説明

難燃性樹脂組成物

【課題】ハロゲンを含まず、樹脂もしくは溶剤への溶解性が高く、樹脂添加時に機械的特性、成形加工性等の樹脂本来の特性を低下させず、白化を起こさず、加水分解の起きない難燃剤を用いたUL規格(V−0)を満たす難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、特定の芳香族リン酸エステル含有化合物である難燃剤とからなる難燃性樹脂組成物であり、芳香族はビフェニル基であり、リン酸エステル基はビフェニル構造に組み込まれた環化構造体であり、芳香族リン酸エステル化合物二量体からなる難燃剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料(樹脂材料)に対し、ノンハロゲン化及び非アンチモン
化を達成した難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は、その優れた成形加工性、機械的特性、外観等の特徴から、パッケージ、建材、繊維、日用雑貨、電気・電子製品等に至るまで幅広く利用されている。なかでも、電気・電子製品、OA機器、事務機器、通信機器、自動車関連部材等の用途では、内部部品の発熱発火等の問題から樹脂の難燃化が必要とされている。
【0003】
プラスチック材料を用いた部材の難燃化技術としては、これまでハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等の難燃剤を添加して母材の難燃化をはかる、いわゆる添加型難燃化方法を中心にUL規格等を満足させてきた。
【0004】
今日、難燃剤には、少量添加するだけであらゆる樹脂に対し、難燃効果を発揮することが求められており、その観点から、ハロゲン系難燃剤やアンチモン酸化物(無機系難燃剤) が最も効果的な難燃剤であり、広く使用されている。特に、硬化性樹脂の難燃化に対しては硬化障害、硬化後の物性低下の恐れを考慮して、ハロゲンとアンチモンの組み合わせによる難燃剤が多く使用されている。
【0005】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を添加した樹脂組成物を使用した部材は、難燃化したにもかかわらず、思いがけずに燃焼する場合がある。さらに部材が焼却処理される場合には、RoHS・WEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment)等の環境負荷物質の規制に対し、ダイオキシンの発生や、これら等による大気等の汚染に起因する発癌性の問題を起こす可能性がある。また、アンチモン酸化物は、有毒でアンチモン中毒を引き起こす可能性がある。そのため、部材の材料である樹脂組成物、特にその添加物である難燃剤について、ノンハロゲン化、アンチモンフリー化の要求が強くなってきている。
【0006】
また、その他の無機系難燃剤、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等は、部材の燃焼や焼却廃棄時に有毒ガスを発生するというようなことはなく、安全性はあるものの、難燃化のためには大量に添加する必要があり、部材の破断強度等の機械物性や、成形性を低下させるいう問題が生じる。
【0007】
また、非特許文献1、特許文献1に開示されているようなリン系難燃剤に関しては、上記の無機系難燃剤の問題に加え、樹脂もしくは溶剤への溶解性の低さ、脂溶性の低さに起因する樹脂の白化等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−028102号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science, PartA: Polymer Chemistry,第40巻,359頁,2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、本発明の目的は、ハロゲンを含まず、樹脂もしくは溶剤への溶解性が高く、樹脂添加時に機械的特性、成形加工性等の樹脂本来の特性を低下させず、白化を起こさず、耐水性(加水分解性)の起きない難燃剤を用いたUL規格(V−0)を満たす難燃性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、樹脂と、下記一般式[1]で示される難燃剤とからなる難燃性樹脂組成物に関する。
【0013】
一般式[1]
【化1】

【0014】
(式中、X1〜X8は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または、置換カルボニル基を表す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明に使用される難燃剤は、ノンハロゲン化及びアンチモンフリー化することができ、公害も発生することがない。また、硬化性樹脂に添加してもその硬化性に悪影響を与えず、しかも比較的少量の添加で難燃効果を発揮できる。また、樹脂組成物や溶剤に対する溶解性の向上、樹脂中での白化(結晶化)防止が可能となる。この難燃剤を使用することで、樹脂添加時に機械的特性、成形加工性等の樹脂本来の特性に影響のない、難燃性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。
【0017】
まず、本発明の難燃剤について説明する。本発明の難燃剤は、一般式[1]で表記される構造を有している。難燃効果を発現することが知られているリン酸部位を含むことで、ノンハロゲン及びアンチモンフリーを達成し、少量の添加での難燃効果を発揮できる。非特許文献1に示されるリン酸化合物2の中心骨格をエーテル鎖にすること、特許文献1記載のリン酸化合物1のヒドロキシル基をなくすことにより、結晶性を下げ、樹脂組成物や溶剤に対する溶解性の向上、樹脂中での白化(結晶化)防止が可能となっている。
【0018】
本発明における一般式[1]のX1〜X8は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または、置換カルボニル基を表す。
【0019】
1〜X8において、置換アミノ基としては、好ましくは炭素数1〜40を有する置換アミノ基であり、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、(m−トリル)アミノ基、(p−トリル)アミノ基、フェニルメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ−m−トリルアミノ基、ジ−p−トリルアミノ基、ジ−p−ピリジルアミノ基、ジ−m−ピリジルアミノ基、フェニルチオフェニルアミノ基、ジフェニルチオアミノ基、ジフラニルアミノ基、ジ−p−ビフェニリルアミノ基、ジ(4−メチルビフェニル)アミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、フェニル−p−ビフェニルアミノ基、ビス[4−(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]アミノ基、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、イソシアネート基、アジリジニル基、2−メチルアジリジニル基、マレイミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチルアミド基、カルバミック酸メチルエステル基、カルバミック酸エチルエステル基、カルバミック酸フェニルエステル基、ジグリシジルアミノ基、ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)アミノ基などが挙げられる。
【0020】
1〜X8において、置換もしくは未置換のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜40を有するアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜20を有する置換アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等の未置換直鎖状又は分枝状アルキル基の他、エトキシエチル基、エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2−フェニルイソプロピル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、トリフェニルメチル基、α−ベンジルオキシベンジル基、3−メチルオキセタン−3−イルメチル基、3−エチルオキセタン−3−イルメチル基、2−イソシアネートエチル基、2−アジリジニルエチル基、2−(tert−ブチルカルボジイミド)エチル基、2−(シクロヘキシルカルボジイミド)エチル基、マレイミドメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、9−ヒドロキシノニル基、1−ヒドロキシルエチル基などが挙げられる。
【0021】
1〜X8において、置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数4〜8を有する置換もしくは未置換のシクロアルキル基であり、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0022】
1〜X8において、置換もしくは無置換のアリール基としては、好ましくは炭素数6〜40を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、更に好ましくは炭素数6〜18を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、9−フルオレニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−メチルビフェニル基、ターフェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−tert−ブチル−1−ナフチル基、4−ナフチル−1−ナフチル基、6−フェニル−2−ナフチル基、10−フェニル−9−アントリル基、スピロフルオレニル基、4−マレイミジルフェニル基、2−ベンゾシクロブテニル基などが挙げられる。
【0023】
1〜X8において、置換もしくは無置換のアルキルオキシ基としては、好ましくは炭素数1〜40を有する置換もしくは未置換のアルコキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜10を有する置換もしくは未置換のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンタオキシ基、n−ヘプタオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、3−メチルオキセタン−3−イルメチルオキシ基、3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシ基、2−イソシアネートエチルオキシ基、2−アジリジニルエチルオキシ基、2−ベンゾシクロブテニルエチルオキシ基、ヒドロキシメチルオキシ基、2−ヒドロキシエチルオキシ基、3−ヒドロキシプロピルオキシ基、4−ヒドロキシブチルオキシ基、5−ヒドロキシペンチルオキシ基、9−ヒドロキシノニルオキシ基、2−ヒドロキシ−2メチルプロピルオキシ基、プロペ−2−ニルオキシ基、1−メチルプロペ−2−ニルオキシ基、ブテ−2−ニルオキシ基、3−フェニルプロぺ−2−ニルオキシ基、プロピ−2−ニルオキシ基、1−メチルプロピ−2−ニルオキシ基、ブチ−2−ニルオキシ基、ペンチ−2−ニルオキシ基、3−フェニルプロピ−2−ニルオキシ基、プロピニルオキシ基、2−フェニルエチニル基、アクリル酸基、1−メチルアクリル酸基、1,2−ジメチルアクリル酸基、1−フェニルアクリル酸基、4,5−ジヒドロオキサゾリルメチルオキシ基などが挙げられる。
【0024】
1〜X8において、置換もしくは無置換のアリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜40を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、更に好ましくは炭素数6〜18を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、p−ビフェニルオキシ基、m−ビフェニルオキシ基、2−アントリルオキシ基、9−アントリルオキシ基、2−フェナントリルオキシ基、3−フェナントリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、2−フルオレニルオキシ基、3−フルオレニルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、2−ピレニルオキシ基、3−ペリレニルオキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、4−メチルビフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、4−メチル−1−ナフチルオキシ基、4−tert−ブチル−1−ナフチルオキシ基、4−ナフチル−1−ナフチルオキシ基、6−フェニル−2−ナフチルオキシ基、10−フェニル−9−アントリルオキシ基、スピロフルオレニルオキシ基、2−ベンゾシクロブテニルオキシ基などが挙げられる。
【0025】
1〜X8において、置換カルボニル基としては、カルボン酸基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジフェニルアミノカルボニル基、ジトリルアミノカルボニル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、フェニルカルボニル基、トリルカルボニル基、プロペノニル基、ブテ−2−ン−1−ノニル基、2−メチルブテ−2−ン−1−ノニル基、3−フェニルプロぺ−2−ン−1−ノニル基、2−ブテニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0026】
本発明の難燃剤である一般式[1]で表わされる化合物の代表例を、以下の表1に示すが、本発明は、なんらこの代表例に限定されるものではない。
【0027】
表1
【表1】

【0028】
【表1】

【0029】
【表1】

【0030】
【表1】

【0031】
【表1】

【0032】
【表1】

【0033】
【表1】

【0034】
【表1】

【0035】
【表1】

【0036】
【表1】

【0037】
【表1】

【0038】
【表1】

【0039】
【表1】

【0040】
【表1】

【0041】
【表1】

【0042】
【表1】

【0043】
【表1】

【0044】
【表1】

【0045】
【表1】

【0046】
【表1】

【0047】
【表1】

【0048】
【表1】

【0049】
【表1】

【0050】
【表1】

【0051】
【表1】

【0052】
【表1】

【0053】
【表1】

【0054】
【表1】

【0055】
【表1】

【0056】
【表1】

【0057】
一般式[1]で表わされる化合物群は、下記反応式1ように、リン酸化合物にジシクロヘキシルカルボジイミドのような脱水縮合剤を作用させることで、得ることが出来る。
【0058】
反応式1
【化2】

【0059】
上記で得られる化合物は、通常の単離方法、例えば抽出、蒸留、カラム精製、再結晶、再沈、洗浄、濾過、乾燥等の従来公知の慣用方法に従い、反応混合物から単離、精製される。
【0060】
次に、本発明の難燃剤を用いて作成することができる難燃性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0061】
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂に上記難燃剤が配合されたものである。ここで樹脂としては熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が挙げられるが、本発明においては熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のどちらか一方の樹脂系からなる場合も、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合系からなる場合もとりうる。
【0062】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等) 、ポリブタジエン、スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン樹脂、液晶ポリマー、複合プラスチック等が挙げられる。
【0063】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド等を好ましく使用できる。
【0064】
熱硬化性樹脂としては、従来公知のものを広く使用でき、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0065】
これらの熱硬化性樹脂の中でも、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポ
キシ樹脂等を特に好ましく使用できる。
【0066】
本発明において、樹脂は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
これらの樹脂に対する難燃剤の配合割合としては、特に限定されるものではないが、通常樹脂100重量部当たり0.1 〜 100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部とするのがよい。
【0068】
本発明の難燃性樹脂組成物は、塩素、臭素等のハロゲンを含有する化合物を難燃化成分として使用せずに、優れた難燃効果を発現する樹脂組成物であるが、通常用いられる公知の難燃化のための添加剤を、その優れた効果を損なわない範囲で適宜組合せて添加することもできる。
【0069】
難燃化のための添加剤は、通常、難燃化効果を発現するものであれば特に制限はなく、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化銅、二酸化マンガン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、シュウ酸処理した水酸化アルミニウム、ニッケル化合物で処理した水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、テトラブロモビスフェノール−A 、エポキシ樹脂、ビス( トリブロモフェノキシ) エタン、ビス( テトラブロムフタルイミノ) エタン等の有機塩素化合物又は有機臭素化合物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物、赤燐、ハロゲン含有リン酸エステル化合物、ハロゲン含有縮合リン酸エステル化合物又はホスホン酸エステル化合物、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラム、メレム、メロン、サクシノグアナミン、スルファミン酸グアニジン、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、アルキルアミンリン酸塩等の窒素含有化合物、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、硼酸アンモニウム等の硼素化合物、シリコーンポリマー、シリカ等の珪素化合物、熱膨脹性のグラファイト等を挙げることができる。
【0070】
これらの難燃化のための添加剤は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0071】
更に、本発明難燃性樹脂組成物には、その優れた特性を損なわない範囲で、従来から公知の各種樹脂添加剤を適宜組合せて配合することができる。樹脂添加剤としては、例えば、上記以外の難燃剤、ドリップ防止剤(滴下防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、遮光剤、金属不活性剤、消光剤、開始剤、増感剤、硬化剤、熱硬化助剤、耐熱安定剤、潤滑剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、可塑剤、衝撃強度改良剤、相溶化剤等を挙げることができる。
【0072】
上記紫外線吸収剤は、光エネルギーを吸収して、分子内プロトン移動することによりケト型分子となったり(ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール系)、シス−トランス異性化を起こしたりする(シアノアクリレート系)。その結果、吸収したエネルギーを、熱エネルギーとして放出し、無害化するものである。その具体例としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類、2−(2’−ヒドロキシ−5 ’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5 ’−ジクミルフェニル) ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−t−オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類、2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類、およびエチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類等が挙げられる。
【0073】
光安定剤は、光エネルギーにより生成したハイドロパーオキサイドを分解し、安定なN−O・ラジカルやN−O R 、N −OHを生じ、安定化させるための成分であり、例えばヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。その具体例としては、例えば2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(1, 2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス( 1 , 2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1 , 6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ) ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−t−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ) ヘキサン/2,4− ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物等が挙げられる。
【0074】
酸化防止剤は、熱成形時または光暴露により、生成したハイドロパーオキシラジカル等の過酸化物ラジカルを安定化したり、生成したハイドロパーオキサイド等の過酸化物を分解するための成分である。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解剤等が挙げられる。前者はラジカル連鎖禁止剤として作用し、後者は系中に生成した過酸化物を更に安定なアルコール類に分解して自動酸化を防止するために作用する。
【0075】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル) プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8, 10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等を例示できる。
【0076】
開始剤としては、公知のものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0077】
熱硬化助剤は、熱硬化時に硬化反応に直接または触媒的に寄与する化合物である。熱硬化助剤は使用する熱硬化成分によって適宜選択される。また、カルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂と熱硬化成分との硬化条件は使用する熱硬化成分や熱硬化助剤によって適宜選択することができる。
【0078】
熱硬化助剤としては、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルピペラジン等の3級アミン類及び/又はその塩類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−1]−エチル−s−トリアジン等のイミダゾール類及び/又はその塩類;1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,4−ジアビシクロ[2,2,2,]オクタン等のジアザビシクロ化合物類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩類;その他、触媒的かつ自らも直接硬化反応に寄与する化合物として、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等が挙げられる。カルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0079】
過酸化物分解剤としては、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の有機リン系過酸化物分解剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3 ,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート) 、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等の有機イオウ系過酸化物分解剤を例示できる。
【0080】
遮光剤は、光が高分子バルクに達するのを防止するための成分である。その具体例としては、例えばルチル型酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化クロム(Cr23) 、酸化セリウム(CeO2)等が挙げられる。
【0081】
金属不活性剤は、キレート化合物により樹脂中の重金属イオンを不活性化するための成分である。その具体例としては、例えばベンゾトリアゾール及びその誘導体(具体的には1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等)等が挙げられる。
【0082】
消光剤は、高分子中の光励起したハイドロパーオキサイドやカルボニル基等の官能基をエネルギー移動によって失活させるための成分であり、具体的には有機ニッケル等を例示できる。
【0083】
また、防曇性、防黴性、抗菌性、或いはその他の機能性を付与する目的で、従来公知の各種添加剤を更に配合してもよい。
【0084】
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂に本発明の難燃剤および必要に応じて難燃化のための各種添加剤、その他の添加剤の所定量又は適量を秤量して添加し、公知の方法で混合、混練することにより得ることができる。例えば、粉末、ビーズ、フレーク又はペレット状の各成分の混合物を、1軸押出機、2軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、2本ロール、3本ロール等の混練機等を用いて混練することにより本発明の難燃性樹脂組成物を得ることができる。また、液体を配合する必要のある場合には、公知の液体注入装置を用い、上記の押出機又は混練機等で混練することができる。
【0085】
また、得られた樹脂組成物は、熱、または、光によって硬化することで、樹脂板、シート、フィルム等の成形体が得られる。
【0086】
樹脂組成物が、熱、または、光によって硬化する際、一般式[1]で表される難燃剤は、樹脂と反応することで組み込まれても良い。
【0087】
このようにして得られる本発明の難燃性樹脂組成物は、パッケージ、建材、繊維、日用雑貨、電気・電子製品、OA機器、事務機器、通信機器、自動車関連部材等の幅広い産業分野に使用できる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0089】
実施例に先立ち、本発明の難燃剤として用いる化合物の合成、および難燃性樹脂組成物を作製の際に使用するウレタン樹脂溶液の合成について説明する。
【0090】
合成例1
化合物1の合成方法
【0091】
200mlフラスコに下記リン酸化合物1(10.18g)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(10g)及びトルエン(100mL)を入れ、窒素雰囲気下、8時間加熱還流した。放冷後、酢酸エチル(100ml)を加え、析出した固体を吸引ろ過で収集した。得られた固体をメタノール(100ml)中に入れ、1時間攪拌後、吸引ろ過で固体を収集した。真空乾燥機(40℃)で一晩乾燥し、化合物1を得た。(1.83g)を得た。TOF−MS(Thermo社製 PolarisQ) m/z=446(分子量:446)。
【0092】
リン酸化合物1
【化3】

【0093】
合成例2〜80
上述の合成例1において、使用するリン酸化合物1を各化合物に対応したリン酸化合物に変更することで表2に示す化合物を合成した。
【0094】
合成例1〜80で得られた本発明の難燃剤である化合物の構造については、EI−MSスペクトルによって同定した。合成した化合物、使用したハロゲン化リン酸エステル、化合物のマススペクトルの測定結果を表2に示す。尚、化合物番号は本明細書中の表1に記載したものと同じである。
【0095】
表2
【表2】

【0096】
【表2】

【0097】
【表2】

【0098】
【表2】

【0099】
【表2】

【0100】
【表2】

【0101】
【表2】

【0102】
【表2】

【0103】
【表2】

【0104】
【表2】

【0105】
【表2】

【0106】
合成例81
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、PTG850sn(保土ヶ谷化学株式会社製:ポリテトラメチレングリコール、重量平均分子量=約850、水酸基価=129mgKOH/g)55部、ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)178部、溶剤としてシクロヘキサノン375部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコに、イソホロンジイソシアネート267部を投入し、90℃で8時間攪拌し、ウレタン化の反応を行った。反応終了後、少量サンプリングを行い、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10000、分子量分布2.03、実測による樹脂固形分の酸価138mgKOH/gのカルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを得た。
【0107】
次に、このフラスコに窒素導入管からの窒素を停止し、乾燥空気の導入に切り替え、攪拌しながらグリシジルメタクリレート85部、ジメチルベンジルアミン6部、さらに重合禁止剤としてヒドロキノン0.3部を投入し、90℃のまま8時間反応させた。冷却後、少量サンプリングを行い、さらにシクロヘキサノンを加えて固形分が50.0%となるように調整し、主骨格が酸無水物変性ウレタン骨格であるウレタン樹脂(A−1)溶液を得た。本設計による樹脂固形分のエチレン性不飽和基当量は863g/eqであり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は15400、分子量分布2.10、実測による樹脂固形分の酸価は73mgKOH/gであった。
【0108】
実施例1
芳香族ポリカーボネート樹脂(ACROS社製17831-0050)75部およびABS樹脂(Aldrich社製430137−250G)25部からなる樹脂に、化合物1を10部添加してミキサーで混合後、ラボプラストミルを用いて溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得た。この組成物を加熱プレスにより2mmの厚さのサンプルAを作製し、以下に示す評価を行った。結果を表3に示す。
【0109】
難燃性評価
サンプルAに関してUL94難燃性試験に準じて試験を行い次の基準で評価した。
V−0◎・・・着火後の消炎時間が5秒以内。
V−0○・・・着火後の消炎時間が5〜10秒以内。
V−1・・・・着火後の消炎時間が10〜30秒以内。
難燃性の高さはV-0◎>V-0○>V−1の順である。
【0110】
結晶化評価
サンプルAを40℃一週間放置したものの表面層を顕微鏡で観察し、次の基準で評価した。
○・・・表面が白化しておらず、結晶物が析出していない。
×・・・表面が白化または結晶物が析出している。
【0111】
実施例2〜80
実施例1の化合物1を表3に示す化合物に変更し、同様の操作を行った。結果を表3に示す。
【0112】
比較例1
実施例1の化合物1を公知化合物であるリン酸化合物1に変更し、同様の実験を行った。結果を表3に示す。
【0113】
比較例2
実施例1の化合物1を公知化合物である下記リン酸化合物2に変更し、同様の実験を行った。結果を表3に示す。
【0114】
リン酸化合物2
【化4】

【0115】
表3
【表3】

【0116】
【表3】

【0117】
【表3】

【0118】
表3から明らかなように、本発明の難燃性樹脂は、白化することなく、また、高い難燃性を示した。
【0119】
実施例81〜89
表4に示す各樹脂100部に、化合物1を10部添加してミキサーで混合後、ラボプラストミルを用いて溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得た。この組成物を加熱プレスにより2mmの厚さのサンプルBを作製し、以下に示す評価を行った。結果を表4に示す。
【0120】
難燃性評価
サンプルBに関してUL94難燃性試験に準じて試験を行い次の基準で評価した。
V−0◎・・・着火後の消炎時間が5秒以内。
V−0○・・・着火後の消炎時間が5〜10秒以内。
V−1・・・・着火後の消炎時間が10〜30秒以内。
難燃性の高さはV-0◎>V-0○>V−1の順である。
【0121】
結晶化評価
サンプルBを40℃一週間放置したものの表面層を顕微鏡で観察し、次の基準で評価した。
○・・・表面が白化しておらず、結晶物が析出していない。
×・・・表面が白化または結晶物が析出している。
【0122】
表4
【表4】

【0123】
表4から明らかなように、様々な樹脂において、本発明の難燃性樹脂は、白化することなく、また、高い難燃性を示した。
【0124】
実施例90
合成例81で得られたウレタン樹脂(A−1)溶液100部、熱硬化成分としてHP7200(大日本インキ化学株式会社製:ジシクロペンタジエン型エポキシ)15部、熱硬化助剤としてDICY7(味の素ファインテクノ株式会社製:ジシアンジアミド)0.5部、難燃剤として化合物1を15部配合し、3本ロールで混錬して本発明の難燃性樹脂組成物を作成した。得られた難燃性樹脂組成物を、25μm厚のポリイミドフィルム上に乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、80℃ の熱風乾燥機で30分乾燥した後、120℃ で1時間、150℃ で2時間熱硬化を行い、サンプルCを得た。このサンプルCに対し、以下に示す評価を行った。結果を表5に示す。
【0125】
難燃性評価
サンプルCに関してUL94難燃性試験に準じて試験を行い次の基準で評価した。
VTM−0◎・・・UL V−0相当で着火後の消炎時間が3秒以内。
VTM−0○・・・UL V−0相当で着火後の消炎時間が3〜6秒以内。
HB◎・・・UL HB相当で着火点から25mmまでに消炎。
HB○・・・UL HB相当で着火点から25〜100mmまでに消炎。
×・・・UL HB試験にて100mmまでに消炎しない、または完全燃焼。
難燃性の高さはVTM-0◎>VTM-0○>HB◎>HB○>×の順である。
【0126】
結晶化評価
サンプルCを40℃一週間放置したものの表面層を顕微鏡で観察し、次の基準で評価した。
○・・・表面が白化しておらず、結晶物が析出していない。
×・・・表面が白化または結晶物が析出している。
【0127】
実施例91〜169
実施例90の化合物1を表5に示す化合物に変更し、同様の操作を行った。結果を表5に示す。
【0128】
比較例3
実施例90の化合物1を公知化合物であるリン酸化合物1に変更し、同様の実験を行った。結果を表5に示す。
【0129】
比較例4
実施例90の化合物1を公知化合物であるリン酸化合物2に変更し、同様の実験を行った。結果を表5に示す。
【0130】
表5
【表5】

【0131】
【表5】

【0132】
【表5】

【0133】
表5から明らかなように、本発明の難燃性樹脂は、白化することなく、また、高い難燃性を示した。
【0134】
実施例170
合成例81で得られたウレタン樹脂(A−1)溶液100部、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン)1.0部、同じくDETX−S(日本化薬株式会社製:2,4−ジエチルチオキサントン)0.5部、エチレン性不飽和基含有化合物としてアロニックスM−310(東亞合成株式会社製:トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート)3.0部、熱硬化成分としてHP7200(大日本インキ化学株式会社製:ジシクロペンタジエン型エポキシ)25.0部、熱硬化助剤としてDICY7(味の素ファインテクノ株式会社製:ジシアンジアミド)0.5部、添加剤としてBARIFINE BF−10(堺化学工業株式会社:硫酸バリウム)15.0部、ブルーペースト(ブルー顔料/ベース樹脂(フェノール樹脂)/溶剤(カルビトールアセテート)=28/12/60)0.5部、本発明の難燃剤として化合物1を80.0部配合し、3本ロールで混錬して本発明の難燃性樹脂組成物を作成した。得られた難燃性樹脂組成物を、カプトン100H(東レ・デュポン株式会社製:ポリイミドフィルム(25μm厚))上に乾燥膜厚が25μmとなるように塗布し、80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、室温まで冷却した。次いで、紫外線露光装置(ウシオ電機株式会社製:「UVC−2534/1MNLC3−AA08」、120W/cmメタルハライドランプ、1灯)を用いて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、150℃の熱風乾燥機で1時間熱硬化(ポストキュア)した。得られた硬化物を室温まで冷却した。これをサンプルDとした。このサンプルDに対し、以下に示す評価を行った。結果を表6に示す。
【0135】
難燃性評価
サンプルDに関してUL94難燃性試験に準じて試験を行い次の基準で評価した。
VTM−0◎・・・UL V−0相当で着火後の消炎時間が3秒以内。
VTM−0○・・・UL V−0相当で着火後の消炎時間が3〜6秒以内。
HB◎・・・UL HB相当で着火点から25mmまでに消炎。
HB○・・・UL HB相当で着火点から25〜100mmまでに消炎。
×・・・UL HB試験にて100mmまでに消炎しない、または完全燃焼。
難燃性の高さはVTM-0◎>VTM-0○>HB◎>HB○>×の順である。
【0136】
結晶化評価
サンプルDを40℃一週間放置したものの表面層を顕微鏡で観察し、次の基準で評価した。
○・・・表面が白化しておらず、結晶物が析出していない。
×・・・表面が白化または結晶物が析出している。
【0137】
実施例171〜249
実施例170の化合物1を表6に示す化合物に変更し、同様の操作を行った。結果を表6に示す。
【0138】
比較例5
実施例90の化合物1を公知化合物であるリン酸化合物1に変更し、同様の実験を行った。結果を表6に示す。
【0139】
比較例6
実施例90の化合物1を公知化合物であるリン酸化合物2に変更し、同様の実験を行った。結果を表6に示す。
【0140】
表6
【表6】

【0141】
【表6】

【0142】
【表6】

【0143】
表6から明らかなように、本発明の難燃性樹脂は、白化することなく、また、高い難燃性を示した。
【0144】
以上の結果より、本発明の難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物に関しては、白化(結晶化)をおこさず、UL規格(V−0)を満たす高い難燃性を有することが示された。以上のことより、パッケージ、建材、繊維、日用雑貨、電気・電子製品、OA機器、事務機器、通信機器、自動車関連部材等の用途で好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、下記一般式[1]で示される難燃剤とからなる難燃性樹脂組成物。
一般式[1]
【化1】

(式中、X1〜X8は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または、置換カルボニル基を表す。)

【公開番号】特開2011−84607(P2011−84607A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236763(P2009−236763)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】