説明

電力供給システムおよび電力変換装置

【課題】電力変換器の容量の増大を抑制することを可能とする、電力供給システム、および同電力供給システム用途の電力変換装置を実現する。
【解決手段】電力供給システム10は、電圧型インバータ1と電力系統2との間に直列に接続されており、かつ、連系リアクトル7および8を備える連系リアクトル回路3を備える。連系リアクトル回路3のリアクタンスは、自立運転を行う場合において、系統連系運転を行う場合よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器および電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転と、電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転とを行う電力供給システム、および同電力供給システム用途の電力変換装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、インバータまたは交流電源と負荷との間にリアクトルを備え、大電流出力時における該リアクトルのリアクタンスと、小電流出力時における該リアクトルのリアクタンスとを切り替える技術が開示されている。
【0003】
上記技術に係る具体例として、図6には、特許文献1に開示されている太陽光発電システムの概略構成を示した。
【0004】
図6に示す太陽光発電システム60は、スイッチ部(インバータ)61の出力電流の増減に従って、開閉器62および63を操作して、フィルタコイル64内のインダクタ65〜67によるインダクタンスを増減させる構成である。太陽光発電システム60は、該出力電流の増加でインダクタンスを小さくして、該出力電流に見合ったフィルタ効果を得ることができるため、電流の増減に関わらず電流の歪みを抑制することができる。
【0005】
ところで、従来、インバータ(電力変換器)および電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転と、インバータから負荷に電力を供給する自立運転とを行う電力供給システムが知られている。
【0006】
以下、上記電力供給システムについての説明を行う。
【0007】
まずは、系統連系運転の概要について、図7を参照して説明する。
【0008】
図7は、電圧型インバータ71と電力系統72とを、連系リアクトル73を介して接続して構成された、系統連系運転を行うための一般的なシステム70の一例を示す図である。
【0009】
電圧型インバータ71を、連系リアクトル73を介して電力系統72に接続した場合の、電圧型インバータ71の出力電圧と電力系統72の系統電圧との関係は、下記の数式(1)によって表される。なお、以下、▲VI・▼は電圧型インバータ71の出力電圧(ベクトル)であり、▲VS・▼は電力系統72の系統電圧(ベクトル)であり、Xは連系リアクトル73のリアクタンスである。
【0010】
▲VI・▼=k・▲VS・▼(cosφ+jsinφ) ・・・(1)
なお、kは電力系統72の系統電圧▲VS・▼の振幅Vsに対する、電圧型インバータ71の出力電圧▲VI・▼の振幅Viを制御するための所定の定数であり、jは虚数単位である。
【0011】
このとき、電圧型インバータ71と電力系統72との間でやりとりされる電力は、有効電力Pが下記の数式(2)によって、無効電力Qが下記の数式(3)によって、それぞれ表される。
【0012】
P=k・▲VS・▼^2・φ/X ・・・(2)
Q=(k・cosφ−1)▲VS・▼^2/X ・・・(3)
ここで、φは、電圧型インバータ71の出力電圧▲VI・▼と、電力系統72の系統電圧▲VS・▼との位相差を示しているが、通常非常に小さい値である。これにより、上記の数式(3)のcosφの変化は、振幅Vsの変化に対して非常に小さくなる。従って、無効電力Qの制御は定数kを変化させる(振幅Viを制御する)ことで行う一方、有効電力Pの制御は位相差φを変化させることで行うのが一般的である。
【0013】
また、連系リアクトル73のリアクタンスXを大きくすると、電力系統72の系統電圧▲VS・▼の過渡変動に対して、電圧型インバータ71の過電流が小さくなる。結果、電圧型インバータ71の出力電流の制御は容易となる。
【0014】
但し、上記の数式(1)および(3)から明らかであるとおり、連系リアクトル73のリアクタンスXを大きくすると、無効電力Qの制御に際して、電圧型インバータ71の出力電圧▲VI・▼の振幅Viを大きく変化させる必要が生じる。そして、振幅Viを大きく変化させるべく、振幅Viの可変幅を大きくすると、振幅Viの最大値を増大させる必要があり、これに伴い、電圧型インバータ71の容量が増大する。
【0015】
以上のメリットおよびデメリットを考慮すると、連系リアクトル73のリアクタンスXは、電圧型インバータ71の定格インピーダンスの、5〜15%程度の値とされるのが一般的である。
【0016】
なお、本願明細書では、全般に渡って、インピーダンスをパーセントインピーダンスで表記しており、リアクタンスをパーセントリアクタンスで表記している。
【0017】
例えば、連系リアクトル73のリアクタンスXを、電圧型インバータ71の定格インピーダンスの10%の値とした場合について考える。この場合、電力系統72にて、定格電圧に対して−10〜+10%の系統電圧▲VS・▼の過渡変動が発生すると、電圧型インバータ71からは、定格電流に対して−100〜+100%の過電流が流れることとなる(但し、電圧型インバータ71の出力電流の制御を行わない場合)。
【0018】
以上、系統連系運転の概要について説明した。
【0019】
ところで、近年、ニッケル水素電池およびリチウムイオン電池に代表される、新型二次電池の性能が、著しく向上している。この新型二次電池は、短時間に大容量の放電が可能であるという特性を有している。
【0020】
そして、上記系統連系運転において、上記新型二次電池の特性を好適に利用したシステムとして、図8に示す電力供給システム80が考えられている。
【0021】
図8に示す電力供給システム80は、図7に示すシステム70に対して、電圧型インバータ71に電池(新型二次電池)74を接続し、電力系統72と連系リアクトル73との間にスイッチ75を直列接続し、連系リアクトル73とスイッチ75との間に負荷76を並列接続して構成されたシステムである。
【0022】
電力供給システム80は、電力系統72の正常時に、系統連系運転により電池74の放電による負荷76の平準化を行う一方、電力系統72の異常時に、電圧型インバータ71による自立運転により負荷76への電力供給を継続する、多機能な電池電力貯蔵システムの一例である。ここで、負荷の平準化とは、電力消費が少なく、かつ電力料金が昼間より安い夜間に電池の充電を行い、電力消費が大きい昼間に、充電された電池から負荷に対する放電を行う動作である。
【0023】
すなわち、電力供給システム80は、電力系統72が正常に負荷76に対する電力供給を行っている場合に、電池74の放電による電力のピークカットを行う。具体的に、この場合、電力供給システム80は、スイッチ75を閉じた状態で、負荷76に供給すべき電力が、電力会社との契約電力量を超過する分を補うように、電池74から電流を放電する。このとき放電する電流の値は、数C程度、例えば1C〜2C程度である。なお、「1C」とは、公称容量値に相当する容量を有する電池のセルから、定電流による放電を行ったときに、ちょうど1時間で放電が完了する電流値を意味する。また、「yC」とは、1Cに相当する電流値のy倍の電流値を意味する(yは任意の値)。このように、電力供給システム80は、電力系統72が正常に負荷76に対する電力供給を行っている場合に、電圧型インバータ71および電力系統72から負荷76に電力を供給する系統連系運転を行う。
【0024】
一方、電力供給システム80は、電力系統72における瞬時電圧低下(以下、「瞬低」と称する)または停電に起因して、電力系統72による負荷76に対する電力供給に異常が発生した場合に、電圧型インバータ71が単独で負荷76に電力を供給する。具体的に、この場合、電力供給システム80は、スイッチ75が開放されて(開かれて)、電池74から、負荷76の容量に応じて系統連系運転時の数倍(例えば、1Cの5倍の電流値である5C)の電流を放電することにより、電圧型インバータ71が単独で負荷76に電力を供給するように動作する。このように、電力供給システム80は、電圧型インバータ71から負荷76に電力を供給する自立運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平8−126347号公報(1996年5月17日公開)
【特許文献2】特開平10−116690号公報(1998年5月6日公開)
【特許文献3】特開平11−289766号公報(1999年10月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ここで、電力供給システム80の、特に自立運転時における連系リアクトル73のリアクタンスについて考察する。
【0027】
上述したとおり、電圧型インバータ71の出力電流の制御を容易に行うことを考慮すると、連系リアクトル73のリアクタンスは、電力供給システム80の系統連系運転時に、電圧型インバータ71の定格インピーダンスの、5〜15%の値を確保する必要がある。
【0028】
一方で、電力供給システム80の自立運転時において、例えば電池74が5Cの電流を放電する場合、電圧型インバータ71から出力される電流の値もほぼ5倍となる。これは、電圧型インバータ71は、系統連系運転の場合と自立運転の場合とで、出力電圧がほぼ同じであり、出力電流のみが放電電力に応じて変化することによる。
【0029】
電圧型インバータ71から出力される電流の値が5倍に変化した場合、連系リアクトル73での電圧降下も5倍となる。換言すれば、電圧型インバータ71から出力される電流の値がn倍に変化すると、連系リアクトル73のリアクタンスのパーセントリアクタンスは、電流値の変化前のn倍に相当することとなる(nは正の実数)。
【0030】
電力供給システム80の自立運転時に機能する回路は、図9に示したとおりである。連系リアクトル73のリアクタンスは、1Cの放電による系統連系運転時において、電圧型インバータ71の定格インピーダンスの10%の値であるとすると、5Cの放電による自立運転時においては、電圧型インバータ71から見て、同定格インピーダンスの50%の値に相当する。
【0031】
ここで、負荷76が純粋な誘導性の負荷であると仮定した場合、負荷76の端部に印加される電圧(ベクトル)▲VD・▼の振幅Vdは、自立運転時において、電圧型インバータ71の出力電圧▲VI・▼の振幅Viの2/3にまで低下する。
【0032】
すなわち、自立運転時において、負荷76にて降下する電圧値を100%とした場合、連系リアクトル73において降下する電圧値は、50%となる。従って、下記の数式(4)より、振幅Vdが、振幅Viの2/3にまで低下するのは明らかである。
【0033】
Vd=100・Vi/(100+50)=2・Vi/3 ・・・(4)
同様の理由より、連系リアクトル73のリアクタンスを、5Cの放電による自立運転時において、電圧型インバータ71の定格インピーダンスの10%の値とすると、1Cの放電による系統連系運転時において、該リアクタンスは、同定格インピーダンスの2%相当の値となる。このとき、系統連系運転時における該リアクタンスは、電圧型インバータ71の出力電流の制御を困難とするため、好ましくない。
【0034】
そして、電圧型インバータ71の出力電流の制御の容易性を維持しつつ、振幅Vdの低下に対応するためには、電圧型インバータ71の容量を増大させる必要があるという問題が発生する。
【0035】
本発明は、上記の問題に鑑みて為された発明であり、その目的は、電力変換器の容量の増大を抑制することを可能とする、電力供給システム、および同電力供給システム用途の電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の電力供給システムは、上記の問題を解決するために、電力系統との連系運転が可能な電力変換器を備え、上記電力変換器および上記電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転と、上記電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転とを切り替えることが可能な電力供給システムであって、上記電力変換器と上記電力系統との間に直列に接続されており、かつ、1つまたは複数の連系リアクトルを備える連系リアクトル回路を備え、上記自立運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスを、上記系統連系運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスよりも小さくすることを特徴としている。
【0037】
上記の構成によれば、連系リアクトル回路のリアクタンスは、自立運転を行う場合において、系統連系運転を行う場合よりも小さくなる。これにより、系統連系運転時において、電力変換器の出力電流の制御の容易性を維持しつつ、自立運転時において、連系リアクトル回路での電圧降下を抑制することが可能となる。
【0038】
従って、本発明の電力供給システムは、自立運転時において、負荷に印加される電圧の振幅の低下を抑制することが可能となるため、電力変換器の容量の増大を抑制することが可能となる。
【0039】
また、本発明の電力供給システムは、上記連系リアクトル回路は、上記電力変換器と上記電力系統との間に直列に接続されている2つの上記連系リアクトルと、直列に接続されている2つの上記連系リアクトルの一方に並列に接続されており、かつ、上記自立運転を行う場合に導通する切替回路とを備えることを特徴としている。
【0040】
上記の構成によれば、自立運転時において、切替回路は、並列に接続されている連系リアクトルの両端を短絡することにより、連系リアクトル回路のリアクタンスを、該連系リアクトルのリアクタンス分小さくすることが可能である。これにより、自立運転時において、連系リアクトル回路のリアクタンスを小さくすることが容易となる。
【0041】
また、本発明の電力供給システムは、上記連系リアクトル回路は、上記電力変換器と上記電力系統との間に並列に接続されている2つの上記連系リアクトルと、並列に接続されている2つの上記連系リアクトルの一方に直列に接続されており、かつ、上記自立運転を行う場合に導通する切替回路とを備えることを特徴としている。
【0042】
上記の構成によれば、自立運転時において、切替回路は、直列に接続されている連系リアクトルを導通させることにより、複数の連系リアクトルの並列回路である連系リアクトル回路のリアクタンスを小さくすることが可能である。これにより、自立運転時において、連系リアクトル回路のリアクタンスを小さくすることが容易となる。
【0043】
また、本発明の電力供給システムは、上記連系リアクトル回路は、上記連系リアクトルとしてのコイルと、磁性体から成り、かつ、上記コイルに対して挿入可能に設けられているコア部とを備え、上記コイルに対する上記コア部の挿入度合を調整することが可能であることを特徴としている。また、本発明の電力供給システムは、上記連系リアクトル回路は、上記連系リアクトルとしてのコイルと、上記コイルに対して接触可能に設けられている接触子とを備え、上記コイルに対する上記接触子の接触位置を調整することが可能であることを特徴としている。
【0044】
上記の各構成によれば、連系リアクトル回路は、コイルに対するコア部の挿入度合、または、コイルに対する接触子の接触位置を調整することにより、リアクタンスを連続的に可変させることが可能である。これにより、自立運転時において、連系リアクトル回路のリアクタンスを小さくすることが容易となる。
【0045】
また、本発明の電力供給システムは、上記連系リアクトル回路は、上記連系リアクトルとしての可飽和リアクトルと、上記可飽和リアクトルに接続されており、かつ、電流値が可変である交流電源とを備えることを特徴としている。
【0046】
上記の構成によれば、連系リアクトル回路は、リアクタンスを可変させることが可能である。これにより、自立運転時において、連系リアクトル回路のリアクタンスを小さくすることが容易となる。
【0047】
本発明の電力変換装置は、上記の問題を解決するために、電力変換器と、上記電力変換器に直列に接続されており、かつ、1つまたは複数の連系リアクトルを備える連系リアクトル回路とを備え、上記電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスを、上記電力変換器および上記連系リアクトル回路に接続されている電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスよりも小さくすることを特徴としている。
【0048】
上記の構成によれば、連系リアクトル回路のリアクタンスは、上述した本発明の電力供給システムが自立運転を行う場合において、同電力供給システムが系統連系運転を行う場合よりも小さくなる。これにより、同電力供給システムでは、系統連系運転時において、電力変換器の出力電流の制御の容易性を維持しつつ、自立運転時において、連系リアクトル回路での電圧降下を抑制することが可能となる。
【0049】
このとおり、本発明の電力変換装置は、本発明の電力供給システム用途の電力変換装置として、利用することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上のとおり、本発明の電力供給システムは、電力系統との連系運転が可能な電力変換器を備え、上記電力変換器および上記電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転と、上記電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転とを切り替えることが可能な電力供給システムであって、上記電力変換器と上記電力系統との間に直列に接続されており、かつ、1つまたは複数の連系リアクトルを備える連系リアクトル回路を備え、上記自立運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスを、上記系統連系運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスよりも小さくする。
【0051】
また、本発明の電力変換装置は、電力変換器と、上記電力変換器に直列に接続されており、かつ、1つまたは複数の連系リアクトルを備える連系リアクトル回路とを備え、上記電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスを、上記電力変換器および上記連系リアクトル回路に接続されている電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスよりも小さくする。
【0052】
従って、本発明は、電力変換器の容量の増大を抑制することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態5に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【図6】従来技術に係る太陽光発電システムの概略構成を示す回路図である。
【図7】系統連系運転を行うための一般的なシステムの構成を示す回路図である。
【図8】従来技術に係る電力供給システムの構成を示す回路図である。
【図9】図8に示す電力供給システムの自立運転時に機能する回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明を実施するための形態について、図1〜図5を参照して、以下に説明する。
【0055】
なお、以下に説明する本発明の構成において、同様の機能を有する部材に関しては、共通の符号を用いて示しており、同一部分又は同様な機能を有する部材の詳細な説明は省略している。
【0056】
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態に係る電力供給システム10の構成を示す回路図である。
【0057】
図1に示す電力供給システム10は、接続されている負荷6に対して電力を供給するシステムである。電力供給システム10は、電力系統2との連系運転が可能な電圧型インバータ(電力変換器)1、連系リアクトル回路3、新型二次電池(電池)4、およびスイッチ5を備える構成である。
【0058】
電力系統2、スイッチ5、連系リアクトル回路3、電圧型インバータ1、および新型二次電池4は、この順序で直列に接続されている。また、負荷6は、スイッチ5と連系リアクトル回路3との間に並列に接続されている。
【0059】
電圧型インバータ1は、新型二次電池4から印加された直流電圧を、交流電圧に変換する、周知の電力変換器である。なお、電力供給システム10は、電圧型インバータ1として、周知のPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)インバータ等の、電力変換が可能な種々の装置が適用され得る。
【0060】
電力系統2は、例えば商用電源により構成されている、一般的な電力系統である。
【0061】
連系リアクトル回路3は、特にインバータと商用電源とによる系統連系運転を実施する場合に、インバータと商用電源との間に直列に接続する、1または複数のリアクトル(いわゆる、連系リアクトル)を備える回路である。連系リアクトル回路3は、両端の電圧差ならびに位相差を該インバータで調整することによって、該インバータの出力電流の制御を行うことを可能とするために備えられている。
【0062】
新型二次電池4は、ニッケル水素電池およびリチウムイオン電池に代表される電池であり、短時間に大容量の放電が可能であるという特性を有している。
【0063】
スイッチ5は、電力系統2と負荷6との間の経路上に設けられており、同経路の電気的接続を形成する場合に閉じられることで導通し、同経路の電気的接続を遮断する場合に開かれることで開放(非導通)する、一般的な切替スイッチである。
【0064】
負荷6は、電力供給システム10が電力を供給する対象となるものであり、産業用の製造設備、ならびに計測および制御用電源等の、各種負荷設備が、その一例として挙げられる。
【0065】
ここで、連系リアクトル回路3は、連系リアクトル7および連系リアクトル8の直列回路と、連系リアクトル7に並列に接続されているスイッチ(切替回路)9とを備える構成である。
【0066】
連系リアクトル7および8の直列回路のリアクタンスは、電圧型インバータ1の出力電流の制御が容易となり、かつ、電圧型インバータ1から電力系統2に送り込まれる無効電力を制御する場合に、電圧型インバータ1の出力電圧の振幅の増大を十分に抑制することができている程度の値となる。さらに、連系リアクトル8のリアクタンスは、一般的にスイッチング素子(図示しない)を備える電圧型インバータ1において、該スイッチング素子のスイッチングに起因する高調波成分の除去が可能であるような値となる。但し、連系リアクトル7および8のリアクタンスの数値については、電力供給システム10の構成に依存して、好適な値が変化することになるため、定量的に言えるものではない。
【0067】
スイッチ9は、開放(非導通)することにより、連系リアクトル7の両端の短絡を解除する一方、閉じられて、短絡(導通)することにより、連系リアクトル7の両端を短絡する、一般的な切替スイッチである。
【0068】
スイッチ9が開放して、連系リアクトル7の両端が短絡されていない場合、連系リアクトル回路3のリアクタンスは、連系リアクトル7および8の直列回路のリアクタンスと略等しくなる。
【0069】
一方、スイッチ9が短絡して、連系リアクトル7の両端が短絡されている場合、連系リアクトル7のリアクタンスによる電圧降下はほとんど発生せず、連系リアクトル回路3において、連系リアクトル7がバイパスされることとなる。従って、この場合、連系リアクトル回路3のリアクタンスは、連系リアクトル8のリアクタンスと略等しくなる。
【0070】
なお、便宜上図示していないが、電力供給システム10は、負荷6に並列に接続されており、連系リアクトル回路3と共にLCフィルタとしての機能を有するフィルタコンデンサを備えている。連系リアクトル回路3およびフィルタコンデンサを組み合わせた構成は、電圧型インバータ1のスイッチング素子のスイッチングに起因する高調波成分の除去が可能である。
【0071】
電力供給システム10は、電力系統2が正常に負荷6に対する電力供給を行っている場合に、新型二次電池4の放電による負荷平準、および電力系統2から供給を受ける電力のピークカット等を行う。具体的に、この場合、電力供給システム10は、スイッチ5を閉じた状態で、負荷6に供給すべき電力が、電力会社との契約電力量を超過する分を補うように、新型二次電池4から電流を放電する(ピークカット)。このように、電力供給システム10は、電力系統2が正常に負荷6に対する電力供給を行っている場合に、電圧型インバータ1および電力系統2から負荷6に電力を供給する系統連系運転を行う。
【0072】
より具体的に、電力供給システム10の系統連系運転では、電圧型インバータ1の出力電圧の振幅および位相を、電力系統2の出力電圧の振幅および位相と一致(同期)させて、これらを連系させる。この連系させた状態から、電圧型インバータ1の出力電圧の振幅および/または位相を変化させると、電圧型インバータ1から電流が流れる。また、電力供給システム10は、電流制御装置(図示しない)を備えており、電圧型インバータ1から流れる電流の位相を、電力系統2の電圧の位相と一致させるように、振幅を調節する(いわゆる、力率1運転)。
【0073】
さらに、電力供給システム10の系統連系運転が行われる間、スイッチ9は開放されており、これにより、連系リアクトル7の両端は短絡されない。そしてこのとき、連系リアクトル回路3のリアクタンスは、連系リアクトル7および8の直列回路のリアクタンスと略等しくなる。従って、電力供給システム10では、電圧型インバータ1の出力電流の制御が容易となり、かつ、電圧型インバータ1の無効電力を制御する場合に、電圧型インバータ1の出力電圧の振幅の増大を十分に抑制できる。
【0074】
一方、電力供給システム10は、電力系統2における瞬低または停電に起因して、電力系統2による負荷6に対する電力供給に異常が発生した場合に、電圧型インバータ1が単独で負荷6に電力を供給する。具体的に、この場合、電力供給システム10は、スイッチ5が開放されて、新型二次電池4から、負荷6の容量に応じて系統連系運転時の数倍(例えば、1Cの5倍の電流値である5C)の電流を放電することにより、電圧型インバータ1が単独で負荷6に電力を供給するように動作する。このように、電力供給システム10は、電圧型インバータ1から負荷6に電力を供給する自立運転を行う。
【0075】
さらに、電力供給システム10の自立運転が行われる間、スイッチ9は短絡されており、これにより、連系リアクトル7の両端は短絡される。そしてこのとき、連系リアクトル回路3のリアクタンスは、連系リアクトル8のリアクタンスと略等しくなる。つまり、電力供給システム10の自立運転が行われる場合の、連系リアクトル回路3のリアクタンスは、電力供給システム10の系統連系運転が行われる場合の、連系リアクトル回路3のリアクタンスよりも小さくなっている。
【0076】
これにより、電力供給システム10では、自立運転時における連系リアクトル回路3での電圧降下を抑制することが可能となるため、負荷6の端部に印加される電圧の振幅の低下を抑制することが可能となる。
【0077】
なお、スイッチ9は、スイッチ5の短絡時に開放し、スイッチ5の開放時に短絡する動作となる。ここで、スイッチ9を短絡させたり開放させたりするための構成は、ハイレベルおよびローレベルをそれぞれ、スイッチ9の短絡および開放に対応させたロジック信号を用いて、スイッチ9の開閉を制御する等が考えられるが、特に限定はされない。また、スイッチ5の短絡および開放と、スイッチ9の短絡および開放とは、互いに独立して行われてもよいし、もちろん互いに連動して行われてもよい。
【0078】
以上のとおり、電力供給システム10は、系統連系運転と、短時間かつ大電流の放電を行う自立運転との双方において、連系リアクトル回路3にて、最適なリアクタンスを得ることが可能となる。これにより、電力供給システム10は、電圧型インバータ1の容量の増大を抑制することが可能となる。
【0079】
ここで、図8に示した電力供給システム80の電圧型インバータ71が必要とする容量と、電力供給システム10の電圧型インバータ1が必要とする容量とを比較する。なお、電力供給システム80および電力供給システム10は共に、系統連系運転時に1Cの放電を、自立運転時に5Cの放電を、それぞれ行うものとする。
【0080】
以下の比較では、系統連系運転時において、連系リアクトル73のリアクタンス、ならびに連系リアクトル回路3のリアクタンスが、対応する電力供給システムの、電圧型インバータの定格インピーダンスの10%の値であるとする。
【0081】
そして、連系リアクトル回路3は、系統連系運転時において、連系リアクトル7のリアクタンスが、電圧型インバータ1の定格インピーダンスの9.8%の値であり、連系リアクトル8のリアクタンスが、同定格インピーダンスの0.2%の値であるとした。
【0082】
まず、電力供給システム80の具体的な構成例を、以下に示す。
【0083】
[電力供給システム80の構成例]
・負荷76の容量:500kVA(キロボルトアンペア)
・系統連系運転時における、負荷76のピークカットに必要な容量:最大100kVA
・連系リアクトル73のリアクタンスの値
系統連系運転時:電圧型インバータ71の定格インピーダンスの10%
自立運転時:電圧型インバータ71の定格インピーダンスの50%
・自立運転時の連系リアクトル73の容量:500・50/100=250kVA
以上の構成例から、電力供給システム80の電圧型インバータ71が必要とする容量は、500kVA+250kVA=750kVAであることが分かった。
【0084】
続いて、電力供給システム10の具体的な構成例を、以下に示す。
【0085】
[電力供給システム10の構成例]
・負荷6の容量:500kVA
・系統連系運転時における、負荷6のピークカットに必要な容量:最大100kVA
・連系リアクトル7のリアクタンスの値
系統連系運転時:電圧型インバータ1の定格インピーダンスの9.8%
自立運転時:連系リアクトル7がバイパスされるため、考慮する必要は無い
・連系リアクトル8のリアクタンスの値
系統連系運転時:電圧型インバータ1の定格インピーダンスの0.2%
自立運転時:電圧型インバータ1の定格インピーダンスの1%
・自立運転時の連系リアクトル回路3の容量:500・1/100=5kVA
以上の構成例から、電力供給システム10の電圧型インバータ1が必要とする容量は、500kVA+5kVA=505kVAであることが分かった。
【0086】
このとおり、電力供給システム10の電圧型インバータ1は、電力供給システム80の電圧型インバータ71よりも小さい容量で実現可能であることが分かった。
【0087】
〔実施の形態2〕
図2は、本実施の形態に係る電力供給システム20の構成を示す回路図である。
【0088】
図2に示す電力供給システム20は、連系リアクトル回路3のかわりに、連系リアクトル回路13を備える点で、図1に示す電力供給システム10と異なる構成であり、その他の点で、図1に示す電力供給システム10と同様の構成である。
【0089】
連系リアクトル回路13は、連系リアクトル17および連系リアクトル18の並列回路と、連系リアクトル17に直列に接続されているスイッチ(切替回路)19とを備える構成である。
【0090】
連系リアクトル18のリアクタンスは、連系リアクトル7および8の直列回路(図1参照)のリアクタンスと同様の値となる。さらに、連系リアクトル17および18の並列回路のリアクタンスは、連系リアクトル8(図1参照)のリアクタンスと同様の値となる。
【0091】
スイッチ19は、開放(非導通)することにより、連系リアクトル17を連系リアクトル回路13に対して電気的に切り離す一方、閉じられて、短絡(導通)することにより、連系リアクトル17を連系リアクトル回路13に対して電気的に接続する、一般的な切替スイッチである。
【0092】
スイッチ19が開放して、連系リアクトル17が連系リアクトル回路13に対して電気的に切り離されている場合、連系リアクトル回路13のリアクタンスは、連系リアクトル18のリアクタンスと略等しくなる。
【0093】
一方、スイッチ19が短絡して、連系リアクトル17が連系リアクトル回路13に対して電気的に接続されている場合、連系リアクトル回路13のリアクタンスは、連系リアクトル17および18の並列回路のリアクタンスと略等しくなる。
【0094】
電力供給システム20は、電力供給システム10と同様の運転原理により、系統連系運転および自立運転を行う。
【0095】
さらに、電力供給システム20の系統連系運転が行われる間、スイッチ19は開放されており、これにより、連系リアクトル17は連系リアクトル回路13に対して電気的に切り離される。そしてこのとき、連系リアクトル回路13のリアクタンスは、連系リアクトル18のリアクタンスと略等しくなる。従って、電力供給システム20では、電圧型インバータ1の出力電流の制御が容易となり、かつ、電圧型インバータ1から電力系統2に送り込まれる無効電力を制御する場合に、電圧型インバータ1の出力電圧の振幅の増大を十分に抑制できる。
【0096】
さらに、電力供給システム20の自立運転が行われる間、スイッチ19は短絡されており、これにより、連系リアクトル17は連系リアクトル回路13に電気的に接続される。そしてこのとき、連系リアクトル回路13のリアクタンスは、連系リアクトル17および18の並列回路のリアクタンスと略等しくなる。つまり、電力供給システム20の自立運転が行われる場合の、連系リアクトル回路13のリアクタンスは、電力供給システム20の系統連系運転が行われる場合の、連系リアクトル回路13のリアクタンスよりも小さくなっている。
【0097】
これにより、電力供給システム20では、自立運転時における連系リアクトル回路13での電圧降下を抑制することが可能となるため、負荷6の端部に印加される電圧の振幅の低下を抑制することが可能となる。言い換えれば、電力供給システム20では、該低下を抑制するための、電圧型インバータ1の容量の増加が少ない。
【0098】
なお、スイッチ19は、スイッチ9(図1参照)と同様の構成を適用することができる。かつ、スイッチ5の短絡および開放と、スイッチ19の短絡および開放とは、互いに独立して行われてもよいし、もちろん互いに連動して行われてもよい。
【0099】
以上のとおり、電力供給システム20は、系統連系運転と、短時間かつ大電流の放電を行う自立運転との双方において、連系リアクトル回路13にて、最適なリアクタンスを得ることが可能となる。これにより、電力供給システム20は、電圧型インバータ1の容量の増大を抑制することが可能となる。
【0100】
なお、図1に示した連系リアクトル回路3、および図2に示した連系リアクトル回路13はいずれも、2つの連系リアクトルと、1つのスイッチとを備える構成となっているが、これに限定されず、3つ以上の連系リアクトルを備える構成であってもよいし、2つ以上のスイッチを備える構成であってもよい。
【0101】
〔実施の形態3〕
図3は、本実施の形態に係る電力供給システム30の構成を示す回路図である。
【0102】
図3に示す電力供給システム30は、連系リアクトル回路3のかわりに、連系リアクトル回路23を備える点で、図1に示す電力供給システム10と異なる構成であり、その他の点で、図1に示す電力供給システム10と同様の構成である。
【0103】
連系リアクトル回路23は、コイル(連系リアクトル)27と、コア(コア部)28とを備える構成である。
【0104】
コア28は、フェライト、鉄、アモルファス磁性材料、またはセンダスト合金等の磁性体から成り、かつ、コイル27に対して挿入可能に設けられている。
【0105】
コア28は、例えば、制御装置(図示しない)のパルス信号によって回転位置を制御される、ステップモータまたは超音波モータ(図示しない)によって、コイル27への挿入度合を変化させることができるものである。
【0106】
電力供給システム30は、コイル27に対するコア28の挿入度合に応じて、連系リアクトル回路23のリアクタンスを制御することが可能なものである。具体的に、コイル27に対するコア28の挿入量が大きい程に、連系リアクトル回路23のリアクタンスは大きくなり、該挿入量が小さい程に、連系リアクトル回路23のリアクタンスは小さくなる。
【0107】
電力供給システム30は、電力供給システム10と同様の運転原理により、系統連系運転および自立運転を行う。
【0108】
そして、電力供給システム30の系統連系運転時には、コイル27に対するコア28の挿入量を調整することにより、連系リアクトル回路23のリアクタンスを、連系リアクトル7および8の直列回路(図1参照)のリアクタンスと同様の値とする。
【0109】
一方、電力供給システム30の自立運転時には、コイル27に対するコア28の挿入量を小さくすることにより、連系リアクトル回路23のリアクタンスを、連系リアクトル8(図1参照)のリアクタンスと同様の値とする。
【0110】
以上のとおり、電力供給システム30は、系統連系運転と、短時間かつ大電流の放電を行う自立運転との双方において、連系リアクトル回路23にて、最適なリアクタンスを得ることが可能となる。これにより、電力供給システム30は、電圧型インバータ1の容量の増大を抑制することが可能となる。
【0111】
また、電力供給システム30は、コイル27に対するコア28の挿入度合に応じて、連系リアクトル回路23のリアクタンスを連続的に変化させることで、きめ細やかなリアクタンスの制御が可能となる。
【0112】
〔実施の形態4〕
図4は、本実施の形態に係る電力供給システム40の構成を示す回路図である。
【0113】
図4に示す電力供給システム40は、連系リアクトル回路3のかわりに、連系リアクトル回路33を備える点で、図1に示す電力供給システム10と異なる構成であり、その他の点で、図1に示す電力供給システム10と同様の構成である。
【0114】
連系リアクトル回路33は、コイル(連系リアクトル)37と、ドーナツ型のコア38と、コイル37に対して接触可能に設けられた接触子39とを備える構成である。
【0115】
連系リアクトル回路33は、スライダック(登録商標)に代表される、いわゆる単巻可変出力電圧トランスを用いて構成されている。
【0116】
スライダックは、コア28と同様の材料から成るトロイダルコア(コア38)に銅線(コイル37)を巻き、それにつまみ(図示しない)を付けた接触子39を設けて、出力電圧を取り出すものである。スライダックは、つまみを回して、接触子39の位置を変化させることにより、ほぼ連続的にインダクタンス(リアクタンス)を変えることができる。また、連系リアクトル回路33は、コア38が環状になっているので、全体としての体積が比較的小さい。なお、つまみは、例えば、制御装置(図示しない)のパルス信号によって回転位置を制御される、ステップモータまたは超音波モータ(図示しない)によって、回され得る。
【0117】
電力供給システム40は、コイル37に対する接触子39の接触位置に応じて、連系リアクトル回路33のリアクタンスを制御することが可能なものである。
【0118】
電力供給システム40は、電力供給システム10と同様の運転原理により、系統連系運転および自立運転を行う。
【0119】
そして、電力供給システム40の系統連系運転時には、コイル37に対する接触子39の接触位置を調整することにより、連系リアクトル回路33のリアクタンスを、連系リアクトル7および8の直列回路(図1参照)のリアクタンスと同様の値とする。
【0120】
一方、電力供給システム40の自立運転時には、コイル37に対する接触子39の接触位置を移動することにより、連系リアクトル回路33のリアクタンスを、連系リアクトル8(図1参照)のリアクタンスと同様の値とする。
【0121】
以上のとおり、電力供給システム40は、系統連系運転と、短時間かつ大電流の放電を行う自立運転との双方において、連系リアクトル回路33にて、最適なリアクタンスを得ることが可能となる。これにより、電力供給システム40は、電圧型インバータ1の容量の増大を抑制することが可能となる。
【0122】
また、電力供給システム40は、コイル37に対する接触子39の接触位置に応じて、連系リアクトル回路33のリアクタンスを連続的に変化させることで、きめ細やかなリアクタンスの制御が可能となる。
【0123】
〔実施の形態5〕
図5は、本実施の形態に係る電力供給システム50の構成を示す回路図である。
【0124】
図5に示す電力供給システム50は、連系リアクトル回路3のかわりに、連系リアクトル回路43を備える点で、図1に示す電力供給システム10と異なる構成であり、その他の点で、図1に示す電力供給システム10と同様の構成である。
【0125】
連系リアクトル回路43は、可飽和リアクトル(連系リアクトル)47と、可飽和リアクトル47に接続されている交流電源48とを備える構成である。
【0126】
可飽和リアクトル47は、交流電源48から供給される交流電流により、鉄芯(図示しない)が飽和することにより、リアクタンスを小さくすることが可能な、周知のリアクトルである。交流電源48から供給される交流電流が所定の値(振幅)を超えると、鉄芯が飽和し、可飽和リアクトル47のリアクタンスは小さくすることができる。
【0127】
電力供給システム50は、交流電源48から可飽和リアクトル47に供給される電流値に応じて、連系リアクトル回路43のリアクタンスを制御することが可能なものである。
【0128】
電力供給システム50は、電力供給システム10と同様の運転原理により、系統連系運転および自立運転を行う。
【0129】
そして、電力供給システム50の系統連系運転時には、交流電源48から可飽和リアクトル47に供給される電流値を調整することにより、連系リアクトル回路43のリアクタンスを、連系リアクトル7および8の直列回路(図1参照)のリアクタンスと同様の値とする。
【0130】
一方、電力供給システム50の自立運転時には、交流電源48から可飽和リアクトル47に供給される電流値を上昇(鉄芯を飽和)させることにより、連系リアクトル回路43のリアクタンスを、連系リアクトル8(図1参照)のリアクタンスと同様の値とする。
【0131】
以上のとおり、電力供給システム50は、系統連系運転と、短時間かつ大電流の放電を行う自立運転との双方において、連系リアクトル回路43にて、最適なリアクタンスを得ることが可能となる。これにより、電力供給システム50は、電圧型インバータ1の容量の増大を抑制することが可能となる。
【0132】
さらに、電圧型インバータ1と、連系リアクトル回路3、13、23、33、および43のうち任意の1つとを備える電力変換装置についても、本発明の範疇に含まれる。この電力変換装置は、本発明の電力供給システム用途の電力変換装置として、好適に用いることができる。
【0133】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、電力変換器および電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転と、電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転とを行う電力供給システム、および同電力供給システム用途の電力変換装置に利用できる。
【符号の説明】
【0135】
1 電圧型インバータ(電力変換器)
2 電力系統
3 連系リアクトル回路
4 新型二次電池(電池)
5 スイッチ
6 負荷
7 連系リアクトル
8 連系リアクトル
9 スイッチ(切替回路)
10 電力供給システム
13 連系リアクトル回路
17 連系リアクトル
18 連系リアクトル
19 スイッチ(切替回路)
20 電力供給システム
23 連系リアクトル回路
27 コイル(連系リアクトル)
28 コア(コア部)
30 電力供給システム
33 連系リアクトル回路
37 コイル(連系リアクトル)
39 接触子
40 電力供給システム
43 連系リアクトル回路
47 可飽和リアクトル
48 交流電源
50 電力供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との連系運転が可能な電力変換器を備え、
上記電力変換器および上記電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転と、上記電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転とを切り替えることが可能な電力供給システムであって、
上記電力変換器と上記電力系統との間に直列に接続されており、かつ、1つまたは複数の連系リアクトルを備える連系リアクトル回路を備え、
上記自立運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスを、上記系統連系運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスよりも小さくすることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
上記連系リアクトル回路は、
上記電力変換器と上記電力系統との間に直列に接続されている2つの上記連系リアクトルと、
直列に接続されている2つの上記連系リアクトルの一方に並列に接続されており、かつ、上記自立運転を行う場合に導通する切替回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
上記連系リアクトル回路は、
上記電力変換器と上記電力系統との間に並列に接続されている2つの上記連系リアクトルと、
並列に接続されている2つの上記連系リアクトルの一方に直列に接続されており、かつ、上記自立運転を行う場合に導通する切替回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
上記連系リアクトル回路は、
上記連系リアクトルとしてのコイルと、
磁性体から成り、かつ、上記コイルに対して挿入可能に設けられているコア部とを備え、
上記コイルに対する上記コア部の挿入度合を調整することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項5】
上記連系リアクトル回路は、
上記連系リアクトルとしてのコイルと、
上記コイルに対して接触可能に設けられている接触子とを備え、
上記コイルに対する上記接触子の接触位置を調整することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項6】
上記連系リアクトル回路は、
上記連系リアクトルとしての可飽和リアクトルと、
上記可飽和リアクトルに接続されており、かつ、電流値が可変である交流電源とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項7】
電力変換器と、
上記電力変換器に直列に接続されており、かつ、1つまたは複数の連系リアクトルを備える連系リアクトル回路とを備え、
上記電力変換器から負荷に電力を供給する自立運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスを、上記電力変換器および上記連系リアクトル回路に接続されている電力系統から負荷に電力を供給する系統連系運転を行う場合の上記連系リアクトル回路のリアクタンスよりも小さくすることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−100507(P2012−100507A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248597(P2010−248597)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】