説明

電力供給制御方法及び電力供給制御装置

【課題】負荷に接続している複数の交流電源のうちの一つからの電力供給が停止した場合に、電力供給が全く途切れずに負荷への電力供給を続行可能な電力供給制御方法を提供する。
【解決手段】負荷に並列的に接続する第1の交流電源と前記第2の交流電源ともに運転状態である平常状態時に、第1の交流電源から、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成される第1の半導体スイッチを介して負荷に電力を供給し、第1の交流電源から前記負荷への電力供給と並行して、第2の交流電源から、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成される第2の半導体スイッチを介して負荷に電力を供給し、平常状態から第1の交流電源の運転が停止する異常状態に変化した場合、第1の半導体スイッチを両導通方向ともに非導通状態とするとともに、第2の交流電源から第2の半導体スイッチを介した負荷への電力供給を続行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の交流電源から負荷に電力を供給する電力供給制御方法及び電力供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の異なる交流電源から負荷に電力を供給する際に、複数の交流電源のうちの一つを常用電源として、通常状態では、当該常用電源からのみ負荷に電力を供給し、常用電源が故障などにより停止した場合に、別の予備電源に切り換えて、当該予備電源から負荷へ電力供給を続行している。
【0003】
図1は、従来の電源切り換え方式を説明する図である。交流電源Aを常用電源、交流電源Bを予備電源とし、負荷Lはスイッチ1を介して交流電源Aと接続し、且つスイッチ2を介して交流電源Bと接続している。平常状態は、スイッチ1が閉状態であり、スイッチ2が開状態であり、負荷Lは交流電源Aとのみ接続し、交流電源Aのみから負荷Lに電力が供給される(図1(a))。交流電源Aの故障などの異常が発生した場合には、スイッチ1を閉状態から開状態に切り換え、同時にスイッチ2を開状態から閉状態に切り換えることで、負荷Lを交流電源Aから遮断し、交流電源Bと導通させ、負荷Lへの電力供給は、交流電源Bからの電力供給に切り換えられる(図1(b))。
【0004】
図1に示されるように、スイッチ1、2が機械スイッチ(電磁接触スイッチを含む)である場合、その開閉動作に一定時間を必要とし、電源切り換え時において、スイッチ1が閉状態から開状態なるタイミングと、スイッチ2が開状態から閉状態になるタイミングを完全に一致させることはできない。すなわち、電源切り換え時において、両スイッチ1及び2ともに閉状態又は開状態となる期間が生じる。両スイッチ1及び2ともに閉状態の場合、交流電源Aと交流電源B間が短絡し、交流電源Aと交流電源Bの電圧差と位相差に応じて、一方の電源から他方の電源に流れる循環電流が生じ、電源に悪影響を及ぼす。また、両スイッチ1及び2ともに開状態の場合は、負荷Lに電力が供給されず、停電期間が生じる。
【0005】
この電源切り換え時に発生する短絡期間又は停電期間を短縮するために、スイッチ1、2を機械的スイッチに代わって、サイリスタを用いたスイッチ(サイリスタスイッチ)に置き換えることが提案されている(特許文献1−8など)。
【0006】
図2は、サイリスタスイッチを用いた従来の電源切り換え方式を説明する図である。図2は図1におけるスイッチ1、2それぞれをサイリスタスイッチ3、4に置換したものであり、サイリスタスイッチ3、4は、逆並列に接続された1対のサイリスタから構成される。
【0007】
交流電源Aが正常状態の場合、サイリスタスイッチ3の各サイリスタにゲート信号を連続的に与えることで(ゲート信号ON)、サイリスタスイッチ3を閉状態に維持しておき、サイリスタスイッチ4の各サイリスタにゲート信号を与えないことで(ゲート信号OFF)、サイリスタスイッチ4を開状態にしておくことにより、負荷Lに対して、交流電源Aのみから電力が供給される。
【0008】
交流電源Aの故障などの異常が発生した場合、サイリスタスイッチ3の各サイリスタに対するゲート信号の供給を直ちに停止し(ゲート信号OFF)、サイリスタスイッチ3を開状態にし、同時にサイリスタスイッチ4の各サイリスタにゲート信号の供給を開始することで(ゲート信号ON)、サイリスタスイッチ4を閉状態にすることで、負荷Lには、交流電源Aに代わって、予備電源である交流電源Bから電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−84933号公報
【特許文献2】特開平4−109835号公報
【特許文献3】特開平4−165930号公報
【特許文献4】特開平11−299103号公報
【特許文献5】特開2001−197680号公報
【特許文献6】特開2001−218390号公報
【特許文献7】特開2007−166844号公報
【特許文献8】特開平6−86480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電源切り換え時において、サイリスタスイッチ3、4は、機械スイッチ1、2よりは高速な切り換えが可能であるが、サイリスタスイッチ3が閉状態から開状態なるタイミングと、サイリスタスイッチ4が開状態から閉状態になるタイミングを完全に一致させることはできない。従って、機械スイッチ1、2の場合よりはその時間が短くなるが、両サイリスタスイッチともに閉状態による短絡期間又は両サイリスタスイッチともに開状態による停電期間の発生をなくすことはできない。
【0011】
また、停電期間の発生をなくすように、両サイリスタスイッチともに開期間に電流が流れるようにリアクトルを接続する構成などが提案されているが(例えば特許文献4)、スイッチの切り換え制御のみでは完全な無瞬断切り換えは実現できず、無瞬断切り換えのためにこのようなスイッチに特別な回路を付加する必要があり、回路構成が複雑化、大型化する。
【0012】
さらに、停電を検出して常用電源から予備電源に切り換える方式(例えば特許文献6)では、すでに停電が発生しているため、無瞬断の電源切り換えはそもそも不可能である。
【0013】
また、メンテナンスなどで一方の電源を停止する予定が事前に分かっている場合は、あらかじめ複数の電源の電圧と位相を一致させる作業を行うことで循環電流の発生を防止できるので、当該作業を行った後に、一旦両スイッチともに閉状態にし、両方の電源と負荷を接続させてから、一方のスイッチを開状態にすることで無瞬断切替が可能となる。しかしながら、この方法は、電源切り換え予定が事前に判明している場合にのみ適用可能であり、常用電源と予備電源の電圧と位相が一致していない場合に、不測の事態により常用電源に異常が発生した場合には適用できない。
【0014】
なお、スポットネットワーク受電設備は、配電用変電所の同じ母線から出る2回線以上のフィーダから並列に受電する方法である。故障により1本のフィーダからの電力供給が停止しても、残りのフィーダからの電力供給は行われ、負荷への電力供給は停止しないが、循環電流を抑制するために、各フィーダ間の電圧、位相を一致させることが必要であるなど、適用できる電源条件が厳しい。
【0015】
そこで、本発明の目的は、交流電源間の電圧差、位相差のある場合においても、負荷に接続している複数の交流電源のうちの一つからの電力供給が停止した場合に、電力供給が全く途切れずに負荷への電力供給を続行可能な電力供給制御方法及び電力供給制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明の電力供給制御方法は、第1の交流電源及び第2の交流電源から負荷に電力を供給する電力供給制御方法において、前記第1の交流電源と前記第2の交流電源ともに運転状態である平常状態時に、前記第1の交流電源から、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成される第1の半導体スイッチを介して前記負荷に電力を供給し、前記平常状態時に、前記第1の交流電源から前記負荷への電力供給と並行して、前記第2の交流電源から、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成される第2の半導体スイッチを介して前記負荷に電力を供給し、前記平常状態から前記第1の交流電源の運転が停止する異常状態に変化した場合、前記第1の半導体スイッチを両導通方向ともに非導通状態とするとともに、前記第2の交流電源から前記第2の半導体スイッチを介した前記負荷への電力供給を続行することを特徴とする。
【0017】
また、上記目的を達成するための本発明の電力供給制御装置は、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成され、第1の交流電源と負荷とを接続する電線路を導通又は非導通状態にする第1の半導体スイッチと、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成され、第2の交流電源と前記負荷とを接続する電線路を導通又は非導通状態にする第2の半導体スイッチと、前記第1の半導体スイッチ及び前記第2の半導体スイッチの導通又は非導通状態を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記第1の交流電源と前記第2の交流電源ともに運転状態である平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが同一である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記制御回路は、前記平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが反対である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記制御回路は、前記異常状態時に、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とすることを特徴とする。
【0018】
具体的には、前記平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが同一である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが反対である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とする。
【0019】
さらに、前記異常状態時に、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とする。
【0020】
例えば、前記第1の半導体スイッチ及び前記第2の半導体スイッチは、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対のサイリスタから構成されるサイリスタスイッチである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の電源から負荷に対して並列的に同時に電力を供給する。従って。一つの電源の運転停止によっても、残りの電源からの電力供給が続行されるため、停電は一瞬たりとも発生しない。そのため、電力供給の信頼性が格段に向上する。また、一つの電源を運転停止しても、停電が発生しないため、送配電線路の保守作業などのために、一つの電源をいつでも運転停止できる。これにより、活線作業や夜間作業なども不要とすることができ、保守作業の効率が向上する。
【0022】
また、複数の電源から同時に電力を供給するので、一つの電源からのみ電力を供給する場合と比較して、送配電に関する電力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の電源切り換え方式を説明する図である。
【図2】サイリスタスイッチを用いた従来の電源切り換え方式を説明する図である。
【図3】本実施の形態例における電力供給システムの模式図である。
【図4】スイッチ装置を含む電力供給システムの全体回路構成例を示す図である。
【図5】スイッチSWA、SWBの第1の導通/非導通制御処理例について説明する図である。
【図6】スイッチSWA、SWBの第2の導通/非導通制御処理例について説明する図である。
【図7】ゲート回路の構成例を示す図である。
【図8】電源PAとPBが並列に通常運転している場合における図7のゲート回路のタイミングチャートである。
【図9】電源PBが運転停止し電源PAのみが運転している場合における図7のゲート回路のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0025】
本実施の形態における電力供給制御方法は、複数の交流電源がそれぞれの電線路を介して負荷と接続している電力供給システムにおいて、平常時に、負荷に接続する複数の交流電源を並列運転し、複数の交流電源から同時に負荷に電力を供給する。複数の交流電源のうちの一つが運転停止した異常時には、残りの交流電源はそのまま運転を続行しているため、負荷への電力供給は一瞬たりとも途切れることなく、完全な無瞬断で電力供給を行うことができる。
【0026】
以下の説明では、一例として、2つの交流電源(以下、単に電源と称する)がそれぞれの電線路を介して負荷Lに接続する構成が示される。
【0027】
図3は、本実施の形態例における電力供給システムの模式図である。2つの電源PA、PBがそれぞれの電線路ha、hbを介して負荷Lと接続する構成が示される。各電線路ha、hb上には、それぞれスイッチSWA、SWBが接続している。スイッチ装置SWA、SWBの構成及び作用については後述する。なお、Bはブレーカである。
【0028】
複数の交流電源を並列運転し、複数の交流電源から負荷に同時に電力供給を行うことにより、次のようなメリットが生じる。
【0029】
(1)一方を常用電源とし、他方を予備電源とし、平常時に常用電源のみから負荷に電力を供給し、常用電源が故障などにより運転停止した場合に、予備電源に切り換える従来方式は、上述したように、循環電流の流れ込みを防止するために、切り替え時の停電が避けられない。これに対して、本電力供給制御方法は、切り換え方式ではないため、例えば、一方の電源PAが停止しても、他方の電源PBからの電力供給は続いているため、一つの電源の運転停止によっても、原理的に停電は発生しない。そのため、電力供給の信頼性が格段に向上する。
【0030】
(2)従来の切り換え方式と比較して、送配電に関する電力損失を低減することができる。具体的には、電力損失は、1電線路の場合と比較して、2電線路では2分の1、3電線路では3分の1となる。
【0031】
(3)上記(1)で述べたように、一つの電源を運転停止しても、停電が発生しないため、送配電線路の保守作業などのために、一つの電源をいつでも運転停止できる。これにより、活線作業や夜間作業なども不要とすることができ、保守作業の効率が向上する。
【0032】
ただし、複数の電源を並列運転して複数の電源から負荷に対して同時に電力を供給する場合、次の事項を考慮する必要がある。
【0033】
(a)電源PA、PB間に電圧差、位相差が有る場合、電源間の循環電流のため、並列運転できない可能性がある。また、負荷L側から見た場合、位相差に応じて電源に歪みが生じる。
【0034】
(b)電源PA又はPBの一部に障害が発生した場合、障害が発生した電源PA又はPBはそれぞれの保護機能により運転停止するが、残った健全な電源からも事故電流が供給されるために、最終的に、負荷Lへの電力供給が停止するおそれがある。
【0035】
(c)電源PA又はPBの一方を必要に応じて運転停止しようとしても、他方の電源からの逆加圧により停止できない恐れがある。
【0036】
上記した事項を解決するために、本実施の形態例では、各電源と負荷を接続する電線路に、以下の機能を有するスイッチ装置SWA、SWBが接続される。
【0037】
(A)電源PA、PB間に電圧差、位相差による循環電流を阻止すること。
【0038】
(B)電源PA又はPBに障害が発生して停止した場合に、残った健全な電源側から運転停止した電源側への事故電流を阻止すること。
【0039】
(C)電源PA又はPBを運転停止させる場合に、残った電源側から運転停止した電源側への逆加圧を阻止すること。
【0040】
図4は、スイッチ装置を含む電力供給システムの全体回路構成例を示す図である。2つの電源PA、PBは、それぞれスイッチSWA、SWBを介して負荷Lと接続している。スイッチSWAは、それぞれ導通方向が互いに逆で並列に接続された1対のサイリスタDPA、DNAから構成される。スイッチSWBは、それぞれ導通方向が互いに逆で並列に接続された1対のサイリスタDPB、DNBから構成される。各スイッチSWA、SWBの各サイリスタのゲート信号をON/OFF制御することで、電流の方向毎に電流の導通/非導通を制御することができる。本実施の形態例では、スイッチSWA、SWBの導通/非導通制御により、上述の機能(A)−(C)を実現する。
【0041】
図5は、スイッチSWA、SWBの第1の導通/非導通制御処理例について説明する図である。図5(a)は電源PA、PBの電圧波形例を示し、図5(b)は、その電圧波形に応じた各サイリスタDPA、DPB、DNA、DNBの導通(ON)/非導通(OFF)状態を示すタイミングチャートである。ゲート信号がONのときサイリスタは順方向に導通状態となり、ゲート信号がOFFのとき非導通状態となる。逆方向には、ゲート信号のON/OFF状態にかかわらず非導通状態である。なお、サイリスタの基本動作として、ゲート信号がONされて一旦導通状態になると、その後ゲート信号がOFFされても、通過電流がゼロになるまで導通状態を維持し、通過電流がゼロになると非導通状態となる。
【0042】
図5(a)では、電源PAとPB間の位相が一致している場合の波形が示される。この場合、全期間にわたって、電源PAとPBの電流方向は同じであり、同一タイミングにて1/2ヘルツ毎に電流方向が反転する。期間t0−t1では、スイッチSWAのサイリスタDNAとスイッチSWBのサイリスタDNBがONし、スイッチSWAのサイリスタDPAとスイッチSWBのサイリスタDPBがOFF(非導通)となる。サイリスタDNAがON(導通)することにより、電源PAと負荷L間は導通状態となり、電源PAから負荷Lに電力供給される。一方、サイリスタDPBがOFFであるため、電源PAの電圧が電源PBの電圧より大きい場合であっても、電源PAから電源PBへの循環電流、逆加圧は生じない。
【0043】
また、サイリスタDNBがONすることにより、電源PBと負荷L間は導通状態となり、電源PBから負荷Lに電力供給される。一方、サイリスタDPAがOFFであるため、電源PBの電圧が電源PAの電圧より大きい場合であっても、電源PBから電源PAへの循環電流、逆加圧は生じない。
【0044】
期間t1−t2は、期間t0−t1と電流方向が逆であるので、上述の期間t0−t1の動作と逆の動作を行う。すなわち、スイッチSWAのサイリスタDPAとスイッチSWBのサイリスタDPBがONし、スイッチSWAのサイリスタDNAとスイッチSWBのサイリスタDNBがOFFする。サイリスタDPAがONすることにより、電源PAと負荷L間は導通状態となり、電源PAから負荷Lに電力供給される。一方、サイリスタDNBがOFFであるため、電源PAの電圧が電源PBの電圧より大きい場合であっても、電源PAから電源PBへの循環電流、逆加圧は生じない。
【0045】
また、サイリスタDPBがONすることにより、電源PBと負荷L間は導通状態となり、電源PBから負荷Lに電力供給される。一方、サイリスタDNAがOFFであるため、電源PBの電圧が電源PAの電圧より大きい場合であっても、電源PBから電源PAへの循環電流、逆加圧は生じない。
【0046】
期間t2−t3は、上述の期間t0−t1と同じ動作であり、以降、同様の動作が繰り返される。
【0047】
図6は、スイッチSWA、SWBの第2の導通/非導通制御処理例について説明する図である。図6(a)は電源PA、PBの電圧波形例を示し、図6(b)は、その電圧波形に応じた各サイリスタDPA、DPB、DNA、DNBのゲート信号のON/OFF状態のタイミングチャートである。図6(a)は、図5(a)の波形と比較して、電源PAと電源PB間に位相差がある場合の波形である。なお、上述の図5の例は、図6の例における位相差0の場合の例であり、図5の例は図6の例に包含されるものである。
【0048】
電源PAと電源PB間に位相差がある場合、図6(a)における期間t0−t1、t2−t3、t4−t5、t6−t7では、電源PAとPBの電流方向が互いに逆向きになる期間が発生する。これらの期間においては、電源PAとPBの両方から負荷に電力を供給するように、図5と同様に、電流の向きが反転するタイミングでスイッチSWA、SWBの導通(ON)/非導通(OFF)制御すると、循環電流が発生するおそれがある。そのため、これらの期間では、電源PA又はPBのいずれか一方のみから電力を供給するようにスイッチSWA、SWBを制御する。
【0049】
具体的には、期間t0−t1において、電源PAの電流の向きが反転する時刻t0のタイミングでは、スイッチSWAのサイリスタDNAをONせずに、OFF状態を維持する。時刻t1までは、スイッチSWBのサイリスタDPBがON状態であるため、時刻t0のタイミングでスイッチSWAのサイリスタDNAをONすると、循環電流が生じる可能性がある。そのため、期間t0−t1では、スイッチSWBのサイリスタDPBのみがON状態となり、電源PBのみから負荷Lに電力が供給される。なお、時刻t0で、スイッチSWAのサイリスタDPAはON状態からOFF状態となる。
【0050】
時刻t1になると、電源PBの電流も反転し、電源PAの電流の向きと同じになるので、時刻t1のタイミングでスイッチSWAのサイリスタDNAをONする。また、スイッチSWBのサイリスタDNBもONされ、サイリスタDPBはOFFされる。従って、期間t1−t2間は、電源PA、PBの両方から電力が供給される。
【0051】
期間t2−t3は、期間t0−t1と比較して、電流方向が逆であるので、上述の期間t0−t1の動作と逆の動作を行う。すなわち、時刻t2のタイミングでは、スイッチSWAのサイリスタDPAをONせずに、OFF状態を維持する。なお、時刻t2で、スイッチSWAのサイリスタDNAはON状態からOFF状態となる。そして、時刻t3において、スイッチSWAのサイリスタDPAをONする。また、スイッチSWBのサイリスタDPBもONされ、サイリスタDNBはOFFされる。期間t4−t5は、期間t0−t1と同一であり、以降同様の動作が繰り返される。
【0052】
このように、通常運転(平常状態)時において、電源PAの電流方向と電源PBの電流方向とが同一である場合、スイッチSWAを、電源PAの電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、スイッチSWBを、電源PBの電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、さらに、電源PAの電流方向と電源PBの電流方向とが反対である場合は、スイッチSWAを、電源PAの電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、スイッチSWBを、電源PBの電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とする。
【0053】
図7は、ゲート回路の構成例を示す図である。ゲート回路は、上述の図5及び図6に示したスイッチSWA、SWBのON/OFF制御を行うためのゲート信号を生成する回路である。スイッチSWA、SWB及び図7のゲート回路が、本実施の形態における電力供給制御装置を構成する。
【0054】
図7(a)はゲート回路の主回路構成であり、図7(b)は主回路の位置gp、kpに接続するTP側回路の構成を示し、図7(c)は主回路の位置gn、knに接続するTN側回路の構成を示す。図7(b)の回路と図7(c)の回路の構成は同一である。なお、図7では、電源PAのスイッチSWAのゲート信号を生成するゲート回路の構成を示しているが、電源PBのスイッチSWBのゲート信号を生成するゲート回路も同様に構成される。電源PB側のゲート回路は、図7(a)の主回路において、電源PAからの信号と電源PBからの信号が入れ替わり、サイリスタTP、TNのゲート信号として、電源PA側からの信号が入力され、そのゲート信号に応じて、電源PBからの信号を導通させる。
【0055】
図8は、電源PAとPBが並列に通常運転している場合における図7のゲート回路のタイミングチャートであり、図9は、電源PBが運転停止し電源PAのみが運転している場合における図7のゲート回路のタイミングチャートである。図8及び図9では、電源PA、PBの電圧波形に位相差θがある場合を示す。
【0056】
まず、図8を参照しながら、電源PAとPBが同時に並列運転している平常状態における図7のゲート回路の動作について説明する。図7(a)のゲート回路において、電源PAとPBが同時に並列運転している平常状態では、図8に示されるように、電源PAの電流方向が電源PBの電流方向と一致したタイミングで、その電流方向に応じて交互に、サイリスタTP、TNにそれぞれゲート信号SP1、SN1が供給される。図8では、電源PBは電源PAよりも位相差θ分遅れているので、ゲート信号SP1、SN1は、それぞれの電流方向について、電源PBの電流方向変化に応じてONし、その後の電源PAの電流方向変化(電流ゼロ)によりOFFする。
【0057】
ゲート信号SP1、SN1が供給されている期間、サイリスタTP、TNは導通する。電源PA、PBが同時に並列運転している場合は、サイリスタTP、TNの導通期間と一致してサイリスタTP、TNに電流が流れ、このサイリスタTP、TNの出力信号がスイッチSWAのサイリスタDPA、DNAのゲート信号SP0、SN0となる。このサイリスタDPA、DNAのゲート信号SP0、SN0により、図5(b)及び図6(b)のタイミングチャートに従ったサイリスタDPA、DNAの導通(ON)/非導通(OFF)制御を行うことができる。
【0058】
なお、サイリスタTP、TNのゲート信号SP1、SN1として、それぞれ位置gp、gn側からの信号も入力される。図7(b)、(c)の構成によれば、電源PA、PBが同時に並列運転している場合は、ダイオードブリッジDBの出力は、ダイオードブリッジDAの出力のよりも低く、且つ分圧されたPUT(Programmable Unijunction Transistor)のゲート電圧よりも低くなるように供給される。このとき、PUTは非導通状態となるので、位置gp、gn側からは信号は出力されず、サイリスタTP、TNのゲート信号SP1、SN1は、電源PB側からの信号に支配される。
【0059】
平常状態において、負荷Lに供給される電圧は、電源PAの電圧波形と電源PBの電圧波形の合成となり、図8に示すように、若干の歪みが生じるが、位相差がわずかの場合は、波形の歪みも非常に小さく、実用上支障はない。
【0060】
つづいて、図9を参照しながら、電源PAとPBが同時に並列運転している平常状態から電源PBが運転停止する異常状態に変化する場合における図7のゲート回路の動作について説明する。図9に示すように、電源PBが停止すると、電源PB側からの電流出力によるゲート信号は停止するが、位置gp、gn側からゲート信号が供給される。電源PBが停止すると、ダイオードブリッジDBの出力がダイオードブリッジDAと同一レベルまで増大し、PUT(Programmable Unijunction Transistor)のゲート電圧よりも高くなる。このため、PUTが導通し、位置gp、gnからそれぞれ定常的なゲート信号SP1、SN1が出力される。これにより、サイリスタTP、TNは常時導通状態となり、サイリスタTP、TNの出力信号すなわちサイリスタDPA、DNAのゲート信号SP0、SN0は、電源PAの電流方向変化に応じてONし、その次の電源PAの電流方向変化(電流ゼロ)によりOFFする信号となる。このとき、負荷Lに供給される電圧は、図9に示すように、電源PAの電圧波形となり、電力供給が途切れることなく、電源PAからの電力がそのまま負荷Lに供給される。
【0061】
なお、電源PB側のゲート回路は、電源PBの運転停止により、電源PBからの信号がなくなるので、SWBに供給されるゲート信号SP0、SN0はOFFとなり、運転停止期間中サイリスタDPB、DNBともに非導通となる。
【0062】
こうして、スイッチSWA、SWBを介して電源PA、PBと負荷Lとの間を接続し、スイッチSWA、SWBの動作を上述の実施の形態例の通り制御することで、電源PA、PBに位相差が存在しても、循環電流は流れずに、電源PA、PBの両方から同時に負荷Lに電力供給が可能となる。また、一方の電源が運転停止した場合であっても、残りの電源からの電力供給が続行されるので、停電は一瞬たりとも発生しない。また、運転を続行している電源から運転停止した電源への事故電流が供給されることはなく、逆加圧されることもない。
【0063】
また、スイッチSWA、SWBとこれらの導通/非導通を制御するゲート回路を含む簡易な構成により、完全無瞬断の電力供給システムが実現でき、リアクトルなど特別な付加回路を必要としない。
【0064】
平常運転時における電源PA、PBの電力負担割合は、50%ずつであるが、一方の電源が運転停止した場合、他方の電源の電力負担割合が100%となる。電力を供給する電源及び電線路の数の変化に起因して電力負担割合が変化するが、負荷Lに供給される電力は変動せず、一定である。
【0065】
そして、一つの電源が運転停止となっても停電が発生しないので、保守作業のために、任意のタイミングで電源を停止させることができる。停電による電力需要者への悪影響を避けるために、電力需要が少ない夜中に一つの電源を停止して行う保守作業や、6000Vに加圧した状態のままで活線作業も行われているが、夜中の保守作業は困難を伴い、また、活線作業は危険を伴う。本発明によれば、このような不自由な保守作業から解放される。
【0066】
なお、上述の実施の形態例では、単相交流電源を例に説明したが、三相交流電源にも適用可能である。2つの交流電源を例に説明したが、3以上の交流電源が並列に負荷に接続する場合にも、上述の実施の形態例を適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
PA、PB:交流電源
SWA、SWB:スイッチ
L:負荷
DPA、DPB、DNA、DNB、TP、TN:サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の交流電源及び第2の交流電源から負荷に電力を供給する電力供給制御方法において、
前記第1の交流電源と前記第2の交流電源ともに運転状態である平常状態時に、前記第1の交流電源から、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成される第1の半導体スイッチを介して前記負荷に電力を供給し、
前記平常状態時に、前記第1の交流電源から前記負荷への電力供給と並行して、前記第2の交流電源から、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成される第2の半導体スイッチを介して前記負荷に電力を供給し、
前記平常状態から前記第1の交流電源の運転が停止する異常状態に変化した場合、前記第1の半導体スイッチを両導通方向ともに非導通状態とするとともに、前記第2の交流電源から前記第2の半導体スイッチを介した前記負荷への電力供給を続行することを特徴とする電力供給制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが同一である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、
前記平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが反対である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とすることを特徴とする電力供給制御方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記異常状態時に、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とすることを特徴とする電力供給制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記第1の半導体スイッチ及び前記第2の半導体スイッチは、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対のサイリスタから構成されるサイリスタスイッチであることを特徴とする電力供給制御方法。
【請求項5】
導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成され、第1の交流電源と負荷とを接続する電線路を導通又は非導通状態にする第1の半導体スイッチと、
導通方向が互いに逆で並列に接続された1対の半導体素子から構成され、第2の交流電源と前記負荷とを接続する電線路を導通又は非導通状態にする第2の半導体スイッチと、
前記第1の半導体スイッチ及び前記第2の半導体スイッチの導通又は非導通状態を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記第1の交流電源と前記第2の交流電源ともに運転状態である平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが同一である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、
前記制御回路は、前記平常状態時に、前記第1の交流電源の電流方向と前記第2の交流電源の電流方向とが反対である場合、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを、前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とし、
前記制御回路は、前記異常状態時に、前記第1の半導体スイッチを、前記第1の交流電源の電流方向及びその反対方向ともに非導通状態とし、前記第2の半導体スイッチを前記第2の交流電源の電流方向に導通状態とし且つその反対方向に非導通状態とすることを特徴とする電力供給制御装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の半導体スイッチ及び前記第2の半導体スイッチは、導通方向が互いに逆で並列に接続された1対のサイリスタから構成されるサイリスタスイッチであることを特徴とする電力供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109844(P2011−109844A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263635(P2009−263635)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【特許番号】特許第4551483号(P4551483)
【特許公報発行日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(509320678)
【Fターム(参考)】