説明

電力供給システムおよびその制御方法

【課題】太陽光発電システムや風力発電システムに代表される新エネルギー発電システムを配電線に連系する場合に、新エネルギー電源の電力系統側での導入限界が発生しない電力供給システムを提供する。
【解決手段】電力供給システム100は、新エネルギーに分類される電源を連系する新エネルギー配電線6において需要家の電力系統1側に接続された電力変換装置5と、電力系統1において新エネルギー配電線6側に接続された電力変換装置2と、電力変換装置5と電力変換装置2との間において電源母線4に接続された電力貯蔵装置3とを備える。電力変換装置5が、電力貯蔵装置3を利用して、電力系統1の充電状態に関係なく、配電線6の充電状態を、所定範囲の電圧および周波数に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新エネルギーに分類される電源から電力系統へ電力を供給するための電力供給システムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、電力貯蔵装置を電力供給システムの電圧電源とし、この電源に太陽光発電システムおよび風力発電システムなどの新エネルギー発電システムを連系させた電力供給システムを構成し、この電力供給システムを使って各種負荷へ電力を供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの排出抑制や、長期的には枯渇性資源に対する依存から脱却することをねらいとして、クリーンな新エネルギーの導入が国策として進められている。具体的には、各種補助金が充実しており、また、2003年4月から「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)が施行されている。さらに、環境税についても、具体的実施に向けて検討が進められている。
【0003】
新エネルギーに分類される電源(以下、「新エネルギー電源」と称する。)とは、太陽光発電システムや風力発電システムに代表されるように、従来の電源である原子力発電、火力発電、水力発電のような大型発電システムではなく、主要地近傍に設置される各種需要家(負荷)と同程度の容量の小型発電システムである。
【0004】
新エネルギー電源は、前述したように温室効果ガスの排出抑制や枯渇性資源への依存からの脱却が可能であるという利点がある一方、太陽光発電システムや風力発電システムに代表されるように、気象条件に依存して出力が不安定であるという問題がある。
【0005】
このようなことから、新エネルギーに分類される太陽光発電システムや風力発電システムなどの発電システムは、負荷の変化と発電出力の変化が一致しない状態でも利用可能な、需要地近傍の配電線に直接連系する形態で普及が進んでいる。
【0006】
図7は、従来の電力供給システムの概略構成の一例を示す図である。図7に示すように、従来の電力供給システム90は、需要家の電力系統1へ電力を供給するための電源として、新エネルギーに分類される電源(以下、「新エネルギー電源」と称する。)を有している。図7の例では、新エネルギー電源として、風力発電システム7と太陽光発電システム8が用いられている。
【0007】
風力発電システム7は、風車71と、風車71で発生した電力を新エネルギー配電線6へ送電するための電力変換装置72とを有している。太陽光発電システム8は、太陽電池81と、太陽電池81で発生した電力を新エネルギー配電線6へ送電するための電力変換装置82とを有している。
【0008】
風力発電システム7と太陽光発電システム8は、新エネルギー配電線6に接続されている。新エネルギー配電線6には、コジェネレーションシステムとして、電気と熱エネルギーを併給する装置9が接続されることもある、この装置9から、負荷10および負荷11へ、電気と熱エネルギーが供給される。
【特許文献1】特開2001−95156
【特許文献2】特開2001−251765
【非特許文献1】「需要地系統の構成のための基礎検討―電圧変動から見た需要地系統構成の検討―」,電力中央研究所報告(T99042),平成12年5月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、図7に示した従来の電力供給システム90は、新エネルギー電源としての風力発電システム7と太陽光発電システム8を、需要家の電力系統1へ続く新エネルギー配電線6へ直接連系させている。
【0010】
このような電力供給システム90では、新エネルギー電源に連系される電源の容量が増加すると、新エネルギー配電線6の電圧が規定値以上に上昇する。その場合、新エネルギー電源である風力発電システム7と太陽光発電システム8を構成している電力変換装置72,82に内蔵されている制御回路からの指令により、連系されている新エネルギー電源(風力発電システム7と太陽光発電システム8)の出力を減少させ、新エネルギー配電線6の電圧を規定値以内に抑えるようにしている。
【0011】
しかしながら、このように配電線の電圧が規定値を超える度に新エネルギー電源の出力を減少させていたのでは、発電が可能であるにもかかわらず発電電力が抑制され、発電効率の悪化を招来する。
【0012】
また、新エネルギー電源を需要地近傍の配電線に直接連系する方法は、その連系される電源の容量が増加すると、配電線の高調波電圧を規定値以上に上昇させる可能性がある。その結果、配電線および当該配電線の上位の電力系統において高調波電圧が上昇し、電力系統全体の電力品質の悪化を招来する。
【0013】
さらに、新エネルギー電源を需要地近傍の配電線に直接連系する方法は、その連系される電源の容量が増加すると、当該配電線を含めた電力系統の短絡容量の増加を招く。この結果、電力系統側の対策、すなわち、電力系統に設置されている遮断器の取替が必要になる。
【0014】
一方、新エネルギー電源である太陽光発電システムや風力発電システムは、自然の気象条件によってその発電出力が変化するため、これらの電源の電力系統への連系容量が増加すると、必ずしも負荷の変化とは一致しないため、電力系統を安定的に運用できなくなる可能性がある。
【0015】
そこで、本発明は前記した問題点に鑑みて提案されたものであり、新エネルギー電源の電力系統側での導入限界が発生しない電力供給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる電力供給システムは、新エネルギーに分類される電源から電力系統へ電力を供給する電力供給システムにおいて、前記電源を連系する配電線において前記電力系統側に接続された第1の電力変換装置と、前記電力系統において前記配電線側に接続された第2の電力変換装置と、前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置とを接続する電源母線と、前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置との間において前記電源母線に接続され、前記電源から出力される電力を貯蔵する電力貯蔵装置とを備え、前記第1の電力変換装置が、前記電力貯蔵装置を利用して、前記電力系統の充電状態に関係なく、前記配電線の充電状態を、所定範囲の電圧および周波数に制御することを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、新エネルギーに分類される電源が連系される配電線と、需要家の電力系統とは、第1および第2の電力変換装置、電源母線、および電力貯蔵装置から構成されるシステムによって分断されている。これにより、新エネルギー電源が連系されたことによって配電線の短絡容量が変動しても、その変動が需要家の電力系統の短絡容量に影響を及ぼすことがない。また、新エネルギー電源が連系された配電線と、需要家の電力系統とは、いずれか一方における電圧変動や周波数変動や高調波電圧又は電流の影響を直接に受けない。
【0018】
上記の本発明にかかる電力供給システムにおいて、前記第1の電力変換装置が、前記配電線の電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。
【0019】
上記の本発明にかかる電力供給システムにおいて、前記第1の電力変換装置が、前記配電線の高調波電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。
【0020】
上記の本発明にかかる電力供給システムにおいて、前記第1の電力変換装置が、前記電力系統側へ流出または流入する電力が既定の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる電力供給システムの制御方法は、新エネルギーに分類される電源から需要家の電力系統へ電力を供給するために、前記電源を連系する配電線において前記電力系統側に接続された第1の電力変換装置と、前記電力系統において前記配電線側に接続された第2の電力変換装置と、前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置とを接続する電源母線と、前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置との間において前記電源母線に接続され、前記電源から出力される電力を貯蔵する電力貯蔵装置とを備えた電力供給システムの制御方法であって、前記第1の電力変換装置が、前記電力貯蔵装置を利用して、前記電力系統の充電状態に関係なく、前記配電線の充電状態を、所定範囲の電圧および周波数に制御することを特徴とする。
【0022】
上記の本発明にかかる電力供給システムの制御方法において、前記第1の電力変換装置が、前記配電線の電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。
【0023】
上記の本発明にかかる電力供給システムの制御方法において、前記第1の電力変換装置が、前記配電線の高調波電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。
【0024】
上記の本発明にかかる電力供給システムの制御方法において、前記第1の電力変換装置が、前記電力系統側へ流出または流入する電力が既定の範囲内に収まるよう制御することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる電力供給システムの一実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態にかかる電力供給システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の電力供給システム100は、需要家の電力系統1へ電力を供給するために、新エネルギー電源を有している。図1の例では、新エネルギー電源として、風力発電システム7および太陽光発電システム8が、配電線(以降、「新エネルギー配電線」と称する。)6に連系されている。
【0027】
ただし、本発明に適用できる新エネルギー電源の種類はこれらに限定されない。例えば、バイオマス発電システムや廃棄物発電システムを新エネルギー電源として用いることも可能である。また、1997年に施行された「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」において「新エネルギー」に指定されていないが、研究開発段階にある波力発電システムや海洋温度差発電システムも、本発明の新エネルギー電源として用いられる可能性は十分にある。
【0028】
電力供給システム100は、新エネルギー配電線6と電力系統1との間に、電力変換装置2,5を備えている。電力変換装置5は、新エネルギー配電線6側に接続され、電力変換装置2は、電力系統1側に接続されている。また、電力変換装置2と電力変換装置5とは、電源母線4を介して接続されており、この電源母線4に、電力貯蔵装置3が接続されている。なお、電源母線4は、直流方式または交流方式のいずれであっても良い。また、電源母線4が交流方式の場合、高調波成分含有の有無、電圧値、および周波数値に何ら限定はない。
【0029】
電力貯蔵装置3は、風力発電システム7と太陽光発電システム8が出力する電力を貯蔵すると共に、電力変換装置5を介して、新エネルギー配電線6内の発生電力と負荷電力の変動に起因する合計電力変動を吸収する役割を果たす。すなわち、電力系統1側での需要に対して風力発電システム7と太陽光発電システム8の出力が過多である場合は、電力貯蔵装置3は余剰電力を貯蔵し、逆の場合は、電力貯蔵装置3は、貯蔵されている電力を電力系統1へ供給する。このように、電力貯蔵装置3を用いることにより、気象条件によって風力発電システム7と太陽光発電システム8の発電出力が変化した場合でも、新エネルギー配電線6から電力系統1へ流出または流入する電力を、所定の範囲内に制御できる。
【0030】
なお、図1に示したように、風力発電システム7と太陽光発電システム8が連系される新エネルギー配電線6と、需要家の電力系統1とは、電力変換装置2,5および電力貯蔵装置3から構成されるシステムによって分断されている。これにより、風力発電システム7および太陽光発電システム8が連系されたことによって新エネルギー配電線6の短絡容量が変動しても、その変動が電力系統1の短絡容量に影響を及ぼすことがない。また、新エネルギー配電線6は、電力系統1における電圧変動や周波数変動や高調波電圧又は電流の影響を直接に受けない。また、電力系統1も、新エネルギー配電線6における電圧変動や周波数変動や高調波電圧又は電流の影響を直接に受けない。
【0031】
電力変換装置5は、新エネルギー配電線6と電源母線4との間の電力の移動を可能とするものであり、新エネルギー配電線6において、所定の電圧と周波数で安定した充電状態を実現する。電力変換装置5は、例えば、電力用半導体素子を使ったスイッチング回路で構成することができる。
【0032】
より具体的には、電力変換装置5は、電源母線4を介して接続されている電力貯蔵装置3に蓄えられたエネルギーを利用して、新エネルギー配電線6に対して、電力変換装置5が商用周波数(50Hzまたは60Hz)の所定の交流電圧電源となるような制御を実施する。これにより、電力変換装置5は、新エネルギー電源としての7,8の出力が変動した場合でも、新エネルギー配電線6が規定値以内の電圧値で充電されるようにする。
【0033】
図2は、電力変換装置2,5のそれぞれの内部構成の一例を示したブロック図である。
【0034】
図2に示すように、電力変換装置2は、系統連系型インバータ/コンバータ21と、制御器22とを有する。系統連系型インバータ/コンバータ21の交流側(電力系統1側)が、制御器22に接続されている。制御器22は、系統連系型インバータ/コンバータ21の交流側が電流電源になるように、系統連系型インバータ/コンバータ21を制御する。
【0035】
また、図2に示すように、電力変換装置5は、自立運転型インバータ/コンバータ51と、制御器52とを有する。自立運転型インバータ/コンバータ51の交流側(新エネルギー配電線6側)が、制御器52に接続されている。制御器52は、自立運転型インバータ/コンバータ51の交流側が電流電源になるように、自立運転型インバータ/コンバータ51を制御する。
【0036】
図3〜図5は、電力変換装置5の制御動作例を示すフローチャートである。なお、電力変換装置5は、図3〜図5のフローチャートにそれぞれ示す制御動作を全て行うことが好ましいが、少なくとも1つの制御動作のみを行うものであっても良い。
【0037】
図3に示す制御動作例では、電力変換装置5は、定期的に、新エネルギー配電線6の電圧値を計測する(ステップS1)。計測された電圧値が規定の範囲内であれば(ステップS2においてYes)、何もせずにステップS1へ戻る。一方、ステップS1で計測された電圧値が規定の範囲外であれば(ステップS3においてNo)、電力変換装置5の制御器52は、分散電源の無効電力を制御する(ステップS3)。なお、「分散電源」とは、電力貯蔵装置3および新エネルギー電源としての風力発電システム7および太陽光発電システム8を意味する。
【0038】
分散電源の無効電力の制御は、例えば以下のように行う。ステップS1で計測された電圧値が規定値よりも高い場合は、電力変換装置5の制御器52は、自立運転型インバータ/コンバータ51を進相運転する。一方、ステップS1で計測された電圧値が規定値よりも低い場合は、電力変換装置5の制御器52は、自立運転型インバータ/コンバータ51を遅相運転する。
【0039】
以上、ステップS1〜S3の処理により、電力変換装置5は、新エネルギー配電線6に電圧変動が生じても、負荷10,11に対して高品質な電力供給が図れる。また、新エネルギー配電線6の電圧変動が電力系統1に影響を及ぼさないよう制御することができる。
【0040】
また、図4に示す制御動作例では、電力変換装置5は、新エネルギー配電線6の高調波電圧値を定期的に計測する(ステップS4)。計測された高調波電圧値が規定の範囲内であれば(ステップS5においてYes)、何もせずにステップS4へ戻る。一方、ステップS4で計測された高調波電圧値が規定の範囲外であれば(ステップS5においてNo)、電力変換装置5の制御器52は、分散電源のアクティブフィルタを制御する(ステップS6)。ステップS6では、例えば、高調波電圧値が規定値を超えている場合は、高調波成分をカットするようにアクティブフィルタの係数を制御する。
【0041】
以上、ステップS4〜S6の処理により、電力変換装置5は、風力発電システム7と太陽光発電システム8から高調波電流が流出され、新エネルギー配電線6に規定値以上の高調波電圧が含まれる状態になった場合でも、これを検知し、アクティブフィルタによって新エネルギー配電線6の高調波電圧をカットする。これにより、風力発電システム7と太陽光発電システム8から高調波電流が流出された場合も、負荷10,11に対しても、高品質な電力供給が図れる。また、新エネルギー配電線6の状態変動が電力系統1に影響を及ぼさないよう制御することが可能となる。
【0042】
また、図5に示す制御動作例では、電力変換装置5は、新エネルギー配電線6の潮流値を定期的に計測する(ステップS7)。計測された潮流値が規定の範囲内であれば(ステップS8においてYes)、何もせずにステップS7へ戻る。一方、ステップS7で計測された潮流値が規定の範囲外であれば(ステップS8においてNo)、電力変換装置5の制御器52は、潮流値が規定の範囲内に収まるよう、分散電源の有効電力を制御する(ステップS9)。
【0043】
以上、ステップS7〜S9の処理により、電力変換装置5が、新エネルギー配電線6の潮流値が所定の範囲内に収まるよう制御することにより、負荷10,11に対しても、高品質な電力供給が図れる。また、新エネルギー配電線6の状態変動が電力系統1へ影響を及ぼすことを防止できる。
【0044】
図6は、需要家の電力系統1側の電力変換装置2の動作例を示すフローチャートである。図6に示すように、電力変換装置2は、定期的に電力貯蔵装置3の充電量を計測する(ステップS11)。そして、計測された充電量が既定値以上であれば(ステップS12においてYes)、電力貯蔵装置3から電力系統1側へ有効電力を放電し(ステップS13)、ステップS11へ戻る。一方、計測された充電量が既定値未満であれば(ステップS12においてNo)、電力系統1側から電力貯蔵装置3へ有効電力を充電し(ステップS14)、ステップS11へ戻る。
【0045】
以上のとおり、本実施形態の電力供給システム100では、新エネルギー電源としての風力発電システム7と太陽光発電システム8が連系された新エネルギー配電線6と、電力系統1との間に、電力変換装置5、電源母線4、電力貯蔵装置3、および電力変換装置2が設置されたことによって、以下の著しい効果を有している。
【0046】
すなわち、電力供給システム100によれば、新エネルギー電源としての太陽光発電システム8や風力発電システム7等を電力系統1へ直接連系する従来のシステム(図7参照)に比べ、電圧上昇または変動、高調波電圧の発生、短絡容量の増加、および電力変動の面で、電力系統1へ悪影響を与えない。また、電力供給システム100によれば、電力系統1の制約を受けずに、新エネルギー電源の導入が図れる。
【0047】
また、電力供給システム100では、新エネルギー配電線6の電圧、周波数、および高調波電圧を、新エネルギー配電線6の中心的な電圧電源の役割を担う電力変換装置5によってきめ細かく制御できるため、新エネルギー配電線6から負荷10,11に対しても、高品質な電力供給が図れる。
【0048】
さらに、電力供給システム100では、電力系統1において、停電や、電力品質(電圧、周波数、高調波含有状況)の著しい低下が生じた場合でも、新エネルギー配電線6側ではその影響を受けない。従って、このような場合でも、新エネルギー配電線6に接続された負荷10,11に対しては、高品質な電力供給を継続できる。
【0049】
また、従来、需要家の電力系統へ新エネルギーに分類される電源を連系する場合において、需要家の電力系統が電圧面や短絡容量面で十分な機能を有さない場合、電力系統側に大幅な改良工事が必要であった。しかし、本実施形態の電力供給システムを導入すれば、そのような改良工事の必要は無くなり、新エネルギーに分類される電源の普及促進が図れる。
【0050】
なお、電力供給システム100は、上述したとおり、例えば新規開発地域でエネルギー消費が多い場所等において、電気と熱エネルギーを併給する装置9を連系する場合においても有効である。すなわち、通常、電気と熱エネルギーを併給する装置9は、系統の短絡容量の増加を伴ったり、電力会社の電力需給状況に合致しなかったりするという問題を有する点で、導入が難しい電源である。しかし、電力供給システム100を利用することにより、これらの問題が解決され、電気と熱エネルギーを併給できる装置9の普及促進が図れ、省エネルギーの点で非常に効果が高い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、新エネルギーに分類される電源の普及促進が図れ、温室効果ガスの排出抑制や長期的には枯渇性資源に対する依存から脱却する点で、産業上の利用可能性が高い電力供給システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電力供給システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す電力供給システムの電力変換装置5の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す電力供給システムの電力変換装置5の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す電力供給システムの電力変換装置5の動作の他の例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す電力供給システムの電力変換装置5の動作のさらに他の例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す電力供給システムの電力変換装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】従来の新エネルギー発電システムが連系された配電線の概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1 電力系統
2 電力変換装置(第2の電力変換装置)
21 系統連系型インバータコンバータ
22 制御器
3 電力貯蔵装置
4 電源母線
5 電力変換装置(第1の電力変換装置)
51 自立運転型インバータコンバータ
52 制御器
7 風力発電システム
71 風車
72 電力変換装置
8 太陽光発電システム
81 太陽電池
82 電力変換装置
100 電力供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新エネルギーに分類される電源から需要家の電力系統へ電力を供給する電力供給システムにおいて、
前記電源を連系する配電線において前記電力系統側に接続された第1の電力変換装置と、
前記電力系統において前記配電線側に接続された第2の電力変換装置と、
前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置とを接続する電源母線と、
前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置との間において前記電源母線に接続され、前記電源から出力される電力を貯蔵する電力貯蔵装置とを備え、
前記第1の電力変換装置が、前記電力貯蔵装置を利用して、前記電力系統の充電状態に関係なく、前記配電線の充電状態を、所定範囲の電圧および周波数に制御することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記第1の電力変換装置が、前記配電線の電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第1の電力変換装置が、前記配電線の高調波電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記第1の電力変換装置が、前記電力系統側へ流出または流入する電力が既定の範囲内に収まるよう制御する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項5】
新エネルギーに分類される電源から需要家の電力系統へ電力を供給するために、前記電源を連系する配電線において前記電力系統側に接続された第1の電力変換装置と、前記電力系統において前記配電線側に接続された第2の電力変換装置と、前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置とを接続する電源母線と、前記第1の電力変換装置と第2の電力変換装置との間において前記電源母線に接続され、前記電源から出力される電力を貯蔵する電力貯蔵装置とを備えた電力供給システムの制御方法であって、
前記第1の電力変換装置が、前記電力貯蔵装置を利用して、前記電力系統の充電状態に関係なく、前記配電線の充電状態を、所定範囲の電圧および周波数に制御することを特徴とする電力供給システムの制御方法。
【請求項6】
前記第1の電力変換装置が、前記配電線の電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御する、請求項5に記載の電力供給システムの制御方法。
【請求項7】
前記第1の電力変換装置が、前記配電線の高調波電圧値が既定の範囲内に収まるよう制御する、請求項5に記載の電力供給システムの制御方法。
【請求項8】
前記第1の電力変換装置が、前記電力系統側へ流出または流入する電力が既定の範囲内に収まるよう制御する、請求項1に記載の電力供給システムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−185008(P2007−185008A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262(P2006−262)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】