説明

難燃性樹脂組成物

【課題】難燃性及び成形性に優れるとともに電気特性が改善された樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ベース樹脂(ポリエステル系樹脂など)と、ハロゲン系難燃剤(臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、臭素化スチレン系樹脂、アルキレンビス臭素化フタルイミドなど)と、アミノトリアジン縮合物で少なくとも構成されたアミン類のポリリン酸塩(C1)、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリメタリン酸塩(C2)、20以上の数平均縮合度を有するポリリン酸とアミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物との塩(C3)及び(ポリ)アルキレンポリアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種のリン酸塩(C)とで樹脂組成物を構成する。樹脂組成物は、電気特性をさらに向上するため、オレフィン系樹脂(α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)を含有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れるとともに、電気特性が改良された樹脂組成物及びこの組成物で形成された成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などは、優れた機械的特性、電気的特性、耐候性、耐水性、耐薬品性や耐溶剤性を有するため、電気・電子部品、機械機構部品、自動車部品など種々の用途に利用されている。一方、前記熱可塑性樹脂には、利用分野が拡大するにつれ、機械的特性の向上とともに、安全上、難燃性であることが要求される。一般的には、熱可塑性樹脂に、ハロゲン系難燃剤や、リン系化合物、窒素含有化合物などの非ハロゲン系難燃剤を添加することにより、難燃化する方法が知られている。ハロゲン系難燃剤は、非ハロゲン系難燃剤に比べ、難燃性が高く、少量で樹脂を難燃化することが可能であり、樹脂の成形性を維持できる。
【0003】
一方、このような熱可塑性樹脂(組成物)には、難燃性に加えて、用途に応じて、高い電気的特性が要求される。このような樹脂の電気的特性を改善するため、例えば、特開平10−114854号公報(特許文献1)及び特開平10−273589号公報(特許文献2)には、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂、ハロゲン化難燃剤などを含む組成物に、電気的性質(比較トラッキング指数など)を改良するのに有効量のピロ/ポリリン酸金属塩を含む電気的性質の向上した難燃性樹脂成形組成物が開示されている。しかし、ハロゲン系難燃剤とピロ/ポリリン酸塩とを併用しても、比較トラッキング指数の改善効果が不十分であり、また、難燃性と電気特性とを両立することが困難である。
【0004】
また、特開平10−251528号公報(特許文献3)には、(a)熱可塑性樹脂と、(a)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(b)ポリリン酸アンモニウム0.5〜50重量部と、(c)臭素系ポリスチレン難燃剤などのハロゲン系高分子難燃剤5〜50重量部と、(d)三酸化アンチモン 0〜15重量部と、(e)無機充填剤 0〜50重量部とからなることを特徴とする耐トラッキング特性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。さらに、特開平11−343389号公報(特許文献4)には、(A)熱可塑性樹脂 100重量部と、(B)無機酸のメラミン塩及び/または縮合リン酸アミド0.5〜50重量部と、(C)臭素系高分子難燃剤などのハロゲン系難燃剤などの難燃剤5〜50重量部と、(D)三酸化アンチモン 0〜15重量部と、(E)無機充填剤 0〜50重量部とからなることを特徴とする耐トラッキング特性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかし、これらの文献に記載の成分(B)、すなわち、ポリリン酸アンモニウム、無機酸のメラミン塩や縮合リン酸アミドは、耐熱性が不十分であるため、加工時にアンモニアやメラミンなどが遊離し、材料の押出調製時や成形時における加工性を著しく低下させる。
【特許文献1】特開平10−114854号公報(請求項1及び実施例)
【特許文献2】特開平10−273589号公報(請求項1及び実施例)
【特許文献3】特開平10−251528号公報(請求項1)
【特許文献4】特開平11−343389号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、難燃性及び成形性に優れるとともに電気特性を向上できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、耐トラッキング性などの電気特性がさらに向上された難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ハロゲン系難燃剤と、特定のリン酸塩とを組み合わせると、成形性を損なうことなく、ベース樹脂の難燃性及び電気特性を改善できることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂(A)と、ハロゲン系難燃剤(B)と、リン酸塩(C)とで構成され、かつ電気特性の向上した難燃性樹脂組成物であって、前記リン酸塩(C)が、アミノトリアジン縮合物のポリリン酸塩(C1)、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリメタリン酸塩(C2)、20以上の数平均縮合度を有するポリリン酸とアミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物との塩(C3)及び(ポリ)アルキレンポリアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されている。
【0009】
前記ベース樹脂(A)は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、スチレン系樹脂、及びビニル系樹脂から選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。特に、前記ベース樹脂(A)は、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、C2−4アルキレンテレフタレート及びC2−4アルキレンナフタレートから選択された少なくとも一種の単位を有するホモ又はコポリエステルで構成されていてもよく、代表的には、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル、ポリプロピレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びエチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステルから選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。
【0010】
前記ハロゲン系難燃剤(B)は、臭素含有アクリル系樹脂(例えば、臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂)、臭素含有スチレン系樹脂(例えば、スチレン系樹脂の臭素化物、臭素化スチレン系単量体の単独又は共重合体などの臭素化スチレン系樹脂など)、臭素含有ポリカーボネート系樹脂(臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂など)、臭素含有エポキシ化合物(臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂など)、臭素化ポリアリールエーテル化合物、臭素化芳香族イミド化合物[例えば、アルキレンビス臭素化フタルイミド(例えば、エチレンビス臭素化フタルイミドなど)など]、臭素化ビスアリール化合物及び臭素化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物から選択された少なくとも一種の臭素原子含有難燃剤であってもよい。
【0011】
前記リン酸塩(C)は、硫黄成分を含んでいてもよいポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩(C1)、ポリメタリン酸メラミン(C2)、40以上の数平均縮合度を有するポリリン酸メラミン(C3)及びジアルキレンジアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されていてもよく、代表的には、リン原子1モルに対して、メラミン0.05〜1モル、メラム0.3〜0.6モル、及びメレム0.05〜0.8モルを含むポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩(C1a)、リン酸と、このリン酸1モルに対して0.05〜20モルの硫酸と、リン酸及び硫酸の合計1モルに対して1〜4モルのメラミンとの反応生成物を焼成した焼成物(C1b)、リン原子1モルに対してメラミン1.0〜1.1モルを含むポリメタリン酸メラミン(C2)、40以上の数平均縮合度を有し、かつリン原子1モルに対してメラミン1.1〜2.0モルを含むポリリン酸メラミン(C3)及びジC2−4アルキレンジアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。
【0012】
前記ハロゲン系難燃剤(B)の割合はベース樹脂(A)100重量部に対して3〜30重量部程度であってもよく、リン酸塩(C)の割合はベース樹脂(A)100重量部に対して1〜30重量部程度であってもよい。また、リン酸塩(C)の割合は、ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して30〜250重量部程度であってもよい。
【0013】
前記樹脂組成物は、さらに、芳香族樹脂(前記ベース樹脂(A)以外の芳香族樹脂)、アンチモン含有化合物、フッ素含有樹脂、及びケイ素含有化合物及び前記リン酸塩(C)以外のリン含有化合物から選択された少なくとも一種の難燃助剤(D)を含んでいてもよい。このような難燃助剤(D)は、例えば、フェノール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及び芳香族ポリエステルアミド系樹脂、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、(ポリ)オルガノシロキサン、層状ケイ酸塩、フッ素含有単量体の単独又は共重合体、(縮合)リン酸エステル(又は縮合していてもよいリン酸エステル)[リン酸エステル(非縮合リン酸エステル)および縮合リン酸エステルの意味に用いる。同様の記載において以下同じ]、(縮合)リン酸エステルアミド(又は縮合していてもよいリン酸エステルアミド)[リン酸エステルアミド(非縮合リン酸エステルアミド)および縮合リン酸エステルアミドの意味に用いる。同様の記載において以下同じ。]、(架橋)アリールオキシホスファゼン(又は架橋していてもよいアリールオキシホスファゼン)[アリールオキシホスファゼン(非架橋アリールオキシホスファゼン)および架橋アリールオキシホスファゼンの意味に用いる。同様の記載において以下同じ]、(亜)リン酸金属塩(亜リン酸金属塩およびリン酸金属塩の意味に用いる。同様の記載において以下同じ。)、次亜リン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸化合物(有機ホスホン酸化合物および有機亜ホスホン酸化合物の意味に用いる。以下同様の記載において同じ。特に、有機(亜)ホスホン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸アミノトリアジン塩、有機(亜)ホスホン酸エステル)及び有機ホスフィン酸化合物(特に、有機ホスフィン酸金属塩、有機ホスフィン酸アミノトリアジン塩などの有機ホスフィン酸塩)から選択された少なくとも一種であってもよい。前記難燃助剤(D)の割合は、ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して、1〜150重量部程度であってもよい。
【0014】
前記樹脂組成物は、さらに、オレフィン系樹脂(E)[例えば、α−C2−3オレフィンの単独又は共重合体、α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えば、α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステル共重合体、α−C2−3オレフィン−(メタ)−アクリル酸グリシジルエステル共重合体など、特にα−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体)及び酸変性オレフィン系樹脂から選択された少なくとも一種]を含んでいてもよい。前記樹脂組成物は、さらに、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)、及び反応性安定剤(J)から選択された少なくとも一種の添加剤を含んでいてもよい。例えば、前記樹脂組成物は、さらに、アミノトリアジン化合物の塩(前記リン酸塩(C)以外の塩、例えば、メラミンシアヌレートなど)、(含水)ケイ酸金属塩(ケイ酸金属塩(非含水ケイ酸金属塩)および含水ケイ酸金属塩の意味に用いる。以下同様の記載において同じ。例えば、タルク、カオリンなど)、(含水)ホウ酸金属塩(例えば、(含水)ホウ酸亜鉛、(含水)ホウ酸カルシウムなど)、(含水)スズ酸金属塩(例えば、(含水)スズ酸亜鉛など)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛など)、金属硫化物(例えば、硫化亜鉛など)、及びアルカリ土類金属化合物(例えば、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなど)から選択された少なくとも一種の電気特性向上助剤(F)を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、難燃性及び電気特性に優れており、例えば、[A](i)試験片の厚み0.8mmで測定したとき、UL94燃焼試験に準拠した難燃性がV−1以上(特に、V−0以上)であり、かつ(ii)IEC(国際電気標準会議、以下同じ)112に準拠した比較トラッキング指数が350V以上(特に400V以上)であってもよい。また、本発明の樹脂組成物は、[B](i)試験片の厚み1.6mmで測定したとき、UL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−2以上(好ましくはV−1以上、特にV−0以上)であり、かつ(ii)IEC112に準拠した比較トラッキング指数が400V以上(特に600V以上)であってもよい。本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。このような成形体は、電気・電子部品、オフィスオートメーション機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂と、ハロゲン系難燃剤と、特定のリン酸塩とを組み合わせるので、難燃性及び成形性に優れるとともに電気特性を向上できる。また、オレフィン系樹脂などを含む難燃性樹脂組成物では、耐トラッキング性などの電気特性をさらに改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂(A)と、ハロゲン系難燃剤(B)と、特定のリン酸塩(C)とで少なくとも構成されている。このような樹脂組成物では、難燃性及び成形性(成形加工性)だけでなく、電気特性(耐トラッキング性など)も改善されている。
【0018】
(ベース樹脂(A))
ベース樹脂(A)としては、特に制限されず、種々の樹脂、例えば、熱可塑性樹脂[例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ケトン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホンなど)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトンなど)、ポリエーテルイミド、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド、ポリオキシベンジレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、熱可塑性エラストマーなど]、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、アミノ樹脂、熱硬化性ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂など)などが挙げられる。以下、代表的なベース樹脂について詳述する。
【0019】
(ポリエステル系樹脂)
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル系樹脂には、通常、飽和ポリエステル系樹脂、特に芳香族飽和ポリエステル系樹脂が含まれる。
【0020】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などのC4−40ジカルボン酸、好ましくはC4−14ジカルボン酸など)、脂環式ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などのC8−12ジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸[C8−16アレーンジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸など)、ビスフェニルジカルボン酸(4,4′−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルアルカンジカルボン酸(4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸など)、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸など)]、これらの誘導体(低級アルキルエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体など)などが挙げられる。ジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸を併用してもよい。
【0021】
好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が含まれる。
【0022】
ジオール成分には、例えば、脂肪族ジオール[例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2−12アルキレングリコール、好ましくはC2−10アルキレングリコール)、ポリアルキレングリコール{複数のオキシC2−4アルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど}など]、脂環族ジオール[例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロアルカンジアルカノール(1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC5−6シクロアルカンジC1−2アルカノールなど)、水素化ビスフェノールAなど]などが挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、ビスフェノール類又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン又はこれらの臭素化誘導体など]、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを併用してもよい。ジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0023】
好ましいジオール成分には、C2−6アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリアルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2−4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
【0024】
オキシカルボン酸には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、4−カルボキシ−4′−ヒドロキシビフェニル、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、D−,L−又はD/L−乳酸、オキシカプロン酸などのオキシカルボン酸又はこれらの誘導体が含まれる。
【0025】
ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)などのC3−12ラクトンなどが含まれる。
【0026】
好ましいポリエステル系樹脂には、シクロアルカンジアルキレンアリレート単位(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位など)及びアルキレンアリレート単位(アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位、例えば、C2−4アルキレンテレフタレート単位、C2−4アルキレンナフタレート単位など)から選択された少なくとも一種の単位を有する[例えば、主成分(例えば、50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%程度)として有する]ホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;シクロアルカンジアルキレンテレフタレート、アルキレンテレフタレート及びアルキレンナフタレートから選択された少なくとも一種の単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含有するコポリエステル]が含まれる。特に好ましいポリエステル系樹脂には、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂[例えば、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル(ポリブチレンテレフタレートコポリエステル:例えば、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートなど)]、プロピレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリプロピレンテレフタレート系樹脂[例えば、ポリプロピレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル(ポリプロピレンテレフタレートコポリエステル)]、及びエチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂[例えば、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル(ポリエチレンテレフタレートコポリエステル:例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート、4−ヒドロキシ安息香酸変性ポリエチレンテレフタレートなど)]が含まれる。ポリエステル系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
また、コポリエステルにおいて、共重合可能な単量体としては、C2−6アルキレングリコール(エチレングリコールなどの直鎖状アルキレングリコールなど)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリ(オキシC2−4アルキレン)単位を含むグリコールなど)、C4−12脂肪族ジカルボン酸(グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸など)、脂環族ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)、芳香族ジオール[例えば、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパンなどのビスフェノール類のC2−3アルキレンオキシド付加体、ハイドロキノン、レゾルシン、3,3’−又は4,3’−又は4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,4−又は2,6−ジヒドロキシナフタレンなど]、芳香族ジカルボン酸[(非)対称芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸モノナトリウム塩など)、ジフェニルジカルボン酸(4,4’−ジフェニルジカルボン酸など)、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸など)など]、オキシカルボン酸(オキシ安息香酸(3−又は4−ヒドロキシ安息香酸など)、オキシナフトエ酸(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸など)、4−カルボキシ−4′−ヒドロキシビフェニルなど)などが挙げられる。なお、ポリエステル系樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖状であってもよく、架橋されていてもよい。ポリエステル系樹脂は、液晶ポリエステルであってもよい。さらに、ポリエステル系樹脂には、アミノ基含有単量体(例えば、3−又は4−アミノフェノール、3−又は4−アミノ安息香酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミンなど)で変性された(液晶)ポリエステルアミド系樹脂も含まれる。
【0028】
ポリエステル系樹脂は、慣用の方法、例えば、エステル交換、直接エステル化法などにより製造できる。ポリエステル系樹脂の固有粘度は、例えば、0.4〜2.0、好ましくは0.5〜1.8、さらに好ましくは0.6〜1.5程度であってもよい。
【0029】
(ポリアミド系樹脂)
ポリアミドには、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されたポリアミドが含まれる。ポリアミドには、コポリアミドも含まれる。ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、ラクタムは、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなどのC3−10脂肪族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミン(アルキル基などの置換基を有していてもよいビス(アミノC5−8シクロアルキル)C1−4アルカンなど)、メタキシリレンジアミンなどの半芳香族ジアミン(又は芳香脂肪族ジアミン)が挙げられる。必要であれば、フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンを併用してもよい。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20脂肪族ジカルボン酸(C6−16アルカンジカルボン酸など);二量体化脂肪酸(ダイマー酸);シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えば、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸、アミノウンデカン酸などのC4−20アミノカルボン酸が例示される。ラクタムとしては、例えば、カプロラクタム、ドデカラクタムなどのC4−20ラクタムが挙げられる。
【0031】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド;ビス(アミノシクロヘキシル)C1−3アルカン類などの脂環族ジアミンとC8−14アルカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸とから得られる脂環族ポリアミド;芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなど)とから得られるポリアミド;芳香族及び脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。ポリアミド系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
これらのポリアミド系樹脂のうち、非芳香族又は脂肪族ポリアミド(ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12など)、半芳香族ポリアミド(ポリアミドMXD6、ポリアミド9Tなど)、半芳香族共重合ポリアミド(ポリアミド6T/6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/11、ポリアミド6T/12、ポリアミド6I/6、ポリアミド6I/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/M5Tなど)などが好ましい。
【0033】
(ポリカーボネート系樹脂)
ポリカーボネート系樹脂には、ジヒドロキシ化合物(脂環式ジオールやビスフェノール化合物など)と、ホスゲン又はジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの反応により得られる重合体が含まれる。ビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)C1−10アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C4−10シクロアルカン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトンなどが挙げられる。
【0034】
好ましいポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノールA型ポリカーボネートが含まれる。
【0035】
(ポリフェニレンオキシド系樹脂)
ポリフェニレンオキシド系樹脂(ポリフェニレンエーテル系樹脂)には、単独重合体及び共重合体が含まれる。単独重合体としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,5−ジエチル−1,4−フェニレン)オキシド等のポリ(モノ、ジ又はトリC1−6アルキル−フェニレン)オキシド、ポリ(モノ又はジC6−20アリール−フェニレン)オキシド、ポリ(モノC1−6アルキル−モノC6−20アリール−フェニレン)オキシドなどが挙げられる。
【0036】
ポリフェニレンオキシドの共重合体としては、前記単独重合体のモノマーユニットを2種以上有する共重合体(例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド単位と、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンオキシド単位とを有するランダム共重合体など)、ベンゼンホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂など)やアルキルベンゼンホルムアルデヒド樹脂に、クレゾールなどのアルキルフェノールを反応させて得られるアルキルフェノール変性ベンゼンホルムアルデヒド樹脂ブロックと、主体構造としてのポリフェニレンオキシドブロックとで構成された変性ポリフェニレンオキシド共重合体、ポリフェニレンオキシド又はその共重合体にスチレン系重合体及び/又は不飽和カルボン酸又は無水物((メタ)アクリル酸、無水マレイン酸など)がグラフトしている変性グラフト共重合体などが挙げられる。
【0037】
(ポリフェニレンスルフィド系樹脂)
ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンチオエーテル系樹脂)としては、フェニレンスルフィド骨格−(Ar−S)−[式中、Arはフェニレン基を示す]を有する単独重合体及び共重合体が含まれる。フェニレン基(−Ar−)としては、例えば、p−、m−又はo−フェニレン基の他、置換フェニレン基(例えば、C1−6アルキル基などの置換基を有するアルキルフェニレン基や、フェニル基などの置換基を有するアリールフェニレン基)、−Ar−A−Ar−[式中、Arはフェニレン基、Aは直接結合、O、CO、又はSOを示す]などであってもよい。ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、このようなフェニレン基で構成されるフェニレンスルフィド単位のうち、同一の繰返し単位を用いたホモポリマーであってもよく、異種の繰返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0038】
ホモポリマーとしては、p−フェニレンスルフィド基を繰返し単位とする実質上線状のポリマーが好ましい。コポリマーは、前記フェニレンスルフィド基の中で相異なる2種以上を組み合わせて使用できる。コポリマーとしては、p−フェニレンスルフィド基を主な繰返し単位とし、m−フェニレンスルフィド基を含む組み合わせが好ましく、p−フェニレンスルフィド基を60モル%(好ましくは70モル%)以上含む実質上線状のコポリマーであってもよい。
【0039】
ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、低分子量の線状ポリマーを酸化架橋又は熱架橋したポリマーであってもよく、2官能性モノマーを主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に線状構造のポリマーであってもよい。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂には、3個以上の官能基を有するモノマーを組み合わせて重合した分岐又は架橋ポリフェニレンスルフィド樹脂や、この樹脂を前記の線状ポリマーにブレンドした樹脂組成物も含まれる。
【0040】
ポリフェニレンスルフィド系樹脂としては、ポリフェニレンスルフィドやポリビフェニレンスルフィド(PBPS)の他、ポリフェニレンスルフィドケトン(PPSK)、ポリビフェニレンスルフィドスルホン(PPSS)等も使用できる。ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
(スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体(スチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体;スチレン系単量体とビニル系単量体[(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸など)、無水マレイン酸などのα,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸又は酸無水物又はエステルなど]との共重合体;スチレン系グラフト共重合体、スチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0042】
好ましいスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分(ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、EPDM、EVAなど)にスチレン系単量体と必要により共重合性単量体(アクリロニトリル、メタクリル酸メチルなど)が重合したグラフト共重合体[耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、MBS樹脂など]、ポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体[例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体、エポキシ化SBS、エポキシ化SISなど]などが挙げられる。
【0043】
(ビニル系樹脂)
ビニル系樹脂としては、ビニル系単量体(例えば、酢酸ビニルなどのビニルエステル;塩素含有ビニル単量体(例えば、塩化ビニルなど);ビニルケトン類;ビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾールなどのビニルアミン類など)の単独又は共重合体、あるいは他の共重合可能なモノマーとの共重合体などが含まれる。前記ビニル系樹脂の誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)も使用できる。
【0044】
これらの樹脂又は高分子化合物は、単独で又は二種以上組合わせて使用してもよい。
【0045】
好ましいベース樹脂としては、液晶ポリエステルであってもよいポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂などの熱可塑性樹脂(特にポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂から選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂)が挙げられ、さらに好ましくはポリエステル系樹脂(PBT系樹脂、PPT系樹脂、PET系樹脂など)などが挙げられる。
【0046】
ベース樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、樹脂の種類や用途に応じて適宜選択され、例えば、5×10〜200×10、好ましくは1×10〜150×10、さらに好ましくは1×10〜100×10程度の範囲から選択できる。また、ベース樹脂がポリエステル系樹脂の場合、数平均分子量は、例えば、5×10〜100×10、好ましくは1×10〜70×10、さらに好ましくは1.2×10〜30×10程度であってもよい。
【0047】
(ハロゲン系難燃剤(B))
ハロゲン系難燃剤(B)としては、有機ハロゲン化物が使用できる。有機ハロゲン化物は、通常、塩素、臭素及びヨウ素原子から選択された少なくとも一種を含有している。
【0048】
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有アクリル系樹脂[ハロゲン化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、例えば、ポリ(ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート)などの臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリ(ペンタクロロベンジル(メタ)アクリレート)などのハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体など]、ハロゲン含有スチレン系樹脂[例えば、スチレン系樹脂(スチレンの単独又は共重合体)をハロゲン化処理(例えば、塩素、臭素、塩化臭素処理など)して得られるスチレン系樹脂のハロゲン化物(臭素化ポリスチレン、塩素化ポリスチレンなど)、ハロゲン化スチレン系単量体の単独又は共重合体など]、ハロゲン含有ポリカーボネート系樹脂(臭素化ポリカーボネート、塩素化ポリカーボネートなどハロゲン化ポリカーボネートなど)、ハロゲン含有エポキシ化合物(臭素化エポキシ樹脂、塩素化エポキシ樹脂などのハロゲン化エポキシ樹脂;臭素化フェノキシ樹脂などのハロゲン化フェノキシ樹脂など)、ハロゲン化ポリアリールエーテル化合物[例えば、オクタ乃至デカブロモジフェニルエーテル、オクタ乃至デカクロロジフェニルエーテルなどのビス(ハロゲン化アリール)エーテル(例えば、ビス(ハロゲン化フェニル)エーテルなど);臭素化ポリフェニレンエーテルなどのハロゲン含有ポリフェニレンオキシド系樹脂など]、ハロゲン化芳香族イミド化合物[例えば、アルキレンビス臭素化フタルイミド(例えば、エチレンビス臭素化フタルイミドなどのC2−6アルキレンビス臭素化フタルイミドなど)などの臭素化芳香族イミド化合物(例えば、ビスイミド化合物など)など]、ハロゲン化ビスアリール化合物[例えば、臭素化ジフェニルなどのビス(ハロゲン化C6−10アリール);臭素化ジフェニルメタンなどのビス(ハロゲン化C6−10アリール)C1−4アルカン;臭素化ビスフェノールAなどのハロゲン化ビスフェノール類又はその誘導体(ハロゲン化ビスフェノール類のエチレンオキシド付加体を重合した臭素化ポリエステルなど)など]、ハロゲン化脂環族炭化水素(架橋環式飽和又は不飽和ハロゲン化脂環族炭化水素、例えば、ドデカクロロペンタシクロオクタデカ−7,15−ジエンなどのハロゲン化ポリシクロアルカジエンなど)、ハロゲン化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物[例えば、臭素化トリフェノキシトリアジンなどの臭素化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物など]などが挙げられる。ハロゲン系難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
ハロゲン系難燃剤としては、塩素原子及び/又は臭素原子を含有する化合物が好ましく、特に臭素原子を含有する有機臭素化物[臭素含有アクリル系樹脂、臭素含有スチレン系樹脂、臭素含有ポリカーボネート系樹脂(例えば、臭素化ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などの臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂)、臭素含有エポキシ化合物[例えば、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂(臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などの臭素化エポキシ樹脂;臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂(臭素化ビスフェノールA型フェノキシ樹脂など)などの臭素化フェノキシ樹脂など]、臭素化ポリアリールエーテル化合物(オクタブロモジフェニルエーテルなどのビス(臭素化アリール)エーテル化合物など)、臭素化芳香族イミド化合物、臭素化ビスアリール化合物、臭素化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物など]などの臭素原子含有難燃剤]が好ましい。これらの臭素原子含有難燃剤のうち、特に、臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、臭素化スチレン系樹脂[例えば、臭素化ポリスチレンなどのスチレン系樹脂の臭素化物(又はスチレン系樹脂を臭素化処理した臭素化物)、臭素化スチレン系単量体の単独又は共重合体(例えば、ポリ臭素化スチレンなど)など]、臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂およびアルキレンビス臭素化フタルイミド(例えば、エチレンビス臭素化フタルイミドなどのC2−6アルキレンビス臭素化フタルイミドなど)から選択された少なくとも一種などが好ましい。
【0050】
ハロゲン系難燃剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、3〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、さらに好ましくは7〜20重量部程度である。
【0051】
(リン酸塩(C))
リン酸塩(C)は、アミノトリアジン縮合物のポリリン酸塩(C1)、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリメタリン酸塩(C2)、20以上の数平均縮合度を有するアミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリリン酸塩(C3)及び(ポリ)アルキレンポリアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されている。
【0052】
(ポリリン酸塩(C1))
ポリリン酸塩(C1)は、ポリリン酸(又はポリリン酸骨格)と、アミノトリアジン縮合物で少なくとも構成されたアミン類との塩である。ポリリン酸塩(C1)において、ポリリン酸(又はポリリン酸骨格)は、特に限定されず、例えば、ピロリン酸(二リン酸)、三リン酸、四リン酸などであってもよく、後述するようにリン酸成分(リン酸など)とアミノトリアジンとの反応により形成又は導入されていてもよい。
【0053】
アミノトリアジン縮合物において、アミノトリアジン(アミノ基を有するトリアジン化合物)としては、例えば、メラミン、グアナミンなどのアミノ基を有する1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。アミノトリアジンとしては、通常、少なくともメラミン(特にメラミンのみ)を使用する場合が多い。代表的なアミノトリアジン縮合物としては、メラミン縮合物(例えば、メラム、メレム、メロン)などが挙げられる。
【0054】
ポリリン酸と塩を形成する塩基(アミン類)は、少なくともアミノトリアジン縮合物で構成でき、他の塩基を含んでいてもよい。例えば、前記塩基は、アミノトリアジン縮合物とアミノトリアジン(例えば、メラミン)とで構成してもよい。特に、塩基は、メラミン、メラム及びメレムで構成されていてもよい。
【0055】
なお、ポリリン酸塩(C1)は、市販品[例えば、日産化学工業(株)のポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩の「PMP−100」、「PMP−200」、「PMP−300」、ポリリン酸アミノトリアジン塩の「PHOSMEL−100」、「PHOSMEL−200」など]を使用してもよく、調製したものを使用してもよい。ポリリン酸塩(C1)は、ポリリン酸とアミノトリアジン縮合物とを反応させて調製してもよく、酸成分としてのリン酸成分(通常、オルトリン酸)とアミノトリアジンとを反応(及び焼成)させることにより調製してもよい。通常、ポリリン酸塩(C1)は、リン酸成分(特にオルトリン酸)とアミノトリアジン(特にメラミン)との反応(及び焼成)生成物である場合が多い。反応(及び焼成)生成物の調製において、各成分(リン酸、アミノトリアジンなど)の割合、反応温度(及び焼成温度)、反応時間(及び焼成時間)などは適宜選択できる。なお、リン酸成分の反応により得られたポリリン酸塩(C1)は、必ずしもポリリン酸骨格を有していなくてもよい。例えば、後述の硫黄成分を含むポリリン酸メラミン・メレム・メラムは、原料として用いる硫黄成分の量によっては、ポリリン酸骨格を有していない場合がある。本発明では、原料としてリン酸成分を使用する限り、ポリリン酸骨格を有しない(又は有しない可能性がある)化合物もポリリン酸塩(C1)に含むものとする。
【0056】
ポリリン酸塩(C1)において、塩基(又はアミン類)の割合は、例えば、リン原子1モルに対して、0.3〜3モル、好ましくは0.4〜2.5モル、さらに好ましくは0.5〜2モル程度であってもよい。
【0057】
特に、メラミン、メラム及びメレムで構成された塩基(アミン類)とポリリン酸との塩(ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩)において、各塩基(アミン類)の割合は、ポリリン酸塩を構成するリン原子1モルに対して、メラミン0.05〜1モル程度、メラム0.3〜0.6モル程度、メレム0.05〜0.8モル程度であってもよい。また、メラミン含量が比較的少ないポリリン酸塩も好適に使用でき、このようなポリリン酸塩では、ポリリン酸塩を構成するリン原子1モルに対して、メラミン0.05〜0.4モル程度、メラム0.3〜0.6モル程度、メレム0.3〜0.8モル程度であってもよい。このようなメラミン、メラム及びメレムを含むポリリン酸塩(ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩)及びその製造方法の詳細は、特開平10−306081号公報を参照できる。例えば、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩は、(a)メラミンと、リン酸とを、リン酸(オルトリン酸換算分として)1モルに対して、メラミン2.0〜4.0モルの割合で、0〜330℃の温度で混合することにより反応生成物を得る工程、及び(b)(a)工程で得られた反応生成物を、340〜450℃の温度で0.1〜30時間焼成する工程を経ることにより製造できる。
【0058】
また、ポリリン酸塩(C1)は、硫黄成分(又は硫黄原子)を含んでいてもよい。このような硫黄成分は、例えば、後述するポリリン酸塩の調製において、酸成分として、リン酸成分(特にリン酸)と硫黄成分(特に硫酸)とを併用することによりポリリン酸塩(C1)に含有させることができる。このような硫黄成分を含むポリリン酸塩(C1)は、例えば、リン酸と、このリン酸1モルに対して0.05〜20モル程度の硫酸と、リン酸及び硫酸の合計1モルに対して1〜4モル程度のメラミンとの反応生成物を焼成した焼成物であってもよい。このような硫黄成分を含むポリリン酸塩(硫黄原子を含むポリリン酸のメラミン・メレム・メラム複塩)は、特開平10−306082号公報に開示されており、上記割合で各成分を含む混合物を温度0〜330℃で反応させて反応生成物を得る工程と、この工程で得られた反応生成物を温度340〜400℃で0.1〜30時間焼成する工程とを経ることにより得られる。
【0059】
なお、ポリリン酸塩(C1)の水に対する溶解度は、25℃において、例えば、0.01〜0.1g/100mL程度であってもよい。また、ポリリン酸塩(C1)を10重量%含む水性スラリーのpHは、25℃において、例えば、2〜7(例えば、2.5〜7)程度であってもよい。特に、前記ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩を10重量%含む水性スラリーのpHは、25℃において、例えば、4〜7程度であってもよい。
【0060】
好ましいポリリン酸塩(C1)には、硫黄成分を含んでいてもよいポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩[特に、(i)リン原子1モルに対して、メラミン0.05〜1モル程度、メラム0.3〜0.6モル程度、及びメレム0.05〜0.8モル程度を含むポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、及び/又は(ii)リン酸と、このリン酸1モルに対して0.05〜20モル程度の硫酸と、リン酸及び硫酸の合計1モルに対して1〜4モル程度のメラミンとの反応生成物を焼成した焼成物]などが含まれる。
【0061】
(ポリメタリン酸塩(C2))
ポリメタリン酸塩(C2)は、ポリメタリン酸(又はポリメタリン酸骨格)と、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物との塩である。ポリメタリン酸塩(C2)において、ポリメタリン酸(又はポリメタリン酸骨格)としては、特に限定されず、三メタリン酸、四メタリン酸、ヘキサメタリン酸などであってもよく、後述するようにメタリン酸成分(リン酸など)とアミノトリアジンとの反応により形成又は導入されていてもよい。
【0062】
アミノトリアジン及びアミノトリアジン縮合物としては、前記例示の化合物(例えば、メラミン、メラム、メレムなどのメラミン縮合物)などが挙げられる。通常、ポリメタリン酸塩(C2)は、メラミン及び/又はメラミン縮合物の塩である場合が多い。
【0063】
なお、ポリメタリン酸塩(C2)は、市販品を使用してもよく、調製したものを使用してもよい。ポリメタリン酸塩(C2)は、ポリメタリン酸とアミノトリアジン及び/アミノトリアジン縮合物とを反応させて調製してもよく、酸成分としてのリン酸成分(通常、オルトリン酸)とアミノトリアジンとを、必要に応じて架橋剤又は結合剤(尿素など)の存在下で、反応(及び焼成)させることにより調製してもよい。通常、ポリメタリン酸塩(C2)は、架橋剤(尿素など)の存在下で、メタリン酸成分(特にオルトリン酸)とアミノトリアジン(特にメラミン)とを反応(及び焼成)させて得られた反応生成物であってもよい。反応(及び焼成)生成物の調製において、各成分(リン酸成分、アミノトリアジンなど)の割合、反応温度(及び焼成温度)、反応時間(及び焼成時間)などは適宜選択できる。
【0064】
ポリメタリン酸塩(C2)において、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物の割合は、例えば、リン原子1モルに対して、0.3〜2.5モル、好ましくは0.5〜2モル、さらに好ましくは0.7〜1.5モル程度であってもよい。特に、ポリメタリン酸塩(C2)は、リン原子1モルに対して、メラミン(又はメラミン換算で)0.8〜1.2モル(例えば、1.0〜1.1モル)を含むポリメタリン酸メラミンであってもよい。このようなポリメタリン酸メラミン及びその製造方法の詳細は、例えば、特開平10−81691号公報を参照できる。例えば、前記ポリメタリン酸メラミンは、(a)メラミンと、架橋剤(特に尿素)と、オルトリン酸分40重量%以上を含有するオルトリン酸水溶液とを、オルトリン酸1モルに対してメラミンは1.0〜1.5モルの比率に、そしてオルトリン酸1モルに対して尿素は0.1〜1.5のモル比率に、0〜140℃の温度下で混合することにより反応混合物を形成させ、そして当該反応混合物を0〜140℃の温度下で水分を除去しながら撹拌することにより、オルトリン酸とメラミン及び尿素との複塩からなるパウダー状生成物を得る工程、及び(b)(a)工程で得られたパウダー状生成物を、固結を防止しながら、温度240〜340℃にて0.1〜30時間焼成する工程を経ることにより製造してもよい。
【0065】
ポリメタリン酸塩(C2)の水に対する溶解度は、25℃において、例えば、0.01〜0.1g/100mL程度であってもよい。また、ポリメタリン酸塩(C2)を10重量%含む水性スラリーのpHは、25℃において、例えば、2.5〜4.5程度であってもよい。
【0066】
好ましいポリメタリン酸塩(C2)には、ポリメタリン酸メラミン(特に、リン原子1モルに対してメラミン1.0〜1.1モルを含むポリメタリン酸メラミン)などが含まれる。
【0067】
(ポリリン酸塩(C3))
ポリリン酸塩(C3)は、20以上、好ましくは40以上の数平均縮合度を有するポリリン酸と、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物との塩である。特に、ポリリン酸塩(C3)において、ポリリン酸としては、数平均縮合度の値は、20〜200、好ましくは40〜150である。この数平均縮合度は、縮合度の平均であり、31P固体NMRを用いて決定される。
【0068】
ポリリン酸塩(C3)において、アミノトリアジン(アミノ基を有するトリアジン化合物)としては、例えば、メラミン、グアナミンなどのアミノ基を有する1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。アミノトリアジンとしては、通常、少なくともメラミン(特にメラミンのみ)を使用する場合が多い。また、ポリリン酸塩(C3)において、アミノトリアジン縮合物としては、メラミン縮合物(例えば、メラム、メレム、メロン)などが挙げられる。好ましいポリリン酸塩(C3)としては、例えば、少なくともメラミンを塩として含むポリリン酸塩(例えば、ポリリン酸メラミンなど)が挙げられる。
【0069】
ポリリン酸塩(C3)において、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物の割合は、例えば、リン原子1モルに対して、0.5〜3モル、好ましくは0.8〜2.5モル(例えば、1〜2.2モル)、さらに好ましくは1.1〜2モル(例えば、1.2〜1.8モル)程度であってもよい。特に、ポリリン酸塩(C3)(特に、ポリリン酸メラミン)において、メラミンの割合は、リン原子1モルに対して、1.1モル以上(例えば、1.1〜2.0モル)、好ましくは1.2モル以上(例えば、1.2〜1.8モル)であってもよい。
【0070】
また、ポリリンリン酸塩(C3)を10重量%含む水性スラリーのpHは、25℃において、例えば、4.5以上(例えば、4.6〜7程度)、好ましくは5.0以上(例えば、5.0〜6.5程度)である。なお、前記pHの測定方法としては、特に限定されず、例えば、25gの塩と255gの25℃の純水とを容器(例えば、300mlのビーカー)に入れ、得られるスラリーを攪拌し、次いで、pHを測定してもよい。
【0071】
さらに、ポリリン酸塩(C3)は、水溶性物質の含有量は、ポリリン酸塩(C3)全体の1重量%未満(例えば、0〜0.5重量%程度)、好ましくは0.1重量%未満(例えば、0.001〜0.09重量%程度)であってもよい。
【0072】
ポリリン酸塩(C3)は、特に限定されないが、通常、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物[例えば、メラミンなどの1,3,5−アミノトリアジン化合物]とオルトリン酸とを、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物[例えば、メラミンなどの1,3,5−アミノトリアジン]のオルトリン酸塩に転換する工程、さらに得られたオルトリン酸塩を、熱処理して脱水し、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリリン酸塩へと転換する工程を経ることにより得られる。前記熱処理(加熱処理)は、300℃以上(例えば、305〜400℃程度)、好ましくは310℃以上(例えば、310〜330℃程度)の温度で行ってもよい。アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のオルトリン酸塩に加えて、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物の他のリン酸塩、例えば、オルトリン酸塩とピロリン酸塩の混合物を使用してもよい。
【0073】
アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のオルトリン酸塩は、種々の方法で調整できる。好ましい方法では、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物をオルトリン酸の水性溶液に添加してもよい。また、オルトリン酸をアミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物の水性スラリーに添加してもよい。
【0074】
なお、ポリリン酸塩(C3)の製造方法において、メラミンの使用量は、リン酸(オルトリン酸)1モルに対して、例えば、1モル以上(例えば、1.05〜2.0モル程度)、好ましくは1.1モル以上(例えば、1.15〜1.8モル程度)、さらに好ましくは1.2モル以上(例えば、1.25〜1.6モル程度)であってもよい。
【0075】
ポリリン酸塩(C3)を調製するために必要な反応時間は、一般に、2分以上、好ましくは5分以上であり、且つ一般的に24時間未満である。
【0076】
このようなポリリン酸塩(C3)及びその製造方法の詳細は、例えば、WO00/02869号公報を参照することもできる。
【0077】
(リン酸塩(C4))
リン酸塩(C4)は、(ポリ)リン酸と、塩基としての(ポリ)アルキレンポリアミン類との塩である。リン酸塩(C4)において、(ポリ)リン酸としては、リン酸(オルトリン酸)、ピロリン酸(二リン酸)、三リン酸、四リン酸、メタリン酸(三メタリン酸、四メタリン酸、ヘキサメタリン酸など)などが挙げられる。リン酸塩(C4)は、酸としての(ポリ)リン酸を単独で又は2種以上含んでいてもよい。
【0078】
(ポリ)アルキレンポリアミン類は、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)化合物であってもよく、環状化合物であってもよい。なお、環状の(ポリ)アルキレンポリアミンは、隣接する窒素原子同士が結合した環を形成していてもよい。リン酸塩(C4)は、(ポリ)アルキレンポリアミン類を単独で又は2種以上含んでいてもよい。
【0079】
代表的な(ポリ)アルキレンポリアミン類としては、例えば、アルキレンポリアミン類[例えば、アルキレンジアミン類(例えば、ジアミノメタン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10−ジアミノデカンなどのC1−20アルキレンジアミン類、好ましくはC2−10アルキレンジアミン類;ピラゾリジンなど)など]、ポリアルキレンポリアミン類{例えば、ジアルキレンポリアミン類[例えば、ジエチレントリアミン、ピペラジンなどのジC2−10アルキレンポリアミン類、好ましくはジC2−6アルキレンポリアミン類など]、トリアルキレンポリアミン類(例えば、トリエチレンテトラミンなどのトリC2−10アルキレンポリアミン)、テトラアルキレンポリアミン類(例えば、テトラエチレンペンタミンなどのテトラC2−10アルキレンポリアミン)などのジ乃至オクタアルキレンポリアミン類など}などが挙げられる。これらの(ポリ)アルキレンポリアミン類は、アミノ基又はイミノ基の水素原子が置換基(例えば、メチル基、エチル基などのC1−4アルキル基など)で置換されていてもよい。
【0080】
好ましい(ポリ)アルキレンポリアミン類としては、ジアルキレンポリアミン類、特にジアルキレンジアミン類(例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペリジン、1,4−ビス(アミノエチル)ピペラジンなどのジC2−4アルキレンジアミン類など)が挙げられる。
【0081】
リン酸塩(C4)において、(ポリ)アルキレンポリアミン類の割合は、(ポリ)リン酸1モルに対して、例えば、0.1〜3モル、好ましくは0.2〜2.5モル、さらに好ましくは0.3〜2モル、特に0.5〜1.5モル(例えば、0.8〜1.2モル)程度である。
【0082】
リン酸塩(C4)は、塩基として少なくとも(ポリ)アルキレンポリアミン類を含んでいればよく、他の塩基[例えば、アンモニア、メラミンなどのアミノトリアジン又はその縮合物(前記例示の化合物など)、アミノトリアジン誘導体(特開2003−26935号公報に記載の化合物など)などのアミノ基含有化合物など]を含む塩(複塩)であってもよい。
【0083】
なお、(ポリ)アルキレンポリアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)として、市販品[旭電化工業(株)製、「アデカスタブFP−2000」、「アデカスタブFP−2100」、「アデカスタブFP−2200」、「アデカスタブT−1063F」など]を使用してもよく、特開2003−26935号公報、特開2004−238568号公報に記載の化合物を使用してもよい。
【0084】
好ましいリン酸塩(C4)には、ジアルキレンジアミンのポリリン酸塩[特に、ポリリン酸ピペラジン塩、ポリリン酸ピペラジン・アミノトリアジン複塩(ポリリン酸ピペラジン・メラミン複塩など)などのジC2−4アルキレンジアミンのポリリン酸塩]などが含まれる。
【0085】
リン酸塩(C)の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜35重量部程度である。また、リン酸塩(C)の割合は、ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して、例えば、5〜500重量部、好ましくは10〜300重量部、さらに好ましくは20〜280重量部(例えば、30〜250重量部)、特に50〜200重量部程度であってもよい。
【0086】
(難燃助剤(D))
本発明の樹脂組成物は、さらに難燃助剤(D)を含んでいてもよい。難燃助剤(D)としては、芳香族樹脂(フェノール系樹脂、アニリン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、液晶性であってもよい芳香族ポリエステル系樹脂)、芳香族ポリエステルアミド系樹脂(例えば、液晶性であってもよい芳香族ポリエステルアミド系樹脂)など)、アンチモン含有化合物、モリブデン含有化合物(酸化モリブデンなど)、タングステン含有化合物(酸化タングステンなど)、ビスマス含有化合物(酸化ビスマスなど)、スズ含有化合物(酸化スズなど)、鉄含有化合物(酸化鉄など)、銅含有化合物(酸化銅など)、前記リン酸塩(C)以外のリン含有化合物(前記リン酸塩(C)の範疇に属さないリン含有化合物)、ケイ素含有化合物[(ポリ)オルガノシロキサン、ポリシルセスキオキサン、層状ケイ酸塩など]、イオウ含有化合物(有機スルホン酸化合物、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩、スルファミン酸化合物又はその塩など)、フッ素含有樹脂などが例示できる。これらの難燃助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0087】
これらの難燃助剤のうち、特に、芳香族樹脂(フェノール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及び芳香族ポリエステルアミド系樹脂など)、アンチモン含有化合物、フッ素含有樹脂、ケイ素含有化合物及びリン含有化合物から選択された少なくとも一種を用いるのが好ましい。アンチモン含有化合物及び/又はリン含有化合物を用いると難燃性をさらに向上させることができ、フッ素含有樹脂及び/又はケイ素含有化合物を用いると、ドリッピングを効果的に防止できる。
【0088】
なお、難燃助剤として、芳香族樹脂を使用する場合、ベース樹脂とは異なる樹脂を用いることができる。例えば、ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂(芳香族飽和ポリエステル系樹脂)である場合、芳香族樹脂として、非ポリエステル系芳香族樹脂(例えば、フェノール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステルアミド系樹脂など)を用いることができる。
【0089】
アンチモン含有化合物としては、例えば、酸化アンチモン[三酸化アンチモン(Sbなど)、五酸化アンチモン(xNaO・Sb・yHO(x=0〜1、y=0〜4)など)など]、アンチモン酸塩[アンチモン酸金属塩(例えば、アンチモン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、アンチモン酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩など)、アンチモン酸アンモニウムなど]などが挙げられる。これらのアンチモン含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記アンチモン含有化合物のうち、酸化アンチモン及びアンチモン酸のアルカリ金属塩などが好ましい。
【0090】
また、アンチモン含有化合物は、必要により、エポキシ化合物、シラン化合物、イソシアネート化合物及び/又はチタネート化合物などの表面処理剤で表面処理して用いてもよい。
【0091】
なお、アンチモン含有化合物の平均粒子径は、例えば、0.02〜5μm、好ましくは0.1〜3μm程度であってもよい。
【0092】
前記フッ素含有樹脂には、フッ素含有単量体の単独又は共重合体、例えば、フッ素含有単量体(テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなど)の単独又は共重合体や、フッ素含有単量体と他の共重合性単量体(エチレン、プロピレンなどのオレフィン系単量体、(メタ)アクリレートなどのアクリル系単量体など)との共重合体などが含まれる。
【0093】
このようなフッ素含有樹脂としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示できる。フッ素含有樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0094】
なお、前記フッ素含有樹脂は、粒子状で使用してもよく、平均粒径は、例えば、10〜5000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度、さらに好ましくは100〜700μm程度であってもよい。
【0095】
ケイ素含有化合物としては、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライトなどのスメクタイト系層状ケイ酸塩、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Li型四ケイ素フッ素雲母、Na型四ケイ素フッ素雲母などの膨潤性合成フッ素雲母、バーミュライト、ハロイサイトなどが挙げられる。尚、層状ケイ酸塩には、四級アンモニウムや四級ホスホニウムなどの有機オニウムカチオンを層間にインタカレートした変性層状ケイ酸塩、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、オキサゾリン基等の反応性官能基を付加した変性層状ケイ酸塩(反応性官能基を有するシランカップリング剤で処理した層状ケイ酸塩など)なども含まれる。さらに、その他のケイ素含有化合物として、(ポリ)オルガノシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサン(オルガノシロキサンの単独重合体又は共重合体など)などが挙げられる。これらの(ポリ)オルガノシロキサンのうち、粘度1×10−3〜5×10−2−1(25℃)程度のオルガノシロキサンが好ましい。これらのケイ素含有化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0096】
リン含有化合物としては、(縮合)リン酸エステル[例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ビフェニルビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−A(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)、ハイドキノンビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)、ビフェニルビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)、ペンタエリスリトールジフェニルホスフェート、ペンタエリスリトールジ−2,6−キシリルホスフェート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オクタン−4−メタノール−1−オキシド、及び米国特許4154775号公報及び米国特許4801625号に記載のリン酸エステル化合物など]、(縮合)リン酸エステルアミド[例えば、1,4−ピペラジンジイルテトラフェニルホスフェート、1,4−ピペラジンジイルテトラ−2,6−キシリルホスフェート、N,N'−ビス(ネオペンチレンジオキシホスフィニル)ピペラジン、及び特開平10−175985号公報、特開2001−139823号公報及び特開2001−354689号公報記載のリン酸エステルアミドなど]、ホスホニトリル化合物[例えば、アリールオキシホスファゼン(フェノキシホスファゼン、トリルオキシホスファゼン、キシリルオキシホスファゼン、フェノキシトリルオキシホスファゼン、フェノキシキシリルホスファゼン)などの環状及び/又は鎖状のホスファゼン化合物、それらの架橋ホスファゼン化合物(例えば、ビスフェノール類残基で架橋されたフェノキシホスファゼンなど)、及びWO99/19383号公報、WO00/9518号公報、WO02/98886号公報及びWO04/24844号公報に記載のホスファゼン化合物など]、有機(亜)ホスホン酸化合物[例えば、ペンタエリスリトールジメチルホスホネート、ペンタエリスリトールジエチルホスホネート、ペンタエリスリトールジフェニルホスホネート、メチルホスホン酸エステル(例えば、メチルホスホン酸のトリメチロールプロパンエステル、メチルホスホン酸ビス[2−メチル−2−オキソ−5−エチル−1,3−ジオキサ−2−ホスファ(V)シクロヘキサン−5−イルメチル]など)、米国特許3789091号公報、米国特許3849368号公報、米国特許4390477号公報に記載の化合物などの有機(亜)ホスホン酸エステル、有機(亜)ホスホン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸の塩基性窒素化合物塩(メラミン塩、グアナミン塩、ベンゾグアナミン塩及び/又はそれらの縮合物塩(メラム、メレム、メロンなどのメラミン縮合物などの有機(亜)ホスホン酸アミノトリアジン塩)など)、有機ホスフィン酸化合物、及び無機リン化合物(例えば、赤燐、(亜)リン酸金属塩(亜リンカルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸・亜リン酸アルミニウム複塩、リン酸ホウ素など)、次亜リン酸金属塩(次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸アルミニウムなど)など)が挙げられる。
【0097】
有機ホスフィン酸化合物としては、例えば、ホスフィン酸に有機基(置換基を有していてもよい炭化水素基など)が置換した有機基置換ホスフィン酸、多価ホスフィン酸(多価有機基で複数のホスフィン酸が連結された多価ホスフィン酸など)などの有機ホスフィン酸、そのエステル(例えば、10−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなどのホスファフェナントレンオキシド類など)又はその塩[金属、ホウ素、アンモニウム及び塩基性窒素含有化合物から選択された少なくとも一種の塩形成成分との塩(金属塩、ホウ素塩(ボリル化合物など)、アンモニウム塩、アミノ基含有窒素含有化合物との塩など)など]などが使用できる。なお、有機ホスフィン酸化合物(特に有機ホスフィン酸又はその塩)は、難燃助剤としての機能の他、電気特性向上剤としても機能するようである。
【0098】
有機ホスフィン酸塩を形成する金属としては、周期表第1族金属(アルカリ金属)(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)、周期表第2族金属(アルカリ土類金属)(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、周期表第4族金属(チタン、ジルコニウムなど)、遷移金属(マンガンなどの周期表第7族金属;鉄などの周期表第8族金属;コバルトなどの周期表第9族金属;ニッケルなどの周期表第10族金属;銅などの周期表第11族金属など)、亜鉛などの周期表第12族金属、アルミニウムなどの周期表第13族金属、スズなどの周期表第14族金属、アンチモンなどの周期表第15族金属などが挙げられる。これらの金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属塩は、含水塩、例えば、含水マグネシウム塩、含水カルシウム塩、含水アルミニウム塩、含水亜鉛塩などであってもよい。また、金属塩には、金属が部分的に酸化された塩(例えば、チタニル塩、ジルコニル塩など)も含まれる。また、塩を形成する塩基性窒素含有化合物としては、例えば、アミノ基を有する窒素含有化合物[アミノトリアジン化合物(メラミン、グアナミン、ベンゾグアナミン及び/又はその縮合物(メラム、メレム、メロンなどのメラミン縮合物など)など)、グアニジン化合物(グアニジンなど)など]、尿素化合物(尿素など)などが挙げられる。塩基性窒素含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩形成成分は、単独で又は二種以上組合せて塩を形成していてもよい。例えば、有機ホスフィン酸塩には、有機ホスフィン酸と複数種の塩形成成分との複塩、例えば、メラミン・メラム・メレム複塩、メラミン・メラム・メレム・メロン複塩なども含まれる。
【0099】
これらの塩を形成する金属および窒素含有化合物のうち、周期表第1族金属、第2族金属、第4族金属、第8族金属、第12族金属、第13族金属及びアミノトリアジン化合物(メラミン、メラミン縮合物など)が好ましい。
【0100】
なお、前記有機ホスフィン酸塩において、置換基として酸基(カルボキシ基など)を有する有機ホスフィン酸の酸基の一部又は全てが塩(前記例示の塩、例えば、ホスフィン酸と同一の金属や窒素含有化合物などの塩)を形成していてもよい(例えば、カルボキシレート化していてもよい)。
【0101】
また、有機ホスフィン酸は、置換基{例えば、ヒドロキシル基、不飽和基[例えば、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基など)などの炭素−酸素不飽和結合含有基など]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基など)など}を有していてもよい。有機ホスフィン酸は、これらの置換基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0102】
代表的な有機ホスフィン酸としては、例えば、置換基を有するモノ又はジアルキルホスフィン酸[例えば、ジエチルホスフィン酸などのジアルキルホスフィン酸;(ヒドロキシメチル)メチルホスフィン酸、(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸、(ヒドロキシプロピル)メチルホスフィン酸、ビス(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸、ビス(ヒドロキシエチル)ホスフィン酸、ビス(ヒドロキシプロピル)メチルホスフィン酸などのヒドロキシル基含有ジアルキルホスフィン酸;(メトキシメチル)メチルホスフィン酸、ビス(メトキシメチル)ホスフィン酸などのアルコキシ基含有ジアルキルホスフィン酸;(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸、(2−カルボキシプロピル)メチルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、ビス(2−カルボキシプロピル)ホスフィン酸などのカルボキシ基含有ジアルキルホスフィン酸;(2−メトキシカルボニルエチル)メチルホスフィン酸、[2−(β−ヒドロキシエチルカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸、(2−メトキシカルボニルプロピル)メチルホスフィン酸、ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ホスフィン酸、ビス(2−メトキシカルボニルプロピル)ホスフィン酸などのアルコキシカルボニル基含有ジアルキルホスフィン酸など]、置換基を有していてもよいアルキレンホスフィン酸(例えば、1−ヒドロキシホスホラン1−オキシド、1−ヒドロキシ−3−メチルホスホスホラン1−オキシド、2−カルボキシ−1−ヒドロキシ−1H−ホスホラン1−オキシドなどのC3−8アルキレンホスフィン酸など)、置換基を有していてもよいアルケニレンホスフィン酸(例えば、1−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロ−1H−ホスホール1−オキシド、1−ヒドロキシ−2,5−ジヒドロ−1H−ホスホール1−オキシド、1−ヒドロキシ−3−メチル−2,5−ジヒドロ−1H−ホスホール1−オキシドなどのシクロC3−8アルケニレンホスフィン酸など)、置換基を有していてもよい(ビ)シクロアルキレンホスフィン酸(例えば、1,3−シクロブチレンホスフィン酸、1,3−シクロペンチレンホスフィン酸、1,4−シクロオクチレンホスフィン酸、1,5−シクロオクチレンホスフィン酸などの(ビ)C4−10シクロアルキレンホスフィン酸など)などが挙げられる。
【0103】
また、代表的な有機ホスフィン酸塩としては、上記有機ホスフィン酸の塩、例えば、置換基を有するモノ又はジアルキルホスフィン酸の塩[例えば、(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸Ca塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸Ca塩、(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸Ca塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸Ca塩、[2−(β−ヒドロキシエチルカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸Ca塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Ca塩、(2−メトキシカルボニルエチル)メチルホスフィン酸Ca塩及びこれらのカルシウム塩に対応するMg塩などのアルカリ土類金属塩;ジエチルホスフィン酸Al塩、(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸Al塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸Al塩、ビス(2−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸Al塩、[2−(β−ヒドロキシエチルカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸Al塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Al塩などのアルミニウム塩;(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸Ti塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸Ti塩、ビス(2−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸Ti塩、[2−(β−ヒドロキシエチルカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸Ti塩及びこれらの塩に対応するチタニル塩などのチタン塩;(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸Zn塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸Zn塩、ビス(2−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸Zn塩、[2−(β−ヒドロキシエチルカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸Zn塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Zn塩などの亜鉛塩などの金属塩;(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸メラミン塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸メラミン塩、ビス(2−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸メラミン塩、[2−(β−ヒドロキシエチルカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸メラミン塩、これらのメラミン塩に対応するメラミン・メラム・メレム複塩などのアミノトリアジン化合物との塩など]、置換基を有していてもよいアルキレンホスフィン酸塩[例えば、1−ヒドロキシホスホラン1−オキシドのアルカリ土類金属塩(Ca塩、Mg塩など)、Al塩、Ti塩、チタニル塩、Zn塩などの金属塩;メラミン塩、メラミン・メラム・メレム複塩などのアミノトリアジン塩など]などが含まれる。
【0104】
好ましい有機ホスフィン酸化合物には、置換基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基など)を有するモノ又はジアルキルホスフィン酸又はその塩(特に、金属塩、アミノトリアジン塩)、置換基を有していてもよいアルキレンホスフィン酸又はその塩(特に、金属塩、アミノトリアジン塩)、置換基を有していてもよいアルケニレンホスフィン酸又はその塩(特に、金属塩、アミノトリアジン塩)、置換基を有していてもよい(ビ)シクロアルキレンホスフィン酸又はその塩(特に、金属塩、アミノトリアジン塩)などが含まれる。
【0105】
なお、有機ホスフィン酸化合物は、例えば、特開昭55−5979号公報、特開平8−73720号公報、特開平9−278784号公報、特開平11−236392号公報、特開2001−2686号公報、特開2004−238378号公報、特開2004−269526号公報、特開2004−269884号公報、特開2004−346325号公報、特表2001−513784号公報、特表2001−525327号公報、特表2001−525328号公報、特表2001−525329号公報、特表2001−540224号公報、米国特許4180495号公報、米国特許4208321号公報、米国特許4208322号公報、米国特許6229044号公報、米国特許6303674号公報に記載されている化合物を使用してもよい。
【0106】
また、有機(亜)ホスホン酸化合物として、例えば、特開昭48−57988号公報、特開昭55−5979号公報、特開昭56−84750号公報、特開昭63−22866号公報、特開平1−226891号公報、特開平2−180875号公報、特開平4−234893号公報、特開平7−224078号公報、特開平7−247112号公報、特開平8−59679号公報、特開平8−245659号公報、特開平9−272759号公報、特開2000−63843号公報、特開2001−2688号公報、特開2001−64438号公報、特開2001−64521号公報、特開2001−98161号公報、特開2001−98273号公報、特開2001−106919号公報、WO00/11108号公報、WO01/57134号公報に記載の化合物も挙げられる。
【0107】
難燃助剤(D)は、少なくとも芳香族樹脂、アンチモン含有化合物、ケイ素含有化合物及びリン含有化合物から選択された少なくとも一種で構成してもよい。なお、フッ素含有樹脂は、他の難燃助剤(例えば、アンチモン含有化合物、ケイ素含有化合物及びリン含有化合物から選択された少なくとも一種)と組み合わせることが多い。フッ素含有樹脂と他の難燃助剤とを組み合わせる場合、フッ素含有樹脂の割合は、他の難燃助剤100重量部に対して、3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは10〜20重量部程度であってもよい。
【0108】
なお、本発明では、難燃助剤(D)を添加しなくても、ベース樹脂(A)の電気特性を向上できる。また、難燃助剤(D)としての有機ホスフィン酸化合物は、アミノトリアジン縮合物のポリリン酸塩(C1)、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリメタリン酸塩(C2)、及び(ポリ)アルキレンポリアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種のリン酸塩(C)と組み合わせる場合が多い。
【0109】
難燃助剤(D)の割合は、ベース樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度である。特に、難燃助剤(D)の割合は、ベース樹脂(A)100重量部に対して、例えば、5重量部以上(例えば、6〜25重量部)、好ましくは8〜20重量部、さらに好ましくは9〜18重量部(例えば、10〜15重量部)程度であってもよい。
【0110】
また、難燃助剤(D)の割合は、ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して、例えば、0.05〜300重量部(例えば、0.1〜250重量部)、好ましくは0.2〜200重量部(例えば、0.5〜180重量部)、さらに好ましくは1〜150重量部(例えば、5〜140量部)、特に10〜130重量部(例えば、20〜120重量部)、通常30〜110重量部(例えば、50〜100重量部)程度であってもよい。また、リン酸塩(C)と難燃助剤(D)との割合(重量比)は、前者/後者=10/90〜99.9/0.1、好ましくは20/80〜99/1、さらに好ましくは25/75〜97/3程度であってもよい。
【0111】
(オレフィン系樹脂(E))
本発明の樹脂組成物は、電気特性向上樹脂として、さらにオレフィン系樹脂(E)を含有してもよい。オレフィン系樹脂を用いると、電気特性(例えば、耐トラッキング性)をさらに改善することができる。
【0112】
オレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィン系単量体{エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン(特に、α−C2−10オレフィン);環状オレフィン[例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン(C3−10シクロアルケンなど);シクロヘキシンなどのC3−10シクロアルキン;架橋環式オレフィン(ノルボルネン、テトラジシクロドデセンなどのポリシクロアルケン、ジシクロペンタジエンなどのジシクロアルカジエンなど);又はこれらの誘導体(アルキル置換体、アルキリデン置換体、アルコキシ置換体、アシル置換体、カルボキシ置換体など)など]など}の単独又は共重合体、前記オレフィン系単量体又は重合体と、共重合性単量体[ビニル系単量体、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩(金属塩など)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど)などのアクリル系単量体;酢酸ビニルなどの有機酸ビニルエステル系単量体;フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、(無水)ナジック酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸系単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体など]との共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など)などが挙げられる。
【0113】
オレフィン系樹脂としては、具体的に、例えば、α−オレフィン系樹脂[例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのα−C2−3オレフィンの単独又は共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸金属塩共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体など)などのα−C2−3オレフィンと共重合性単量体との共重合体など]、酸変性オレフィン系樹脂[例えば、オレフィン系樹脂(オレフィンの単独又は共重合体)を、酸成分(例えば、α,β−不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸など)及び/又はその酸無水物など)で変性した酸変性オレフィン系樹脂など]、環状オレフィン系樹脂(例えば、環状オレフィンの単独重合体、α−C2−10オレフィン−環状オレフィン共重合体など)などが挙げられる。オレフィン系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂のうち、α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体[例えば、α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステル共重合体(特に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体(特に、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体)など]、酸変性オレフィン系樹脂[例えば、α−C2−3オレフィンの単独又は重合体を酸成分で変性したオレフィン系樹脂(特に、酸変性ポリプロピレン)など]などが好ましい。
【0114】
オレフィン系樹脂の数平均分子量は、特に制限されないが、例えば、300〜20×10、好ましくは500〜10×10程度である。
【0115】
オレフィン系樹脂の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、0〜50重量部の範囲から選択でき、例えば、0〜30重量部(例えば、0.5〜25重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、1.5〜18重量部)、さらに好ましくは2〜15重量部(例えば、2〜15重量部)、特に3〜15重量部(例えば、5〜15重量部)程度であってもよい。また、オレフィン系樹脂の割合は、ハロゲン系難燃剤100重量部に対して、例えば、0〜300重量部(例えば、0.5〜250重量部)、好ましくは1〜200重量部(例えば、5〜180重量部)、さらに好ましくは10〜160重量部(例えば、20〜150重量部)、特に30〜120重量部(例えば、50〜100重量部)程度であってもよい。さらに、オレフィン系樹脂の割合は、ハロゲン系難燃剤(B)とリン酸塩(C)との総量100重量部に対して、例えば、1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜90重量部程度である。
【0116】
(他の添加剤)
本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに他の添加剤、例えば、電気特性向上助剤(電気特性を向上させるための添加剤)、他の難燃剤(窒素系、リン系難燃剤など)、充填剤、安定剤(紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤、耐熱安定剤、加工安定剤、リン系安定剤、反応性安定剤など)、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶化核剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料など)、潤滑剤、ドリッピング防止剤などを含有してもよい。これらの他の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記樹脂組成物は、これらの添加剤のうち、特に、電気特性向上助剤、充填剤、耐熱安定剤、加工安定剤などを含有してもよい。
【0117】
(電気特性向上助剤(F))
電気特性向上助剤(F)としては、例えば、非リン系の窒素含有化合物[アミノトリアジン化合物(メラミン;グアナミン;メラム、メレムなどのメラミン縮合物など)、アミノトリアジン化合物の塩(前記アミノトリアジン化合物の有機酸又は無機酸塩、例えば、メラミンシアヌレートなどのシアヌール酸塩など)など]、無機酸金属化合物{例えば、無機酸金属塩[例えば、(含水)ケイ酸金属塩(タルク、カオリン、シリカ、ケイソウ土、クレー、ウォラストナイトなど)、(含水)ホウ酸金属塩(例えば、(含水)ホウ酸亜鉛、(含水)ホウ酸カルシウム、(含水)ホウ酸アルミニウムなど)、(含水)スズ酸金属塩(例えば、(含水)スズ酸亜鉛など)、硫酸金属塩(硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなど)など]など}、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、アルミナ水和物(ベーマイト)など)、金属硫化物(硫化亜鉛、硫化モリブデン、硫化タングステンなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、アルカリ土類金属塩(例えば、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩)など)などの無機金属化合物が挙げられる。これらの電気特性向上助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0118】
電気特性向上助剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1.5〜15重量部(例えば、2〜15重量部)程度であってもよい。また、電気特性向上助剤の割合は、ハロゲン系難燃剤100重量部に対して、例えば、0〜300重量部、好ましくは0.5〜200重量部、さらに好ましくは1〜150重量部程度であってもよい。
【0119】
(充填剤(G))
充填剤(G)としては、慣用の繊維状、板状、粉粒状などの充填剤が挙げられる。繊維状充填剤としては、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維(ウイスカー)等)、有機繊維(アミド繊維など)等が例示できる。板状充填剤としては、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。粉粒状充填剤としては、金属酸化物(酸化亜鉛、アルミナなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなど)、炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、ガラス類(ミルドファイバー、ガラスビーズ、ガラスバルーンなど)、ケイ酸塩(タルク、カオリン、シリカ、ケイソウ土、クレー、ウォラストナイトなど)、硫化物(二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、炭化物(フッ化黒鉛、炭化ケイ素など)、活性炭、窒化ホウ素などが例示できる。充填剤は、単独で又は2種以上組みあわせて使用できる。
【0120】
充填剤の使用量は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0〜100重量部、好ましくは1〜80重量部(例えば、5〜75重量部)、さらに好ましくは10〜70重量部(例えば、20〜65重量部)程度であってもよい。
【0121】
(耐熱安定剤(H))
耐熱安定剤(H)としては、ヒンダードフェノール系化合物(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)[例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などの分岐C3−6アルキルフェノール類など]、リン系化合物(リン系酸化防止剤)[ホスファイト類(ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのビス(C1−9アルキル−アリール)ペンタエリスリトールジホスファイトなど)、ホスフォナイト類(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスフォナイトなど)など]、イオウ系化合物(イオウ系酸化防止剤)[ジラウリルチオジプロピオネートなど]、アミン系酸化防止剤(アミン系酸化防止剤)[例えば、ナフチルアミン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン類など]、ヒドロキノン系化合物(ヒドロキノン系酸化防止剤)[例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなど]、キノリン系化合物(キノリン系酸化防止剤)[例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなど]などの慣用の酸化防止剤;アルカリ又はアルカリ土類金属化合物[例えば、リン酸水素アルカリ又はアルカリ土類金属塩(例えば、、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム(第二リン酸カルシウム,CaHPO4)、リン酸二水素バリウム、リン酸一水素バリウムなどのリン酸水素(又は一水素又は二水素)アルカリ土類金属塩など)];無機金属又は鉱物系安定剤(ハイドロタルサイト、ゼオライトなど)などが挙げられる。
【0122】
これらの耐熱安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0123】
特に少なくともヒンダードフェノール系化合物を耐熱安定剤として使用してもよい。例えば、耐熱安定剤は、ヒンダードフェノール系化合物単独で構成してもよく、ヒンダードフェノール系化合物と他の耐熱安定剤(例えば、リン系化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属化合物、及びハイドロタルサイトから選択された少なくとも一種)とで構成してもよい。
【0124】
耐熱安定剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは(特に0.05〜2重量部)程度の範囲から選択できる。また、ヒンダードフェノール系化合物と他の耐熱安定剤とを組みあわせる場合、ヒンダードフェノール系化合物と他の耐熱安定剤との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜1/99、好ましくは98/2〜10/90、さらに好ましくは95/5〜20/80程度であってもよい。
【0125】
(加工安定剤(I))
加工安定剤(I)としては、例えば、長鎖脂肪酸(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、べヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸などのC10−34飽和又は不飽和脂肪酸)、長鎖脂肪酸アミド(例えば、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジエルカ酸アミド、エチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなど)、長鎖脂肪酸エステル(例えば、エチレングリコールジステアリン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコールなど)のモノステアリン酸エステル、これらに対応するパルミチン酸エステル、ラウリン酸エステル、ベヘン酸エステル、モンタン酸エステル、オレイン酸エステルなどの前記例示の長鎖脂肪酸のエステル)、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体など)、シリコーン系化合物、ワックス類[例えば、天然パラフィン、合成パラフィン、マイクロワックス、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックスなど)など]などが挙げられる。加工安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0126】
加工安定剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度である。
【0127】
(反応性安定剤(J))
反応性安定剤(J)としては、例えば、エポキシ系反応性安定剤[グリシジルエーテル化合物(ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなど)、グリシジルエステル化合物(安息香酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステルなど)、エポキシ基含有アクリル系重合体など]、オキセタン系反応性安定剤[1,4−ビス{[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)メチル]エーテルなど]、オキサゾリン系反応性安定剤[1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、1,4−フェニレンビス(2−オキサゾリン)など]、カルボジイミド系反応性安定剤[ポリアリールカルボジイミド、ポリアルキルアリールカルボジイミド、ポリ[アルキレンビス(アルキル又はシクロアルキルアリール)カルボジイミド]などのポリカルボイミド、Rhein Chemie社の「Stabaxol」シリーズ、日清紡績(株)の「カルボジライト」シリーズなど]などが挙げられる。これらの反応性安定剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0128】
反応性安定剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0〜20重量部、好ましくは0.05〜8重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部程度の範囲から選択できる。
【0129】
本発明の難燃性樹脂組成物は、粉粒体混合物や溶融混合物であってもよく、ベース樹脂(A)と、ハロゲン系難燃剤(B)と、リン酸塩(C)と、必要により他の成分(難燃助剤、オレフィン系樹脂、電気特性向上助剤、添加剤など)とを慣用の方法で混合することにより調製できる。また、本発明には、前記難燃性樹脂組成物で形成された成形体(例えば、前記溶融混合物を固化することにより形成された樹脂組成物(成形体))も含まれる。
【0130】
難燃性樹脂組成物及び成形体は、例えば、(1)各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練し押出してペレットを調製した後、成形する方法、(2)一旦、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形体を得る方法、(3)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込み、成形する方法などが採用できる。なお、ベース樹脂以外の成分の全て又は一部を予め混合し、ベース樹脂と混合してもよく、ベース樹脂以外の成分同士を予め混合することなく、ベース樹脂と直接混合してもよい。また、ベース樹脂以外の成分の添加順序も特に制限されず、ベース樹脂に、ベース樹脂以外の成分の全てを一度に添加してもよく、一部の成分を添加して混合した後、残る成分を(必要により複数回に分割して)添加してもよい。
【0131】
なお、成形体は、難燃性樹脂組成物を、慣用の方法により溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形などの慣用の方法で成形することにより製造できる。
【0132】
本発明の難燃性樹脂組成物(及び成形体)は、ハロゲン系難燃剤を含有するにも拘わらず、難燃性と電気特性とを両立できる。本発明の樹脂組成物(及び成形体)は、試験片の厚み1.6mmで測定したとき、UL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−2以上、好ましくはV−1以上、さらに好ましくはV−0以上である。また、本発明の樹脂組成物(及び成形体)において、IEC112(UL746A)に準拠した比較トラッキング指数(CTI)は、350V以上(例えば、350〜1000V程度)、好ましくは400V以上(例えば、400〜900V程度)、さらに好ましくは500V以上(例えば、500〜800V程度)であり、600V以上(例えば、600〜750V程度)にすることもできる。
【0133】
また、本発明の樹脂組成物(及び成形体)は、試験片の厚み0.8mmで測定したとき、UL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−1以上、好ましくはV−0以上で、かつIEC112(UL746A)に準拠した比較トラッキング指数(CTI)は、350V以上(例えば、350〜1000V程度)、好ましくは400V以上(例えば、400〜900V程度)、さらに好ましくは450V以上(例えば、450〜850V程度)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の難燃性樹脂組成物(及び成形体)は、難燃性及び電気特性に優れており、種々の用途、例えば、電気・電子部品、オフィスオートメーション(OA)機器部品、家電機器部品、自動車部品、機械機構部品などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0135】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の試験により、樹脂組成物の難燃性及び電気特性(比較トラッキング指数)を評価した。
【0136】
[燃焼性試験]
UL94に準拠して、試験片の厚み1.6mm又は0.8mmで燃焼性を評価した。
【0137】
[比較トラッキング指数(CTI)]
IEC112(UL746A)に準拠して、塩化アンモニウム0.1%水溶液Aを用いて比較トラッキング指数(CTI)[単位:V]を評価した(試験片の厚み3mm)。
【0138】
[成形性(モールドデポジット)]
80t射出成形機[東芝機械(株)製]を用いて70mm×50mm×3mmの成形片を30ショット成形した後に目視観察により金型表面上のモールドデポジットを下記の基準で評価した。
【0139】
○:金型表面にモールドデポジットが全く観察されない
△:金型表面にモールドデポジットが若干観察される
×:金型表面に著しいモールドデポジットが観察される。
【0140】
実施例及び比較例で使用したベース樹脂、ハロゲン系難燃剤、リン酸塩、難燃助剤、電気特性向上樹脂、電気特性向上助剤、充填剤、耐熱安定剤、加工安定剤は以下の通りである。
【0141】
1.ベース樹脂(A)
(A−1):ポリブチレンテレフタレート[固有粘度=0.85]
(A−2):ポリエチレンテレフタレート[固有粘度=0.75]
(A−3):ポリプロピレンテレフタレート[固有粘度=0.85]
(A−4):ポリアミド66
(A−5):12.5モル%イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート[固有粘度=0.80]。
【0142】
2.ハロゲン系難燃剤(B)
(B−1):ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)[FR1025、ブロムケムファーイースト社製]
(B−2):臭素化ポリスチレン[パイロチェック68PB、フェロケミカルズ社製]
(B−3):臭素化ポリスチレン[SYTEX HP−7010P、アルベマール社製]
(B−4):エチレンビステトラブロモフタルイミド[SYTEX BT−93、アルベマール社製]
(B−5):臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂[SRT5000、阪本薬品工業(株)製]
(B−6):臭素化ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂[ファイヤガード FG−7500、帝人化成(株)製]。
【0143】
3.リン酸塩(C)
(C1−1):ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩[日産化学工業(株)製、PMP200]
(C1−2):リン、イオウ及び酸素から成るポリ酸のメラミン・メラム・メレム複塩[特開平10−306082号公報、実施例3に準じて調製]
(C1−3):ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩[特開平10−306081号公報、実施例5に準じて調製]
(C2−1):ポリメタリン酸メラミン塩[特開平10−81691号公報、実施例1に準じて調製]
(C3−1):ポリリン酸メラミン[WO00/02869号公報、実施例に準じて調製]
(C3−2):ポリリン酸メラミン[日産化学工業(株)製、PHOSMEL−200]
(C4−1):ポリリン酸ピペラジン塩[旭電化工業(株)製、アデカスタブT-1063F]
(C4−2):ポリリン酸ピペラジン塩[旭電化工業(株)製、アデカスタブFP-2100]
[比較例で用いたリン酸塩C]
(C−I):ピロリン酸ジメラミン[Budit311、Budenheim社製]
(C−II):ポリリン酸アンモニウム[チッソ社(株)製、テラージュC60]。
【0144】
4.難燃助剤(D)
[アンチモン含有化合物(D1)]
(D1−1):三酸化アンチモン
(D1−2):アンチモン酸ナトリウム
[フッ素含有樹脂(D2)]
(D2−1):ポリテトラフルオロエチレン
[ケイ素含有化合物(D3)]
(D3−1):膨潤性合成雲母[ME100、コープケミカル(株)製]
[リン含有化合物(D4)]
(D4−1):(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸のアルミニウム塩
(D4−2):(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸のカルシウム塩
(D4−3):レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)
(D4−4):環状フェノキシホスファゼン(3〜4量体混合物)
(D4−5):1,4−ピペラジンジイルテトラフェニルホスフェート
(D4−6):メチルホスホン酸ビス[2−メチル−2−オキソ−5−エチル−1,3−ジオキサ−2−ホスファ(V)シクロヘキサン−5−イルメチル]
(D4−7):ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
[芳香族樹脂(D5)]
(D5−1):ポリカーボネート樹脂[パンライトL1225、帝人化成(株)製]。
【0145】
5.電気特性向上樹脂(E)(オレフィン系樹脂(E))
(E−1):エチレン/アクリル酸エチル共重合体[NUC−6570、日本ユニカー(株)製]
(E−2):エチレン/メタアクリル酸グリシジル共重合体[ボンドファストE、住友化学工業(株)製]
(E−3):無水マレイン酸変性ポリオレフィン[タフマーMP、三井化学(株)製]。
【0146】
6.電気特性向上助剤(F)
(F−1):酸化チタン[TITONE SR−1、堺化学工業(株)製]
(F−2):タルク
(F−3):メラミンシアヌレート。
【0147】
7.充填剤(G)
(G−1):ガラス繊維[直径13μm、長さ3mmのチョップドストランド]
(G−2):ガラス繊維[直径10μm、長さ3mmのチョップドストランド]。
【0148】
8.耐熱安定剤(H)
(H1−1):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(H2−1):ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(H2−2):テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイト
(H2−3):ハイドロタルサイト[DHT−4A、協和化学工業(株)製]
(H2−4):リン酸二水素カルシウム。
【0149】
9.加工安定剤(I)
(I−1):ポリエチレンワックス[サンワックス、三洋化成工業(株)製]
(I−2):モンタン酸エステル[LUZA WAX、東洋ペトロライト(株)製]。
【0150】
10.反応性安定剤(J)
(J−1):ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル[エピコート828、油化シェルエポキシ(株)製]
(J−2):ポリカルボジイミド[カルボジライトHMV−8CA、日清紡績(株)製]。
【0151】
実施例1〜26および比較例1〜13
ベース樹脂(A)に、ハロゲン系難燃剤(B)、リン酸塩(C)、難燃助剤(D)、電気特性向上樹脂(E)、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)、反応性安定剤(J)を表1〜表3に示す割合(重量部)で混合し、30mm径の二軸押出機で混練押出してペレット状の樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験用成形品を作製し、燃焼性、耐トラッキング性(比較トラッキング指数)及び成形性(モールドデポジット)を評価した。結果を表1〜3に示す。なお、比較例10は、押出時に樹脂の発泡分解が起こった。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
実施例27〜35
ベース樹脂(A)に、ハロゲン系難燃剤(B)、リン酸塩(C)、難燃助剤(D)、電気特性向上樹脂(E)、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)、反応性安定剤(J)を表4に示す割合(重量部)で混合し、押出機により混練押出してペレット状の樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験用成形品を作製し、燃焼性(1.6mm)及び耐トラッキング性(比較トラッキング指数)を評価した。結果を表4に示す。
【0156】
実施例36〜40、比較例14〜15
ベース樹脂(A)に、ハロゲン系難燃剤(B)、リン酸塩(C)、難燃助剤(D)、電気特性向上樹脂(E)、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)を表4に示す割合(重量部)で混合し、押出機により混練押出してペレット状の樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験用成形品を作製し、燃焼性(0.8mm)及び耐トラッキング性(比較トラッキング指数)を評価した。結果を表4に示す。
【0157】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂(A)と、ハロゲン系難燃剤(B)と、リン酸塩(C)とで構成され、かつ電気特性の向上した難燃性樹脂組成物であって、前記リン酸塩(C)が、アミノトリアジン縮合物のポリリン酸塩(C1)、アミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物のポリメタリン酸塩(C2)、20以上の数平均縮合度を有するポリリン酸とアミノトリアジン及び/又はアミノトリアジン縮合物との塩(C3)及び(ポリ)アルキレンポリアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されている難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
ベース樹脂(A)が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、スチレン系樹脂、及びビニル系樹脂から選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ベース樹脂(A)が、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、C2−4アルキレンテレフタレート及びC2−4アルキレンナフタレートから選択された少なくとも一種の単位を有するホモ又はコポリエステルで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ベース樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル、ポリプロピレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びエチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステルから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ハロゲン系難燃剤(B)が、臭素含有アクリル系樹脂、臭素含有スチレン系樹脂、臭素含有ポリカーボネート系樹脂、臭素含有エポキシ化合物、臭素化ポリアリールエーテル化合物、臭素化芳香族イミド化合物、臭素化ビスアリール化合物及び臭素化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物から選択された少なくとも一種の臭素原子含有難燃剤である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ハロゲン系難燃剤(B)が、臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、臭素化スチレン系樹脂、臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂及びアルキレンビス臭素化フタルイミドから選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
リン酸塩(C)が、硫黄成分を含んでいてもよいポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩(C1)、ポリメタリン酸メラミン(C2)、40以上の数平均縮合度を有するポリリン酸メラミン(C3)及びジアルキレンジアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
リン酸塩(C)が、リン原子1モルに対して、メラミン0.05〜1モル、メラム0.3〜0.6モル、及びメレム0.05〜0.8モルを含むポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩(C1a)、リン酸と、このリン酸1モルに対して0.05〜20モルの硫酸と、リン酸及び硫酸の合計1モルに対して1〜4モルのメラミンとの反応生成物を焼成した焼成物(C1b)、リン原子1モルに対してメラミン1.0〜1.1モルを含むポリメタリン酸メラミン(C2)、40以上の数平均縮合度を有し、かつリン原子1モルに対してメラミン1.1〜2.0モルを含むポリリン酸メラミン(C3)及びジC2−4アルキレンジアミン類の(ポリ)リン酸塩(C4)から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ベース樹脂(A)100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤(B)の割合が3〜30重量部であり、リン酸塩(C)の割合が1〜30重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項10】
ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して、リン酸塩(C)の割合が30〜250重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、芳香族樹脂、アンチモン含有化合物、フッ素含有樹脂、ケイ素含有化合物及びリン含有化合物から選択された少なくとも一種の難燃助剤(D)を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
難燃助剤(D)が、フェノール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及び芳香族ポリエステルアミド系樹脂、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、(ポリ)オルガノシロキサン、層状ケイ酸塩、フッ素含有単量体の単独又は共重合体、(縮合)リン酸エステル、(縮合)リン酸エステルアミド、(架橋)アリールオキシホスファゼン、(亜)リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸アミノトリアジン塩、有機(亜)ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸金属塩、及び有機ホスフィン酸アミノトリアジン塩から選択された少なくとも一種である請求項11記載の樹脂組成物。
【請求項13】
難燃助剤(D)の割合が、ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して、1〜150重量部である請求項11記載の樹脂組成物。
【請求項14】
さらに、オレフィン系樹脂(E)を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項15】
オレフィン系樹脂(E)が、α−C2−3オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び酸変性オレフィン系樹脂から選択された少なくとも一種である請求項14記載の樹脂組成物。
【請求項16】
さらに、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)、及び反応性安定剤(J)から選択された少なくとも一種の添加剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項17】
さらに、アミノトリアジン化合物の塩、(含水)ケイ酸金属塩、(含水)ホウ酸金属塩、(含水)スズ酸金属塩、金属酸化物、金属硫化物、及びアルカリ土類金属化合物から選択された少なくとも一種の電気特性向上助剤(F)を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項18】
さらに、メラミンシアヌレート、タルク、カオリン、(含水)ホウ酸亜鉛、(含水)ホウ酸カルシウム、(含水)スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、およびリン酸水素カルシウムから選択された少なくとも一種の電気特性向上助剤(F)を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項19】
(i)試験片の厚み0.8mmで測定したとき、UL94燃焼試験に準拠した難燃性がV−1以上であり、かつ(ii)IEC112に準拠した比較トラッキング指数が350V以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項20】
(i)試験片の厚み1.6mmで測定したとき、UL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−2以上であり、かつ(ii)IEC112に準拠した比較トラッキング指数が400V以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項21】
(i)試験片の厚み1.6mmで測定したとき、UL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−0以上であり、かつ(ii)IEC112に準拠した比較トラッキング指数が600V以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形体。
【請求項23】
電気・電子部品、オフィスオートメーション機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品である請求項22記載の成形体。


【公開番号】特開2007−70615(P2007−70615A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215649(P2006−215649)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】