説明

雨水等貯留浸透施設用構造体、及び、雨水等貯留浸透施設

【課題】貯留浸透能力が高く、機械的強度と軽量性とを兼ね備えた構造体、及び、それらを用いた雨水等貯留浸透施設を提供する。
【解決手段】仕切部材4のそれぞれは、扁平状であって、幅方向において相対向する2辺を有し、互いに間隔を隔てて配置されている。側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、扁平状であって、仕切部材4の2辺に結合されている。面板部材1のそれぞれは、相対向する2辺のうちの一辺が、凹部13を有し、他辺は凹部13と対応する凸部14を有し、隣接する面板部材1,1において、一方の凹部13に、他方の凸部14を嵌め込む凹凸嵌合により全体として一体化されている。仕切板4及び側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、高さ方向の辺が、隣接する面板部材1,1の間で、面板部材3の一面上に設けられた2つの突起15−16の間に凹凸嵌合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等貯留浸透施設用構造体(以下、構造体と称する)、及び、雨水等貯留浸透施設に関する。本発明に係る雨水等貯留浸透施設は、雨水等の貯留施設と、浸透施設との両者を含む。
【背景技術】
【0002】
この種の雨水等貯留浸透施設は、集水した雨水等の貯留空間として地中に埋設される雨水等貯留施設と、集水した雨水等を一時的に貯留してのち、地中に緩やかに浸透させて排出する浸透施設とを含む。雨水等貯留浸透施設は、雨水等の有効利用の目的、雨水等が河川へ急激に流入することにより発生する都市型浸水災害を防止する目的、又は、地下水を涵養し地盤沈下を抑止する目的で、地中に埋設される。
【0003】
上述した雨水等貯留浸透施設は、雨水等貯留浸透の目的を達成する手段として、貯留空間効率の高い構造体を内蔵しているが、施設全体の貯留浸透能力を高めるためには、構造体一個当たりの容量をできるだけ大きくしなければならない。
【0004】
上述した雨水等貯留浸透施設及びこれに用いられる構造体について、特許文献1乃至3に示すように、従来より種々のタイプのものが提案され、実用に供されているが、一個当たりの構造体の容量は、必ずしも大きくはない。
【特許文献1】特開2000−199246号公報
【特許文献2】特開2001−115508号公報
【特許文献3】特開2003−034971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、雨水等貯留浸透に供される容量を、著しく増大しえる構造体、及び、雨水等貯留浸透施設を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る構造体は、複数の仕切部材と、複数の側板部材と、複数の面板部材とを含む。前記仕切部材のそれぞれは、扁平状であって、幅方向において相対向する2辺を有し、互いに間隔を隔てて配置されている。
【0007】
前記側板部材は、扁平状であって、前記仕切部材の前記2辺に結合されている。前記面板部材のそれぞれは、相対向する2辺のうちの一辺は、凹部を有し、他辺は凹部と対応する凸部を有し、隣接する面板部材において、一方の凹部に、他方の凸部を嵌め込む凹凸嵌合により全体として一体化されている。前記仕切板および側板部材は、高さ方向の辺が、隣接する面板部材の間で、前記面板部材の一面上に設けられた2つの突起の間に凹凸嵌合される。
【0008】
本発明に係る構造体は、透水層又は遮水層と組み合わされ、雨水等貯留浸透施設を構成する。雨水等貯留浸透施設において、構造体は、地中に埋設される。透水層又は遮水層は、構造体の周囲に設けられている。透水層を用いた場合は雨水等浸透施設が構成され、遮水層を用いた場合は雨水等貯留施設が構成される。
【0009】
この場合、仕切部材のそれぞれは、扁平状であって、互いに間隔を隔てて配置されており、その幅方向の2辺に、扁平状の側板部材が結合されている。従って、側板部材の長さに対応した数の仕切部材を、間隔を隔てて配置し、雨水等貯留浸透に供される容量を、著しく増大し得る。
【0010】
しかも本発明に係る構造体は、複数の面板部材を備えており、面板部材のそれぞれは、相対向する2辺のうちの一辺は、凹部を有し、他辺は凹部と対応する凸部を有し、隣接する面板部材において、一方の凹部に、他方の凸部を嵌め込む凹凸嵌合により全体として一体化されている。仕切板は、高さ方向の辺が、隣接する面板部材の間で、前記面板部材の一面上に設けられた2つの突起の間に凹凸嵌合される。従って、面板部材と仕切板との凹凸嵌合構造により、組立が容易でありながら、機械的組立強度の高い構造体を得ることができる。
【0011】
更に、仕切部材、側板部材、面板部材は何れも扁平状である。従って、これらは、嵩張ることのない態様で輸送することができるから、輸送コストを低減することができる。また、軽量であるから、構造体への組立作業を容易に実行することができる。
【0012】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。図面は単なる例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、作業員が内部に侵入して、堆積物排除などの保守管理を行うことができる構造体、及び、雨水等貯留浸透施設を提供すること
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る構造体の斜視図である。図示された構造体は、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)と、複数の仕切部材4と、複数の面板部材1を含む。これらは、適当なプラスチック材料、または、プラスチック材料と無機粉体とを混合した複合材料を用いた成型品として構成することができる。
【0015】
仕切部材4は、扁平状であって、幅方向において相対向する2辺を有している。貫通孔41は一面から他面に貫通している。仕切部材4は、その複数個が、長さ方向に間隔を隔てて配置されている。側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、扁平状であって、仕切部材4の幅方向の相対向する2辺に結合されている。
【0016】
上述のように、仕切部材4のそれぞれは、扁平状であって、互いに間隔を隔てて配置されており、その幅方向の2辺に、扁平状の側板部材(3A、3B)、(3C、3D)が結合されている。従って、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)の長さに対応した数の仕切部材4を、間隔を隔てて配置し、雨水等貯留浸透に供される容量を、著しく増大し得る。
【0017】
面板部材1は、図2に拡大して示すように、全体形状がほぼ正四角形状であり、隣接する2辺のほぼ中間部に凹部13を設け、他の隣接する2辺の中間部に凸部14を設けてある。凹部13の両側には、凸部14が設けられており、凸部14の両側には凹部13が設けられている。凹部13及び凸部14は、いわゆる「鳩尾継」を構成し得る形状を持つ。従って、隣接する面板部材1、1において、一方の凹部13に、他方の凸部14を嵌め込む凹凸嵌合により、全体として一体化され、平面化された底板配置構造を実現できる。
【0018】
実施例とは異なって、面板部材1は、他の角形状、例えば、6角形状、8角形状等であってもよい。凹部及び凸部は面板部材1の外形形状に合わせてその形成位置が選定される。
【0019】
面板部材1の一面または両面には、各辺に沿って、2つ1組の突起15、16が設けられている。図3は突起15、16の部分を拡大して示す部分断面図である。図示実施例では、凸部14の上において、面板部材1の両面の相対する位置に、間隔を隔てて、2本の突起15、16を設けてある。
【0020】
図4は突起15、16の別の例を示す部分拡大断面図である。この実施例では、2本の突起15、16は、上端に内向きフック部を有する。
【0021】
図示実施例の構造体を構成するには、面板部材1を、底板として用い、仕切部材4及びその上に側板部材(3A、3B)、(3C、3D)を凹凸嵌合により結合し、更に、その上に、別の面板部材1を、天板として凹凸嵌合させるだけでよい。このため、組立作業が極めて容易になる。
【0022】
しかも、面板部材1において、相対向する2辺のうちの一辺は、凹部13を有し、他辺は凹部13と対応する凸部14を有する。従って、隣接する面板部材1、1において、一方の凹部13に、他方の凸部14を嵌め込む凹凸嵌合により全体として一体化され、平面化された底板配置構造を実現できる。このように、底板となる面板部材1を、凹凸嵌合によって敷きつめて行くので、その組立作業が極めて容易になる。面板部材1は、構造体として要求される長さに応じて、必要な枚数だけ配置され、かつ、相互に凹凸嵌合により結合する。
【0023】
面板部材1の一面には、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)及び仕切板4の一辺が、凹凸嵌合により結合される。凹凸嵌合は、面板部材1の一面上に設けられた2つの突起15、16の間に、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)及び仕切板4の一辺を挿入することによって実行される。このように、面板部材1、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)及び仕切板4の結合も、凹凸嵌合によるので、その組立作業が極めて容易になる。
【0024】
実施例において、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)及び仕切板4は、隣接する面板部材1において共用される。従って、コスト低減、組立容易化、及び、組立迅速化を図ることができる。
【0025】
側板部材(3A、3B)、(3C、3D)及び仕切板4の上には、天板となる面板部材1(図示しない)が、凹凸嵌合により結合される。このため、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)に対する面板部材1の組立作業も極めて容易になる。
【0026】
しかも、面板部材1において、相対向する2辺のうちの一辺は凹部13を有し、他辺は凹部13と対応する凸部14を有するから、一方の面板部材1の凹部13に、他方の面板部材1の凸部14を嵌め込み、凹凸嵌め合いにより全体として一体化され、平面化された天板の配置構造を実現できる。このため、組立作業が極めて容易になる。
【0027】
更に、仕切部材4、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)、面板部材1は何れも扁平状である。従って、これらは、嵩張ることのない態様で輸送することができるから、輸送コストを低減することができる。また、軽量であるから、構造体への組立作業を容易に実行することができる。
【0028】
図5は側板部材(3A、3B)、(3C、3D)と仕切部材4との組立構造を示す斜視図、図6は図5に示した組立構造の分解斜視図である。図示するように、2つの側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、仕切部材4の幅方向の2辺と結合されている。結合手段は、機械的な結合手段、特に、凹凸嵌合が、組み立ての容易性及び機械的結合強度の観点から好ましい。
【0029】
仕切部材4は、外枠部42を有し、外枠部42によって囲まれた面内に貫通孔41を有する。また、貫通孔41を構成するリング部44から、外側に向かって、放射状に伸びる複数本のリブ45を有する。貫通孔41は、人間が潜り抜けることができる程度の大きさを有する。側板部材(3A、3B)、(3C、3D)も、扁平状であって、一面から他面に貫通する貫通孔31を有する。
【0030】
図示実施例では、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、2種類のタイプを含んでいる。第1の側板部材3A及び第2の側板部材3Cが、第1のタイプに属し、第1の側板部材3B及び第2の側板部材3Dが第2のタイプに属している。
【0031】
第1のタイプに属する第1の側板部材3A及び第2の側板部材3Cにおいて、貫通孔31は、人間が潜り抜けることができる大きさを有する。第2のタイプの第1の側板部材3B及び第2の側板部材3Dの貫通孔31は人間が潜り抜けることを目的としたものではなく、洗浄用ホースの挿入口などに用いられる。
【0032】
構造体としての長さ、幅及び高さは、面板部材1の敷設枚数の選択により、任意に変更できる。従って、実際的な場面では、要求される長さ、幅及び高さの構造体を容易に実現し得る。更に、段数を増大させて、容積を増大させることもできる。
【0033】
たとえば、図7に図示するように、図5及び図6に示した構造体を直接に複数段積み重ねた後、面板板を配置する構造を採用することができる。
【0034】
上述した構造体は、雨水等貯留浸透施設を構築するために用いられる。図8、図9は本発明に係る構造体Fを地中に埋設した雨水浸透設備の構成を概略的に示す図である。本発明に係る構造体Fは地中に埋設されており、上方側が土、砂利、コンクリートまたはアスファルト等の層8によって覆われている。構造体Fの周囲は、周知の技術に従って、不織布等の保護層6によって覆い、構造体Fの内部への土砂の流入を阻止する。
【0035】
構造体Fには、流入管5が挿着されている。この流入管5は構造体Fに含まれる仕切部材4に挿着されている。流入管5の一端は、集水桝7に連なっている。従って、集水桝7に集められた雨水は流入管5の一端から、構造体Fに流入する。流入管5から構造体Fに流入した雨水は地中に浸透する。
【0036】
構造体Fは、面板部材1、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)及び面板部材1により構成された組立体を含み、内部の空間容積が極めて大きくなる。このため、砕石を敷きつめる場合と比較して、空間率が極めて高く、雨水貯留及び雨水浸透の能力の高い構造体が得られる
しかも、仕切部材4、第1の側板部材、及び、第2の側板部材は、それぞれ貫通孔31,41を含む。貫通孔41は、一面から他面に貫通している。従って、仕切部材4、及び、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)に設けられた貫通孔31,41の孔径を、作業員が通過できる程度の大きさに設計することにより、作業員が貫通孔31,41を通じて雨水等貯留浸透施設の内部に侵入し、内部に堆積した塵芥等の堆積物を除去することができる。
【0037】
また、構造体Fに含まれる仕切部材4、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、それぞれ、扁平状である。従って、仕切部材4、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、嵩張ることのない態様で輸送することができるから、輸送コストを低減することができる。また、仕切部材4、側板部材(3A、3B)、(3C、3D)は、軽量であるから、構造体Fを組み立てる際の取り扱いが容易であり、組立作業を容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る構造体の分解斜視図である。
【図2】図1に図示した構造体の組み合わせる工程を説明する図である。
【図3】図1に示した構造体の組み合わせ工程を説明する図である。
【図4】図1に示した構造体の組み合わせ工程を説明する図である。
【図5】本発明に係る構造体において、仕切部材と側板部材の組み合わせ構造を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る構造体において、仕切部材と側板部材の組み合わせ構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明に係る構造体の別の組立構造を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る構造体を地中に埋設した雨水浸透設備の平面図である。
【図9】図8の9−9線に沿った平面断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 面板部材
3 側板部材
4 仕切部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の仕切部材と、複数の側板部材と、複数の面板部材とを含む雨水等貯留浸透施設用構造体であって、
前記仕切部材のそれぞれは、扁平状であって、幅方向において相対向する2辺を有し、互いに間隔を隔てて配置されており、
前記側板部材は、扁平状であって、前記仕切部材の前記2辺に結合されており、
前記面板部材のそれぞれは、相対向する2辺のうちの一辺が、凹部を有し、他辺は凹部と対応する凸部を有し、隣接する面板部材において、一方の凹部に、他方の凸部を嵌め込む凹凸嵌合により全体として一体化されており、
前記仕切板及び前記側板部材は、高さ方向の辺が、隣接する面板部材の間で、前記面板部材の一面上に設けられた2つの突起の間に凹凸嵌合される、
雨水等貯留浸透施設用構造体。
【請求項2】
雨水等貯留浸透施設用構造体と、遮水層とを含む雨水等貯留浸透施設であって、
前記雨水等貯留浸透施設用構造体は、請求項1に記載されたものであって、地中に埋設されており、
前記遮水層は、雨水等貯留浸透施設用構造体の周囲に設けられている、
雨水等貯留浸透施設。
【請求項3】
雨水等貯留浸透施設用構造体と、透水層とを含む雨水等貯留浸透施設であって、
前記雨水等貯留浸透施設用構造体は、請求項1に記載されたものであって、地中に埋設されており、
透水層は、雨水等貯留浸透施設用構造体の周囲に設けられている
雨水等貯留浸透施設。
【請求項4】
請求項2又は3の何れかに記載された雨水等貯留浸透施設であって、前記雨水等貯留浸透施設用構造体は複数であり、長さ方向、幅方向、及び、高さ方向に積み重ねられている雨水等貯留浸透施設。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−37482(P2006−37482A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217975(P2004−217975)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】