雷撃試験装置、雷撃試験システム、および雷撃試験方法

【課題】結露等による撮影への支障や、漏電がない上、供試体の冷却効率が高く、かつコストダウンが可能な雷撃試験装置、雷撃試験システム、および雷撃試験方法の提供。
【解決手段】雷撃試験装置1は、雷撃電流が供給される供試体1を収容する暗箱31と、暗箱31に設置されて供試体1を撮影するカメラ32と、カメラ32により撮影される供試体1の撮影面1A、および供試体1の撮影面1Aとは反対側の面1Bの両面に沿って、冷却された冷却ガスを吹き付けるガス吹付器33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷撃電流を供試体に与えることによって耐雷性能に関する試験を行う雷撃試験装置、雷撃試験システム、および雷撃試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体を構成する翼は一般に中空構造となっており、翼表面を形成する翼面パネルは、翼内部にある構造部材にファスナ部材(留め具)によって締結されている。
また、この他にも翼内部や胴体部で、翼面パネル以外の構造部材や装備品の固定用の部材もファスナ部材によって締結されている。
【0003】
ところで、航空機においては、防爆のための被雷対策を万全に期す必要がある。航空機に被雷が発生して主翼等の翼面パネルや構造部材に大きな電流が流れると、上記のファスナ部材による締結部にその一部、場合によっては全部が流れる。その電流値が各締結部における通過許容電流の限界値を超えると、電気的アーク(あるいはサーマルスパーク)と呼ばれる放電が発生する(以下、本明細書中ではこれをアークと称する。)。これは、締結部を通過する電流により締結部を構成する主として導電部材からなる部材の締結界面の局部に急激な温度上昇が生じて溶融し近傍の大気中に放電が発生する現象で、多くの場合、溶融部分からホット・パーティクルと言われる溶融物の飛散が発生する。一般に翼の内部空間は燃料タンクを兼ねているため、この被雷時において、アークの発生を抑えるか、あるいは、アークを封止することによって、発生したアークの放電とそこから飛散するホット・パーティクルが可燃性の燃料蒸気に接触しないようにして発火を防止し、防爆対策を施す必要がある。ここで、可燃性の燃料蒸気が存在する可能性のある部位とは、翼内部および胴体部の、燃料タンク内部、一般に燃料タンクの翼端側に設置されるサージタンク(ベントスクープやバーストディスクなどが設置されるタンク)内部、燃料系統装備品内部等である。
【0004】
航空機の安全性確保のため、例えば上記のファスナ部材によって複数の部材が締結された箇所等について落雷を想定した試験が行われている。このような雷撃試験では、機体部品を模擬した供試体を暗箱内に設置し、雷撃電流発生手段から給電線を通じて供試体に雷撃電流を通過させる。このときの供試体を暗箱内のカメラにて撮影し、撮影された写真(撮影画像)に基づいて、アークに関する異常の有無を確認する手法が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3595913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した雷撃試験は常温下で行われているが、航空機のあらゆる運用条件を想定する観点からは、高高度を飛行中の外気温度(約−60℃)に供試体を冷却することにより、高高度を飛行中の環境を模擬した雷撃試験を行うことが望ましい。
【0007】
一方、航空機や、ロケット・人工衛星などの宇宙機における飛行中の極低温環境を想定した試験も行われている。このような試験には、例えば、特許文献1のように、供試体を収容するチャンバと、供試体に装着される冷却用の熱交換器とを備えた冷却装置が用いられている。
【0008】
このような冷却用の熱交換器で供試体を冷却することにより、高高度を模擬して雷撃試験を行おうとした場合、次のような問題がある。
すなわち、供試体を冷却する手段として熱交換器を用いた場合には、冷却効率が良くないなどの問題がある。つまり、供試体の一方の面全体を撮影する必要上、供試体の他方の面にしか熱交換器を装着することができないので、供試体の撮影面と冷却面との温度差が大きくなり、冷却にかなりの時間がかかってしまう。また、冷却された供試体に大気中の水分が接することで凝縮し、結露・霜付が発生する可能性があり、そのため写真撮影が正確に行えないおそれがある。結露・霜付の発生により、供試体への通電時に漏電するおそれもある。さらに、供試体に熱交換器が装着されていると、熱交換器に用いられた金属製の部材を介して漏電するおそれが大きい。
【0009】
一方、熱交換器を用いるのではなく、真空チャンバ内に設置したシュラウドを液体窒素で冷却することなどによって、供試体を含めたチャンバ内全体を極低温に冷却することも考えられる。しかし、この場合には、カメラの作動温度域を逸脱し、撮影記録が出来なくなる可能性がある。極低温領域でも撮影可能な特別なカメラを使用する場合には、装置コストが嵩んでしまう。
【0010】
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、結露等による撮影への支障や、漏電がない上、供試体の冷却効率が高く、かつコストダウンが可能な雷撃試験装置、雷撃試験システム、および雷撃試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的のもと、本発明の雷撃装置は、雷撃電流が供給される供試体を収容する暗箱と、暗箱に設置されて供試体を撮影する撮影手段と、撮影手段により撮影される供試体の撮影面と、供試体の撮影面とは反対側の面との両面に沿って、冷却された冷却ガスを吹き付けるガス吹付器と、を備えている。
【0012】
本発明によれば、供試体の両面における温度ムラが抑止されて供試体を迅速に極低温に冷却できるので、極低温下の試験を短時間で行える。また、乾燥した冷却ガスが供試体に吹き付けられることによって供試体の表面が乾燥した状態に保たれるので、大気中の水分が供試体に接して凝縮することによる結露や霜付を無くすことができる。これにより、供試体の撮影面を正確に表す撮影画像に基づいて試験を支障なく行える。結露や霜付が無いことと、供試体に装着される熱交換器などの付加物を不要にできることから、漏電のリスクを排除できる。
【0013】
さらに、冷却ガスが供試体に吹き付けられることによって、暗箱内の温度が一様には低下せず、撮影手段の温度が供試体の温度のようには低下しない。つまり、撮影手段が直接冷却されないので、極低温用途の特別なカメラではない一般のカメラ(撮影手段)を使用した撮影が可能となるとともに、撮影手段に設けられたレンズ等の結露、霜付をも防止できる。
以上から、高高度環境を模擬した極低温下での雷撃試験を正確にかつ安全に行うことができる上、供試体の冷却時間の短縮、一般のカメラの使用が可能となるので、コストを低廉にできる。
【0014】
本発明においては、暗箱において、供試体の一端側にガス吹付器が設けられ、供試体の他端側に、供試体を通過した冷却ガスを暗箱の外側に排出する排気手段が設けられていることが好ましい。
ここで、排気手段は、例えば、暗箱に設けられた開口部(排気口)である。あるいは、排気手段が排気口と、ファンなどの強制排気装置とを備えていてもよい。
【0015】
この発明によれば、供試体の一端側から吹き付けられた冷却ガスが供試体の他端側から速やかに排出されるので、暗箱内全体が冷却されることなく、供試体およびその近傍のみが局所的により確実に冷却される。これにより、撮影手段の温度を常温に近い温度に保つことができる。
【0016】
さらに、冷却ガスが排気されることで、暗箱内の空気中水分の凝縮による靄(もや)の発生を防止できる。このため、より明瞭で正確な撮影画像に基づいて試験を行うことができる。
【0017】
本発明においては、排気手段が、冷却ガスを導出するラビリンス流路を有し、ラビリンス流路が、冷却ガスの導出方向と交差した複数の遮光部材を有することが好ましい。
【0018】
この発明によれば、ラビリンス流路の遮光部材によって、直進性を有する光束が遮蔽されるので、排気口に暗幕等を設けた場合に比べ、排気口からの光漏れを確実に防止できる。これにより、雷撃時に供試体の締結界面などに生じうるアーク(サーマル・スパーク)の明瞭な撮影が可能となる。また、暗幕等を用いる場合に比べ、冷却ガスのスムーズな排出が可能となるので、暗箱内に残留した冷却ガスによる撮影手段の温度低下を最小限とすることができる。
【0019】
本発明においては、ラビリンス流路が、冷却ガスを鉛直方向下側に向けて導出し、遮光部材が、冷却ガスを下流に案内する側に傾斜していることが好ましい。
この発明によれば、暗箱内外におけるガス雰囲気の密度差による自然排出が、遮光部材が傾斜していることによって促進されるので、強制排気手段を用いなくても、冷却ガスのスムーズな排出が可能となる。
【0020】
本発明においては、暗箱外から暗箱内に冷却ガスを供給する供給配管を備え、ガス吹付器が、供給配管に接続された吹付配管を含み、供給配管と吹付配管とが、互いに突き当てられるフランジを有し、供給配管と吹付配管との一方である第1フランジには、他方である第2フランジ側とは反対側の面に沿ったプレートが設けられ、第2フランジと、プレートとが、弾性を有する弾性ワッシャが設けられた締結部材によって第1フランジを間に挟んだ状態で締結されていることが好ましい。
弾性ワッシャは、締結部材の両端に設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明においては、供給配管およびプレートが、導電性材料から形成され、吹付配管が、非導電性材料から形成され、吹付配管のフランジが、第1フランジであることが好ましい。
すなわち、供給配管と吹付配管のうち、供給配管に比べて破損し易い非導電性材料から形成された吹付配管のフランジが第1フランジとして、第2フランジとプレートとの間に挟まれていることが好ましい。
この発明によれば、ガス吹付器に非導電性材料から形成された配管を採用して漏電防止を図るとともに、非導電性材料から形成された配管と導電性材料から形成された配管との間の収縮率の差から生じる問題を克服できる。
【0022】
本発明においては、第1フランジに、締結部材の外径よりも大きい径の孔が形成されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明の雷撃試験システムは、雷撃電流を発生させる雷撃電流発生装置と、雷撃試験装置と、雷撃試験装置を制御する制御装置と、を備えている。雷撃試験装置は、雷撃電流が供給される供試体を収容する暗箱、暗箱に設置されて供試体を撮影する撮影手段、および撮影手段により撮影される供試体の撮影面と、供試体の撮影面とは反対側の面との両面に沿って、冷却された冷却ガスを吹き付けるガス吹付器を有する。
【0024】
本発明の雷撃試験システムにおいては、供試体に装着されて供試体の温度を検出する温度センサと、センサによる検出信号を処理する信号処理部とを有する温度計測手段を備えていることが好ましい。温度センサと、信号処理部とは、抜き挿し可能なコネクタによって接続されている。
【0025】
この発明においては、センサにより供試体の温度を計測し、供試体の温度が予め定められた設定温度に到達した後、供試体に雷撃電流が供給される前にコネクタを抜いてセンサと信号処理部とを切り離す。このため、雷撃電流によって信号処理部が破損することなく、所望の温度に冷却された供試体に雷撃電流を与えることが可能となるので、極低温下での雷撃試験を正確に行うことができる。
【0026】
本発明の雷撃試験システムにおいては、雷撃電流発生装置が、異なる電流波形パターンを生成する複数の電流波形パターン生成回路を有することが好ましい。
この発明によれば、複数の電流波形パターンが複合した様々な雷撃電流を発生させることができる。
【0027】
本発明の雷撃試験システムにおいては、供試体へ雷撃電流を供給する指示が入力される雷撃指示入力部、および雷撃指示入力部への入力時を起点に、予め設定された雷撃待機時間を計時する計時部を有する雷撃実施装置と、雷撃指示入力部への入力を契機に、雷撃待機時間に応じて予め設定された時間を計時し、その計時終了時に撮影手段を動作させるトリガ装置と、を備えることが好ましい。
この発明によれば、トリガ装置により計時される時間が雷撃待機時間に応じて設定されることにより、被雷直後の供試体の撮影を自動化することができる。
【0028】
また、本発明の雷撃試験方法は、撮影手段が設置された暗箱に収容された供試体に対し、撮影手段により撮影される供試体の撮影面と、供試体の撮影面とは反対側の面との両方に沿って冷却ガスを吹き付け、供試体が冷却ガスにより冷却された後、供試体に雷撃電流を供給し、撮影手段により供試体を撮影する。
【0029】
本発明の雷撃試験方法においては、供試体を通過した冷却ガスを暗箱の外側に排出することが好ましい。
【0030】
本発明の雷撃試験方法においては、供試体に装着されたセンサにより供試体の温度を計測し、供試体の温度が予め定められた設定温度に到達した後、供試体に雷撃電流が供給される前に、センサと、センサによる検出信号を処理する信号処理部とを接続するコネクタを抜いてセンサと信号処理部とを切り離すことが好ましい。
【0031】
本発明の雷撃試験方法においては、供試体へ雷撃電流を供給する指示が入力される雷撃指示入力部への入力時を起点に、予め設定された雷撃待機時間を計時し、その計時終了時に供試体へ雷撃電流を通電する一方で、雷撃指示入力部への入力を契機に、雷撃待機時間に応じて予め設定された時間を計時し、その計時終了時に撮影手段を動作させることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、結露等による撮影への支障や、漏電がない上、供試体の冷却効率が高く、かつコストダウンできる。
加えて、冷却にガスを用いるため、供試体に固体冷却器を装着して供試体を冷却する場合とは異なり、種々の形状の供試体に容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る雷撃試験システムの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の雷撃試験装置の斜視図である。
【図3】雷撃電流の波形パターンの一例を示す図である。A〜Dの各区間は、その時間軸のスケールが異なる。
【図4】第2実施形態の雷撃試験装置を示す断面図である。
【図5】図4のV-V線矢視図である。
【図6】第3実施形態の雷撃試験装置の断面図である。
【図7】第4実施形態の雷撃試験装置の断面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線矢視図である。
【図9】上記各実施形態の雷撃試験装置に適用し得るガス吹付器の配管を示す図である。
【図10】図9のガス吹付器の配管と、ガス供給配管との接続部を示す断面図である。
【図11】図10の改良例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。なお、以降の説明において、それ以前に説明した構成と同様の構成については、同じ符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
〔第1実施形態〕
図1に示す雷撃試験システム100は、供試体1に雷撃電流を供給する雷撃電流発生装置2と、供試体1の撮影手段を有する雷撃試験装置3と、冷却用のガスを貯蔵するガス貯蔵タンク4と、ガス貯蔵タンク4内のガスを用いて冷却ガスを調製し、雷撃試験装置3に冷却ガスを供給する冷却ガス調製・供給装置5と、雷撃試験システム100全体の制御を行う制御室6とを備えている。
【0035】
また、雷撃試験システム100には、供試体1に装着されて供試体1の温度を検出する温度センサ101と、冷却ガス調製・供給装置5における冷却ガスの温度を検出する温度センサ102とが設けられている。温度センサ101,102には、例えば熱電対が用いられている。
【0036】
制御室6は、雷撃試験装置3および冷却ガス調製・供給装置5を制御して供試体1を撮影・記録するとともにその撮影画像を図示しないモニタに表示する記録・表示装置61と、雷撃電流発生装置2を制御する雷撃制御系62と、測定された雷撃電流の電流波形を測定するオシロスコープ631〜633とを有している。
【0037】
記録・表示装置61は、温度センサ101,102によるそれぞれの検出信号を処理する信号処理部611を有している。
雷撃制御系62は、供試体1へ雷撃電流を供給する雷撃実施装置621を有している。この雷撃実施装置621は、供試体1へ雷撃電流を供給する指示が入力される雷撃指示入力部としての雷撃指示スイッチ621Aと、この雷撃指示スイッチ621Aが入れられた時を起点に、予め設定された雷撃待機時間を計時する計時部621Bとを有している。雷撃待機時間は、任意の時間に設定できる。
雷撃制御系62には、雷撃実施装置621の雷撃指示スイッチ621Aに連動するトリガ装置104が光ファイバケーブルで接続されている。
トリガ装置104は、雷撃実施装置621における雷撃待機時間に応じて予め設定された撮影待機時間を計時するタイマ104Aを有している。撮影待機時間は、雷撃実施装置621において設定された雷撃待機時間を考慮し、雷撃電流が流れる直前にカメラ32のシャッターが開となるように決められている。
【0038】
温度センサ101と、信号処理部611とにより、供試体1の温度を計測する温度計測手段が構成されている。温度センサ101と信号処理部611とは、抜き挿し可能なコネクタ105によって接続されている。また、温度センサ102と、信号処理部611とにより、冷却ガスの温度を計測する温度計測手段が構成されている。温度センサ102と信号処理部611とは、抜き挿し可能なコネクタ106によって接続されている。
【0039】
雷撃電流発生装置2は、雷撃電流となる電荷を蓄積する複数の大容量のキャパシタ211〜213と、制御スイッチ221〜223のそれぞれを介してキャパシタ211〜213に接続された複数の電流波形パターン生成装置231〜233とを有している。この雷撃電流発生装置2は雷撃制御系62に接続されている。電流波形パターン生成装置231〜233により、互いに異なる複数、例えばA〜Dの4つの波形パターンが生成される。なお、キャパシタ211は、その容量が切り替え可能になっており、キャパシタ211の容量の切り替えによって、図3に示すAの波形パターンとDの波形パターンとのいずれかが電流波形パターン生成装置231によって生成される。
制御スイッチ221〜223のそれぞれのオンオフが、雷撃制御系62による遠隔制御によって切り替えられる。
【0040】
雷撃試験装置3は、図2に示すように、供試体1を収容する暗箱31と、暗箱31内に設置された撮影手段としての2台のカメラ32(図1には1台のみ示す)と、供試体1の上方に設けられたガス吹付器33とを備えている。供試体1に対して、カメラ32は所定の焦点距離をおいて配置されている。すなわち、供試体1とカメラ32とは、暗箱31の一端側と他端側とにそれぞれ配置されている。
カメラ32には、トリガ装置104が接続されており、トリガ装置104によってカメラ32が動作する構成となっている。上述のようにトリガ装置104と雷撃制御系62とが光ファイバケーブルによって光学的に接続されていることにより、雷撃時におけるカメラ32を通じた漏電を防止できる。このため、後述する温度センサ101,102と信号処理部611との接続のように、雷撃前に切り離す必要はない。
【0041】
供試体1は、図示を簡略化するが、翼面パネルを模擬した板状部材と、翼内部の構造部材と模擬した板状部材とがこれらの厚み方向に貫通するファスナ部材によって締結されたパネル状のものである。供試体1は、暗箱31の一端側と他端側とを結ぶ方向(カメラ32による撮影方向と同じ)と直交する面に沿って配置されている。なお、雷撃試験装置3によって試験される供試体1は、翼面パネルと翼内部の構造部材とを模擬した板部材に限らず、任意の形状および構造のものであってよい。
【0042】
供試体1の端部近傍には、雷撃電流発生装置2から雷撃電流が供給される給電線11が接続されている。供試体1において給電線11が接続された側とは反対の端部近傍には、接地線12が接続されている。
【0043】
カメラ32は、例えば、市販されている一般のディジタルカメラを用いることができる。このカメラ32は、供試体1の板面(撮影面1A)に向けて設置されている。
【0044】
ガス吹付器33は、供試体1の上端面1Cに沿って延びた樹脂製の筒体である。ガス吹付器33の内部には、ガス吹付器33の一端側に接続された金属製の供給配管51を介して、冷却ガス調製・供給装置5から冷却ガスが供給される。ガス吹付器33において供試体1の上端面1Cに対向する位置には、多数の孔331(図9)が形成されている。これらの孔331から供試体1に向けて冷却ガスが噴出されることにより、供試体1の撮影面1Aと、撮影面1Aとは反対側の面1Bとの両面全体に沿って冷却ガスが吹き付けられる。なお、多数の孔331の代わりに、ガス吹付器33の長手方向に沿ったスリットが形成されていてもよい。
【0045】
次に、雷撃試験システム100を用いた供試体1の雷撃試験方法を説明する。先ず、記録・表示装置61によって冷却ガス調製・供給装置5を制御することによって冷却ガスを冷却ガス設定温度に調製し、その冷却ガスをガス吹付器33によって供試体1の撮影面1Aと反対側の面1Bとの両方に沿って吹き付けることにより、供試体1を冷却する。冷却中の供試体1の温度は温度センサ101および信号処理部611によって計測される。
【0046】
供試体1が両面側から冷却されることにより、供試体1の両面に温度ムラが生じ難いので、供試体1が極低温である例えば−60℃以下に迅速に冷却される。
また、冷却ガスの密度が暗箱31内の大気の密度よりも大きいので、供試体1の上方から冷却ガスが吹き付けられることによって、供試体1の両面に沿ったガス流の流れが促進される。このため、供試体1の表面に沿って冷却ガスがスムーズに流れる。
【0047】
ここで、試験時における冷却ガスの流量、および各部の温度の一例を挙げると、冷却ガス流量が50kg/h、ガス吹付器33から噴出された冷却ガスの温度が−95.8℃、供試体1の温度が−90.1℃、カメラ32周辺の温度が9.5℃である。このとき、暗箱31の奥行L1、幅L2、および高さL3はそれぞれ、930mm、300mm、および600mmである。供試体の冷却時間の一例として、テープ状の供試体(幅475.5mm、高さ25.4mm、厚さ3mm)の場合のデータを示すと、上記のガス流量で供試体が上記温度に達する時間は、9分41秒である。
【0048】
温度センサ101および信号処理部611によって計測された供試体1の温度が予め定められた設定温度(極低温)に到達したら、下記のようにコネクタ105,106を抜いた上で、雷撃を実施する。
【0049】
温度センサ101および信号処理部611によって計測された供試体の温度が設定温度に到達した後、供試体1に雷撃電流が供給される前に、コネクタ105を抜き、供試体1に装着された温度センサ101と、信号処理部611とを切り離す。これにより、供試体1に供給された雷撃電流の漏電によって信号処理部611が故障することを防止できる。また、金属製の供給配管51を通じた雷撃電流の漏電防止のため、冷却ガス調製・供給装置5に設けられた温度センサ102と、信号処理部611とについても、雷撃前にコネクタ106を抜いて切り離す。なお、コネクタ105,106の抜き挿しを自動的に行う電気的あるいは機械的な手段が設けられていてもよい。雷撃待機時間によっては、雷撃指示スイッチ621Aが入れられた後、コネクタ105,106が抜かれるように構成されていてもよい。
【0050】
雷撃の実施にあたっては、雷撃制御系62によって雷撃電流発生装置2を制御することにより、供試体1に雷撃電流を供給する。
雷撃を実施するための雷撃指示は、供試体1が極低温であることを記録・表示装置61のモニタで目視確認後に、手動で雷撃実施装置621の雷撃指示スイッチ621Aが入れられることによって行われてもよいし、信号処理部611と雷撃制御系62との連携処理により、供試体1が極低温となったときに雷撃制御系62によって自動で雷撃指示スイッチ621Aが入れられることによって行われてもよい。
雷撃指示スイッチ621Aが入れられると、雷撃実施装置621の計時部が、雷撃指示スイッチ621Aが入れられた時を起点として雷撃待機時間を計時すると共に、トリガ装置104によるトリガが掛かる。トリガ装置104は、雷撃指示スイッチ621Aが入れられたことを契機に、撮影待機時間を計時する。
【0051】
雷撃待機時間の計時終了時、雷撃制御系62により、制御スイッチ221〜223が順次オンオフされることにより、例えば図3のように複数の波形パターンが複合した雷撃電流が供試体1に通電される。図3のAの区間では、制御スイッチ221がオン、他の制御スイッチ222,223がオフとされることにより、キャパシタ211と、電流波形パターン生成装置231と、供試体1とを含む回路が形成される。このとき、電流波形パターン生成装置231が生成したAの波形パターンの雷撃電流が供試体1に供給される。
【0052】
上記と同様に、Bの区間では、制御スイッチ222がオン、他の制御スイッチ221,223がオフとされることにより、キャパシタ212と、電流波形パターン生成装置232と、供試体1とを含む回路が形成され、Bの波形パターンの雷撃電流が供試体1に供給される。以降同様に、Cの区間、Dの区間においてもそれぞれ、Cの波形パターン、Dの波形パターンが生成され、図3に示すようなA〜Dの波形パターンが複合した雷撃電流が供試体1に供給される。なお、キャパシタ211の容量切り替えによって、Aの波形パターンとDの波形パターンとに回路が共用されているため、Dの区間においては、Aの区間と同様の回路が形成される。
【0053】
制御スイッチ221〜223のオンオフによって形成された各回路を流れた雷撃電流は、回路毎に設けられた電流測定手段によって測定される。制御スイッチ221を含む回路に対応する電流測定手段は、オシロスコープ631と、カレント・トランスフォーマーCTとを含んで構成されている。同様に、制御スイッチ222を含む回路に対応する電流測定手段は、オシロスコープ632と、カレント・トランスフォーマーCTとを含んで構成されている。また、制御スイッチ223を含む回路に対応する電流測定手段は、オシロスコープ633と、回路に直列に挿入されたシャント抵抗とを含んで構成されている。これらの電流測定手段によって測定された雷撃電流は、記録・表示装置61によって表示・記録される。
【0054】
制御スイッチ221〜223を適宜切り替えることにより、種々の波形パターンの雷撃電流を発生させることができる。A〜Dの波形パターンは、それぞれ単体で用いられてもこれらのうち2つ以上が組み合わせられて用いられてもよい。また、キャパシタ211〜213の容量を変えることにより、雷撃電流の大きさを調整できる。試験条件や、規格に応じて、雷撃電流の大きさおよび波形パターンが選択される。
【0055】
一方、撮影待機時間の計時終了時に、トリガ装置104は2台のカメラ32を動作させる。トリガ装置104において設定された撮影待機時間は、雷撃実施装置621において設定された雷撃待機時間を考慮して決められているため、雷撃電流が流れる直前にカメラ32のシャッターが開となり、雷撃電流が流れた直後の供試体1の撮影面1Aを撮影することができる。2台のカメラ32の撮影タイミングは、同時でも僅かにずれていてもよい。また、供試体1への一度の雷撃において、2台のカメラ32により1回の撮影が行われていてもよいし、複数回の撮影が行われていてもよい。一度の雷撃時において異なるタイミングで撮影することにより、発生したアークをより確実に捕えることができる。
なお、図3に示すように、雷撃電流はごく僅かの時間に瞬間的に生じており、供試体1の撮影は瞬時に行われる。
【0056】
カメラ32により撮影された供試体1の撮影画像のデータは、記録・表示装置61に送られる。記録・表示装置61は、撮影画像データを記録装置に記録し、モニタに撮影画像を表示する。記録・表示された撮影画像に基づいて、極低温下での供試体1の耐雷性能が試験される。供試体1の締結界面などで生じうるアークの発生防止やアークの封止が不十分であると、撮影画像にアークの閃光が映るため、その閃光の有無や閃光の状態を評価することによって、供試体1の耐雷性能を試験することができる。
【0057】
以上説明した第1実施形態によれば、次のような効果が得られる。
冷却ガスによって供試体1が両面側から冷却されることにより、供試体1の撮影面1Aとその反対側の面1Bとに温度ムラが生じ難いので、供試体1の冷却効果が高い。また、冷却ガスを用いて供試体1が冷却されることにより、固体冷却器(熱交換器など)の付加物を供試体1に装着することを不要にできるので、固体冷却器に用いられた導電性部材を介した漏電を防止できる。
その上、供試体1の上方から冷却ガスが吹き付けられることによって、十分な流量の冷却ガスが供試体1の表面全体に沿って均一に流れるので、供試体1の面内に温度ムラが生じ難い点でも、供試体1の冷却効果を高くできる。雷撃試験システム100によれば、極低温下の雷撃試験を短時間で行える。
【0058】
また、乾燥した冷却ガスが吹き付けられることによって供試体1の表面が乾燥した状態に保たれるので、大気中の水分が供試体1表面で凝縮することによる結露や霜付が生じない。
さらに、冷却ガスが供試体1に吹き付けられることによって、暗箱31内の温度が一様には低下しないので、カメラ32のレンズ等の結露、霜付を防止できる。
このように供試体1やカメラ32に結露や霜付が発生しないため、供試体1の撮影面1Aを正確に表す撮影画像に基づいて試験を支障なく行える。その上、供試体1に結露や霜付が発生しないことにより、漏電を防止できる。
またさらに、冷却ガスが供試体1に吹き付けられることによって、暗箱31内の温度が一様には低下しないことから、カメラ32およびその周辺が供試体1の温度のようには低温とならない。このため、カメラ32として、極低温用途の特別なカメラではない一般のカメラを用いることができる。特別なカメラが不要となることで、雷撃試験システム100を低コストで構成できる。
以上から、高高度環境を模擬した極低温下での雷撃試験を正確かつ安全に、また低コストで行うことができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
図4および図5に示すように、ガス吹付器33は、第2実施形態の雷撃試験装置7の暗箱71において、供試体1よりも鉛直方向上側に設けられている。また、供試体1よりも鉛直方向下側には、冷却ガスの排気手段72が設けられている。この排気手段72は、供試体1の板面方向と交差した暗箱71の側面71Aの下部に形成された排気口721と、供試体1を通過した冷却ガスを排気口721に向けて導出する排気流路722とを有している。
【0060】
図4および図5に示すように、暗箱71の底面71Bにおいて供試体1の下側の部分を除いた部分が断面L字状のカバー73によって覆われている。排気流路722は、カバー73の側面部73Aと、暗箱71の底面71B、側面71A、側面71C、および側面71Dとによって形成されている。排気流路722は、暗箱71の一端側および他端側を結ぶ方向と、鉛直方向との両方に交差する方向(導出方向D)に沿って冷却ガスを導出する。
排気口721の近傍には、強制排気手段である排気ファン74が設けられている。
【0061】
ガス吹付器33によって暗箱71内に導入された冷却ガスは、供試体1を通過後、排気流路722を通って導出方向Dに沿って流れ、排気口721から暗箱71の外側に排出される。なお、排気ファン74が設けられていることで、冷却ガスの迅速な排出が可能となるが、排気ファン74が設けられていなくても、冷却ガスの自然排出が可能である。
【0062】
冷却ガスが暗箱71外に排出されることにより、暗箱71内の全体が冷却されることなく、供試体1およびその近傍のみが局所的により確実に冷却される。これによってカメラ32の温度を常温に近い温度に保つことができるので、極低温用途ではない一般のカメラ32の確実な動作を保証できる。
【0063】
さらに、冷却ガスが排気されることで、暗箱71内の空気中水分の凝縮による靄(もや)の発生を防止できる。第1実施形態で述べたような結露・霜付の防止に加えて、靄の発生を防止できることで、より明瞭で正確な撮影画像に基づいて試験を行うことができる。
【0064】
〔第3実施形態〕
図6に示すように、第3実施形態における排気手段78は、上述した排気流路722と、排気流路722に連続し、暗箱71の一端側と他端側とを結ぶ方向に沿って延びて冷却ガスを導出するラビリンス流路781と、ラビリンス流路781によって導出された冷却ガスを暗箱71外に排出する排気口782とを有している。
【0065】
ラビリンス流路781は、ラビリンス流路781の対向する側壁781Aと側壁781Bとに、導出方向D(暗箱71の奥行方向)において交互に設けられた複数の遮光部材783A,783Bを有している。これらの遮光部材783A,783Bは、側壁781Aと側壁781Bとからそれぞれ、導出方向Dに直交する方向に沿って突出し、ラビリンス流路781の開口寸法Wを二分する中心軸線A−Aを超える位置まで延びている。
【0066】
遮光部材783A,783Bにより、直進性を有する光束が遮蔽されるので、排気口782に向かう光が減衰する。特に、本実施形態では暗箱71の奥行き方向に流路を長くとっており、数多くの遮光部材783A,783Bを配置することも可能なため、排気口782に暗幕等を設けた場合に比べ、排気口782からの光漏れをより確実に防止できる。
【0067】
ラビリンス流路781によって暗箱71内の遮光性が確保されることにより、雷撃時に生じうるアークの明瞭な撮影が可能となる。また、排気口782に暗幕等を設けた場合に比べ、冷却ガスのスムーズな排出が可能となるので、暗箱71内に残留した冷却ガスによるカメラ32の温度低下を最小限とすることができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
図7および図8に示すように、第4実施形態の排気手段81は、冷却ガスを鉛直方向下側に向けて導出するラビリンス流路811と、ラビリンス流路811を通った冷却ガスを排出する排気口812とを有している。本実施形態では、暗箱71外の大気の密度よりも大きい密度の冷却ガスが用いられる。
ラビリンス流路811は、供試体1を通過する冷却ガスの流れFLの延長上にあり、カバー73の側面部73Aと暗箱71の底面71B、側面71A、側面71C、および側面71Dとによって形成されている。ラビリンス流路811は、その導出方向Dと交差する方向に延びた遮光部材811A,811Bを有している。
【0069】
遮光部材811A,811Bは、暗箱71の側面71C,71Aに交互に設けられている。遮光部材811Aは、暗箱71の側面71Cから導出方向Dと斜めに交差する方向に延びている。遮光部材811Aの先端P1は、遮光部材811Aの基端Q1よりも鉛直方向下側にある。一方、遮光部材811Bは、暗箱71の側面71Aにおいて、遮光部材811Aの先端P1よりも下側の位置から、導出方向Dと斜めに交差する方向に延びている。遮光部材811Bの先端P2は、遮光部材811Bの基端Q2よりも鉛直方向下側にある。以上から、遮光部材811A,811Bはそれぞれ、冷却ガスを下流側に案内する側に傾斜している。
このことにより、冷却ガスの自重による自然排出が促進される。つまり、暗箱71内外におけるガス雰囲気の密度差による自然排出がされ易くなる。このため、排気ファン74(図6)を用いなくても、冷却ガスのスムーズな排出が可能となる。
【0070】
また、ラビリンス流路811の導出方向Dにおける長さが図6のラビリンス流路781の導出方向Dにおける長さと比べて短い点でも、冷却ガスの排出をスムーズにできる。暗箱71においてラビリンス流路781,811等を設ける位置は、暗箱71の高さ・幅・奥行寸法、供試体1の高さ・幅・厚み寸法に応じて適宜変更することができる。
【0071】
遮光部材811A,811Bによって案内された冷却ガスは、暗箱71の側面71Aに形成された排気口812から排出される。なお、排気口812の場所は、暗箱71の底面71Bであってもよい。排気口812の位置に関わらず、遮光部材811A,811Bによる排出促進の効果が得られる。
【0072】
次に、上記各実施形態の雷撃試験装置に適用し得る冷却ガスの配管接続構造に関して説明する。
図9は、暗箱(不図示)に設けられたガス吹付器33を示す。ガス吹付器33は非導電性材料である樹脂から形成されている。ガス吹付器33は供試体1に近いため、樹脂などの非導電性材料から形成されることにより、供試体1への雷撃時の漏電を防止できる。ガス吹付器33は、冷却ガス調製・供給装置5(図1)の供給配管51に接続された吹付配管35を有する。吹付配管35も、非導電性材料である樹脂から形成されている。
【0073】
図10に示すように、吹付配管35は樹脂製の樹脂フランジ350(第1フランジ)を有し、供給配管51は金属製の金属フランジ510(第2フランジ)を有している。これらの樹脂フランジ350と金属フランジ510とは互いに突き当てられている。
【0074】
樹脂フランジ350には、金属フランジ510側とは反対側の面350Aに沿った金属製のプレート355が配置されている。プレート355には、吹付配管35の円筒状の部分351が通される孔355Aが形成されている。このプレート355と金属フランジ510とが締結部材38によって樹脂フランジ350を間に挟んだ状態で締結されている。
【0075】
プレート355および金属フランジ510には、締結部材38が設けられる孔355A,510Aがそれぞれ形成されている。これらの孔355A,510Aは、金属フランジ510の周方向において複数の位置に形成されている。
【0076】
締結部材38は、孔355A,510Aを貫通するボルト380と、ボルト380の両端に設けられたナット381とを有している。また、締結部材38の両端におけるプレート355とナット381との間、および金属フランジ510とナット381との間にはそれぞれ、弾性ワッシャ39が設けられている。弾性ワッシャ39には、ゴム材料で形成されたゴムワッシャや、スプリングワッシャなどを用いることができる。
【0077】
冷却ガス調製・供給装置5からガス吹付器33を介して暗箱71内に冷却ガスが導入されることにより、供給配管51および吹付配管35が冷却されると、金属フランジ510と樹脂フランジ350との収縮率の差により、これら金属フランジ510と樹脂フランジ35とに応力が生じる。ここで、これら金属フランジ510と樹脂フランジ35とがプレート355を介して締結され且つ、締結部材38に弾性ワッシャ39が設けられていることにより、冷却時にフランジ350,510がすべり合うのが許容される。すなわち、フランジ350,510間の相対位置ズレが許容される。このようにして、フランジ350,510収縮率の差が吸収されるので、吹付配管35および供給配管51の応力を低減できる。これによって吹付配管35および供給配管51の破損を防止できる。
【0078】
図11は、図10の改良例を示す。図11の樹脂フランジ(第1フランジ)450には、ボルト380の外径よりも大きい径の孔451が形成されている。このような孔451が形成されていることにより、プレート355と金属フランジ510の締結時における吹付配管35と供給配管51との位置決めが容易となる。また、ボルト380と孔451の内壁との間に隙間Sがあいているため、収縮率の差によるフランジ450,510の破損を防止できる。
【0079】
なお、上述の各実施形態においては、冷却ガスが供試体1の上方から吹き付けられていたが、供試体1の横側や、下側から冷却ガスが吹き付けられていてもよい。例えば、供試体1の側面1D(図2)に対応する位置にガス吹付器が設けられており、冷却ガスが供試体1の横側から供試体1の撮影面1Aとその反対側の面1Bとの両面に沿って吹き付けられていてもよい。
【0080】
さらに、第2実施形態などにおいて、供試体1の上方から供試体1の両面に沿って吹き付けられた冷却ガスを、供試体1の下方に設けられた排気口721から暗箱71外に排出する構成を例示したが、このように、供試体1の一端側から吹き付けられた冷却ガスが供試体1の他端側から排出される構成に本発明は限定されず、例えば、供試体1の横側から吹き付けられた冷却ガスが、暗箱71の底面71B(図4)に形成された排気口から排出されていてもよい。
【0081】
ここで、冷却ガスの吹き付け方向、排気手段の位置、および排気手段における冷却ガスの導出方向は、冷却ガスと大気との密度差の大小関係を考慮して決められると良い。上記各実施形態とは異なり、大気の密度よりも密度が小さい冷却ガスが用いられる場合には、供試体1の下方から上方へと冷却ガスを吹き付けることにより、供試体1に沿って冷却ガスがスムーズに流れる。このような場合においては、排気手段を供試体1よりも鉛直方向上側に設けることが好ましい。さらに、排出手段による導出方向を鉛直方向下側から上側に向かう方向とすれば、冷却ガスをスムーズに排出できる。
【0082】
また、第2実施形態などでは、冷却ガスの排気流路が暗箱71の壁面(底面71B、側面71A、71C)を含んで暗箱71内部に形成されていたが、排気流路は暗箱71の外側に設置されたものであってもよい。
【0083】
さらに、雷撃試験装置3,7等に用いられるカメラ32の台数に制限はなく、1台のカメラ32によって供試体1が撮影されていてもよい。
なお、カメラ32は銀塩方式のカメラであってもよく、その場合には、撮影画像である写真に基づいて、供試体1の耐雷性能が試験されることになる。
【0084】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 供試体
1A 撮影面
1B 撮影面とは反対側の面
2 雷撃電流発生装置
3,7 雷撃試験装置
6 制御装置
31,71 暗箱
32 カメラ(撮影手段)
33 ガス吹付器
35 吹付配管(非金属製の配管)
38 締結部材
39 弾性ワッシャ
51 供給配管
72,78,81 排気手段
100 雷撃試験システム
101,102 温度センサ
104 トリガ装置
104A タイマ
105,106 コネクタ
231〜233 電流波形パターン生成装置
350,450 樹脂フランジ(第1フランジ)
355 プレート
380 ボルト
381 ナット
510 金属フランジ
611 信号処理部
621 雷撃実施装置
621A 雷撃指示スイッチ(雷撃指示入力部)
621B 計時部
721,782,812 排気口
722 排気流路
781,811 ラビリンス流路
783A,783B,811A,811B 遮光部材
D 導出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷撃電流が供給される供試体を収容する暗箱と、
前記暗箱に設置されて前記供試体を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影される前記供試体の撮影面、および前記供試体の前記撮影面とは反対側の面の両面に沿って、冷却された冷却ガスを吹き付けるガス吹付器と、を備えたことを特徴とする雷撃試験装置。
【請求項2】
前記暗箱において、前記供試体の一端側に前記ガス吹付器が設けられ、
前記供試体の他端側に、前記供試体を通過した前記冷却ガスを前記暗箱の外側に排出する排気手段が設けられている、請求項1に記載の雷撃試験装置。
【請求項3】
前記排気手段が、前記冷却ガスを導出するラビリンス流路を有し、
前記ラビリンス流路が、前記冷却ガスの導出方向と交差した複数の遮光部材を有する、請求項1または2に記載の雷撃試験装置。
【請求項4】
前記ラビリンス流路が、前記冷却ガスを鉛直方向下側に向けて導出し、
前記遮光部材が、前記冷却ガスを下流に案内する側に傾斜している、請求項1から3のいずれか1項に記載の雷撃試験装置。
【請求項5】
前記暗箱外から前記暗箱内に前記冷却ガスを供給する供給配管を備え、
前記ガス吹付器が、前記供給配管に接続された吹付配管を含み、
前記供給配管と前記吹付配管とが、互いに突き当てられるフランジを有し、
前記供給配管と前記吹付配管との一方である第1フランジには、他方である第2フランジ側とは反対側の面に沿ったプレートが設けられ、
前記第2フランジと、前記プレートとが、弾性を有する弾性ワッシャが設けられた締結部材によって前記第1フランジを間に挟んだ状態で締結されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の雷撃試験装置。
【請求項6】
前記供給配管および前記プレートが、導電性材料から形成され、
前記吹付配管が、非導電性材料から形成され、
前記吹付配管のフランジが、前記第1フランジである、請求項5に記載の雷撃試験装置。
【請求項7】
前記第1フランジに、前記締結部材の外径よりも大きい径の孔が形成されている、請求項5または6に記載の雷撃試験装置。
【請求項8】
雷撃電流を発生させる雷撃電流発生装置と、
前記雷撃電流が供給される供試体を収容する暗箱、前記暗箱に設置されて前記供試体を撮影する撮影手段、および前記撮影手段により撮影される前記供試体の撮影面と、前記供試体の前記撮影面とは反対側の面との両面に沿って、冷却された冷却ガスを吹き付けるガス吹付器を有する雷撃試験装置と、
前記雷撃試験装置を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする雷撃試験システム。
【請求項9】
前記供試体に装着されて前記供試体の温度を検出する温度センサと、前記センサによる検出信号を処理する信号処理部とを有する温度計測手段を備え、
前記温度センサと、前記信号処理部とが、抜き挿し可能なコネクタによって接続されている。請求項8に記載の雷撃試験システム。
【請求項10】
前記雷撃電流発生装置が、異なる電流波形パターンを生成する複数の電流波形パターン生成回路を有する、請求項8または9に記載の雷撃試験システム。
【請求項11】
前記供試体へ雷撃電流を供給する指示が入力される雷撃指示入力部、および前記雷撃指示入力部への入力時を起点に、予め設定された雷撃待機時間を計時する計時部を有する雷撃実施装置と、
前記雷撃指示入力部への入力を契機に、前記雷撃待機時間に応じて予め設定された時間を計時し、その計時終了時に前記撮影手段を動作させるトリガ装置と、を備える、請求項8から10のいずれか1項に記載の雷撃試験システム。
【請求項12】
撮影手段が設置された暗箱に収容された供試体に対し、前記撮影手段により撮影される前記供試体の撮影面と、前記供試体の前記撮影面とは反対側の面との両方に沿って冷却ガスを吹き付け、
前記供試体が前記冷却ガスにより冷却された後、前記供試体に雷撃電流を供給し、前記撮影手段により前記供試体を撮影することを特徴とする雷撃試験方法。
【請求項13】
前記供試体を通過した前記冷却ガスを前記暗箱の外側に排出する、請求項12に記載の雷撃試験方法。
【請求項14】
前記供試体に装着された温度センサと、前記温度センサによる検出信号を処理する信号処理部とにより前記供試体の温度を計測し、
前記供試体の温度が予め定められた設定温度に到達した後、前記供試体に前記雷撃電流が供給される前に、前記センサと前記信号処理部とを接続するコネクタを抜いて前記センサと前記信号処理部とを切り離す、請求項12または13に記載の雷撃試験方法。
【請求項15】
前記供試体へ雷撃電流を供給する指示が入力される雷撃指示入力部への入力時を起点に、予め設定された雷撃待機時間を計時し、その計時終了時に前記供試体へ雷撃電流を通電する一方で、
前記雷撃指示入力部への入力を契機に、前記雷撃待機時間に応じて予め設定された時間を計時し、その計時終了時に前記撮影手段を動作させる、請求項12から14のいずれか一項に記載の雷撃試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−242307(P2012−242307A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114311(P2011−114311)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(508208007)三菱航空機株式会社 (32)
【Fターム(参考)】