説明

難燃性脱臭フィルタ

【課題】コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、有害ガス成分を除去することができ、しかも燃焼時に十分な難燃性を有する脱臭フィルタを提供する。
【解決手段】活性炭粒子を30〜200g/m2と熱可塑性樹脂バインダー粒子を活性炭粒子100重量部に対して1〜50重量部含む活性炭層と、その両面に設けられたセルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリルニトリル繊維、フェノール繊維から選択される一種以上の繊維を20〜100重量%含んだ布帛にリン系難燃剤を布帛重量に対して10〜70重量%含有した布帛とからなる難燃性脱臭フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、有害ガス成分を除去するための難燃性脱臭フィルタに関する。ここで言う有毒ガス成分とは、人体や環境へ影響を与える有害ガス成分だけでなく、電子機器内部での問題を引き起こすガス等も含める。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器は、近年集積化、小型化が進み、機器内部に熱がこもるのを避けるために、ファン等による排熱が欠かせなくなってきている。そして、インク、トナー等といった印字の際に用いられる成分、電子機器の本体を構成するプラスチック、および、各種接合部に使用されているゴム等に含まれている各種成分がガス化し、有害ガス成分として排熱と共に室内へと排出されている。また、コピー機、レーザープリンター等では高電圧を使用するため、前記ガス成分だけでなく、オゾンといった有害ガス成分も排出されている。近年、環境問題への意識の高まりから、有害ガス成分に関して、排出規制が行われるようになった。例えば、ドイツでは、「BAM(ブルーエンジェルマーク)」という環境ラベルが制定されており、電子機器毎に果たすべき環境性能基準が定められている。
【0003】
電子機器から排出される有害ガス成分を低減する目的で、前記電子機器内部に脱臭フィルタが組み込まれている。前記脱臭フィルタは電子機器内部に組み込まれるため、有害ガス成分の除去に優れるだけではなく、難燃規格UL(Underwriters Laboratories Inc.)の取得が必須である(非特許文献1参照)。
【0004】
レーザープリンターをはじめとする電子機器や、種々の空調機器等に組み込んでオゾン及びVOCを除去するための難燃性オゾンVOC除去フィルタについてはよく知られている。例えば、特許文献1では、布帛からなるカバー材に、相異なる2種類以上の脱臭粉粒体を担持してなる積層型脱臭濾材が記載されている。しかしながら、特許文献1の濾材は繊維ウェブが片側にしかなく、燃焼時には繊維同士を連結しているホットメルト樹脂が溶融し、発炎物質として脱臭粉粒体が滴下してしまい、難燃性が不十分という問題があった。
【0005】
特許文献2では、オゾンを初めとする人体に有害なガスの除去性能が高くかつ長寿命なガス吸着用シートが記載されているが、シート基材の両面に活性炭、炭酸マンガン、アルカリ金属化合物、難燃性難燃剤を含むガス層を形成しているため、燃焼時にはシート基材状の物質が落下し、燃焼物となるため、難燃性が不十分という問題があった。
【0006】
基材層間に吸着剤及び熱可塑性樹脂を含む吸着シートが開示されている(例えば特許文献3〜5参照)。これらの吸着シートでは、吸着剤層の上下に基材層があるが、これらの吸着シートは、基材に難燃剤が含有されていないため、燃焼時には基材が溶融し、さらに、吸着剤と混合された熱可塑性樹脂が溶融し、発炎物質として吸着剤が滴下してしまい、難燃性が不十分という問題があった。
【0007】
上述のとおり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、有害ガス成分を除去するための脱臭フィルタに関して、燃焼時に十分な難燃性を有する脱臭フィルタは見当たらないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−57467号公報
【特許文献2】特開2002−79083号公報
【特許文献3】特開2008−206550号公報
【特許文献4】特開2007−301434号公報
【特許文献5】特許4099714号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】UL 94:Standard for Safety Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器に組み込んで、有害ガス成分を除去することができ、しかも燃焼時に十分な難燃性を有する脱臭フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、燃焼時に炭化する繊維を含んだ布帛をカバー材として使用し、さらにカバー材を難燃化することで、燃焼時にカバー材が溶融せず、しかも、活性炭層からの活性炭粒子の脱落を抑制できることを見出し、本発明の完成に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、以下の通りである。
活性炭粒子を30〜200g/mと熱可塑性樹脂バインダー粒子を活性炭粒子100重量部に対して1〜50重量部含む活性炭層と、その両面に設けられたセルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリルニトリル繊維、フェノール繊維から選択される一種以上の繊維を20〜100重量%含んだ布帛にリン系難燃剤を布帛重量に対して10〜70重量%含有した布帛とからなる難燃性脱臭フィルタ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の難燃性脱臭フィルタは、有害ガス成分を除去することができるという機能を有し、しかも燃焼時に溶融しないカバー材によって、燃焼時に活性炭粒子が発炎物質として滴下することもなく、十分な難燃性が得られるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の難燃性脱臭フィルタの概略的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の難燃性脱臭フィルタを詳細に説明する。
本発明の難燃性脱臭フィルタは、図1に示すように、活性炭層Aとその両面に設けられたカバー材Bとからなり、カバー材Bに燃焼時に炭化する繊維が含有されており、難燃化されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のフィルタの活性炭層に使用する活性炭粒子は、有害ガス成分を除去できれば特に限定されないが、例えば、石炭系活性炭、ヤシガラ系活性炭、木質系活性炭等を使用することができる。使用する活性炭粒子の比表面積は、好ましくは500m/g以上、より好ましくは800〜2500m/gである。比表面積が500m/g未満ではトルエンの除去性能が低くなる可能性がある。
【0017】
本発明の活性炭粒子の平均粒子直径は、特に限定されないが、50〜800μmであることが好ましい。平均粒子直径が50μm未満では、粉塵等が生じるため取り扱い性が悪くなり、800μmを越えると、活性炭層の形成が困難になる可能性がある。
【0018】
本発明の活性炭粒子は、難燃性が向上することを目的として、水溶性難燃剤による薬品処理を施してもよい。
【0019】
本発明の活性炭粒子には、オゾン分解機能を補助するために、アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属を添着した添着活性炭粒子を用いてもよい。
【0020】
上記アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属化合物の具体例として、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、フタル酸塩、フタル酸水素などの水溶液の塩、ハロゲン化物など、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、などのアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などの水溶液の塩、ハロゲン化物などが挙げられる。
【0021】
本発明の活性炭層には、活性炭層の各成分を互いに接着し、活性炭層形成時の取扱い性を向上させるため、熱可塑性樹脂バインダー粒子が含まれている。熱可塑性樹脂バインダー粒子としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポロプロピレン樹脂など)、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、尿素系樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの樹脂の中では、特にポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0022】
活性炭層中の熱可塑性樹脂バインダー粒子の含有量は、活性炭粒子100重量部に対して1〜50重量部である。好ましくは、5〜30重量部である。熱可塑性樹脂バインダー粒子の含有量が1重量部未満では、活性炭層の固着が弱く取り扱い性が悪くなり、50重量部を越えると、燃焼時に熱可塑性樹脂バインダーが燃焼物として作用するため、UL規格を満足することができない可能性がある。
【0023】
熱可塑性樹脂バインダー粒子の平均粒子直径は、特に限定されないが、1.0〜100μmであることが好ましい。より好ましくは、5.0〜50μmである。平均粒子直径が1.0μm未満であると、粉塵等が生じるため取り扱い性が悪くなり、100μmを越えると、活性炭と均一に混合しない可能性がある。
【0024】
熱可塑性樹脂バインダー粒子の融点は、事務機器等の環境温度などを考慮すると80℃以上が好ましい。より好ましくは、100℃以上である。
【0025】
活性炭層中の活性炭粒子の含有量は、30〜200g/mである。好ましくは、50〜200g/mである。活性炭粒子の含有量が30g/m未満では、トルエン等の有害ガスの除去性能が低く、200g/mを越えると、活性炭の燃焼物としての作用が大きくなるため、UL規格を満足することができない可能性がある。
【0026】
本発明の難燃性脱臭フィルタは、活性炭層の両面にカバー層として布帛を有することが必要である。かかる積層構造により、燃焼試験時に活性炭の脱落を抑制することができる。使用する布帛は、特に限定されないが、例えば、不織布、編物、織物からなることができ、中でも不織布が好ましい。フィルタ形成時の活性炭粒子の脱落防止の観点から、活性炭粒子の粒径よりも小さい目合いのものが好ましい。不織布は、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリルニトリル繊維、フェノール繊維から選択される一種以上の繊維を含んだ繊維から作られ、燃焼時における繊維形状保持性から、これらいずれかの繊維を20〜100重量%含有したものが好ましい。不織布の製造法としては、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)等が使用できる。布帛は、難燃剤を練りこんで紡糸された繊維からなることも好ましい。
【0027】
布帛の目付と厚みは、特に限定されないが、目付は10〜100g/m、厚みは0.05〜3mmであることが好ましい。目付が10g/m未満では、シート加工時に活性炭粒子が布帛から脱落してしまい、100g/mを越えると、活性炭層形成時の加工性が悪くなる可能性がある。また、厚みが0.05mm未満では、シート加工時に活性炭粒子が布帛から脱落してしまい、3mmを越えると、活性炭層形成時の取り扱い性が悪くなる可能性がある。なお、ここで布帛の厚みは、7gf/cm荷重で測定した厚みを指す。
【0028】
本発明では、前記布帛に難燃剤が含まれていることが必要である。布帛に難燃剤が含まれることによって、布帛自体を難燃性にする効果と、燃焼時に布帛の繊維形状が保持されるという効果があるためである。
【0029】
布帛に含有する難燃剤としては、難燃効果の面からリン系難燃剤が好ましく、布帛に塗布・乾燥することから、水溶性の難燃剤である、例えば、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
【0030】
布帛には前記難燃剤が布帛重量に対して、10〜70重量%含まれている。好ましくは、20〜60重量%である。10重量%未満ではフィルタ全体の難燃性が不十分となる場合があり、70重量%を超えると、難燃剤を添着する際の加工性が悪くなったり、フィルタの圧力損失が上昇するなどの問題が起る場合がある。
【0031】
上記のように構成された本発明の難燃性脱臭フィルタは、燃焼時も活性炭層中の活性炭粒子を脱落させることがないので、有害ガス成分を効果的に除去できるだけでなく、UL規格94HF−1を満足する高い難燃性を持つ。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明の難燃性脱臭フィルタの作用効果を具体的に示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中で測定した特性値の評価方法を以下に示す。
【0033】
(難燃性)
非特許文献1に記載されている水平燃焼試験により評価を実施した。この水平燃焼試験では、所定の高さに試験片を配置しておくことができる支持用金網を用い、この金網の下方に175±25mmの距離で脱脂綿(標識綿)を配置しておく。この金網に、長さ150±1mm、幅50±1mmの短冊状に裁断され、しかも長さ方向の一方の端部から、60mm、125mmの各位置に合計2つの標線を予め書き込んだ試験片を設置する。燃焼試験では、試験片を水平に載置した状態で上述した端部に金網の下方から炎を60±1秒間当てたのち、炎を試験片から離す。この時点から計時し、[a]炎が消えた(残炎)時間、[b]炎と赤熱が消えた(残じん)時間、[c]炎又は赤熱の前線が125mm標線に達した時間、もしくは試験片が125mm標線の手前で燃焼又は赤熱が止まった時間、の3種類の時間を記録する。このような評価試験を5回実施し、下記の表1に示すような「94HF−1」又は「94HF−2」の2つの分類に応じて評価する。
【0034】
【表1】

【0035】
(平均粒子直径)
各粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100個の粒子の直径を測定し、それから平均直径を算出した。
【0036】
(難燃剤の調整)
リン系難燃剤液(難燃剤が水に溶解した水溶液:分散液濃度60%)50部と水50部とからなる難燃剤溶液を準備した。
【0037】
(カバー材の準備1)
レーヨン繊維/ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)繊維(重量比70:30)混合スパンレース不織布(目付35g/m、厚み0.41mm)に、前記難燃剤水溶液を含浸した後、乾燥させ、目付37g/m、40g/m、45g/m、55g/mのカバー材(A1)、(A2)、(A3)、(A4)を得た。それぞれのカバー材は、布帛であるスパンレースの繊維表面に、リン系難燃剤が添着されたカバー材であり、カバー材(A1)、(A2)、(A3)、(A4)には、それぞれ2g/m、5g/m、10g/m、20g/mのリン系難燃剤が含まれていた。
【0038】
(カバー材の準備1)
レーヨン繊維/PET(重量比 70:30)混合スパンレース不織布(目付24g/m、厚み0.16mm)に、前記難燃剤水溶液を含浸した後、乾燥させ、目付29g/m、34g/mのカバー材(A5)、(A6)を得た。それぞれのカバー材は、布帛であるスパンレースの繊維表面に、リン系難燃剤が添着されたカバー材であり、カバー材(A5)、(A6)には、それぞれ5g/m、10g/mのリン系難燃剤が含まれていた。
【0039】
(カバー材の準備1)
レーヨン繊維/PET繊維(重量比 20:80)混合スパンレース不織布(目付35g/m、厚み0.40mm)、レーヨン繊維スパンレース不織布(目付35g/m、厚み0.40mm)、レーヨン繊維/PET繊維(重量比 10:90)混合スパンレース不織布(目付35g/m、厚み0.40mm)に、前記難燃剤水溶液を含浸した後、乾燥させ目付45g/mのカバー材(A7)、(A8)、(A9)を得た。それぞれのカバー材は、布帛であるスパンレースの繊維表面に、リン系難燃剤が添着されたカバー材であり、カバー材(A7)、(A8)、(A9)には、それぞれ10g/mのリン系難燃剤が含まれていた。
【0040】
(実施例1)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A2)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A2)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は190g/mであった。
【0041】
(実施例2)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A4)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A4)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は220g/mであった。
【0042】
(実施例3)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A3)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)20重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A3)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は210g/mであった。
【0043】
(実施例4)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A3)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A3)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は145g/mであった。
【0044】
(実施例5)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A3)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A3)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は310g/mであった。
【0045】
(実施例6)
カバー材の準備3で準備したカバー材(A7)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A7)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は200g/mであった。
【0046】
(実施例7)
カバー材の準備3で準備したカバー材(A8)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A8)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は200g/mであった。
【0047】
(実施例8)
カバー材の準備2で準備したカバー材(A5)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A5)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は168g/mであった。
【0048】
(実施例9)
カバー材の準備2で準備したカバー材(A6)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A6)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は178g/mであった。
【0049】
(比較例1)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A3)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は155g/mであった。
【0050】
(比較例2)
レーヨン繊維/PET繊維(重量比 70:30)混合スパンレース不織布(目付35g/m、厚み0.41mm)に活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にレーヨン繊維/PET繊維(重量比 70:30)混合スパンレース不織布(目付35g/m、厚み0.41mm)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は180g/mであった。
【0051】
(比較例3)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A1)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A1)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は184g/mであった。
【0052】
(比較例4)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A3)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A3)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は420g/mであった。
【0053】
(比較例5)
カバー材の準備3で準備したカバー材(A9)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A9)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は200g/mであった。
【0054】
(比較例6)
カバー材の準備1で準備したカバー材(A3)上に、活性炭粒子(平均粒子直径500μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)60重量部、を混合したものを散布して活性炭層を形成し、この活性炭層の上にカバー材(A3)を重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によって活性炭層を固着させ、フィルタを作製した。フィルタの目付は250g/mであった。
【0055】
実施例1〜9、比較例1〜6で得られたフィルタの構成の詳細と難燃性の評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2から明らかなように、実施例1〜9は難燃性試験においてUL94HF−1の評価が得られているのに対して、比較例1では、カバー材が活性炭層の片側にしかないために燃焼時に活性炭が脱落し、比較例2および3は、カバー材への難燃効果が不足し、また、比較例4は活性炭目付が大きく、比較例5は布帛の構成繊維が構成要件を満たしておらず、比較例6は熱可塑性バインダー粒子の含有量が多く、いずれもUL規格94HF−1を満足する難燃性を有していないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の難燃性脱臭フィルタは、有害ガス成分の除去性と難燃性に優れるので、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための難燃性脱臭フィルタ、冷蔵庫やトイレ脱臭機などに用いられる難燃性脱臭フィルタ等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 活性炭粒子
2 熱可塑性バインダー粒子
A 活性炭層
B 布帛


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭粒子を30〜200g/mと熱可塑性樹脂バインダー粒子を活性炭粒子100重量部に対して1〜50重量部含む活性炭層と、その両面に設けられたセルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリルニトリル繊維、フェノール繊維から選択される一種以上の繊維を20〜100重量%含んだ布帛にリン系難燃剤を布帛重量に対して10〜70重量%含有した布帛とからなる難燃性脱臭フィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−35255(P2012−35255A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42057(P2011−42057)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】