説明

電力変換回路

【課題】カレントダブラ整流方式による絶縁コンバータでは、リプル電流を低減できる反面、磁気部品が多くなること。
【解決手段】トランスを構成するコイルW1,W2は、磁心10の足12によって磁気結合されている。リアクトルを構成するコイルW3,W4のそれぞれを、磁心10の足16,18のそれぞれが鎖交する。これらのコイルW1〜W4を鎖交する足と、コイルを鎖交しない足14とが、磁心20の接続部20,22によって並列接続されている。コイルW3に電流が流れることで生じる磁束φ3と、コイルW4に電流が流れることで生じる磁束φ4とは、足16、接続部20、足18および接続部22を備えるループ経路において同一極性となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧印加手段の出力端子に接続された第1コイルと、前記第1コイルと磁気結合する第2コイルと、コンデンサと、前記第2コイルを流れる電流を前記コンデンサに出力するために用いられる第3コイルおよび第4コイルと、前記第3コイルおよび前記第4コイルの直流電流の流通方向を一方向に規制する整流手段と、磁心とを備え、前記第3コイルおよび前記第4コイルのそれぞれに流れる電流が漸増するときの前記第1コイルに印加される電圧の極性が互いに逆となる電力変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に、一般的なカレントダブラ整流方式による絶縁コンバータを示す(特許文献1の図の17)。このコンバータは、出力電流を一対のリアクトル(コイルW3,W4)で分割し、それぞれが出力電流の半分を流すことによって整流するものである。一対のコイルW3、W4は、トランスTによって交互に励磁されるため、これらを流れる電流のリップルがインターリーブで重なり合わされる。このために、コイルW3,W4のそれぞれのインダクタンスが小さくても、コンバータの出力電流のリップルを効果的に低減させることができる。
【0003】
ここで、インダクタの体格は一般にインダクタンスと通電電流の二乗の積によって表されるエネルギ積に概ね比例することが知られている。したがって、コイルW3,W4のインダクタンスが小さくてもリップルが小さく抑えられるということは、コンバータの出力電流のリプルについての要求を満たすコイルW3,W4の体格が小さくて済むということを意味する。実際、カレントダブラ整流方式の絶縁コンバータは、出力段に全波整流回路など他の整流方式を用いたコンバータに比べて同じリップルを得るための平滑用コイルの合計エネルギ積が小さいため、磁気部品の小型化に効果的なコンバータ回路として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3236825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、平滑インダクタの体格が小さくできる反面、トランスTおよび平滑用コイル(コイルW3,W4)という3つの磁気部品を用いる構成であるため、磁気部品の点数が他の整流方式に比べて多いという欠点がある。この欠点により、次の3つの問題があった。まず第1に、巻線のスペースやコアのデッドスペース等を考慮すると実装体格を低減させることが困難という問題である。第2に、それぞれの磁気部品について個別に磁路を周回させる分、磁心の体積がエネルギ積から期待されるほどには低減できないという問題である。第3に、部品取り付けなどに起因する製作コストが嵩んでいるという問題である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、交流電圧印加手段の出力端子に接続された第1コイルと、前記第1コイルと磁気結合する第2コイルと、コンデンサと、前記第2コイルを流れる電流を前記コンデンサに出力するために用いられる第3コイルおよび第4コイルと、前記第3コイルおよび前記第4コイルの直流電流の流通方向を一方向に規制する整流手段と、磁心とを備え、前記第3コイルおよび前記第4コイルのそれぞれに流れる電流が漸増するときの前記第1コイルに印加される電圧の極性が互いに逆となる新たな電力変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、交流電圧印加手段の出力端子に接続された第1コイルと、前記第1コイルと磁気結合する第2コイルと、コンデンサと、前記第2コイルを流れる電流を前記コンデンサに出力するために用いられる第3コイルおよび第4コイルと、前記第3コイルおよび前記第4コイルの直流電流の流通方向を一方向に規制する整流手段と、磁心とを備え、前記第3コイルおよび前記第4コイルのそれぞれに流れる電流が漸増するときの前記第1コイルに印加される電圧の極性が互いに逆となる電力変換回路において、前記磁心は、前記第1コイルを鎖交する部分、前記第2コイルを鎖交する部分、前記第3コイルを鎖交する部分、および前記第4コイルを鎖交する部分が一体的に形成されるものであることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、リアクトルとして機能する第3コイルおよび第4コイルのための磁心と、トランスとして機能する第1コイルおよび第2コイルを磁気結合させるための磁心とを一体的に形成することで、これらリアクトルおよびトランスの小型化が可能となる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記磁心は、前記第3コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分を有し、該ループ経路において、前記第3コイルに流れる電流の直流成分によって生成される磁束の方向と前記第4コイルに流れる電流の直流成分によって生成される磁束の方向とを同一方向に設定したことを特徴とする。
【0011】
上記発明では、第3コイルに流れる電流の直流成分によって生成される磁束が第4コイルに鎖交する際の方向を、第4コイルに流れる電流の直流成分によって生成される第4コイルの鎖交磁束の方向と一致させることができる。また、第4コイルに流れる電流の直流成分によって生成される磁束が第3コイルに鎖交する際の方向を、第3コイルに流れる電流の直流成分によって生成される第3コイルの鎖交磁束の方向と一致させることができる。このため、これら第3コイルおよび第4コイルのそれぞれに電流が流れることで生成される直流磁束が、第1コイルおよび第2コイルに鎖交する事態を好適に抑制することができる。このため、第1コイルおよび第2コイルを磁気結合させるための磁心の磁気飽和が、第3コイルおよび第4コイルのそれぞれに電流が流れることで生成される磁束によって促進されることを好適に回避することができる。このため、第1コイルおよび第2コイルを磁気結合させるための磁心の体格が大型化することを好適に回避することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記磁心は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分を有し、該ループ経路において、前記第3コイルに流れる電流が増加するときにおける前記第3コイルを鎖交する磁束の交流成分の方向が前記第2コイルを鎖交する磁束の交流成分の方向に一致するようにしたことを特徴とする。
【0013】
上記第3コイルに流れる電流が増加することで第3コイルを鎖交する磁束が増大するため、このときには第3コイルを鎖交する磁束が第4コイルを鎖交する磁束よりも大きくなる可能性がある。そしてこの場合、この磁束の過剰分は、第3コイルおよび第4コイルの双方に鎖交するループ経路以外の経路に流出する。この点、上記発明では、この流出によって第2コイルを鎖交する磁束の変化を補うようにすることで、この流出に起因して磁心を大型化する必要を好適に抑制することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記第3コイルのターン数と前記第4コイルのターン数とが互いに等しいことを特徴とする。
【0015】
上記発明では、第3コイルに電流が流れることで生成される磁束と第4コイルに電流が流れることで生成される磁束との対称性を容易に実現できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明において、前記磁心は、前記第1コイルおよび前記第2コイルを鎖交する第1部分、前記第3コイルを鎖交する第3部分、および前記第4コイルを鎖交する第4部分と、これら第1部分、第3部分および第4部分を並列接続する部分とを備えて且つ、前記第1部分、前記第3部分および前記第4部分に並列に、コイルを鎖交しない部分をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、第1コイルを鎖交する磁束、第3コイルを鎖交する磁束および第4コイルを鎖交する磁束の差分の通る経路として、上記コイルを鎖交しない部分を利用することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記コイルを鎖交しない部分は、前記第1部分、前記第3部分、および前記第4部分を挟む両側に設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記発明には、コイルを鎖交しない部分が磁気シールドの機能を有することとなり、磁心からその周囲への磁束の漏れを抑制することができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記第2コイルのターン数、前記第3コイルのターン数、および前記第4コイルのターン数が互いに等しいことを特徴とする。
【0021】
上記発明では、第3コイルを鎖交する磁束と第4コイルを鎖交する磁束との差分が、第2コイルを鎖交する経路によって好適に吸収される。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記磁心のうち前記第1コイルおよび前記第2コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分、および前記第2コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分によって形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、第1コイルおよび第2コイルの双方に鎖交するループ経路を、第2コイルおよび第3コイルの双方に鎖交するループ経路等と共有することで、磁心の構造を簡素化することが容易となる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記磁心は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分、および前記第2コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分の一対の部分のうちそれらの共通部分以外の部分に、ギャップを備えることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、第3コイルおよび第4コイルに流れる電流による磁気飽和を好適に抑制することができるため、磁心を小型化することができる。
【0026】
なお、前記ギャップは、前記一対の部分のそれぞれに対応して設けられることが望ましい。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記磁心は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分、および前記第2コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分の一対の部分のうちそれらの共通部分以外の部分の少なくとも一部の材料の透磁率が他の部分の材料の透磁率よりも小さいことを特徴とする。
【0028】
上記発明では、第3コイルおよび第4コイルに流れる電流による磁気飽和を好適に抑制することができるため、磁心を小型化することができる。
【0029】
なお、前記透磁率が小さい部分は、前記一対の部分のそれぞれに対応して設けられることが望ましい。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、前記第1コイルおよび前記第2コイルの双方に鎖交して且つ前記第3コイルおよび前記第4コイルのいずれにも鎖交しないループ経路を構成する部分を除いた部分に、ギャップを備えることを特徴とする。
【0031】
上記発明では、第3コイルおよび第4コイルに流れる電流による磁気飽和を好適に抑制することができるため、磁心を小型化することができる。
【0032】
なお、前記磁心は、前記いずれにも鎖交しないループ経路を構成する部分によって2分割されて且つ、前記ギャップは、前記2分割された各部分にそれぞれ備えられることを特徴とすることが望ましい。
【0033】
請求項12記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記磁心は、前記第1コイルおよび前記第2コイルの双方に鎖交して且つ前記第3コイルおよび前記第4コイルのいずれにも鎖交しないループ経路を構成する部分の材料の透磁率よりも、それ以外の少なくとも一部の材料の透磁率の方が小さいことを特徴とする。
【0034】
上記発明では、第3コイルおよび第4コイルに流れる電流による磁気飽和を好適に抑制することができるため、磁心を小型化することができる。
【0035】
なお、前記磁心は、前記いずれにも鎖交しないループ経路を構成する部分によって2分割されて且つ、前記透磁率が小さい部分は、前記2分割された各部分のそれぞれに設けられることを特徴とすることが望ましい。
【0036】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイルおよび前記第4コイルと前記磁心との間に、一体的に形成されたボビンを備えることを特徴とする。
【0037】
上記発明では、ボビンによってコイルに磁心を鎖交させる構成を実現することができるため、その製造を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態にかかるコンバータの構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示すタイムチャート。
【図3】第2の実施形態にかかる磁気部品を示す斜視図。
【図4】第3の実施形態にかかるコンバータの構成を示す図。
【図5】第4の実施形態にかかるコンバータの構成を示す図。
【図6】第5の実施形態にかかるコンバータの構成を示す図。
【図7】第6の実施形態にかかるコンバータの構成を示す図。
【図8】上記各実施形態の変形例にかかる交流電圧印加手段の回路構成を示す回路図。
【図9】本発明にかかるコンバータについての定量的な説明をするための図。
【図10】従来のコンバータの回路構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換回路の第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1に、本実施形態にかかる電力変換回路を示す。なお、図1は、図10の回路図と電気的に等価に機能する。
【0041】
図示される直流電圧源(バッテリB)には、平滑コンデンサC1と、交流電圧印加回路AVCとが並列接続されている。交流電圧印加回路AVCは、スイッチング素子SW1,SW2の直列接続体と、スイッチング素子SW3,SW4の直列接続体とが並列接続されて構成されている。交流電圧印加回路AVCは、スイッチング素子SW1およびスイッチング素子SW4がオン且つスイッチング素子SW2およびスイッチング素子SW3がオフであるときと、スイッチング素子SW1およびスイッチング素子SW4がオフ且つスイッチング素子SW2およびスイッチング素子SW3がオンであるときとで、出力電圧の絶対値を同一としつつもその極性を逆とするものである。
【0042】
交流電圧印加回路AVCの出力端子は、コイルW1に接続されており、コイルW1は、磁心10の円柱状部分(足12)によって、コイルW2と磁気結合される。コイルW2の一方の端部は、リアクトルを構成するコイルW3を介して、コンデンサC2の正極側に接続されており、コイルW2の他方の端部は、リアクトルを構成するコイルW4を介して、コンデンサC2の正極側に接続されている。コンデンサC2の負極側は、ダイオードD1を介してコイルW2およびコイルW3間に接続されている。このため、コンデンサC2の負極側からコイルW2およびコイルW3間側への電流が許容されて且つ逆方向の電流が阻止されるため、コイルW2を流れる電流がコイルW3を介してコンデンサC2に出力されるに際しての電流の流通方向が一方向に規制される。また、コンデンサC2の負極側は、ダイオードD2を介してコイルW2およびコイルW4間に接続されている。このため、コンデンサC2の負極側からコイルW2およびコイルW4間側への電流が許容されて且つ逆方向の電流が阻止されるため、コイルW2を流れる電流がコイルW4を介してコンデンサC2に出力されるに際しての電流の流通方向が一方向に規制される。
【0043】
上記足12は、磁心10の接続部20,22を介して円柱状部分(足14)に接続されている。これにより、磁心10は、コイルW1,W2を鎖交するループ経路の全体を包含するものとなっている。
【0044】
上記足12は、接続部20,22を介して、コイルW3を鎖交する円柱状部分(足16)につながっている。足16は、磁気飽和を回避する目的で設けられたギャップGを備えている。上記足12は、さらに、接続部20,22を介してコイルW4を鎖交する円柱状部分(足18)に接続されている。足18は、磁気飽和を回避する目的で設けられたギャップGを備えている。
【0045】
なお、コイルW1〜W4の巻数(ターン数N1〜N4)について、本実施形態では、特に「N3=N4」の条件を設けた。この条件は、コイルW3を流れる電流Iw3とコイルW4を流れる電流Iw4との対称性の確保が容易となるための一設定である。なお、ターン数とは、コイルの鎖交磁束をコイル内の磁束で割った値である。
【0046】
また、上記足12,14,16,18は、いずれもその長さが等しく互いに平行に配置されており、接続部20,22は、これらを並列接続する部分である。このように、足12,14,16,18が接続部20,22によって接続されることで、これらは一体的に構成される。特に、本実施形態では、足16,18の断面積が互いに等しく、かつそれぞれのギャップGの間隙も互いに等しく設定されている。また、磁心10の材料である強磁性体としては、フェライト等を採用することができる。
【0047】
以下、図2を用いて本実施形態にかかる電力変換回路の動作について、主として定性的な説明を与える。なお、これについてのより定量的な説明については、本明細書最後部の備考欄に与えてある。
【0048】
ここで、図2(a)は、スイッチング素子SW1の操作状態の推移を示し、図2(b)は、スイッチング素子SW2の操作状態の推移を示し、図2(c)は、スイッチング素子SW3の操作状態の推移を示し、図2(d)は、スイッチング素子SW4の操作状態の推移を示す。また、図2(e)は、コイルW1の両端に印加される電圧の推移を示し、図2(f)は、コイルW1内(足12内)の磁束φ1の推移を示し、図2(g)は、コイルW3内(足16内)の磁束φ3の推移を示し、図2(h)は、コイルW4内(足18内)の磁束φ4の推移を示し、図2(i)は、足14内の磁束φ5の推移を示す。また、図2(j)は、コイルW3に流れる電流Iw3の推移を示し、図2(k)は、コイルW4を流れる電流Iw4の推移を示す。なお、図2における磁束φ1,φ3,φ4,φ5や電流Iw3,Iw4の符号については、図1に定義してある。
【0049】
「モード1」
スイッチング素子SW1,SW4がオン且つスイッチング素子SW2,SW3がオフとなる状態である。これにより、コイルW1には、バッテリBの電圧Vinが印加されることで、コイルW1によって誘起される磁束φ1が漸増し、先の図1に示したコイルW2に電圧が誘起される。コイルW2に誘起される電圧は、ダイオードD2に順方向電流を流す一方、ダイオードD1をオフ状態とするものである。
【0050】
コイルW2に誘起された電圧によって、コイルW3の一対の端子の電位のうちコンデンサC2側ではない方が高くなる。これにより、コイルW3によって誘起される磁束φ3が漸増するとともに、コイルW3を流れる電流Iw3も漸増する。ここで、コイルW3を流れる電流は、コイルW3によって誘起される磁束φ3に略比例する。これは、足16にギャップGを設けたためである(備考欄参照)。
【0051】
これに対し、ダイオードD2がオン状態であることから、コイルW4の一対の端子の電位のうちコンデンサC2側の方が高くなる。これにより、コイルW4によって誘起される磁束φ4は、コンデンサC2の電圧(電力変換回路の出力電圧Vout)に応じて漸減するとともに、コイルW4を流れる電流Iw4も漸減する。ここで、コイルW4を流れる電流は、コイルW4によって誘起される磁束φ4に略比例する。これは、足18にギャップGを設けたためである(備考欄参照)。
【0052】
この際、磁束φ5は、「φ5=φ1−φ3+φ4」を満たすように変化する。
【0053】
「モード2」
スイッチング素子SW2,SW4がオン且つスイッチング素子SW1,SW3がオフとなる状態である。この場合、コイルW1の両端の電圧はゼロとなるため、コイルW1によって誘起される磁束φ1は変化しない。このため、コイルW2の両端の電圧もゼロとなる。一方、コイルW3の両端には、モード1のときとは逆極性であって且つ出力電圧Voutの大きさを有する電圧が印加される。これにより、コイルW3によって誘起される磁束φ3は出力電圧Voutに応じて漸減し、これに伴ってコイルW3を流れる電流Iw3も漸減する。これに対し、コイルW4の両端には、モード1のときと同一極性且つ同一の大きさの電圧が印加されているため、コイルW4によって誘起される磁束φ4は漸減し、コイルW4を流れる電流Iw4も漸減する。なお、コイルW3,W4を流れる電流は、ダイオードD1,D2の少なくとも一方を流通するものであり、モード2では、コイルW2の電圧がゼロであるため、モード2では、ダイオードD1,D2ともオン状態となる。
【0054】
この際、磁束φ5は変化しない。これは、「N3=N4」との設定による。
【0055】
「モード3」
スイッチング素子SW1,SW4がオフ且つスイッチング素子SW2,SW3がオンとなる状態である。本実施形態では、このモード3の期間を、モード1の期間と同一に設定する。これは、コイルW1によって誘起される磁束φ1が磁心10を磁気飽和させる大きさとなることを防ぐための一設定であるとともに、上記条件「N3=N4」との協働でコイルW3を流れる電流Iw3とコイルW4を流れる電流Iw4との対称性の確保のための一設定である。
【0056】
この場合、コイルW1には、モード1とは逆極性であって且つ大きさがバッテリBの電圧Vinとなる電圧が印加されることで、コイルW1によって誘起される磁束φ1が漸減し、先の図1に示したコイルW2に電圧が誘起される。コイルW2に誘起される電圧は、ダイオードD1に順方向電流を流す一方、ダイオードD2をオフ状態とするものである。
【0057】
コイルW2に誘起された電圧によって、コイルW4の一対の端子の電位のうちコンデンサC2側でない方が高くなる。これにより、コイルW4によって誘起される磁束φ4が出力電圧Voutに応じて漸増するとともに、コイルW4を流れる電流Iw4も漸増する。
【0058】
これに対し、ダイオードD1がオン状態であることから、コイルW3の一対の端子の電位のうちコンデンサC2側の方が高くなる。これにより、コイルW3によって誘起される磁束φ3が出力電圧Voutに応じて漸減するとともに、コイルW3を流れる電流Iw3も漸減する。
【0059】
この際、磁束φ5は、「φ5=φ1−φ3+φ4」を満たすように変化する。
【0060】
「モード4」
モード2同様、スイッチング素子SW2,SW4がオン且つスイッチング素子SW1,SW3がオフとなる状態である。この場合、コイルW1の両端の電圧はゼロとなるため、コイルW1によって誘起される磁束φ1は変化しない。このため、コイルW2の両端の電圧もゼロとなる。
【0061】
一方、コイルW3の両端には、モード3のときと同一極性且つ同一の大きさの電圧が印加されているため、コイルW3によって誘起される磁束φ3は漸減し、コイルW3を流れる電流Iw3も漸減する。これに対し、コイルW4の両端には、モード3のときとは逆極性であって且つ出力電圧Voutの大きさを有する電圧が印加される。これにより、コイルW4によって誘起される磁束φ4は漸減し、これに伴ってコイルW4を流れる電流Iw4も漸減する。なお、コイルW3,W4を流れる電流は、ダイオードD1,D2の少なくとも一方を流通するものであり、モード4では、コイルW2の電圧がゼロであるため、モード4では、ダイオードD1,D2ともオン状態となっていることとなる。
【0062】
この際、磁束φ5は変化しない。これは、「N3=N4」との設定による。
【0063】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0064】
本実施形態では、コイルW1,W2によって構成されるトランスの磁心と、リアクトルとして機能するコイルW3,W4の磁心とを一体的に構成することで、磁気部品間のデッドスペースを低減することができ、電力変換回路を小型化することができる。
【0065】
ここで、トランスおよびリアクトルの磁心を一体的に構成するに際して、リアクトルの平均磁束(磁束φ3、φ4の直流成分)がトランスの磁心(足12,14)を通過しないように構成することで、トランス部分の大型化を回避している。これは、コイルW3によって誘起される磁束φ3の直流成分(図2(g)に示す磁束φ3の平均値)とコイルW4によって誘起される磁束φ4の直流成分(図2(h)に示す磁束φ4の平均値)とを、足16、接続部20、足18、および接続部22によって形成されるループ経路上において同一の方向となるように設定することで実現したものである。すなわち、この場合、これら磁束φ3,φ4の直流成分のうち、足12,14への流入量は、磁束φ3の直流成分と磁束φ4の直流成分との差のみとなる。特に本実施形態では、磁束φ3と磁束φ4とが対称性を有するようにすることで、これらの直流成分同士が互いに等しくなる。このため、磁束φ3,φ4の直流成分が足12,14に流入することがないため、足12,14を、直流成分の磁束をも考慮した設計とする必要が生じない。換言すれば、一体形成することでトランス部分の磁心(足12,14)を大型化する必要がない。
【0066】
さらに、本実施形態では、足12、接続部20、足16および接続部22を備えて且つコイルW1,W3を貫くループ経路において、リアクトル部分の磁束φ3の交流成分(磁束φ3からその平均値を減算したもの)の方向と、コイルW1によって誘起される磁束φ1の方向とを一致させた。また、足12、接続部20、足18および接続部22を備えて且つコイルW1,W4を貫くループ経路において、リアクトル部分の磁束φ4の交流成分(磁束φ4からその平均値を減算したもの)の方向と、コイルW1によって誘起される磁束φ1の方向とを一致させた。すなわち、先の図2に示したように、磁束φ1が増加する場合には、コイルW1,W3を貫く(コイルW1,W3に鎖交する)ループ経路において磁束φ1と同一方向の磁束φ3が増加し、コイルW1,W4に鎖交するループ経路において磁束φ1とは逆方向の磁束φ4が減少するようにした。また、磁束φ1が減少する場合には、コイルW1,W4に鎖交するループ経路において磁束φ1と同一方向の磁束φ3が減少し、コイルW1,W3に鎖交するループ経路において磁束φ1とは逆方向の磁束φ4が増加するようにした。これにより、これらループ経路からあふれて他に流出する磁束(磁束φ5)を好適に低減することができるため、足14を小型化することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0067】
図3に、本実施形態にかかる磁気部品を示す。なお、図3において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0068】
本実施形態では、コイルW1,W2,W3,W4を、磁心10の各足12,16,18を覆うボビン30に巻き付けた後、これを磁心10の足12,14,16,18に挿入する。ここで、ボビン30は、コイルW1〜W4を巻き付ける部分が一体的に構成されたものである。こうした構成とすることで、磁気部品の製造を容易とすることができる。なお、ボビン30は、たとえば樹脂やプラスチック等の絶縁体によって構成されることで、コイルW1〜W4と磁心10とを絶縁する機能を有することが望ましい。また、磁心10からの漏洩磁束低減のため、ボビン30は、磁心10よりも透磁率の小さい材料を用いることが望ましい。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0069】
図4に、本実施形態にかかる電力変換回路を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0070】
本実施形態では、先の図1に示した足14に代えて、足12,16,18の両側を挟む一対の足14a,14bを設けた。これにより、コイルを鎖交しない足14a,14bが磁気シールドの機能を有することとなるため、磁心10から周囲に漏れる磁束を低減することができる。このため、磁心10の周囲に設ける磁気シールドを削除または小型化することができるため、電力変換回路のいっそうの小型化を図ることができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図5に、本実施形態にかかる電力変換回路を示す。なお、図5において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0072】
上記実施形態では、コイルW3を鎖交する足16とコイルW4を鎖交する足18とのそれぞれにギャップGが形成されていたが、本実施形態では、これら足16,18をダスト等の低透磁率材料にて形成する。具体的には、磁心10のうち足16,18以外の部分をフェライト等で構成し、足16,18をこれよりも透磁率が小さいカーボニル鉄ダスト等のダストコアで構成すればよい。
【0073】
これにより、ギャップGを設ける場合と比較して、漏れ磁束を低減することができるため、漏れ磁束によって誘導される渦電流を低減することができる。また、本実施形態において例示したようにボビン30を設けない場合には、ギャップGを設けるとコイルW3,W4を巻く際に障害となりうるがこれを回避することもできる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0074】
図6に、本実施形態にかかる電力変換回路を示す。なお、図6において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0075】
本実施形態では、コイルW2のターン数N2と、コイルW3のターン数N3と、コイルW4ターン数N4とを互いに同一とする。この場合、磁束φ5をゼロとすることができることから(備考欄参照)、本実施形態では、足14を削除した。これにより、磁心10の構造を簡素化することができる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
図7に、本実施形態にかかる電力変換回路を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0077】
本実施形態では、ダイオードD1,D2の順方向を逆転させた。この場合であっても、コイルW3,W4の電流の流通方向を一方向に規制することができる。このとき、先の図1に示したものとは、磁束φ3,φ4の方向が反転することから、電流Iw3,Iw4の方向が反転し、また、コンデンサC2の電圧の極性も反転する。また、コイルW3の電流が漸増する場合には、コイルW4の電流が漸減して且つ、コイルW4の電流が漸増する場合には、コイルW3の電流が漸減する設定を実現できるため、コンデンサC2に入力される電流のリップルを好適に抑制することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
「交流電圧印加手段について」
先の図1に示したものに限らず、たとえば図8(a)〜図8(c)に例示するものであってもよい。ここで、図8(a)は、先の図1に示した構成において、スイッチング素子SW3,SW4の直列接続体に代えて、コンデンサC3,C4の直列接続体を用いたものである。
【0079】
図8(b)は、先の図1に示した構成において、スイッチング素子SW3,SW4の直列接続体を削除し、スイッチング素子SW2に、コンデンサC5およびコイルW1の直列接続体を並列接続したものである。
【0080】
図8(c)は、スイッチング素子SW1、SW2の接続点にバッテリBを介してコイルW1の中点タップを接続したものである。
【0081】
なお、交流電圧印加手段の印加する正電圧と負電圧との絶対値については、これを必ずしも同一とする必要はない。なお、この場合、上記各実施形態の説明において、同一とすることを前提とした説明は、概して適用できないものの、上記正電圧と負電圧との絶対値の相違が小さい場合には、近似的に適用することは可能である。
【0082】
「コイルW3,W4の設定について」
コイルW3,W4のターン数N3,N4を等しくしなくてもよい。特に、交流電圧印加手段によって印加される正電圧と負電圧との絶対値が等しくないなら、ターン数N3,N4を等しくしても、磁束φ3,φ4の挙動の対称性は崩れる。
【0083】
「コイルに鎖交しない足14について」
この足の数は、1ないし2に限らず、3以上であってもよい。また、先の第3の実施形態(図4)に代えて、接続部20,22との協働で、足12,16,18の全てを外部から遮断するように足14を設けてもよい。
【0084】
上記第5の実施形態(図6)において、足14をその断面積を小さくしつつも設けてもよい。これにより、下記の「備考」欄における理論計算からずれる場合であっても漏れ磁束を好適に抑制することができる。
【0085】
「そのほか」
・整流手段としては、ダイオードD1,D2に限らず、サイリスタ等であってもよい。
【0086】
・足16、接続部20、足18および接続部22を備えるループ経路において、磁束φ3と磁束φ4との方向が同一とならない場合であっても、足12〜18と接続部20,22を備えてトランスおよびリアクトルの磁心を一体的に構成することで、上記第1の実施形態等ほどではないにせよ、磁気部品を小型化することが可能となる。
<備考>
ここでは、先の図1に示した構成において、各モードにおける磁束φ1,φ3,φ4,φ5の時間変化を定量化する。なお、以下では、ターン数N1〜N5が任意の値をとる場合についての一般的な議論をしている。
【0087】
「モード1」
dφ1/dt=Vin/N1 …(c1)
dφ3/dt=(N2・Vin/N1−Vout)/N3 …(c2)
dφ4/dt=−Vout/N4 …(c3)
dφ5/dt
=(1−N2/N3)Vin/N1+(1/N3−1/N4)Vout …(c4)
なお、上記の式(c4)では、「φ5=φ1−φ3+φ4」を時間微分したものを用いた。
【0088】
「モード2」
dφ1/dt=0 …(c5)
dφ3/dt=−Vout/N3 …(c6)
dφ4/dt=−Vout/N4 (c7)
dφ5/dt=(1/N3−1/N4)Vout …(c8)
「モード3」
dφ1/dt=−Vin/N1 …(c9)
dφ3/dt=−Vout/N3 …(c10)
dφ4/dt=(N2・Vin/N1−Vout)/N4 …(c11)
dφ5/dt
=−(1−N2/N4)Vin/N1+(1/N3−1/N4)Vout …(c12)
「モード4」
dφ1/dt=0 …(c13)
dφ3/dt=−Vout/N3 …(c14)
dφ4/dt=−Vout/N4 (c15)
dφ5/dt=(1/N3−1/N4)Vout …(c16)
「モード1とモード3との時間設定」
上記(c1),(c5),(c9),(c13)の記載によれば、モード1〜モード4の各時間を固定してこれらを周期的に繰り返す場合、直流偏磁により磁束φ1の絶対値が過度に大きくならないためには、モード1とモード3との時間が互いに等しくならなければならないことを意味する。ただし、磁束φ1による磁気飽和を解消する手法としてはこれに限らず、各周期でモード1とモード3との少なくとも一方の時間を変動させてモード1とモード3とで、複数周期当たりの時間の和同士が互いに等しくなる設定としてもよい。
【0089】
なお、交流電圧印加手段による正電圧と負電圧とが等しくない場合には、上記の式(c1)〜(c4)と上記の式(c9)〜(c12)とで同一の「Vin」を用いることはできない。このため、モード1〜モード4の各時間を固定してこれらを周期的に繰り返す場合であっても、磁気飽和を回避するためには、モード1とモード3との時間を相違させることが要求される。
【0090】
「φ3,φ4の挙動の対称性について」
ターン数N3とターン数N4とが等しいとすると、上記の式(c2),(c3),(c6),(c7),(c10),(c11),(c14),(c15)の関係より、モード1による磁束φ3の漸増速度と、モード3による磁束φ4の漸増速度とは互いに等しく、磁束φ3,φ4の漸減速度も互いに等しくなる。特に、モード1とモード3との時間が等しい場合、φ3,φ4の一周期における増加量と減少量とも互いに等しくなる。
【0091】
「φ1,φ5の挙動について」
φ1−φ5=φ3−φ4の関係から、「φ1−φ5」の平均値と「φ3−φ4」の平均値とも互いに等しくなる。ここで、「N3=N4」且つ「モード1の時間=モード3の時間」とすると、上記の議論から「φ3−φ4」の平均値はゼロとなる。このため、「φ1−φ5」の平均値もゼロとなる。しかも、「モード1の時間=モード3の時間」とすると、φ1の平均値がゼロとなることからφ5の平均値もゼロとなる。
【0092】
「φ3,φ4とIw3,Iw4との関係について」
図9に、先の図1に示した磁心10の一般的な構成(ギャップの有無を特定しない)を示す。ここで、1点鎖線にて示すループ経路lbにおける磁気抵抗として領域Lμbの磁気抵抗Rbが支配的とすると、磁気回路方程式により、「φ4=N4・Iw4/Rb」が成立する。これは、マックスウェル方程式により、「B=μH」の近似が成立する場合、ループ経路lbにおいて、Hは、透磁率μが特に小さい部分(磁気抵抗が特に大きい部分)で特に大きくなることから、ループ経路lbに沿った場Hの線積分が、この部分の積分によって近似できるとの説明と等価である。
【0093】
また、破線にて示されるループ経路lcについては、領域Lμa,Lμbの磁気抵抗Ra,Rbが支配的とすると、「Ra・φ3+Rb・φ4=N4・I4+N3・Iw3」となる。このため、「Ra・φ3=N3・Iw3」と近似できる。
【0094】
以上の議論から、磁心10内の磁気抵抗にとって領域Lμa,Lμbの磁気抵抗を支配的とすることで、磁束φ3、φ4の変化によって電流Iw3,Iw4の変化を近似することができる。
【0095】
なお、領域Lμaおよび領域Lμb以外の部分に限ってギャップを設けるなどすることで、その部分の磁気抵抗を無視できないほど大きくすると、トランスTによるエネルギ伝送効率の低下を招く。もっとも、このことは、磁心10のうちトランスTに関する部分(図9の領域Lμa,Lμb以外の部分)にギャップを一切設けることができないことを意味しない。たとえばこの部分にギャップを設けて磁場検出素子を設けることなどは可能である。
【符号の説明】
【0096】
10…磁心、W1〜W4…コイル、AVC…交流電圧印加回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧印加手段の出力端子に接続された第1コイルと、前記第1コイルと磁気結合する第2コイルと、コンデンサと、前記第2コイルを流れる電流を前記コンデンサに出力するために用いられる第3コイルおよび第4コイルと、前記第3コイルおよび前記第4コイルの直流電流の流通方向を一方向に規制する整流手段と、磁心とを備え、前記第3コイルおよび前記第4コイルのそれぞれに流れる電流が漸増するときの前記第1コイルに印加される電圧の極性が互いに逆となる電力変換回路において、
前記磁心は、前記第1コイルを鎖交する部分、前記第2コイルを鎖交する部分、前記第3コイルを鎖交する部分、および前記第4コイルを鎖交する部分が一体的に形成されるものであることを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
前記磁心は、前記第3コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分を有し、
該ループ経路において、前記第3コイルに流れる電流の直流成分によって生成される磁束の方向と前記第4コイルに流れる電流の直流成分によって生成される磁束の方向とを同一方向に設定したことを特徴とする請求項1記載の電力変換回路。
【請求項3】
前記磁心は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分を有し、
該ループ経路において、前記第3コイルに流れる電流が増加するときにおける前記第3コイルを鎖交する磁束の交流成分の方向が前記第2コイルを鎖交する磁束の交流成分の方向に一致するようにしたことを特徴とする請求項2記載の電力変換回路。
【請求項4】
前記第3コイルのターン数と前記第4コイルのターン数とが互いに等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換回路。
【請求項5】
前記磁心は、前記第1コイルおよび前記第2コイルを鎖交する第1部分、前記第3コイルを鎖交する第3部分、および前記第4コイルを鎖交する第4部分と、これら第1部分、第3部分および第4部分を並列接続する部分とを備えて且つ、前記第1部分、前記第3部分および前記第4部分に並列に、コイルを鎖交しない部分をさらに備えることを特徴とする請求項2または3記載の電力変換回路。
【請求項6】
前記コイルを鎖交しない部分は、前記第1部分、前記第3部分、および前記第4部分を挟む両側に設けられていることを特徴とする請求項5記載の電力変換回路。
【請求項7】
前記第2コイルのターン数、前記第3コイルのターン数、および前記第4コイルのターン数が互いに等しいことを特徴とする請求項3記載の電力変換回路。
【請求項8】
前記磁心のうち前記第1コイルおよび前記第2コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分、および前記第2コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分によって形成されていることを特徴とする請求項7記載の電力変換回路。
【請求項9】
前記磁心は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分、および前記第2コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分の一対の部分のうちそれらの共通部分以外の部分に、ギャップを備えることを特徴とする請求項8記載の電力変換回路。
【請求項10】
前記磁心は、前記第2コイルおよび前記第3コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分、および前記第2コイルおよび前記第4コイルの双方に鎖交するループ経路を構成する部分の一対の部分のうちそれらの共通部分以外の部分の少なくとも一部の材料の透磁率が他の部分の材料の透磁率よりも小さいことを特徴とする請求項8記載の電力変換回路。
【請求項11】
前記磁心は、前記第1コイルおよび前記第2コイルの双方に鎖交して且つ前記第3コイルおよび前記第4コイルのいずれにも鎖交しないループ経路を構成する部分を除いた部分に、ギャップを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力変換回路。
【請求項12】
前記磁心は、前記第1コイルおよび前記第2コイルの双方に鎖交して且つ前記第3コイルおよび前記第4コイルのいずれにも鎖交しないループ経路を構成する部分の材料の透磁率よりも、それ以外の少なくとも一部の材料の透磁率の方が小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力変換回路。
【請求項13】
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイルおよび前記第4コイルと前記磁心との間に、一体的に形成されたボビンを備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の電力変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−231585(P2012−231585A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97807(P2011−97807)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】