説明

電力供給システム

【課題】複雑な装置を新たに設けなくても、車両に搭載された蓄電池から建物内の交流電力線へ電力を放電する際の放電電力を安定化させることが可能な電力供給システムを提供すること。
【解決手段】制御ECU30は、、車両90の車載蓄電池を充電するときには、交流電力線4の交流電力を充電電力線21を介して直接充放電コネクタ23へ供給して車載蓄電池を充電し、車載蓄電池から放電するときには、車両90から充放電コネクタ23へ交流電力として出力される車載蓄電池93の電力を放電電力線31を介して蓄電ユニット10へ送って電力変換器13で直流電力に変換し、変換した直流電力を双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4へ放電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関し、例えばプラグインハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載された蓄電装置を建物内の交流電力線への給電源として用いる電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記特許文献1に開示された電力システムがある。この電力システムは、蓄電装置を搭載した車両から延びるケーブルのコネクタと住宅内の電力線に接続されたコネクタとが接続可能となっている。そして、これらのケーブルおよび両コネクタからなる通電系を介して車両と住宅内の電力線との間で交流電力が授受可能となっている。
【0003】
車両内には電力を直交変換および電圧変換する電圧変換装置が設けられており、蓄電装置を充放電する際には、上記通電系および電圧変換装置により電力の授受が行われるようになっている。すなわち、住宅内の電力線の電力を用いて車両に搭載された蓄電装置に充電する際、および、車両に搭載された蓄電装置から住宅内の電力線へ電力を放電する際には、いずれも同一の通電系および電圧変換装置を介して電力授受が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−54439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、建物内に配線され、接続された電気負荷に交流電力を給電するための交流電力線には、電圧変動等が極めて小さい安定した電力が供給されることが好ましい。これに対し、車両に搭載された蓄電装置は、一般的に外部環境等の影響により出力電圧等が変動し易い。
【0006】
したがって、上記従来技術の電力システムのように、車両に搭載された蓄電装置を充放電する際に同一の通電系および電圧変換装置により電力の授受を行うと、車両に搭載された蓄電装置に充電する際に何ら問題がなくても、車両に搭載された蓄電装置から建物内の交流電力線へ電力を放電する際には、放電電力が安定し難く交流電力線の電力に悪影響を与えるという不具合を発生する場合がある。
【0007】
この不具合を解決するためには、車載の電圧変換装置を高性能な装置に変更したり、車両と建物内の交流電力線とを繋ぐ通電系に新たに電力を安定化させる装置を介設したりする対策が考えられる。しかながら、いずれの場合も放電電力を安定化させる複雑な装置を新たに設ける必要があるという問題がある。
【0008】
本発明者は、車載の蓄電装置とは異なる蓄電手段を備え、この蓄電手段が例えば双方向パワーコンディショナのような双方向型電力変換装置を介して交流電力線に接続された電力供給システムでは、双方向型電力変換装置が蓄電手段からの放電電力を安定化させる能力を有している点に着目した。すなわち、本発明者は、この双方向電力変換装置を巧みに利用すれば、車両に搭載された蓄電装置から建物内の交流電力線へ電力を放電する際に、複雑な装置を新たに設けなくても、放電電力を安定化させることが可能であることを見出した。
【0009】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、複雑な装置を新たに設けなくても、車両に搭載された蓄電装置から建物内の交流電力線へ電力を放電する際の放電電力を安定化させることが可能な電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
建物(1)内に配線され、接続された電気負荷に交流電力を給電するための交流電力線(4)と、
交流電力と直流電力とを相互に変換可能な双方向型電力変換装置(11)と、
双方向型電力変換装置(11)を介して交流電力線(4)に接続され、交流電力線(4)からの電力を充電可能であるとともに、蓄電された直流電力を交流電力線(4)へ放電可能な蓄電手段(12)と、
車両(90)に接続する接続端子部(23)を有し、交流電力線(4)の交流電力を接続端子部(23)から車両(90)へ供給して車両(90)に搭載された車載蓄電装置(93)に充電可能であるとともに、車両(90)から接続端子部(23)へ交流電力として出力される車載蓄電装置(93)の電力を放電可能な充放電手段(13、20、41)と、を備え、
充放電手段(13、20、41)は、車両(90)から接続端子部(23)へ出力された交流電力を直流電力に変換する電力変換器(13)を有し、電力変換器(13)で変換した直流電力を双方向型電力変換装置(11)を介して交流電力線(4)へ放電することを特徴としている。
【0011】
これによると、充放電手段(13、20、41)は、車両(90)に搭載された車載蓄電装置(93)に充電する際には、交流電力線(4)の交流電力を接続端子部(23)から車両(90)へ供給して車載蓄電装置(93)に充電し、車両(90)から接続端子部(23)へ交流電力として出力される車載蓄電装置(93)の電力を放電する際には、出力された交流電力を電力変換器(13)で直流電力に変換し、この直流電力を双方向型電力変換装置(11)を介して交流電力線(4)へ放電することができる。
【0012】
すなわち、車載蓄電装置(93)の電力放電時には、充電時とは異なる通電系を用いて、車両(90)から出力された交流電力を一旦電力変換器(13)で直流電力に変換し、変換した直流電力を、蓄電手段(12)を充放電するために設けられている双方向型電力変換装置(11)を介して、交流電力線(4)へ放電することができる。
【0013】
したがって、充電時の通電系に放電時の電力を安定化させる装置を新たに設けなくても、蓄電手段(12)を充放電するために設けられている双方向型電力変換装置(11)を利用して、車載蓄電装置(93)から交流電力線(4)への放電電力を安定化させることができる。このようにして、複雑な装置を新たに設けなくても、車両に搭載された蓄電装置から建物内の交流電力線へ電力を放電する際の放電電力を安定化させることが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、
充放電手段(13、20、41)は、蓄電手段(12)の蓄電状態および車両(90)からの車両情報に基づいて、車載蓄電装置(93)からの放電を制御する車載蓄電装置放電制御手段(30)を備え、
車載蓄電装置放電制御手段(30)は、蓄電手段(12)から交流電力線(4)への放電のみでは電気負荷への供給電力が不足し、車両情報に基づいて車載蓄電装置(93)に余剰電力が蓄電されていると判断した場合に限り、電力変換器(13)を作動させて、車両(90)から出力される電力を双方向型電力変換装置(11)を介して交流電力線(4)へ放電することを特徴としている。
【0015】
これによると、蓄電手段(12)からの放電のみでは供給電力が不足し、かつ、車載蓄電装置(93)の蓄電電力に余裕があるときに、車載蓄電装置(93)から安定な電力を交流電力線(4)へ放電することができる。したがって、車載蓄電装置(93)の蓄電電力を過剰に消費することを抑止することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明では、
充放電手段(13、20、41)は、車両(90)から出力される電力を交流電力線(4)へ放電することを推奨する旨を告知する告知手段(42)と、車両(90)からの電力の出力を許可状態とする許可状態設定操作手段(43)と、を備え、
車載蓄電装置放電制御手段(30)は、蓄電手段(12)から交流電力線(4)への放電のみでは電気負荷への供給電力が不足し、車両情報に基づいて車載蓄電装置(93)に余剰電力が蓄電されていると判断したときには、告知手段(42)を作動させて、車両(90)から出力される電力を交流電力線(4)へ放電することを推奨する旨を告知し、その後許可状態設定操作手段(43)が操作されて、車両(90)からの電力出力の許可状態が設定された場合に限り、電力変換器(13)を作動させて、車両(90)から出力される電力を双方向型電力変換装置(11)を介して前記交流電力線(4)へ放電することを特徴としている。
【0017】
これによると、蓄電手段(12)からの放電のみでは供給電力が不足し、かつ、車載蓄電装置(93)の蓄電電力に余裕があるときには、告知手段(42)を作動させて、車両(90)から出力される電力を交流電力線(4)へ放電することを推奨することができる。そして、この告知を受けて使用者等が許可状態設定操作手段(43)を操作し、車両(90)からの電力出力の許可状態が設定された場合に、車載蓄電装置(93)から安定な電力を交流電力線(4)への放電することができる。
【0018】
したがって、使用者等が車載蓄電装置(93)の余剰の蓄電電力の利用を望むときにのみ、車載蓄電装置(93)から安定な電力を交流電力線(4)への放電し、車載蓄電装置(93)の蓄電電力を過剰に消費することを確実に抑止することができる。
【0019】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における電力供給システムの全体概略構成を示す模式図である。
【図2】電力供給システムの蓄電ユニット10の概略構成を示す模式図である。
【図3】電力供給システムの蓄電ユニット10および充電スタンド20の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における電力供給システムの概略構成を示す模式図である。図2は、電力供給システムの蓄電ユニット10の概略構成を示す模式図であり、図3は、電力供給システムの蓄電ユニット10および充電スタンド20の概略構成を示す模式図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の電力供給システムは、例えば住宅である建物1内に配線された交流電力線4と、交流電力線4に電気的に接続された蓄電ユニット10と、車両90に交流電力線4からの電力を供給して車載蓄電池に充電するための充電スタンド20と、蓄電ユニット10および充電スタンド20に通信ケーブルで接続された操作表示器41と、を備えている。車両90は、比較的容量の大きな蓄電装置を搭載した例えばプラグインハイブリッド自動車や電気自動車である。
【0024】
建物1内に配線された交流電力線4は、例えば単相3線式の(1本の中性線と2本の電圧線とからなる)電力線であって、電力会社の電力系統2の系統電力が分電盤3を介して供給されるようになっている。分電盤3には、主幹ブレーカ5、および、各回路系統に流れる電流上限値を規制する漏電検知機能付きの電流ブレーカ6が配設されている。なお、分電盤3外において符号6を付した構成も、漏電検知機能付きの電流ブレーカ(所謂漏電ブレーカ)である。
【0025】
図1では図示を省略しているが、交流電力線4には、太陽光エネルギー、太陽熱エネルギー、風力エネルギー、水力エネルギー等の自然界のエネルギーから各種発電手段を用いて得られた系統外電力も供給されるものであってもよい。交流電力線4には、図示を省略した各種電気機器(電気負荷)等が接続可能となっており、これらの電気機器等に給電可能となっている。
【0026】
交流電力線4には、例えば建物1の外部に設置された蓄電ユニット(蓄電システム、e−Stationと呼ばれることもある)10が接続している。蓄電ユニット10は、双方向パワーコンディショナ11、蓄電池12、電力変換器13、蓄電池ECU(蓄電池制御装置)14等を備えている。蓄電池12は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池からなる単位電池を複数組み合わせた集合体である。
【0027】
図2に示すように、双方向パワーコンディショナ(双方向PCS)11は、充電・PCS制御用基盤111、電源変換回路112、通信基盤113およびDC/DCコンバータ114を備えている。蓄電池12は、この双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4に電気的に接続され、交流電力線4からの交流電力を充電したり、蓄電された直流電力を交流電力線4へ放電したりすることが可能となっている。
【0028】
蓄電池12に充放電する際には、双方向パワーコンディショナ11の充電・PCS制御用基盤111の指令に基づいて電源変換回路112が交直変換、電圧調整、充放電電力量調整を行うようになっている。充電・PCS制御用基盤111には、制御ボックス16内の接続端子台19を介して、前述の主幹ブレーカ5よりも上流側の電力線に設けられた電流センサ(図示は省略)からの信号が入力されるようになっている。充電・PCS制御用基盤111は、蓄電池12から交流電力線4へ放電しているときに、電流センサからの入力信号に基づいて交流電力線4から電力系統2への電力逆潮流現象の発生を検出した場合には、図示を省略したリレーを動作させて放電を禁止するようになっている。
【0029】
DC/DCコンバータ114からは、蓄電池ECU14および操作表示器41(図1参照)へ給電線が延びており、電力系統2の系統電力の停電時にも蓄電池ECU14や操作表示器41を作動可能としている。
【0030】
図1および図2に示すように、蓄電池ECU14は、双方向パワーコンディショナ11、蓄電池12および電力変換器13と通信線で接続され、例えば通信規格RS485の通信により、双方向パワーコンディショナ11、蓄電池12および電力変換器13を作動制御するようになっている。図2に示すように、具体的には、蓄電池ECU14は、双方向パワーコンディショナ11の通信基盤113と通信可能に接続されるとともに、蓄電池12に搭載された蓄電池監視ECU(蓄電池監視手段)121と通信可能に接続されている。
【0031】
図1に示すように、蓄電池ECU14は、ハブ40を介して操作表示器41および充電スタンド20の制御ECU30とLAN(ローカルエリアネットワーク)接続されて、相互に情報交換(情報伝達)が可能となっている。図2に示すように、蓄電池ECU14から延びるLANケーブルは、DC/DCコンバータ114から延びる給電線とともに制御ボックス16内の接続端子台19を介して蓄電ユニット10外へ延出され、操作表示器41内の拡張ECUと接続している。
【0032】
なお、制御ボックス16内には、建物1から延びる交流電力線4が蓄電ユニット10の内部配線と接続するための接続端子台19、蓄電池12の充放電系統を開閉する電池切外スイッチ17、蓄電池12の充放電系統に設けられた直流ヒューズ、および、標準タイプの100V用コンセント18等も配設されている。
【0033】
ここで、双方向パワーコンディショナ11が、本実施形態において交流電力と直流電力とを相互に変換可能な双方向型電力変換装置に相当し、蓄電池12が、本実施形態において双方向型電力変換装置を介して交流電力線4に接続され、交流電力線4からの電力を充電可能であるとともに、蓄電された直流電力を交流電力線4へ放電可能な蓄電手段に相当する。
【0034】
図1に示すように、充電スタンド20は、例えば建物1の外部に、蓄電ユニット10とは別体で設置されている。充電スタンド20には、分電盤3で交流電力線4から分岐した充電電力線21が接続している。充電電力線21は、充電スタンド20内にまで配設され、充電スタンド20の本体部から外部に延出する充放電ケーブル22に接続している。充放電ケーブル22の先端部には、接続端子部に相当する充放電コネクタ23が取付けられている。
【0035】
充電スタンド20の本体部内において、充電電力線21には放電電力線31が分岐接続しており、充電スタンド20の本体部から外部へ延びる放電電力線31は、蓄電ユニット10内にまで延設されている。蓄電ユニット10内に配設された放電電力線31は、双方向パワーコンディショナ11と蓄電池12とを繋ぐ電力線に、蓄電池12と並列に接続している。
【0036】
図3に示すように、充電電力線21の充電スタンド20内への配設部分には、放電電力線31の接続点よりも通電方向上流に、上流側から順に、ブレーカ6、ノイズフィルタ24、リレー25が介設されている。一方、放電電力線31の充電スタンド20内への配設部分には、リレー35が介設されている。また、放電電力線31の蓄電ユニット10内への配設部分には、通電方向上流側から順に、ブレーカ6、リレー15、前述の電力変換器(AC/DCコンバータ)13が介設されている。なお、リレー15、25、35は、電気信号によって電気回路の開閉を行う継電器であって、いずれも両切りタイプのリレー装置を採用している。
【0037】
充電スタンド20内には、CPLT基盤26、PLCユニット27、制御ECU(制御基盤)30、制御基盤用の電源装置28、PLCユニット用の電源装置29が配設されている。
【0038】
CPLT基盤26は、リレー25、35の開閉動作信号の出力、充電電力線21のリレー25の下流部における電圧の検出、放電電力線31のリレー35の下流部における電圧を検出、CPLT信号(コントロールパイロット信号)を生成・出力して車両90に搭載された車載充放電器92への信号の送信および車載充放電器92からの信号受信等を行う。CPLT基盤26は、車載蓄電池93への充電制御を主たる機能とする構成である。
【0039】
図3から明らかなように、充放電ケーブル22内には、電力線とともにCPLT線およびGND線が配設され、CPLT信号が通信可能となっている。CPLT基盤26は、リレー25よりも上流側の充電電力線21から給電され動作可能となっており、制御ECU30とは例えば通信規格RS485により通信可能となっている。
【0040】
PLC(電力線通信)ユニット27は、充放電ケーブル22内の電力線を介して車両90側との通信を行うためのユニットである。PLCユニット27は、リレー25よりも上流側の充電電力線21に接続する直流電源装置29から給電され動作可能となっており、制御ECU30とは例えば調歩同期方式(非同期方式)のシリアル通信をするためのUART(汎用非同期受信・送信)により通信可能となっている。
【0041】
車両90(図1参照)には、コネクタ91(具体的には充放電コネクタ23の差込口)が設けられている。このコネクタ91に充電スタンド20の充放電コネクタ23を接続することにより、車載充放電器92を介して、車載蓄電池93を充放電することが可能となっている。車載蓄電池93を充電する際には、コネクタ91に交流電力が供給され、供給された交流電力を車載充放電器92が直流電力に変換して、車載蓄電池93に充電する。一方、車載蓄電池93を放電する際には、車載蓄電池93の蓄電している直流電力を車載充放電器92が交流電力に変換して、コネクタ91から充放電コネクタ23へ放電する。
【0042】
制御ECU30は、リレー25よりも上流側の充電電力線21に接続する直流電源装置28から給電され動作可能となっており、CPLT基盤26、PLCユニット27、蓄電池ECU14、操作表示器41と通信することにより、車載蓄電装置である車載蓄電池93の充放電を制御する。制御ECU30は、車載蓄電装置充電制御手段であるとともに、本実施形態における車載蓄電装置放電制御手段に相当する。すなわち、制御ECU30は、車載蓄電装置充放電制御手段である。
【0043】
操作表示器41は、例えば建物1内に配設される遠隔操作手段(所謂リモコン)である。操作表示器41は、告知手段に相当する表示部42、および、車両90からの電力の出力を許可状態とする許可状態設定操作手段に相当する操作スイッチ43を備えている。なお、告知手段は表示部42のような表示手段に限定されず、発音手段等の他の手段を用いたり、他の手段と組み合わせたりすることも可能である。
【0044】
充電スタンド20、充電電力線21、ハブ40、操作表示器41、リレー15や電力変換器13を含む放電電力線31、および蓄電池ECU14からなる構成が、本実施形態における充放電手段に相当する。
【0045】
次に、上記構成に基づき電力供給システムの作動例について説明する。
【0046】
車載蓄電池93を充電する充電モード時には、制御ECU30は、まず、充放電コネクタ23が車両90に接続されたことをCPLT通信等(CPLT基盤26を介するCPLT通信およびRS485通信)にて確認し、LAN経由で宅内の操作表示器41へ接続完了を送信する。操作表示器41は例えば表示部42に接続完了を表示する。
【0047】
次に、リレー25、35をオフとし、リレー25、35のそれぞれの出力側に電圧が印加されていないことを確認(リレーの溶着がないことを検出)する。その後、リレー25をオンしてPLC通信を開始し、PLC通信等(PLCユニット27を介するPLC通信およびUART通信)にて検出した車両90側の情報をLAN経由で操作表示器41へ送信する。操作表示器41は例えば表示部42に車両情報を表示する。
【0048】
例えば操作スイッチ等が操作されて操作表示器41からLAN経由で充電開始指令が送信された場合には、リレー25をオン状態としリレー35をオフ状態として、CPLT通信等にて車載充放電器92に指定電力での充電開始を指示する。
【0049】
車載蓄電池93の充電終了をCPLT信号等にて検知した場合には、充電終了情報をLAN経由にて操作表示器41に送信して待機する。操作表示器41は例えば表示部42に充電終了情報を表示する。
【0050】
例えば操作スイッチ等が操作されて操作表示器41より充電停止指令がLAN経由で送信された場合には、CPLT通信等にて車載充放電器92の充電動作を停止させ待機する。
【0051】
そして、充放電コネクタ23が車両90から取り外されたことをCPLT通信等にて確認後、リレー25をオフし、LAN経由で操作表示器41に充放電コネクタ23が外されたことを送信する。操作表示器41は例えば表示部42にコネクタ取り外し情報を表示する。
【0052】
一方、車載蓄電池93を放電する放電モード時には、制御ECU30は、まず、充放電コネクタ23が車両90に接続されたことをCPLT通信等(CPLT基盤26を介するCPLT通信およびRS485通信)にて確認し、LAN経由で操作表示器41へ接続完了を送信する。操作表示器41は例えば表示部42に接続完了を表示する。
【0053】
次に、リレー25、35をオフとし、リレー25、35のそれぞれの出力側に電圧が印加されていないことを確認(リレーの溶着がないことを検出)する。その後、リレー25をオンしてPLC通信を開始し、PLC通信等(PLCユニット27を介するPLC通信およびUART通信)にて検出した車両90側の情報をLAN経由で操作表示器41へ送信する。操作表示器41は例えば表示部42に車両情報を表示する。例えば、車両90の車載蓄電池93に、次回の車両走行のために必要な蓄電量を上回る余剰の蓄電量があるか否かが表示される。
【0054】
車載蓄電池93に余剰電力が蓄電されているときに、例えば操作スイッチ43が操作され、操作表示器41からLAN経由で放電開始指令が送信された場合には、リレー25をオフ状態としリレー35をオン状態として、CPLT通信等またはPLC通信等にて車載充放電器92に放電開始を指示し、車載蓄電池93の放電を開始する。同時に、蓄電池ECU14を介して蓄電システム10内のリレー15をオン状態とし、電力変換器(AC/DC変換器)13をオン状態とする。これにより、車両90からの交流出力が直流電力に変換され、双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4に放電される。
【0055】
車両90からの交流出力が直流電力に変換されて双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4に放電されているときには、蓄電池ECU14が、蓄電池12の蓄電量、および、双方向パワーコンディショナ11から得られる交流電力線4から電力系統2への逆潮流の有無情報を監視し、車両90からの放電量を調整する。蓄電池12から交流電力線4への放電では、交流電力線4に接続した電気機器へ給電する電力が不足する分を、車載蓄電池93からの放電で補う。例えば、蓄電池12の蓄電量が充分であり、蓄電池12から交流電力線4への放電のみで交流電力線4に接続した電気機器への給電が賄える場合には、車載蓄電池93からの放電は行わない。
【0056】
例えば操作スイッチ等が操作されて操作表示器41より放電終了指令がLAN経由で送信された場合には、CPLT通信等またはPLC通信等にて車載充放電器92の放電動作を停止させ、リレー35をオフし、リレー25をオン状態にして待機する。同時に、蓄電池ECU14を介して蓄電システム10内のリレー15をオフし、電力変換器13をオフして、AC/DC変換を停止する。
【0057】
車両90からの交流出力が直流電力に変換されて双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4に放電されているときに、車載蓄電池93のSOC状態(蓄電状態)に応じて車載充放電器92より放電停止指令が伝達された場合には(具体的には、前述の余剰の蓄電量がなくなった場合には)、上記と同様の制御動作により放電を停止する。このとき、車載蓄電池93の蓄電量情報をLAN経由で操作表示器41に送信する。操作表示器41は例えば表示部42に車載蓄電池93に余剰電力がない旨を表示する。
【0058】
上記した放電モード時の制御において、車両90の車載蓄電池93から交流電力線4へ放電するか否かは、制御ECU30が、予め設定された条件を満たしているか否かで自動制御するものであっても良いし、使用者等の操作指示によって行うものであってもよい。
【0059】
例えば、制御ECU30が、蓄電池12から交流電力線4への放電のみでは電気負荷への供給電力が不足し、車両90からの情報に基づいて車載蓄電池93に余剰電力が蓄電されていると判断したときには、操作表示器41の表示部42に車載蓄電池93の電力を交流電力線4へ放電することを推奨する旨を表示する。そして、その後操作スイッチ43が操作されて、車両90からの電力出力の許可状態が設定された場合に、車両90から出力される車載蓄電池93の電力を交流電力線4へ放電するものであってもよい。
【0060】
これによると、使用者等が車載蓄電池93の余剰の蓄電電力の利用を望むときにのみ、車載蓄電池93から安定な電力を交流電力線4へ放電し、車載蓄電装置93の蓄電電力を過剰に消費することを抑止することができる。
【0061】
また、例えば、制御ECU30が、蓄電池12から交流電力線4への放電のみでは電気負荷への供給電力が不足し、車両90からの情報に基づいて車載蓄電池93に余剰電力が蓄電されていると判断したときには、操作表示器41の表示部42に車載蓄電池93の電力を交流電力線4へ放電する旨を表示する。そして、使用者等の操作の有無に係わらず、車両90から出力される車載蓄電池93の電力を交流電力線4へ放電するものであってもよい。
【0062】
これによると、蓄電池12からの放電のみでは供給電力が不足し、かつ、車載蓄電池93の蓄電電力に余裕があるときに、自動的に車載蓄電池93から安定な電力を交流電力線4へ放電することができ、車載蓄電池93の蓄電電力を過剰に消費することを抑止することができる。
【0063】
なお、蓄電池12から交流電力線4へ放電していないときに(蓄電池12から交流電力線4へ放電する必要がないときに)、車両90からの情報に基づいて車載蓄電池93に余剰電力が蓄電されていると判断したときには、車両90から出力される車載蓄電池93の電力を放電電力線31を介して蓄電池12へ一旦蓄電し、蓄電池12から交流電力線4へ放電する必要があるときに用いてもかまわない。
【0064】
上述の構成および作動によれば、本実施形態の電力供給システムは、蓄電池12を有する蓄電ユニット10を備えており、蓄電池12は、双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4に接続され、交流電力線4からの電力を充電可能であるとともに、蓄電された直流電力を交流電力線4へ放電可能となっている。
【0065】
そして、充電スタンド10の制御ECU30は、車両90の車載蓄電池23を充電するときには、交流電力線4の交流電力を充電電力線21を介して直接充放電コネクタ23へ供給して車載蓄電池93を充電し、車載蓄電池23から放電するときには、車両90から充放電コネクタ23へ交流電力として出力される車載蓄電池93の電力を放電電力線31を介して蓄電ユニット10へ送って電力変換器13で直流電力に変換し、変換した直流電力を双方向パワーコンディショナ11を介して交流電力線4へ放電する。
【0066】
これによると、車載蓄電池93の電力放電時には、充電時とは異なる通電系を用いて、車両90から出力された交流電力を一旦電力変換器13で直流電力に変換し、変換した直流電力を、蓄電池12を充放電するために設けられている双方向パワーコンディショナ11を介して、交流電力線4へ放電することができる。
【0067】
したがって、充電電力線21に放電時の電力を安定化させる高性能な装置を新たに介設したり、車載充放電器92を高性能な装置に変更したりしなくても、蓄電ユニット10の蓄電池12を充放電するために設けられている比較的高性能な(一般的に商用電力系統への系統連系の認定を受けている)双方向パワーコンディショナ11を利用して、車載蓄電池93から交流電力線4への放電電力を安定化させることができる。このようにして、複雑な装置を新たに設けなくても、車両90に搭載された車載蓄電池93から建物1内の交流電力線4へ電力を放電する際の放電電力を安定化させることができる。
【0068】
また、充電電力線21に放電時の電力を安定化させる装置を設ける必要がないので、充電時の効率を悪化させることも防止できる。
【0069】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0070】
上記実施形態では、各構成間で情報を伝達する通信に、LAN通信、RS485通信、UART通信、PLC通信、CPLT通信のいずれかを用いていたが、これに限定されるものではなく、上記実施形態の記載とは異なる通信方法を採用してもかまわない。また、有線通信に限定されず、無線通信を採用することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、蓄電ユニット10と充電スタンド20とは別体であったが、一体であってもかまわない。蓄電ユニット10と充電スタンド20とが別体の場合には、それぞれのユニットの設置位置の自由度が向上する。一方、蓄電ユニット10と充電スタンド20とが一体の場合には、構成を簡素化することが可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、定置式の蓄電池12、および、車載蓄電池93は、いずれも二次電池であったが、これに限定されるものではない。充放電可能な蓄電手段であればよく、例えばキャパシタ等を採用することも可能である。
【0073】
また、上記実施形態では、建物1は住宅であったが、これに限定されるものではない。例えば、建物は、店舗、工場、倉庫等であってもかまわない。
【符号の説明】
【0074】
1 建物
4 交流電力線
10 蓄電ユニット
11 双方向パワーコンディショナ(双方向PCS、双方向型電力変換装置)
12 蓄電池(蓄電手段)
13 電力変換器(充放電手段の一部)
20 充電スタンド(充放電手段の一部)
23 充放電コネクタ(接続端子部)
30 制御ECU(制御基盤、車載蓄電装置放電制御手段)
41 操作表示器(充放電手段の一部)
42 表示部(告知手段)
43 操作スイッチ(許可状態設定操作手段)
90 車両
93 車載蓄電池(車載蓄電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物(1)内に配線され、接続された電気負荷に交流電力を給電するための交流電力線(4)と、
交流電力と直流電力とを相互に変換可能な双方向型電力変換装置(11)と、
前記双方向型電力変換装置(11)を介して前記交流電力線(4)に接続され、前記交流電力線(4)からの電力を充電可能であるとともに、蓄電された直流電力を前記交流電力線(4)へ放電可能な蓄電手段(12)と、
車両(90)に接続する接続端子部(23)を有し、前記交流電力線(4)の交流電力を前記接続端子部(23)から前記車両(90)へ供給して前記車両(90)に搭載された車載蓄電装置(93)に充電可能であるとともに、前記車両(90)から前記接続端子部(23)へ交流電力として出力される前記車載蓄電装置(93)の電力を放電可能な充放電手段(13、20、41)と、を備え、
前記充放電手段(13、20、41)は、前記車両(90)から前記接続端子部(23)へ出力された交流電力を直流電力に変換する電力変換器(13)を有し、前記電力変換器(13)で変換した直流電力を前記双方向型電力変換装置(11)を介して前記交流電力線(4)へ放電することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記充放電手段(13、20、41)は、前記蓄電手段(12)の蓄電状態および前記車両(90)からの車両情報に基づいて、前記車載蓄電装置(93)からの放電を制御する車載蓄電装置放電制御手段(30)を備え、
前記車載蓄電装置放電制御手段(30)は、前記蓄電手段(12)から前記交流電力線(4)への放電のみでは前記電気負荷への供給電力が不足し、前記車両情報に基づいて前記車載蓄電装置(93)に余剰電力が蓄電されていると判断した場合に限り、前記電力変換器(13)を作動させて、前記車両(90)から出力される電力を前記双方向型電力変換装置(11)を介して前記交流電力線(4)へ放電することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記充放電手段(13、20、41)は、前記車両(90)から出力される電力を前記交流電力線(4)へ放電することを推奨する旨を告知する告知手段(42)と、前記車両(90)からの電力の出力を許可状態とする許可状態設定操作手段(43)と、を備え、
前記車載蓄電装置放電制御手段(30)は、前記蓄電手段(12)から前記交流電力線(4)への放電のみでは前記電気負荷への供給電力が不足し、前記車両情報に基づいて前記車載蓄電装置(93)に余剰電力が蓄電されていると判断したときには、前記告知手段(42)を作動させて前記推奨する旨を告知し、その後前記許可状態設定操作手段(43)が操作されて前記許可状態が設定された場合に限り、前記電力変換器(13)を作動させて、前記車両(90)から出力される電力を前記双方向型電力変換装置(11)を介して前記交流電力線(4)へ放電することを特徴とする請求項2に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−170258(P2012−170258A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30000(P2011−30000)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】