説明

雨水浸透桝用フィルタ、及び雨水浸透桝のメンテナンス方法

【課題】メンテナンスが容易であり浸透能力を十分に確保することができる雨水浸透桝用フィルタを提供すること。
【解決手段】既設雨水桝を構成する有底筒状の桝本体12を地中に埋設したままの状態で加工して、その底部に貫通穴19を形成する。貫通穴19に網目状円筒フィルタ13を装着することにより、既設雨水桝を雨水浸透桝11に改変する。網目状円筒フィルタ13は、下部フィルタ材31と、上部フィルタ材32と、各フィルタ材31,32を接続する継手部材33とにより構成される。下部フィルタ材31は、網目構造を有する網状円筒管を用いて形成され、上部フィルタ材32は、下部フィルタ材31よりも目の粗い網目構造を有する網状円筒管を用いて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に改変するときに使用する雨水浸透桝用フィルタ、及び雨水浸透桝のメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市街地においては、コンクリートジャングルのように都市化が進み、地表面がコンクリートやアスファルトで舗装されている。その結果、雨水の浸透域が減少し、雨水による地表面での流出量が増大してきている。そのため、大雨時において雨水管渠などの排水設備に大きな負荷がかかり、都市洪水の原因となっている。また、下水管渠や雨水管渠の整備により、雨水が地中に浸透しないため、河川に流入する地下水が減少している。これにより、河川の自然浄化能力も失われつつあり、河川の水質汚濁などの原因となっている。
【0003】
この対策として、道路や駐車場などの舗装路に降った雨水を地中に浸透させる雨水浸透桝が開発され、道路や駐車場の側溝部分に設置されている。また、河川や湖の浄化が必要な地域では、各家庭の敷地内において屋根などに降った雨水を地中に浸透させるために雨水浸透桝を設置することが自治体により推奨されており、その雨水浸透桝の設置に対して補助金を交付することで雨水浸透桝の普及が図られている。
【0004】
ところで、従来の市街地においては、桝本体に浸透孔が設けられていない雨水桝が数多く設置されている。都市洪水の回避や河川などの浄化を目的として、それら雨水桝を浸透桝に置き換える場合、既設の雨水桝を舗装路の地中から取り除き、新たな浸透桝を設置する必要があるため、取替えコストが嵩んでしまう。また、道路の補修・改修工事の一部として浸透桝の設置工事を行うといった現状を考えると、浸透桝の施工数量が限られることから、浸透桝の製造コストも高くなる。
【0005】
このため、近年では、地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に改変する技術が検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。具体的には、既設雨水桝の底部に貫通穴を形成し、その貫通穴の下方に浸透部材(雨水浸透桝用フィルタ)を設置している。特許文献1において、浸透部材は、円筒状のガイドパイプとそのパイプ内に充填される樹脂製のフィルタ材とから構成されている。また、特許文献2では、浸透部材は、桝底部の貫通穴から下向きに形成された孔内に充填される砕石と、その砕石をくるむように配設された浸透シートとから構成されている。さらに、特許文献2では、桝底部の貫通穴から上向きに浸透筒が立設されており、その浸透筒の上口部を覆うようにフィルタが配設されている。
【特許文献1】特許第3932053号公報
【特許文献2】特許第4032396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の雨水浸透桝では、長期間の使用により落葉、ゴミ、土砂等が浸透桝の底部に堆積すると、雨水が浸透部材に流入し難くなり、浸透能力が減少してしまう。また、フィルタ材が目詰まりした場合、そのフィルタ材をガイドパイプから取り出して洗浄したり交換したりする必要があるため、その作業に手間が掛かってしまう。また、新品のフィルタ材に交換する場合、使用済みのフィルタ材がゴミとして廃棄されるため、その廃棄処理にコストが掛かる。
【0007】
特許文献2の浸透桝は、桝内に立設される浸透筒の上口部から雨水を取り込み貫通孔の下方にある浸透部材を通して雨水を浸透させる構成であるため、浸透筒の上口部まで水位が上がらないと、浸透効果を得ることができない。また、特許文献2の浸透部材は、砕石と浸透シートとから構成されているため、目詰まりが生じたときに新品のものに交換することが困難であり、さらに、洗浄した場合でも浸透能力を十分に回復させることができない。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンスが容易であり浸透能力を十分に確保することができる雨水浸透桝用フィルタを提供することにある。また、別の目的は、雨水浸透桝用フィルタの浸透能力を迅速かつ確実に回復させることができる雨水浸透桝のメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に改変するときに使用する雨水浸透桝用フィルタであって、前記既設雨水桝の底部に形成された貫通穴の下方に突出するよう配置され、底蓋を有し網目状かつ中空筒状の下部フィルタ材と、前記貫通穴の上方に突出するよう配置され、上蓋を有しかつ周面に複数の浸透孔が形成された中空筒状の上部フィルタ材と、前記貫通穴に嵌め込んだ状態で固定され、前記下部フィルタ材と前記上部フィルタ材とを接続するための継手部材とを備えたことを特徴とする雨水浸透桝用フィルタをその要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、従来技術のようにガイドパイプ内にフィルタ材を充填する構成ではなく、フィルタ全体が中空状になるため、フィルタ洗浄時の作業を軽減することができる。また、従来のフィルタ交換時のように、フィルタ材がゴミとして廃棄されることもないため、環境性やコスト性にも優れている。さらに、雨水浸透桝内に上部フィルタ材が突出しているので、雨水浸透桝の底部に落ち葉、ゴミ、土砂などが堆積した場合でも、上部フィルタ材の側面からフィルタ内に雨水を流入させることができ、浸透能力を十分に確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記下部フィルタ材は、網目構造を有する網状円筒管を用いて形成され、前記上部フィルタ材は、前記下部フィルタ材よりも目の粗い網目構造を有する網状円筒管を用いて形成されていることをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、下部フィルタ材は、網目の細かい網状円筒管を用いて形成されているので、十分な強度を確保することができる。また、上部フィルタ材は網目の粗い網状円筒管を用いて形成されているので、比較的サイズの大きな落ち葉やゴミなどがフィルタ内に入り込むことを防止できるとともに、フィルタ内に雨水を確実に流入させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記上部フィルタ材は、前記継手部材に対して着脱可能に設けられていることをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、上部フィルタ材が継手部材に対して着脱可能に設けられているので、雨水浸透桝用フィルタの使用によって各フィルタ材が目詰まりした場合、上部フィルタ材を取り外すことにより、各フィルタ材の洗浄作業を容易に行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記上部フィルタ材は、その上端に径が大きな拡径部を有することをその要旨とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、上部フィルタ材の上端に拡径部が形成されているので、着脱工具などを用いてその拡径部をつまむ際に着脱工具が引っ掛かりやすくなり、上部フィルタ材の着脱を容易にかつ落とすことなく行うことができる。しかも、この形状であると、上部フィルタ材の側面上端部に凸部が生じることで、側面に落ち葉やゴミなどが付着しにくくなる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記継手部材の内側に設けられ、前記下部フィルタ材を通過して前記上部フィルタ材側に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材を備えたことをその要旨とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、継手部材の内側に逆流防止部材を設けることにより、下部フィルタ材を通過して上部フィルタ材側に雨水または地下水が逆流することを防止できる。その結果、雨水浸透桝に接続されている雨水本管への排水量が増えてその本管の処理負荷が増大するといった問題を回避することができる。従って、逆流防止部材を有する雨水浸透桝用フィルタを用いることにより、地下水位が変動する場所でも、既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に改変することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記逆流防止部材は、前記既設雨水桝に流入した雨水を上部フィルタ材側から下部フィルタ材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記排水用貫通穴を開閉するための弁体と、前記弁体を作動させるための水膨張性ゴムとを備え、前記水膨張性ゴムは、水に浸かると膨張して前記弁体を押し上げることにより前記排水用貫通穴を閉状態とする一方、乾燥すると収縮して前記弁体を下降させることにより前記排水用貫通穴を開状態とすることをその要旨とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、降雨時などにおいて浸透桝の底部(継手部材の位置)まで地下水位が上がり、逆流防止部材の水膨張性ゴムが水に浸かると、その水膨張性ゴムが膨張して弁体を押し上げる。そして、その弁体により、排水用貫通穴が閉状態とされ、地下水または雨水が下部フィルタ材側から上部フィルタ材側に逆流することが防止される。このような逆流防止部材を用いれば、フロートの浮力で弁体を作動させるものと比較して、弁体を確実に押し上げることができ、排水用貫通穴を確実に密閉できる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の雨水浸透桝用フィルタが装着された雨水浸透桝をメンテナンスする方法であって、前記継手部材から前記上部フィルタ材を取り外す工程と、前記下部フィルタ材の内側から高圧洗浄水を噴射することにより下部フィルタ材を洗浄した後、その下部フィルタ材の底部に残存している堆積物を吸引除去する工程とを含むことを特徴とする雨水浸透桝のメンテナンス方法をその要旨とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、雨水浸透桝用フィルタにおいて、継手部材から上部フィルタ材が取り外され、下部フィルタ材の内側から高圧洗浄水を噴射することにより下部フィルタ材が効率よく洗浄される。その後、下部フィルタ材の底部に残存している堆積物が吸引除去される。また、継手部材から取り外した上部フィルタ材についても洗浄することにより、その上部フィルタ材に付着しているゴミ等が除去される。このようにすれば、雨水浸透桝用フィルタの浸透能力を迅速かつ確実に回復させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、メンテナンスが容易で浸透能力を十分に確保することができる雨水浸透桝用フィルタを提供することができる。また、請求項7に記載の発明によると、雨水浸透桝用フィルタの浸透能力を迅速かつ確実に回復させることができる雨水浸透桝のメンテナンス方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1の実施の形態]
【0025】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態の雨水浸透桝11は、有底の四角筒状に形成されたコンクリート製の桝本体12と、桝本体12の底部に装着された網目状円筒フィルタ13(雨水浸透桝用フィルタ)とを備える。桝本体12は、例えば、縦横30cm、深さ90cmのサイズを有する。この桝本体12の側壁には排出管15が設けられおり、排出管15は雨水本管16に接続されている。具体的には、雨水本管16は、舗装した道路の中央に設けられ、桝本体12は、道路両脇の路肩の地中に設けられる。また、桝本体12の上部の開口部17には、簀子状の上蓋(グレーチング蓋)18が装着され、路面に降った雨水はそのグレーチング蓋18の隙間から桝本体12内部に流入されて一旦蓄えられる。そして、桝本体12に蓄えられた雨水は、排出管15を介して下流側の雨水本管16に排出され、さらにその雨水本管16を介して河川に流される。
【0027】
桝本体12における底面中央には、円形の貫通穴19が形成されている。そして、その貫通穴19に下方には、土20を掘削することでフィルタ収容穴21が形成され、そのフィルタ収容穴21内に網目状円筒フィルタ13が配設されている。網目状円筒フィルタ13は、貫通穴19の下方に突出するよう配置された中空筒状の下部フィルタ材31と、貫通穴19の上方に突出するよう配置された中空筒状の上部フィルタ材32と、貫通穴19に嵌め込んだ状態で固定され、下部フィルタ材31と上部フィルタ材32とを接続するための継手部材33とを備える。
【0028】
図1及び図2に示されるように、網目状円筒フィルタ13において、下部フィルタ材31は、網目構造を有する二層式の網状円筒管を用いて形成されており、上部フィルタ材32は、下部フィルタ材31よりも目の粗い網目構造を有する一層式の網状円筒管を用いて形成されている。下部フィルタ材31は、例えば直径が15cm、長さ40cmのサイズであり、上部フィルタ材32は、例えば直径15cm、長さ20cmのサイズである。なお、下部フィルタ材31及び上部フィルタ材32の材質としては、例えば高密度ポリエチレンが用いられる。ここで、上部フィルタ材32における網目を粗くすることにより、その上部フィルタ材32を貫通する複数の浸透孔34のサイズが大きくなるため、フィルタ13内に雨水を確実に流入させることが可能となる。また、下部フィルタ材31として二層式の網状円筒管を用いることにより、周囲に存在する土の圧力に耐え得る十分な耐圧性が確保される。さらに、下部フィルタ材31は、各層の網目位置が若干ずれた状態で形成されており、下部フィルタ材31の各浸透孔35が少し斜めに貫通している。これにより、下部フィルタ材31の周囲に存在する土砂等がフィルタ13内に侵入し難くなっている。
【0029】
網目状円筒フィルタ13において、上部フィルタ材32の上端には、径が大きな拡径部36が形成されている。また、その上部フィルタ材32の上端には、複数のスリット37(細長い貫通穴)を有する塩化ビニール製の上蓋38(図3(a)参照)が装着されており、下部フィルタ材31の下端には、塩化ビニール製の底蓋39(図3(b)参照)が装着されている。なお、上蓋38や底蓋39は、塩化ビニール以外の樹脂材料や、金属、セラミック、ガラスなどの材料を用いて形成してもよい。また、上蓋38としては、フィルタ材32と同様の網目構造を有する網目状部材を用いて形成してもよい。
【0030】
底蓋39は、円環状の枠体40と、その枠体40の内側を塞ぐように設けられた網目部41とを有する。底蓋39の網目部41は、下部フィルタ材31の下端(フィルタ収容穴21の底部)よりも若干上方に設けられており、その網目部41には十字状のリブ42が補強のために設けられている。このようにすれば、底蓋39の強度を十分に保つことができ、かつ、フィルタ装着時に土20の圧力が網目部41に加わり難くなるため、網目部41が破損して土20がフィルタ13内部に入り込んでしまうといった問題が回避される。
【0031】
継手部材33は、塩化ビニールによって円筒状に形成されており、一方の端部(図2では上端)に鍔部43が形成されている。そして、継手部材33における鍔部43が貫通穴19の外周部に接着固定される。また、継手部材33の内壁面においてその略中央に係止用凸部45が設けられている。本実施の形態では、上部フィルタ材32の下端に係止金具46が設けられており、その係止金具46が継手部材33の係止用凸部45に係合することで上部フィルタ材32が継手部材33に着脱可能に固定されている。一方、下部フィルタ材31は、その上端が継手部材33の係止用凸部45の位置まで挿入された状態で接着剤を用いて継手部材33に固定されている。なお、本実施の形態では、係止用凸部45及び係止金具46を用いて上部フィルタ材32が継手部材33に固定されているが、これら係止用凸部45及び係止金具46を省略して、継手部材33上に上部フィルタ材32を載置する構成に変更してもよい。
【0032】
本実施の形態の雨水浸透桝11は、道路の路肩に埋設された既設雨水桝10(図4参照)を加工することで形成される。以下、既設雨水桝10を雨水浸透桝11に改変するための雨水浸透桝化工法について説明する。
【0033】
先ず、既設雨水桝10のグレーチング蓋18を開け、建設工事用の掃除機を使用して、桝本体12内の雨水や泥などを除去する(図5(a)参照)。そして、桝本体12の底が確認できる状態にした後、コンクリートカッター51により桝本体12の底面を切削して円形の貫通穴19を形成する(図5(b)参照)。この後、スクリューオーガー52を用いて、貫通穴19の下方にある土20を掘削してフィルタ収容穴21を形成する(図5(c)参照)。この際、スクリューオーガー52によって掘削された土20は、建設工事用の掃除機等によって除去される。
【0034】
次に、網目状円筒フィルタ13を準備して、網目状円筒フィルタ13における継手部材33の鍔部43の下面に接着剤を塗布する。その後、図5(d)に示されるように、網目状円筒フィルタ13の下部フィルタ材31側を桝本体12底部の貫通穴19を通してフィルタ収容穴21内に収納し、継手部材33の鍔部43を貫通穴19の外周部に接着固定する。この結果、桝本体12の底部にフィルタ13が装着される。そして、図1に示されるように、桝本体12の上部にグレーチング蓋18を装着することで、既設雨水桝10を雨水浸透桝11に改変するための作業が完了する。
【0035】
また、長期間使用した雨水浸透桝11をメンテナンスする場合、桝本体12の底部に溜まった泥やゴミを除去した後、着脱工具55を利用して上部フィルタ材32の拡径部36を挟み込み、上部フィルタ材32を継手部材33から取り外す(図6(a)参照)。そして、桝本体12の上方から下部フィルタ材31の内側に高圧洗浄機のノズル56を挿入して高圧洗浄水W1を噴射することにより下部フィルタ材31を洗浄する(図6(b)参照)。その後、下部フィルタ材31の底部に残存している堆積物を建設工事用の掃除機を使用して吸引除去する。また、継手部材33から取り外した上部フィルタ材32についても洗浄水やエアを用いて洗浄することにより、その上部フィルタ材32に付着しているゴミ等が除去される。この後、着脱工具55を利用して、上部フィルタ材32を継手部材33に再装着する。このようなメンテナンス作業を行うことで、雨水浸透桝11の浸透能力が施工時の状態に回復される。
【0036】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0037】
(1)本実施の形態の網目状円筒フィルタ13は、従来技術のようにガイドパイプ内にフィルタ材を充填する構成ではなく、中空筒状の上部フィルタ材32及び下部フィルタ材31にて構成されているため、その洗浄作業を軽減することができる。また、従来技術のように、交換時にフィルタ材がゴミとして廃棄されることもない。さらに、雨水浸透桝11の桝本体12内に上部フィルタ材32が突出して設けられているので、雨水浸透桝11の底部に落ち葉、ゴミ、土砂などが堆積した場合でも、上部フィルタ材32の側面からフィルタ13内に雨水を流入させることができ、その浸透能力を十分に確保することができる。
【0038】
(2)本実施の形態の網目状円筒フィルタ13において、下部フィルタ材31は、網目の細かい二層式の網状円筒管を用いて形成されているので、周囲に存在する土20の圧力に耐え得る十分な強度を確保することができる。一方、上部フィルタ材32は、網目の粗い網状円筒管を用いて形成されているので、比較的サイズの大きな落ち葉やゴミなどがフィルタ13内に入り込むことを防止できるとともに、フィルタ13内に雨水を確実に流入させることができる。
【0039】
(3)本実施の形態の網目状円筒フィルタ13は、上部フィルタ材32が継手部材33に対して着脱可能に設けられているので、長期間の使用によって各フィルタ材31,32が目詰まりした場合、上部フィルタ材32を取り外すことにより、各フィルタ材31,32の洗浄作業を容易に行うことができる。具体的には、継手部材33から上部フィルタ材32が取り外された後、下部フィルタ材31の内側から高圧洗浄水W1を噴射することにより下部フィルタ材31が効率よく洗浄される。その後、下部フィルタ材31の底部に残存している堆積物が吸引除去される。また、継手部材33から取り外した上部フィルタ材32についても洗浄することにより、その上部フィルタ材32に付着しているゴミ等が除去される。このようにすれば、網目状円筒フィルタ13の浸透能力を迅速かつ確実に回復させることができる。
【0040】
(4)本実施の形態の網目状円筒フィルタ13は、上部フィルタ材32の上端に拡径部36が形成されているので、着脱工具55を用いてその拡径部36をつまむことにより、上部フィルタ材32の着脱を容易に行うことができる。
【0041】
(5)本実施の形態の網目状円筒フィルタ13は、従来のフィルタのように内部にフィルタ材を充填する構成ではなく、中空筒状のフィルタ材31,32により構成されているため、そのサイズを小さくすることができ、製造コストも低減することができる。
【0042】
(6)本実施の形態の場合、既設雨水桝10の桝本体12を地中に埋設したままの状態で加工してその底部に貫通穴19が形成され、その貫通穴19に網目状円筒フィルタ13が装着される。このようにすれば、既設雨水桝10を地中から掘り起こすことなく、その雨水桝10を雨水浸透桝11に改変することができる。従って、新規の雨水浸透桝に取り替える場合と比較して、簡単かつ迅速に雨水浸透桝11を施工することができ、その施工コストを半分以下のコストに抑えることができる。また、既設雨水桝10を雨水浸透桝11に改変することにより、大雨時において、雨水本管16の負荷を軽減することができ、都市洪水を防止することが可能となる。さらに、舗装路に降った雨水をその舗装路の地中に返すことができ、水の自然循環を助成することができる。
【0043】
(7)本実施の形態の雨水浸透桝11は、桝本体12の底面に円形の貫通穴19が形成され、その貫通穴19に網目状円筒フィルタ13が装着されるので、良好な外観を確保することができる。
[第2の実施の形態]
【0044】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、網目状円筒フィルタ13における継手部材33の内側に逆流防止部材を設けた点が第1の実施の形態と異なり、他の構成は第1の実施の形態と同一である。以下、逆流防止部材61の構成について、図7及び図8を用いて詳述する。図7は、網目状円筒フィルタ13の要部断面図であり、図8は、逆流防止部材61の下面図である。
【0045】
図7及び図8に示されるように、逆流防止部材61は、中央部に排水用貫通穴62が形成された円板状の堰板63と、排水用貫通穴62を開閉するための弁体64と、弁体64を作動させるための水膨張性ゴム65と、水膨張性ゴム65を固定するための本体66とを備える。本体66は、上端が堰板63に固定される4本のガイド部67と、各ガイド部67の下方に設けられ、水膨張性ゴム65を収容する筒部68とを有する。この筒部68の底には、十字型の固定部69が設けられ、その十字型の固定部69に水膨張性ゴム65の下端が当接した状態で固定されている。そして、堰板63の外縁部が継手部材33の係止用凸部45上に載置され、本体66、弁体64、及び水膨張性ゴム65が下部フィルタ材31の内側に収納されるようになっている。
【0046】
水膨張性ゴム65は、円柱状をなし、その上部に弁体64が接続されている。なお、水膨張性ゴム65の形状は、円柱形状以外に、三角柱や四角柱などの任意の形状に変更してもよい。弁体64は、例えばポリエチレンを用いてカサ状に形成されている。弁体64の外周部には切り欠き70が設けられており、その弁体64の切り欠き70がガイド部67に嵌め込まれている。このように弁体64を形成することで、その弁体64がガイド部67に沿って上下方向に移動可能となっている。水膨張性ゴム65は、その直径が弁体64の直径よりも小さく、弁体64の下方に隠れるように配置されている。これにより、堰板63の排水用貫通穴62を通して流入する雨水が水膨張性ゴム65に掛からないようになっている。また、排水用貫通穴62の内周面には、ゴムからなるシール部材71が設けられており、弁体64の密着性が高められる。
【0047】
上記のように構成した逆流防止部材61は、オプション部品として網目状円筒フィルタ13に装着可能となっている。すなわち、地下水位の変動が大きな場所に埋設された既設雨水桝10を雨水浸透桝11に改変するときに、逆流防止部材61を装着した網目状円筒フィルタ13が使用される。この場合、図9に示されるように、降雨量や海水面の上昇などの影響を受けて地下水位が上昇し、水膨張性ゴム65が水に浸かると、その水膨張性ゴム65が膨張して弁体64を押し上げる。そして、その弁体64により、排水用貫通穴62が閉状態とされ、地下水または雨水が下部フィルタ材31側から上部フィルタ材32側に逆流することが防止される。また、地下水位が下がり、水膨張性ゴム65が乾燥すると、その水膨張性ゴム65が収縮して弁体64を下降させる。これにより、排水用貫通穴62が開状態となり、雨水が排水用貫通穴62を通して下部フィルタ材31側に流入するため、フィルタ13の浸透機能を回復させることができる。このような逆流防止部材61を用いれば、フロートの浮力で弁体を作動させるものと比較して、弁体64を確実に押し上げることができ、弁体64と排水用貫通穴62との隙間にゴミなどを挟み込んだ場合でもその排水用貫通穴62を確実に密閉することができる。
【0048】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0049】
・上記第2の実施の形態では、水膨張性ゴム65により弁体64を作動させる逆流防止部材61を用いたが、これ以外にフロートを用いて弁体を作動させる逆流防止部材を用いてもよい。
【0050】
・上記各実施の形態において、雨水浸透桝用フィルタとしての網目状円筒フィルタ13の形状は、円筒形状に限定されるものではなく、三角筒形状や四角筒形状などの他の形状に変更してもよい。
・上記各実施の形態において、網目状円筒フィルタ13を構成する下部フィルタ材31及び上部フィルタ材32は、高密度ポリエチレンを用いて形成されていたが、他の合成樹脂、金属、セラミックなどの材料を用いて形成してもよい。また、下部フィルタ材31は、二層式の網状円筒管を用いて形成していたが、上部フィルタ材32と同様に、一層式の薄厚タイプの網状円筒管を用いて形成してもよい。さらに、上部フィルタ材32は、その上端に拡径部36が設けられていたが、拡径部36が設けられていない網状円筒管を用いてもよい。このようにすれば、網目状円筒フィルタ13の製造コストを低減することができる。
【0051】
・上記各実施の形態では、円形コンクリートカッター51を用いて桝本体12の底面に貫通穴19を形成したが、それ以外の切削工具(例えば、ハンマーなどの工具)を用いてもよい。また、スクリューオーガー52の代わりに、ダブルスコップなどを用いてフィルタ収容穴21を形成してもよい。さらに、円形コンクリートカッターの内側に掘削用のドリルを納めた回転切削工具を用いて、貫通穴19とフィルタ収容穴21とを形成してもよい。
【0052】
・上記各実施の形態では、道路の路肩に埋設された既設雨水桝10を加工するものであったが、これ以外に駐車場などの舗装された場所や各家庭の庭に埋設された既設雨水桝10を加工して雨水浸透桝11に改変してもよい。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0054】
(1)前記下部フィルタ材は、前記上部フィルタ材よりも厚さが厚く耐圧性に優れた網状円筒管を用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【0055】
(2)前記下部フィルタ材は、合成樹脂製の多層網状円筒管からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の雨水浸透桝を示す断面図。
【図2】第1の実施の形態の網目状円筒フィルタを示す断面図。
【図3】(a)は上蓋を示す平面図、(b)は底蓋を示す平面図。
【図4】既設雨水桝を示す断面図。
【図5】(a)〜(d)は雨水浸透桝化工法を説明するための断面図。
【図6】(a),(b)は、雨水浸透桝のメンテナンス方法を示す説明図。
【図7】第2の実施の形態の網目状円筒フィルタを示す要部断面図。
【図8】逆流防止部材を示す下面図。
【図9】逆流防止部材の動作を説明するための要部断面図。
【符号の説明】
【0057】
10…既設雨水桝
11…雨水浸透桝
13…雨水浸透桝用フィルタとしての網目状円筒フィルタ
19…貫通穴
31…下部フィルタ材
32…上部フィルタ材
33…継手部材
34…浸透孔
36…拡径部
38…上蓋
39…底蓋
61…逆流防止部材
62…排水用貫通穴
63…堰板
64…弁体
65…水膨張性ゴム
W1…高圧洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設雨水桝を加工して雨水浸透桝に改変するときに使用する雨水浸透桝用フィルタであって、
前記既設雨水桝の底部に形成された貫通穴の下方に突出するよう配置され、底蓋を有し網目状かつ中空筒状の下部フィルタ材と、
前記貫通穴の上方に突出するよう配置され、上蓋を有しかつ周面に複数の浸透孔が形成された中空筒状の上部フィルタ材と、
前記貫通穴に嵌め込んだ状態で固定され、前記下部フィルタ材と前記上部フィルタ材とを接続するための継手部材と
を備えたことを特徴とする雨水浸透桝用フィルタ。
【請求項2】
前記下部フィルタ材は、網目構造を有する網状円筒管を用いて形成され、前記上部フィルタ材は、前記下部フィルタ材よりも目の粗い網目構造を有する網状円筒管を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【請求項3】
前記上部フィルタ材は、前記継手部材に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【請求項4】
前記上部フィルタ材は、その上端に径が大きな拡径部を有することを特徴とする請求項3に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【請求項5】
前記継手部材の内側に設けられ、前記下部フィルタ材を通過して前記上部フィルタ材側に雨水または地下水が逆流することを防止するための逆流防止部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【請求項6】
前記逆流防止部材は、
前記既設雨水桝に流入した雨水を上部フィルタ材側から下部フィルタ材側に排水するための排水用貫通穴が形成された堰板と、前記排水用貫通穴を開閉するための弁体と、前記弁体を作動させるための水膨張性ゴムとを備え、
前記水膨張性ゴムは、水に浸かると膨張して前記弁体を押し上げることにより前記排水用貫通穴を閉状態とする一方、乾燥すると収縮して前記弁体を下降させることにより前記排水用貫通穴を開状態とすることを特徴とする請求項5に記載の雨水浸透桝用フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の雨水浸透桝用フィルタが装着された雨水浸透桝をメンテナンスする方法であって、
前記継手部材から前記上部フィルタ材を取り外す工程と、
前記下部フィルタ材の内側から高圧洗浄水を噴射することにより下部フィルタ材を洗浄した後、その下部フィルタ材の底部に残存している堆積物を吸引除去する工程と
を含むことを特徴とする雨水浸透桝のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−256966(P2009−256966A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107429(P2008−107429)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(502278390)株式会社山越 (8)
【Fターム(参考)】