説明

電力供給システム

【課題】停電時により多くの電力を負荷に供給することができる電力供給システムを提供する。
【解決手段】自然エネルギーを利用して発電可能な発電部10と、商用電源100及び発電部10に接続され、商用電源100及び発電部10からの電力を充電可能な蓄電装置40と、を具備し、発電部10、蓄電装置40及び商用電源100からの電力を特定の負荷50に供給する電力供給システム1であって、蓄電装置40は、商用電源100が利用可能な場合、当該商用電源100及び発電部10からの電力を充電することが可能であり、商用電源100が停電した場合、充電された電力を特定の負荷50へと放電しつつ、発電部10からの電力を充電することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を備え、商用電源が停電した場合には当該蓄電装置から特定の負荷に電力を供給することが可能な電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電装置を備え、商用電源が停電した場合には当該蓄電装置から特定の負荷に電力を供給することが可能な電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の電力供給システムでは、商用電源が停電し、当該商用電源から負荷への電力の供給が絶たれた場合、商用電源に代えて蓄電装置に充電された電力を当該負荷に供給することができる。また、商用電源の停電が解消された(復旧した)場合、商用電源からの電力を負荷だけでなく蓄電装置にも供給することによって当該蓄電装置を再び充電することができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、停電時に負荷へと供給できる電力は蓄電装置に充電された電力だけであり、当該蓄電装置に充電された電力が無くなった場合、負荷への電力の供給が絶たれてしまうという点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−284060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、停電時により多くの電力を負荷に供給することができる電力供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、商用電源及び前記発電部に接続され、前記商用電源及び前記発電部からの電力を充電可能な蓄電装置と、を具備し、前記発電部、前記蓄電装置及び前記商用電源からの電力を特定の負荷に供給する電力供給システムであって、前記蓄電装置は、前記商用電源が利用可能な場合、当該商用電源及び前記発電部からの電力を充電することが可能であり、前記商用電源が停電した場合、充電された電力を前記特定の負荷へと放電しつつ、前記発電部からの電力を充電することが可能なものである。
【0009】
請求項2においては、前記蓄電装置は、前記商用電源が利用可能な場合、電力の充電と放電を同時に行わず、前記商用電源が停電した場合、電力の充電と放電を同時に行うことを可能とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、商用電源が停電した場合(非常時)においては、蓄電装置は発電部からの電力を充電しながら当該電力を適宜特定の負荷に供給する。このため、蓄電装置が電力供給時に充電されることがない場合に比べて、より多くの(蓄電装置の最大容量以上の)電力を特定の負荷に供給することができる。
【0012】
請求項2においては、通常時には蓄電装置の劣化を防止しつつ、商用電源が停電した場合には蓄電装置における電力の充電と放電を同時に行って、より多くの電力を特定の負荷に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムを示したブロック図。
【図2】同じく、商用電源が正常な場合を示したブロック図。
【図3】同じく、商用電源が停電した場合を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図1を用いて、本発明の実施の一形態に係る電力供給システム1の構成について説明する。
【0015】
電力供給システム1は、住宅等に設けられ、商用電源100からの電力及び自然エネルギーにより発電された電力を特定の負荷へと供給するものである。電力供給システム1は、主として発電部10、パワーコンディショナ20、分電盤30、蓄電装置40、負荷50(特定の負荷)、その他の負荷80、ホームサーバ60及び携帯型端末70等を具備する。
【0016】
発電部10は、太陽光を利用して発電する装置であり、太陽電池パネル等により構成される。発電部10は、例えば、住宅の屋根の上に設置される。
【0017】
パワーコンディショナ20は、発電部10において発電された直流電力を交流電力に変換し、商用電源100の電圧、周波数、位相に合わせる機能を有するものである。パワーコンディショナ20は、発電部10に接続される。
パワーコンディショナ20には、停電時(商用電源100からの電力が供給不能な場合)における「自立運転モード」のONとOFFとを切り換えるための運転切換スイッチ20aが設けられる。
また、パワーコンディショナ20には、停電時(非常時)において発電部10からの電力を取り出すための非常用コンセント21が設けられる。
【0018】
分電盤30は、漏電遮断器、配線遮断器及び制御ユニット等をまとめたものである。分電盤30は、パワーコンディショナ20及び商用電源100に接続される。
分電盤30には、後述する蓄電装置40が充電、放電及び情報(データ)のやり取りを行うための充放電用コンセント31が設けられる。
【0019】
蓄電装置40は、電力を充電するとともに、当該充電した電力を放電するものである。本実施形態に係る蓄電装置40は、電力を充放電可能なリチウムイオン電池及び当該リチウムイオン電池からの直流電力を交流電力に変換するインバータ等を具備する。
蓄電装置40は、停電時(非常時)における充電用のコード41を介して非常用コンセント21に接続される。
また、蓄電装置40は、通常時における充電用のコード42及び放電用のコード43を介して充放電用コンセント31に接続される。
また、蓄電装置40は、LANケーブル44を介して充放電用コンセント31に接続される。
【0020】
負荷50は、住宅内において電力が消費される電化製品等であり、特に、停電時(非常時)においても電力を供給する必要がある「特定の負荷」である。
本実施形態においては、負荷50(特定の負荷)として、リビングに設けられるリビングコンセント51、冷蔵庫52、及びリビングに設けられるリビング照明53を用いるものとする。また、リビングコンセント51には、テレビ51aが接続されるものとする。
負荷50は、それぞれ間接的に(本実施形態においては、充放電用コンセント31及び図示しない漏電遮断器等を介して)分電盤30及び蓄電装置40に接続される。
【0021】
その他の負荷80は、住宅内において電力が消費される電化製品等であり、前述の負荷50(特定の負荷)とは異なり、停電時(非常時)においては電力を供給する必要がない(非常時に電力を供給する必要性が低い)負荷である。その他の負荷80としては、例えば、リビング以外に設けられるコンセントや照明等が挙げられる。
その他の負荷80は、分電盤30に接続される。
【0022】
ホームサーバ60は、電力供給システム1内の情報を管理する制御手段である。
ホームサーバ60は、分電盤30に接続される。ホームサーバ60は、パワーコンディショナ20及び蓄電装置40等と情報のやり取りが可能とされ、当該パワーコンディショナ20及び蓄電装置40等の運転を制御することができる。
【0023】
携帯型端末70は、住宅の居住者が電力供給システム1の状態を確認したり、当該電力供給システム1の運転状態を変更するための操作をしたりするためのものである。携帯型端末70としては、表示装置と入力装置を組み合わせたタッチパネル等を用いることができる。
携帯型端末70は、無線によりホームサーバ60と情報のやり取りをすることができる。
【0024】
次に、図2を用いて、上述の如く構成された電力供給システム1において、商用電源100からの電力が問題なく供給される場合の電力の供給態様について説明する。
【0025】
通常、すなわち商用電源100からの電力が問題なく供給可能な場合、パワーコンディショナ20の運転切換スイッチ20aは居住者によってOFFに切り換えられている。この場合、パワーコンディショナ20の自立運転モードはOFFとされ、当該パワーコンディショナ20の非常用コンセント21からの電力の取り出しはできない。
【0026】
この状態においては、発電部10において発電された直流電力は、パワーコンディショナ20において交流電力に変換され、分電盤30に供給される。また、商用電源100からの交流電力も分電盤30に供給される。
【0027】
当該発電部10及び商用電源100から分電盤30に供給された電力は、適宜の時間帯にコード42を介して蓄電装置40に充電される。当該充電する時間帯は、携帯型端末70を用いて任意に設定することができる。例えば深夜に充電するように設定すれば、料金の安い深夜電力を蓄電装置40に充電することができる。また、昼間の太陽光が十分に照射される時間帯に発電部10からの電力を充電するように設定すれば、当該発電部10において自然エネルギー(太陽光)を利用して発電された電力を蓄電装置40に充電することができる。
なお、この場合(通常時)においては、発電部10及び商用電源100からの電力を蓄電装置40に充電する際、同時に当該蓄電装置40から負荷50やその他の負荷80へと電力が供給(放電)されることはない。このように、充電と放電とを同時に行わないようにすることによって、蓄電装置40(より詳細には、当該蓄電装置40内の蓄電池(リチウムイオン電池))の劣化を防止することができる。
【0028】
また、発電部10及び商用電源100から分電盤30に供給された電力は、特定の負荷50及びその他の負荷80に供給される。すなわち、居住者は、発電部10及び商用電源100からの電力によって、テレビ51aを見たり、冷蔵庫52で食料品を冷やしたり、リビング照明53を点灯させたりすることができる。
【0029】
さらに、蓄電装置40に充電された電力を、コード43、分電盤30等を介して負荷50及びその他の負荷80に供給することも可能である。この場合、商用電源100から供給される電力(買電)を減らすことができる。当該蓄電装置40から負荷50に電力を供給する時間帯は、携帯型端末70を用いて任意に設定することができる。例えば深夜に充電した電力を昼間に負荷50に供給するように設定することで、電力料金を節約することができる。
なお、蓄電装置40から負荷50及びその他の負荷80に電力を供給(放電)する場合においては、同時に発電部10及び商用電源100からの電力が蓄電装置40に充電されることはない。このように、充電と放電とを同時に行わないようにすることによって、蓄電装置40(より詳細には、当該蓄電装置40内の蓄電池(リチウムイオン電池))の劣化を防止することができる。
【0030】
また、負荷50及びその他の負荷80で消費する電力が、発電部10からの電力だけで十分まかなえる場合は、商用電源100からの電力を用いないようにすることも可能である。これによって、電力料金を節約することができる。
【0031】
上述の如く発電部10、商用電源100及び蓄電装置40からの電力を適宜負荷50及びその他の負荷80に供給するための制御は、ホームサーバ60に記憶された制御プログラムに基づいてなされる。
また、上述の如き電力の供給状態は携帯型端末70の表示装置に表示され、居住者は当該携帯型端末70により電力の供給状態を確認することができる。
【0032】
次に、図3を用いて、停電時(商用電源100からの電力が供給不能な場合)における電力の供給態様について説明する。
【0033】
停電時(非常時)においては、電力会社の電力復旧作業を妨げないように、商用電源100から分電盤30への電力系統及びパワーコンディショナ20から分電盤30への電力系統(分電盤30を介する電力系統)に電力が流されることがない。
【0034】
この停電時(非常時)においては、居住者は、パワーコンディショナ20の運転切換スイッチ20aをONに切り換える。これによって、パワーコンディショナ20の自立運転モードがONとされ、当該パワーコンディショナ20の非常用コンセント21からの電力の取り出しが可能となる。
但し、運転切換スイッチ20aは、分電盤30において停電であることが検知された情報をパワーコンディショナ20に送信し、自動的にONに切り換えられるように構成することも可能である。
【0035】
この状態においては、発電部10において発電された電力は、パワーコンディショナ20、非常用コンセント21及びコード41を介して蓄電装置40に充電される。
【0036】
負荷50のスイッチがONにされた場合、蓄電装置40に充電された電力(通常時においてあらかじめ充電されていた電力及び非常時において発電部10から供給された電力)は、コード43等を介して負荷50に供給される。なお、停電時においては使用できる電力量が限られているため、電力を供給するのは必要最低限の負荷(負荷50)のみであり、その他の負荷80には電力は供給されない。
【0037】
上述の如く、停電時においては、発電部10からの電力を蓄電装置40に充電しながら、同時に当該蓄電装置40の電力を負荷50に供給することができる。このように、蓄電装置40の電力を放電するだけでなく、並行して充電も行うことで、あらかじめ蓄電装置40に充電された電力及び発電部10において新たに発電された電力を効率良く負荷50へ供給することができる。また、このように蓄電装置40の充電と放電とを同時に行うことで当該蓄電装置40(より詳細には、当該蓄電装置40内の蓄電池(リチウムイオン電池))の劣化が懸念されるが、充電と放電とを同時に行うのは停電時(非常時)のみであるため、当該蓄電装置40の劣化を最小限に抑えつつ、非常時には電力を効率良く負荷50へと供給することができる。
【0038】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部10と、商用電源100及び発電部10に接続され、商用電源100及び発電部10からの電力を充電可能な蓄電装置40と、を具備し、発電部10、蓄電装置40及び商用電源100からの電力を特定の負荷50に供給する電力供給システム1であって、蓄電装置40は、商用電源100が利用可能な場合、当該商用電源100及び発電部10からの電力を充電することが可能であり、商用電源100が停電した場合、充電された電力を特定の負荷50へと放電しつつ、発電部10からの電力を充電することが可能なものである。
【0039】
このように構成することによって、商用電源100が停電した場合(非常時)においては、蓄電装置40は発電部10からの電力を充電しながら当該電力を適宜特定の負荷50に供給する。このため、蓄電装置40が電力供給時に充電されることがない場合(あらかじめ充電された電力のみを供給する場合)に比べて、より多くの(蓄電装置40の最大容量以上の)電力を特定の負荷に供給することができる。
【0040】
また、蓄電装置40は、商用電源100が利用可能な場合、電力の充電と放電を同時に行わず、商用電源100が停電した場合、電力の充電と放電を同時に行うことを可能とするものである。
【0041】
このように構成することにより、通常時には蓄電装置40の劣化を防止しつつ、商用電源100が停電した場合には蓄電装置40における電力の充電と放電を同時に行って、より多くの電力を特定の負荷50に供給することができる。
【0042】
また、本実施形態のように蓄電装置40を介してパワーコンディショナ20の非常用コンセント21と分電盤30を接続しておくことで、非常時に負荷を直接パワーコンディショナ20の非常用コンセント21に接続する必要がなく、容易に特定の負荷50に電力を供給することができる。さらに、非常用コンセント21に直接接続することができないリビング照明53等にも電力を供給することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部の実施の一形態として、太陽光を利用して発電する発電部10を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば風力を利用して発電するものであっても良い。
【0044】
また、本実施形態においては、蓄電装置の実施の一形態として、リチウムイオン電池を具備する蓄電装置40を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば鉛蓄電池等を具備するものであっても良い。
【0045】
また、本実施形態においては、特定の負荷の実施の一形態として、リビングコンセント51(テレビ51a)、冷蔵庫52及びリビング照明53を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、その他の負荷(例えば、廊下の照明等)を特定の負荷とすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 電力供給システム
20 パワーコンディショナ
10 発電部
40 蓄電装置
50 負荷(特定の負荷)
100 商用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、
商用電源及び前記発電部に接続され、前記商用電源及び前記発電部からの電力を充電可能な蓄電装置と、
を具備し、
前記発電部、前記蓄電装置及び前記商用電源からの電力を特定の負荷に供給する電力供給システムであって、
前記蓄電装置は、
前記商用電源が利用可能な場合、当該商用電源及び前記発電部からの電力を充電することが可能であり、
前記商用電源が停電した場合、充電された電力を前記特定の負荷へと放電しつつ、前記発電部からの電力を充電することが可能な、
電力供給システム。
【請求項2】
前記蓄電装置は、
前記商用電源が利用可能な場合、電力の充電と放電を同時に行わず、
前記商用電源が停電した場合、電力の充電と放電を同時に行うことを可能とする、
請求項1に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−31339(P2013−31339A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167482(P2011−167482)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】