説明

難聴者用イヤホン

【課題】 外耳道内に骨伝導部を挿入する骨伝導型イヤホン形式で、骨伝導部に振動子を挿入することなく、効率のよい骨伝導が達成できる構造及び難聴者用イヤホンを提供する。
【解決手段】 最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の交流信号を受け、圧電振動素子を振動させ、骨伝導により信号を伝達する骨伝導型受信機であって、上記圧電振動素子は平板状をなし、一対の凹型ハウジングの接合部においてハウジング内を横断し、横断面に対し垂直方向に振動するように張設され、そのほぼ中心部には振動補助錘を取り付けられる一方、該圧電振動素子の横断面に対向して外耳道内に挿入可能な骨伝導素子をハウジング外部に突設し、上記圧電振動素子の振動を外耳道内に誘導するように構成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体の外耳道内に挿入して外耳道周辺の骨に固定する外耳道挿入式骨伝導型イヤホン、特に難聴者が通常の音声信号を受信することができるように工夫された難聴者用イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波伝達式イヤホンやヘッドホーンでは外部への音漏れで周囲に迷惑をかけることが多く、また、長時間の使用により難聴になる可能性がある。そこで、近年骨伝導式の受信機が人気を帯びている。他方、難聴者は通常の音声信号を受聴するには補聴器が必要であり、テレビ等の受信機からの音声信号は通常イヤホンにより受聴することはできない。
【0003】
そこで、健常者の難聴化を防止し、難聴者にテレビ等の音声信号を受聴可能とするために骨伝導式受信機が必要となるが、これまでの骨伝導式受信機で音声・音楽などを聴く場合、人体の耳周辺の骨に受信機の骨伝導部を固定しなければならないので、一般に骨伝導部を手で持って人体の耳周辺の骨にあてて振動を骨に伝える方法、または、専用のアタッチメントやヘッドフォン形などを利用して骨伝導部を人体の耳周辺の骨にあてて振動を伝える方法が採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上の方法によれば、骨伝導部を手で持つ場合は長時間持っていると肉体的な疲労を感じる場合がある。また、専用のアタッチメントなどを使用する場合は、肉体的または精神的に違和感を感じる場合がある。そこで、骨伝導部を外耳道に挿入する骨伝導イヤホンが提案されている(特許文献1)。しかしながら、提案された骨伝導イヤホンでは外耳道内に挿入される伝導部内に振動子を取り入れる方式(図1及び図2)であるため、制作費が高く、しかも十分な性能が得られないという欠点がある。他方、外耳道内へ挿入される骨伝導子内に振動子を配置しない場合(図3)はどうしても骨伝導効率が悪く、大型化するという結果になっている。
【0005】
【特許文献1】特開平2004−166174号公報
【0006】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、外耳道外部に共振部を形成するようにしても平板状の圧電振動素子を用い、これを外部ハウジング内に張設するとともに、振動素子の振動中心部付近に振動補助錘を取り付け、低音振動及び高音振動を抑制すると、外耳道内に挿入する骨伝導子内に振動子を配設せずとも、外部骨伝導を効率よく伝達できることを見出 し、本発明を完成した。また、この方式を採用すると、テレビ等の受信機のイヤホンジャックに適用して健常者の音声信号を難聴者が受聴することができるようにした難聴者用イヤホンを提供できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の骨伝導用交流信号により振動する圧電振動素子を備え、骨伝導により信号を伝達する骨伝導型受信機からなり、上記圧電振動素子は平板状をなし、一対の凹型ハウジング間に該ハウジング内を横断するように張設され、横断面に対し垂直方向に振動するように構成され、その横断面のほぼ中心部には振動補助錘を取り付けられる一方、該圧電振動素子の横断面に対向して外耳道内に挿入可能な骨伝導素子をハウジング外部に突設し、上記圧電振動素子の振動を外耳道内に誘導するように構成してなることを特徴とする骨伝導用イヤホンにある。
【0008】
本発明はまた、難聴者が通常のデレビ等のイヤホンジャックに接続されるイヤホンプラグと、該プラグからの音声信号を最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の骨伝導用交流信号に増幅する昇圧アンプと、該アンプからの交流信号により圧電振動素子を振動させ、骨伝導により信号を伝達する骨伝導型受信機とからなり、上記骨伝導型受信機の圧電振動素子は平板状をなし、一対の凹型ハウジング間に該ハウジング内を横断するように張設され、横断面に対し垂直方向に振動するように構成され、その横断面のほぼ中心部には振動補助錘を取り付けられる一方、該圧電振動素子の横断面に対向して外耳道内に挿入可能な骨伝導素子をハウジング外部に突設し、上記圧電振動素子の振動を外耳道内に誘導するように構成してなることを特徴とする難聴者用イヤホンを提供するものでもある。
【0009】
上記圧電振動素子は円板状であるのが、振動上好ましく、そのほぼ中央部の片側又は両側に振動補助錘が取り付けられている。他方、外耳道内に挿入される上記骨伝導素子は一方のハウジングに突設された実質的に中実部材からなるのが好ましいが、直接、音波として送出するための孔がない中空部材から構成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、共振部を耳穴挿入の骨伝導部外に設け、圧電振動素子を板状となし、一対の凹型ハウジングの接合部においてハウジング内を横断して振動するように張設して構成するとともに、そのほぼ中心部には振動補助錘を取り付けたので、外耳道内に挿入できるように骨伝導部を小さくしても十分な骨伝導振動を得ることができる。しかも外耳道外での圧電振動素子に振動補助錘を設けたので、低音振動の低下や高音振動の増加などの骨伝導機能の低下を防止することができる。よって、小型骨伝導を内蔵し、容易に取り付けられる骨伝導型イヤホンを提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、本発明に係る骨伝導型イヤホンにテレビ用イヤホンジャックに接続するイヤホンプラグと音声信号を骨伝導信号に増幅する昇圧アンプを併設することにより難聴者が健常者の受信機を使用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態を、図1に示す。1は、骨伝導イヤホンの挿入側凹型ハウジングで、その外面には骨伝導部10が突出している。2はコード側凹型ハウジングであり、この一対の凹型ハウジング1,2の接合部において、円板状の圧電振動素子5を挟み込んで固定する。これにより、圧電振動素子5はハウジング内部を横断するように張設される。振動素子5は図2に示すように、そのほぼ横断面中央部には振動素子5を挟んで振動補助錘3と振動補助錘4が取り付けられている。補助錘3,4は圧電振動素子の振動強度によっても変わるが、最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の交流信号が伝達される場合は0.2g〜1gの範囲で選択される。ここでは、圧電振動素子5としてPZT系セラミックスを用い、金属振動板上に塗布焼成することにより構成される。
【0013】
上記圧電振動素子5は信号線8と信号線9が接続されており、最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の交流信号が音声信号として送信される。この2つの信号線は1体にしたコード7がコード取り出し部6よりハウジング外部へ導出されている。
【0014】
コードには補聴器機能と同様の音声信増幅部が通常接続され、骨伝導信号が伝達される。すなわち、マイク11で周囲の音を電気信号に変換して、マイクアンプ部12でその信号を増幅し、その増幅された信号を昇圧アンプ部13で最大30〜50Vp-pまで昇圧して、上記骨伝導イヤホン内部の圧電振動素子5のPZT系セラミックス51と、金属振動板52にそれぞれ印加するようになっている。なお、マイクアンプ部12、昇圧アンプ部13の電源用電池部14である。
【0015】
ハウジング1から突出する骨伝導部は図面では中実部材で形成されているが、中空部材とし直接、音波として送出する孔を無くすことによっても、高音振動の増加が抑制でき、良好な骨伝導を行わせることができる。また、ハウジング1に突出した骨伝導部を設けることで、この部分を人体の外耳道内に挿入して容易に固定し、通常のイヤホンと同様に使用することができる。
【0016】
通常のテレビ受像機等のイヤホンジャックに適用して難聴者が受聴できるようにするためには、図3に示すように、イヤホンジャックに接続されるイヤホンプラグ15と、該プラグからの音声信号を最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の骨伝導用交流信号に増幅する昇圧アンプ13と、電源用電池部14を付設することにより構成される。
【0017】
上記実施例では、圧電振動素子5のほぼ中央に両側から振動補助錘3と錘4を取付けたが、どちらか一方に振動補助錘を取り付けるようにしてもよい。これにより、低音振動の低下を抑制し、また、高音振動の増加も抑制可能となる。
【0018】
上記実施例においては、振動補助錘を付けた場合と付けなかった場合の低音振動、高音振動の振動特性を比較すると、本発明の骨伝導特性が優れていることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態を示す横断図面である。
【図2】図1の線A-A'での断面を示す断面図である。
【図3】本発明の骨伝導型イヤホンを用いた難聴者用イヤホンの実施形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 突出部側ハウジング
2 コード側ハウジング
3 振動補助錘
4 振動補助錘
5 圧電振動素子
6 コード取り出し部
7 コード
8 信号線
9 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の骨伝導用交流信号により振動する圧電振動素子を備え、骨伝導により信号を伝達する骨伝導型受信機からなり、
上記圧電振動素子は平板状をなし、一対の凹型ハウジング間に該ハウジング内を横断するように張設され、横断面に対し垂直方向に振動するように構成され、その横断面のほぼ中心部には振動補助錘を取り付けられる一方、該圧電振動素子の横断面に対向して外耳道内に挿入可能な骨伝導素子をハウジング外部に突設し、上記圧電振動素子の振動を外耳道内に誘導するように構成してなることを特徴とする骨伝導型イヤホン。
【請求項2】
デレビ等のイヤホンジャックに接続されるイヤホンプラグと、該プラグからの音声信号を最大30Vp-pから50Vp-pの音声帯域の骨伝導用交流信号に増幅する昇圧アンプと、該アンプからの交流信号により圧電振動素子を振動させ、骨伝導により信号を伝達する骨伝導型受信機とからなり、
上記骨伝導型受信機の圧電振動素子は平板状をなし、一対の凹型ハウジング間に該ハウジング内を横断するように張設され、横断面に対し垂直方向に振動するように構成され、その横断面のほぼ中心部には振動補助錘を取り付けられる一方、該圧電振動素子の横断面に対向して外耳道内に挿入可能な骨伝導素子をハウジング外部に突設し、上記圧電振動素子の振動を外耳道内に誘導するように構成してなることを特徴とする難聴者用イヤホン。
【請求項3】
上記圧電振動素子が、円板状であり、その横断面ほぼ中央部の片側又は両側に振動補助錘が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のイヤホン。
【請求項4】
上記骨伝導素子は一方のハウジングに突設された実質的に中実部材または直接、音波として送出するための孔がない中空部材からなる請求項1または2に記載のイヤホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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