説明

雨水等の貯留浸透施設施工工法

【課題】雨水等の貯留浸透施設が施された地盤や舗装が沈下したり、クラックなどが生じる虞がない雨水等の浸透施設施工法を提供する。
【解決手段】地盤1を掘り下げて形成した地盤タンク部2内に透水性補強シート10を敷設し、透水性補強シート10上に貯留構造体31を縦横及び上下方向に積み重ねて貯留槽30を形成し、貯留槽30の周囲から上部までを埋め戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅地、公園、駐車場や工場敷地等において雨水等を貯留並びに浸透させる地下貯水施設の施工工法であって、地下貯水施設の内部に貯留構造体を積層して施工した貯留槽が不等沈下などすることのない雨水等の貯留浸透施設施工工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部では集中豪雨による家屋の浸水や河川の氾濫を防止するために、雨水等の貯留浸透施設が施工されている。地表面のほとんどが建物や舗装などの不浸透面で覆われている都市部では、雨水等は地下に浸透せず低地に流入して家屋を浸水させたり、河川を氾濫させる危険が高まっている。また、水の使用量が年々増大しており、水源地での降雨量が少ないと水不足となる危険がある。そのために洪水及び渇水対策として、雨水を一定時間貯留した後、河川等に順次放流したり、積極的に地下に浸透させることにより、雨水等による河川の氾濫、家屋の浸水災害を防止したり、さらに、一時貯留した雨水を汲み上げて利用するための雨水等の貯留浸透施設が施工されている。
【0003】
このような雨水等の浸透施設として、例えば、特開2000−160606号公報記載の「雨水貯留装置」、特開2005−002620号公報の「地下貯留及び/又は浸透槽」に記載されるものがある。これらの施設は、例えば地面を掘り下げてタンク部を構成し、このタンク部内に貯留槽が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160606号公報
【特許文献2】特開2005−002620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような雨水等の貯留浸透施設では、例えば粘性土などの地盤上に貯留構造体を積層して貯留槽を設置すると、貯留槽内の貯留水が地盤内に浸透し、この浸透した水が飽和状態になると地盤の支持力は急激に低下する。このため貯留槽の上載荷重を支持する地盤の支持力が不足することになり、貯留槽の不等沈下、傾き、倒壊などの現象が生じ、雨水等の貯留浸透施設が施された地盤や舗装が沈下したり、クラックが生じる虞がある。
【0006】
この発明は、かかる現況に鑑みてなされたもので、雨水等の貯留浸透施設が施された地盤や舗装が沈下したり、クラックなどが生じる虞がない雨水等の貯留浸透施設施工工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、地盤を掘り下げて形成した地盤タンク部内に透水性補強シートを敷設し、前記透水性補強シート上に貯留構造体を縦横及び上下方向に積み重ねて貯留槽を形成し、前記貯留槽の周囲から上部までを埋め戻すことを特徴とする雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面から側部周壁に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面と、上方位置の全面に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面から側部周壁、さらに上方位置の全面に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記透水性補強シート上に基礎を設け、
前記基礎上に前記貯留槽を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記基礎は、砕石層と、コンクリート層と、透水層とを下方から順に積層し、前記コンクリート層に水抜き孔を設けたことを特徴とする請求項6に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記透水層は、板状排水材または不織布を、前記コンクリート層の全面に敷設した構成であり、前記透水層の引っ張り強度;300KN/m以上であることを特徴とする請求項7に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、前記透水性補強シートは、引っ張り強度;20KN/m〜60KN/m 伸び率;20%以内 目合い;5mm〜30mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法である。
【発明の効果】
【0017】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0018】
請求項1乃至請求項9に記載の発明では、地盤を掘り下げて形成した地盤タンク部内に透水性補強シートを敷設することで、例えば粘性土地盤上に貯留構造体を積層して貯留槽を設置することがあっても、貯留槽内の貯留水が地盤内に浸透して地盤強度が低下することを透水性補強シートにより防止し、しかも地盤を透水性補強シートが貯留槽の上載荷重を分散することから貯留槽の不等沈下、傾き、倒壊などを防止し、雨水等の貯留浸透施設が施された地盤や舗装が沈下したり、クラックが生じることがないようにすることができる。また、地震や大型車両の走行時に発生する横揺れ対策にも有効であり、雨水等の貯留施設並びに浸透施設の耐震性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】透水性補強シートの敷設を示す図である。
【図2】貯留槽の基礎の施工を示す図である。
【図3】貯留槽の形成を示す図である。
【図4】埋め戻しを示す図である。
【図5】他の埋め戻しを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の雨水等の貯留浸透施設施工工法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0021】
この実施の形態の雨水等の貯留浸透施設施工工法は、住宅地、公園、駐車場や工場敷地等において雨水等を貯留並びに浸透させる地下貯水施設の施工工法である。
【0022】
(透水性補強シートの敷設)
透水性補強シートの敷設を図1に示す。地盤1を掘り下げて地盤タンク部2を形成し、この地盤タンク部2内に透水性補強シート10を敷設する。地盤1は、特に限定されないが、N値5〜20の地盤である。N値は、標準貫入試験の測定値である。重量63.5Kgのハンマを75cmの高さから自由落下させ、標準貫入試験用サンプラーを地中に30cm打ち込むために要する打撃回数で示される。
【0023】
透水性補強シート10は、地盤タンク部2の底部全面2aに敷設するが(図1(a))、また地盤タンク部2の左右幅によっては底部全面2aから側部周壁2bに敷設し(図1(b))、また地盤タンク部2の底部全面2aから側部周壁2b、さらに上部全面に敷設してもよい(図1(c))。透水性補強シート10の敷設は、透水性補強シート10が1枚のものでもよく、複数枚を重ねて接続したものでもよい。また、透水性補強シート10の表面積は、貯留槽の設置面積より大きく、さらに貯留槽の上載荷重などによって設定される。
【0024】
(透水性補強シートの構造)
透水性補強シート10は、材質が化学繊維、天然繊維、ガラス繊維などであり、形状は織布、不織布、網目などであり、引っ張り強度;20KN/m〜60KN/m、伸び率;20%以内、目合い;5mm〜30mmのものが用いられる。
【0025】
(貯留槽の基礎)
貯留槽の基礎の施工を図2に示す。基礎20は、透水性補強シート10上設け、砕石層21と、コンクリート層22と、透水層22とを下方から順に積層して施工する。コンクリート層22には水抜き孔22aを設け、コンクリート層22によって基盤20の強度を確保し、かつ水を水抜き孔22aによって下方へ流す。透水層22は、板状排水材または不織布を、コンクリート層22の全面に敷設した構成であり、透水層22の引っ張り強度;300KN/m以上であり、透水性と貯留槽の荷重を受ける所定の強度を有することが好ましい。
【0026】
(貯留槽の形成)
貯留槽の形成を図3に示す。透水性補強シート10上に設けた基礎20上に貯留槽30を形成する。貯留槽30は、貯留構造体31を縦横及び上下方向に積み重ねて形成し、貯留構造体31は、雨水等の貯留及び浸透するものであり、例えば開口部を有する容器形貯留構造体(例えば、特公平4−26648号公報、特開平9−112792号公報)、支柱を充填体によって連結してなる櫓形貯留構造体(例えば、特許第3208379号公報、特開平10−195937号公報)、さらに、傾斜板に補強リブを設けてなる枠形貯留構造体等種々の構造のものを用いることができる。
【0027】
(埋め戻し)
埋め戻しを図4及び図5に示す。基礎20上に貯留槽30を形成すると、貯留槽30の周囲から上部までを埋め戻す。この埋め戻しは、図4(a),(b)では、貯留槽30の周囲から上部の地盤1の表面まで埋め戻し、この埋め戻し土50の上に、例えば舗装60を行うが、図5(a),(b)では、貯留槽30の周囲から上部の所定位置まで埋め戻し、透水性補強シート10を上方位置の全面に敷設し、この透水性補強シート10上にさらに埋め戻し、この埋め戻し土50の上に、例えば舗装60を行う。貯留槽30の上方位置の全面に敷設した透水性補強シート10は、舗装60に対する補強として機能する。また、図4(c)では、貯留槽30の周囲から上部の所定位置まで埋め戻し、透水性補強シート10を上方位置の全面に敷設し、この透水性補強シート10上にさらに埋め戻し、この埋め戻し土50の上に、例えば舗装60を行う。
【0028】
(雨水等の貯留浸透施設)
この実施の形態の雨水等の貯留浸透施設は、地盤1を掘り下げて形成した地盤タンク部2内に透水性補強シート10を敷設することで、例えば粘性土の地盤上に貯留構造体31を積層して貯留槽30を設置することがあっても、貯留槽30内の貯留水が地盤1内に浸透して地盤強度が低下することを透水性補強シートにより防止する。
【0029】
すなわち、透水性補強シート10を、地盤タンク部2の底部全面2aに敷設した実施の形態においては、底部全面2aから貯留槽30内の貯留水が地盤1内に浸透して地盤強度が低下することを防止する(図4(a))、(図5(a))。透水性補強シート10を、地盤タンク部2の底部全面2aから側部周壁2bに敷設した実施の形態においては、底部全面2a及び側部周壁2bから貯留槽30内の貯留水が地盤1内に浸透して地盤強度が低下することを防止する(図4(b),(c))、(図5(b))。
【0030】
このように、貯留槽30内の貯留水が地盤1内に浸透して地盤強度が低下することを透水性補強シートにより防止することができ、しかも地盤1を透水性補強シート10が補強して貯留槽30の上載荷重を分散することができる。したがって、貯留槽30の不等沈下、傾き、倒壊などを防止し、雨水等の貯留浸透施設が施された地盤1や舗装60が沈下したり、クラックが生じることがないようにすることができる。また、地震や大型車両の走行時に発生する横揺れ対策にも有効であるから、雨水等の貯留施設並びに浸透施設の耐震性能が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、住宅地、公園、駐車場や工場敷地等において雨水等を貯留並びに浸透させる地下貯水施設であって、地下貯水施設の内部に貯留構造体を積層して施工した貯留槽が不等沈下などすることのない雨水等の貯留浸透施設施工工法に適用可能であり、雨水等の貯留浸透施設が施された地盤や舗装が沈下したり、クラックなどが生じる虞がない。
【符号の説明】
【0032】
1 地盤
2 地盤タンク部
2a 地盤タンク部2の底部全面
2b 地盤タンク部2の側部周壁
2c 地盤タンク部2の上部全面
10 透水性補強シート
20 基礎
21 砕石層
22 コンクリート層
22a 水抜き孔
30 貯留槽
31 貯留構造体
50 埋め戻し土
60 舗装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘り下げて形成した地盤タンク部内に透水性補強シートを敷設し、
前記透水性補強シート上に貯留構造体を縦横及び上下方向に積み重ねて貯留槽を形成し、
前記貯留槽の周囲から上部までを埋め戻すことを特徴とする雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項2】
前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項3】
前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面から側部周壁に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項4】
前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面と、上方位置の全面に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項5】
前記透水性補強シートは、前記地盤タンク部の底部全面から側部周壁、さらに上方位置の全面に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項6】
前記透水性補強シート上に基礎を設け、
前記基礎上に前記貯留槽を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項7】
前記基礎は、砕石層と、コンクリート層と、透水層とを下方から順に積層し、
前記コンクリート層に水抜き孔を設けたことを特徴とする請求項6に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項8】
前記透水層は、板状排水材または不織布を、前記コンクリート層の全面に敷設した構成であり、
前記透水層の引っ張り強度;300KN/m以上であることを特徴とする請求項7に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。
【請求項9】
前記透水性補強シートは、
引っ張り強度;20KN/m〜60KN/m
伸び率;20%以内
目合い;5mm〜30mm
であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の雨水等の貯留浸透施設施工工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44212(P2013−44212A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184577(P2011−184577)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(596140874)公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会 (4)
【出願人】(500131985)サントップエンジニア株式会社 (5)
【Fターム(参考)】