説明

電力制御回路

【課題】ユーザーが高速でスイッチ(SW)を切り替えても、ソフト制御に必要な電力を安定供給できる電力制御回路を提供する。
【解決手段】ソフト制御開始前の状態時に、開始状態に移行用の電力供給をユーザーのSW切替に委ねる2以上の電力遮断回路を持つ電力制御回路において、該制御回路はSW連打時、2以上の電力遮断回路の出力安定化の電位保持手段を有し、該手段は、開始状態に移行用のトリガ後、開始前の状態から開始状態に移行用電力供給を、1つ目の回路により開始維持する手段と、開始直後に2つ目の回路により、開始状態に移行用電力供給を開始維持する手段と、該開始維持後、1つ目の回路から、開始状態に移行用電力供給を遮断維持する手段とを有し、ソフト制御終了時までには、電位保持手段をソフト制御開始前の状態に戻すことを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御回路に関し、特に、ソフトによる制御システム開始前の状態時に、ソフトによる制御システムの開始状態に移行するために必要な電力供給を、ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている電力制御回路において、ユーザーが高速でスイッチを切り替えても、ソフト制御に必要な電力を安定供給できる電力制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の複写機などの画像形成装置では、地球環境に配慮し、無駄な電力消費を抑える機能として、ユーザーが長時間使用しない場合には、「低消費電力モード」に移行する機能を備えたタイプのものがある。この「低消費電力モード」とは、例えばCPU(中央処理装置)、メモリなどには電力供給をすることにより、ソフトウェアによる制御(以下、「ソフト制御」と記す)は可能であるが、当面使用しない機能(例えばモーター)は停止させておくモードである。
そして、さらに地球環境に配慮した機器(画像形成装置)においては、ソフト制御に必要なCPU等は消費電力が多い傾向があるため、電力供給はせずに、CPU等を含めたソフト制御機能も停止させる、「超低消費電力モード」に移行する機能を備えたタイプのものがある。
【0003】
この「超低消費電力モード」に設定されていると、電力供給がされておらずソフト制御を実施できないので、ソフト制御に必要な電力供給をハードウェアで制御(以下、「ハード制御」と記す)する方法が用いられている。このハード制御の具体的手段としては、ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている場合が多いことが既に知られている。
図4は、従来の電力制御回路の一例である。図4において、SW1(スイッチ)41が前述の「ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている」スイッチである(ハード制御)。そして、前記ソフト制御は、sig1(46)からのソフトウェアによる入力(Hi,Lowなど)により行う。
なお、図4の詳細構成および動作については、後述する。
【0004】
ところで、CPU等の高速で駆動するIC(集積回路)は、内部のコア電源電位と外部のインターフェース電源電位とが異なる、複数電源電圧の供給が必要な場合が多い。このような複数電源電圧が必要なICは、電源の立上順序を規定している場合が多く、複数電源電圧は、無駄な電力消費を抑えるために、電力遮断回路以降で生成されている場合が多い。そのため、複数電源電圧は電力遮断回路に依存している傾向が強い。
【0005】
特許文献1には、簡単な回路構成でCPUと周辺装置との電源投入及び遮断の順序を規定できる電源シーケンス制御回路の実現の目的で、
『制御プログラム不要の簡単な構成でありながら、第1のトランジスタがONする電圧値や、第1のトランジスタがONしてから第2のトランジスタがONするまでの遅延時間を最適に設定することにより、電源スイッチをONしてCPUへの電源供給を開始する際には、CPUのロジック電源が十分立ち上がってCPUの動作が安定化した後に、周辺装置に電源供給を開始することが可能となる。また、リレーのスイッチングスピードを最適に設定することにより、電源スイッチをOFFしてCPUへの電源供給を停止する際には、CPUのロジック電源が立ち下がってCPUが不安定化する前に、周辺装置への電源供給を確実に停止できる。このため、動作が不安定な状態のCPUから発せされた異常信号によって、周辺装置が誤動作したり回路が破壊されたりすることを有効に防止することができる電源シーケンス制御回路』、が開示されている。
特許文献1に開示された技術は、本発明とは確かに電源立上時のソフト制御を安全に実施する点では似ている点がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3090866号公報
【特許文献2】特開2006−209648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、今までのソフト制御に必要な電力供給のハード制御は、ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている。そのため、例えばユーザーの意図の有無に関係無く高速でスイッチを切り替えしてしまった際(スイッチの高速連打の際)、電力遮断回路がON/OFFしてしまうので、電源シーケンス回路に意図しない電圧が入力され、複数電源電圧を生成する順番が狂ってしまい、複数電源電圧が必要なICへの電源の立上順序異常が発生しダメージを与えるという問題点があった。
なお、従来の画像形成装置(インクジェット記録装置)における、前記スイッチの高速連打による問題点については、図面(図6〜図9)を用いて後述する。
【0008】
本発明は上記の問題を解決すべくなされたものであり、ソフトによる制御システム開始前の状態時に、ソフトによる制御システムの開始状態に移行するために必要な電力供給を、ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている電力制御回路において、ユーザーが高速でスイッチを切り替えても、ソフト制御に必要な電力を安定供給できる電力制御回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1記載の発明は、ソフトウェアによる制御開始前の状態時に、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を、ユーザーによるスイッチ(図10の41)の切り替えに委ねている、2つ以上の電力遮断回路(トランジスタ48を介する回路とトランジスタ49を介する回路)を有する電力制御回路において、
該電力制御回路は、ユーザーによる前記スイッチの連打の際に、前記2つ以上の電力遮断回路の出力(VOUT1)を安定化させるために電位を保持する電位保持手段(D-Type FLIP-FLOP(100))を有し、
該電位保持手段は、
ソフトウェアによる制御開始状態に移行するためのトリガを、ユーザーが前記スイッチによりかけた後、ソフトウェアによる制御開始前の状態から、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を、前記1つ目の電力遮断回路(トランジスタ48を介する回路)により開始させ、維持する第1の電力供給開始・維持手段(図11のタイミングT87、ポイントN1)と、
ソフトウェアによる制御開始直後には、前記2つ目の電力遮断回路(トランジスタ49を介する回路)により、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を開始させ、維持する第2の電力供給開始・維持手段(図11のタイミングT90、ポイントN2)と、
前記2つ目の電力遮断回路により、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を開始させ、維持させた後、前記1つ目の電力遮断回路から、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を遮断させ、維持する第3の電力供給開始・維持手段(図11のタイミングT92、ポイントN1)とを有し、
ソフトウェアによる制御終了時までには、前記電位保持手段をソフトウェアによる制御開始前の状態に戻すことを可能としたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の電力制御回路において、前記電位保持手段に、D-typeフリップフロップ回路を用いることを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の電力制御回路において、前記電位保持手段に、電圧遅延回路を用いることを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、CR回路を用いることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項3記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、電圧検出ICを用いることを特徴とする。
また、請求項6記載の発明は、請求項3記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、単安定マルチバイブレータを用いることを特徴とする。
また、請求項7記載の発明は、請求項2記載の電力制御回路において、前記フリップフロップのクロック入力端子の前段に、電圧遅延回路を用いることを特徴とする。
【0012】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、CR回路を用いることを特徴とする。
また、請求項9記載の発明は、請求項7記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、電圧検出ICを用いることを特徴とする。
また、請求項10記載の発明は、請求項1記載の電力制御回路において、前記1つ目の電力遮断回路の電力遮断信号と、前記2つ目の電力遮断回路の電力供給開始信号が同一信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、ユーザーによるスイッチの切替動作をエッジ検出し、エッジ検出により、1つ目の電力遮断回路の制御を固定するため、ユーザーによるスイッチの高速切替による、電圧供給のON/OFFを無効化できる。
電力遮断機能を並列に2つ有しているため、ソフトウェアによる制御が開始してからは、ソフトにより電圧供給のON/OFFを決定できる。
1つ目の電力遮断回路の制御をソフトにより、無効化する機能を有しているため、1つ目の電力遮断回路を無効化し消費電力の削減を図ることができる。
1つ目の電力遮断回路の制御をハードにより、初期化する機能を有しているため、次回、ユーザーがONする時に必要なトリガを検知できる。
そのため、ソフトウェアによる制御システム開始前の状態時に、ソフトウェアによる制御システム開始状態に移行するために必要な電力供給を、ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている電力制御回路において、ユーザーが高速でスイッチを切り替えても、ソフト制御に必要な電力を安定供給できる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、D-typeフリップフロップ回路が入力データをエッジ検出により、出力を固定する機能を有するので、ソフトが安定して動作することを確認した後、1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
請求項3記載の発明によれば、ソフトが安定して動作する時間を予測し(例えば、図11のタイミングT87、ポイントN3が立ち下がってから、タイミングT90、ポイントN2が立ち下がるまでの時間)、電圧遅延回路により予測値を設定することで、ソフトが安定して動作することを確認する信号が不要になるため、簡単な構成で1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、電圧遅延時間をCR回路により、設定することで、低コストで、1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
請求項5記載の発明によれば、電圧遅延時間を電圧検出ICにより、設定することで、高い信頼性で、1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
請求項6記載の発明によれば、電圧遅延時間を単安定マルチバイブレータにより、設定することで、効果5と同様に高い信頼性で、1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
【0016】
請求項7記載の発明によれば、クロック入力端子に電圧遅延回路を用いることで、電圧遅延時間以下のノイズを無効化できる。例えば、図11のタイミングT86の区間にノイズが乗ったとしても、ポイントN5はLow出力を維持する。ノイズの影響で電圧遅延回路の入力電位が変化すると、T87の区間には移行せず、T85,T86の区間に再び戻るため、電圧遅延以下のノイズを無効化できる。
【0017】
請求項9記載の発明によれば、電圧遅延時間を電圧検出ICにより、設定することで、高い信頼性で、電圧遅延時間以下のノイズを無効化できる。
請求項10記載の発明によれば、複数信号が不要になるため、簡単な構成で1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施形態に基いて説明する。
先ず、本発明を適用するインクジェット記録装置(画像形成装置)について説明し、次に、該インクジェット記録装置の使用されている「従来の電力制御回路」の欠点を説明する。
図1はインクジェット記録装置の基本構成図、図2はインクジェット記録装置の全体機能ブロック図、図3は図2における符号14の部分の機能ブロック図、図4は図3における符号15の部分の「従来の電力制御回路」の回路図である。
本発明は、図4の「従来の電力制御回路」を改良したものであり、その実施形態の電力制御回路を、図10〜図12に基づいて後述する。
【0019】
図1に示すように、キャリッジ1はガイドロット2で保持されて、主走査モータ3との間に渡されたプーリー4を介して主走査方向に走査する。このキャリッジ1には、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド9が搭載されていて、該記録ヘッド9に配列されたインク吐出ノズル10からインクを吐出できる。
キャリッジ1を主走査方向に移動させながら必要な位置でインク滴を吐出することによって記録媒体12上に画像を形成する。
キャリッジ1の位置情報は筐体に固定されたエンコーダシート5に等間隔で記録されたパターンを、キャリッジ1に固定された主走査エンコーダ6で移動しながら読み取ってカウントを加算/減算することで得ることができる。
【0020】
このような主走査方向のキャリッジ移動とインク吐出動作を1回行うことで、ノズル列の長さと同じ幅のバンドに対して画像を形成することができる。そして、1バンド分の画像形成が終了したら副走査モーター7を駆動して記録媒体12を副走査方向に移動させて、再度1バンド分の画像形成動作をさせるように繰り返せば、記録媒体12の任意の場所に画像を形成することができる。
【0021】
図2に示すように、インクジェット記録装置の操作・表示部20は、ユーザーからの動作要求の検知及びユーザーへのメッセージの表示を行う。
ユーザーからの動作要求に従い、電力制御部21を用いてエンジン制御部13に電力を適切に供給する。
CPU(23)は、エンジン制御部13内の処理を司る。
ROM(24)は、ファームウェアや記録ヘッドの駆動波形データを格納する。
RAM(25)は、画像データ等を格納する。
ホストI/F(26)は、ホストPC(22)からの印刷ジョブ(画像データ)を受信する。
用紙有無検出部28は、キャリッジ1上のレジストセンサ31から用紙の有無およびサイズを検出する。
【0022】
主走査制御部29は、主走査エンコーダ6から得られる位置情報をもとに、キャリッジ1を記録媒体12上の任意の位置に移動する。
副走査制御部30は、副走査エンコーダ32から得られる位置情報をもとに、搬送ベルト上の記録媒体12を任意の位置に移動する。
記録ヘッド制御部27は、主/副走査制御部29、30及び用紙有無検出部28からの情報に連動し、RAM(25)に格納された画像データおよびROM(24)に格納された記録ヘッド駆動波形を記録ヘッドに転送する。
符号14は、操作・表示部20と、電力制御部21と、エンジン制御部13の一部を説明するための部分機能ブロックであり、その構成を図3に示す。
【0023】
図3に示すように、操作・表示部20の一部をなすSW1(41)は、電力制御部21の一部をなす電力遮断回路1(42)の電力遮断を停止するためのスイッチであり、ユーザーが任意にON/OFFすることが可能である。このSW1(41)は、押すことでGNDに接地され、押さないとハイインピーダンスになるスイッチであり、説明を行いやすくするため、SW1(41)が押されている時をON、押されていない時をOFFとする。
仮に、自動復帰しない固定型のスイッチであったとしても、ユーザーは任意に固定型のスイッチをON/OFF出来るため、今回の発明が適用可能である。
【0024】
電力遮断回路1(42)は、電源シーケンス生成回路44への電力供給を制御する。該電源シーケンス生成回路44は、エンジン制御部13に必要な各電源電圧を生成し、各ICに適切な順序で各電源電圧を安定供給するための回路である。
例えば、CPU(23)等の2電源を持つICの電源供給順序を既定出来る。
エンジン制御部13は、CPU(23)等の主要なICの動作が安定した後、SIG1(46)を出力する。
電力遮断回路2(43)は、SIG1(46)の信号により、電源シーケンス生成回路44への電力供給を制御する。
符号15は、電力制御回路を示す部分機能ブロックである。
【0025】
ここで、図4に示す「従来の電力制御回路」(図3における符号15に該当する部分)の構成を説明する。この「従来の電力制御回路」15は、電源シーケンス生成回路44への入力電圧を制御するための回路である。
図4において、VCC1(47)は、インクジェット記録装置の電源コード(図示省略)をコンセントに接続している間(コンセントINの間)、常時出力する電圧であり、出力電圧は約5V程度である。
Pch FET(48)は、SW1(41)をON/OFFすることにより、VCC1(47)から、VOUT1(51)へ供給する電圧を制御している。
Pch FET(49)は、ソフト制御により(ソフトによるSIG1(46)の入力により)、VCC1(47)から、VOUT1(51)へ供給する電圧を制御している。
npnトランジスタ50は、SIG1(46)を反転させるために用いている。
【0026】
抵抗52は電流制限用抵抗、抵抗53は、SIG1(46)がハイインピーダンスになった時に、npnトランジスタ50のベース入力電圧が不定になることを防いでいる。
抵抗54、56は、Pch FET(48),(49)のゲート電圧を適切に降下させる機能を持つ。
VOFF(55)は、ユーザーが電源を切りたいことをエンジン制御部13に伝えて、適切な処理をした後、SIG1(46)をLow出力にし、Pch FET(49)にてVOUT1(51)への電力供給を遮断する信号である。
図4に示した「従来の電力制御回路」の場合、Pch FET(48)は、SW1(41)をON/OFFすることで、電源シーケンス回路44への供給電圧を制御出来るため、電源シーケンス回路44への供給電圧は、ユーザーに任意に制御されてしまうため、不安定になる懸念がある。
【0027】
図5は、図4に示した電力制御回路の動作フローチャートである。
図5に示すように、コンセントIN(61)は、起動に必要な電力を生成する。
電力遮断62にて、無駄な電力を遮断する。
SW1 ON(63)にて、ONする時は、電源シーケンス回路44に電力を供給し、電源シーケンス回路動作64が開始する。
電源シーケンス回路動作64中に、SW1 OFF(65)を実施すると、電力が遮断される。
電源シーケンス回路動作64中に、SW1 OFF(65)を実施しないと、エンジン制御部正常起動66が発生し、SIG1 出力67が発生する。すると、電力供給が正常に維持される。
図4の「従来の電力制御回路」で説明した通り、電源シーケンス回路動作64中に、SW1 OFF(65)を実施すると、電力が遮断される懸念がある。
【0028】
図6は、図4に示した「従来の電力制御回路」における正常電源立上時のタイミングチャートである。
T1の期間は、コンセントOFFの期間である。
T2の期間は、コンセントOFFからONへの移行状態である。
T3,T4,T5の期間は、コンセントON定常状態である。
T6の期間は、SW1(41)がOFFからONへの移行状態である。
T7の期間は、SW1(41)がON時である。
T8の期間は、エンジン制御部13が正常動作し、SIG1を出力した時である。
T9の期間は、SIG1(46)の出力が安定した状態である。
T10の期間は、SW1(41)がONからOFFされた時である。
T11,T12,T13,T14の期間は、エンジン制御部13の安定動作期間である。
各種信号が、図6のようなタイミングであれば、正常に電源立上が実施される。
【0029】
図7は、図4に示した「従来の電力制御回路」の正常電源立下時のタイミングチャートである。
T21の期間は、エンジン制御部13の安定動作期間である。
T22の期間は、SW1(41)がOFFからONへの移行状態である。
T23の期間は、エンジン制御部13の正常立下準備完了後、SIG1(46)をHighからLowへの移行状態である。
T24の期間は、SIG1(46)をLow時、SW1(41)がONの時である。
T25の期間は、SW1(41)がONからOFFへの移行状態である。
T26,T27,T28,T29,T30,T31,T32,T33の期間は、電源OFFの定常状態である。
各種信号が、図7のようなタイミングであれば、正常に電源立上が実施される。
【0030】
前記図6、図7のタイミングチャートであれば、従来の電力制御回路は正常に動作する。しかし、次に説明するように、SW1(41)を高速で連打した場合には、従来の電力制御回路には問題点がある。
図8は、図4に示した「従来の電力制御回路」の異常電源立上時のタイミングチャートである。
T41の期間は、コンセントOFFである。
T42の期間は、コンセントOFFからONへの移行状態である。
T43,T44,T45の期間は、コンセントON定常状態である。
T46の期間は、SW1(41)OFFからONへの移行状態である。
T47,T48,T49,T50の期間は、SW1(41)のON/OFFを高速で連打した時である。
T51の期間は、SW1(41)をOFFした時である。
各種信号が、図8のようなタイミングである時、T47,T48,T49,T50の期間に、電源シーケンス生成回路44に異常な電圧が供給されるため、エンジン制御部13が正常に起動しない場合がある。
電源シーケンス生成回路44に異常な電圧が供給されてしまうと、電源シーケンス生成回路44だけでなく、エンジン制御部13の劣化及び、異常動作が発生してしまい問題となる。
【0031】
図9は、図4に示した「従来の電力制御回路」の異常電源立下時のタイミングチャートである。
T61の期間は、定常状態である。
T62の期間は、SW1(41)OFFからONへの移行状態である。
T63の期間は、エンジン制御部13の正常立下準備完了後、SIG1(46)をLowに落とした時である。
T64の期間は、SIG1(46)をLowに落としていて、SW1(41)がONの時である。
T65の期間は、SW1(41)がONからOFFに移行している時である。
T66,T67,T68,T69,T70,T71,T72,T73の期間は、電源OFFシーケンス実行時に、SW1(41)をONし、電源ONしている状態である。
各種信号が、図9のようなタイミングである時、電源シーケンス生成回路44への電力供給を止めようとしている時に、電源シーケンス生成回路44への電力供給をハードで無理に実施するので(図9のタイミングT66,T67,T68,T69,T70,T71,T72,T73、ポイントN1)、電源シーケンス生成回路44だけでなく、エンジン制御部13の劣化及び、異常動作が発生してしまい問題となる。
【0032】
本発明は、上記問題点を解決するべくなされたものである。
図10は、本発明の実施形態の電力制御回路の回路図である。
図10では、電位保持手段として、D-Type FLIP-FLOP(100)を用いている。ここに、電位保持手段とは、ユーザーによるスイッチの高速連打の際に、電力遮断回路の出力(VOUT1)を制御するN1を安定化させる手段を言う。
なお、電位保持手段は、周辺回路を変更する必要があるが、電圧遅延回路でもよい。
また、電圧遅延回路は、周辺回路を変更する必要があるが、電圧監視ICまたは単安定マルチバイブレータICまたはCR回路の何れでもよい。
【0033】
図10では、ソフトによる制御システム終了時までには、電位保持手段をソフトによる制御システム開始前の状態に戻すことが出来ることを達成する方法として、D-Type FLIP-FLOP(100)のPRESET端子を用いている。
D-Type FLIP-FLOP(100)の前段に付いている、電圧監視IC(101)は、Lowの信号が入力されると出力機能が開始し、Highの信号が入力されると出力機能が停止する、イネーブル機能がER端子に付いているため、ソフトによる制御SIG2をHighにすることにて出力を直接変化させることが可能である。
仮にイネーブル機能が付いていない電圧監視IC(102)でも、Pch FET(109)を用いることと、Pch FET(109)がOFFしている時の、電位をLowに落とす機能があるプルダウン抵抗110のような回路を用いることで、電源電圧供給を制御することで実現可能である。
また、電源電圧供給を制御する方法として、周辺回路を変更する必要があるが、入力段にpnpトランジスタやnpnトランジスタを用いることと、これらトランジスタのOFF時に、電位をLowに落とす機能があるプルダウン抵抗を用いてもよい。
【0034】
図10のように、電位保持手段として、D-Type FLIP-FLOP(100)を用いる場合、CLOCKの立上りエッジを検出して動作するため、外部ノイズに強くするため、電圧監視IC(102)を用いてノイズ除去をしている。
上記ノイズ除去は、バリスタ106でも達成可能である。
上記ノイズ除去は、抵抗120、コンデンサ107,108で構成されるCR回路 でも達成可能である。
コンデンサ111は、電圧監視IC(102)へのノイズを減らすために付いている。
コンデンサ112は、電圧監視IC(102)の電圧遅延時間調整用のコンデンサである。
コンデンサ 112によって設定された、電圧遅延時間以下の長さの信号は、ノイズとして除去することが可能である。
【0035】
抵抗113は、ダンピング抵抗として、抵抗114は、電圧監視IC(102)の出力がハイインピーダンスになっている時に、Lowに落とす機能がある。
抵抗115,116は、ダンピング抵抗である。
抵抗117は、電圧監視IC(101)の出力がハイインピーダンスになっている時に、Lowに落とす機能がある。
抵抗103は、SIG2(130)の出力がハイインピーダンスになっている時に、Lowに落とす機能がある。
コンデンサ104は、電圧監視IC(101)へのノイズを減らすために付いている。
SIG2(130)の出力信号と、SIG1(46)の出力信号が同一信号の場合、配線パターンの節約ができる。
SIG2(130)の出力信号と、SIG1(46)の出力信号が異なる信号の場合、より安全に電圧供給が可能である。
【0036】
図11は、図10に示した電力制御回路の電源立上時タイミングチャートである。
T81の期間は、コンセントOFFの期間である。
T82の期間は、コンセントOFFからONへの移行状態である。
T83の期間は、電圧監視IC(101)の電圧遅延時間である。
T84の期間は、電圧監視IC(101)の電圧遅延終了後である。
T85の期間は、SW1(41) OFFからONへの移行状態である。
T86の期間は、電圧監視IC(102)の電圧遅延時間である。
T87の期間は、D-Type-FLIP-FLOP(100)出力のHighからLowへの移行状態である。
T88,T89の期間は、VOUT1(51)電圧立上り完了後の期間である。
T90の期間は、SIG1(46)信号のLowからHighへの移行状態である。
T91の期間は、SIG1(46)信号の立上り完了後の期間である。
T92の期間は、D-Type-FLIP-FLOP(100)の出力をPRESET端子制御により、LowからHighへの移行状態である。
T93の期間は、SW1(41) ONからOFFへの移行状態である。
T94の期間は、安定状態である。
図11のタイミングT87,T88,T89,T90,T91,T92、ポイントN1から明らかなように、スイッチが高速連打された場合であっても、出力(Vout)は安定する。その結果、電源立上時ユーザーによるSWの高速ON/OFFに依存しないため、電源シーケンス異常は発生せず、安定電源供給が可能である。
【0037】
図12は、図10に示した電力制御回路の電源立下時タイミングチャートである。
T101の期間は、安定状態である。
T102の期間は、SW1(41) OFFからONへの移行状態である。
T103の期間は、SW1(41) ON状態である。
T104の期間は、電圧監視IC(101)の電圧遅延時間である。
T105,106,107,108,109,110,111,112,113,114の期間は、電源OFF安定状態であり、電源ONスタンバイ完了状態である。
図12のタイミングT102,T103,T104、ポイントN1から明らかなように、スイッチが高速連打された場合であっても、N1は変化しない。つまり、電源立下り時の電源電圧状態時、電圧供給は、ユーザーによるSWに依存しないため、電源シーケンス異常は発生せず、安全に電源供給を止めることができる。
【0038】
<「課題を解決するための手段」に記載した発明以外の、発明>
先に、「課題を解決するための手段」欄に10個の解決手段を記載した。しかし、この10個の解決手段以外にも、次の4個の解決手段がある。
請求項1記載の電力制御回路において、前記1つ目の電力遮断回路の電力遮断信号と、前記2つ目の電力遮断回路の電力供給開始信号が異なる信号とした。このようにすれば、ソフト制御により、二つ目の電力供給を確認した後、一つ目の電力遮断を実施出来るため、高信頼で、1つ目の電力遮断回路を無効化出来る。
また、請求項1記載の電力制御回路において、前記電位保持手段をソフトによる制御システム開始前の状態に戻す方法が、ソフトによる信号を用いることにした。このようにすれば、ソフト信号を用いることにより、次回、ユーザーがONする時に必要なトリガを検知できるようにすることができる。
【0039】
また、上記の「請求項1記載の電力制御回路において、前記電位保持手段をソフトによる制御システム開始前の状態に戻す方法が、ソフトによる信号を用いることにした」発明において、前記電位保持手段をソフトによる制御システム開始前の状態に戻す方法が、Pch FETを用いることと、プルダウン抵抗を用いることとした。このようにすれば、リセット機能が付いてない電位保持手段においても、電位保持手段に供給する電圧供給を制御することで、次回、ユーザーがONする時に必要なトリガを検知可能にできる。
また、上記の「請求項1記載の電力制御回路において、前記電位保持手段をソフトによる制御システム開始前の状態に戻す方法が、ソフトによる信号を用いることにした」発明において、前記電位保持手段をソフトによる制御システム開始前の状態に戻す方法が、入力段にpnpトランジスタnpnトランジスタを用いることと、プルダウン抵抗を用いることとした。
このようにすれば、リセット機能が付いてない電位保持手段においても、電位保持手段に供給する電圧供給を制御することで、次回、ユーザーがONする時に必要なトリガを検知できるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を適用するインクジェット記録装置の機構的部分の基本構成図である。
【図2】同インクジェット記録装置の全体機能ブロック図である。
【図3】図2における符号14の部分の機能ブロック図である。
【図4】図3における符号15の部分の「従来の電力制御回路」の回路図である。
【図5】「従来の電力制御回路」の動作フローチャートである。
【図6】「従来の電力制御回路」における正常電源立上時のタイミングチャートである。
【図7】「従来の電力制御回路」の正常電源立下時のタイミングチャートである。
【図8】「従来の電力制御回路」の異常電源立上時のタイミングチャートである。
【図9】「従来の電力制御回路」の異常電源立下時のタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施形態の電力制御回路の回路図である。
【図11】同電力制御回路の電源立上時タイミングチャートである。
【図12】同電力制御回路の電源立下時タイミングチャートである。
【符号の説明】
【0041】
13…エンジン制御部
41…SW1
42…電力遮断回路1
43…電力遮断回路2
44…電源シーケンス生成回路
47…VCC1
46…SIG1
48、49…Pch FET
51…VOUT1
100…D-Type FLIP-FLOP
101、102…電圧監視IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトウェアによる制御開始前の状態時に、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を、ユーザーによるスイッチの切り替えに委ねている、2つ以上の電力遮断回路を有する電力制御回路において、
該電力制御回路は、ユーザーによる前記スイッチの連打の際に、前記2つ以上の電力遮断回路の出力を安定化させるために電位を保持する電位保持手段を有し、
該電位保持手段は、
ソフトウェアによる制御開始状態に移行するためのトリガを、ユーザーが前記スイッチによりかけた後、ソフトウェアによる制御開始前の状態から、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を、前記1つ目の電力遮断回路により開始させ、維持する第1の電力供給開始・維持手段と、
ソフトウェアによる制御開始直後には、前記2つ目の電力遮断回路により、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を開始させ、維持する第2の電力供給開始・維持手段と、
前記2つ目の電力遮断回路により、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を開始させ、維持させた後、前記1つ目の電力遮断回路から、ソフトウェアによる制御開始状態に移行するために必要な電力供給を遮断させ、維持する第3の電力供給開始・維持手段とを有し、
ソフトウェアによる制御終了時までには、前記電位保持手段をソフトウェアによる制御開始前の状態に戻すことを可能としたことを特徴とする電力制御回路。
【請求項2】
請求項1記載の電力制御回路において、
前記電位保持手段に、D-typeフリップフロップ回路を用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項3】
請求項1記載の電力制御回路において、
前記電位保持手段に、電圧遅延回路を用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項4】
請求項3記載の電力制御回路において、
前記電圧遅延回路に、CR回路を用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項5】
請求項3記載の電力制御回路において、
前記電圧遅延回路に、電圧検出ICを用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項6】
請求項3記載の電力制御回路において、
前記電圧遅延回路に、単安定マルチバイブレータを用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項7】
請求項2記載の電力制御回路において、前記フリップフロップのクロック入力端子の前段に、電圧遅延回路を用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項8】
請求項7記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、CR回路を用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項9】
請求項7記載の電力制御回路において、前記電圧遅延回路に、電圧検出ICを用いることを特徴とする電力制御回路。
【請求項10】
請求項1記載の電力制御回路において、前記1つ目の電力遮断回路の電力遮断信号と、前記2つ目の電力遮断回路の電力供給開始信号が同一信号であることを特徴とする電力制御回路。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−72791(P2010−72791A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237500(P2008−237500)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】