雨水浸透桝、及び既設雨水桝の雨水浸透桝化工法
【課題】地下水位の上昇時に地下水や雨水の逆流を防止することができ、地下水位の低下時には地中に雨水を的確に浸透させることができる雨水浸透桝を提供すること。
【解決手段】雨水浸透桝11は、有底筒状の桝本体12の底部に貫通穴19が形成され、その貫通穴19の下方に設けられた浸透部材収容穴21に浸透部材22及び逆流防止部材が装着されている。浸透部材22は、周面に複数の透孔26を有するパイプ24と、パイプ24内に配置される浸透性のストレーナー25とを含んで構成される。逆流防止部材23は、パイプ24の上端部に設けられ、パイプ24内を通過して浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを防止する。
【解決手段】雨水浸透桝11は、有底筒状の桝本体12の底部に貫通穴19が形成され、その貫通穴19の下方に設けられた浸透部材収容穴21に浸透部材22及び逆流防止部材が装着されている。浸透部材22は、周面に複数の透孔26を有するパイプ24と、パイプ24内に配置される浸透性のストレーナー25とを含んで構成される。逆流防止部材23は、パイプ24の上端部に設けられ、パイプ24内を通過して浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を地中に浸透させるための雨水浸透桝、及び既設雨水桝の雨水浸透桝化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市街地においては、コンクリートジャングルのように都市化が進み、地表面がコンクリートやアスファルトで舗装されている。その結果、雨水の浸透域が減少し、雨水による地表面での流出量が増大してきている。そのため、大雨時において雨水管梁などの排水設備に大きな負荷がかかり、都市洪水の原因となっている。また、下水管梁や雨水管梁の整備により、雨水が地中に浸透しないため、河川に流入する地下水が減少している。これにより、河川の自然浄化能力も失われつつあり、河川の水質汚濁などの原因となっている。
【0003】
この対策として、道路や駐車場などの舗装路に降った雨水を地中に浸透させる雨水浸透桝が開発され、道路や駐車場の側溝部分に設置されている。また、河川や湖の浄化が必要な地域では、各家庭の敷地内において屋根などに降った雨水を地中に浸透させるために雨水浸透桝を設置することが自治体により推奨されており、その雨水浸透桝の設置に対して補助金を交付することで雨水浸透桝の普及が図られている。
【0004】
このように、雨水を地中に浸透させる雨水浸透桝が、例えば特許文献1〜3などに開示されている。特許文献1の雨水浸透桝には、雨水を地中に浸透させるための貫通穴が桝本体の底面に設けられる。また、特許文献2の雨水浸透桝には、雨水を地中に浸透させるための貫通穴が桝本体の壁面に設けられる。さらに、特許文献3の雨水浸透桝には、貫通穴が桝本体の底面に設けられ、その貫通穴の下方に雨水を地中に浸透させるための落水管が連結されている。
【0005】
また、特許文献4では、既設の雨水桝の底面に貫通穴を開け、その貫通穴の下方にフィルタ部を設けることで、既設の雨水桝を浸透桝に変化させる工法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−319657号公報
【特許文献2】特開2002−21170号公報
【特許文献3】特開2001−329602号公報
【特許文献4】特開昭62−99533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、地域によっては地下水位の高低にばらつきがあり、比較的地下水位が高位にある地域(海抜0m以下の地域)などでは、降雨量や海水面の上昇などの影響を受けて河川水面が上昇し、地下水位も上がる。このような地域において、特許文献1〜3などの雨水浸透桝を設けた場合や、特許文献4のように既設の雨水桝を雨水浸透桝に変化させた場合、例えば、降水時に地下水位が上がると、地下水や雨水が雨水浸透桝に逆流することが懸念される。さらに、渇水期などでは地下水位が低くなるが、田畑に引水する時期には地下水位が高くなる場所や、丘陵地帯にあっても谷間に当たる地域で透水層が比較的地表に近い場所では、地下水が雨水浸透桝に逆流することが懸念される。この逆流した水(地下水や雨水)は雨水管梁の本管に流れ込み、排水量が増えて本管の処理能力に負荷を与えることになる。
【0007】
また、上記のような地域に雨水浸透桝を設けた場合、多雨時期には、雨水浸透桝内において滞水している期間が長くなるため、ボウフラなどが湧き衛生上好ましくない。しかし、渇水期には、降った雨を雨水浸透桝から地中へ浸透させて雨水管梁の処理負荷を低減させることが好ましい。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地下水位の上昇時にその地下水や雨水の逆流を防止することができ、地下水位の低下時には地中に雨水を的確に浸透させることができる雨水浸透桝、既設雨水桝の雨水浸透桝化工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、底部に貫通穴が形成された有底筒状の桝本体と、前記桝本体の側壁に設けられ雨水本管と連結された排出管と、前記貫通穴の下方に設けられた浸透部材収容穴内に収容され周面に複数の透孔を有する筒体と、前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材とを含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材と、前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間に配置されることで、前記隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材と、前記筒体の上端部に設けられ、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材とを備えたことを特徴とする雨水浸透桝をその要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、有底筒状の桝本体の底部に貫通穴が形成されており、その貫通穴の下方に設けられた浸透部材収容穴内に浸透部材が収容されている。この浸透部材は、周面に複数の透孔を有する筒体とその筒体内に配置される浸透性のフィルタ材とを含んで構成されているので、雨水の浸透面積を十分に確保することができ、桝本体に流入した雨水を地中に効率よく浸透させることができる。また、貫通穴の内周面と筒体の外周面との隙間にシール部材が配置されることで、その隙間がシールされるとともに筒体の脱落が防止される。これにより、貫通穴の内周面と筒体の外周面との隙間を通じた桝本体への地下水の浸水を防止することができる。さらに、浸透部材を構成する筒体の上端部に逆流防止部材を設けることにより、筒体内を通過して浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止できる。その結果、雨水本管への排水量が増えてその本管の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された板状のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、逆流防止部材の堰板に排水用貫通穴が形成されており、地下水位が比較的低いときには、桝本体に流入した雨水がその貫通穴を通して浸透部材側に排水され、その浸透部材から地中に浸透される。また、降雨量が増えて地下水位が上昇すると、その水位上昇に伴い板状のフロート部材が浮上する。そして、そのフロート部材の上面で堰板の排水用貫通穴が塞がれて止水される。このようにすれば、逆流防止部材をコンパクトに構成でき、その逆流防止部材によって、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された半球形のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の球面側で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、逆流防止部材の堰板に排水用貫通穴が形成されており、地下水位が比較的低いときには、桝本体に流入した雨水がその貫通穴を通して浸透部材側に排水され、その浸透部材から地中に浸透される。また、降雨量が増えて地下水位が上昇すると、その水位上昇に伴い半球形のフロート部材が浮上する。そして、そのフロート部材の球面側で堰板の貫通穴が塞がれて止水される。このようにすれば、フロート部材の浮力を十分に確保することができ、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された独楽形のフロート部材とを備え、前記フロート部材の上面中央に形成された軸部を前記堰板の中央に形成されたガイド穴に挿通した状態で、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することをその要旨とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、逆流防止部材の堰板に排水用貫通穴が形成されており、地下水位が比較的低いときには、桝本体に流入した雨水がその貫通穴を通して浸透部材側に排水され、その浸透部材から地中に浸透される。また、降雨量が増えて地下水位が上昇すると、その水位上昇に伴い軸部が堰板中央のガイド穴に挿通した状態で独楽形のフロート部材が浮上する。そして、そのフロート部材の上面で堰板の排水用貫通穴が塞がれて止水される。このようにすれば、フロート部材の浮力を十分に確保することができ、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記逆流防止部材は、前記貫通穴内に位置する前記筒体の上端に着脱可能に連結される筒状の逆流防止部材本体を備えることをその要旨とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、筒状の逆流防止部材本体を筒体の上端から取り外すことにより、逆流防止部材と浸透部材とを分離することができる。この場合、浸透部材の筒体内に配置されたフィルタ材を容易に交換することができ、雨水浸透桝のメンテナンスを迅速に行うことができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に変化させる工法であって、前記既設雨水桝を構成する有底筒状の桝本体を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴を形成するとともに、その貫通穴の下方にある土を掘削して浸透部材収容穴を形成する穴あけ工程と、周面に複数の透孔を有する筒体及び前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材を含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材を前記浸透部材収容穴内に配設するとともに、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材を前記筒体の上端部に配設する部材配設工程と、前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材を設けるシール工程とを含むことを特徴とする既設雨水桝の雨水浸透桝化工法をその要旨とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、穴あけ工程において、既設雨水桝の桝本体が地中に埋設された状態でその桝本体の底部に貫通穴が形成される。また、その貫通穴の下方にある土が掘削されて浸透部材収容穴が形成される。そして、部材配設工程において、浸透部材収容穴内に浸透部材が配設されるとともに、逆流防止部材が配置される。ここで、浸透部材は、周面に複数の透孔を有する筒体とその筒体内に配置される浸透性のフィルタ材を含んで構成されるため、雨水の浸透面積を十分に確保することができ、雨水を効率よく地中に浸透させることができる。また、逆流防止部材は、浸透部材を構成する筒体の上端部に配設され、筒体内を通過して浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止できる。さらに、シール工程では、貫通穴の内周面と筒体の外周面との隙間にシール部材が設けられ、その隙間がシールされるとともに、貫通穴からの筒体の脱落が防止される。このようにすれば、既設雨水桝を地中から掘り起こすことなく、その雨水桝を雨水浸透桝に変更することができる。従って、新規の雨水浸透桝に取り替える場合と比較して、簡単かつ迅速に雨水浸透桝を施工することができ、その施工コストを半分以下のコストに抑えることができる。また、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することが防止されるので、雨水本管への排水量が増えてその本管の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、地下水位の上昇時に地下水や雨水の逆流を防止することができ、地下水位の低下時には地中に雨水を的確に浸透させることができる雨水浸透桝を提供することができる。また、請求項6に記載の発明によると、請求項1〜5の雨水浸透桝を施工するのに好適な既設雨水桝の雨水浸透桝化工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
【0023】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1に示されるように、本実施の形態の雨水浸透桝11は、有底の四角筒状に形成されたコンクリート製の桝本体12を備える。桝本体12は、例えば、縦横30cm、深さ90cmのサイズを有する。この桝本体12の側壁には排出管15が設けられおり、排出管15は雨水本管16に接続されている。具体的には、雨水本管16は、舗装した道路の中央に設けられ、桝本体12は、道路両脇の路肩の地中に設けられる。また、桝本体12の上部の開口部17には、簀子状の上蓋(グレーチング蓋)18が装着され、路面に降った雨水はそのグレーチング蓋18の隙間から桝本体12内部に流入されて一旦蓄えられる。そして、桝本体12に蓄えられた雨水は、排出管15を介して下流側の雨水本管16に排出され、さらにその雨水本管16を介して河川に流される。
【0025】
図1及び図2に示されるように、桝本体12における底面中央には、円形の貫通穴19が形成されている。そして、その貫通穴19に下方には、土20を掘削することで浸透部材収容穴21が形成され、その浸透部材収容穴21内に浸透部材22及び逆流防止部材23が配設されている。
【0026】
浸透部材22は、塩化ビニルなどの樹脂からなる円筒状のパイプ(筒体)24と、パイプ24内に配置されるストレーナー25とを備える。パイプ24は、例えば直径20cm、長さ40cmのサイズであり、ストレーナー25が配置される下側の周面には2cm程度の複数の透孔26が形成されている。
【0027】
パイプ24の上端部における外周面にはその周方向に沿って凹溝24aが切られており、その凹溝24aにはゴム製のOリング28が配設されている。このOリング28により、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間がシールされる。さらに、パイプ24の外周面においてOリング28の上部には、鉄製の帯板29が巻きつけられており、この帯板29が貫通穴19の縁部に当接することでパイプ24の落下が防止される。なお、本実施の形態では、Oリング28及び帯板29がシール部材に相当する。
【0028】
また、パイプ24の上端部には、複数のスリット30a(細長い貫通穴)を有する目皿30がそのパイプ24の開口を塞ぐように配設されている。なお、目皿30は、桝本体12の底面よりも若干突き出した状態で配置されている。この目皿30は、雨水に含まれる異物(枯葉や小雑物など)を除去しその異物がパイプ24内に侵入することを防止する異物除去部として機能する。
【0029】
ストレーナー25は、透孔26よりも細かい複数の細孔31を有する浸透性のフィルタ材であり、芯棒32に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成されている。このストレーナー25(芯棒32)の両端には、樹脂繊維を挟み込むように薄い金属板33が固定されている。金属板33には複数の貫通穴34が形成され、その金属板33の直径は、樹脂繊維の部分よりも若干小さくなっている。この構成により、桝本体12の底部に溜まった雨水がパイプ24の内壁面に沿ってストレーナー25に確実に浸透する。なお、ストレーナー25の芯棒32や金属板33は、雨水で錆びることがない材料、例えばステンレスを用いて形成されている。
【0030】
逆流防止部材23は、パイプ24の上端部に設けられている。この逆流防止部材23は、中央部に排水用貫通穴35a,36aが形成された円板状の上側堰板35及び下側堰板36と、水よりも比重が小さい材料(例えば、プラスチック薄板やポリエチレン薄板などの樹脂板)を用いて形成された円板状のフロート板37(フロート部材)と、細長い円柱棒状に形成された三本の振れ止め金具38とを備えている。
【0031】
上側堰板35は、外径がパイプ24の内径と同じサイズを有し、パイプ24の内壁面において上端側に固定されている。下側堰板36は、外径がパイプ24の内径と同じサイズを有し、パイプ24の内壁面において上側堰板35の下方に一定の間隔(例えば10cmの間隔)をあけた位置に固定されている。
【0032】
各振れ止め金具38は、パイプ24の軸線方向と平行となるよう上側堰板35及び下側堰板36の外周側に固定されている。フロート板37は、上側堰板35と下側堰板36との間に挟みこまれた状態で配置され、そのフロート板37の縁部に各振れ止め金具38が挿通されている。具体的には、フロート板37の縁部には、その周方向に等角度間隔(120°の角度間隔)でタブ部37aが形成されており、そのタブ部37aに対応した位置に挿通穴37bが形成されている。このフロート板37における各挿通穴37bに各振れ止め金具38が挿通されており、フロート板37は、各振れ止め金具38に沿った上下方向(軸線方向)に移動するようになっている。
【0033】
このように構成した逆流防止部材23においては、パイプ24内の水位が上昇すると、図2(a)において破線で示されるように、その水位上昇に伴いフロート板37が浮上する。このとき、振れ止め金具38によって、フロート板37の横方向の振れが防止され、排水用貫通穴35aを塞ぐようにフロート板37が上方に案内される。そして、そのフロート板37の上面が上側堰板35の下面に当接して排水用貫通穴35aを塞ぐことにより止水される。なお、上側堰板35の下面においてフロート板37が接触する部分には、シール性を高めるためのゴム板39(シール部材)が張り合わされている。この構成により、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することが確実に防止される。
【0034】
また、各振れ止め金具38の下側にフロート板37を保持するための保持部38aが形成されており、水位の低下時には、この保持部38aにフロート板37の下面が当接することで、フロート板37の下方への移動が規制される。このとき、上側堰板35の排水用貫通穴35aから流入した雨水は、フロート板37と下側堰板36との隙間及び下側堰板36の排水用貫通穴36aを通してストレーナー25側に排水される。
【0035】
本実施の形態の雨水浸透桝11は、道路の路肩に埋設された既設雨水桝10(図3参照)を加工することで形成される。以下には、その既設雨水桝10を雨水浸透桝11に変化させるための加工装置について図4及び図5を用いて説明する。なお、図4は、加工装置40の側面図であり、図5は、加工装置40の正面図である。
【0036】
図4及び図5に示すように、本実施の形態における加工装置40は、本体フレーム41と、昇降装置42と、油圧モータ43と、油圧ユニット44とを備える。
【0037】
本体フレーム41は、その底部に設けられるベース部材46と、ベース部材46から垂直に立設された枠状のガイドフレーム47とを有する。ベース部材46の一方の端部には、本体フレーム41を移動させるための車輪48が設けられている。ベース部材46における車輪48の近傍には、本体フレーム41を水平に保つための水平調節機構49が設けられている。水平調節機構49は、ベース部材46を貫通するねじ穴に螺入されるボルト51と、そのボルト51の下端部に固定され、本体フレーム41を支える平板52とを備える。この水平調節機構49において、ボルト51を回すことにより、ベース部材46に対する平板52の突出量が変更され、本体フレーム41の水平度が調節される。
【0038】
ガイドフレーム47には、その前面側に突出する可動部材54が昇降自在に設けられている。また、ガイドフレーム47の背面側には、ガイドフレーム47の長手方向(上下方向)に沿って駆動チェーン55が設けられるとともに、その駆動チェーン55を介して可動部材54を昇降させるための操作ハンドル56が設けられている。本実施の形態では、可動部材54と駆動チェーン55と操作ハンドル56とにより昇降装置42が構成される。この昇降装置42において、操作ハンドル56を正回転させることで可動部材54が上昇し、操作ハンドル56を逆回転させることで可動部材54が下降する。
【0039】
さらに、可動部材54には、垂直方向に伸びる支柱58の上端部が連結され、その支柱58の下端部(先端部)に油圧モータ43が設けられている。この油圧モータ43は、高圧ホース61を介して油圧ユニット44に接続されており、その油圧ユニット44から所定圧力の作動油が供給されることで回転軸62を回転駆動する。この油圧モータ43における回転軸62の先端には、コンクリートを切り抜くための円形コンクリートカッター(回転切削工具)63が固定されている。なお、その回転軸62の先端には、円形コンクリートカッター63の他に、土壌を掘削するためのスクリューオーガーも装着可能になっている。
【0040】
本実施の形態では、油圧モータ43を支持する支柱58の途中に、その軸振れを防止する軸振れ防止金具65が設けられている。図6に示されるように、軸振れ防止金具65は、支柱58を挿入するための貫通穴を有する鉄板66と、油圧モータ43の回転軸62に直交する複数の方向(水平方向)に伸縮可能に設けられた複数のアーム部67と、各アーム部67の伸縮量を調節するための調節シャフト68とを備える。本実施の形態の軸振れ防止金具65では、桝本体12のコーナー部に対応して4つのアーム部67が設けられている(図7参照)。各アーム部67は、当接部材70と、先端が当接部材70に接続される2本の関節部材71とを備える。
【0041】
軸振れ防止金具65において、鉄板66は長尺のボルトとナットとで固定され、この鉄板66の四隅に設けた各穴部69に調節シャフト68の端部が挿入されている。調節シャフト68にはウォームが形成されており、その調節シャフト68の下端部はベアリング73を介して回転可能に固定されている。そして、この調節シャフト68に、アーム部67(関節部材71)の基端が固定されている。具体的には、アーム部67の一方(図6では上方)の関節部材71の端部が、軸方向に移動不能に固定されており、他方(図6では下方)の関節部材71の端部は、内ねじが形成され、調節シャフト68のウォームに嵌合された状態で軸方向に移動可能に固定されている。つまり、この調節シャフト68を回転させることで、下側の関節部材71の基端が調節シャフト68に沿って上下方向に移動する。ここで、調節シャフト68を回転させて下側の関節部材71の基端を最下端部に移動させると、関節部材71が軸方向と平行になり、アーム部67(当接部材70)が内側に収まる。また、図6及び図7において破線で示すように、調節シャフト68を回転させて下側の関節部材71の基端を上方に移動させると、その関節部材71が水平方向に徐々に起き上がり、各アーム部67(当接部材70)が回転軸62に直交する方向(水平方向)に伸びる。
【0042】
なお、本実施の形態では、各調節シャフト68の上端部に調節ツマミ75が設けられており、作業者がその調節ツマミ75を回すことで、調節シャフト68を容易に回転させることができるようになっている。
【0043】
次に、本実施の形態の加工装置40を使用して既設雨水桝10を雨水浸透桝11に変化させるための雨水浸透桝化工法について説明する。
【0044】
先ず、加工前準備工程において、既設雨水桝10のグレーチング蓋18を開け、建設工事用の掃除機を使用して、桝本体12内の雨水や泥などを除去する。そして、桝本体12の底が確認できる状態にした後、加工装置40を桝本体12の上部に配置させる。このとき、加工装置40のベース部材46において、車輪48のない他方の端部を桝本体12の外側に配設された凸部(例えば、図4に示す角材53)に載せる。その状態で車輪48側の水平調節機構49を調節することにより、平板52の突出量を変更して本体フレーム41を水平に保つようにする。
【0045】
続く回転軸固定工程では、加工装置40の操作ハンドル56を回すことで可動部材54及び支柱58を下げ、その支柱58に設けられている軸振れ防止金具65及び油圧モータ43を桝本体12内部に配置させる。その状態で、軸振れ防止金具65の調節シャフト68を回して各アーム部67の伸縮量を調節することで、各アーム部67の当接部材70を桝本体12のコーナー部に当接させる(図7参照)。この軸振れ防止金具65によって、油圧モータ43の回転軸62が水平方向にブレないように固定される。
【0046】
その後、穴あけ工程では、油圧ユニット44を作動させ、油圧ユニット44から油圧モータ43に作動油を供給することで、その油圧モータ43を駆動して円形コンクリートカッター63を回転させる。このとき、加工装置40の操作ハンドル56を回して、可動部材54及び支柱58を介して油圧モータ43を下げる。そして、図8(a)に示されるように、円形コンクリートカッター63を桝本体12の底面に当接させるとともに、上方から所定の力を円形コンクリートカッター63に作用させる。その結果、図8(b)に示されるように、桝本体12の底面が切削され円形の貫通穴19が形成される。なおこのとき、円形コンクリートカッター63による切削部分に冷却水が放水され、円形コンクリートカッター63に生じる摩擦熱が冷却される。
【0047】
この貫通穴19の形成後、油圧モータ43の回転を一旦停止し、回転軸62の先端に装着されている円形コンクリートカッター63をスクリューオーガーに取り替える。その後、図8(c)に示されるように、油圧モータ43を駆動してスクリューオーガー64を回転させ、そのスクリューオーガー64によって、貫通穴19の下方にある土20を掘削して浸透部材収容穴21を形成する。この際、スクリューオーガー64によって掘削された土20は、建設工事用の掃除機等によって除去される。また、浸透部材収容穴21の形成後、加工装置40を桝本体12の上部から邪魔にならない位置に移動させる。
【0048】
部材配設工程では、図8(d)に示すように、内部にストレーナー25と逆流防止部材23とを装着したパイプ24を浸透部材収容穴21内に縦置きで配設する。また、本実施の形態では、この部材配設工程を行うのと同時にシール工程を行う。すなわち、パイプ24の上端部の凹溝24aにOリング28を配設するとともに、その上方に帯板29を巻きつける。その後、パイプ24を貫通穴19の上方から浸透部材収容穴21内に挿入配置する。これにより、帯板29が貫通穴19の縁部に当接することでパイプ24が固定されるとともに、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間にOリング28が配置されてその隙間がシールされる。その結果、桝本体12の底部に浸透部材22及び逆流防止部材23が装着される。そして、図1に示されるように、桝本体12の上部にグレーチング蓋18を装着することで、既設雨水桝10を雨水浸透桝11に変化させるための作業が完了する。
【0049】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0050】
(1)本実施の形態の雨水浸透桝11では、桝本体12の底部に形成された貫通穴19の下方に浸透部材収容穴21が設けられ、その浸透部材収容穴21内に浸透部材22が収容されている。この浸透部材22は、周面に複数の透孔26を有するパイプ24と、そのパイプ24内に配置される浸透性のストレーナー25とを含んで構成されているので、雨水の浸透面積を十分に確保することができ、桝本体12に流入した雨水を地中に効率よく浸透させることができる。また、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間にOリング28が配置されることでその隙間がシールされるとともに、帯板29が配置さことでパイプ24の脱落が防止される。これにより、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間を通じた桝本体12への地下水の浸水を確実に防止できる。さらに、浸透部材22を構成するパイプ24の上端部に逆流防止部材23が設けられているので、パイプ24を通過して浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを防止できる。その結果、雨水本管16への排水量が増えて、その本管16の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。また、雨水浸透桝11では、逆流防止部材23を設けることにより、浸透部材22側に流入する水量を調整することができる。これにより、雨水の流入の作用によってパイプ24の外周近辺の土砂が荒らされることを抑止でき、桝本体12の陥没を防止することができる。
【0051】
(2)本実施の形態の逆流防止部材23は、フロート部材として板状のフロート板37を備えるので、コンパクトに構成することができる。また、振れ止め金具38を設けることによって、上側堰板35の排水用貫通穴35aを塞ぐようにフロート板37を確実に案内することができる。さらに、上側堰板35におけるフロート板37との接触部には、シール性を高めるためのゴム板39が設けられているので、より確実に止水することができる。
【0052】
(3)本実施の形態の場合、既設雨水桝10の桝本体12を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴19が形成され、その貫通穴19の下方に設けられた浸透部材収容穴21内に浸透部材22及び逆流防止部材23が配設される。このようにすれば、既設雨水桝10を地中から掘り起こすことなく、その雨水桝10を雨水浸透桝11に変更することができる。従って、新規の雨水浸透桝に取り替える場合と比較して、簡単かつ迅速に雨水浸透桝11を施工することができ、その施工コストを半分以下のコストに抑えることができる。
【0053】
(4)本実施の形態の浸透部材22では、パイプ24の透孔26よりも細かい複数の細孔31を有するストレーナー25がパイプ24内に設けられているので、雨水に含まれるゴミ(砂利や葉っぱなど)がパイプ24内部に入り込むことを防止することができる。従って、パイプ24の透孔26の目詰まりなどによる雨水の浸透能力の低下を抑えることができる。また、ストレーナー25は、芯棒32に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成され、その両端には、樹脂繊維を挟み込むように薄い金属板33が固定されている。これにより、樹脂繊維の形状を保持することができ、ひいては、ストレーナー25の長寿命化を図ることができる。さらに、その金属板33の直径は、樹脂繊維の部分よりも若干小さくなっているので、雨水は、パイプ24と金属板33との間から浸入し、パイプ24の内壁面に沿って流下してストレーナー25に浸透する。これにより、雨水を地中に効率よく浸透させることができる。また、金属板33がパイプ24に接触しないため、ストレーナー25の着脱を容易に行うことができる。
【0054】
(5)本実施の形態の加工装置40では、軸振れ防止金具65の各アーム部67を桝本体12のコーナー部に当接させることで、回転軸62のブレを防止するようにした。このようにすれば、例えばアンカーボルトで固定する場合のように桝本体12やその周辺の道路に傷をつけることがなく、回転軸62のブレを確実に防止することができる。また、軸振れ防止金具65では、調節シャフト68を回すことで各アーム部67の伸縮量を調節できるため、桝本体12のサイズが異なる場合でも、各アーム部67の当接部材70を桝本体12に確実に当接させることができる。従って、回転軸62のブレを確実に防止することができ、桝本体12の底面に貫通穴19を精度良く形成することができる。
【0055】
(6)本実施の形態の加工装置40は、水平調節機構49によって本体フレーム41を水平に保つことができるので、桝本体12の底面に貫通穴19をより正確に形成することができる。
【0056】
(7)本実施の形態の加工装置40では、本体フレーム41のベース部材46に車輪48が設けられているので、車などで搬送した加工装置40を道路脇の作業現場まで簡単に移動させることができる。
【0057】
(8)本実施の形態の加工装置40では、駆動装置として油圧モータ43を用いたので、電動モータを用いる場合のように雨水や冷却水などによる漏電対策を施す必要がない。
[第2の実施の形態]
【0058】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、逆流防止部材23の構成が第1の実施の形態と異なる。その逆流防止部材23の構成について、図9を用いて詳述する。
【0059】
図9に示されるように、本実施の形態の逆流防止部材23は、パイプ24の上端部に着脱可能に設けられている。この逆流防止部材23は、筒状の逆流防止部材本体81と、中央部に雨水を排水するための排水用貫通穴82aが形成された円板状の堰板82と、水よりも比重が小さい材料(例えば、プラスチック薄板)用いて形成された半球形のフロート部材83と、フロート部材83を固定するための振れ止め金具84と、フロート部材83の落下を防止するための落下防止板85とを備える。
【0060】
逆流防止部材本体81は、その外径がパイプ24の内径よりも若干小さく、パイプ24の上端部に挿入配置されている。逆流防止部材本体81の外周面において、上側及び下側の二箇所にはその周方向に沿って凹溝81aが切られており、その凹溝81aにはゴム製のOリング86が配設されている。これらOリング86によって、逆流防止部材本体81の外周面とパイプ24の内周面との隙間がシールされるとともに、逆流防止部材本体81が落下しないようにパイプ24の上端部に固定されている。
【0061】
堰板82は、外径が逆流防止部材本体81の内径と同じサイズを有し、逆流防止部材本体81の内壁面において上端側に固定されている。落下防止板85は、フロート部材83の半分程度の幅を有する長方形状に形成された板材であって、その基端部が逆流防止部材本体81の内壁面の下端側に固定されている。
【0062】
フロート部材83は、その球面を上方に向けた状態で落下防止板85上に配置される。また、フロート部材83は、振れ止め金具84により逆流防止部材本体81の内壁面に固定されており、その固定部を支点として上下方向に回動するようになっている。このフロート部材83と振れ止め金具84との接続部は、フロート部材83の上下方向の移動に伴って回動可能に設けられている。
【0063】
さらに、本実施の形態では、ストレーナー25の一方(図9では上方)の金属板33に着脱用のフック87が設けられており、作業用の棒などを利用してこのフック87に引っ掛けることにより、パイプ24に対するストレーナー25の着脱を容易に行うことができるようになっている。
【0064】
パイプ24の上端部には、第1の実施の形態と同様に、シール部材としてのOリング28及び帯板29が配置されており、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間がシールされるとともに、パイプ24の落下が防止されている。また、パイプ24の開口を塞ぐように目皿30が配設されている。本実施の形態では、この目皿30に逆流防止部材本体81が連結されており、目皿30とともに逆流防止部材23がパイプ24から着脱されるようになっている。
【0065】
本実施の形態の逆流防止部材23において、パイプ24内の水位の上昇に伴いフロート部材83が浮上する。このとき、振れ止め金具84によって、フロート部材83の横方向の振れが防止され、排水用貫通穴82aを塞ぐようにフロート部材83が上方に案内される。そして、そのフロート部材83の球面で堰板82の排水用貫通穴82aを塞ぐことにより止水される。この場合、フロート部材83の浮力を十分に確保することができ、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。
【0066】
また、水位の低下時には、フロート部材83が下方に移動して落下防止板85上で保持される。このとき、堰板82の排水用貫通穴82aから流入した雨水は、フロート部材83(落下防止板85)の下方の隙間を通してストレーナー25側に排水され、浸透部材22により地中に浸透される。
【0067】
本実施の形態の逆流防止部材23は、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けられている。従って、長期間使用した雨水浸透桝11をメンテナンスする場合、桝本体12の底部に溜まった泥やゴミを除去した後、目皿30とともに逆流防止部材23をパイプ24から取り外すことができ、さらに、作業用の棒をフック87に引っ掛けてストレーナー25をパイプ24から抜き取ることができる。そして、そのストレーナー25を水洗浄して内部に溜まった泥などを除去した後、再びパイプ24内に挿入するとともに逆流防止部材23をパイプ24の上端部に装着することができる。なお、このメンテナンス時には、新品のストレーナー25に交換してもよい。このようなメンテナンス作業を行うことで、雨水浸透桝11の浸透能力を施工時の状態に回復させることができる。
[第3の実施の形態]
【0068】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を説明する。本実施の形態では、逆流防止部材23の構成が第1の実施の形態と異なる。その逆流防止部材23の構成について、図10を用いて詳述する。
【0069】
図10に示されるように、本実施の形態の逆流防止部材23も、第2の実施の形態と同様に、パイプ24の上端部に着脱可能に設けられている。この逆流防止部材23は、筒状の逆流防止部材本体91と、複数の排水用貫通穴92aが形成された円板状の堰板92と、水よりも比重が小さい材料(例えば、樹脂材料)用いて形成された独楽形のフロート部材93と、フロート部材93の落下を防止するための落下防止部材94とを備えている。
【0070】
逆流防止部材本体91は、その外径がパイプ24の内径よりも若干小さく、パイプ24の上端部に挿入配置されている。逆流防止部材本体91の外周面において、上側及び下側の二箇所にはその周方向に沿って凹溝91aが切られており、その凹溝91aにはゴム製のOリング96が配設されている。これらOリング96によって、逆流防止部材本体91の外周面とパイプ24の内周面との隙間がシールされるとともに、逆流防止部材本体91が落下しないようにパイプ24の上端部に固定されている。
【0071】
堰板92は、外径が逆流防止部材本体91の内径と同じサイズを有するリング部92bと、そのリング部92bの内側に形成される十字部92cとを備え、リング部92bと十字部92cとの間に扇状の排水用貫通穴92aが形成されている。そして、この堰板92が逆流防止部材本体91の内壁面における上端側に固定されている。
【0072】
フロート部材93は、その上面中央に軸部93aが形成されており、堰板92の中央(十字部の中心)に形成されたガイド穴92dにその軸部93aが挿通された状態で落下防止部材94上に配置されている。このフロート部材93を支持する落下防止部材94は、逆流防止部材本体91の内壁面において、堰板92の下方となる位置にて径方向の内側に向けて突設されている。なお、本実施の形態では、フロート部材93を確実に支持するために、落下防止部材94は、逆流防止部材本体91の内壁面において、その周方向に等角度間隔(90°の角度間隔)となる四箇所に設けられている。また、この落下防止部材94の先端側は、フロート部材93の下面の形状に合わせてテーパ状に形成されている。
【0073】
さらに、本実施の形態でも、第2の実施の形態と同様にストレーナー25の上方の金属板33に着脱用のフック87が設けられており、作業用の棒をこのフック87に引っ掛けることにより、パイプ24に対するストレーナー25の着脱を容易に行うことができるようになっている。
【0074】
パイプ24の上端部には、シール部材としてのOリング28及び帯板29が配置されており、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間がシールされるとともに、パイプ24の落下が防止される。また、パイプ24の開口を塞ぐように目皿30が配設されている。本実施の形態でも、この目皿30に逆流防止部材本体91が連結され、目皿30とともに逆流防止部材23がパイプ24から着脱できるようになっている。
【0075】
本実施の形態の逆流防止部材23において、パイプ24内の水位の上昇に伴いフロート部材93が浮上する。このとき、フロート部材93の軸部93aが堰板92のガイド穴92dに挿通されているので、フロート部材93の横方向の振れが防止され、フロート部材93が上方に確実に案内される。そして、そのフロート部材93の上面が堰板92の各排水用貫通穴92aを塞ぐことにより止水される。この場合、フロート部材93の浮力を十分に確保することができ、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。さらに、本実施の形態では、堰板92の下面においてフロート部材93が接触する部分には、ゴム板97が張り合わされている。このゴム板97により、シール性を高めることができ、より確実に止水することができる。
【0076】
また、水位の低下時には、フロート部材93が下方に移動して落下防止部材94で保持される。このとき、堰板92の排水用貫通穴92aから流入した雨水は、フロート部材93の下方の隙間を通してストレーナー25側に排水され、浸透部材22により地中に浸透される。
【0077】
本実施の形態の逆流防止部材23も、第2の実施の形態と同様に、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けられている。従って、長期間使用した雨水浸透桝11をメンテナンスする場合、桝本体12の底部に溜まった泥やゴミを除去した後、目皿30とともに逆流防止部材23をパイプ24から取り外すことができ、さらに、作業用の棒をフック87に引っ掛けてストレーナー25をパイプ24から抜き取ることができる。そして、そのストレーナー25を水洗浄して内部に溜まった泥などを除去した後、再びパイプ24内に挿入するとともに逆流防止部材23をパイプ24の上端部に装着することができる。なお、このメンテナンス時には、新品のストレーナー25に交換してもよい。このようなメンテナンス作業を行うことで、雨水浸透桝11の浸透能力を施工時の状態に回復させることができる。
【0078】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0079】
・上記第1の実施の形態では、逆流防止部材23を浸透部材22と一体的に設けるものであったが、第2及び第3の実施の形態における逆流防止部材23のように、筒状の逆流防止部材本体を用いた二重構造として、浸透部材22に対して着脱可能に設けてもよい。また、図11に示されるように、ねじ止めによって逆流防止部材23を浸透部材22に着脱可能に設けてもよい。具体的には、図11の逆流防止部材23は、第1の実施の形態の構成部材(上側堰板35及び下側堰板36、フロート板37、振れ止め金具38)に加え、筒状の逆流防止部材本体101を備えている。
【0080】
逆流防止部材本体101は、その下端部に雄ねじ101aが形成されており、パイプ24の上端部に形成された雌ねじ24bに螺着される。本実施の形態のパイプ24の上端部における外周面は、シール部材102(例えば、コンクリートや接着剤など)を用いて貫通穴19の内周面に固定されている。また、逆流防止部材本体101の外周面にはその周方向に沿って凹溝101bが切られており、その凹溝101bにはゴム製のOリング103が配設されている。このOリング103により、貫通穴19の内周面と逆流防止部材本体101の外周面との隙間がシールされる。さらに、逆流防止部材23において、上側堰板35は逆流防止部材本体101の内壁面に固定され、下側堰板36は振れ止め金具38を介して上側堰板35に固定されている。
【0081】
このように逆流防止部材23を構成すれば、第1の実施の形態と同様に、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを防止できる。また、逆流防止部材23は、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けられているので、雨水浸透桝11のメンテナンス(ストレーナー25の洗浄作業や交換作業)を容易に行うことができる。なお、ねじ止め以外の連結手段(例えば、フックなど)を用いて逆流防止部材23を浸透部材22に着脱可能に設けるように構成してもよい。
【0082】
・上記第2の実施の形態や第3の実施の形態の逆流防止部材23は、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けたが、逆流防止部材本体81,91を省略して、第1の実施の形態と同様にパイプ24に一体的に設けてもよい。このようにすれば、構成が簡素化されるため、逆流防止部材23の製造コストを抑えることができる。
【0083】
・上記第2の実施の形態や第3の実施の形態のように、逆流防止部材23を浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けた場合、逆流防止部材本体81,91とストレーナー25とをワイヤ111などの連結部材(図12参照)を用いて接続してもよい。このようにすれば、雨水浸透桝11のメンテナンス時において、パイプ24から逆流防止部材23とストレーナー25とを同時に取り出すことができ、作業効率を向上させることができる。
【0084】
・上記各実施の形態では、フロート部材37,83,93の形状は、板状、半球形、独楽形であったが、これに限定されるものではなく、例えば、球体であってもよい。さらに、逆流防止部材23は、フロート部材37,83,93を用いて構成する必要はなく、例えば、開閉可能なフラップ(蓋部材)を用いて構成してもよい。この場合、桝本体12に雨水がたまり、その重量でフラップを開放して浸透部材22側に雨水を落とし、雨水が少なく軽くなったときにはフラップを閉じるよう逆流防止部材23を構成する。
【0085】
・上記各実施の形態では、芯棒32に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成したストレーナー25をフィルタ材として用いたが、これに限定されるものではない。浸透部材のフィルタ材としては、例えば、砕石、ガラス球、糸状膜、布膜等の透水性材料を用いてもよい。
【0086】
・上記実施の形態では、円形コンクリートカッター63を用いて桝本体12の底面に貫通穴19を形成したが、それ以外の切削工具(例えば、ハンマーなどの工具)を用いてもよい。また、スクリューオーガー64の代わりに、ダブルスコップなどを用いて浸透部材収容穴21を形成してもよい。さらに、円形コンクリートカッターの内側に掘削用のドリルを納めた回転切削工具を用いて、貫通穴19と浸透部材収容穴21とを形成してもよい。
【0087】
・上記実施の形態では、道路の路肩に埋設された既設雨水桝10を加工するものであったが、これ以外に駐車場などの舗装された場所や各家庭の庭に埋設された既設雨水桝10を加工して雨水浸透桝11に変化させてもよい。勿論、既設雨水桝10を加工して形成した雨水浸透桝11に限定されるものではなく、工場で製造した新品の雨水浸透桝11を使用して、道路の路肩や各家庭の庭に埋設してもよい。
【0088】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0089】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記逆流防止部材は、前記浸透部材の上部に一体的に設けられることを特徴とする雨水浸透桝。
【0090】
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記逆流防止部材は、前記浸透部材の上部に着脱可能に設けられることを特徴とする雨水浸透桝。
【0091】
(3)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記フィルタ材は、前記複数の透孔よりも細かい複数の細孔を有し、芯棒に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成され、前記筒体内に挿抜可能に配置されるものであり、前記浸透部材は、前記樹脂繊維を挟み込むように前記芯棒の両端に固定され、前記樹脂繊維の部分よりも直径が若干小さくなっている金属板と、上端側の金属板に設けられた着脱用のフックとをさらに含んで構成されることを特徴とする雨水浸透桝。
【0092】
(4)技術的思想(2)または(3)において、前記フィルタ材と前記逆流防止部材とを連結するための連結部材を備え、前記貫通穴の下方にある浸透部材収容穴内に前記筒体が縦置きで配設され、前記筒体内に前記フィルタ材と前記逆流防止部材とが挿入配置されていることを特徴とする雨水浸透桝。
【0093】
(5)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記逆流防止部材における上端部には、前記雨水に含まれる異物を除去するための異物除去部が設けられることを特徴とする雨水浸透桝。
【0094】
(6)請求項2乃至4のいずれか1項において、前記堰板とフロート部材との接触部に、シール性を高めるためのシール部材を設けたことを特徴とする雨水浸透桝。
【0095】
(7)請求項2または3において、前記逆流防止部材は、横方向の振れを防止しつつ上下方向に前記フロート板を案内するための振れ止め部材をさらに備えたことを特徴とする雨水浸透桝。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の雨水浸透桝を示す断面図。
【図2】(a)は浸透部材及び逆流防止部材を示す縦断面図、(b)は逆流防止部材を示す横断面図。
【図3】既設雨水桝を示す断面図。
【図4】加工装置を示す側面図。
【図5】加工装置を示す正面図。
【図6】軸振れ防止金具を示す平面図。
【図7】軸振れ防止金具による固定方法を示す説明図。
【図8】(a)〜(d)は雨水浸透桝化工法を説明するための断面図。
【図9】(a)は第2の実施の形態の逆流防止部材を示す縦断面図、(b)はその逆流防止部材を示す横断面図。
【図10】(a)は第3の実施の形態の逆流防止部材を示す縦断面図、(b)はその逆流防止部材を示す横断面図。
【図11】別の実施の形態の逆流防止部材を示す断面図。
【図12】別の実施の形態の逆流防止部材を示す断面図。
【符号の説明】
【0097】
10…既設雨水桝
11…雨水浸透桝
12…桝本体
15…排出管
16…雨水本管
19…貫通穴
20…土
21…浸透部材収容穴
22…浸透部材
23…逆流防止部材
24…筒体としてのパイプ
25…フィルタ材としてのストレーナー
26…透孔
28…シール部材としてのOリング
29…シール部材としての帯板
35…堰板としての上側堰板
35a…排水用貫通穴
37…フロート部材としてのフロート板
81,91,101…逆流防止部材本体
82,92…堰板
82a,92a…排水用貫通穴
83,93…フロート部材
92d…ガイド穴
93a…軸部
102…シール部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を地中に浸透させるための雨水浸透桝、及び既設雨水桝の雨水浸透桝化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市街地においては、コンクリートジャングルのように都市化が進み、地表面がコンクリートやアスファルトで舗装されている。その結果、雨水の浸透域が減少し、雨水による地表面での流出量が増大してきている。そのため、大雨時において雨水管梁などの排水設備に大きな負荷がかかり、都市洪水の原因となっている。また、下水管梁や雨水管梁の整備により、雨水が地中に浸透しないため、河川に流入する地下水が減少している。これにより、河川の自然浄化能力も失われつつあり、河川の水質汚濁などの原因となっている。
【0003】
この対策として、道路や駐車場などの舗装路に降った雨水を地中に浸透させる雨水浸透桝が開発され、道路や駐車場の側溝部分に設置されている。また、河川や湖の浄化が必要な地域では、各家庭の敷地内において屋根などに降った雨水を地中に浸透させるために雨水浸透桝を設置することが自治体により推奨されており、その雨水浸透桝の設置に対して補助金を交付することで雨水浸透桝の普及が図られている。
【0004】
このように、雨水を地中に浸透させる雨水浸透桝が、例えば特許文献1〜3などに開示されている。特許文献1の雨水浸透桝には、雨水を地中に浸透させるための貫通穴が桝本体の底面に設けられる。また、特許文献2の雨水浸透桝には、雨水を地中に浸透させるための貫通穴が桝本体の壁面に設けられる。さらに、特許文献3の雨水浸透桝には、貫通穴が桝本体の底面に設けられ、その貫通穴の下方に雨水を地中に浸透させるための落水管が連結されている。
【0005】
また、特許文献4では、既設の雨水桝の底面に貫通穴を開け、その貫通穴の下方にフィルタ部を設けることで、既設の雨水桝を浸透桝に変化させる工法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−319657号公報
【特許文献2】特開2002−21170号公報
【特許文献3】特開2001−329602号公報
【特許文献4】特開昭62−99533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、地域によっては地下水位の高低にばらつきがあり、比較的地下水位が高位にある地域(海抜0m以下の地域)などでは、降雨量や海水面の上昇などの影響を受けて河川水面が上昇し、地下水位も上がる。このような地域において、特許文献1〜3などの雨水浸透桝を設けた場合や、特許文献4のように既設の雨水桝を雨水浸透桝に変化させた場合、例えば、降水時に地下水位が上がると、地下水や雨水が雨水浸透桝に逆流することが懸念される。さらに、渇水期などでは地下水位が低くなるが、田畑に引水する時期には地下水位が高くなる場所や、丘陵地帯にあっても谷間に当たる地域で透水層が比較的地表に近い場所では、地下水が雨水浸透桝に逆流することが懸念される。この逆流した水(地下水や雨水)は雨水管梁の本管に流れ込み、排水量が増えて本管の処理能力に負荷を与えることになる。
【0007】
また、上記のような地域に雨水浸透桝を設けた場合、多雨時期には、雨水浸透桝内において滞水している期間が長くなるため、ボウフラなどが湧き衛生上好ましくない。しかし、渇水期には、降った雨を雨水浸透桝から地中へ浸透させて雨水管梁の処理負荷を低減させることが好ましい。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地下水位の上昇時にその地下水や雨水の逆流を防止することができ、地下水位の低下時には地中に雨水を的確に浸透させることができる雨水浸透桝、既設雨水桝の雨水浸透桝化工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、底部に貫通穴が形成された有底筒状の桝本体と、前記桝本体の側壁に設けられ雨水本管と連結された排出管と、前記貫通穴の下方に設けられた浸透部材収容穴内に収容され周面に複数の透孔を有する筒体と、前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材とを含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材と、前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間に配置されることで、前記隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材と、前記筒体の上端部に設けられ、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材とを備えたことを特徴とする雨水浸透桝をその要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、有底筒状の桝本体の底部に貫通穴が形成されており、その貫通穴の下方に設けられた浸透部材収容穴内に浸透部材が収容されている。この浸透部材は、周面に複数の透孔を有する筒体とその筒体内に配置される浸透性のフィルタ材とを含んで構成されているので、雨水の浸透面積を十分に確保することができ、桝本体に流入した雨水を地中に効率よく浸透させることができる。また、貫通穴の内周面と筒体の外周面との隙間にシール部材が配置されることで、その隙間がシールされるとともに筒体の脱落が防止される。これにより、貫通穴の内周面と筒体の外周面との隙間を通じた桝本体への地下水の浸水を防止することができる。さらに、浸透部材を構成する筒体の上端部に逆流防止部材を設けることにより、筒体内を通過して浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止できる。その結果、雨水本管への排水量が増えてその本管の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された板状のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、逆流防止部材の堰板に排水用貫通穴が形成されており、地下水位が比較的低いときには、桝本体に流入した雨水がその貫通穴を通して浸透部材側に排水され、その浸透部材から地中に浸透される。また、降雨量が増えて地下水位が上昇すると、その水位上昇に伴い板状のフロート部材が浮上する。そして、そのフロート部材の上面で堰板の排水用貫通穴が塞がれて止水される。このようにすれば、逆流防止部材をコンパクトに構成でき、その逆流防止部材によって、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された半球形のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の球面側で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、逆流防止部材の堰板に排水用貫通穴が形成されており、地下水位が比較的低いときには、桝本体に流入した雨水がその貫通穴を通して浸透部材側に排水され、その浸透部材から地中に浸透される。また、降雨量が増えて地下水位が上昇すると、その水位上昇に伴い半球形のフロート部材が浮上する。そして、そのフロート部材の球面側で堰板の貫通穴が塞がれて止水される。このようにすれば、フロート部材の浮力を十分に確保することができ、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された独楽形のフロート部材とを備え、前記フロート部材の上面中央に形成された軸部を前記堰板の中央に形成されたガイド穴に挿通した状態で、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することをその要旨とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、逆流防止部材の堰板に排水用貫通穴が形成されており、地下水位が比較的低いときには、桝本体に流入した雨水がその貫通穴を通して浸透部材側に排水され、その浸透部材から地中に浸透される。また、降雨量が増えて地下水位が上昇すると、その水位上昇に伴い軸部が堰板中央のガイド穴に挿通した状態で独楽形のフロート部材が浮上する。そして、そのフロート部材の上面で堰板の排水用貫通穴が塞がれて止水される。このようにすれば、フロート部材の浮力を十分に確保することができ、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記逆流防止部材は、前記貫通穴内に位置する前記筒体の上端に着脱可能に連結される筒状の逆流防止部材本体を備えることをその要旨とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、筒状の逆流防止部材本体を筒体の上端から取り外すことにより、逆流防止部材と浸透部材とを分離することができる。この場合、浸透部材の筒体内に配置されたフィルタ材を容易に交換することができ、雨水浸透桝のメンテナンスを迅速に行うことができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に変化させる工法であって、前記既設雨水桝を構成する有底筒状の桝本体を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴を形成するとともに、その貫通穴の下方にある土を掘削して浸透部材収容穴を形成する穴あけ工程と、周面に複数の透孔を有する筒体及び前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材を含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材を前記浸透部材収容穴内に配設するとともに、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材を前記筒体の上端部に配設する部材配設工程と、前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材を設けるシール工程とを含むことを特徴とする既設雨水桝の雨水浸透桝化工法をその要旨とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、穴あけ工程において、既設雨水桝の桝本体が地中に埋設された状態でその桝本体の底部に貫通穴が形成される。また、その貫通穴の下方にある土が掘削されて浸透部材収容穴が形成される。そして、部材配設工程において、浸透部材収容穴内に浸透部材が配設されるとともに、逆流防止部材が配置される。ここで、浸透部材は、周面に複数の透孔を有する筒体とその筒体内に配置される浸透性のフィルタ材を含んで構成されるため、雨水の浸透面積を十分に確保することができ、雨水を効率よく地中に浸透させることができる。また、逆流防止部材は、浸透部材を構成する筒体の上端部に配設され、筒体内を通過して浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止できる。さらに、シール工程では、貫通穴の内周面と筒体の外周面との隙間にシール部材が設けられ、その隙間がシールされるとともに、貫通穴からの筒体の脱落が防止される。このようにすれば、既設雨水桝を地中から掘り起こすことなく、その雨水桝を雨水浸透桝に変更することができる。従って、新規の雨水浸透桝に取り替える場合と比較して、簡単かつ迅速に雨水浸透桝を施工することができ、その施工コストを半分以下のコストに抑えることができる。また、浸透部材から桝本体に雨水または地下水が逆流することが防止されるので、雨水本管への排水量が増えてその本管の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、地下水位の上昇時に地下水や雨水の逆流を防止することができ、地下水位の低下時には地中に雨水を的確に浸透させることができる雨水浸透桝を提供することができる。また、請求項6に記載の発明によると、請求項1〜5の雨水浸透桝を施工するのに好適な既設雨水桝の雨水浸透桝化工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
【0023】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1に示されるように、本実施の形態の雨水浸透桝11は、有底の四角筒状に形成されたコンクリート製の桝本体12を備える。桝本体12は、例えば、縦横30cm、深さ90cmのサイズを有する。この桝本体12の側壁には排出管15が設けられおり、排出管15は雨水本管16に接続されている。具体的には、雨水本管16は、舗装した道路の中央に設けられ、桝本体12は、道路両脇の路肩の地中に設けられる。また、桝本体12の上部の開口部17には、簀子状の上蓋(グレーチング蓋)18が装着され、路面に降った雨水はそのグレーチング蓋18の隙間から桝本体12内部に流入されて一旦蓄えられる。そして、桝本体12に蓄えられた雨水は、排出管15を介して下流側の雨水本管16に排出され、さらにその雨水本管16を介して河川に流される。
【0025】
図1及び図2に示されるように、桝本体12における底面中央には、円形の貫通穴19が形成されている。そして、その貫通穴19に下方には、土20を掘削することで浸透部材収容穴21が形成され、その浸透部材収容穴21内に浸透部材22及び逆流防止部材23が配設されている。
【0026】
浸透部材22は、塩化ビニルなどの樹脂からなる円筒状のパイプ(筒体)24と、パイプ24内に配置されるストレーナー25とを備える。パイプ24は、例えば直径20cm、長さ40cmのサイズであり、ストレーナー25が配置される下側の周面には2cm程度の複数の透孔26が形成されている。
【0027】
パイプ24の上端部における外周面にはその周方向に沿って凹溝24aが切られており、その凹溝24aにはゴム製のOリング28が配設されている。このOリング28により、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間がシールされる。さらに、パイプ24の外周面においてOリング28の上部には、鉄製の帯板29が巻きつけられており、この帯板29が貫通穴19の縁部に当接することでパイプ24の落下が防止される。なお、本実施の形態では、Oリング28及び帯板29がシール部材に相当する。
【0028】
また、パイプ24の上端部には、複数のスリット30a(細長い貫通穴)を有する目皿30がそのパイプ24の開口を塞ぐように配設されている。なお、目皿30は、桝本体12の底面よりも若干突き出した状態で配置されている。この目皿30は、雨水に含まれる異物(枯葉や小雑物など)を除去しその異物がパイプ24内に侵入することを防止する異物除去部として機能する。
【0029】
ストレーナー25は、透孔26よりも細かい複数の細孔31を有する浸透性のフィルタ材であり、芯棒32に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成されている。このストレーナー25(芯棒32)の両端には、樹脂繊維を挟み込むように薄い金属板33が固定されている。金属板33には複数の貫通穴34が形成され、その金属板33の直径は、樹脂繊維の部分よりも若干小さくなっている。この構成により、桝本体12の底部に溜まった雨水がパイプ24の内壁面に沿ってストレーナー25に確実に浸透する。なお、ストレーナー25の芯棒32や金属板33は、雨水で錆びることがない材料、例えばステンレスを用いて形成されている。
【0030】
逆流防止部材23は、パイプ24の上端部に設けられている。この逆流防止部材23は、中央部に排水用貫通穴35a,36aが形成された円板状の上側堰板35及び下側堰板36と、水よりも比重が小さい材料(例えば、プラスチック薄板やポリエチレン薄板などの樹脂板)を用いて形成された円板状のフロート板37(フロート部材)と、細長い円柱棒状に形成された三本の振れ止め金具38とを備えている。
【0031】
上側堰板35は、外径がパイプ24の内径と同じサイズを有し、パイプ24の内壁面において上端側に固定されている。下側堰板36は、外径がパイプ24の内径と同じサイズを有し、パイプ24の内壁面において上側堰板35の下方に一定の間隔(例えば10cmの間隔)をあけた位置に固定されている。
【0032】
各振れ止め金具38は、パイプ24の軸線方向と平行となるよう上側堰板35及び下側堰板36の外周側に固定されている。フロート板37は、上側堰板35と下側堰板36との間に挟みこまれた状態で配置され、そのフロート板37の縁部に各振れ止め金具38が挿通されている。具体的には、フロート板37の縁部には、その周方向に等角度間隔(120°の角度間隔)でタブ部37aが形成されており、そのタブ部37aに対応した位置に挿通穴37bが形成されている。このフロート板37における各挿通穴37bに各振れ止め金具38が挿通されており、フロート板37は、各振れ止め金具38に沿った上下方向(軸線方向)に移動するようになっている。
【0033】
このように構成した逆流防止部材23においては、パイプ24内の水位が上昇すると、図2(a)において破線で示されるように、その水位上昇に伴いフロート板37が浮上する。このとき、振れ止め金具38によって、フロート板37の横方向の振れが防止され、排水用貫通穴35aを塞ぐようにフロート板37が上方に案内される。そして、そのフロート板37の上面が上側堰板35の下面に当接して排水用貫通穴35aを塞ぐことにより止水される。なお、上側堰板35の下面においてフロート板37が接触する部分には、シール性を高めるためのゴム板39(シール部材)が張り合わされている。この構成により、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することが確実に防止される。
【0034】
また、各振れ止め金具38の下側にフロート板37を保持するための保持部38aが形成されており、水位の低下時には、この保持部38aにフロート板37の下面が当接することで、フロート板37の下方への移動が規制される。このとき、上側堰板35の排水用貫通穴35aから流入した雨水は、フロート板37と下側堰板36との隙間及び下側堰板36の排水用貫通穴36aを通してストレーナー25側に排水される。
【0035】
本実施の形態の雨水浸透桝11は、道路の路肩に埋設された既設雨水桝10(図3参照)を加工することで形成される。以下には、その既設雨水桝10を雨水浸透桝11に変化させるための加工装置について図4及び図5を用いて説明する。なお、図4は、加工装置40の側面図であり、図5は、加工装置40の正面図である。
【0036】
図4及び図5に示すように、本実施の形態における加工装置40は、本体フレーム41と、昇降装置42と、油圧モータ43と、油圧ユニット44とを備える。
【0037】
本体フレーム41は、その底部に設けられるベース部材46と、ベース部材46から垂直に立設された枠状のガイドフレーム47とを有する。ベース部材46の一方の端部には、本体フレーム41を移動させるための車輪48が設けられている。ベース部材46における車輪48の近傍には、本体フレーム41を水平に保つための水平調節機構49が設けられている。水平調節機構49は、ベース部材46を貫通するねじ穴に螺入されるボルト51と、そのボルト51の下端部に固定され、本体フレーム41を支える平板52とを備える。この水平調節機構49において、ボルト51を回すことにより、ベース部材46に対する平板52の突出量が変更され、本体フレーム41の水平度が調節される。
【0038】
ガイドフレーム47には、その前面側に突出する可動部材54が昇降自在に設けられている。また、ガイドフレーム47の背面側には、ガイドフレーム47の長手方向(上下方向)に沿って駆動チェーン55が設けられるとともに、その駆動チェーン55を介して可動部材54を昇降させるための操作ハンドル56が設けられている。本実施の形態では、可動部材54と駆動チェーン55と操作ハンドル56とにより昇降装置42が構成される。この昇降装置42において、操作ハンドル56を正回転させることで可動部材54が上昇し、操作ハンドル56を逆回転させることで可動部材54が下降する。
【0039】
さらに、可動部材54には、垂直方向に伸びる支柱58の上端部が連結され、その支柱58の下端部(先端部)に油圧モータ43が設けられている。この油圧モータ43は、高圧ホース61を介して油圧ユニット44に接続されており、その油圧ユニット44から所定圧力の作動油が供給されることで回転軸62を回転駆動する。この油圧モータ43における回転軸62の先端には、コンクリートを切り抜くための円形コンクリートカッター(回転切削工具)63が固定されている。なお、その回転軸62の先端には、円形コンクリートカッター63の他に、土壌を掘削するためのスクリューオーガーも装着可能になっている。
【0040】
本実施の形態では、油圧モータ43を支持する支柱58の途中に、その軸振れを防止する軸振れ防止金具65が設けられている。図6に示されるように、軸振れ防止金具65は、支柱58を挿入するための貫通穴を有する鉄板66と、油圧モータ43の回転軸62に直交する複数の方向(水平方向)に伸縮可能に設けられた複数のアーム部67と、各アーム部67の伸縮量を調節するための調節シャフト68とを備える。本実施の形態の軸振れ防止金具65では、桝本体12のコーナー部に対応して4つのアーム部67が設けられている(図7参照)。各アーム部67は、当接部材70と、先端が当接部材70に接続される2本の関節部材71とを備える。
【0041】
軸振れ防止金具65において、鉄板66は長尺のボルトとナットとで固定され、この鉄板66の四隅に設けた各穴部69に調節シャフト68の端部が挿入されている。調節シャフト68にはウォームが形成されており、その調節シャフト68の下端部はベアリング73を介して回転可能に固定されている。そして、この調節シャフト68に、アーム部67(関節部材71)の基端が固定されている。具体的には、アーム部67の一方(図6では上方)の関節部材71の端部が、軸方向に移動不能に固定されており、他方(図6では下方)の関節部材71の端部は、内ねじが形成され、調節シャフト68のウォームに嵌合された状態で軸方向に移動可能に固定されている。つまり、この調節シャフト68を回転させることで、下側の関節部材71の基端が調節シャフト68に沿って上下方向に移動する。ここで、調節シャフト68を回転させて下側の関節部材71の基端を最下端部に移動させると、関節部材71が軸方向と平行になり、アーム部67(当接部材70)が内側に収まる。また、図6及び図7において破線で示すように、調節シャフト68を回転させて下側の関節部材71の基端を上方に移動させると、その関節部材71が水平方向に徐々に起き上がり、各アーム部67(当接部材70)が回転軸62に直交する方向(水平方向)に伸びる。
【0042】
なお、本実施の形態では、各調節シャフト68の上端部に調節ツマミ75が設けられており、作業者がその調節ツマミ75を回すことで、調節シャフト68を容易に回転させることができるようになっている。
【0043】
次に、本実施の形態の加工装置40を使用して既設雨水桝10を雨水浸透桝11に変化させるための雨水浸透桝化工法について説明する。
【0044】
先ず、加工前準備工程において、既設雨水桝10のグレーチング蓋18を開け、建設工事用の掃除機を使用して、桝本体12内の雨水や泥などを除去する。そして、桝本体12の底が確認できる状態にした後、加工装置40を桝本体12の上部に配置させる。このとき、加工装置40のベース部材46において、車輪48のない他方の端部を桝本体12の外側に配設された凸部(例えば、図4に示す角材53)に載せる。その状態で車輪48側の水平調節機構49を調節することにより、平板52の突出量を変更して本体フレーム41を水平に保つようにする。
【0045】
続く回転軸固定工程では、加工装置40の操作ハンドル56を回すことで可動部材54及び支柱58を下げ、その支柱58に設けられている軸振れ防止金具65及び油圧モータ43を桝本体12内部に配置させる。その状態で、軸振れ防止金具65の調節シャフト68を回して各アーム部67の伸縮量を調節することで、各アーム部67の当接部材70を桝本体12のコーナー部に当接させる(図7参照)。この軸振れ防止金具65によって、油圧モータ43の回転軸62が水平方向にブレないように固定される。
【0046】
その後、穴あけ工程では、油圧ユニット44を作動させ、油圧ユニット44から油圧モータ43に作動油を供給することで、その油圧モータ43を駆動して円形コンクリートカッター63を回転させる。このとき、加工装置40の操作ハンドル56を回して、可動部材54及び支柱58を介して油圧モータ43を下げる。そして、図8(a)に示されるように、円形コンクリートカッター63を桝本体12の底面に当接させるとともに、上方から所定の力を円形コンクリートカッター63に作用させる。その結果、図8(b)に示されるように、桝本体12の底面が切削され円形の貫通穴19が形成される。なおこのとき、円形コンクリートカッター63による切削部分に冷却水が放水され、円形コンクリートカッター63に生じる摩擦熱が冷却される。
【0047】
この貫通穴19の形成後、油圧モータ43の回転を一旦停止し、回転軸62の先端に装着されている円形コンクリートカッター63をスクリューオーガーに取り替える。その後、図8(c)に示されるように、油圧モータ43を駆動してスクリューオーガー64を回転させ、そのスクリューオーガー64によって、貫通穴19の下方にある土20を掘削して浸透部材収容穴21を形成する。この際、スクリューオーガー64によって掘削された土20は、建設工事用の掃除機等によって除去される。また、浸透部材収容穴21の形成後、加工装置40を桝本体12の上部から邪魔にならない位置に移動させる。
【0048】
部材配設工程では、図8(d)に示すように、内部にストレーナー25と逆流防止部材23とを装着したパイプ24を浸透部材収容穴21内に縦置きで配設する。また、本実施の形態では、この部材配設工程を行うのと同時にシール工程を行う。すなわち、パイプ24の上端部の凹溝24aにOリング28を配設するとともに、その上方に帯板29を巻きつける。その後、パイプ24を貫通穴19の上方から浸透部材収容穴21内に挿入配置する。これにより、帯板29が貫通穴19の縁部に当接することでパイプ24が固定されるとともに、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間にOリング28が配置されてその隙間がシールされる。その結果、桝本体12の底部に浸透部材22及び逆流防止部材23が装着される。そして、図1に示されるように、桝本体12の上部にグレーチング蓋18を装着することで、既設雨水桝10を雨水浸透桝11に変化させるための作業が完了する。
【0049】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0050】
(1)本実施の形態の雨水浸透桝11では、桝本体12の底部に形成された貫通穴19の下方に浸透部材収容穴21が設けられ、その浸透部材収容穴21内に浸透部材22が収容されている。この浸透部材22は、周面に複数の透孔26を有するパイプ24と、そのパイプ24内に配置される浸透性のストレーナー25とを含んで構成されているので、雨水の浸透面積を十分に確保することができ、桝本体12に流入した雨水を地中に効率よく浸透させることができる。また、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間にOリング28が配置されることでその隙間がシールされるとともに、帯板29が配置さことでパイプ24の脱落が防止される。これにより、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間を通じた桝本体12への地下水の浸水を確実に防止できる。さらに、浸透部材22を構成するパイプ24の上端部に逆流防止部材23が設けられているので、パイプ24を通過して浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを防止できる。その結果、雨水本管16への排水量が増えて、その本管16の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。また、雨水浸透桝11では、逆流防止部材23を設けることにより、浸透部材22側に流入する水量を調整することができる。これにより、雨水の流入の作用によってパイプ24の外周近辺の土砂が荒らされることを抑止でき、桝本体12の陥没を防止することができる。
【0051】
(2)本実施の形態の逆流防止部材23は、フロート部材として板状のフロート板37を備えるので、コンパクトに構成することができる。また、振れ止め金具38を設けることによって、上側堰板35の排水用貫通穴35aを塞ぐようにフロート板37を確実に案内することができる。さらに、上側堰板35におけるフロート板37との接触部には、シール性を高めるためのゴム板39が設けられているので、より確実に止水することができる。
【0052】
(3)本実施の形態の場合、既設雨水桝10の桝本体12を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴19が形成され、その貫通穴19の下方に設けられた浸透部材収容穴21内に浸透部材22及び逆流防止部材23が配設される。このようにすれば、既設雨水桝10を地中から掘り起こすことなく、その雨水桝10を雨水浸透桝11に変更することができる。従って、新規の雨水浸透桝に取り替える場合と比較して、簡単かつ迅速に雨水浸透桝11を施工することができ、その施工コストを半分以下のコストに抑えることができる。
【0053】
(4)本実施の形態の浸透部材22では、パイプ24の透孔26よりも細かい複数の細孔31を有するストレーナー25がパイプ24内に設けられているので、雨水に含まれるゴミ(砂利や葉っぱなど)がパイプ24内部に入り込むことを防止することができる。従って、パイプ24の透孔26の目詰まりなどによる雨水の浸透能力の低下を抑えることができる。また、ストレーナー25は、芯棒32に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成され、その両端には、樹脂繊維を挟み込むように薄い金属板33が固定されている。これにより、樹脂繊維の形状を保持することができ、ひいては、ストレーナー25の長寿命化を図ることができる。さらに、その金属板33の直径は、樹脂繊維の部分よりも若干小さくなっているので、雨水は、パイプ24と金属板33との間から浸入し、パイプ24の内壁面に沿って流下してストレーナー25に浸透する。これにより、雨水を地中に効率よく浸透させることができる。また、金属板33がパイプ24に接触しないため、ストレーナー25の着脱を容易に行うことができる。
【0054】
(5)本実施の形態の加工装置40では、軸振れ防止金具65の各アーム部67を桝本体12のコーナー部に当接させることで、回転軸62のブレを防止するようにした。このようにすれば、例えばアンカーボルトで固定する場合のように桝本体12やその周辺の道路に傷をつけることがなく、回転軸62のブレを確実に防止することができる。また、軸振れ防止金具65では、調節シャフト68を回すことで各アーム部67の伸縮量を調節できるため、桝本体12のサイズが異なる場合でも、各アーム部67の当接部材70を桝本体12に確実に当接させることができる。従って、回転軸62のブレを確実に防止することができ、桝本体12の底面に貫通穴19を精度良く形成することができる。
【0055】
(6)本実施の形態の加工装置40は、水平調節機構49によって本体フレーム41を水平に保つことができるので、桝本体12の底面に貫通穴19をより正確に形成することができる。
【0056】
(7)本実施の形態の加工装置40では、本体フレーム41のベース部材46に車輪48が設けられているので、車などで搬送した加工装置40を道路脇の作業現場まで簡単に移動させることができる。
【0057】
(8)本実施の形態の加工装置40では、駆動装置として油圧モータ43を用いたので、電動モータを用いる場合のように雨水や冷却水などによる漏電対策を施す必要がない。
[第2の実施の形態]
【0058】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、逆流防止部材23の構成が第1の実施の形態と異なる。その逆流防止部材23の構成について、図9を用いて詳述する。
【0059】
図9に示されるように、本実施の形態の逆流防止部材23は、パイプ24の上端部に着脱可能に設けられている。この逆流防止部材23は、筒状の逆流防止部材本体81と、中央部に雨水を排水するための排水用貫通穴82aが形成された円板状の堰板82と、水よりも比重が小さい材料(例えば、プラスチック薄板)用いて形成された半球形のフロート部材83と、フロート部材83を固定するための振れ止め金具84と、フロート部材83の落下を防止するための落下防止板85とを備える。
【0060】
逆流防止部材本体81は、その外径がパイプ24の内径よりも若干小さく、パイプ24の上端部に挿入配置されている。逆流防止部材本体81の外周面において、上側及び下側の二箇所にはその周方向に沿って凹溝81aが切られており、その凹溝81aにはゴム製のOリング86が配設されている。これらOリング86によって、逆流防止部材本体81の外周面とパイプ24の内周面との隙間がシールされるとともに、逆流防止部材本体81が落下しないようにパイプ24の上端部に固定されている。
【0061】
堰板82は、外径が逆流防止部材本体81の内径と同じサイズを有し、逆流防止部材本体81の内壁面において上端側に固定されている。落下防止板85は、フロート部材83の半分程度の幅を有する長方形状に形成された板材であって、その基端部が逆流防止部材本体81の内壁面の下端側に固定されている。
【0062】
フロート部材83は、その球面を上方に向けた状態で落下防止板85上に配置される。また、フロート部材83は、振れ止め金具84により逆流防止部材本体81の内壁面に固定されており、その固定部を支点として上下方向に回動するようになっている。このフロート部材83と振れ止め金具84との接続部は、フロート部材83の上下方向の移動に伴って回動可能に設けられている。
【0063】
さらに、本実施の形態では、ストレーナー25の一方(図9では上方)の金属板33に着脱用のフック87が設けられており、作業用の棒などを利用してこのフック87に引っ掛けることにより、パイプ24に対するストレーナー25の着脱を容易に行うことができるようになっている。
【0064】
パイプ24の上端部には、第1の実施の形態と同様に、シール部材としてのOリング28及び帯板29が配置されており、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間がシールされるとともに、パイプ24の落下が防止されている。また、パイプ24の開口を塞ぐように目皿30が配設されている。本実施の形態では、この目皿30に逆流防止部材本体81が連結されており、目皿30とともに逆流防止部材23がパイプ24から着脱されるようになっている。
【0065】
本実施の形態の逆流防止部材23において、パイプ24内の水位の上昇に伴いフロート部材83が浮上する。このとき、振れ止め金具84によって、フロート部材83の横方向の振れが防止され、排水用貫通穴82aを塞ぐようにフロート部材83が上方に案内される。そして、そのフロート部材83の球面で堰板82の排水用貫通穴82aを塞ぐことにより止水される。この場合、フロート部材83の浮力を十分に確保することができ、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。
【0066】
また、水位の低下時には、フロート部材83が下方に移動して落下防止板85上で保持される。このとき、堰板82の排水用貫通穴82aから流入した雨水は、フロート部材83(落下防止板85)の下方の隙間を通してストレーナー25側に排水され、浸透部材22により地中に浸透される。
【0067】
本実施の形態の逆流防止部材23は、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けられている。従って、長期間使用した雨水浸透桝11をメンテナンスする場合、桝本体12の底部に溜まった泥やゴミを除去した後、目皿30とともに逆流防止部材23をパイプ24から取り外すことができ、さらに、作業用の棒をフック87に引っ掛けてストレーナー25をパイプ24から抜き取ることができる。そして、そのストレーナー25を水洗浄して内部に溜まった泥などを除去した後、再びパイプ24内に挿入するとともに逆流防止部材23をパイプ24の上端部に装着することができる。なお、このメンテナンス時には、新品のストレーナー25に交換してもよい。このようなメンテナンス作業を行うことで、雨水浸透桝11の浸透能力を施工時の状態に回復させることができる。
[第3の実施の形態]
【0068】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を説明する。本実施の形態では、逆流防止部材23の構成が第1の実施の形態と異なる。その逆流防止部材23の構成について、図10を用いて詳述する。
【0069】
図10に示されるように、本実施の形態の逆流防止部材23も、第2の実施の形態と同様に、パイプ24の上端部に着脱可能に設けられている。この逆流防止部材23は、筒状の逆流防止部材本体91と、複数の排水用貫通穴92aが形成された円板状の堰板92と、水よりも比重が小さい材料(例えば、樹脂材料)用いて形成された独楽形のフロート部材93と、フロート部材93の落下を防止するための落下防止部材94とを備えている。
【0070】
逆流防止部材本体91は、その外径がパイプ24の内径よりも若干小さく、パイプ24の上端部に挿入配置されている。逆流防止部材本体91の外周面において、上側及び下側の二箇所にはその周方向に沿って凹溝91aが切られており、その凹溝91aにはゴム製のOリング96が配設されている。これらOリング96によって、逆流防止部材本体91の外周面とパイプ24の内周面との隙間がシールされるとともに、逆流防止部材本体91が落下しないようにパイプ24の上端部に固定されている。
【0071】
堰板92は、外径が逆流防止部材本体91の内径と同じサイズを有するリング部92bと、そのリング部92bの内側に形成される十字部92cとを備え、リング部92bと十字部92cとの間に扇状の排水用貫通穴92aが形成されている。そして、この堰板92が逆流防止部材本体91の内壁面における上端側に固定されている。
【0072】
フロート部材93は、その上面中央に軸部93aが形成されており、堰板92の中央(十字部の中心)に形成されたガイド穴92dにその軸部93aが挿通された状態で落下防止部材94上に配置されている。このフロート部材93を支持する落下防止部材94は、逆流防止部材本体91の内壁面において、堰板92の下方となる位置にて径方向の内側に向けて突設されている。なお、本実施の形態では、フロート部材93を確実に支持するために、落下防止部材94は、逆流防止部材本体91の内壁面において、その周方向に等角度間隔(90°の角度間隔)となる四箇所に設けられている。また、この落下防止部材94の先端側は、フロート部材93の下面の形状に合わせてテーパ状に形成されている。
【0073】
さらに、本実施の形態でも、第2の実施の形態と同様にストレーナー25の上方の金属板33に着脱用のフック87が設けられており、作業用の棒をこのフック87に引っ掛けることにより、パイプ24に対するストレーナー25の着脱を容易に行うことができるようになっている。
【0074】
パイプ24の上端部には、シール部材としてのOリング28及び帯板29が配置されており、貫通穴19の内周面とパイプ24の外周面との隙間がシールされるとともに、パイプ24の落下が防止される。また、パイプ24の開口を塞ぐように目皿30が配設されている。本実施の形態でも、この目皿30に逆流防止部材本体91が連結され、目皿30とともに逆流防止部材23がパイプ24から着脱できるようになっている。
【0075】
本実施の形態の逆流防止部材23において、パイプ24内の水位の上昇に伴いフロート部材93が浮上する。このとき、フロート部材93の軸部93aが堰板92のガイド穴92dに挿通されているので、フロート部材93の横方向の振れが防止され、フロート部材93が上方に確実に案内される。そして、そのフロート部材93の上面が堰板92の各排水用貫通穴92aを塞ぐことにより止水される。この場合、フロート部材93の浮力を十分に確保することができ、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを確実に防止できる。さらに、本実施の形態では、堰板92の下面においてフロート部材93が接触する部分には、ゴム板97が張り合わされている。このゴム板97により、シール性を高めることができ、より確実に止水することができる。
【0076】
また、水位の低下時には、フロート部材93が下方に移動して落下防止部材94で保持される。このとき、堰板92の排水用貫通穴92aから流入した雨水は、フロート部材93の下方の隙間を通してストレーナー25側に排水され、浸透部材22により地中に浸透される。
【0077】
本実施の形態の逆流防止部材23も、第2の実施の形態と同様に、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けられている。従って、長期間使用した雨水浸透桝11をメンテナンスする場合、桝本体12の底部に溜まった泥やゴミを除去した後、目皿30とともに逆流防止部材23をパイプ24から取り外すことができ、さらに、作業用の棒をフック87に引っ掛けてストレーナー25をパイプ24から抜き取ることができる。そして、そのストレーナー25を水洗浄して内部に溜まった泥などを除去した後、再びパイプ24内に挿入するとともに逆流防止部材23をパイプ24の上端部に装着することができる。なお、このメンテナンス時には、新品のストレーナー25に交換してもよい。このようなメンテナンス作業を行うことで、雨水浸透桝11の浸透能力を施工時の状態に回復させることができる。
【0078】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0079】
・上記第1の実施の形態では、逆流防止部材23を浸透部材22と一体的に設けるものであったが、第2及び第3の実施の形態における逆流防止部材23のように、筒状の逆流防止部材本体を用いた二重構造として、浸透部材22に対して着脱可能に設けてもよい。また、図11に示されるように、ねじ止めによって逆流防止部材23を浸透部材22に着脱可能に設けてもよい。具体的には、図11の逆流防止部材23は、第1の実施の形態の構成部材(上側堰板35及び下側堰板36、フロート板37、振れ止め金具38)に加え、筒状の逆流防止部材本体101を備えている。
【0080】
逆流防止部材本体101は、その下端部に雄ねじ101aが形成されており、パイプ24の上端部に形成された雌ねじ24bに螺着される。本実施の形態のパイプ24の上端部における外周面は、シール部材102(例えば、コンクリートや接着剤など)を用いて貫通穴19の内周面に固定されている。また、逆流防止部材本体101の外周面にはその周方向に沿って凹溝101bが切られており、その凹溝101bにはゴム製のOリング103が配設されている。このOリング103により、貫通穴19の内周面と逆流防止部材本体101の外周面との隙間がシールされる。さらに、逆流防止部材23において、上側堰板35は逆流防止部材本体101の内壁面に固定され、下側堰板36は振れ止め金具38を介して上側堰板35に固定されている。
【0081】
このように逆流防止部材23を構成すれば、第1の実施の形態と同様に、浸透部材22から桝本体12に雨水または地下水が逆流することを防止できる。また、逆流防止部材23は、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けられているので、雨水浸透桝11のメンテナンス(ストレーナー25の洗浄作業や交換作業)を容易に行うことができる。なお、ねじ止め以外の連結手段(例えば、フックなど)を用いて逆流防止部材23を浸透部材22に着脱可能に設けるように構成してもよい。
【0082】
・上記第2の実施の形態や第3の実施の形態の逆流防止部材23は、浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けたが、逆流防止部材本体81,91を省略して、第1の実施の形態と同様にパイプ24に一体的に設けてもよい。このようにすれば、構成が簡素化されるため、逆流防止部材23の製造コストを抑えることができる。
【0083】
・上記第2の実施の形態や第3の実施の形態のように、逆流防止部材23を浸透部材22のパイプ24に対して着脱可能に設けた場合、逆流防止部材本体81,91とストレーナー25とをワイヤ111などの連結部材(図12参照)を用いて接続してもよい。このようにすれば、雨水浸透桝11のメンテナンス時において、パイプ24から逆流防止部材23とストレーナー25とを同時に取り出すことができ、作業効率を向上させることができる。
【0084】
・上記各実施の形態では、フロート部材37,83,93の形状は、板状、半球形、独楽形であったが、これに限定されるものではなく、例えば、球体であってもよい。さらに、逆流防止部材23は、フロート部材37,83,93を用いて構成する必要はなく、例えば、開閉可能なフラップ(蓋部材)を用いて構成してもよい。この場合、桝本体12に雨水がたまり、その重量でフラップを開放して浸透部材22側に雨水を落とし、雨水が少なく軽くなったときにはフラップを閉じるよう逆流防止部材23を構成する。
【0085】
・上記各実施の形態では、芯棒32に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成したストレーナー25をフィルタ材として用いたが、これに限定されるものではない。浸透部材のフィルタ材としては、例えば、砕石、ガラス球、糸状膜、布膜等の透水性材料を用いてもよい。
【0086】
・上記実施の形態では、円形コンクリートカッター63を用いて桝本体12の底面に貫通穴19を形成したが、それ以外の切削工具(例えば、ハンマーなどの工具)を用いてもよい。また、スクリューオーガー64の代わりに、ダブルスコップなどを用いて浸透部材収容穴21を形成してもよい。さらに、円形コンクリートカッターの内側に掘削用のドリルを納めた回転切削工具を用いて、貫通穴19と浸透部材収容穴21とを形成してもよい。
【0087】
・上記実施の形態では、道路の路肩に埋設された既設雨水桝10を加工するものであったが、これ以外に駐車場などの舗装された場所や各家庭の庭に埋設された既設雨水桝10を加工して雨水浸透桝11に変化させてもよい。勿論、既設雨水桝10を加工して形成した雨水浸透桝11に限定されるものではなく、工場で製造した新品の雨水浸透桝11を使用して、道路の路肩や各家庭の庭に埋設してもよい。
【0088】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0089】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記逆流防止部材は、前記浸透部材の上部に一体的に設けられることを特徴とする雨水浸透桝。
【0090】
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記逆流防止部材は、前記浸透部材の上部に着脱可能に設けられることを特徴とする雨水浸透桝。
【0091】
(3)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記フィルタ材は、前記複数の透孔よりも細かい複数の細孔を有し、芯棒に樹脂繊維を巻きつけることで円柱状に形成され、前記筒体内に挿抜可能に配置されるものであり、前記浸透部材は、前記樹脂繊維を挟み込むように前記芯棒の両端に固定され、前記樹脂繊維の部分よりも直径が若干小さくなっている金属板と、上端側の金属板に設けられた着脱用のフックとをさらに含んで構成されることを特徴とする雨水浸透桝。
【0092】
(4)技術的思想(2)または(3)において、前記フィルタ材と前記逆流防止部材とを連結するための連結部材を備え、前記貫通穴の下方にある浸透部材収容穴内に前記筒体が縦置きで配設され、前記筒体内に前記フィルタ材と前記逆流防止部材とが挿入配置されていることを特徴とする雨水浸透桝。
【0093】
(5)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記逆流防止部材における上端部には、前記雨水に含まれる異物を除去するための異物除去部が設けられることを特徴とする雨水浸透桝。
【0094】
(6)請求項2乃至4のいずれか1項において、前記堰板とフロート部材との接触部に、シール性を高めるためのシール部材を設けたことを特徴とする雨水浸透桝。
【0095】
(7)請求項2または3において、前記逆流防止部材は、横方向の振れを防止しつつ上下方向に前記フロート板を案内するための振れ止め部材をさらに備えたことを特徴とする雨水浸透桝。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の雨水浸透桝を示す断面図。
【図2】(a)は浸透部材及び逆流防止部材を示す縦断面図、(b)は逆流防止部材を示す横断面図。
【図3】既設雨水桝を示す断面図。
【図4】加工装置を示す側面図。
【図5】加工装置を示す正面図。
【図6】軸振れ防止金具を示す平面図。
【図7】軸振れ防止金具による固定方法を示す説明図。
【図8】(a)〜(d)は雨水浸透桝化工法を説明するための断面図。
【図9】(a)は第2の実施の形態の逆流防止部材を示す縦断面図、(b)はその逆流防止部材を示す横断面図。
【図10】(a)は第3の実施の形態の逆流防止部材を示す縦断面図、(b)はその逆流防止部材を示す横断面図。
【図11】別の実施の形態の逆流防止部材を示す断面図。
【図12】別の実施の形態の逆流防止部材を示す断面図。
【符号の説明】
【0097】
10…既設雨水桝
11…雨水浸透桝
12…桝本体
15…排出管
16…雨水本管
19…貫通穴
20…土
21…浸透部材収容穴
22…浸透部材
23…逆流防止部材
24…筒体としてのパイプ
25…フィルタ材としてのストレーナー
26…透孔
28…シール部材としてのOリング
29…シール部材としての帯板
35…堰板としての上側堰板
35a…排水用貫通穴
37…フロート部材としてのフロート板
81,91,101…逆流防止部材本体
82,92…堰板
82a,92a…排水用貫通穴
83,93…フロート部材
92d…ガイド穴
93a…軸部
102…シール部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に貫通穴が形成された有底筒状の桝本体と、
前記桝本体の側壁に設けられ雨水本管と連結された排出管と、
前記貫通穴の下方に設けられた浸透部材収容穴内に収容され周面に複数の透孔を有する筒体と、前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材とを含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材と、
前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間に配置されることで、前記隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材と、
前記筒体の上端部に設けられ、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材と
を備えたことを特徴とする雨水浸透桝。
【請求項2】
前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された板状のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝。
【請求項3】
前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された半球形のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の球面側で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝。
【請求項4】
前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された独楽形のフロート部材とを備え、前記フロート部材の上面中央に形成された軸部を前記堰板の中央に形成されたガイド穴に挿通した状態で、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝。
【請求項5】
前記逆流防止部材は、前記貫通穴内に位置する前記筒体の上端に着脱可能に連結される筒状の逆流防止部材本体を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の雨水浸透桝。
【請求項6】
地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に変化させる工法であって、
前記既設雨水桝を構成する有底筒状の桝本体を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴を形成するとともに、その貫通穴の下方にある土を掘削して浸透部材収容穴を形成する穴あけ工程と、
周面に複数の透孔を有する筒体及び前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材を含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材を前記浸透部材収容穴内に配設するとともに、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材を前記筒体の上端部に配設する部材配設工程と、
前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材を設けるシール工程と
を含むことを特徴とする既設雨水桝の雨水浸透桝化工法。
【請求項1】
底部に貫通穴が形成された有底筒状の桝本体と、
前記桝本体の側壁に設けられ雨水本管と連結された排出管と、
前記貫通穴の下方に設けられた浸透部材収容穴内に収容され周面に複数の透孔を有する筒体と、前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材とを含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材と、
前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間に配置されることで、前記隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材と、
前記筒体の上端部に設けられ、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材と
を備えたことを特徴とする雨水浸透桝。
【請求項2】
前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された板状のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝。
【請求項3】
前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された半球形のフロート部材とを備え、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の球面側で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝。
【請求項4】
前記逆流防止部材は、前記桝本体に流入した雨水を前記浸透部材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記堰板の下方に配置され、水よりも比重が小さい材料を用いて形成された独楽形のフロート部材とを備え、前記フロート部材の上面中央に形成された軸部を前記堰板の中央に形成されたガイド穴に挿通した状態で、水位の上昇により前記フロート部材を浮上させ、そのフロート部材の上面で前記堰板の貫通穴を塞ぐことにより止水することを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝。
【請求項5】
前記逆流防止部材は、前記貫通穴内に位置する前記筒体の上端に着脱可能に連結される筒状の逆流防止部材本体を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の雨水浸透桝。
【請求項6】
地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に変化させる工法であって、
前記既設雨水桝を構成する有底筒状の桝本体を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴を形成するとともに、その貫通穴の下方にある土を掘削して浸透部材収容穴を形成する穴あけ工程と、
周面に複数の透孔を有する筒体及び前記筒体内に配置される浸透性のフィルタ材を含んで構成され、前記桝本体に流入した雨水を地中に浸透させる浸透部材を前記浸透部材収容穴内に配設するとともに、前記筒体内を通過して前記浸透部材から前記桝本体に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材を前記筒体の上端部に配設する部材配設工程と、
前記貫通穴の内周面と前記筒体の外周面との隙間をシールしかつ前記筒体の脱落を防止するシール部材を設けるシール工程と
を含むことを特徴とする既設雨水桝の雨水浸透桝化工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−214859(P2008−214859A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49365(P2007−49365)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(502278390)株式会社山越 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(502278390)株式会社山越 (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]