説明

電力伝送用コイル

【課題】 磁気シールド自体の発熱を可及的に抑制することのできる電力伝送用コイルを提供する。
【解決手段】 平面に巻回したコイル(1)とそのコイル(1)の裏面に配置した磁気シールド体(2)とで構成した電力伝送用コイルである。磁気シールド体(1)でのコイル設置面の大部分、例えば65%以上、好ましくは70%以上をコイルで覆っている。この場合、磁気シールド体(2)を角形で構成するとともに、コイル(1)を磁気シールド体(2)と相似形の角形に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話やPDA等の携帯用小型電子機器の電力系に使用される電力伝送用コイルに関し、特に、コイルを平面的に巻回させている平面コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯用小型電子機器の電力系ではその電力源として二次電池を使用し、その二次電池の充電用回路に平面コイルを使用している(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−230032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の技術では、その実装を前提とした場合、コイルの裏面に装着される回路基板、二次電池等の金属部品が送電コイルからの磁束を吸収し、発熱、誤動作、劣化等が発生する問題がある。これらの解決手段として、磁束を遮断、屈折する磁気シールドが必要不可欠とされているが、コイル自体の発熱やシールド自体の発熱があり、全体として発熱を抑えることは困難であった。この場合、コイル自体の発熱は電流と等価直列抵抗成分の積で求まり、線材等の工夫をすることにより抑えることが可能であるが、磁気シールド自体の発熱を押えることはできなかった。
【0004】
従来の平面コイルは、図2に示すように円形に巻回したコイル(51)の裏面に方形の磁気シールド体(52)を配置しているため、磁気シールド体(52)に円形コイル(51)で覆われていない空隙部分(53)が生じることから、磁束が直接磁気シールド体(52)に当ることになり、磁束が吸収されその結果ヒステリシス損、渦電流損で発熱の原因となっていた。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、磁気シールド体自体の発熱を可及的に抑制することのできる電力伝送用コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、平面に巻回したコイルとそのコイルの裏面に配置した磁気シールド体とで構成した電力伝送用コイルであって、磁気シールド体でのコイル設置面の大部分をコイルで覆うようにしたことを特徴としたものである。また、請求項2に記載した本発明は、コイルでの被覆率を65%以上としたものであり、請求項3に記載した本発明はコイルでの被覆率を70%以上としたものである。請求項4に記載の本発明は、磁気シールド体を角型に形成するとともに、コイルを磁気シールド体と相似の角型に形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、コイルで磁気シールド体のコイル設置面の大部分を覆うようにしてあることから、コイル全体としての昇温を抑制することができるうえ。伝送効率も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の一実施形態を示す概略図であり、これは、略方形となるように平面的に巻回したコイル(1)の裏面側に方形の磁気シールド体(2)が配置してある。
【0009】
このコイル(1)は、積層プリント基板にプリント配線されたものであっても、単芯のリード線を方形に巻回形成したものでも、リッツ線を方形に巻回形成したものであってもよい。
【0010】
図2に示す、直径30mmの円形に巻回した円形コイルの裏面側に35mm角の磁気シールド材を配置した従来構造の電力伝送用コイルと、図1に示す、30mm角の方形に巻回した方形コイルの裏面側に35mm角の磁気シールド材を配置した本発明構造の電力伝送用コイルとをそれぞれ温度上昇が飽和するまで放置した場合、円形コイルでは、その温度上昇は幅は15.7℃であったのに対し、方形コイルの場合には、その温度上昇幅は5.9℃でった。
【0011】
また、上述の2つのコイルでの電力伝送効率は、円形コイルが66.5%であったのに対し、方形コイルの場合には、72.4パーセントであった。これは、方形コイルの方が受電コイル面積の絶対値が大きくなったことにより改善されたと思われる。
【0012】
ちなみに、30mmΦの円形コイルを35mm角の磁気シールド材で磁気シールドした場合のコイルが磁気シールド材の表面を覆う面積比率は57.7%であるのに対し、30mm角の方形に巻回した方形コイルが35mm角の磁気シールド材の表面を覆う面積比率は73.4%になっていた。したがって、コイルでの磁気シールド材表面積を60%以上、好ましくは70パーセント以上覆うことで磁気シールド材の温度上昇を抑制できる上に、伝送効率を高めることができることになる。
【0013】
上述の実施形態は、磁気シールド材を正方形で構成したものについて説明したが、シールド材は、二次電池の形状に合わせた長方形状のものであってもよく、その場合には、コイルの形状も長方形状にすればよい。また、コイルの形状は磁気シールド体の形状に合わせた形状に形成したものでよく、例えば、ひし形でも多角形でも、また、円形あるいは楕円形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、携帯電話を始めとする携帯用小型電子機器の電源用二次電池の充電回路やその他の電子回路での無接点式電力伝送装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略図である。
【図2】従来の電力伝送用コイルを示す概略図である。
【符号の説明】
【0016】
1…コイル、2…磁気シールド体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に巻回したコイルとそのコイルの裏面に配置した磁気シールド体とで構成した電力伝送用コイルであって、
磁気シールド体のコイル配置面での面積の大部分をコイルで覆うようにしたことを特徴とする電力伝送用コイル。
【請求項2】
コイルでの磁気シールド体の被覆面積が磁気シールド体のコイル配置面での面積の65%以上である請求項1に記載の電力伝送用コイル。
【請求項3】
磁気シールド体のコイル配置面での面積の70%以上を方形に巻回したコイルで覆っている請求項1に記載の電力伝送用コイル。
【請求項4】
磁気シールド体を角型に形成するとともに、コイルを磁気シールド体と相似の角型に形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力伝送用コイル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−135589(P2008−135589A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321077(P2006−321077)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(504312830)明日香エレクトロン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】