説明

電力ケーブル終端接続部の組立方法及びその組立工具

【課題】套管を電力ケーブルに容易に装着することができるようにする。
【解決手段】套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入して電力ケーブル終端接続部1を組み立てる際、套管2を電力ケーブル10の絶縁体(シース14)側に向けて牽引し、導体引出棒15を取り付けた電力ケーブル10を套管2の貫通穴8を通じてひだ付部5の先端側へ向けて牽引するように、套管2と電力ケーブル10を互い違いの方向に牽引することによって、電力ケーブル10に張力を付与して電力ケーブル10の直線性を維持した状態で、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入することが可能になり、套管2を電力ケーブル10に容易に装着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル終端接続部の組立方法及びその組立工具に関し、特に、電力ケーブルに套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる、電力ケーブル終端接続部の組立方法及びその組立工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルの終端部を保護・絶縁するために、電力ケーブルの終端部をゴム製の管状の套管に挿入した構造の電力ケーブル終端接続部がある。
ゴム製の套管に電力ケーブルを挿入して電力ケーブル終端接続部を組み立てる場合に、套管の貫通穴の内径に比べて電力ケーブルの外径が大きいので、挿入に伴い作用する摩擦力が大きく、人力での挿入が困難である。その対策として、接続工具を利用して套管を電力ケーブルに向けて牽引することで、套管を電力ケーブルに装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−171721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術を適用する際、導体が太い電力ケーブルは剛性が高く曲がり難く直線性が保たれるので、套管に電力ケーブルを挿入しやすい。一方、導体が細い電力ケーブルは剛性が低く挿入に伴う摩擦力に抗することができずに電力ケーブルが曲がってしまうので、套管に電力ケーブルを挿入しにくくなり、電力ケーブル終端接続部の組み立てが困難になるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、套管を電力ケーブルに容易に装着することが可能な電力ケーブル終端接続部の組立方法及びその組立工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、
套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入し、前記電力ケーブルに前記套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる電力ケーブル終端接続部の組立方法であって、
段剥ぎ処理された前記電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を前記套管の後端側から挿入する際に、前記貫通穴を通じて前記導体引出棒を前記套管の先端側に支持して前記電力ケーブルに張力を付与した状態で、前記套管を前記電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引することを特徴としている。
【0007】
この電力ケーブル終端接続部の組立方法によれば、電力ケーブルの先端側の導体引出棒を、套管の貫通穴を通じて套管の先端側に支持することで、電力ケーブルに張力を付与した状態で維持することができ、その電力ケーブルを直線状に維持することが可能である。
そして、電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を套管の後端側から挿入する際に電力ケーブルに張力を付与し、その電力ケーブルの直線性を維持した状態で、套管を電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引することで、その電力ケーブルを貫通穴に容易に挿入でき、套管を電力ケーブルに容易に装着することができる。
【0008】
また、好ましくは、前記套管を前記電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引する際に、前記導体引出棒を前記套管の先端側へ向けて牽引する。
【0009】
電力ケーブルを套管の貫通穴に挿入して電力ケーブル終端接続部を組み立てる際に、套管を電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引し、導体引出棒の付いた電力ケーブルを套管の先端側へ向けて牽引するように、套管と電力ケーブルを互い違いの方向に牽引することによって、牽引されて張力が付与された電力ケーブルの直線性が維持される。
つまり、套管と電力ケーブルを互い違いの方向に牽引して、套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入する組立方法によれば、直線性が維持される電力ケーブルを貫通穴に挿入しやすく、套管を電力ケーブルに容易に装着することが可能になる。
【0010】
また、本発明の態様は、
套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入し、前記電力ケーブルに前記套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる電力ケーブル終端接続部の組立方法であって、
前記貫通穴の直線性を維持するように保持している前記套管の後端側から、段剥ぎ処理された前記電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を挿入する際、前記貫通穴を通じて前記導体引出棒を前記套管の先端側へ向けて牽引することを特徴としている。
【0011】
この電力ケーブル終端接続部の組立方法によれば、套管の後端側から電力ケーブルを挿入する際、貫通穴の直線性を維持するように套管を保持し、電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を套管の先端側へ向けて牽引することで、電力ケーブルの直線性を維持した状態でその電力ケーブルを貫通穴に容易に挿入でき、套管を電力ケーブルに容易に装着することができる。
【0012】
また、本発明の他の態様は、
套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入し、前記電力ケーブルに前記套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる電力ケーブル終端接続部の組立工具であって、
段剥ぎ処理された前記電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を、前記貫通穴を通した支持部材を介して前記套管の先端側で支持するとともに、前記電力ケーブルの絶縁体部分を前記套管の後端側で支持する架台を備え、
前記架台は、前記電力ケーブルに張力を付与した状態でその電力ケーブルを支持し、前記套管を前記電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引可能とすることを特徴としている。
【0013】
この電力ケーブル終端接続部の組立工具によれば、電力ケーブルの先端側の導体引出棒と電力ケーブルの絶縁体部分を架台に支持することで、架台が電力ケーブルに張力を付与した状態でその電力ケーブルを保持することができる。これにより、套管の貫通穴に通された支持部材に沿って、その套管を電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引する際に、電力ケーブルは曲がることなく直線状に維持される。
そして、組立工具と支持部材によって電力ケーブルに張力を付与し、電力ケーブルの直線性を維持した状態で、套管を電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引することで、その電力ケーブルを貫通穴に容易に挿入でき、套管を電力ケーブルに容易に装着することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を套管の貫通穴の後端側から挿入する際に電力ケーブルに張力を付与し、その電力ケーブルの直線性をより維持した状態で、套管を電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引することで、その電力ケーブルを貫通穴に容易に挿入でき、套管を電力ケーブルに容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電力ケーブルと、電力ケーブルに装着する套管を、一部断面にして示す説明図である。
【図2】電力ケーブルを套管に挿入して電力ケーブル終端接続部を組み立てる状態を示す説明図である。
【図3】接続工具における第1治具を示す平面図(a)と、図3(a)のb−b線における断面図(b)である。
【図4】第1治具を分解して示す平面図である。
【図5】組立工具を用いて、電力ケーブルを套管に挿入して電力ケーブル終端接続部を組み立てる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
(実施形態1)
図1は、套管2の半分を断面にした状態で示し、電力ケーブル10の一部を断面にした状態で示した説明図である。
この電力ケーブル10に套管2を装着して電力ケーブル終端接続部1を組み立てる。
【0018】
套管2は、例えば、シリコンゴム等の絶縁性のゴム材料を管状に成型したものであり、先端側のひだ付部5と、後端側の胴体部4を有している。
ひだ付部5と胴体部4には、套管2の軸線方向Lに沿う貫通穴8が形成されている。この套管2内の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入する。
【0019】
ひだ付部5は、ほぼ同じ直径を有する管体の外周面に所定の間隔をおいて形成された複数の大小のリング状のひだ6,7を備えている。
【0020】
胴体部4は、その内部に半導電部3を内蔵している。半導電部3はストレスリリーフコーンであり、例えば、シリコンゴムにカーボンを添加した半導電性シリコンゴムにより形成されている。好ましくは、套管2をモールド成型する際に、套管2に半導電部3を一体化するように形成する。
また、胴体部4は、大径部20と中径部21と小径部22を有しており、ひだ付部5側が大径部20、套管2の後端側の端部が小径部22、大径部20と小径部22の間が中径部21となっている。図1に示すように、胴体部4の大径部20の外径寸法は、ひだ付部5の最も大きい外径寸法に比べて大きく、大径部20とひだ付部5の間には段差部23が形成されている。
この段差部23は、テーパ面を有しており、套管2の軸線方向Lと直交する仮想線L1とテーパ面とがなす角度はθ1である。
【0021】
電力ケーブル10は、中心の導体11と、導体11を被覆する電気絶縁層12と、電気絶縁層12を被覆する外部半導電層13と、外部半導電層13を被覆する絶縁体のシース14と、導体11の先端に取り付けた導体引出棒15とを備えている。この電力ケーブル10の端部が段剥ぎされており、シース14、外部半導電層13、電気絶縁層12が順次露出し、その先端側で導体11が露出している。
導体引出棒15は、導電性を有し、例えば、銅、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金その他の金属からなる。導体引出棒15の基端部の後面には、導体嵌入孔16が形成されている。この導体嵌入孔16に電力ケーブル10の導体2の先端部を嵌入して、導体嵌入孔16を縮径するように導体引出棒15の基端部を圧縮することで、導体引出棒15を導体11に取り付けている。
また、導体引出棒15は、電力ケーブル10を貫通穴8に挿入しやすいようにするために、その前面部にテーパ面17を有している。
なお、套管2の貫通穴8の内径は、電力ケーブル10の電気絶縁層12及び外部半導電層13の外径寸法に比べて小さく設計しており、電力ケーブル10を貫通穴8に挿入することで、胴体部4とひだ付部5が半径方向外側に弾性変形して膨らむようになっている。
【0022】
次に、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入し、電力ケーブル10に套管2を装着して電力ケーブル終端接続部1を組み立てる組立方法について説明する。
まず、電力ケーブル10に套管2を装着する際に、套管2を電力ケーブル10に向けて牽引するために、套管2に取り付ける接続工具40について説明する。
【0023】
接続工具40は、図2に示すように、套管2のひだ付部5と胴体部4の間に取り付ける第1治具41と、ひだ付部5の先端部に配置する第2治具42と、第1治具41と第2治具42を連結する連結部材51と、第1治具41に一端部を固定する第1牽引部材52等を備えている。
【0024】
第1治具41は、図3、図4に示すように、第1板部61と第2板部62がボルト63で締結されてなる金属製の板状部材である。
【0025】
第1板部61は、半円形状の第1開口部71と、半リング形状の第1傾斜面72と、係入部73,73と、第1締結部74,74と、第1突当面76,76等を有している。第1傾斜面72は、第1開口部71の周囲に沿って形成されており、套管2の軸線方向Lと直交する仮想線L1と第1傾斜面72とがなす角度はθである。この第1傾斜面72がなす角度は、好ましくは套管2の段差部23のテーパ面がなす角度θ1と同じである。
第2板部62は、半円形状の第2開口部81と、半リング形状の第2傾斜面82と、被係入部83,83と、第2締結部84,84と、第2突当面86,86等を有している。第2傾斜面82は、第2開口部81の周囲に沿って形成されており、套管2の軸線方向Lと直交する仮想線L1と第2傾斜面82とがなす角度はθである。この第2傾斜面82がなす角度は、好ましくは套管2の段差部23のテーパ面がなす角度θ1と同じである。
【0026】
そして、第1突当面76,76と第2突当面86,86を突き合わせるように、第2板部62の被係入部83,83に第1板部61の係入部73,73を嵌め合わせ、第1締結部74,74と第2締結部84,84をボルト63で締め付けて、第1治具41を形成する。
この第1治具41における傾斜面(第1傾斜面72、第2傾斜面82)がある面に前記第1牽引部材52を固定するリング部材30を設けており、その反対側の面に前記連結部材51を固定するリング部材95を設けている。
【0027】
このように第1治具41は、第1板部61と第2板部62を有しており、第1板部61と第2板部62で、套管2の段差部23を挟み込むように取り付けることができるので、ひだ付部5のひだ6,7等を損傷しないように、第1治具41を套管2に取り付けることができる。
また、第1治具41において、半径Rの第1開口部71と半径Rの第2開口部81とが合わさってなる円形開口の直径2Rは、套管2のひだ付部5の管体の外径寸法よりも大きく設計している。これは、電力ケーブル10を套管2の貫通穴8に挿入することで、ひだ付部5が半径方向外側に弾性変形して膨らみ、ひだ付部5の外径寸法が大きくなった際に、このひだ付部5の外周部が第1治具41に押し付けられて、ひだ付部5が損傷してしまうことを防ぐためである。
【0028】
第2治具42は、中心に開口91が形成された1枚の金属板からなる板状部材である。
第2治具42は、開口91と、開口91の周囲に形成された受容部92と、リング部材93を有している。
受容部92は、套管2のひだ付部5の先端部を保持し、その先端部を収容可能な内径のサイズを有している。受容部92の内径は、ひだ付部5の外径寸法よりも大きく設計している。これは、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入した際に、ひだ付部5が半径方向外側に弾性変形して膨らむことを考慮した結果である。
開口91は、受容部92の略中央に形成されており、ひだ付部5内の貫通穴8から突出する導体引出棒15が突き出るようになっている。
【0029】
そして、第2治具42におけるリング部材93に連結部材51の一端部を固定し、その連結部材51の他端部を第1治具41におけるリング部材95に固定している。
連結部材51は、伸びの少ないまたは電力ケーブル10を挿入するための牽引力の範囲では伸びの無い線状部材(含む、帯状部材)であり、例えば、ナイロン製ロープやナイロン製ベルト、金属ワイヤ、金属チェーンや金属ベルトあるいは金属棒である。この連結部材51は、ひだ付部5の軸線方向の長さと略同じ長さを有している。
また、第1治具41におけるリング部材30には、第1牽引部材52の一端部を固定している。第1牽引部材52は連結部材51と同様の線状部材あるいは帯状部材である。
【0030】
次に、接続工具40を用いて電力ケーブル10に套管2を装着し、電力ケーブル終端接続部1を組み立てる組立方法について説明する。
【0031】
図2に示すように、作業者は、第2治具42の受容部92に套管2のひだ付部5の先端部を収め、第1治具41の第1板部61と第2板部62で段差部23を挟み込むようにして、接続工具40を套管2に取り付ける。
また、作業者は、電力ケーブル10の導体引出棒15の先端部にリング部材18を固定し、そのリング部材18に第1牽引部材52と同様の材料からなる第2牽引部材53の一端部を固定する。その第2牽引部材53は套管2の貫通穴8を通して、第2牽引部材53の他端部をひだ付部5の先端側から引き出す。
【0032】
そして、第1治具41に固定している第1牽引部材52の他端部を、図示しない牽引力発生装置で第1治具41が第2治具42から離間する方向に向けて牽引することで、套管2を電力ケーブル10の絶縁体側に向けて牽引する。
また、第1牽引部材52を牽引して接続工具40を取り付けた套管2を牽引することに合わせて、導体引出棒15先端のリング部材18に固定している第2牽引部材53の他端部を、図示しない牽引力発生装置で套管2の牽引方向とは逆向きに牽引し、電力ケーブル10を套管2のひだ付部5の先端側へ向けて牽引する。牽引される電力ケーブル10には張力が付与されて、電力ケーブル10は直線状に維持される。
この牽引により、導体引出棒15が套管2の貫通穴8の後端から挿入されて、電力ケーブル10が貫通穴8に圧入されて引き込まれていく。なお、牽引は、導体引出棒15が套管2のひだ付部5の先端から突出するまで行なう。
【0033】
このように、電力ケーブル10に套管2を装着して電力ケーブル終端接続部1を組み立てる際に、套管2と電力ケーブル10を互い違いの方向に牽引することによって、牽引されて張力が付与された電力ケーブル10の直線性が維持される。
つまり、套管2と電力ケーブル10を互い違いの方向に牽引して、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入する組立方法によれば、電力ケーブル10の直線性がより維持されるので貫通穴8に挿入しやすく、套管2を電力ケーブル10に容易に装着することが可能になる。
【0034】
例えば、導体断面積600mm以上のCVケーブルのように、導体が太く電力ケーブルの剛性が高い場合には、その電力ケーブルは曲がり難いので、套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入することに支障が生じることは少ない。
これに対し、例えば、導体断面積400mm以下のCVケーブルのように、導体が細く電力ケーブルの剛性が低い場合、従来のように、套管を電力ケーブルに向けて牽引して、套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入する手法では、張力が付与されていない電力ケーブルは曲がりやすく、套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入する際に支障をきたすことがあった。
そこで、本発明のように、套管2と電力ケーブル10を互い違いの方向に牽引して、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入する組立方法によれば、剛性が低い電力ケーブル10であっても、牽引による張力が付与されることで直線性が維持されるので、どのような導体断面積の電力ケーブル10に対しても套管2を容易に装着することができるのである。
【0035】
(実施形態2)
次に、本発明に係る電力ケーブル終端接続部の組立方法に関する実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0036】
図5は、電力ケーブル10に套管2を装着して電力ケーブル終端接続部1を組み立てる際に、接続工具40とともに使用する組立工具100を示す概略図である。
組立工具100は、前面部101、後面部102、前面部101と後面部102を繋ぐ側面部103等を備える架台であるフレーム100aを有している。
前面部101の内面に、リング部材110を配設している。
後面部102には、組立工具100の外側から貫入された電力ケーブル10をシース14の部分で保持するケーブル保持部120を配設している。
そして、組立工具100の前面部101と後面部102の間の長さは、套管2の軸線方向の長さの約2倍である。
【0037】
この組立工具100と接続工具40を用いて電力ケーブル10に套管2を装着し、電力ケーブル終端接続部1を組み立てる組立方法について説明する。
【0038】
図5に示すように、作業者は、組立工具100の内側に套管2を載置し、その套管2に接続工具40を取り付ける。なお、套管2は、ひだ付部5を前面部101側に向けて、前面部101寄りに載置される。
次いで、作業者は、導体引出棒15が前面部101と後面部102の略中間に位置するように、ケーブル保持部120から組立工具100内に電力ケーブル10を貫入する。その電力ケーブル10の導体引出棒15の先端部にリング部材18を固定して、リング部材18に第2牽引部材53の一端部を固定する。その第2牽引部材53を套管2の貫通穴8に通し、ひだ付部5の先端側から第2牽引部材53の他端部を引き出して、その第2牽引部材53の他端部を前面部101のリング部材110に固定する。そして、貫通穴8を通した第2牽引部材53を介し、導体引出棒15を套管2の先端側に支持して電力ケーブル10に張力を付与する。ここで、第2牽引部材53を牽引することはなく、第2牽引部材53は電力ケーブル10の導体引出棒15を組立工具100の前面部101のリング部材110に繋いで、その導体引出棒15を套管2の先端側で支持する支持部材として機能している。
この状態で、第1治具41に固定している第1牽引部材52の他端部を、図示しない牽引力発生装置で第1治具41が第2治具42から離間する方向に向けて牽引することで、套管2を電力ケーブル10の絶縁体側に向けて牽引する。この牽引の際、電力ケーブル10には張力が付与されており、電力ケーブル10は直線状に維持される。
そして、この牽引により導体引出棒15が套管2の貫通穴8の後端から挿入されて、電力ケーブル10が貫通穴8に圧入されて引き込まれていく。なお、牽引は、導体引出棒15が套管2のひだ付部5の先端から突出するまで行なう。
【0039】
このように、電力ケーブル10に套管2を装着して電力ケーブル終端接続部1を組み立てる際に、導体引出棒15が支持部材である第2牽引部材53を介して組立工具100に支持されており、電力ケーブル10に張力が付与されているので、電力ケーブル10は直線状に維持される。
つまり、組立工具100を利用して電力ケーブル10に張力を付与し、電力ケーブル10の直線性を維持するようにすることで、電力ケーブル10を牽引せずに套管2を一方向に牽引することによっても、直線性をより維持した状態で電力ケーブル10を貫通穴8に良好に挿入でき、套管2を電力ケーブル10に容易に装着することが可能になる。
そして、組立工具100を利用して電力ケーブル10に張力を付与した状態で、電力ケーブル10に向けて套管2を牽引して、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入する組立方法によれば、剛性が低い電力ケーブル10であっても付与された張力によって直線性が維持されるので、どのような規格の電力ケーブル10に対しても套管2を容易に装着することができる。
【0040】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
例えば、実施形態1において、套管2と電力ケーブル10を互い違いの方向に牽引し、套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入するとしたが、套管2が変形しないように張力を付与して保持した状態で、電力ケーブル10を一方向に牽引して套管2の貫通穴8に電力ケーブル10を挿入してもよい。
つまり、貫通穴2の直線性を維持するように套管2を保持した状態で、電力ケーブル10の導体11の先端に取り付けた導体引出棒15を套管2の後端側から挿入する際、その貫通穴8を通じて導体引出棒15を套管2のひだ付部5の先端側へ向けて牽引することで、套管2に電力ケーブル10を組み付けて、電力ケーブル終端接続部1を組み立ててもよい。このような手法によっても、套管2を電力ケーブル10に容易に装着することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 電力ケーブル終端接続部
2 套管
20 大径部
23 段差部
4 胴体部
5 ひだ付部
6、7 ひだ
8 貫通穴
10 電力ケーブル
11 導体
14 シース(絶縁体)
15 導体引出棒
18 リング部材
40 接続工具
41 第1治具
42 第2治具
51 連結部材
52 第1牽引部材
53 第2牽引部材(支持部材)
100 組立工具
100a フレーム(架台)
110 リング部材
120 ケーブル保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入し、前記電力ケーブルに前記套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる電力ケーブル終端接続部の組立方法であって、
段剥ぎ処理された前記電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を前記套管の後端側から挿入する際に、前記貫通穴を通じて前記導体引出棒を前記套管の先端側に支持して前記電力ケーブルに張力を付与した状態で、前記套管を前記電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引することを特徴とする電力ケーブル終端接続部の組立方法。
【請求項2】
前記套管を前記電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引する際に、前記導体引出棒を前記套管の先端側へ向けて牽引することを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル終端接続部の組立方法。
【請求項3】
套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入し、前記電力ケーブルに前記套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる電力ケーブル終端接続部の組立方法であって、
前記貫通穴の直線性を維持するように保持している前記套管の後端側から、段剥ぎ処理された前記電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を挿入する際、前記貫通穴を通じて前記導体引出棒を前記套管の先端側へ向けて牽引することを特徴とする電力ケーブル終端接続部の組立方法。
【請求項4】
套管の貫通穴に電力ケーブルを挿入し、前記電力ケーブルに前記套管を装着して電力ケーブル終端接続部を組み立てる電力ケーブル終端接続部の組立工具であって、
段剥ぎ処理された前記電力ケーブルの導体の先端に取り付けた導体引出棒を、前記貫通穴を通した支持部材を介して前記套管の先端側で支持するとともに、前記電力ケーブルの絶縁体部分を前記套管の後端側で支持する架台を備え、
前記架台は、前記電力ケーブルに張力を付与した状態でその電力ケーブルを支持し、前記套管を前記電力ケーブルの絶縁体側に向けて牽引可能とすることを特徴とする電力ケーブル終端接続部の組立工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147301(P2011−147301A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7704(P2010−7704)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】