説明

難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いて成形されたウレタンエラストマー成形品

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、耐圧縮永久歪み、難燃性、及び低硬度性に優れる難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いてなるウレタンエラストマー成形品を提供することである。
【解決手段】 ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とブロック化剤(C)とを必須原料として得られるイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、アミン当量が50〜350であるトリアミン(2)と、難燃剤(3)とを含有することを特徴とする難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質プラスチック被覆材として特に好適に使用でき、耐圧縮永久歪み、難燃性、及び低硬度性に優れる難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いてなるウレタンエラストマー成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリウレタンエラストマーを用いた成形品は、優れた機械的強度や耐摩耗性を有することから、ロールや自動車部品、電子機器部品等の各種工業部材に使用されている。
【0003】
熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、通常イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、硬化剤としてアミノ基又は水酸基等の活性水素基を2つ以上有する化合物とを、室温又は加温して混合、脱泡し、金型に注入し、室温又は加温してウレタン/ウレア化に基づく鎖伸長反応、及びアロファネート/ビュレット化反応による架橋反応より得られる。
【0004】
特に、硬化剤としてアミン化合物を用いたウレタンエラストマーは機械的強度に優れるため、前記各種分野で使用されている。しかしながら、アミノ基とイソシアネート基の反応は非常に速い(ポットライフが短い)ため、混合脱泡した混合液を金型へ注入するまでの間に、混合液の粘度が上昇し、安定に金型へ注入できない等、製造安定性に欠けるとの問題点を有していた。
【0005】
そのため、アミン化合物としては反応性が比較的低い、MBOCA(アミノクロロフェニルメタン化合物)が使用されている。しかしながら、MBOCAはポットライフが比較的長い反面、長時間の硬化時間が必要であった。また、芳香環を有する剛直な骨格を有するため、得られるウレタンエラストマーも高硬度なものとなるため、その使用される用途も限られる等の問題点があった。
【0006】
前記問題点を解決する手段としては、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマーを用いたウレタンエラストマーを使用する方法がある。
【0007】
例えば、特許文献1には、ポリオール(A)と多官能イソシアネート(B)とブロック化剤から得られるイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマーと、4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミン(特に実施例参照。)と、を反応させて得られるポリウレタンエラストマーが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、ポリオールとポリイソシアネートとブロック化剤から得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリオキシアルキレンジアミンと3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとの混合物(特に実施例参照。)と、を反応させて得られるポリウレタンエラストマーが開示されている。
【0009】
しかしながら、ブロックされたイソシアネート基はアロファネート/ビュレット化反応に基づく架橋反応が進行しにくいため、硬化剤としてジアミンを使用した場合は耐圧縮永久歪みが不良であるとの問題点があった。
【0010】
さらに、自動車部品や電子機器部品、OA印刷機部材等に使用される場合においては、
高温下や高電圧下における安全性、特に難燃性が強く要求される。かかる場合においては、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー及びジアミンに対し、難燃剤を配合することが一般的である。しかしながら、難燃剤を配合した場合は、耐圧縮永久歪みが悪化することが知られており、耐圧縮永久歪み、難燃性及び低硬度性の3物性を両立するウレタンエラストマー成形品を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−96156号公報
【特許文献2】特開2001−206930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、耐圧縮永久歪み、難燃性、及び低硬度性に優れる難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いてなるウレタンエラストマー成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、前記課題を解決すべく研究を進める中で、ブロックされたイソシアネート基の架橋反応が好適に進行し得る硬化剤、及びそれと難燃剤との組合せを研究した。
その結果、特定のアミン当量を有するトリアミンを硬化剤として使用した場合に限り、耐圧縮永久歪み、難燃性及び低硬度性の3物性全てに優れる難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とブロック化剤(C)とを必須原料として得られるイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、アミン当量が50〜350であるトリアミン(2)と、難燃剤(3)とを含有することを特徴とする難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いて成形されたウレタンエラストマー成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、特定のアミン当量を有するトリアミンを硬化剤とし、更に難燃剤を組合せ使用することにより、耐圧縮永久歪み、難燃性、低硬度性に優れるウレタンエラストマー成形品が得られることから、自動車部品や電子機器部品、OA印刷機部材等の各種工業部材の製造に好適に使用することができる。
【0015】
なかでも、耐圧縮永久歪み、難燃性、低硬度性が強く求められる中間転写ベルト、クリーニングブレード等のOA印刷機部材に使用される硬質プラスチック被覆材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、本発明で使用するポリオール(A)について説明する。
【0017】
前記ポリオール(A)としては、特に限定されないが、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等を使用することができ、これらを併用して使用してもよい。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを使用することが好ましく、原料入手の容易性や良好な反応性を有する観点からポリエーテルジオール、ポリエステルジオールを使用することがより好ましい。
【0018】
前記ポリオール(A)に使用可能なポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種または2種以上を、2個以上の活性水素を有する化合物に付加重合せしめた生成物が挙げられる。
【0019】
前記2個以上の活性水素を有する化合物としては、例えば水、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、サッカロース、エチレンジアミン、N−エチルジエチレントリアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、ジエチレントリアミン、燐酸、酸性リン酸エステル等を使用することができる。
【0020】
また、前記ポリオール(A)に使用可能な他のポリエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコール、テトラヒドロフランとアルキル置換テトラヒドロフランを共重合させた変性ポリテトラメチレングリコールや、ネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランを共重合させた変性ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0021】
前記ポリオール(A)に使用可能なポリエーテルポリオールとしては、前記した中でも、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコールを使用することが好ましい。
【0022】
前記ポリオール(A)に使用可能なポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0023】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチルプロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環式構造含有ポリオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等のポリオールを使用することができる。これらの中でも、炭素数が2〜10、より好ましくは4〜7のグリコールとアジピン酸から得られるポリエステルジオールを使用することが好ましい。
【0024】
また、前記ポリオール(A)の数平均分子量は、500〜3500が好ましく、800〜3000がさらに好ましく、1500〜2500が特に好ましい。なお、数平均分子量は、ポリスチレンを分子量標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求めた値である。
【0025】
次に、本発明で使用するポリイソシアネート(B)について説明する。
【0026】
前記ポリイソシアネート(B)としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ドデカメチレンジイソシアネ−ト、シクロヘキサン−1,3−及び1,4−ジイソシアネ−ト、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネ−ト)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(=水添MDI)、2−及び4−イソシアナトシクロヘキシル−2´−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−及び1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−及び1,4−テトラメチルキシリデンジイソシアネ−ト、2,4−及び/または2,6−トルエンジイソシアネート、2,2´−、2,4´−及び/または4,4´−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、p−及びm−フェニレンジイソシアネ−ト、ダイメリルジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ジフェニル−4,4´−ジイソシネ−ト、カルボジイミド変性液状MDI、ポリメリックMDI等が挙げられ、これらは単独又は併用使用してもよい。これらの中でも、ベンゼン環にイソシアネート基のついた芳香族ジイソシアネートを使用することが好ましく、トルエンジイソシアネートを使用することがより好ましく、2,4−トルエンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0027】
次に、本発明で使用するブロック化剤(C)について説明する。
【0028】
前記ブロック化剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、ケトオキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、ピラゾール化合物、活性メチレン化合物等、従来公知のイソシアネートブロック化剤が使用でき、これらは単独又は併用使用してもよい。これらの中でも、ブロック化反応が容易に進行する観点からケトオキシム化合物、ラクタム化合物が好ましく、メチルエチルケトンオキシムが特に好ましい。
【0029】
次に、本発明で使用するイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)について説明する。
【0030】
前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)は、前記ポリオール(A)と、前記ポリイソシアネート(B)と、前記ブロック化剤(C)とを必須原料として得られるものである。
【0031】
本発明におけるイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、まず前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得、次いで当該イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと前記ブロック化剤(C)を反応させて、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)を得る方法が挙げられる。
【0032】
本発明におけるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定はないが、例えば、前記ポリオール(A)に、前記ポリイソシアネート(B)を、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とのNCO基/OH基のモル比率を5.0/1.0〜1.3/1.0、好ましくは2.5/1.0〜1.5/1.0の範囲で、20〜120℃の温度で、必要に応じてウレタン化触媒及び/又は反応遅延剤を添加して、撹拌反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとする方法が挙げられる。
【0033】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと前記ブロック化剤(C)との反応は、前記ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基と、前記ブロック化剤(C)の有する水酸基とのモル比率を、好ましくはNCO/OH=1.1/1.0〜0.8/1.0、より好ましくは1.0/1.0〜0.9/1.0の範囲で、20〜120℃の温度で攪拌混合することで、反応することが好ましい。この反応により、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)が得られる。
【0034】
前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)の80℃における粘度は、1000〜6000mPa・sであることが好ましく、2000〜5000mPa・sであることがより好ましく、3000〜4500mPa・sであることが特に好ましい。なお、粘度は、B型粘度計にて測定した値である。
【0035】
本発明におけるイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)は、硬化剤であるアミン当量が50〜350であるトリアミン(2)をブレンドして使用される。
【0036】
前記アミン当量が50〜350であるトリアミン(2)とは、窒素原子を3個有し、且つ、活性水素基を3〜6個有するものであり、好ましくは80〜250、より好ましくは100〜200のアミン当量を有するものである。前記トリアミン(2)として、アミン当量が50未満、又は350を超えるものを使用した場合には、特に耐圧縮永久歪みと低硬度性とを両立することが困難となる。前記トリアミン(2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2’,2’’−トリアミノトリエチルアミン、トリス−1,1,1−アミノエチルエタン、1,2,3−トリアミノプロパン、トリス−(3−アミノプロピル)−アミン、N,N,N’,N’−テトラキス−(2−アミノエチル)−エチレンジアミンやポリオキシアルキレントリアミン等のポリエーテル系トリアミン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上併用して使用しても良い。これらの中でも、良好な反応性を具備する観点から芳香環を有さないトリアミンを使用することが好ましく、耐圧縮永久歪みと低硬度性とをより向上できる観点から、ポリエーテル系トリアミンを使用することがより好ましく、ポリオキシアルキレントリアミンを使用することが特に好ましい。なお、前記トリアミン(2)のアミン当量は、JIS K 7237に指定されている全アミン価試験方法により測定された値を示し、単位は(g/eq)である。
【0037】
また、前記ポリオキシアルキレントリアミンとしては、炭素数が2〜6のアルキレン骨格を有するものを使用することが好ましく、炭素数が2〜4のアルキレン骨格を有するものを使用することが特に好ましい。
【0038】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記トリアミン(2)に、ジアミンを併用して使用してもよいが、前記トリアミン(2)を単独で使用することがより好ましい。
なお、硬化剤として、前記トリアミン(2)を使用しない場合には、後述する難燃剤(3)を使用した場合、十分な耐圧縮永久歪み及び低硬度性が得られない。
【0039】
前記ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,2−ないしは1,3−ジアミノプロパン、1,2−ないしは1,3−ないしは1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−ないしは1,4−ジアミノシクロヘキサンまたは1,3−ジアミノプロパン、ノルボルネンジアミン、4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミン等が使用できる。
【0040】
本発明のイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と前記トリアミン(2)との反応比率は、前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)が有するイソシアネート基と、前記トリアミン(2)が有するアミノ基と、のモル比率がNCO/NH=1.35/1.0〜1.0/1.0の範囲であることが好ましく、1.20/1.0〜1.0/1.0であることがより好ましい。
【0041】
次に、本発明で使用する難燃剤(3)について説明する。
【0042】
前記難燃剤(3)としては、特に限定されるものではなく、例えば、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物や、三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、有機リン系アルミ化合物、ホスファゼン化合物等のリン化合物等のリン原子含有化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル等の臭素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等の無機質化合物等を使用することができる。
【0043】
前記難燃剤(3)としては、前記したなかでも、燃焼時に有害ガスである腐食性のハロゲンガスや猛毒性のダイオキシンを発生する恐れがないことから、ハロゲンを含まないハロゲンフリー難燃剤を使用することが好ましく、ブリードアウトによる汚染の懸念が少ないことから粒状難燃剤を使用することがより好ましく、リン原子含有化合物を使用することが特に好ましい。
【0044】
なお、前記粒状難燃剤の粒状とは、平均粒子径が好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μmであることをいう。なお、前記平均粒子径は、累積50vol%径(Median径)を指す。平均粒子径、最大粒径は堀場LA−500動的光散乱式粒径分布測定装置で測定した体積基準のものをいう。また、有機ホスフィン酸塩化合物を2種以上含む場合は、それら全体の平均粒子径、最大粒径をいう。
【0045】
前記難燃剤の添加量としては、耐圧縮永久歪みを始めとする各種物性維持と難燃性との両立の観点から、前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、前記トリアミン(2)と、の合計100質量部に対し、10〜50質量部添加されることが好ましく、20〜40質量部添加されることがより好ましい。
【0046】
次に、本発明の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物について説明する。
【0047】
本発明の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、前記トリアミン(2)と、前記難燃剤(3)と、を含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0048】
前記他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、可塑剤、発泡剤等が挙げられ、本発明の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が使用される用途に応じて適宜選択される。
【0049】
本発明で使用される難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、前記トリアミン(2)と、前記難燃剤(3)と、を含有してなり、実質的に溶剤を含有しないものであることが好ましい。
【0050】
次に、本発明のウレタンエラストマー成形品の製造方法について説明する。
【0051】
本発明のウレタンエラストマー成形品の製造方法としては、例えば、前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、前記トリアミン(2)と、前記難燃剤(3)と、を混合攪拌し、該混合液を100〜200℃に加温した金型へ注入し、熱硬化させ、次いで、100℃以下まで冷却し、ウレタンエラストマー成形品を得る方法が挙げられる。
【0052】
前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、前記トリアミン(2)と、前記難燃剤(3)と、を混合攪拌する際は、両者が均一に混合されれば良く、混合方法は特に限定されない。ただし、かかる段階で、ウレア反応及び/又はビュレット反応が進行しすぎると、粘度上昇により、樹脂を金型へ安定に注入できないため、好ましくない。かかる段階では、ウレア反応及び/又はビュレット反応が未反応の状態であることが特に好ましいが、粘度上昇による製造安定性を損なわない範囲であれば、その一部がウレア化及び/又はビュレット化していてもよい。
【0053】
前記混合攪拌する際は、60〜120℃、好ましくは70〜90℃に溶融脱泡した前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)に、10〜40℃に加温した前記トリアミン(2)を添加し、次いで、前記難燃剤(3)を添加し、10〜80℃の条件下で概ね10秒〜1分程度混合攪拌することが好ましい。
【0054】
また、前記混合攪拌する際には、必要に応じて三級アミン触媒や有機金属系触媒を使用してもよい。
【0055】
前記混合液を金型へ注入し、熱硬化する際は、100〜180℃、好ましくは120〜160℃で加熱処理し、硬化させることが好ましい。
【0056】
なお、前記方法で得られるウレタンエラストマー成形品の形状及び厚みは、その使用される用途に応じて適宜決定される。
【0057】
前記方法で得られたウレタンエラストマー成形品は、耐圧縮永久歪み、難燃性、低硬度性に優れることから、自動車部品や電子機器部品、OA印刷機部材等の各種工業部材の製造に好適に使用することができる。
なかでも、耐圧縮永久歪み、難燃性、低硬度性が強く求められる中間転写ベルト、クリーニングブレード等のOA印刷機部材に使用される硬質プラスチック被覆材として特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0059】
[合成例1]イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)の合成
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(「PTMG−2000」三菱化学社製、数平均数分子量2000)500部に、2,4−トルエンジイソシアネート74部(NCO/OH=1.7)を激しく攪拌しながら投入し、100℃で4時間反応させてウレタンプレポリマーを得た。
該ウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、これにブロック化剤としてメチルエチルケトンオキシムを31部投入し、70℃にて2時間攪拌、反応させ、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)を得た。得られたイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)の80℃における粘度は3800mPa・sであった。
【0060】
[合成例2]イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−2)の合成
液状のポリエステルジオール(3−メチルペンタンジオールとアジピン酸から得られたポリエステルジオール、分子量2000)500部に2,4−トルエンジイソシアネート74部(NCO/OH=1.7)を激しく攪拌しながら投入し、100℃で4時間反応させてウレタンプレポリマーを得た。
該ウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、これにブロック化剤としてメチルエチルケトンオキシムを31部投入し、70℃にて2時間攪拌、反応させ、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−2)を得た。得られたイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−2)の80℃における粘度は4200mPa・sであった。
【0061】
[実施例1]
合成例1で得られた、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)100部を80℃に加温して、脱泡し、注型配合機で約30℃に加温したポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量156)8.1部、及び難燃剤として、有機ホスフィン酸塩化合物「“Exolit”(登録商標)OP930」(クラリアントジャパン株式会社製、商品名、平均粒子径3〜4μm、最大粒径10μm以上20μm未満)30部と混合し、140℃の金型に注入し、140℃で1時間加熱処理を行い、硬化させた。金型を冷却後、成形品を金型から取り外し、ウレタンエラストマー成形品を得た。
【0062】
[実施例2]
合成例2で得られた、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−2)100部を80℃に加温して、脱泡し、注型配合機で約30℃に加温したポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量156)8.1部、及び難燃剤として、有機ホスフィン酸塩化合物「“Exolit”(登録商標)OP935」(クラリアントジャパン株式会社製、商品名、平均粒子径2〜3μm、最大粒径10μm未満)30部と混合し、140℃の金型に注入し、140℃で1時間加熱処理を行い、硬化させた。金型を冷却後、成形品を金型から取り外し、ウレタンエラストマー成形品を得た。
【0063】
[実施例3]
合成例1で得られた、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)100部を80℃に加温して、脱泡し、注型配合機で約30℃に加温したポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量156)4.1部と4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミン3.1部、及び難燃剤として、有機ホスフィン酸塩化合物「“Exolit”(登録商標)OP930」(クラリアントジャパン株式会社製、商品名、平均粒子径3〜4μm、最大粒子径10μm以上20μm未満)30部と混合し、140℃の金型に注入し、140℃で1時間加熱処理を行い、硬化させた。金型を冷却後、成形品を金型から取り外し、ウレタンエラストマー成形品を得た。
【0064】
[実施例4]
合成例2で得られたイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−2)100部を80℃に加温して、脱泡し、注型配合機で約30℃に加温したポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量156)8.1部、及び難燃剤として、リン及び窒素含有化合物「“アデカスタブ”(登録商標)FP−2200」(株式会社ADEKA製、商品名、窒素含量:19〜23質量%、リン含量:16〜20質量%、平均粒子径10μm以下)25部と混合し、140℃の金型に注入し、140℃で1時間加熱処理を行い、硬化させた。金型を冷却後、成形品を金型から取り外し、ウレタンエラストマー成形品を得た。
【0065】
[比較例1]
合成例1で得られた、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)100部を80℃に加温して、脱泡し、注型配合機で約30℃に加温したポリオキシプロピレンジアミン(アミン当量980)25.5部と4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミン3.1部と、及び難燃剤として、有機ホスフィン酸塩化合物「“Exolit”(登録商標)OP930」(クラリアントジャパン株式会社製、商品名、平均粒子径3〜4μm、最大粒径10μm以上20μm未満)30部の混合物と混合し、140℃の金型に注入し、140℃で1時間加熱処理を行い、硬化させた。金型を冷却後、成形品を金型から取り外し、ウレタンエラストマー成形品を得た。
【0066】
[比較例2]
合成例1で得られた、イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(D−1)100部を80℃に加温して、脱泡し、注型配合機で約30℃に加温したポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量1031)53.6部、及び難燃剤として、有機ホスフィン酸塩化合物「“Exolit”(登録商標)OP935」(クラリアントジャパン株式会社製、商品名、平均粒子径2〜3μm、最大粒径10μm未満)25部と混合し、140℃の金型に注入し、140℃で1時間加熱処理を行い、硬化させた。金型を冷却後、成形品を金型から取り外し、ウレタンエラストマー成形品を得た。
【0067】
[アミン当量の測定方法]
実施例1〜4及び比較例1〜2で使用したトリアミン及びジアミンのアミン当量は、JIS K 7237に指定されている全アミン価試験方法により測定した。即ち、実施例1〜4及び比較例1〜2で使用したトリアミン、ジアミンをそれぞれ氷酢酸中でN/10過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定を行った。
【0068】
[JIS−A硬度の測定方法]
実施例及び比較例で得られたウレタンエラストマー成形品を試験体とし、JISK6253に規定の硬度測定法にてJIS−A硬度を測定した。
なお、JIS−A硬度が70以下のものは低硬度性に優れると判断した。
【0069】
[耐圧縮永久歪みの評価方法]
実施例及び比較例で得られたウレタンエラストマー成形品を試験体とし、JISK7312に準拠し、圧縮永久歪みを測定した。圧縮永久歪みは、70℃、圧縮率25%、圧縮時間22時間後の歪みとした。
なお、圧縮永久歪みが50%以下のものは、耐圧縮永久歪みに優れると判断した。
【0070】
[難燃性の評価方法]
実施例及び比較例で得られたウレタンエラストマー成形品を試験体とし、燃焼試験:UL−94垂直試験に準拠して測定した。UL−94 V−2規格以上を満足する難燃性を示した場合を難燃性に優れると判断し、「○」で示した。
【0071】
【表1】

【0072】
なお、表1中の用語について説明する。
「TDI」:2,4−トルエンジイソシアネート
「3MPD」:3−メチルペンタンジオール
「AA」:アジピン酸
「MEKO」:メチルエチルケトンオキシム
「トリアミン−1」:ポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量156)
「ジアミン−1」:ポリオキシプロピレンジアミン(アミン当量980)
「ジアミン−2」:4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミン
「トリアミン−2」:ポリオキシプロピレントリアミン(アミン当量1031)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とブロック化剤(C)とを必須原料として得られるイソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、アミン当量が50〜350であるトリアミン(2)と、難燃剤(3)とを含有することを特徴とする難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃剤(3)が、前記イソシアネート基がブロックされたウレタンプレポリマー(1)と、前記トリアミン(2)と、の合計100質量部に対し、10〜50質量部添加されるものである、請求項1に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記難燃剤(3)が、平均粒子径が1〜20μmの粒状難燃剤である、請求項1又は2に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記難燃剤(3)が、リン原子含有化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記トリアミン(2)のアミン当量が100〜200である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記トリアミン(2)が、芳香環を有さないものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記トリアミン(2)が、ポリエーテル系トリアミンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリオール(A)が、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリイソシアネート(B)が、トルエンジイソシアネートである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
前記ブロック化剤(C)がケトオキシム化合物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の難燃性熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形されたウレタンエラストマー成形品。

【公開番号】特開2012−236874(P2012−236874A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105179(P2011−105179)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】