電力変換器の制御装置
【課題】低コストでスイッチング損失が少なく、しかも、容易に短絡防止を実現できる電力変換器の制御方法を提供する。
【解決手段】三相交流電圧を入力とし、出力を二相とする電力変換器において、三相交流電圧の各々の相と、出力の2相の間を接続/開放するスイッチ30と、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器とを備え、前記合成信号により電力変換器の各スイッチを駆動する。
【解決手段】三相交流電圧を入力とし、出力を二相とする電力変換器において、三相交流電圧の各々の相と、出力の2相の間を接続/開放するスイッチ30と、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器とを備え、前記合成信号により電力変換器の各スイッチを駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電圧を入力とし出力を二相とする電力変換器、特に、マトリクスコンバータから構成される電力変換器の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、整流器、および整流器とインバータを接続した電力変換器、およびマトリクスコンバータの制御方法としては、種々の方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】2004年、電気学会全国大会論文誌D、124巻5号457〜463、「キャリア比較方式を用いた仮想AC/DC/AC変換方式によるマトリクスコンバータの制御法」
【0003】
図13は上述した方法(以下キャリア比較方式)による整流器の制御ブロックの構成を示す図である。キャリア比較方式では、整流器のスイッチングを決めるパルスを、電圧型整流器制御ブロック21と、PWM制御部22と、相対演算を行うブロック23から演算している。電圧型整流器制御ブロック21では出力電圧指令と、入力電流指令、入力線間電圧、入力相電流からまず電圧型整流器を制御する指令値を生成する。次にPWM制御部22では、電圧型整流器制御ブロック21で生成された指令値とキャリア信号の比較によってパルス列を生成する。次に相対演算を行うブロック23では、PWM制御部22で生成されたパルス列から論理演算によって相対なパルス列を得て、これによって整流器を制御している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら電圧型整流器制御ブロック21では仮想的な電圧型整流器の制御を新たに設計する必要があり、制御構造が複雑になる。このため、この制御を実現する場合には、高価なマイコンを使用する必要があり、コスト高となる。また、PWM制御を行うため単位時間あたりのスイッチング回数は増加し、スイッチング損失が増大するため効率が悪化する。またさらに、相対演算23は、以下の非特許文献2に基づいているが、本論文によれば相対演算後の短絡パターンの最適化に課題があると述べており、そのその最適化手法は示されていない。
【非特許文献2】1996年、電気学会論文誌D、116巻1号、「電流形三相インバータ・コンバータの三角波比較法式PWM制御」
【0005】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、低コストでスイッチング損失が少なく、しかも、容易に短絡防止を実現できる電力変換器の制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明に係る電力変換器の制御方法は、三相交流電圧を入力とし、出力を二相とする電力変換器において、三相交流電圧の各々の相と、出力の2相の間を接続/開放するスイッチと、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器とを備え、前記合成信号により電力変換器の各スイッチを駆動することを特徴とするものでる。
【0007】
また、本発明の第2発明に係る電力変換器の制御方法は、多相交流電圧を入力とし、多相交流電圧を出力する電力変換器としてのマトリクスコンバータと、マトリクスコンバータの出力電圧で制御されるモータとからなる構成において、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器と、モータの出力電圧指令に基づいて、モータへ流れる電流の向きを決定するインバータ制御信号を発生させるインバータ制御器と、前記合成信号とインバータ制御信号からスイッチングパルスを生成するパルス生成器とを備え、前記スイッチングパルスに基づいてマトリクスコンバータを駆動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力変換器の制御方法の第1発明によれば、入力電圧に同期したパルスをベースに整流器を駆動することにより、制御に必要な計算量を少なく抑えることができる。これにより、高価なマイコンを使わずとも整流器を制御することができるので、コスト低減効果がある。また、PWMをベースとする制御はスイッチング回数が多いためスイッチング損失が大きいが、入力電圧に同期したパルスをベースとすることにより、非常に少ないスイッチング回数で出力電圧の調整、入力電流の調整をすることができるので、損失低減効果がある。また、一般的に電圧源を入力とする整流器の制御は相間短絡を考えながら制御しなければならないため制御が難しいが、本方式によればシンプルな構成で短絡を防止することができる。
【0009】
本発明の電力変換器の制御方法の第2発明によれば、マトリクスコンバータの制御に応用することで、マトリクスコンバータの制御をシンプルに構成できるので、マトリクスコンバータを駆動する制御システムの制御装置のコストを低減することができる。また、インバータ制御部にも、整流器の制御で用いた同期信号生成ロジックを用いることで、インバータ制御部を簡素な構造で実現できる。従って、整流器制御部とインバータ制御部がともにシンプルな構造となるため、マトリクスコンバータの制御装置をシンプルに構成でき、制御装置のコストを低減できる。
【0010】
なお、本発明の電力変換器の制御方法において、入力電圧同期信号生成器は、入力電圧の正、負に基づいて入力電圧同期信号を生成するよう構成することができる。このように構成することで、入力電圧の正、負によってパルスを決めるので、少ない計算量により実現することができる。
【0011】
また、本発明の電力変換器の制御方法において、開放指令生成器は電圧制御器を備え、電圧制御器は入力電圧の大小関係に基づいて開放指令を出力するよう構成することができる。このように構成することで、開放信号を与えるだけで出力電圧を制御できるので、制御構成がシンプルになる。これにより、少ない計算量で実現することができる。
【0012】
さらに、本発明の電力変換器の制御方法において、開放指令生成器は電流制御器を備え、電流制御器は入力電流の大小関係に基づいて開放指令を出力するよう構成することができる。このように構成することで、開放信号を与えるだけで入力電流を制御できるので、制御構成がシンプルになる。これにより、少ない計算量で実現することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の電力変換器の制御方法において、開放指令生成器は出力電圧指令値と入力電流指令値を入力し、マップに基づいて電圧制御部と電流制御部の動作を切り替えるよう構成することができる。このように構成することで、マップによって電圧制御と電流制御を切り替えることができるので、指令値の状態に応じた適切な制御を行うことができるため、効率が良い。
【0014】
また、本発明の電力変換器の制御方法において、合成器は論理合成から合成信号を求めるよう構成することができる。このように構成することで、論理合成によりパルスを生成できるるので、シンプルな構造となり、少ない計算量で実現することができる。
【0015】
さらに、本発明の電力変換器の制御方法において、モータの出力電圧指令はモータ回転数に基づいて求めるよう構成することができる。このように構成することで、マトリクスコンバータの制御を決めるインバータ部の制御をシンプルな構成にすることができるので、全体的な制御構成もシンプルになり、マトリクスコンバータの制御装置を安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。以下の例において、実施例1として電力変換器が整流器の例を示し、実施例2として電力変換器がマトリクスコンバータ(交流交流電力変換システム)の例を示す。
【0017】
<整流器(実施例1)>
図1〜図9はそれぞれ本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例を説明するための図である。以下、図1〜図9に従って、実施例1を説明する。
【0018】
1.構成
1.1 回路構成
図1に本実施例における整流器の回路構成を示す。整流器30はスイッチS1〜S6から成り、図のように配線された電力変換器である。41〜43は電流検出器,R相、S相、T相は入力相である。Ir,Is,Itは入力電流、Vrs,Vst,Vtrは入力相間電圧であり、例えばVrsはS相電圧を基準としたR相の電圧である。また、Voutは出力電圧である。
【0019】
1.2 制御構成
図2に本実施例における整流器の制御構成を示す。整流器制御部10は、開放信号生成部11、論理演算部12、入力電圧同期信号生成部13から成る。整流器制御部10は、各入力相の電流指令値Irref,Isref,Itrefと、出力電圧指令Voutrefと、入力電流Ir,Is,Itと、入力相間電圧Vrs,Vst,Vtrを入力し、整流器制御パルスi1〜i6を出力する。i1〜i6はそれぞれ、スイッチS1〜S6の開閉信号である。本構成の特徴は、(1)入力電圧の周期に同期してスイッチングパルスを決め、一周期に少なくとも一回のONと少なくとも一回の開放状態が発生するようスイッチングすること、および、(2)開放状態を適切に配置することにより、出力電圧と入力電流を制御すること、である。以下、各ブロックの動作について説明する。
【0020】
1.2.1 入力電圧同期信号生成部13
図2の入力電圧同期信号生成部13は、入力線間電圧Vrs,Vst,Vtrを入力し、入力電圧同期信号i1’〜i6’を出力する。入力電圧同期信号i1’〜i6’の決め方を図3および、式(1)〜(6)に示す。
i1’=1 i4’=0 (Vr>=0) (1)
i1’=0 i4’=1 (Vr<0) (2)
i2’=1 i5’=0 (Vs>=0) (3)
i2’=0 i5’=1 (Vs<0) (4)
i3’=1 i6’=0 (Vt>=0) (5)
i3’=0 i6’=1 (Vt<0) (6)
【0021】
図3は、横軸を時間とし、縦軸にR相入力電圧、S相入力電圧、T相入力電圧、R相入力電圧同期信号i1’,i4’、S相入力電圧同期信号i2’,i5’、T相入力電圧同期信号i3’,i6’を示した。同図の入力電圧同期信号i1’〜i6’は0か1のパルス列である。また、この同期信号の組み合わせは図3のとおり、6通りであるので、便宜的にこの6通りの組み合わせを6つのモードに分け、mode a〜mode fと呼ぶことにする。
また、Vr,Vs,Vtは入力線間電圧Vrs,Vst,Vtrから式(7)〜(9)より求める。
Vr = (Vrs - Vtr)/2√3 (7)
Vs = (Vst - Vrs)/2√3 (8)
Vt = (Vtr - Vst)/2√3 (9)
以上の演算により、入力電圧Vr,Vs,Vtに同期した図3のような入力電圧同期信号i1’〜i6’が生成される。
【0022】
1.2.2 論理演算部12
次に図2の論理演算部12の構成を説明する。論理演算部12は、図4のような回路であらわされる。論理演算ブロック12は、入力電圧同期信号i1’〜i6’と、S1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を入力し、整流器のスイッチS1〜S6を駆動するパルスi1〜i6を出力する。i1〜i6は、上アーム論理演算ブロック121、下アーム論理演算ブロック122から成る論理演算部12によって決定される。
【0023】
上述の論理演算により、図5のように信号が出力される。例えばmode aの場合、S1S2開放信号とi1’、 i2’の論理合成により、i1,i2は図のように出力される。すなわち、S1S2開放信号が0のとき、i1=1,i2=0となり、S1S2開放信号が1のとき、i1=0,i2=1となる。他のモードについても、開放信号と同期信号の組み合わせによりmode aと同様な動作をするよう構成している。
【0024】
1.2.3 開放信号生成部11
図2に戻って、開放信号生成部11は、線間電圧Vrs,Vst,Vtr、入力電流It,Ir,Is、出力電圧指令Voutref、入力電流指令Irref,Isref,Itrefを入力し、出力としてS1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を出力する。開放信号生成部11の内部は図6のような構成となっており、大きく、電圧制御部111、電流制御部112、制御判断部113に分かれる。以下、各ブロックの動作について説明する。
【0025】
1.2.3.1 電圧制御部111
電圧制御部111は、S1S2開放信号生成部1111、S2S3開放信号生成部1112、S3S1開放信号生成部1113、S4S5開放信号生成部1114、S5S6開放信号生成部1115、S6S4開放信号生成部1116から構成され、線間電圧Vrs,Vst,Vtrを入力し、S1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を出力する。S1S2開放信号生成部1111は、Vst,Vtrを入力し、VstとVtrの大小関係に基づいてS1S2開放信号を生成する。例えば、mode aの場合、図7のように、Vst>=VtrのときS1S2開放信号を0、Vst<VtrのときS1S2開放信号を1とする。同様にして、S2S3開放信号生成部1112はVrsとVtrの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S3S1開放信号生成部1113はVrsとVstの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S4S5開放信号生成部1114はVstとVtrの大小関係に基づいてS4S5開放信号を生成する。S5S6開放信号生成部1115はVrsとVtrの大小関係に基づいてS5S6開放信号を生成する。S6S4開放信号生成部1116はVrsとVstの大小関係に基づいてS6S4開放信号を生成する。
【0026】
1.2.3.2 電流制御部112
電流制御部112は、S1S2開放信号生成部1121、S2S3開放信号生成部1122、S3S1開放信号生成部1123、S4S5開放信号生成部1124、S5S6開放信号生成部1125、S6S4開放信号生成部1126から構成され、相電流Ir,Is,Itを入力し、S1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を出力する。S1S2開放信号生成部1121は、Ir,Isを入力し、IrとIsの大小関係に基づいてS1S2開放信号を生成する。例えば、mode aの場合、図8のように、Ir>=IsのときS1S2開放信号を0、Ir<IsのときS1S2開放信号を1とする。同様にして、S2S3開放信号生成部1122はIsとItの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S3S1開放信号生成部1123はItとIsの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S4S5開放信号生成部1124はIrとIsの大小関係に基づいてS4S5開放信号を生成する。S5S6開放信号生成部1125はIsとItの大小関係に基づいてS5S6開放信号を生成する。S6S4開放信号生成部1126はItとIrの大小関係に基づいてS6S4開放信号を生成する。
【0027】
1.2.3.3 制御判断部113
制御判断部113は、出力電圧指令値Voutref,入力電流指令Irref,Isref,Itrefを入力し、電流制御部111から開放信号を得るか、電流制御部112から開放信号を得るかの判断を下す。判断は、Voutrefと、Irref,Isref,Itrefの振幅Irefを入力とする図9のようなマップから行う。
【0028】
2.実施例1の効果
2.1 入力電圧に同期したパルス生成による効果
入力電圧に同期したパルスをベースに整流器を駆動することにより、制御に必要な計算量を少なく抑えることができる。これにより、高価なマイコンを使わずとも整流器を制御することができるので、コスト低減効果がある。また、PWMをベースとする制御はスイッチング回数が多いためスイッチング損失が大きいが、入力電圧に同期したパルスをベースとすることにより、非常に少ないスイッチング回数で出力電圧の調整、入力電流の調整をすることができるので、損失低減効果がある。また、一般的に電圧源を入力とする整流器の制御は相間短絡を考えながら制御しなければならないため制御が難しいが、本方式によればシンプルな構成で短絡を防止することができる。
【0029】
2.2 開放信号を生成することで各相に開放状態を設けることによる効果
各相のスイッチングに開放状態を設けるシンプルなロジックにより出力電圧、あるいは入力電流が制御できるので、2.1の効果を損なわずに出力電圧の調整、入力電流の調整を実現することができる。これにより、制御に必要な計算量を小さく抑えることができ、安価なマイコンでも十分制御が行えるので、コスト低減効果がある。
【0030】
<マトリクスコンバータシステム(実施例2)>
図10〜図12はそれぞれ本発明の電力変換器の制御方法をマトリクスコンバータに適用した例を説明するための図である。以下、図10〜図12に従って、実施例2を説明する。
【0031】
1.構成
1.1 回路構成
図10に本実施例における回路構成を示す。Sa1〜Sa9はスイッチ、400はスイッチSa1〜Sa9を含む電力変換器、200、201は永久磁石同期電動機、202はエンジン、300〜302はコンデンサ、51は永久磁石同期電動機201の回転角速度ωを検出する回転角速度検出器である。
【0032】
1.2 制御構成
図10のSa1〜Sa9の制御は、図11の制御構成によって行う。すなわち、等価電力変換器制御部500から生成される整流器制御パルスib1〜ib6と、インバータ制御パルスib7〜ib12を論理合成ブロック70で合成してSa1〜Sa9を駆動するマトリクスコンバータ制御パルスia1〜ia9を得る。以下、図11の各ブロックの説明を行う。
【0033】
1.2.1 等価電力変換器制御部500
図11の等価電力変換器制御部500は、図12の回路構成を対象として制御を決める。従ってまず、図12の構成を説明する。
【0034】
1.2.1.1 等価電力変換器401の回路構成
図12のシステム構成は図10のシステム構成において、電力変換器400を等価電力変換器401に置き換えた構造となっている。さらに、等価電力変換器401は整流器402とインバータ403から構成される。Sb1〜Sb12はスイッチ、電力変換器401はスイッチSb1〜Sb12を含む電力変換器、200、201は永久磁石同期電動機、202はエンジン、300〜302はコンデンサ、51は永久磁石同期電動機201の回転角速度を検出する回転角速度検出器である。
【0035】
1.2.1.2 等価電力変換器401の制御構成
等価電力変換器401の制御は図11の等価電力変換器制御部500によって行う。等価電力変換器制御部500は、大きく分けて整流器402を制御する整流器制御部10と、インバータ403を制御するインバータ制御部60に分けられる。以下、各部の動作について説明する。
【0036】
1.2.1.2.1 整流器制御部10
整流器制御部10は、実施例1の整流器制御部10と同じ構成であり、出力として整流器制御パルスib1〜ib6を出力する。
【0037】
1.2.1.2.2 インバータ制御部60
インバータ制御部60は、モータ回転同期信号生成部14と、出力電圧指令演算部15より構成される。出力電圧指令演算部15では、回転角速度検出器51から検出された回転角速度ωを入力とし、図12のインバータの出力各相への出力電圧指令Vuref, Vvref, Vwrefを以下の式(10)〜(12)に基づいて生成する。
Vuref = cos(Pω) (10)
Vvref = cos(Pω-3/2*π) (11)
Vwref = cos(Pω+3/2*π) (12)
ただし、Pは永久磁石同期電動機201の極対数である。
【0038】
また、モータ回転同期信号生成部14では出力電圧指令演算部で演算された出力電圧指令Vuref, Vvref, Vwrefを入力とし、以下の式(13)〜(18)に基づいてインバータ制御パルスib7〜ib12を決める。
ib7=1 ib10=0 (Vuref>=0) (13)
ib7=0 ib10=1 (Vuref<0) (14)
ib8=1 ib11=0 (Vvref>=0) (15)
ib8=0 ib11=1 (Vvref<0) (16)
ib9=1 ib12=0 (Vwref>=0) (17)
ib9=0 ib12=1 (Vwref<0) (18)
【0039】
1.2.2 論理合成ブロック70
論理合成ブロック70は整流器制御パルスib1〜ib6、インバータ制御パルスib7〜ib12を入力し、以下の論理合成式によってMtoM制御パルスia1〜ia9を生成する。
ia1 = ib1 * ib7 + ib4 * ib10 (19)
ia2 = ib2 * ib7 + ib5 * ib10 (20)
ia3 = ib3 * ib7 + ib6 * ib10 (21)
ia4 = ib1 * ib8 + ib4 * ib11 (22)
ia5 = ib2 * ib8 + ib5 * ib11 (23)
ia6 = ib3 * ib8 + ib6 * ib11 (24)
ia7 = ib1 * ib9 + ib4 * ib12 (25)
ia8 = ib2 * ib9 + ib4 * ib12 (26)
ia9 = ib3 * ib9 + ib4 * ib12 (27)
以上の制御構成により、マトリクスコンバータを駆動する。
【0040】
1.3 実施例2の効果
実施例1の整流器の制御をマトリクスコンバータの制御に応用することで、マトリクスコンバータの制御をシンプルに構成できるので、マトリクスコンバータを駆動する制御システムの制御装置のコストを低減することができる。また、インバータ制御部60にも、整流器の制御で用いた同期信号生成ロジックを用いることで、インバータ制御部を簡素な構造で実現できる。従って、整流器制御部とインバータ制御部がともにシンプルな構造となるため、マトリクスコンバータの制御装置をシンプルに構成でき、制御装置のコストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の電力変換器の制御方法によれば、入力電圧に同期したパルスをベースとすることにより、非常に少ないスイッチング回数で出力電圧の調整、入力電流の調整をすることができるので、損失低減効果があるとともに、発電機側、駆動側の両方をパルス制御することにより、容易に短絡防止ステップを組み込むことができる。そのため、本発明の電力変換器の制御方法は、整流器やマトリクスコンバータなどに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例の他の例を説明するための図である。
【図3】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における入力電圧同期信号発生の原理を示すグラフである。
【図4】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における論理演算部の構成を説明するための図である。
【図5】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例におけるパルスの論理合成の方法を示すグラフである。
【図6】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における開放信号生成部の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における電圧制御部により開放信号を生成する原理を示すグラフである。
【図8】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における電流制御部により開放信号を生成する原理を示すグラフである。
【図9】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における電圧制御と電流制御とを切り替えるマップの構成を説明するための図である。
【図10】本発明の電力変換器の制御方法をマトリクスコンバータに適用した例の一例を説明するための図である。
【図11】本発明の電力変換器の制御方法をマトリクスコンバータに適用した例の他の例を説明するための図である。
【図12】本発明におけるマトリクスコンバータに等価な電力変換器とシステム構成を説明するための図である。
【図13】従来の電力変換器の制御方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
10 整流器制御部
11 開放信号生成部
12 論理演算部
13 入力電圧同期信号生成部
30 整流器
200、201 永久磁石同期電動機
202 エンジン
400 電力変換器
401 等価電力変換器
402 整流器
403 インバータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電圧を入力とし出力を二相とする電力変換器、特に、マトリクスコンバータから構成される電力変換器の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、整流器、および整流器とインバータを接続した電力変換器、およびマトリクスコンバータの制御方法としては、種々の方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】2004年、電気学会全国大会論文誌D、124巻5号457〜463、「キャリア比較方式を用いた仮想AC/DC/AC変換方式によるマトリクスコンバータの制御法」
【0003】
図13は上述した方法(以下キャリア比較方式)による整流器の制御ブロックの構成を示す図である。キャリア比較方式では、整流器のスイッチングを決めるパルスを、電圧型整流器制御ブロック21と、PWM制御部22と、相対演算を行うブロック23から演算している。電圧型整流器制御ブロック21では出力電圧指令と、入力電流指令、入力線間電圧、入力相電流からまず電圧型整流器を制御する指令値を生成する。次にPWM制御部22では、電圧型整流器制御ブロック21で生成された指令値とキャリア信号の比較によってパルス列を生成する。次に相対演算を行うブロック23では、PWM制御部22で生成されたパルス列から論理演算によって相対なパルス列を得て、これによって整流器を制御している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら電圧型整流器制御ブロック21では仮想的な電圧型整流器の制御を新たに設計する必要があり、制御構造が複雑になる。このため、この制御を実現する場合には、高価なマイコンを使用する必要があり、コスト高となる。また、PWM制御を行うため単位時間あたりのスイッチング回数は増加し、スイッチング損失が増大するため効率が悪化する。またさらに、相対演算23は、以下の非特許文献2に基づいているが、本論文によれば相対演算後の短絡パターンの最適化に課題があると述べており、そのその最適化手法は示されていない。
【非特許文献2】1996年、電気学会論文誌D、116巻1号、「電流形三相インバータ・コンバータの三角波比較法式PWM制御」
【0005】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、低コストでスイッチング損失が少なく、しかも、容易に短絡防止を実現できる電力変換器の制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明に係る電力変換器の制御方法は、三相交流電圧を入力とし、出力を二相とする電力変換器において、三相交流電圧の各々の相と、出力の2相の間を接続/開放するスイッチと、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器とを備え、前記合成信号により電力変換器の各スイッチを駆動することを特徴とするものでる。
【0007】
また、本発明の第2発明に係る電力変換器の制御方法は、多相交流電圧を入力とし、多相交流電圧を出力する電力変換器としてのマトリクスコンバータと、マトリクスコンバータの出力電圧で制御されるモータとからなる構成において、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器と、モータの出力電圧指令に基づいて、モータへ流れる電流の向きを決定するインバータ制御信号を発生させるインバータ制御器と、前記合成信号とインバータ制御信号からスイッチングパルスを生成するパルス生成器とを備え、前記スイッチングパルスに基づいてマトリクスコンバータを駆動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力変換器の制御方法の第1発明によれば、入力電圧に同期したパルスをベースに整流器を駆動することにより、制御に必要な計算量を少なく抑えることができる。これにより、高価なマイコンを使わずとも整流器を制御することができるので、コスト低減効果がある。また、PWMをベースとする制御はスイッチング回数が多いためスイッチング損失が大きいが、入力電圧に同期したパルスをベースとすることにより、非常に少ないスイッチング回数で出力電圧の調整、入力電流の調整をすることができるので、損失低減効果がある。また、一般的に電圧源を入力とする整流器の制御は相間短絡を考えながら制御しなければならないため制御が難しいが、本方式によればシンプルな構成で短絡を防止することができる。
【0009】
本発明の電力変換器の制御方法の第2発明によれば、マトリクスコンバータの制御に応用することで、マトリクスコンバータの制御をシンプルに構成できるので、マトリクスコンバータを駆動する制御システムの制御装置のコストを低減することができる。また、インバータ制御部にも、整流器の制御で用いた同期信号生成ロジックを用いることで、インバータ制御部を簡素な構造で実現できる。従って、整流器制御部とインバータ制御部がともにシンプルな構造となるため、マトリクスコンバータの制御装置をシンプルに構成でき、制御装置のコストを低減できる。
【0010】
なお、本発明の電力変換器の制御方法において、入力電圧同期信号生成器は、入力電圧の正、負に基づいて入力電圧同期信号を生成するよう構成することができる。このように構成することで、入力電圧の正、負によってパルスを決めるので、少ない計算量により実現することができる。
【0011】
また、本発明の電力変換器の制御方法において、開放指令生成器は電圧制御器を備え、電圧制御器は入力電圧の大小関係に基づいて開放指令を出力するよう構成することができる。このように構成することで、開放信号を与えるだけで出力電圧を制御できるので、制御構成がシンプルになる。これにより、少ない計算量で実現することができる。
【0012】
さらに、本発明の電力変換器の制御方法において、開放指令生成器は電流制御器を備え、電流制御器は入力電流の大小関係に基づいて開放指令を出力するよう構成することができる。このように構成することで、開放信号を与えるだけで入力電流を制御できるので、制御構成がシンプルになる。これにより、少ない計算量で実現することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の電力変換器の制御方法において、開放指令生成器は出力電圧指令値と入力電流指令値を入力し、マップに基づいて電圧制御部と電流制御部の動作を切り替えるよう構成することができる。このように構成することで、マップによって電圧制御と電流制御を切り替えることができるので、指令値の状態に応じた適切な制御を行うことができるため、効率が良い。
【0014】
また、本発明の電力変換器の制御方法において、合成器は論理合成から合成信号を求めるよう構成することができる。このように構成することで、論理合成によりパルスを生成できるるので、シンプルな構造となり、少ない計算量で実現することができる。
【0015】
さらに、本発明の電力変換器の制御方法において、モータの出力電圧指令はモータ回転数に基づいて求めるよう構成することができる。このように構成することで、マトリクスコンバータの制御を決めるインバータ部の制御をシンプルな構成にすることができるので、全体的な制御構成もシンプルになり、マトリクスコンバータの制御装置を安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。以下の例において、実施例1として電力変換器が整流器の例を示し、実施例2として電力変換器がマトリクスコンバータ(交流交流電力変換システム)の例を示す。
【0017】
<整流器(実施例1)>
図1〜図9はそれぞれ本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例を説明するための図である。以下、図1〜図9に従って、実施例1を説明する。
【0018】
1.構成
1.1 回路構成
図1に本実施例における整流器の回路構成を示す。整流器30はスイッチS1〜S6から成り、図のように配線された電力変換器である。41〜43は電流検出器,R相、S相、T相は入力相である。Ir,Is,Itは入力電流、Vrs,Vst,Vtrは入力相間電圧であり、例えばVrsはS相電圧を基準としたR相の電圧である。また、Voutは出力電圧である。
【0019】
1.2 制御構成
図2に本実施例における整流器の制御構成を示す。整流器制御部10は、開放信号生成部11、論理演算部12、入力電圧同期信号生成部13から成る。整流器制御部10は、各入力相の電流指令値Irref,Isref,Itrefと、出力電圧指令Voutrefと、入力電流Ir,Is,Itと、入力相間電圧Vrs,Vst,Vtrを入力し、整流器制御パルスi1〜i6を出力する。i1〜i6はそれぞれ、スイッチS1〜S6の開閉信号である。本構成の特徴は、(1)入力電圧の周期に同期してスイッチングパルスを決め、一周期に少なくとも一回のONと少なくとも一回の開放状態が発生するようスイッチングすること、および、(2)開放状態を適切に配置することにより、出力電圧と入力電流を制御すること、である。以下、各ブロックの動作について説明する。
【0020】
1.2.1 入力電圧同期信号生成部13
図2の入力電圧同期信号生成部13は、入力線間電圧Vrs,Vst,Vtrを入力し、入力電圧同期信号i1’〜i6’を出力する。入力電圧同期信号i1’〜i6’の決め方を図3および、式(1)〜(6)に示す。
i1’=1 i4’=0 (Vr>=0) (1)
i1’=0 i4’=1 (Vr<0) (2)
i2’=1 i5’=0 (Vs>=0) (3)
i2’=0 i5’=1 (Vs<0) (4)
i3’=1 i6’=0 (Vt>=0) (5)
i3’=0 i6’=1 (Vt<0) (6)
【0021】
図3は、横軸を時間とし、縦軸にR相入力電圧、S相入力電圧、T相入力電圧、R相入力電圧同期信号i1’,i4’、S相入力電圧同期信号i2’,i5’、T相入力電圧同期信号i3’,i6’を示した。同図の入力電圧同期信号i1’〜i6’は0か1のパルス列である。また、この同期信号の組み合わせは図3のとおり、6通りであるので、便宜的にこの6通りの組み合わせを6つのモードに分け、mode a〜mode fと呼ぶことにする。
また、Vr,Vs,Vtは入力線間電圧Vrs,Vst,Vtrから式(7)〜(9)より求める。
Vr = (Vrs - Vtr)/2√3 (7)
Vs = (Vst - Vrs)/2√3 (8)
Vt = (Vtr - Vst)/2√3 (9)
以上の演算により、入力電圧Vr,Vs,Vtに同期した図3のような入力電圧同期信号i1’〜i6’が生成される。
【0022】
1.2.2 論理演算部12
次に図2の論理演算部12の構成を説明する。論理演算部12は、図4のような回路であらわされる。論理演算ブロック12は、入力電圧同期信号i1’〜i6’と、S1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を入力し、整流器のスイッチS1〜S6を駆動するパルスi1〜i6を出力する。i1〜i6は、上アーム論理演算ブロック121、下アーム論理演算ブロック122から成る論理演算部12によって決定される。
【0023】
上述の論理演算により、図5のように信号が出力される。例えばmode aの場合、S1S2開放信号とi1’、 i2’の論理合成により、i1,i2は図のように出力される。すなわち、S1S2開放信号が0のとき、i1=1,i2=0となり、S1S2開放信号が1のとき、i1=0,i2=1となる。他のモードについても、開放信号と同期信号の組み合わせによりmode aと同様な動作をするよう構成している。
【0024】
1.2.3 開放信号生成部11
図2に戻って、開放信号生成部11は、線間電圧Vrs,Vst,Vtr、入力電流It,Ir,Is、出力電圧指令Voutref、入力電流指令Irref,Isref,Itrefを入力し、出力としてS1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を出力する。開放信号生成部11の内部は図6のような構成となっており、大きく、電圧制御部111、電流制御部112、制御判断部113に分かれる。以下、各ブロックの動作について説明する。
【0025】
1.2.3.1 電圧制御部111
電圧制御部111は、S1S2開放信号生成部1111、S2S3開放信号生成部1112、S3S1開放信号生成部1113、S4S5開放信号生成部1114、S5S6開放信号生成部1115、S6S4開放信号生成部1116から構成され、線間電圧Vrs,Vst,Vtrを入力し、S1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を出力する。S1S2開放信号生成部1111は、Vst,Vtrを入力し、VstとVtrの大小関係に基づいてS1S2開放信号を生成する。例えば、mode aの場合、図7のように、Vst>=VtrのときS1S2開放信号を0、Vst<VtrのときS1S2開放信号を1とする。同様にして、S2S3開放信号生成部1112はVrsとVtrの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S3S1開放信号生成部1113はVrsとVstの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S4S5開放信号生成部1114はVstとVtrの大小関係に基づいてS4S5開放信号を生成する。S5S6開放信号生成部1115はVrsとVtrの大小関係に基づいてS5S6開放信号を生成する。S6S4開放信号生成部1116はVrsとVstの大小関係に基づいてS6S4開放信号を生成する。
【0026】
1.2.3.2 電流制御部112
電流制御部112は、S1S2開放信号生成部1121、S2S3開放信号生成部1122、S3S1開放信号生成部1123、S4S5開放信号生成部1124、S5S6開放信号生成部1125、S6S4開放信号生成部1126から構成され、相電流Ir,Is,Itを入力し、S1S2開放信号、S2S3開放信号、S3S1開放信号、S4S5開放信号、S5S6開放信号、S6S4開放信号を出力する。S1S2開放信号生成部1121は、Ir,Isを入力し、IrとIsの大小関係に基づいてS1S2開放信号を生成する。例えば、mode aの場合、図8のように、Ir>=IsのときS1S2開放信号を0、Ir<IsのときS1S2開放信号を1とする。同様にして、S2S3開放信号生成部1122はIsとItの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S3S1開放信号生成部1123はItとIsの大小関係に基づいてS2S3開放信号を生成する。S4S5開放信号生成部1124はIrとIsの大小関係に基づいてS4S5開放信号を生成する。S5S6開放信号生成部1125はIsとItの大小関係に基づいてS5S6開放信号を生成する。S6S4開放信号生成部1126はItとIrの大小関係に基づいてS6S4開放信号を生成する。
【0027】
1.2.3.3 制御判断部113
制御判断部113は、出力電圧指令値Voutref,入力電流指令Irref,Isref,Itrefを入力し、電流制御部111から開放信号を得るか、電流制御部112から開放信号を得るかの判断を下す。判断は、Voutrefと、Irref,Isref,Itrefの振幅Irefを入力とする図9のようなマップから行う。
【0028】
2.実施例1の効果
2.1 入力電圧に同期したパルス生成による効果
入力電圧に同期したパルスをベースに整流器を駆動することにより、制御に必要な計算量を少なく抑えることができる。これにより、高価なマイコンを使わずとも整流器を制御することができるので、コスト低減効果がある。また、PWMをベースとする制御はスイッチング回数が多いためスイッチング損失が大きいが、入力電圧に同期したパルスをベースとすることにより、非常に少ないスイッチング回数で出力電圧の調整、入力電流の調整をすることができるので、損失低減効果がある。また、一般的に電圧源を入力とする整流器の制御は相間短絡を考えながら制御しなければならないため制御が難しいが、本方式によればシンプルな構成で短絡を防止することができる。
【0029】
2.2 開放信号を生成することで各相に開放状態を設けることによる効果
各相のスイッチングに開放状態を設けるシンプルなロジックにより出力電圧、あるいは入力電流が制御できるので、2.1の効果を損なわずに出力電圧の調整、入力電流の調整を実現することができる。これにより、制御に必要な計算量を小さく抑えることができ、安価なマイコンでも十分制御が行えるので、コスト低減効果がある。
【0030】
<マトリクスコンバータシステム(実施例2)>
図10〜図12はそれぞれ本発明の電力変換器の制御方法をマトリクスコンバータに適用した例を説明するための図である。以下、図10〜図12に従って、実施例2を説明する。
【0031】
1.構成
1.1 回路構成
図10に本実施例における回路構成を示す。Sa1〜Sa9はスイッチ、400はスイッチSa1〜Sa9を含む電力変換器、200、201は永久磁石同期電動機、202はエンジン、300〜302はコンデンサ、51は永久磁石同期電動機201の回転角速度ωを検出する回転角速度検出器である。
【0032】
1.2 制御構成
図10のSa1〜Sa9の制御は、図11の制御構成によって行う。すなわち、等価電力変換器制御部500から生成される整流器制御パルスib1〜ib6と、インバータ制御パルスib7〜ib12を論理合成ブロック70で合成してSa1〜Sa9を駆動するマトリクスコンバータ制御パルスia1〜ia9を得る。以下、図11の各ブロックの説明を行う。
【0033】
1.2.1 等価電力変換器制御部500
図11の等価電力変換器制御部500は、図12の回路構成を対象として制御を決める。従ってまず、図12の構成を説明する。
【0034】
1.2.1.1 等価電力変換器401の回路構成
図12のシステム構成は図10のシステム構成において、電力変換器400を等価電力変換器401に置き換えた構造となっている。さらに、等価電力変換器401は整流器402とインバータ403から構成される。Sb1〜Sb12はスイッチ、電力変換器401はスイッチSb1〜Sb12を含む電力変換器、200、201は永久磁石同期電動機、202はエンジン、300〜302はコンデンサ、51は永久磁石同期電動機201の回転角速度を検出する回転角速度検出器である。
【0035】
1.2.1.2 等価電力変換器401の制御構成
等価電力変換器401の制御は図11の等価電力変換器制御部500によって行う。等価電力変換器制御部500は、大きく分けて整流器402を制御する整流器制御部10と、インバータ403を制御するインバータ制御部60に分けられる。以下、各部の動作について説明する。
【0036】
1.2.1.2.1 整流器制御部10
整流器制御部10は、実施例1の整流器制御部10と同じ構成であり、出力として整流器制御パルスib1〜ib6を出力する。
【0037】
1.2.1.2.2 インバータ制御部60
インバータ制御部60は、モータ回転同期信号生成部14と、出力電圧指令演算部15より構成される。出力電圧指令演算部15では、回転角速度検出器51から検出された回転角速度ωを入力とし、図12のインバータの出力各相への出力電圧指令Vuref, Vvref, Vwrefを以下の式(10)〜(12)に基づいて生成する。
Vuref = cos(Pω) (10)
Vvref = cos(Pω-3/2*π) (11)
Vwref = cos(Pω+3/2*π) (12)
ただし、Pは永久磁石同期電動機201の極対数である。
【0038】
また、モータ回転同期信号生成部14では出力電圧指令演算部で演算された出力電圧指令Vuref, Vvref, Vwrefを入力とし、以下の式(13)〜(18)に基づいてインバータ制御パルスib7〜ib12を決める。
ib7=1 ib10=0 (Vuref>=0) (13)
ib7=0 ib10=1 (Vuref<0) (14)
ib8=1 ib11=0 (Vvref>=0) (15)
ib8=0 ib11=1 (Vvref<0) (16)
ib9=1 ib12=0 (Vwref>=0) (17)
ib9=0 ib12=1 (Vwref<0) (18)
【0039】
1.2.2 論理合成ブロック70
論理合成ブロック70は整流器制御パルスib1〜ib6、インバータ制御パルスib7〜ib12を入力し、以下の論理合成式によってMtoM制御パルスia1〜ia9を生成する。
ia1 = ib1 * ib7 + ib4 * ib10 (19)
ia2 = ib2 * ib7 + ib5 * ib10 (20)
ia3 = ib3 * ib7 + ib6 * ib10 (21)
ia4 = ib1 * ib8 + ib4 * ib11 (22)
ia5 = ib2 * ib8 + ib5 * ib11 (23)
ia6 = ib3 * ib8 + ib6 * ib11 (24)
ia7 = ib1 * ib9 + ib4 * ib12 (25)
ia8 = ib2 * ib9 + ib4 * ib12 (26)
ia9 = ib3 * ib9 + ib4 * ib12 (27)
以上の制御構成により、マトリクスコンバータを駆動する。
【0040】
1.3 実施例2の効果
実施例1の整流器の制御をマトリクスコンバータの制御に応用することで、マトリクスコンバータの制御をシンプルに構成できるので、マトリクスコンバータを駆動する制御システムの制御装置のコストを低減することができる。また、インバータ制御部60にも、整流器の制御で用いた同期信号生成ロジックを用いることで、インバータ制御部を簡素な構造で実現できる。従って、整流器制御部とインバータ制御部がともにシンプルな構造となるため、マトリクスコンバータの制御装置をシンプルに構成でき、制御装置のコストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の電力変換器の制御方法によれば、入力電圧に同期したパルスをベースとすることにより、非常に少ないスイッチング回数で出力電圧の調整、入力電流の調整をすることができるので、損失低減効果があるとともに、発電機側、駆動側の両方をパルス制御することにより、容易に短絡防止ステップを組み込むことができる。そのため、本発明の電力変換器の制御方法は、整流器やマトリクスコンバータなどに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例の他の例を説明するための図である。
【図3】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における入力電圧同期信号発生の原理を示すグラフである。
【図4】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における論理演算部の構成を説明するための図である。
【図5】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例におけるパルスの論理合成の方法を示すグラフである。
【図6】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における開放信号生成部の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における電圧制御部により開放信号を生成する原理を示すグラフである。
【図8】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における電流制御部により開放信号を生成する原理を示すグラフである。
【図9】本発明の電力変換器の制御方法を整流器に適用した例における電圧制御と電流制御とを切り替えるマップの構成を説明するための図である。
【図10】本発明の電力変換器の制御方法をマトリクスコンバータに適用した例の一例を説明するための図である。
【図11】本発明の電力変換器の制御方法をマトリクスコンバータに適用した例の他の例を説明するための図である。
【図12】本発明におけるマトリクスコンバータに等価な電力変換器とシステム構成を説明するための図である。
【図13】従来の電力変換器の制御方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
10 整流器制御部
11 開放信号生成部
12 論理演算部
13 入力電圧同期信号生成部
30 整流器
200、201 永久磁石同期電動機
202 エンジン
400 電力変換器
401 等価電力変換器
402 整流器
403 インバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電圧を入力とし、出力を二相とする電力変換器において、三相交流電圧の各々の相と、出力の2相の間を接続/開放するスイッチと、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器とを備え、前記合成信号により電力変換器の各スイッチを駆動することを特徴とする電力変換器の制御方法。
【請求項2】
多相交流電圧を入力とし、多相交流電圧を出力する電力変換器としてのマトリクスコンバータと、マトリクスコンバータの出力電圧で制御されるモータとからなる構成において、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器と、モータの出力電圧指令に基づいて、モータへ流れる電流の向きを決定するインバータ制御信号を発生させるインバータ制御器と、前記合成信号とインバータ制御信号からスイッチングパルスを生成するパルス生成器とを備え、前記スイッチングパルスに基づいてマトリクスコンバータを駆動することを特徴とする電力変換器の制御方法。
【請求項3】
入力電圧同期信号生成器は、入力電圧の正、負に基づいて入力電圧同期信号を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項4】
開放指令生成器は電圧制御器を備え、電圧制御器は入力電圧の大小関係に基づいて開放指令を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項5】
開放指令生成器は電流制御器を備え、電流制御器は入力電流の大小関係に基づいて開放指令を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項6】
開放指令生成器は出力電圧指令値と入力電流指令値を入力し、マップに基づいて電圧制御部と電流制御部の動作を切り替えることを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項7】
合成器は論理合成から合成信号を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項8】
モータの出力電圧指令はモータ回転数に基づいて求めることを特徴とする請求項2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項1】
三相交流電圧を入力とし、出力を二相とする電力変換器において、三相交流電圧の各々の相と、出力の2相の間を接続/開放するスイッチと、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器とを備え、前記合成信号により電力変換器の各スイッチを駆動することを特徴とする電力変換器の制御方法。
【請求項2】
多相交流電圧を入力とし、多相交流電圧を出力する電力変換器としてのマトリクスコンバータと、マトリクスコンバータの出力電圧で制御されるモータとからなる構成において、各相の入力交流電圧(Vr、Vs、Vt)の周期に基づいて、各相から出力相へ流れる電流の向きを決定する入力同期パルス信号(i1〜6)を発生させる入力電圧同期信号生成器と、電力変換器の入出力状態に基づいて、一周期の間に少なくとも一回入力相を開放させる指令値を出力する開放指令生成器と、前記入力電圧同期信号と前記開放指令から合成信号を生成する合成器と、モータの出力電圧指令に基づいて、モータへ流れる電流の向きを決定するインバータ制御信号を発生させるインバータ制御器と、前記合成信号とインバータ制御信号からスイッチングパルスを生成するパルス生成器とを備え、前記スイッチングパルスに基づいてマトリクスコンバータを駆動することを特徴とする電力変換器の制御方法。
【請求項3】
入力電圧同期信号生成器は、入力電圧の正、負に基づいて入力電圧同期信号を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項4】
開放指令生成器は電圧制御器を備え、電圧制御器は入力電圧の大小関係に基づいて開放指令を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項5】
開放指令生成器は電流制御器を備え、電流制御器は入力電流の大小関係に基づいて開放指令を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項6】
開放指令生成器は出力電圧指令値と入力電流指令値を入力し、マップに基づいて電圧制御部と電流制御部の動作を切り替えることを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項7】
合成器は論理合成から合成信号を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換器の制御方法。
【請求項8】
モータの出力電圧指令はモータ回転数に基づいて求めることを特徴とする請求項2に記載の電力変換器の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−189814(P2007−189814A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5131(P2006−5131)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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