチルシクロペンテン、ジメチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、ノルボルネンおよびその誘導体、エチリデンおよびその誘導体など)、ジエン類(ブタジエン、イソプレン、シクロブタジエンなど)、スチレン類(例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)、シクロヘキサン類(例えばビニルシクロヘキサン、メチルビニルシクロヘキサンなど)、シクロペンタン類(例えばビニルシクロペンタン、メチルビニルシクロペンタンなど)等の炭素と水素で構成された化合物であって、少なくとも1つ以上の二重結合を有する化合物を単量体とした単独重合体または共重合体であり、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、およびスチレンから選ばれる少なくとも1種を単量体として含む単独重合体または共重合体である
【0032】
単独重合体の例としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルブテン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0033】
共重合体の例としては、エチレン共重合体、プロピレン共重合体、ブタジエン共重合体、スチレン共重合体等が挙げられる。
【0034】
エチレン共重合体としては、例えばエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体(以下、エチレン−α−オレフィン共重合体);エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる(ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を意味する)。
【0035】
エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数3から20のα−オレフィンが好ましい。具体的には、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等を挙げることができる。
【0036】
プロピレン共重合体としては、例えばプロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体(以下、プロピレン−α−オレフィン共重合体)を挙げることができる。ここで、α−オレフィンとしては、エチレン、および炭素数4から20のα−オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0037】
ブタジエン共重合体としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が挙げられる。
【0038】
スチレン共重合体としては、例えばスチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ABS樹脂(ポリブタジエンまたはスチレンとブタジエンの共重合体にスチレンとアクリロニトリルをグラフト共重合したもの、またはスチレン−アクリロニトリル共重合体にアクリロニトリル−ブタジエン共重合体をブレンドしたもの)、AAS樹脂(アクリルゴムにスチレンとアクリロニトリルをグラフト重合したもの)、MBS樹脂(ポリブタジエンまたはスチレンとブタジエンの共重合体にスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト共重合したもの)等が挙げられる。
【0039】
本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、オレフィンの単独重合体、エチレン共重合体、プロピレン共重合体、スチレン共重合体が好ましい。更に好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ABS樹脂である。
【0040】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは1.5重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。また、上記エチレン−エチルアクリレート共重合体のエチルアクリレート含量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上で、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。また、上記ABS樹脂のブタジエン含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上で、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
【0041】
本発明におけるポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常10,000以上であり、20,000以上がより好ましく、40,000以上が特に好ましい。また、同様の理由で、重量平均分子量は、通常1,000,000以下であり、700,000以下が好ましく、500,000以下が特に好ましい。
【0042】
これらのポリオレフィン樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
<ポリエステル樹脂>
本発明におけるポリエステル樹脂とは、分子内にエステル結合を有する高分子体のことであって、多価カルボン酸とポリアルコールまたはエポキシドとの重縮合体である。
【0044】
ここで、多価カルボン酸としては、例えば脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸やピロメリット酸などの官能基を複数もつカルボン酸等が挙げられ、これらのエステル形成が可能な誘導体(例えば無水物、アルキルエステル、アリールエステルなど)でもよい。
【0045】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などの炭素数3〜20の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0046】
脂環式ジカルボン酸としては、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの炭素数8〜20の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0047】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などのビフェニルジカルボン酸類などの炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸およびその無水物(例えば無水フタル酸など)が挙げられる。
【0048】
ポリアルコールとしては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、グリセリンやペンタエリスリトールなどの複数の官能基をもつポリオール等が挙げられる。
【0049】
脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の炭素数2〜12の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0050】
脂環式ジオールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素数6〜20の脂環式ジオールが挙げられる。
【0051】
芳香族ジオールとしては、例えば1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、キシリレングリコール、ビフェノール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオールなどの炭素数6〜20の芳香族ジオールが挙げられる。
【0052】
エポキシドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ビニルオキシラン、ビオキシラン、酸化スチレンなどが挙げられる。
【0053】
これらの多価カルボン酸とポリアルコールまたはエポキシドとの重縮合体であるポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの炭素数10〜20のアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどの炭素数14〜20のアルキレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの炭素数6〜20のアルキレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの炭素数8〜20のアルキレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートなどの共重合体などが挙げられる。
中でもポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートがより好ましく、更に好ましくはポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートである。
【0054】
ポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量(本発明において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量をさす。)で、通常1,000以上であり、2,000以上がより好ましい。また同様の理由で、重量平均分子量は、通常100,000以下であり、70,000以下が好ましく、50,000以下が特に好ましい。
【0055】
これらのポリエステル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0056】
<ポリアミド樹脂>
本発明におけるポリアミド樹脂とは、ラクタムの重縮合体やジアミンとジカルボン酸の共縮重合体で、アミド結合によって多数の単量体が結合した重合体または共重合体である。
【0057】
ラクタムとしては、例えばブタノ−4−ラクタム(γ−ブチロラクタム)、ペンタノ−5−ラクタム(δ−ラクタム)、ヘキサノ−6−ラクタム(ε−カプロラクタム)、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどの炭素数4〜20のラクタムが挙げられる。
【0058】
ジアミンとしては、例えばプトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、メチルペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミンなどの炭素数3〜12のジアミンが挙げられる。
【0059】
ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの炭素数4〜16の脂肪族ジカルボン酸や、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの炭素数8〜20の脂環式ジカルボン酸、更にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンカルボン酸類などの炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸およびその無水物(例えば無水フタル酸など)が挙げられる。
【0060】
ポリアミド樹脂としては、例えばナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612などのラクタムを単量体とした重縮合体および共縮重合体、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5Tなどのラクタムとジアミンの共縮重合体が挙げられる。
中でも、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5Tが好ましく、ナイロン6、ナイロン66がより好ましい。
【0061】
ポリアミド樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常1,000以上であり、2,000以上がより好ましく、3,000以上が特に好ましい。また同様の理由で、重量平均分子量は、通常150,000以下であり、130,000以下が好ましく、110,000以下が特に好ましい。
【0062】
これらのポリアミド樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0063】
<アクリル樹脂>
本発明におけるアクリル樹脂とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体である。
【0064】
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどの炭素数4〜8のアクリル酸エステルが挙げられる。
【0065】
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどの炭素数5〜9のメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0066】
アクリル樹脂の中では、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルの重合体が好ましい。
【0067】
アクリル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常1,000以上であり、2,000以上がより好ましく、3,000以上が特に好ましい。また、同様の理由で、重量平均分子量は、通常500,000以下であり、200,000以下が好ましく、100,000以下が特に好ましい。
【0068】
これらのアクリル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0069】
<ビニル樹脂>
本発明におけるビニル樹脂とは、ビニル基を有する単量体の重合体或いはその誘導体である。
【0070】
ビニル基を有する単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル、N−ビニルピロリドンなどのビニルアミンが挙げられる。
【0071】
ビニル基を有する単量体の重合体およびその誘導体としては、例えばポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリクロトン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニルなどのビニルエステル重合体、ポリビニルピロリドンなどのビニルアミン重合体、ポリビニルアルコールやビニロンのような誘導体が挙げられる。
中でも、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0072】
ビニル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常1,000以上、200,000以下である。
【0073】
これらのビニル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0074】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明におけるポリカーボネート樹脂とは、単量体がカーボネート基によって接合されている樹脂であり、例えばジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとの反応によって得られる重合体が挙げられる。
【0075】
単量体であるジヒドロキシ化合物としては、一般的には2つ以上のヒドロキシル基を有しており、例えば、芳香族ジオール、脂肪族ジオールなどが挙げられる。
【0076】
芳香族ジオールとしてはビスフェノールAのようなビスフェノール類、1,4−ジヒドロキシベンゼンのようなジヒドロキシベンゼン類、2,6−ジヒドロキシナフタレンのようなジヒドロキシナフタレン類などが挙げられる。
【0077】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコールや1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような炭素数2〜12の鎖状脂肪族ジオール、1,4−ジヒドロキシシクロシヘキサンやシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジエタノール、2,6−ジヒドロキシデカリン、アダマンタンジオール、トリシクロデカンジメタノールのような炭素数6〜14の環状脂肪族ジオール、フランジオールやイソソルビドのような炭素数4〜12の複素環式ジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。
【0078】
ジヒドロキシ化合物としては、中でも、ビスフェノールAやエチレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、アダマンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、イソソルビドが好ましく、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールやイソソルビドがより好ましい。これらのジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0079】
上記のジヒドロキシ化合物と反応する炭酸エステルは、上記ジヒドロキシ化合物と反応して目的とするポリカーボネート樹脂が得られるものであれば特に制限はなく、ジクロロカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられ、工業的な取り扱いの面でジメチルカーボネートやジフェニルカーボネートがより好ましく、ジフェニルカーボネートが更に好ましい。炭酸エステルについても、1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0080】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常2,000以上であり、5,000以上がより好ましい。また、同様の理由で、重量平均分子量は、通常200,000以下であり、100,000以下がより好ましい。
【0081】
これらのポリカーボネート樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0082】
<ポリウレタン樹脂>
本発明におけるポリウレタン樹脂とは熱可塑性ポリウレタン樹脂であり、ポリオールとジイソシアナートから得られた重合体である。
【0083】
ポリオールとしては2個以上の水酸基を有する化合物であって、例えば多価アルコールや高分子ポリオールが挙げられる。
【0084】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価のアルコール、グリセリンやペンタエリスリトールなどの3個以上の水酸基を有するアルコールが挙げられる。
【0085】
高分子ポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0086】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0087】
ポリエステルポリオールとしては、例えば前述の多価アルコール(例えばエチレングリコールやプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)とコハク酸やアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸との縮重合物が挙げられる。
【0088】
ポリアクリルポリオールとしては、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレートの重合体などが挙げられ、更にはアルコールとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとの共重合体も挙げられる。
【0089】
ポリラクトンポリオールとしては、例えばポリカプロラクトンなどのラクトン開環重合体のポリオールが挙げられ、ポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0090】
ジイソシアネートとしては、例えば脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどが挙げられ、更にはこれらの二量体や三量体などの多量体が挙げられる。
【0091】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば1,4−ブタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0092】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0093】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、m−テトラメチレンキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0094】
ジイソシアネートとしては、これらの単量体の他、これらの二量体や三量体などが挙げられ、更にはポリフェニルメタンポリイソシアネートが挙げられる。
【0095】
ポリウレタン樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常1,000以上、200,000以下である。
【0096】
これらのポリウレタン樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0097】
<アセタール樹脂>
本発明におけるアセタール樹脂とは、オキシメチレン構造を有する重合体であって、ホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマーや、オキシメチレン構造と共にオキシエチレン構造も有する共重合体などが挙げられる。
【0098】
アセタール樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常1,000以上、200,000以下である。
【0099】
これらのアセタール樹脂は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0100】
{(B)無機フィラー}
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する(B)無機フィラー(以下「(B)成分」ということがある。)としては、無機水酸化物、層状複水酸化物、無機炭酸塩、無機酸化物、モリブデン酸塩、およびタングステン酸塩から選ばれる1種類または2種類以上の無機化合物が挙げられる。
【0101】
<無機水酸化物>
無機水酸化物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第6族、第12族、第13族元素の水酸化物が挙げられる。
【0102】
具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化モリブデン、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
中でも、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムが好ましく、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムがより好ましい。
【0103】
<層状複水酸化物>
層状複水酸化物とは、従来公知の層状複水酸化物であって、一般的に以下のような一般式で表され、ブルーサイトに類似した水酸化物の正八面体基本層、および陰イオンと層間水から構成される中間層が交互に積層した構造を有している。
【0104】
[M2+1−x3+(OH][An−x/n・yHO]
【0105】
ここでM2+はMg,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znなどの二価金属イオン、M3+はAl,Cr,Fe,Co,Inなどの三価金属イオンであり、基本骨格である水酸化物の正八面体層は、二価金属イオンの一部を三価金属イオンで置換することで結果として正電荷を持ち、その電荷を補うために層間へ陰イオンを取り込んで電気的中性を保っている。中間層の陰イオンAn−はCl,NO,CO2−,COO などのn価の陰イオンであり、種類によっては交換が可能である。層状複水酸化物の中で最も一般的に用いられているのがハイドロタルサイトであり、その構造はMg2+の一部がAl3+で置き換わり、層間にCO2−を有していることが特徴である。
【0106】
層状複水酸化物は、合成品、天然品のいずれでも良く、具体的には、例えばハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、パイロオーライト等が挙げられる。層状複水酸化物の中でも、特に好ましくは、ハイドロタルサイトである。
【0107】
<無機炭酸塩>
無機炭酸塩としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族の元素の炭酸塩が挙げられる。
【0108】
具体的には、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ジルコニウム、塩基性炭酸亜鉛などが挙げられる。
中でも塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸ジルコニウム、塩基性炭酸亜鉛が好ましく、塩基性炭酸マグネシウムがより好ましい。
【0109】
<無機酸化物>
無機酸化物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第6族、第12族、第13族、第14族の元素の酸化物や、これらの複合酸化物が挙げられる。
【0110】
アルカリ金属の酸化物としては、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウムなどが挙げられる。
アルカリ土類金属の酸化物としては、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウムなどが挙げられる。
周期表第4族の元素の酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
周期表第6族の元素の酸化物としては、例えば酸化モリブデン、酸化タングステンなどが挙げられる。
周期表第12族の元素の酸化物としては、例えば酸化亜鉛などが挙げられる。
周期表第13族の元素の酸化物としては、例えば酸化ホウ素、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
周期表第14族の元素の酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化錫などが挙げられる。
【0111】
これらの中で好ましい無機酸化物は、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、およびこれら酸化物から選ばれた一つ以上の酸化物を含む複合酸化物であり、より好ましい無機酸化物は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、およびこれら酸化物から選ばれた一つ以上の酸化物を含む複合酸化物であり、更に好ましい無機酸化物は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、およびこれら酸化物から選ばれた一つ以上の酸化物を含む複合酸化物であり、最も好ましいのは酸化ケイ素である。
【0112】
<モリブデン酸塩>
モリブデン酸塩としては、例えばモリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アンモニウムなどが挙げられ、中でもモリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸アンモニウムが好ましく、モリブデン酸アンモニウムがより好ましい。
モリブデン酸アンモニウムとしては、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(通称:モリブデン酸アンモニウム)(NHMo24・4HOやオクタモリブデン酸アンモニウム(HNMo26などが挙げられるが、オクタモリブデン酸アンモニウムが好ましい。
【0113】
<タングステン酸塩>
タングステン酸塩としては、例えばタングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムなどが挙げられ、中でもタングステン酸ナトリウム、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムが好ましく、パラタングステン酸アンモニウムがより好ましい。
【0114】
<粒径>
本発明において用いられる(B)無機フィラーの形状は特に限定されるものではないが、粒子状や繊維状(針状)のものが挙げられ、好ましくは粒子状のものが用いられる。その粒径は特に限定されるものではないが、より小さい方が(A)熱可塑性樹脂中での分散性がより向上するため好ましい。(B)無機フィラーの粒径は、例えば、レーザー回折法・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径で10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。ただし、この体積平均粒子径は通常10nm以上である。
【0115】
<表面処理>
上記(B)無機フィラーは、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステルやシランカップリング剤等で表面処理してあるものを用いても良い。
【0116】
<好適な無機フィラーおよびその組み合わせ>
上述のような無機フィラーは、1種を単独で用いても、または2種以上の混合物として用いても良いが、2種以上の混合物として用いた方が酸素遮断膜の物理的強度の向上や、燃焼時のドリップ抑制などの形状保持効果の向上の面でより好ましい。
【0117】
1種を単独で用いる場合の無機フィラーとしては特に限定されることはなく、通常、上述の無機水酸化物、層状複水酸化物、無機炭酸塩、無機酸化物等の中から任意の無機フィラーを用いれば良いが、好ましくは無機水酸化物、層状複水酸化物、無機炭酸塩から選ばれる無機フィラーである。
【0118】
無機フィラーを2種類以上の混合物として使用する場合、用いる無機フィラーおよびその組み合わせは特に限定されることはないが、無機水酸化物、層状複水酸化物、無機炭酸塩から選ばれる少なくとも1種以上の無機フィラーを含むのが好ましく、無機水酸化物、層状複水酸化物、無機炭酸塩から選ばれる少なくても1種以上の無機フィラーを含み、かつ無機酸化物およびモリブデン酸塩の中から選ばれる少なくとも1種以上の無機フィラーを含むのがより好ましい。
【0119】
{(C)ホウ酸塩水和物}
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する(C)ホウ酸塩水和物(以下「(C)成分」ということがある。)は、該ホウ酸塩水和物の水和数(水和物の数)nが0.6〜3.0のものであれば特に限定されることはない。
【0120】
<種類>
本発明で使用される(C)ホウ酸塩水和物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩水和物が挙げられる。
【0121】
具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウムなどのアルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0122】
中でも、アルカリ金属ホウ酸塩水和物とアルカリ土類金属ホウ酸塩水和物が好ましく、アルカリ金属ホウ酸塩水和物がより好ましく、アルカリ金属ホウ酸塩水和物の中ではナトリウムホウ酸塩水和物およびカリウムホウ酸塩水和物がより好ましく、ナトリウムホウ酸塩水和物が最も好ましい。
また、アルカリ土類金属ホウ酸塩水和物の中ではマグネシウムホウ酸塩水和物およびカルシウムホウ酸塩水和物がより好ましく、マグネシウムホウ酸塩水和物がより好ましい。
【0123】
ホウ酸ナトリウム水和物としては、四ホウ酸ナトリウム水和物(Na・nHO)、八ホウ酸ナトリウム水和物(Na13・nHO)、過ホウ酸ソーダ(NaBO・nHO)などが挙げられ、四ホウ酸ナトリウム水和物がより好ましい。
ホウ酸カリウム水和物としては、四ホウ酸カリウム水和物(K・nHO)などが挙げられる。
【0124】
<水和数n>
本発明で用いる(C)ホウ酸塩水和物は、特定範囲の水和数nを有しており、この水和数nは通常0.6以上であり、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上であり、更に好ましくは0.9以上であり、最も好ましくは1.0以上である。また通常3.0以下であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下である。ホウ酸塩水和物の水和数nが0.6未満でも3.0を超えても、本発明による優れた難燃性を得ることができない。
【0125】
<製造方法>
本発明で使用される(C)ホウ酸塩水和物は、上述のように特定範囲の水和数nを有していれば、その製造方法は特に限定されるものではない。
例えば、水和数nが特定の範囲内であれば、市販されているホウ酸塩水和物を使用しても良く、任意の水和数を有するホウ酸塩水和物または無水物を乾燥または水和して水和数nを調整した後に使用しても良い。更にはホウ酸塩水溶液から蒸発・乾燥することによって水和数nを調整したものでも良い。
【0126】
本発明において、ホウ酸塩水和物を乾燥する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の乾燥機を用いて行うことができる。ホウ酸塩水和物の乾燥に用いる乾燥機としては、例えば、材料静置型の回分式箱型乾燥機(真空式、平行流式、通気式など)、トンネル乾燥機やバンド(ベルト)乾燥機、竪型乾燥機などの材料搬送型乾燥機、回転乾燥機や流動床乾燥機、捏和乾燥機、円筒攪拌乾燥機、みぞ型攪拌乾燥機などの材料攪拌型乾燥機、噴霧乾燥機や気流乾燥機などの熱風搬送型乾燥機、円筒乾燥機、赤外線乾燥機、凍結乾燥機、高周波乾燥機などが挙げられる。
【0127】
これらの(C)ホウ酸塩水和物は、必要に応じて粉砕処理をして使用される。
本発明において(C)ホウ酸塩水和物を粉砕する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の粉砕機を用いて行うことができる。ホウ酸塩水和物の粉砕に用いる粉砕機としては、例えばジョークラッシャー、ジャイレリークラッシャー、シングルロールクラッシャーなどの粗砕機や、コーンクラッシャー、ダブルロールクラッシャー、エッジランナー、ハンマーミル、ディスククラッシャー、ロータリークラッシャー、遠心リングミル、ボールミル、ロッドミル、チューブミル、振動ミル、ロールミル、リングローラーミル、マイクロナイザー、ジェットマイザー、マジャックミル、レイモンド垂直ミルなどの粉砕機などが挙げられる。
【0128】
<粒径>
本発明において用いられる(C)ホウ酸塩水和物の形状は特に限定されるものではないが、好ましくは粒子状のものが用いられる。その粒径は特に限定されるものではないが、より小さい方が(A)熱可塑性樹脂中での分散性がより向上するため好ましい。例えば、(C)ホウ酸塩水和物の粒径は、レーザー回折法・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径で10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。ただし、この体積平均粒子径は通常10nm以上である。
【0129】
{(D)着色材料}
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記(A)熱可塑性樹脂、(B)無機フィラーおよび(C)ホウ酸塩水和物を含む樹脂組成物であるが、必要に応じて(D)着色材料(以下「(D)成分」ということがある。)を配合することにより任意の色に加色しても良い。
【0130】
本発明で使用される(D)着色材料としては、特に限定されるものではなく、任意の着色材料を使用することが出来る。例えば、アゾ系、アントラキノン系、チオインジゴ系、キノリン系、インダンスレン系などの染料や、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンジジン系などの有機顔料、更には無機顔料(金属酸化物や硫化物、硫酸塩、炭素など)などが挙げられる。
【0131】
黒色に加色される難燃性樹脂組成物の場合、使用される(D)着色材料は黒系の色を呈する着色材料であれば特に限定されるものではないが、炭素を使用するのが好ましい。
【0132】
本発明において用いられる炭素の種類は特に限定されるものではないが、通常微粒子状の炭素であり、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック等のカーボンブラック;カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノファイバー等が挙げられ、好ましくは、ケッチェンブラックやカーボンブラックである。
【0133】
前記微粒子状の炭素の粒子径は、特に限定されるものではないが、レーザー回折法・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径が、通常50μm以下であり、10μm以下であることが好ましく、更に好ましくは5μm以下である。ただし、この体積平均粒子径は、通常10nm以上である。炭素の粒径が大き過ぎると(A)熱可塑性樹脂中での分散が不十分となり、炭素微粒子の添加効果が低減することがある。
【0134】
{(E)助剤}
本発明の難燃性樹脂組成物は、必要に応じて更に(E)助剤(以下「(E)成分」ということがある。)を配合することができる。
【0135】
(E)成分を配合すると、更に難燃性を向上させられる点で好ましい。
本発明で使用される(E)助剤としては、含窒素有機化合物や多価アルコールが挙げられる。
【0136】
含窒素有機化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばメラミン類やその塩類、アミド化合物、イミド化合物が挙げられる。
具体的には、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのメラミン類、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、ホウ酸メラミン、メラミンシアヌレートなどのメラミン塩類、コハク酸アミド、シュウ酸アミド、アジポアミド、フタル酸アミド、トリヒドロキシベンズアミドなどのアミド化合物、コハク酸イミド、フタルイミドなどのイミド化合物が挙げられ、中でもメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミ、リン酸メラミン、硫酸メラミン、ホウ酸メラミン、メラミンシアヌレート、コハク酸アミド、フタル酸アミドが好ましく、メラミン、アセトグアナミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、コハク酸アミドがより好ましい。
【0137】
多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、デキストリン、ジヒドロキシ安息香酸、ナフタレンジオール、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノールなどが挙げられ、中でもペンタエリスリトール、デキストリンが好ましい。
【0138】
これら(E)成分は、上記の1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
(E)助剤を添加することにより難燃性が更に向上する理由については明らかではないが、以下のように推定される。
【0140】
本発明の重要な必須構成成分である特定の水和数を有する(C)ホウ酸塩水和物は、(A)熱可塑性樹脂の燃焼温度付近においてガラス化すると共に(B)無機フィラーとセラミックス化すると推測されているが、この際に(E)助剤が存在することにより前述のガラスまたはセラミックスが(E)助剤またはその反応性生物を取り込むことにより、ガラスまたはセラミックスからなる膜の性状が改質され、より安定性を増し、難燃性が更に向上していると推測される。
【0141】
{その他の成分}
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記(A)〜(E)成分以外に、必要に応じ、フェノール系、アミン系、硫黄系などの酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋開始剤、滑剤、軟化剤、充填剤などの各種添加剤の1種もしくは2種以上が適当量含有されていても良い。
【0142】
{配合割合}
本発明の難燃性樹脂組成物における各成分の含有割合は、本発明の効果を奏する範囲内の含有割合であれば特に制限はないが、例えば、次の通りである。
【0143】
(B)無機フィラーの含有量と(C)ホウ酸塩水和物の含有量の総和は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常5重量部以上、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、最も好ましくは25重量部以上である。また通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下、更に好ましくは100重量部以下である。
この割合が上記下限未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の難燃性が不十分となる場合があり、上記上限超過では、得られる難燃性樹脂組成物の成形性が悪くなる場合があり、更には成形された各種製品の機械的強度が低下する場合がある。
【0144】
難燃性樹脂組成物中の(B)無機フィラーと(C)ホウ酸塩水和物の量比は特に限定されるものではないが、(C)ホウ酸塩水和物の含有量は(B)無機フィラー100重量部に対して、通常5重量部以上であり、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは20重量部以上であり、更に好ましくは30重量部以上であり、最も好ましくは40重量部以上である。また通常2000重量部以下であり、好ましくは1000重量部以下であり、より好ましくは400重量部以下であり、更に好ましくは250重量部以下であり、最も好ましくは150重量部以下である。
【0145】
本発明では(B)無機フィラーと(C)ホウ酸塩水和物の両方が必須成分であることから、いずれか一方が多過ぎたり、或いは少な過ぎたりすると、これらを併用することによる効果を発揮することが出来ず、好ましくない。
【0146】
本発明の難燃性樹脂組成物が(D)着色材料を含む場合、その含有量は、用いる(D)着色材料や所望とする色調によっても異なり、その使用量は特に制限されるものではないが、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは6重量部以下で、通常0.00001重量部以上、好ましくは0.0001重量部以上、より好ましくは0.0002重量部以上である。但し、屋外用途用の樹脂組成物であって耐光性を付与するために炭素粉末(例えばカーボンブラックなど)を添加する場合には、通常(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上である。
(D)着色材料の含有量が多過ぎると難燃性が損なわれるおそれがあり、特に炭素の場合には、成形性や強度が損なわれるおそれがある。(D)着色材料の含有量は、着色の目的が果たせれば、その下限値は特に制限されないが、炭素の場合には、含有量が少な過ぎると十分な耐候性が付与されない場合がある。
【0147】
本発明の難燃性樹脂組成物が(E)助剤を含む場合、その含有量は(B)無機フィラーおよび(C)ホウ酸塩水和物との総和として、即ち、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計で、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して通常5重量部以上、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、最も好ましくは25重量部以上である。また、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下、更に好ましくは100重量部以下である。
【0148】
難燃性樹脂組成物中の(E)助剤と(C)ホウ酸塩水和物の量比は特に限定されるものではないが、(E)助剤の含有量はその総量として(C)ホウ酸塩水和物100重量部に対して通常5重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは15重量部以上であり、更に好ましくは20重量部以上である。また通常1000重量部以下であり、好ましくは500重量部以下であり、更に好ましくは300重量部以下であり、最も好ましくは200重量部以下である。
【0149】
(E)助剤の含有量が少な過ぎると、これを配合したことによる難燃性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると(E)助剤自体の燃焼により、難燃性が低下してしまう場合がある。
【0150】
2種類以上の(E)助剤を添加する場合、それらの量比は特に限定されるものではないが、最も含有量が多い(E)助剤100重量部に対して、各々の(E)助剤の量は通常0.1〜100重量部であり、好ましくは0.5〜100重量部であり、より好ましくは1〜100重量部であり、最も好ましくは5〜100重量部である。
【0151】
また、本発明の難燃性樹脂組成物が、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋開始剤、滑剤、軟化剤、充填剤などの各種添加剤を含む場合、その含有量は通常の熱可塑性樹脂組成物の配合量程度とされるが、添加剤量の総和は前述の(B)無機フィラー、(C)ホウ酸塩水和物および(E)助剤との総和として、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下、更に好ましくは100重量部以下である。
【0152】
[難燃性樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、(A)熱可塑性樹脂に対し、(B)無機フィラーおよび(C)ホウ酸塩水和物を混練して製造することが好ましい。
また、本発明の難燃性樹脂組成物が更に(D)着色材料および/または(E)助剤を含む場合には、通常(A)熱可塑性樹脂に対し、(B)無機フィラーおよび(C)ホウ酸塩水和物、更には(D)着色材料および/または(E)助剤を混練して製造することが好ましい。
【0153】
混練する順序は特に限定されるものではなく、(A)熱可塑性樹脂に対して(B)無機フィラーを先に混練しても良く、逆に(C)ホウ酸塩水和物を先に混練しても良く、(B)無機フィラーと(C)ホウ酸塩水和物を同時に混練しても良い。また何れの構成成分も一括して混練しても良く、分割して混練しても良い。ここで用いられる(C)ホウ酸塩水和物は、必要に応じて前述の方法でその水和数nが調整されたものである。
【0154】
本発明において必要に応じて添加される前述の(D)着色材料、(E)助剤やその他成分(各種添加剤など)は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、混練工程の何れの段階で混練しても良く、(B)無機フィラーおよび/または(C)ホウ酸塩水和物と同時に混練しても良い。
これらの(B)無機フィラーおよび(C)ホウ酸塩水和物、並びに必要に応じて添加される(D)着色材料、(E)助剤やその他の成分は、予め混合してから(A)熱可塑性樹脂に混練しても良く、それらの一部のみを予め混合してから(A)熱可塑性樹脂に混練しても良い。
【0155】
本発明において、難燃性樹脂組成物の各構成材料を混練する方法は特に限定されるものではなく、既知の何れの方法でも実施することが出来る。
例えば、熱可塑性樹脂を加熱して溶融させた状態で各構成材料を添加して混練する方法が挙げられ、この場合、必要であれば各構成材料を予め加熱してから添加しても良い。
混練に用いる混練装置は、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されるものではなく、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの汎用の混練装置を用いることができる。
【0156】
[樹脂成形体]
本発明のホウ酸塩水和物は、上述の本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなるものであり、その成形方法には特に制限はなく、パイプ押出やフィルム押出、シート押出、電線被覆、繊維、ネット、トランスキャストモールディングなどの押出成形、カレンダー成形、射出成形、プレス成形、押出ブローや射出ブロー、射出・押出ブロー、シートブロー、コールドパリソン法などのブロー成形などが挙げられる。
【0157】
本発明の樹脂成形体は、極めて良好な難燃性を示す上に必要に応じて任意の色に加色可能であるので、様々な用途に好適である。
【0158】
その用途としては例えば、電線の被覆、自動車用部材、電子機器・家電製品、包装材・容器、建材、機械部品、日用品、農業資材などが挙げられる。
【0159】
電線の被覆としては、例えば絶縁電線、電子機器配線用電線、自動車用電線、機器用電線、電源コード、屋外配電用絶縁電線、電力用ケーブル、制御用ケーブル、通信用ケーブル、計装用ケーブル、信号用ケーブル、移動用ケーブル、および船用ケーブルなどの各種電線やケーブル、家庭配線、自動車用ワイヤーハーネス等の被覆材としての利用が期待できる。
【0160】
自動車用部材として、例えばインストルメントパネル、バンパー、燃料タンク、タイヤ、ワイパーブレード、タイヤチェーン、ランプ(ハウジング、レンズ、カバー)、外板などの部材としての利用が期待できる。
【0161】
電子機器・家電製品としては、例えばハウジング、基板、シャーシーやパネルなどの構造部品、歯車やプーリーなどの機構部品などとしての利用が期待できる。
【0162】
包装材・容器としては、例えばコンテナ、クレート、大型容器などとしての利用が期待できる。
【0163】
建材としては、例えばテント、人工芝、壁紙、カーテン、カーテンレール、防音・断熱材などとしての利用が期待できる。
【0164】
機械部品としては、例えば歯車、車輪、軸受けなどとしての利用が期待できる。
【0165】
日用品としては、例えば収納家具や棚、テーブル、椅子などの家具類、バケツやスコップ、チェア、踏み台などの雑貨品、まな板やトレー、容器類などの台所用品、洗面器や椅子、スリッパなどの浴室用品、鞄、靴などが挙げられる。
【実施例】
【0166】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって制限されるものではない。
【0167】
以下の実施例および比較例において用いた材料および得られた樹脂組成物の難燃性試験方法は次の通りである。
【0168】
[(A)熱可塑性樹脂]
(A−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体:日本ポリエチレン株式会社製「レクスパールEEA A1150」(エチルアクリレート含量:15重量%、JIS K6922−2 メルトフローレート:0.8g/10分)
(A−2)ポリプロピレン樹脂:日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP MA3」(JIS K7210:1999 メルトフローレート:11g/10分)
(A−3)ポリエチレン樹脂:日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLL UJ960」(JIS K6922−2 メルトフローレート:5g/10分)
(A−4)イソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを構造単位とする脂肪族ポリカーボネート(イソソルビドに由来する構造単位:1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70:30(モル%))
(A−5)ABS樹脂:UMG
ABS株式会社製「UMG ABS EX18A」(ISO 1133 メルトボリュームレート(220℃):18cm/10分)
(A−6)ポリブチレンテレフタレート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバデュラン 5010R5」
(A−7)ポリブチレンサクシネートアジペート共重合体:三菱化学株式会社製「GS Pla AD92W」(JIS
K7210 メルトフローレート(190℃,2.16kgf):4.5g/10分)
(A−8)ポリブチレンサクシネート:三菱化学株式会社製「GS Pla AZ91T」(JIS
K7210 メルトフローレート(190℃,2.16kgf):4.5g/10分)
【0169】
[(B)無機フィラー]
(B−1)塩基性炭酸マグネシウム:ナカライテスク社製
(B−2)ハイドロタルサイト:協和化学工業株式会社製「DHT−4A」(体積平均粒子径50%:0.4μm)
(B−3)酸化ケイ素:日本アエロジル社製「AEROSIL 200」(一次粒子の平均径:12μm)
(B−4)酸化ケイ素:日本アエロジル社製「AEROSIL R−972」(一次粒子の平均径:16μm)
(B−5)オクタモリブデン酸アンモニウム:日本無機化学工業社製「TF−2000」((NHMo26を主成分とした複合物、MoO含有量91.4重量%、体積平均粒子径:2μm)
(B−6)水酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製「キスマ5A」(体積平均粒子径50%:0.9μm)
(B−7)水酸化アルミニウム:日本軽金属株式会社製「BF013S」(体積平均粒子径50%:1.3μm)
【0170】
[(C)水和数nが特定の範囲にある(C)ホウ酸塩水和物]
<市販の四ホウ酸ナトリウム十水和物の水和物量と融点の評価>
以下の手順に従って、市販の四ホウ酸ナトリウム十水和物の水和物量と融点を調べた。
四ホウ酸ナトリウム十水和物(和光純薬工業社製)5.3716gをビーカーに入れ、恒温乾燥機内で、120℃で1時間、引き続き300℃で2時間、更に400℃で3時間乾燥した。四ホウ酸ナトリウム水和物は320℃で無水物となるので、この乾燥条件で無水物に変換されたと考えられる。乾燥後の重量は2.8368gであり、この重量減少量から求めた水和物量はn=10.0であった。
また、四ホウ酸ナトリウム十水和物51.80gをビーカーに入れ、棚段式乾燥機内で130℃、2時間処理すると38.02gとなり、この重量減から求められる水和物量はn=4.4である。つまりn=4.4の四ホウ酸ナトリウム塩の融点は少なくとも130℃以上であり、これ以下の水和物量の四ホウ酸ナトリウム塩の融点は130℃以上であると推定した。
【0171】
(C−1)四ホウ酸ナトリウム(1.7水和物):
上記和光純薬工業社製の四ホウ酸ナトリウム十水和物97.80gをビーカーに入れ、恒温乾燥機(TABAI社製ギアオーブン、GPHH−200)内で、120℃で1時間、更に180℃で4時間乾燥し、四ホウ酸ナトリウムn水和物59.44gを得た。重量減少量から求めた乾燥後水和物量はn=1.7であった。この乾燥後のホウ酸塩水和物をボールミルにて粉砕した後に使用した。
【0172】
(C−2)四ホウ酸ナトリウム(1.1水和物):
上記和光純薬工業社製の四ホウ酸ナトリウム十水和物86.34gをビーカーに入れ、恒温乾燥機(TABAI社製ギアオーブン、GPHH−200)内で、120℃で1時間、更に250℃で3時間乾燥し、四ホウ酸ナトリウムn水和物49.96gを得た。重量減少量から求めた乾燥後水和物量はn=1.1であった。この乾燥後のホウ酸塩水和物をボールミルにて粉砕した後に使用した。
【0173】
(C−3)四ホウ酸ナトリウム(1.6水和物)
上記和光純薬工業社製の四ホウ酸ナトリウム十水和物809.6gをステンレス製のトレー皿に入れ、恒温乾燥機(TABAI社製ギアオーブン、GPHH−200)内で、200℃で1時間乾燥し、四ホウ酸ナトリウムn水和物489.2gを得た。重量減少量から求めた乾燥後水和物量はn=1.6であった。この乾燥後のホウ酸塩水和物をボールミルにて粉砕した後に使用した。
【0174】
(C−4)四ホウ酸ナトリウム(1.2水和物)
上記和光純薬工業社製の四ホウ酸ナトリウム十水和物302.04gをステンレス製のトレー皿に入れ、恒温乾燥機(TABAI社製ギアオーブン、GPHH−200)内で、200℃で1時間乾燥し、四ホウ酸ナトリウムn水和物176.93gを得た。重量減少量から求めた乾燥後水和物量はn=1.2であった。この乾燥後のホウ酸塩水和物をボールミルにて粉砕した後に使用した。
【0175】
[(Z)水和数nが特定の範囲外であるホウ酸塩水和物および無水物]
(Z−1)四ホウ酸ナトリウム(4.6水和物):
Borax社製「Neobor」(NaO・2B・5HO)をボールミルにて粉砕したものを使用した。
なお、水和数nは次のように測定した。
Neoborを5.6615gビーカーに入れ、恒温乾燥機内で、120℃で1時間、引き続き300℃で2時間、更に400℃で3時間乾燥した。乾燥後の重量は4.0065gであり、この重量減少量から求めた水和物量はn=4.6であった。
【0176】
(Z−2)四ホウ酸ナトリウム(0.5水和物):
四ホウ酸ナトリウム十水和物(和光純薬工業社製)86.40gをビーカーに入れ、恒温乾燥機(TABAI社製ギアオーブン、GPHH−200)内で、120℃で1時間、更に300℃で4時間乾燥し、四ホウ酸ナトリウムn水和物47.63gを得た。重量減少量から求めた乾燥後水和物量はn=0.5であった。この乾燥後のホウ酸塩水和物をボールミルにて粉砕した後に使用した。
【0177】
(Z−3)四ホウ酸ナトリウム(無水物)
Borax社製「Dehybor」(NaO・2B)をボールミルにて粉砕した後に使用した。
【0178】
(Z−4)ホウ酸亜鉛(3.5水和物):
キシダ化学株式会社製ホウ酸亜鉛(Zn11・3.5HO)を使用した。
なお水和数nは次のように測定した。
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社TG−DTA6300を用い、試料10.345mgをAl製試料容器に入れ、200ml/minの空気を流しながら、室温から1000℃まで10℃/minで昇温しながら重量変化を測定したところ、14.4%の重量減少があった。これから求めた水和数はn=3.5であった。
【0179】
(Z−5)ホウ酸アンモニウム(8.5水和物)
キシダ化学株式会社製ホウ酸アンモニウム((NH1016・nHO)を使用した。
なお水和数nは次のように測定した。
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社TG−DTA6300を用い、試料10.247mgをAl製試料容器に入れ、200ml/minの空気を流しながら、室温から1000℃まで10℃/minで昇温しながら重量変化を測定したところ、37.0%の重量減少があった。ホウ酸アンモニウム水和物が下記式(1)で示される分解をするとして、この重量減少量から求めた水和数はn=8.5であった。
(NH1016・nHO → B1015+2NH+(n+1)H
…(1)
【0180】
[(D)着色材料]
(D−1)黒色系着色材料:キャボット社製 カーボンブラック「VulcanXC72
R」(体積平均粒子径:0.03μm)
【0181】
[(E)助剤]
(E−1)コハク酸アミド:東京化成工業株式会社製
(E−2)メラミン:和光純薬工業株式会社製
(E−3)ペンタエリスリトール:関東化学株式会社製
(E−4)デキストリン:和光純薬工業株式会社製
(E−5)アセトグアナミン:日本合成化学株式会社製(アセトグアナミンモノマー)
(E−6)リン酸メラミン:太平化学産業株式会社製
(E−7)ポリリン酸メラミン:株式会社三和ケミカル製「MPP−A」
【0182】
[難燃性試験A]
UL−94に規定される20mm垂直燃焼試験の条件に準拠して実施した。
具体的には試験片を垂直に立て、その下端部にブタンガスのトーチで10秒間接炎することにより実施した。この際、炎は黄色チップのない青色炎とし、高さが2cmになるように調節した。炎を離してから自消(試験片が燃え尽きる前に消火)もしくは試験片が燃え尽きて燃焼が終了するまでの時間を燃焼継続時間とした。
試験片の厚みを4mmとし、接炎を同サンプルで2回行い、2回共に炎を離してから10秒以内に自消したものは○、それ以外の場合には×とした。
【0183】
[難燃性試験B]
UL−94に規定される20mm垂直燃焼試験の条件に準拠して実施した。
具体的には試験片を垂直に立て、その下端部にメタンガスのバーナーで10秒間接炎することにより実施した。その際、バーナーはASTM D5025に適合したものを用い、バーナーへメタンガスを105ml/分で供給し、バーナーから高さ20mm±1mmの青い炎になるように調節した。炎を離してから自消(試験片が燃え尽きる前に消火)もしくは試験片が燃え尽きて燃焼が終了するまでの時間を燃焼継続時間とした。
難燃性試験条件をより厳しい判断とする為、試験片の厚みは3mmとし、[難燃性試験A]よりも薄い試料片を用いた。
接炎を1回、または同サンプルで2回行い、次に示す(1)または(2)の場合には○、それ以外の場合には×とした。
(1) 一回目の接炎時に、炎をサンプルから離してから10秒以内に自消したもの。
(2) 一回目の接炎時に、試料のドリップや滑落することなしに自消し、かつ二回目の接炎時に、炎をサンプルから離してから10秒以内に自消したもの。
【0184】
[難燃性試験C]
難燃性試験Bと同様に3mm厚の試料片を垂直に立て、その下端部にメタンガスのバーナーで10秒間接炎することにより実施した。
より高い難燃性を比較できるように、判定を三段階評価とした。
具体的には接炎を同サンプルで2回行い、次に示す(1)の場合には◎、(2)の場合には○、それ以外の場合には×とした。
(1) 一回目の接炎時に、炎をサンプルから離してから10秒以内に自消し、かつ二回目の接炎時に、試料のドリップや滑落することなしに自消したもの。
(2) 一回目の接炎時に、試料のドリップや滑落することなしに自消し、かつ二回目の接炎時に、炎をサンプルから離してから10秒以内に自消したもの。
【0185】
[難燃性試験D]
難燃性試験Cの条件で1回目の接炎にて着火が認められなかったものに関して以下の条件にて実施した。
具体的には厚み3mmの試験片を垂直に立て、その下端部にメタンガスのバーナーで接炎することにより実施した。その際、難燃性試験条件を更に厳しい判断とする為、接炎時間を20秒間とした。
接炎を同サンプルで2回行い、2回共に炎を離してから10秒以内に自消したものは○、それ以外の場合には×とした。
【0186】
[実施例1〜6,8、比較例1〜7、9〜10]
表1に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、130℃、100回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより130℃で、80mm×10mm×4mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Aの条件で試験を行った。結果を表1に示す。
【0187】
[実施例7、比較例8]
表1に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、200℃、100回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより230℃で、80mm×10mm×4mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Aの条件で試験を行った。結果を表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
[実施例9、比較例11,12]
表2に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、180℃、100回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより200℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Bの条件で試験を行った。結果を表2に示す。
【0190】
【表2】

【0191】
[実施例10、比較例13]
表3に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、180℃、53回転/分で6分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより180℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Bの条件で試験を行った。結果を表3に示す。
【0192】
【表3】

【0193】
[実施例11、比較例14]
表4に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、220℃、100回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより230℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Bの条件で試験を行った。結果を表4に示す。
【0194】
【表4】

【0195】
[実施例12、比較例15]
表5に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、180℃、100回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより200℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Bの条件で試験を行った。結果を表5に示す。
【0196】
【表5】

【0197】
[実施例13、比較例16]
表6に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、230℃、100回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより240℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Bの条件で試験を行った。結果を表6に示す。
【0198】
【表6】

【0199】
[実施例14〜20、比較例17〜20]
表7に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、180℃、80回転/分で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより180℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Cの条件で試験を行った。結果を表7に示す。
【0200】
【表7】

【0201】
[実施例21,22、比較例21、22]
表8に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、160℃、100回転/分で6分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより180℃で、125mm×13mm×3mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、難燃性試験Cの条件で試験を行った。結果を表8に示す。
【0202】
【表8】

【0203】
表1〜表8より次のことが分かる。
実施例1〜14、21、22においては、少ない無機充填材配合量で高い難燃性を示す。
【0204】
これに対し、比較例1、7、8、11〜17、21,22における(B)無機フィラーのみでは十分な難燃性を示さない。
また、比較例2、3における水和数が特定範囲内にある(C)ホウ酸塩水和物のみでも十分な難燃性を示さない。
また、比較例4〜6、9〜10のように、水和数が特定範囲外の(Z)ホウ酸塩水和物または無水物では、(B)無機フィラーと併用しても難燃性を示さない。
また、表7より次のことが分かる。
実施例15〜20における特定の水和数の(C)ホウ酸塩水和物と(B)無機フィラーおよび(E)助剤を併用したものは、更に高い難燃性を示す。
これに対し、比較例18〜20における(B)無機フィラーおよび(E)助剤のみでは十分な難燃性を示さない。
そして表4から、従来、十分な難燃性を付与することが困難であったポリカーボネート樹脂についても高い難燃性を示すことがわかる。
【0205】
以上の結果から明らかなように、特定の水和数の(C)ホウ酸塩水和物と(B)無機フィラー、更には(E)助剤を併用した実施例のものは、比較例のものよりも優れた難燃性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ハロゲン含有化合物を用いることなく、かつ成形性や機械的強度を損なうことのない少ない無機充填材配合量で極めて良好な難燃性を示すものであり、また、必要に応じて任意の色に加色可能であるので、様々な用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)無機フィラーと、
(C)ホウ酸塩水和物と
を含む難燃性樹脂組成物であって、
(C)ホウ酸塩水和物の水和数nが0.6〜3.0であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂100重量部に対する(B)無機フィラーと(C)ホウ酸塩との合計の含有量が5重量部以上200重量部である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)無機フィラーが無機水酸化物、無機炭酸塩および層状複水酸化物から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)ホウ酸塩水和物が、ホウ酸のアルカリ金属塩水和物である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(D)着色材料を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
(D)着色材料が炭素である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに含窒素有機化合物および多価アルコールから選ばれる少なくとも1種よりなる(E)助剤を含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
(A)熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂を含む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
ポリオレフィン樹脂が、エチレン、プロピレン、ブタジエン、およびスチレンから選ばれる少なくとも1種を単量体として含む単独重合体または共重合体である請求項8に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、およびABS樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項11】
(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、またはポリエステル樹脂を含む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を用いた樹脂成形体。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を用いた被覆材。
【請求項14】
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)無機フィラーと、
(C)ホウ酸塩水和物とを含む難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
(C)ホウ酸塩水和物の水和数nを、n=0.6〜3.0の範囲に調整する調整工程と、該調整工程で得られた(C)ホウ酸塩水和物と(A)熱可塑性樹脂とを混練する混練工程とを有することを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−162783(P2011−162783A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8093(P2011−8093)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】