説明

電位差法を用いた腐食などの損傷の検査方法

【課題】従来の石油タンクの底板の外表面の腐食の使用中検査はAE検査法しかなく、超音波検査法を定期検査に適用すると多大な時間や検査費用を要するなどの問題があった。
【解決手段】以上の課題を解決するため、腐食などの損傷を有する貯槽の底板や側板などの構成部材に一定電流を流し、損傷を挟んだ2点間の電位差を測定する電位差法を用いる。このとき、2電極端子のおよび2測定端子の取り付け位置をできるだけ損傷の発生位置に近くなおかつ損傷を挟むような位置となるように選ぶことにより損傷の検出感度が向上する。また、貯槽の底板の外周の電位差分布を測定した結果を用いて複素ポテンシャル法により逆解析する手法を開発し、そのプログラムを作成した。このプログラムにより腐食が1箇所のみの場合について収束性を検証した結果、本プログラムが実用的であることを確認した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位差法を用いて各種貯槽の底板などの部材の腐食減肉や割れなどの損傷の有無および程度を電位差法を用いて非破壊的に測定し検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腐食などの検査方法には、目視検査や超音波検査法、放射線検査法、AE検査法などが主である。目視検査は肉眼で表面を観察する方法であるため、簡単であるが外表面しか検査できず定量性に乏しく検査員の経験や資質に左右される問題がある。超音波検査法は外表面以外の検査も可能で比較的精度がいいが、探傷器を逐一検査部位において検査するため手間と時間を要する欠点がある。放射線検査法は外表面以外の検査も可能であるが裏面に感光材料を設置可能な部位に限られ、精度は超音波検査法より劣り、放射線を取り扱うため被爆の危険性があるため適用が簡単でなく、広範囲の検査にも手間を要するなどの問題がある。AE(アコースティック・エミッション)検査法は比較的広範囲の領域を一度に検査できるが、基本的には検査対象部位に動的な応力が作用している場合にしか適用できず、外部ノイズの影響を受けやすく信頼性が低いなどの欠点がある。また、使用中に測定し得るが底板の外周部における電位差の分布から内部の損傷の位置や損傷程度を推定する逆解析方法として、亀裂問題へ電気ポテンシャル法による数値計算を適用した例などがある。
【非特許文献1】桑迫・矢島著、非破壊検査 51−10、2002年10月、第645頁から第649頁
【非特許文献2】加藤著、非破壊検査 49−3、2000年、第152頁から
【非特許文献3】井上著、「実践振動法による設備診断」、日本プラントメンテナンス協会、1998年
【非特許文献4】「逆問題のコンピュータアナリシス」、日本機械学会、コロナ社、1991年
【非特許文献5】久保著、「逆問題」計算力学とCAEシリーズ10、培風館1992年
【非特許文献6】久保・阪上・大路著、「電気ポテンシャルCT法による二次元,三次元き裂形状測定に関する基礎的研究(境界要素逆問題解析法の開発と未知境界(き裂)同定への適用)」、日本機械学会論文集(A編)、51−467、昭和60年7月,第1818頁から第1825頁まで
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、石油タンクの底板の外表面は、地面に接しているため雨水などの影響により使用中に徐々に腐食や割れなどの損傷が進行するが、外表面に検査機器を直接設置したり接触することができないためその腐食の程度を検出することが困難であり、目視検査や放射線検査は適用することができないので現状では超音波検査法とAE検査法しか適用できない。また貯槽の使用中には貯槽内部に検査員が立ち入れないため、AE検査法を除けば、超音波検査法では検査するために一旦貯蔵物をすべて空にして検査する定期検査しか行えず、検査のための費用を多く要することや常時検査できない問題がある。さらに石油貯槽のように大型の貯槽では測定すべき部位が広大であるため、各部位を逐一検査する方法では検査に要する費用や時間が甚大となり、運転費用に占める検査費用の割合が高くなって経済的でないなどの問題がある。一方AE検査法は比較的広範囲の領域を一度に検査できる利点があるが、使用中に静的な応力が作用貯槽の場合の信頼性が低いなどの問題がある。このように、特に貯槽に対しては比較的信頼性のある従来の検査法は超音波検査法であるが、この検査法は数年に一度の検査しか行えず、その場合の検査に要する費用が著しく高くなるため、検査費用が安くて貯槽の使用中にも検査が可能な検査法の開発が強く望まれている。
また、亀裂問題に電気ポテンシャル法を用いて逆解析した例があるが、この手法は基礎となるラプラス方程式に境界条件を与えたときの亀裂の位置および寸法を有限要素法や境界要素法、差分法などの数値計算手法、特に境界要素法により求める方法が適用されているが、計算誤差の集積などにより計算が収束するための条件が厳しくて適用できる問題が限られるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、第一発明は、腐食などの損傷を有する貯槽の底板や側板などの構成部材に一定電流を流し、損傷を挟んだ2点間の電位差を測定する電位差法を用いる。この方法は電気ポテンシャル法、または電気抵抗法とも呼ばれる。その原理は、腐食や割れなどが進行して部材の断面積が減少すると、電気抵抗が増大するので、その変化を電位差の変化として検出するものである。この方法を貯槽の底板に適用する場合、底板の外周に近い任意の2点に電極端子を取り付けてこの電極端子間に一定電流を流し、外周に近い任意の2測定端子の間の電位差を測定する。
また第二発明は、第一発明における2電極端子の取り付け位置をできるだけ損傷の発生位置に近くなおかつ損傷を挟むような位置となるように選び、なおかつ電位差を測定する2測定端子の位置を2電極端子に近い位置に選ぶことにより損傷の検出感度が向上する。
また第三発明は、損傷を有する貯槽の底板や側板などの構成部材の内部に予め電極端子および測定端子またはそのいずれかをそれぞれ1組または複数の組設置しておくと損傷部位に近い位置において電位差を測定できるので検出精度を向上させる。
また第四発明および第五発明および第九発明は、貯槽の底板や側板などの構成部材と形状寸法が相似なモデルを用いて損傷発生位置と損傷の程度を種々に想定し、これらの想定した損傷発生位置と損傷の程度の各場合について、予め異なる複数の位置に測定端子の測定位置を変えて電位差を実験的に測定するかまたは数値解析または理論解析によってそれぞれの電位差の分布を求めておく。そして実際の貯槽の底板や側板などの構成部材について電位差分布を測定し、この結果を上記モデルの電位差分布と比較して両者がもっともよく一致する場合を見つけることによって損傷発生位置と損傷の程度を推定する。
また第六発明ないし第十二発明は、貯槽の底板や側板などの構成部材について異なる複数の位置に測定端子の測定位置を変えて電位差を測定して電位差の分布を求める。そしてこの電位差の分布を条件として逆解析することによって損傷発生位置と損傷の程度を推定する。
また第十三発明は、第四発明および第五発明および第九発明による順解析による検査方法と、第六発明ないし第十二発明による逆解析による検査方法を併用して検査の精度を向上させる。
また第十四発明は、第一発明ないし第十三発明の検査方法を貯槽以外の一般の容器や各種構造物に適用することによって腐食や割れなどの損傷を検査する。
【発明の効果】
【0005】
第一発明ないし第三発明によれば、貯槽の底板のように内表面からは目視したりやアクセスすることができない裏表面の腐食や割れなどの損傷を比較的簡単な測定装置を用いて検査することが可能となる。
また第一発明ないし第十三発明によれば、貯槽などの使用中に運転を止めることなく検査が可能となり、しかも広範囲の検査対象領域を比較的短時間で検査することが可能となる。これらの検査ができることによって、貯槽などの検査対象構造物の検査の信頼性が増すので、構造物の安全性が向上し、さらには検査に要する費用が安くなることに経済的なメリットも著しく向上する。
また第二発明によると、貯槽の底板で強度上特に問題となる底板外周に近い部分に損傷がある場合などでは、電極と測定端子の位置を損傷に近くてなおかつ損傷を挟む位置に設置することによって検出精度が向上するので実用上の効果が期待される。
また第三発明によると、貯槽の底板で電極位置や測定端子の位置から離れた位置、例えば底板の中央部に損傷がある場合などの場合の検出感度は一般的にかなり低くて検査精度が劣るのに対して、電極位置や測定端子を予めタンク底板中央部付近などに設置しておくと、検出感度が向上することによって検査精度を改良することができる。
また第十四発明によると、第一発明ないし第十三発明の検査方法を貯槽以外の一般の容器や各種構造物に適用することによって適用範囲が広がるので、構造物の安全性の向上に役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明の実施形態の説明を図1に示し、他の実施形態の説明を図2及び図3及び図4に示す。また、電気ポテンシャル法をタンク底板の腐食の検出に適用した場合の検出感度を求めた例を図5に示す。また、逆解析を行うための説明のための図を図6ないし図9に示す。
【実施例1】
【0007】
この発明の一実施形態を図1および図2に示す。
図1は鋼製円筒タンクであり、底板1およびアニュラ板2は互いに突合せ溶接または重ね隅肉溶接されて盛り土3の上に設置されている。側板4はアニュラ板2に隅肉溶接されて鉛直方向に設置され、この側板の上端には屋根板5が溶接され、底板1およびアニュラ板2、側板4、屋根板5で囲まれた内部には油や水などの内容液6が貯蔵されている。この円筒タンクの底板1およびアニュラ板は内溶液中の水分による内面腐食や地下水や雨水が盛り土の上面に浸入することによる外面腐食が生じるので、タンクの安全性を確保するためにはこの腐食の程度を定量的に測定する必要がある。
図2は底板およびアニュラ板を上方から見た平面図である。底板の中心を通る直径線7とアニュラ板の端面が交わる2点の付近に電極端子8および9を取付け、定電流電源装置10の正負の電極と端子8および9を導体線11でそれぞれ接続することにより、電極端子8および9の間に一定電流I(A)を流す。そして同じ電極端子8および9またはその付近に測定用端子12および13を取付け、これらの測定端子と電圧計14を導体線15で接続することにより電位差E(V)を測定する。同様に底板の中心を回転中心として直径線7をアニュラ板の外周に沿って一定角度ごとに回転させ、その直径とアニュラ板の端面が交わる2点に、端子8と12の組および端子9と13の組をそれぞれ移動させながら測定端子12および13の間の電位差を電圧計14により測定する。
【実施例2】
【0008】
図3は他の実施例であり、図1の底板1およびアニュラ板2を上方から見た平面図である。この実施例は定電流電源装置10の電極端子8および9を、底板の中心を通らない弦16とアニュラ板の端面が交わる2点付近に取付け、一定電流を流す。そして同じ電極端子8および9またはその付近に電圧測定用端子12および13を取付けて電圧計14より電位差を測定する。同様に弦16の位置を底板の周方向に一定間隔づつずらして、端子8と12の組および端子9と13の組をそれぞれ移動させながら測定端子12および13の間の電位差を電圧計14により測定する。
【実施例3】
【0009】
図4はさらに他の実施例であり、図1の底板1およびアニュラ板2を上方から見た平面図である。図4では、電極端子8および9を図2と同様に底板の直径線7とアニュラ板の端面の交点付近に設置し、電圧測定端子12および13は弦16の端点付近に設置している。
【0010】
図2ないし図4において、定電流電源装置10の出力電流をI(A)とし、電圧計14で測定された電位差をE(V)、測定端子12および13間の電気抵抗値をR(Ω)とすると、次式のオームの法則が成立する。
E=RI (2)
ここで測定端子間の長さL(m)が板厚t(m)および板幅b(m)に比して大きい場合には、板材料の抵抗率をρ(Ω・m)とすると電気抵抗Rは次式で表される。
R=ρL/(bt) (3)
ここで板幅bが長さLに比して無視できない場合には、板幅方向に対して電流密度が一様でなくなるため、(3)式が成立しないが幅方向に一様に電流が流れるとみなした時の見掛け上の幅を有効幅beとすると上の(3)式のbの変わりにbeを用いればよい。
式(3)を式(2)に代入すると、
E=ρLI/(bt) (4)
すなわち、腐食などにより板厚tが減少すると電位差Eが増大するのでこの関係から板厚tを推定することができる。
ここで、底板およびアニュラ板がほぼ均一に板厚が減少した場合には式(4)により板厚tに逆比例して電位差Eが上昇し、図2のように底板の直径上の測定端子12および13の位置をアニュラ板の外周に沿って移動させた場合にも同じ電位差が測定される。
しかるに底板およびアニュラ板が局部的に腐食したり不均一に腐食して減肉した場合には、測定端子12および13の位置によって測定される電位差Eに差異が生じる。すなわち、局部的に減肉された領域が測定端子の近くにある場合には減肉による電位差の上昇の影響が大きく、測定端子から離れた領域にある場合には減肉による電位差の上昇の影響が小さい。ゆえに底板またはアニュラ板を同じ大きさを有するn個の小さな部分領域に分割し、各部分領域jごとに測定される電位差に及ぼす減肉部分の位置および減肉量の影響度f(j)を予め解析または実験により求めておけば、式(1)により測定端子間の電位差が求まるので、n箇所以上の位置で測定した電位差の値を用いて式(1)の連立方程式を解けば、各部分領域jにおける減肉の影響度f(j)が求まり、減肉量が推定できることになる。ただし式(1)中のEは底板およびアニュラ板に腐食による減肉がない場合に測定される測定端子間の電位差であり、gは測定端子間の電位差を決定する関数である。
【0011】
電位Vは抵抗率が等方かつ等質で板厚方向に電位差がない均一な二次元状態の場合には次のラプラス方程式が成立する。

ゆえに上述の影響度を用いて板厚の分布を求める方法に代わって、2つの測定端子の組をアニュラ板の周方向に移動させながら順次測定された値を境界条件として式(5)を逆解析することによって、底板およびアニュラ板の任意の位置における電位を求め、それからその位置における板厚を求める方法を用いることができる。
上記の図2および図3、図4の方法で定電流電源装置10を定電圧電源装置に、電圧計14を電流計に置き換え、定電圧条件下で電流を測定する方法を用いても同様な結果が得られる。
【実施例4】
【0012】
図2で、タンク底板半径a=22.5(m),腐食の大きさ(半径)がc=1.5(m)、腐食位置の極座標(r、β)(r=16.5(m)、β=0(°))であって電極端子間の弦の距離lを変化させたときの底板外周上の電位差を有限要素法で求め、腐食がある場合とない場合の差を腐食がない場合の電位差で除した電位差変化Δvの周方向角度θに対する変化を図5に示す。本図によると、電極位置を腐食の近傍に設置し、本図の例では1が18(m)以下であれば腐食による電位差変化は4(%)程度以上あるので、請求項2による方法を用いれば、タンク底板の外周部に近い腐食による電位差変化は十分検出し得る感度を有していることがわかる。
【実施例5】
【0013】
複素ポテンシャル法(Complex potential drop method以下CPDMと言う)を用いた逆解析による損傷位置およびその程度を推定する方法は以下の通りである。
(1) 解析モデル
本研究では以下のような解析モデルを想定するものとする。
● 円板形金属板を対象とする。
● 円板は、腐食箇所以外は、その厚さや電気抵抗などは一様であるとする。
● 円板には腐食箇所が1個だけある。
● 腐食部は完全に電流を通さない。(円板厚さが減少して電気抵抗は増加しているが、電流を通さないことはないような腐食については、これを、等価な電流を通さない腐食部に置き換えて考える。)
● 腐食部は円形であるとする。また、その径は円板の径に比較して小さい。
● 電気抵抗(あるいは電流値)の測定のための電極は円板周囲の任意の位置に取り付けることが出来るとする。電極は円形で、その中心は丁度円板の外周上にあるとする。また、電極の大きさも円板の径に比して十分小さいとする。
(2)腐食がない場合の電位分布
はじめに、腐食箇所が存在しない場合の円板内の電位差分布を求めるものとする。そのモデルとしてFig3.1に示すような円板の中心を原点にした複素平面Z=x+iyを考える。円板の半径をaとし、電極が円板の直径軸上で、Z=±aの位置に設置されているものとする。
円板の電界状態を表す複素ポテンシャル関数は、Z=aに強さqの吹き出し、Z=−aに−qの吸い込みを置いて、

で与えられる。
F(Z)の実部が電圧分布を、虚部が流れ関数を与える。「流れ関数」とは、流体力学的には流線に相当し、関数値=一定をみたす曲線を意味する
円板上の1点を考え、複素平面上の極座標を

と置いて、これを式(3.1)に代入し、F(Z)の実部を求めると、

を得る。なお、虚部は、右図の偏角を用いて

となる。式(3.4)の関係から、円板円周が流線の1つになっている、つまり、式(3.1)が円板に対する複素ポテンシャル関数になっていることが分かる。
式(3.3)に戻って、式(3.3)をもとに、円板内の電圧分布を

とおく。なお、q、Cは境界条件

によって決定される。ここでrは電極の半径を指す。
円板内を流れる全電流に相当するq(値はマイナスで出てくる)は

となる。なお、式(3.1)の複素ポテンシャル関数は無限平面上に吹き出しと吸い込みが置かれた場合の式であって、式(3.8)で示す値はそのような場合の電流値に相当する。式(3.8)の電流値の内、その半分は円板内を通って+極から−極に流れ、残りの半分は「円板の外側の無限平面」を通って+極から−極に流れる。したがって、円板内に流れ込む全電流値はq/2であるといえる。
以上の理論により、腐食減肉がない場合の円板内の電圧分布や円板を流れる全電流値を求める事が出来る。
(3)「腐食部」のポテンシャル関数による表示
x軸に対して角度αの方向に流れる一様流れ[流速をUとする]の中に、半径cの円柱が置かれているものとする。
円柱周りの流れを表す複素ポテンシャル関数は

で与えられる。
そこで、Z=Zの位置に腐食があったと仮定する。ただし腐食は半径がcで、その大きさは円板の径に比して十分小さいものとする。式(3.1)で与えられる流れは、本来「一様流れ」ではないが、腐食の半径が十分小さいとし、腐食の近傍では「一様流れ」であると近似できるものとする。すなわち、式(3.1)の複素ポテンシャル関数がZ=Zの近傍では、

で表される一様流れと近似できるものとする。
そのとき、腐食があった場合の複素ポテンシャル関数は

となる。
式(3.10)のF(Z)については、右辺の第1項+第2項、すなわち、式(1)のF(Z)相当部分は「円板円周が流線の1つになる」という境界条件を満たしている。しかし、右辺第3項を加えると、この円板円周での境界条件を満たさなくなってしまっている。
そこで、式(3.10)にさらに補正項を加えて、円板円周での境界条件を満たすようにする。そのために、Z=Zの円板外周円[半径のaの円]に関する反転点に、式(3.10)の右辺第3項によって生じる流れを補償して境界条件を満たすようにするような二重吹き出しを置く。いま

出しの方向が異なる2種類の二重吹き出しを置き、最終結果として、式(3.10)の代わりに、複素ポテンシャル関数を次のようにする。

この複素ポテンシャル関数が「円板円周が流線の1つとなる」という境界条件を満たしていることの確認は後述するものとする。
一般に、複素ポテンシャル関数F(Z)で与えられる流れの中の任意の1点での流速のx軸方向成分、y軸方向成分をu、vとすると、これらは

で与えられる。
式(3.12)の中の速度U及び方向αは、式(3.12)において、左辺の第1,2,4,5項の部分、すなわち、Z=Zに置き2重吹き出し項以外の項によって、Z=Zに誘起される速度及び方向として求める。すなわち、

をZで微分した後、Z=Zとおき、その結果を式(3.13)の右辺として、式(3.13)の関係を用いて速度成分u、vを求める。
こうして求められた1点Z=Zでの速度成分から、流速Uと流れの方向αを

によって求める。
式(3.14)の中にはすでにUやαが含まれているので、u、v中にもU、αが含まれている。したがって、式(3.15)、式(3.16)はU、αを未知変数とする非線形連立方程式になっていることになる。
(4)「腐食部」の位置と大きさの推定方法
円板外周に沿ってFig.3.4のような一巡経路A→B→C→D→A
を考える。B→C、D→Aは電極付近を回る経路である。
複素積分の性質により、一般に

である。
いま考えている系では、経路内の特異点は「腐食」の位置のみであり、腐食は複素ポテンシャル関数では1位の極で表されるので、いまの系では

となる。結局

が成り立つ。
そこで、式(3.19)の左辺の積分を、実際の測定値に基づいて実行することを考える。
まず、被積分関数F(Z)を実部と虚部に分けて表示し、

とする。物理的には、実部Φは電圧分布、虚部Ψは流れ関数である。
A→B、C→Dはそれぞれ流線であるので、流れ関数Ψは一定値をとる。そこで、

とする。
式(3.12)において、右辺第3,4,5項を合わせた部分については、円板周囲全体が1つの流線になる(流れ関数の値が一定である)。また、第1項+第2項については、式(3.4)の考え方にしたがって流れ関数の値を求めると、

となる。また、電圧分布は経路上ではすべて既知であり、特にB→C,D→Aでは、それぞれΦ=Φ、Φ=Φで一定であるとする。
(i)A→Bでの積分
経路A→Bでは

である。電極は十分小さいとして、Aではθ=0、Bではθ=πと近似する。

(ii)B→Cでの積分
経路の半径をδとする。B→Cの経路では

また、Bではθ=π/2、Cではθ=−π/2であるとして、

流れ関数Ψについては、B(θ=π/2)でのΨ=Ψ=q/4から、C(θ=−π/2)でのΨ=Ψ=3q/4まで、θの1次関数で変化するものと仮定すると、


式(3.27),(3.28)の積分結果はδ(電極半径に相当)に比例する。電極半径は金属円板の径に比して小さいとしているので、上記での流れ関数に関する近似による誤差の影響は比較的小さいものである。
(iii)C→Dでの積分
経路C→Dでは

また、Dではθ=3π/2、Aではθ=π/2であるとして、

(iv)D→Aでの積分
経路D→Aでは

また、Dではθ=3π/2、Aではθ=π/2であるとして、

流れ関数Ψについては、D(θ=3π/2)でのΨ=Ψ=3q/4から、A(θ=π/2)でのΨ=Ψ=q/4まで、θの1次関数で変化するものとすると、

なお、式(3.33)、式(3.34)の積分結果については、電極半径に関して、式((3.27)、式(3.28)の場合と同様のことが言える。
以上より、上記の積分の和は、

式(3.35)、式(3.36)と式(3.19)を等置して、

これらの式は、腐食の極座標位置(r、β)および腐食の大きさcを未知変数とする連立方程式になっている。しかし、このままでは未知数の方が多い。そこで、Fig.3.5のように、電極位置をA−A’、B−B’という風に設置して、電極分布を測定し、式(3.37)、式(3.38)と同様の式を作る。電極位置が異なれば、それらの結果は独立であるので、これらから腐食の位置と大きさを推定できると考えられる。
【実施例6】
【0014】
上記逆解析方法の流れ(フローチャート)を以下に示す。


【実施例7】
【0015】
逆解析の基礎となる変数の無次元化の方法を以下に示す。電圧を与える複素ポテンシャル関数は式(3.12)中のUはqに比例する。また、ここでは、電流値を常に一定にするという状況を想定している。したがって、ここでは

とする。
次に、解析結果の汎用性から言って、諸量を無次元化しておく事が望ましい。そこで、半径や腐食の大きさなど、「長さ」に関する諸量は円板半径aで除して無次元化する。すなわち、

とする。
また、流速については、式(3.12)の複素ポテンシャル関数を用い、上記で仮定したqを用いて式(3.13)で流速を計算すると、流速は「1/(長さ)」の次元をもつことがわかるので、流速については、

式(4.3)ではu、v、Uはqに比例することを考慮して無次元化している。
式(4.1)〜式(4.3)を考慮して、基礎複素ポテンシャル関数を表すと、

となる。
【実施例8】
【0016】
逆解析の基礎となる順解析プログラムの方法を以下に示す。
(1)腐食のない円板の電圧測定プログラム作成について
まず、式(4.4)をもとに、円板上の任意の位置での電圧を求めるプログラムを作る手順を示す。
式(4.4)のF(S)に対して、任意の位置

での、実部[流れのポテンシャル部]を求める。つまり、式(4.4)に式(4.5)を代入して、式(4.5)を実部と虚部に分解する。すると

となる。

αの決定には繰り返し計算が必要である。

(i)腐食の位置と大きさ(R、β、C)を与える。
(ii)計算の出発値として、C=0.0[腐食が無い場合]を想定する。そうすると、付録


の値として(iii)に戻る。
以上によって、腐食の位置と大きさが与えられた場合の、円板上の任意の位置での電圧値を計算できる。
(2)腐食を有する場合のプログラム作成について
上記(1)で作ったプログラムを用いれば、腐食の位置と大きさが与えられたときの、金属円板外周上での電圧分布を計算することができる。
留数定理を正しく用い、計算に間違いがなければ式(3.37),式(3.38)が成り立つはずである。

等の部分」と「実際に実験で測定される円板周囲上での電圧分布から数値積分によって計算する部分」に分ける。電極電圧に関する項は、ここでは前者に含ませる。そうすると(3.37)は

同様に、式(3.38)は

となる。ここに、

(δ:電極半径)である。
また、電極電圧は

で与えている。
なお、式(4.8),式(4.10)の一巡積分は厳密にはFig3.4の「A→B」と「C→D」の2つの経路上での積分の和である。

属円板周囲上での電圧分布から数値積分によって計算する。
実部、虚部のそれぞれが「左辺」=「右辺」になっていれば、解析手順やプログラムが「明らかに間違っていたということはない」ことが示されたことになる。
もし、「左辺」=「右辺」になっていなければ、
・ 解析に誤りがある。
・ プログラムに誤りがある
・ 両方とも正しいが、計算誤差などが入りやすくて十分な精度が得られていないのいずれかであると思われるので再度検討する。
(3)逆解析アルゴリズムの準備
上記(2)で示した積分値が腐食に対してどの程度の感度をもっているかを検討しておくことが必要である。腐食の位置や大きさが変化しても、積分値の変化が小さければ、それは逆解析した時、腐食の推定の誤差が大きいことを意味する。
そこで、腐食の位置や大きさを変化させて、上記積分値の変化を見る。式(4.7),式(4.8)の値、および式(4.9),式(4.10)の値は、それぞれ等しくなることは、4.2.2で確認されているので、積分値の評価には、左辺と右辺のどちらを用いてもよい。しかし、理論的に正しい値であるはずの左辺を用いる方がよいと考え左辺を用いて計算することにする。
そこでデータの採取方法としてβの値を0°から180°、Rの値を0〜0.4まで変化させて、JR1、JS1を計算する。
そして、それぞれの関係を図で表し、このとき、図の変化が大きければ、その項目は逆解析に用いる情報量として有用であり、変化が小さければ、逆解析の際の情報量としては使いにくいということになる。
このようにして、逆解析に有用な情報量を抽出する。
【実施例9】
【0017】
以下に逆解析プログラムの作成方法について述べる。
逆解析を行う際に、指標値として使えると考えられる式は、式(3.37)と式(3.38)である。しかし、結果で述べるが、式(3.38)では、高精度で検出しなければならない電圧検出が、いくつかの指数の近似による計算誤差の中に埋もれてしまい、理論解析値と底板外周電圧分布の積分値が一致しないと考えられる。よって腐食の検出について、式(3.38)は捨てて、式(3.37)のみで欠陥推定を行うものとする。
(1)逆解析に用いる情報について
・ まず、未知量は腐食の位置(rとβ)と腐食の大きさ(c)の3つである。
・ 式(3.37)の右辺は、電圧分布(実際の場だと、電圧測定結果)を積分することによって値が決まる。
・ そこで、電圧測定結果から得られた、式(3.37)右辺の量をfとする。 すなわち、

(これは、いわば、測定結果として、既知の量である。)
・ 欠陥の位置は不明であるが、欠陥の位置と大きさ(r、β、c)を仮定すれば、式(3.37)の左辺は理論解析によって計算できる。この理論計算結果をgとする。
すなわち、

・ fとgが一致すれば、それが欠陥位置(の1つの候補)となる。
・ 勝手に(r、β、c)を与えたのでは、fとgは一致しない。そこで、fとgとの差を誤差Eとする。Eは(r、β、c)の与え方に依存する。
すなわち、

・ (r、β、c)の組合せを変えて、Eの変化をみる。
・ Eがある大きさより小さければ、それが欠陥の候補となる。
しかし、未知量が3つであるのに、情報量が1つでは、未知量を確定できないことは明らか。すなわち情報量を増やす必要がある。その1つは、電極位置を円板円周上でずらしていき、そのときのfの変化を情報量とすることである。電極位置をZ=±1からθ回転させたときの電圧分布は、電極がZ=±1にあって、欠陥位置がβ→β−θとしたときと同じであるから、上のgは容易に計算できる。このように電極位置θを変化させ、それぞれのθ位置で、上述のEの分布を計算する。そうして、Eが最小(あるいはある閾値以下)となる(r、β、c)の集合を求める。電極位置θをどうもっていっても、かならずEを最小とするような(r、β、c)が見つかれば、それが推定欠陥となる。
(2) 滑降シンプレックス法について
また収束計算プログラムには滑降シンプレックス法を用いている。以下にその説明を述べる。
・ 滑降シンプレックス法は、多次元関数の最小化アルゴリズムとしては決して高速とは言えないが、アルゴリズムとしては単純なため、手っ取り早く計算してみる場合に向いているとされる。
・ 「シンプレックス(simplex)」とは、N次元においてはN+1個の点(頂点;vertex)を結んだ線(稜線)及びそれらによって形成される面によって構成される多面体のことである。2次元なら3角形、3次元なら4面体のこと。
・ N次元においてN+1個の点を準備したとき、それらが構成するシンプレックスが縮退していなければ(体積が0でなければ)、どれか1点を原点として、そこからの位置ベクトルを設定できる。それらの各点での関数値を求め、以下のような作業を繰り返し、シンプレックスの体積を小さくしていく。この体積が十分小さくなったら解が求まったことになる。
○ 関数値最大点を残りの点の重心の反対側に対称移動:(「反射」と言う)
○ 上記で対象移動した点をさらにその方向に伸ばす:(「膨張」と言う)
○ 1次元の収縮
○ (その時点の)最小点への全次元の収縮
(3) 逆解析プログラムの検討について
逆解析プログラムを作成した後、問題となるのはその性能である。その性能を確認する為に、腐食の位置を仮定し、逆解析の結果がその位置に収束するかどうかを確認する。今回作成した逆解析プログラムは、解析を1対の電極により周方向に互いに90°ずれた2回の測定結果を情報量として用いて行っている。その為、電極からの距離や腐食の大きさによって、その精度が大きく異なると考えられるので、どの程度の精度を持っているのかを確認し、検討することが重要であると考えられる。
【実施例10】
【0018】
タンク底板上の電圧分布は以下の方法により求められる。すなわち、電極端子におけるポテンシャルの吹き出し強さをq=1とすれば、円板上の電圧分布を与える複素ポテンシャル関数は、腐食の位置をS=Riβ,腐食の大きさ(タンク底板半径aで無次元化)をCとして

で与えられる。
任意の位置S=R・eiθでの電圧は、F(S)の実部で与えられる。
各項ごとに、順に計算する。
[第1項+第2項]

[第3項]


[第4項]

[第5項]


以上より、電圧分布は

で与えられる。
式(a−37)で算出される「電圧」は相対的なもので、値がマイナスになる場合もある。特に+極であるS=1の近傍では値が負になり、−極であるS=−1の近傍では値が正になる。式(a−30)を流れの複素ポテンシャルと考えたときは、流れが実部の値が小さい箇所から大きい箇所に向かって流れるような形で定式化されている。(a−37)式が式(3.37)のΦに対応する量となる。
【実施例11】
【0019】
実施形態5の式(a−37)を用いて電圧分布を計算するためには、腐食の位置での流れの速度

位置に置いた2重吹き出し[右辺第3項]を除いたその他の成分、すなわち

が、腐食の位置

に誘起する速度として与えられる。

で与えられる。
式(a−38)を式(a−40)の右辺に代入すると

を得る。これに

を代入する。やはり、項別に計算する。付録4と異なって、今回は実部と虚部の両方が必要である。
[第1項]

よって、

[第2項]

よって、

[第3項]

よって、

[第4項]

よって、

以上をまとめると、腐食の位置での流速は

となる。

ることになる。
【実施例12】
【0020】
繰り返し計算による流速Uとその方向αを求めるプログラム以下に示す。



【実施例13】
【0021】
逆解析プログラムとその流れを以下に示す。
















【実施例14】
【0022】
図2で、タンク底板半径a=22.5(m),腐食の大きさ(半径)がc=1.5(m)およびc=3(m)の場合について、腐食位置の極座標(r、β)を種々に変化させた場合について逆解析を行った。その結果腐食の大きさが2つの場合ともに仮定値に収束した場合を◎、c=3(m)の場合のみ収束した場合を○、両方とも収束しなかった場合を×印で示す。この結果から、β=0°および45°の場合以外はほぼ収束し、本逆解析方法が有効であることがわかった。β=0°および45°の場合については電極端子の位置をずらして再度測定し直せばβの値が変わるので解は収束することになり問題が生じなくなると考えられる。

【発明の効果】
【0023】
以上で説明したように、本発明で提案した方法を用いることにより、機械や装置の板厚を測定するための測定箇所の数を従来の技術に比して少なくすることができ、さらに機械や装置の使用に支障のない位置に測定端子を設置することにより使用中の板厚測定を可能とすることができ、その結果、従来技術の場合に比して時間と労力、費用を減ずることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 この発明の一形態を示す円筒形タンクの構造図である。
【図2】 この発明の一形態を示す円筒形タンクの底板およびアニュラ板の平面図に、直径線上に電極端子および測定端子を設置した説明図である。
【図3】 この発明の一形態を示す円筒形タンクの底板およびアニュラ板の平面図に、弦上に電極端子および測定端子を設置した説明図である。
【図4】 この発明の一形態を示す円筒形タンクの底板およびアニュラ板の平面図に、直径線上に電極端子を設置し、弦上に測定端子を設置した説明図である。
【図5】 この発明の一実施例を示す腐食の有無による電位差変化Δνの周方向角度θの分布の解析例である。
【図6】 タンク底板の解析モデルを示す図である。
【図7】 タンク底板上の位置を示す極座標の定義の図である。
【図8】 タンク底板上に仮定した腐食も出る近傍のポテンシャル流れを示す図である。
【図9】 タンク底板の外周に沿った積分経路を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 底板
2 アニュラ板
3 盛り土
4 側板
5 屋根板
6 内容液
7 直径線
8 電極端子
9 電極端子
10 定電流電源装置
11 導体線
12 測定用端子
13 測定用端子
14 電圧計
15 導体線
16 弦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽の底板や側板などの構成部材の任意の2点に電極端子を取り付け、定電流電源装置の正負の電極と2つの電極端子を導体線でそれぞれ接続することにより、2つの電極端子の間に一定電流を流す。そして同じ電極端子またはその付近または任意の位置に2つの測定用端子を取付け、これらの測定端子と電圧計を導体線で接続することにより測定端子間の電位差を測定する。2測定端子の間の電位差を測定することにより、板厚の減少がない場合の同じ測定端子位置の間の電位差との差異を求めることにより部分的または全体的な板厚の減少の有無とその変化割合を検出し、これから構成部材に発生する腐食や割れなどの損傷を検査する方法。この方法で定電流電源装置を定電圧電源装置に、電圧計を電流計に置き換え、定電圧条件下で電流を測定する方法を用いてもよい。
【請求項2】
2電極端子の取り付け位置を上記損傷の発生位置にできるだけ近くなおかつ損傷を挟むような位置となるように選び、なおかつ電位差を測定する2つの測定端子の位置を2つの電極端子に近い位置に選ぶことにより腐食や割れなどの損傷の検出感度を向上させる請求項1記載の検査方法
【請求項3】
損傷を有する部材の内部に予め電極端子および測定端子またはそのいずれかをそれぞれ1組または複数の組設置しておくことにより電位差の検出精度を向上させる請求項1記載の検査方法
【請求項4】
貯槽の底板や側板などの構成部材と形状寸法が相似なモデルを用いて種々の損傷発生位置と損傷の程度について、予め異なる複数の位置に電極端子および測定端子の位置を変えて電位差を実験的に測定するかまたは数値解析または理論解析によってそれぞれの電位差の分布を求めておき、これを実際の構成部材について測定した電位差分布と比較して両者がもっともよく一致する場合を見つけることによって損傷発生位置と損傷の程度を推定する順解析による請求項1ないし請求項3記載の検査方法
【請求項5】
請求項4記載の検査方法において、貯槽の底板や側板などの構成部材板を同じ大きさを有するn個の小さな部分領域に分割し、各部分領域jごとに測定される電位差に及ぼす減肉部分の位置および減肉量の影響度f(j)を予め解析または実験により求めておき、

により測定端子間の電位差が求まるので、n箇所以上の位置で測定した電位差の値を用いて式(1)の連立方程式を解けば、各部分領域jにおける減肉の影響度f(j)が求まり、減肉量が推定できる。
【請求項6】
貯槽の底板や側板などの構成部材について異なる複数の位置に電極端子および測定端子の位置を変えて電位差を測定することによって電位差の分布を求め、この電位差の分布を条件として逆解析することによって損傷発生位置と損傷の程度を推定する請求項1ないし請求項3記載の検査方法
【請求項7】
請求項6記載の逆解析において、複素ポテンシャル法から得られた式(2)を用いて損傷(腐食)の極座標位置(r、β)および大きさ(腐食の半径)cを求める。ここで左辺は理論解であり、右辺はタンク周囲のポテンシャル分布の測定値から得られる積分地であり、aはタンク底板の半径、θはタンク中心を通る基準x軸からの周方向座標、Uは速度ポテンシャルΦの流速である。

ただし式(2)のままでは未知数の方が多いので、Fig.3.5のように、電極位置をA−A’、B−B’というように変化して設置したときの電極分布を測定することによって複数の式を導き、これらの連立方程式を解くことによって腐食の位置と大きさを推定する。
【請求項8】
請求項7記載の逆解析において、タンク底板上の電圧分布を求めるためのアルゴリズム
【請求項9】
請求項7記載の逆解析において、逆解析のために必要な順解析プログラムのフローチャートおよびそのプログラム作成方法
【請求項10】
請求項7記載の逆解析において、逆解析のためのプログラムのフローチャートおよびそのプログラム作成方法
【請求項11】
請求項7記載の逆解析において、ポテンシャル流の流速およびその方向を求めるためのプログラム
【請求項12】
請求項7記載の逆解析において、逆解析をおこなうためのプログラム
【請求項13】
請求項4記載の検査方法および請求項5記載の検査方法の2つの方法を併用して検査する方法
【請求項14】
貯槽以外の一般の容器や各種構造物に対して請求項1ないし請求項13記載の検査方法を適用することによって、腐食や割れなどの損傷を検査する検査方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−226978(P2006−226978A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73859(P2005−73859)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(303062060)
【Fターム(参考)】