説明

電力変換装置及び冷凍空気調和装置

【課題】高効率・高信頼性が確保できる電力変換装置等を提供する。
【解決手段】電源1により印加される電圧を所定の電圧に変化させる昇圧手段2と、昇圧手段2を流れる電流を別経路に流す転流動作を行うための転流手段4と、昇圧手段2及び転流手段4の出力に係る電圧を平滑した電力を負荷9側に供給する平滑手段3と、昇圧手段2に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、昇圧手段2の昇圧等の電圧可変に係る制御及び転流手段4の転流動作の制御を行う制御手段6とを具備するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及び冷凍空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変電圧・可変周波数のインバータ装置等が実用化されるに従って、各種電力変換装置の応用分野が開拓されている。
【0003】
例えば、電力変換装置に関しては、近年、昇降圧コンバータの応用技術開発が盛んである。一方で、炭化珪素等を材料とするワイドバンドギャップ半導体素子等の開発も盛んに行われている。このような新しい素子に関して、高耐圧であっても電流容量(電流実効値の許容値)の小さい素子に関しては、整流器を中心に実用化されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−160284号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、高効率な新しい素子を実用化するにあたり、例えば電流容量が大きい素子に関しては、高コスト、結晶欠陥等のため、実用化に向けて多くの課題があり、普及にはまだ時間がかかると考えられる。このため、例えば、空気調和装置の圧縮機のモータ等に供給するような電力以上の変換を行う電力変換装置に、新しい素子を用いて高効率化をはかろうとすることは現状では難しい。
【0006】
本発明は、上記課題を考慮し、高効率、高信頼性等を確保することができる電力変換装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電力変換装置は、印加される電圧を所定の電圧に変化させる電圧可変手段と、電圧可変手段を流れる電流を別経路に流す転流動作を行うための転流手段と、電圧可変手段及び転流手段の出力に係る電圧を平滑した電力を負荷側に供給する電流平滑手段と、電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、電圧可変手段の電圧可変に係る制御及び転流手段の転流動作の制御を行う制御手段とを具備するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る電力変換装置によれば、転流動作を行うことができる転流手段を設けることにより、電圧可変手段を流れる電流を別経路に転流させることができる。このため、例えば電圧可変手段の動作において、平滑手段側から電圧可変手段側(電源側)に流れる電流を低減させることができ、例えば電圧可変手段に用いる素子の電流容量等に関係なく、このような電流による損失、通流損を低減することができる。そして、転流手段の転流動作により損失が小さくなるため、システム全体として高効率化をはかることができる。
【0009】
また、平滑手段側から電圧可変手段側に流れる電流の低減をはかることで、電流発生に起因する雑音端子電圧レベルを低減することができる。このため、EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁両立性)対策に有効である。特に、ノイズフィルタの小型化、低コスト化をはかることができる。
【0010】
そして、例えば、システムにおいて用いられるスイッチング素子におけるアーム短絡等の恐れがなくなるため、高信頼性設計を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る電力変換装置を中心とするシステムを表す図である。
【図2】電力変換装置を中心とするシステムの別例を表す図である。
【図3】実施の形態1に係るシステムの動作モードの例を示した図である。
【図4】転流手段4を動作させない場合の信号及び電流波形を示す図である。
【図5】駆動信号saの基準信号生成のための手段構成例を説明する図である。
【図6】駆動信号sa等の生成のための手段構成例を説明するための図である。
【図7】PWM信号作成の一例を説明するための図である。
【図8】リカバリー電流発生経路の一例を示す図である。
【図9】転流手段4を動作させる場合の信号及び電流波形を示す図である。
【図10】実施の形態2に係る電力変換装置を中心とするシステムを表す図である。
【図11】実施の形態2に係る電力変換装置を中心とするシステムを表す図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る冷凍空気調和装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態に係る電力変換装置等について図面等を参照しながら説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置を中心とするシステム構成を表す図である。はじめに、図1における高効率に電力変換を行うことができる電力変換装置を有するシステム構成について説明する。
【0014】
図1に示すシステムは、電源1と負荷9との間に電力変換装置が接続されている。電源1は、例えば直流電源、単相電源、三相電源等の各種電源を用いることができる。ここでは、直流電源であるものとして説明する。また、負荷9は、モータ等、モータ等に接続するインバータ装置等である。
【0015】
電力変換装置は、電源1による印加電圧を所定電圧に昇圧する昇圧手段2、必要なタイミングで昇圧手段2を流れる電流を異なる経路(別経路)に転流する転流手段4及び昇圧手段2、転流手段4の動作に係る電圧(出力電圧)を平滑する平滑手段3を有している。また、平滑手段3で得られた電圧を検出する電圧検出手段5、電圧検出手段5の検出に係る電圧に基づいて、昇圧手段2及び転流手段4を制御するための制御手段6を有している。さらに、制御手段6からの駆動信号saを昇圧手段2に合わせた駆動信号SAにして昇圧手段2に伝達する駆動信号伝達手段7及び制御手段6からの駆動信号(転流信号)sbを転流手段4に合わせた駆動信号SBにして転流手段4に伝達する転流信号伝達手段8を有している。
【0016】
本実施形態の昇圧手段2は、例えば電源1の正側又は負側に接続されたリアクトル21、その後段に接続される昇圧用スイッチ22(電力可変用スイッチ22)及び昇圧用整流器23(電力可変用整流器23)で構成される。ここで、図1に示すように、昇圧用整流器23については、B点側をアノード側とし、C点側をカソード側とする。例えばトランジスタ等のスイッチング素子を有する昇圧用スイッチ22は、駆動信号伝達手段7からの駆動信号SAに基づいて開閉を行い、昇圧用スイッチ22を介した電源1の正側と負側との間の導通、非導通を制御する。スイッチング素子として用いる半導体素子の種類については特に限定しないが、電源1からの電力供給に耐えることができる高耐圧の素子等を用いる。ここで、図1では示していないが、昇圧用スイッチ22は、開閉動作を行うための電力供給をスイッチ動作用の電源から受けている。また、例えばpn接合ダイオード等で構成する昇圧用整流器23は、電源1側から負荷9側へ電流(電力)を整流する。本実施の形態では、電源1から負荷9に供給する電力の大きさに合わせて、電流容量が大きい整流器を用いるものとする。また、昇圧用整流器23における電力(エネルギー)損失を抑えるため、順方向電圧が低い(Vf特性がよい)素子を用いて整流を行う。
【0017】
また、本実施の形態の転流手段4は、変圧器41と、転流用整流器42と、変圧器41を駆動する変圧器駆動回路43から構成される。図1では変圧器41の1次側、2次側巻線の極性は同一としている。そして、変圧器41の2次側巻線と整流器42とが直列接続される。さらに、転流用整流器42は、昇圧手段2の昇圧用整流器23と並列接続される。
【0018】
変圧器41は変圧器駆動回路43と転流動作手段を構成する。1次側巻線に電圧印加し励磁電流を流すことで2次側巻線に電流を発生し、昇圧手段2に流れる電流を転流させる。
【0019】
転流用整流器42は、転流に係る電流(別経路を流れる電流)を整流する。ここで、転流用整流器42は、例えば電気的特性(特にリカバリー特性)に優れ、電流容量が小さく逆回復の時間がはやい半導体素子とする。また、電源1から負荷9に供給する電力の経路上にあるため、高耐圧の素子とする必要がある。ここでは、特にリカバリー特性の良いシリコン製ショットキーバリアダイオード、またはSiC(炭化珪素)、GaN(ガリウムナイトライド、窒化ガリウム)、ダイヤモンド等を材料とするワイドバンドギャップ半導体の素子を転流用整流器42として用いる。
【0020】
変圧器駆動回路43は、さらに、例えば変圧器41に電力を供給するための変圧器用電源45と転流用スイッチ44とで構成される。例えばトランジスタ等のスイッチング素子を有する転流用スイッチ44は、転流信号伝達手段8からの転流信号SBに基づいて開閉を行い、変圧器用電源45から変圧器41(1次巻線側)への電力供給、供給停止を制御する。変圧器用電源45は、転流手段4に転流動作を行わせるための電源となる。そして、変圧器用電源45が変圧器41に印加する電圧については、昇圧手段2、転流手段4により平滑手段3に印加される電圧(出力電圧)よりも低くする。ここで、図1では特に示していないが、ノイズ対策、故障時の回路保護等を考慮して、変圧器用電源45、転流用スイッチ44及び変圧器41の1次側巻線を接続している配線経路に、制限抵抗、高周波コンデンサ、スナバ回路、保護回路等を必要に応じて挿入するようにしてもよい。また、変圧器用電源45については、昇圧用スイッチ22の開閉動作を行わせるための電源と共通にしてもよい。
【0021】
また、図1の変圧器41では、励磁電流をリセットするリセット巻線を設けていないが、必要に応じて1次側巻線にリセット巻線を付加し、更に整流器等を設けるようにしてもよい。これにより励磁エネルギーを変圧器用電源45側に回生させることができ、さらなる高効率化が可能となる。
【0022】
平滑手段3は、例えば平滑用のコンデンサからなり、昇圧手段2等の動作に係る電圧を平滑して負荷9に印加する。また、電圧検出手段5は平滑手段3によって平滑された電圧(出力電圧Vdc)を検出する。ここで、分圧抵抗によるレベルシフト回路等で構成される。また、必要に応じて、制御手段6が演算処理等を行う信号(データ)にすることができるように、アナログ/デジタル変換器等を付加してもよい。
【0023】
図2は電力変換装置を中心とするシステム構成の別例を表す図である。図2の電力変換装置は、電流検出素子10及び電流検出手段11を有している。電流検出素子10は、電源1と昇圧用スイッチ22の負側における接続点との間における電流を検出するもので、例えばカレントトランスやシャント抵抗等を用いる。
また、電流検出手段11は、電流検出素子10の検出に係る電流を信号として送る際に、制御手段6が処理可能な適正値(Idc)の信号に変換し、制御手段6に入力されるようにする。このため、増幅回路、レベルシフト回路、フィルタ回路等で構成される。ここで、電流検出手段11が行っている機能を制御手段6が代わりに処理できる場合は、回路等を適宜省略してもよい。
【0024】
図2に示すように、電圧検出手段5の検出に係る電圧、電流検出素子10及び電流検出手段11の検出に係る電流に基づいて、制御手段6は駆動信号の生成、送信処理を行う。図2の電力変換装置では、電圧検出手段5、電流検出素子10及び電流検出手段11の両方を有しているが、いずれか一方を設け、電流のみ、電圧のみに基づいて、制御手段6が駆動信号生成等の処理を行うようにしてもよい。
【0025】
制御手段6は、マイクロコンピュータや、デジタルシグナルプロセッサ等の演算装置、演算装置同様の機能を内部に有する装置等で構成される。本実施の形態では、例えば電圧検出手段5、電流検出素子10及び電流検出手段11の検出に係る電圧、電流に基づいて、昇圧用スイッチ22、転流用スイッチ44を動作させる指示のための信号を生成し、昇圧手段2、転流手段4を制御する。ここで、図1では示していないが、制御手段6は、処理動作を行うための電力供給を、制御手段動作用の電源から受けている。この電源については、変圧器用電源45と共通にしてもよい。また、本実施の形態では、制御手段6は昇圧手段2及び転流手段4の動作を制御するものとして説明するが、これに限定するものではない。例えば、2つの制御手段が、昇圧手段2、転流手段4をそれぞれ制御するようにしてもよい。
【0026】
駆動信号伝達手段7は、例えば、バッファやロジックIC、レベルシフト回路等により構成され、駆動信号saを駆動信号SAに変換して昇圧手段2に伝達する。ただし、例えば、制御装置6内にその機能を内蔵する場合等であれば、適宜省略可能である。その場合、制御装置6が送る駆動信号saを駆動信号SAとして、昇圧用スイッチ22の開閉操作を直接行うようにすればよい。また、転流信号伝達手段8も、駆動信号伝達手段7と同様に、通常、バッファやロジックIC、レベルシフト回路等により構成され、転流信号sbを転流信号Sbに変換して転流手段2に伝達する。ただし、制御装置6内にその機能を内蔵する場合等であれば、適宜省略可能である。その場合は、制御装置6が送る駆動信号sbを駆動信号SBとして、転流用スイッチ44の開閉操作を直接行うようにすればよい。以後、駆動信号SAは制御手段6からの駆動信号saと同じであるものとし、転流信号SBは転流信号sbと同じであるものとして説明する(このため、駆動信号sa、転流信号sbとする)。
【0027】
次に、図1等のシステムに関する動作について説明する。
【0028】
図3は、実施の形態1に係るシステムの動作モードの例を示した図である。本システムにおける電力変換装置の電力変換動作(本実施の形態では昇圧動作)は、昇圧チョッパーに整流器の転流動作を加えたものとなる。このため、昇圧用スイッチ22及び転流用スイッチ44の開閉状態の組み合わせに基づいて、合計4モードの動作モードが存在する。
【0029】
まず、昇圧用スイッチ22がオン(閉止)、且つ転流用スイッチ44がオフ(開放)の状態の場合を考える。通常、昇圧用整流器23は、リカバリー特性が良好な転流用整流器42と比較して、順方向電圧が低い素子を用いる。また、変圧器41の巻線はインダクタ成分であるため、励磁電流を流さない場合には電流が流れない。よって、転流用スイッチ44がオフである本ケースについては、転流手段4を設けた経路(別経路)では電流は流れない。そして、昇圧用スイッチ22はオンであるから、図3(a)の経路で電源1の正側と負側とが導通して電流が流れる(このため、昇圧用整流器23を介した経路には電流が流れない)。これにより、リアクトル21にエネルギーを蓄積することができる。
【0030】
次に、昇圧用スイッチ22がオフ、且つ転流用スイッチ44がオフの場合を考える。この場合も、転流用スイッチ44がオフであるため、転流手段4を設けた経路では電流は流れない。また、昇圧用スイッチ22がオフであるから、図3(b)の経路(昇圧用整流器23を介した経路)でリアクトル21のエネルギーを、平滑手段3を介して負荷9側に供給することができる。
【0031】
さらに昇圧用スイッチ22がオン、且つ転流用スイッチ44がオンの場合を考える。この場合、転流用スイッチ44がオンであるが、昇圧用スイッチ22も同時にオン状態であり、電源1側のインピーダンスが低いため、転流手段4を設けた経路ではほとんど電流は流れない。このため、図3(c)の経路で電流が流れ、リアクトル21にエネルギーを蓄積することができる。本動作モードは制御として行わない動作モードである。転流信号SBの伝達遅延等により、瞬間的に本動作モードとなる場合があるが、使用上、特に問題にならない。
【0032】
そして、昇圧用スイッチ22がオフ、且つ転流用スイッチ44がオンの場合を考える。この場合、昇圧用スイッチ22がオフであるため、昇圧用整流器23を介して負荷9側に電流が流れ込む(電流経路1)。また、転流用スイッチ44もオンしているため変圧器41が励磁され、図3(d)の通り、転流手段4を設けた経路でも電流が流れる(電流経路2)。そして、この状態が一定時間経過すると、完全に転流し、転流手段4を設けた経路のみに電流が流れることとなる。
【0033】
以上の各動作モードより、昇圧用スイッチ22がオフ、且つ転流用スイッチ44がオン時に転流動作が生ずるものの、昇圧用スイッチ22の開閉によるリアクトル21へのエネルギー蓄積動作は、昇圧チョッパーを踏襲したものとなる。よって昇圧用スイッチ22がオン時間Ton、オフ時間Toff で、繰り返しスイッチング(開閉)を行うと、C点には次式(1)の平均電圧EC が印加され、昇圧が行われることになる。ここでは簡単化のため、電源1の電圧をE1 とする。
【0034】
C =(Ton+Toff )・E1 /Toff …(1)
【0035】
図4は、転流手段4を動作させない(転流信号sbを送信しないまたはオフ信号を送信する)場合の駆動信号sa及び各部電流波形I1 〜I3 を示す図である。ここで、駆動信号saはPWM信号であり、HI側をアクティブ方向(オン方向)とする。駆動信号saがオンすると昇圧用スイッチ22がオンし(閉じ)、オフすると昇圧用スイッチ22がオフする(開く)。
【0036】
電流I1 はリアクトル21を流れる電流を示す。また、電流I2 は昇圧用スイッチ22を流れる電流を示し、I3 は昇圧用整流器23を流れる電流を示す。ここで、各電流波形は、電源1投入より負荷9や出力電圧Vdcが一定出力になるように駆動信号saのオン時間・オフ時間を制御し、十分時間が経過した後の例を示している。そして、駆動信号saのオン時間とオフ時間の比率(デューティ比)はほぼ一定としている。
【0037】
図5は、制御手段6が行う駆動信号sa生成のための基準信号生成の一例を説明するための図である。図5に示すように、本実施の制御手段6はフィードバック制御器101を有しているものとする。
【0038】
フィードバック制御器101は、電圧検出手段5の検出により得られた実際の出力電圧Vdcと設定された目標電圧Vdc*(指令値)とに基づいて、例えば比例積分制御(PI制御)を行い、駆動信号saを生成するための基準信号(デューティ。以下、単に基準信号と称す)を生成する。
【0039】
このとき、実際の出力電圧Vdcが目標電圧Vdc*に近づくようにフィードバック制御を実施する。基準信号により駆動信号saのオン時間が逐次修正・設定され、駆動信号saのデューティ比に反映される。その結果、一定時間経過後には、出力電圧Vdcと目標電圧Vdc*とは定常偏差を除けばほぼ同一となる。
【0040】
実用する場合には、目標電圧Vdc*の値を、制御手段6内の記憶部等に内部メモリーとしてマップ化しておき、運転状況に応じて値を変化させるようにしてもよい。また、制御手段6の外部の記憶装置にメモリーしておいて、制御手段6内に読み込み、制御を実行するようにしてもよい。
【0041】
また、図2のように、電流検出素子10及び電流検出手段11を有し、電流の検出を行っている場合には、例えば図5(b)に示すように、フィードバック制御器102をフィードバック制御器101の後段側に接続する。
【0042】
そして、出力電圧Vdcと目標電圧Vdc*とに基づいて、フィードバック制御器101が電流指令値Idc*を出力する。
【0043】
そして、電流指令値Idc*と電流検出素子10及び電流検出手段11の検出に係る電流検出値Idcとに基づいて、フィードバック制御器102は、例えばPI制御を行って基準信号を生成する。このとき、実際の出力電流Idcと目標値Idc*が近づくように制御を実施し、基準信号により駆動信号saのオン時間を逐次修正・設定する。この場合も一定時間経過後、Vdc、Idcはほぼ目標値となる(定常偏差除く)。
【0044】
ここで、使用条件によっては、制御のむだ時間等の考慮が必要となってくる。このため、フィードバック制御器101、102には、状況に応じ、比例積分制御に微分制御を組み合わせたPID制御を行わせるようにしてもよい。
【0045】
また、電流指令値Idc*についても、例えば制御手段6の記憶部等にマップ化したデータを記憶させておき、運転状況に応じて値を変化させればよい。また、制御手段6の外部の記憶装置にメモリーしておいて、制御手段6内に読み込み、制御を実行するようにしてもよい。また、電流のかわりに電力等の代替量で制御を実行してもよい。
【0046】
図6は制御手段6の駆動信号sa等の生成の一例を説明するための図である。ここでは、図6(a)について説明する。図6(a)は、転流手段4に転流動作をさせない(転流手段4がない、または転流信号sbをオフ出力する)場合の、制御手段6における電圧可変制御を実現する手段の構成を表している。図6(a)に示す制御手段6の構成では、基準信号生成手段201、第1の三角波信号生成手段202、PWM信号生成手段211及びPWM信号発生手段212を有しているものとする。
【0047】
図6(a)において、基準信号生成手段201は、駆動信号saを生成するための基準信号を生成する。基準信号生成手段201は、上述した図5におけるフィードバック制御器101又はフィードバック制御器101と102との組み合わせに相当する手段である。
【0048】
また、第1の三角波信号生成手段202は、あらかじめ設定した周期、振幅等を有する第1の三角波信号を生成する。そして、PWM信号生成手段211は、第1の三角波信号生成手段202が生成した第1の三角波信号と基準信号生成手段201が生成した基準信号とを比較し、信号の大小関係に基づいてPWM信号を生成し、昇圧用スイッチ22のオンオフ状態を定める。
【0049】
図7は、PWM信号生成の一例を説明するための図である。ここでは、まず、図7(a)について説明する。例えば、第1の三角波信号生成手段202が生成した第1の三角波信号と基準信号生成手段201が生成した基準信号とを比較し、第1の三角波信号よりも基準信号が大きければ駆動信号saをHI(オン)とする。一方、基準信号が第1の三角波信号以下であれば駆動信号saをLow(オフ)とする。ここで、アクティブ方向やスレッショルド(しきい値)をHIと判断する側に含めるか否か等は必要に応じて変更してよい。
【0050】
そして、例えば、PWM発生器等で構成するPWM信号発生手段212は、昇圧用スイッチ22を動作させるための駆動信号saを駆動信号伝達手段7に送信する。このようにして、制御手段6は昇圧用スイッチ22のオンオフ(開閉)を制御する。
【0051】
以上のようにして、制御手段6は駆動信号saを生成する。さらに図1及び図4を参照しながら駆動信号saと流れる電流との関係について説明する。リアクトル21を流れる電流I1 は、電流I1 は図1のA点で分岐した後、昇圧用スイッチ22を流れる電流I2 と昇圧用整流器23を流れる電流I3 とに分流する。これを次式(2)で示す。
【0052】
1 =I2 +I3 …(2)
【0053】
昇圧用整流器23に順方向電流が流れている状態で駆動信号saにより昇圧用スイッチ22をオンする(閉じる)と、A点−D点間が導通するため、図1のB点における電位は、ほぼ図1のD点における電位と等しくなる。たとえば、昇圧用スイッチ22に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)や電界効果トランジスタ(MOS)等の素子を用いている場合には、素子のオン電圧がB点とD点の電位差となる(B点の電位は電源1の負側電位とほぼ等しくなる)。一方、平滑手段3により図1のC点における電位は、充電電位状態にほぼ保持されている。よって昇圧用スイッチ22を閉じると、昇圧用整流器23にはC点−B点間の電位差分、逆バイアス電圧が印加され、昇圧用整流器23はオフ動作に移行する。
【0054】
図8は、リカバリー電流の流れを説明するための図である。昇圧用整流器23にpn接合ダイオード等を用いている場合、昇圧用整流器23が逆回復(逆方向の電流を阻止)するまでの間、図8に示すような経路で短絡電流が流れることとなる(以後、この短絡電流をリカバリー電流と称す)。そして、負荷9(平滑手段3)側から電源1側に流れようとするリカバリー電流により回路損失が増大する。また、本電流がコモンモード電流を変位させる要因となり、雑音端子電圧・放射雑音等のレベルが上昇する。このため、ノイズ対策に費用がかかる。また、ノイズフィルタ(図示せず)が大型になり、設置スペースの自由度が制限される。
【0055】
また、通常、整流器等においては、電流容量増加に伴い、蓄積キャリア量は増加していく傾向にある。そのため、電流容量が増加すると、逆回復の遅れ等によりリカバリー電流も増加していくこととなる。また、印加する逆バイアス電圧が大きくなることでも、リカバリー電流は増加していくこととなる。
【0056】
そこで、本実施の形態では、電流容量の大きい昇圧用整流器23に対して、高い逆バイアス電圧を印加して逆回復を行うのではなく、転流用の別経路を設け、昇圧用スイッチ22をオンする(閉じる)直前のタイミングで、転流手段4の変圧器41及び転流用整流器42を介して低い逆バイアス電圧を昇圧用整流器23に印加して逆回復させてから、昇圧用スイッチ22をオンするように制御(以下、転流制御と称す)する。
【0057】
このため、駆動信号saをオンする直前に、転流手段4の転流信号sbをオンし、変圧器41を介して昇圧用整流器23に流れている電流が転流用整流器42に転流するようにするものである。
【0058】
ここで、駆動信号saを生成するための基準信号に関しては、転流制御を行うかどうかにかかわらず、上述したようにフィードバック制御器101、102(基準信号生成手段201)によるPI制御等を行い、駆動信号saのオン時間を設定する(図5(a)、(b)参照)。
【0059】
図9は、転流手段4を動作させる(転流信号sbを送信する)場合の駆動信号sa、転流信号sb及び電流波形I1 〜I5 を示す図である。ここで、転流信号sbはPWM信号であり、HI側をアクティブ方向(オン方向)とする。また各電流波形は、電源1投入より負荷9が一定出力になるように駆動信号saのオン時間・オフ時間を制御し、十分時間が経過した後の例を示している。そして、駆動信号saのデューティはほぼ一定値を示している。またI1 〜I3 に関しては図3で説明したことと同様の部分を流れる電流を表す。
【0060】
次式(3)で示すように、電流I3 はB点で分岐した後、昇圧用整流器23を流れる電流I4 と変圧器41の2次側巻線及び転流用整流器42を流れる電流I5 に分流する。
【0061】
3 =I4 +I5 …(2)
【0062】
ここで、図6(b)について説明する。図6(b)は、転流手段4に転流動作をさせる(転流信号sbを送信する)場合の、制御手段6における電圧可変制御を実現する手段の構成を表している。図6(b)に示す制御手段6の構成では、図6(a)と同様の基準信号生成手段201、第1の三角波信号生成手段202、PWM信号生成手段211及びPWM信号発生手段212を有している。さらに、図6(b)の制御手段6の構成では、第2の三角波信号生成手段203、転流信号生成手段221及び転流信号発生手段222を有しているものとする。
【0063】
第2の三角波信号生成手段203は、第1の三角波信号生成手段202が生成する第1の三角波信号に対して、所定のヒステリシス幅を有する第2の三角波信号を生成する。
【0064】
そして、転流信号生成手段221は、第1の三角波信号生成手段202が生成した第1の三角波信号、第2の三角波信号生成手段203が生成した第2の三角波信号及び基準信号生成手段201が生成した基準信号を比較し、転流信号sbを生成する。
【0065】
次に図7(b)に基づいて、3つの信号を比較した転流信号sbの生成について説明する。例えば、第1及び第2の三角波信号の立ち下がり区間(後半)において、第2の三角波信号と基準信号とが同じ値になったときに第1の三角波信号が基準信号より大きければ転流信号sbをオンする(これにより転流用スイッチは閉じる)。一方、第1の三角波信号と基準信号とが同じ値になったときに第2の三角波信号が基準信号より小さければ転流信号sbをオフする(これにより転流用スイッチは開く)。
【0066】
ここでは、第1の三角波信号、第2の三角波信号、基準信号が上記のような関係を満たすことで、転流信号sbのオン又はオフを切り換えているが、このとき、例えば、転流手段4のオンタイミング(転流動作開始タイミング)は、転流信号sbの出力から変圧器41を駆動し、転流用整流器42への転流開始するための遅延時間等を考慮して設定するとよい。また、転流手段のオフタイミングについて、変圧器駆動回路43の遅延時間、昇圧用整流器23の逆回復時間(通常数百ns〜数μs)、転流用整流器42の逆回復時間(通常数ns〜数百ns)等を考慮して、昇圧用スイッチ22をオンするタイミングを含む所定の時間内に転流動作を停止させるような設定ができるようにしてもよい。この場合、駆動信号sa・転流信号sbのオンオフタイミングで調整してもよいし、あるいは駆動信号伝達手段7や転流信号伝達手段8内に、所定の遅延時間を得るための遅延回路を含める等で時間調整を行ってもよい。さらに、信号のアクティブ方向等は必要に応じて変更してよい。ここで、三角波信号において立ち下がり区間(後半)であるかどうかの区間判定は、三角波信号生成時のタイマー等を利用して、例えば周期的に前半か後半かを判断する等して行えばよい。また、三角波信号の時間管理(経過時間をカウント)により、信号オンタイミング・オフタイミングの判断に基づいて判定を行ってもよい。
【0067】
また、ここでは、第1・第2の三角波信号と基準信号とに基づいて転流信号sbを生成したが、このような生成に限定するものではない。例えば、図9(c)に示すように、第1の三角波信号と第2の三角波信号とのヒステリシス量に相当するオフセット量を基準信号に持たせた第2の基準信号を生成し、2つの基準信号と第1の三角波信号とに基づいて転流信号sbを生成することも可能である。
【0068】
そして、例えば、PWM発生器等で構成する転流信号発生手段222は、転流用スイッチ44を動作させるための転流信号sbを転流信号伝達手段8に送信する。このようにして、制御手段6は転流用スイッチ44の開閉を制御する。
【0069】
以上のようにして、制御手段6は転流信号sbを生成する。次に図1及び図9を参照しながら駆動信号sa、転流信号sbと流れる電流との関係について説明する。駆動信号saをオンする(昇圧用スイッチ22をオンする)直前で転流信号sbがオンすると、励磁電流により変圧器41の2次側巻線に電流が流れ始める。よって、昇圧用整流器23側と転流用整流器42側(別経路)に電流が分流して流れ始める。その後、転流信号sbのオン状態を維持すると、昇圧用整流器23側に電流が流れなくなり、転流用整流器42側に、全て電流が流れることとなる(転流完了)。
【0070】
このとき、変圧器用電源45に係る印加電圧が昇圧手段2の出力電圧(C点−D点間電位等)と比較して十分低い電圧になるように設定しておくことで、低い逆バイアス電圧でも昇圧用整流器23をオフ(逆回復)させることが可能となる。
【0071】
そして、この状態で駆動信号saをオンする。このとき、転流用整流器42において逆回復動作が行われる。この場合にもリカバリー電流は生じる。しかしながら、転流用整流器42の逆回復における通流時間は昇圧用整流器23と比較してごく短時間であるため、転流用整流器42に必要とされる実効電流の値は小さくてすむ。よって蓄積キャリア量の少ない、小電流容量の素子を用いることでき、昇圧用整流器23と比較してリカバリー電流低減が可能となる(ただし、ピーク電流は考慮して素子を選定する)。
【0072】
以上の結果、実施の形態1のシステムでは、電力変換装置に転流手段4を設け、昇圧手段2を流れる電流を別経路で平滑手段3側に転流させるようにすることで、例えば昇圧用スイッチ22がオンする前に昇圧用整流器23を逆回復させ、昇圧用スイッチ22がオンすることで流れるリカバリー電流を、順方向電圧は低いが多くのリカバリー電流が流れる昇圧用整流器23ではなく、逆回復に係る時間が短く、リカバリー特性のよい転流用整流器42を介して流れるようにすることで、電力変換装置におけるリカバリー電流を低減することができる。また、転流動作が行われていないとき(通常時)には、順方向電圧が低い昇圧用整流器23を電流が流れることになるため、昇圧手段2の電力変換における動作中の損失も抑えることができる。このため、例えば、昇圧用整流器23として電流容量が大きい素子を用いる等しても、昇圧手段2における素子の電流容量、素子のリカバリ特性等に関係なく、リカバリー損失・通流損を低減することができる。このため、転流手段4の転流動作等を行うものの、システム全体として、リカバリー電流に起因する損失、及びノイズ量を低減することが可能となる。
【0073】
また、回路損失が抑制され、また雑音端子電圧・放射雑音等のレベルが低減する。よって、ノイズフィルタを小型化することができ、コスト低減等が可能となる。そして、EMC対策に有効である。
【0074】
また、昇圧用スイッチ22を動作させるための駆動電源(ゲート駆動用電源)、制御装置6の処理動作を行わせるための電源のいずれか一方と、変圧器用電源45とを共通の電源にすることができるので、新たに電源を作成する必要がなくなり、コストアップを避けることができる。
【0075】
また、転流用整流器42にワイドギャップバンド半導体を用いるようにしたので、低損失の電力変換装置を得ることができる。また、電力損失が小さいため、素子の高効率化をはかることができる。ワイドギャップバンド半導体は許容電流密度が高いため、素子の小型化をはかることができ、素子を組み込んだ手段も小型化することができる。ここで、転流用整流器42だけでなく、例えば転流用スイッチ44等、システム全体として損失に影響しない場合には、他の素子にワイドギャップバンド半導体を用いることもできる。
【0076】
ここで、転流用整流器42には、ワイドギャップバンド半導体の他にも、例えば順電圧が低く、ロスの少ない高耐圧なショットキーバリアダイオード等を用いてもよい。これらの素子は、電流実効値の許容値が大きい仕様になるにつれ、結晶欠陥の増大や、コストアップが大きくなる。本実施の形態の電力変換装置(システム)では、別経路での電流が流れる時間が短いため、転流手段における整流器は、電流実効値の許容値が小さい(電流容量が小さい)素子を使用することができ、コストパフォーマンス良好な高効率の電力変換装置を実現することができる。
【0077】
また、変圧器41を介して昇圧手段2、変圧器41の2次側巻線及び転流用整流器42と変圧器駆動回路43、制御手段6及び転流信号sbとの間を絶縁することができるため、転流信号sb(転流信号SB)の送信を比較的簡易に行うことができる。そして、高い電圧が印加される手段と低い電圧で動作する手段とを電気的に分離させることができる。また、安全性、信頼性が高いシステムの構築を行うことができる。ここで、本実施の形態では変圧器41と変圧器駆動回路43とにより転流動作手段を構成しているが、上記のような効果は発揮できない可能性はあるものの、電流を別経路に転流する転流動作を行うことができれば手段構成を変更することができる。
【0078】
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置を中心とするシステム構成を表す図である。次に、図1と同様に高効率に電力変換を行うことができる装置を有するシステム構成について説明する。
【0079】
図10では、電源1を交流電源(単相)としている点及び整流器51a〜51dを具備している点が、実施の形態1(図1等)と比較して異なっている。ダイオード等の整流器51a〜51dは、ダイオードブリッジを構成し、電源1(交流)により供給される電流(電力)を整流する。
【0080】
図11は実施の形態2のシステムの代表的な動作に係る電流の流れを示す図である。図11(a)は、整流器51a・51d及び昇圧用スイッチ22を電流が流れる場合である。このとき、昇圧用スイッチ22がオンしており、かつ変圧器駆動回路43が駆動していない(変圧器6が動作していない)状態である。
また、図11(b)は、整流器51a・51d及び昇圧用整流器23を電流が流れる場合である。このとき、昇圧用スイッチ22がオフしており、かつ変圧器駆動回路43が駆動していない状態である。
そして、図11(c)は、整流器51a・51d及び昇圧用整流器23・転流用整流器42を電流が流れる場合である。このとき昇圧用スイッチ22がオフしており、かつ変圧器駆動回路43が駆動している状態である。
【0081】
ここで、図11(b)の状態(昇圧用スイッチ22オフ)から図11(a)の状態に移行する直前(昇圧用スイッチ22オン直前)に、図11(c)に示すように、変圧器駆動回路43を駆動して転流制御を行うことで、リカバリー電流を低減させることができる。
【0082】
また、整流器51b・51cに電流が流れる場合も同様に、昇圧用スイッチ22のオン直前に変圧器駆動回路43を駆動させて転流制御を行うようにすることで、リカバリー電流低減等が可能となる。
【0083】
以上のように、電源1が単相交流電源である場合においても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0084】
ここでは電源1が単相交流電源である場合、直流側(整流器51a〜51dより負荷9側)に電圧を可変させるための昇圧用スイッチ22(電圧可変用スイッチ)を設ける電力変換装置を例として説明したが、他の構成の電力変換装置にも適用することができる。例えば、交流側(整流器51a〜51dより電源1側)に昇圧用スイッチ22(電圧可変用スイッチ)を設けるように展開することも可能である。また、電源1が三相交流電源の場合に、供給される電力を変換する電力変換装置にも展開可能である。
【0085】
実施の形態3.
上述の実施の形態では、転流手段4が転流の対象とする手段を昇圧手段2とし、電源1の電圧を昇圧した電力変換を行う電力変換装置について説明したが、これに限定するものではない。昇圧手段2の代わりに、例えば降圧手段、昇降圧手段等の電圧を変化させることができる電圧可変手段を適用してた電力変換装置においても、上述した効果を奏することができる。
【0086】
実施の形態4.
図12は本発明の実施の形態4に係る冷凍空気調和装置の構成図である。本実施の形態では、上述の実施の形態における電力変換装置を有する冷凍サイクル装置の一例として冷凍空気調和装置について説明する。図12の冷凍空気調和装置は、熱源側ユニット(室外機)300と負荷側ユニット(室内機)400とを備え、これらが冷媒配管で連結され、主となる冷媒回路(以下、主冷媒回路と称す)を構成して冷媒を循環させている。冷媒配管のうち、気体の冷媒(ガス冷媒)が流れる配管をガス配管500とし、液体の冷媒(液冷媒。気液二相冷媒の場合もある)が流れる配管を液配管600とする。
【0087】
熱源側ユニット300は、本実施の形態においては、圧縮機301、油分離器302、四方弁303、熱源側熱交換器304、熱源側ファン305、アキュムレータ306、熱源側絞り装置(膨張弁)307、冷媒間熱交換器308、バイパス絞り装置309及び熱源側制御装置310の各装置(手段)で構成する。
【0088】
圧縮機301は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。ここで、圧縮機301は、インバータ装置等を備え、運転周波数を任意に変化させることにより、圧縮機301の容量(単位時間あたりの冷媒を送り出す量)を細かく変化させることができるものとする。また、例えば、上述した各実施の形態における電力変換装置が、圧縮機301(モータ)を駆動させる電力を供給する電源1と負荷9となるインバータ装置、圧縮機301等との間に取り付けられている。
【0089】
油分離器302は、冷媒に混じって圧縮機301から吐出された潤滑油を分離させるものである。分離された潤滑油は圧縮機301に戻される。四方弁303は、熱源側制御装置310からの指示に基づいて冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換える。また、熱源側熱交換器304は、冷媒と空気(室外の空気)との熱交換を行う。例えば、暖房運転時においては蒸発器として機能し、熱源側絞り装置307を介して流入した低圧の冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を蒸発させ、気化させる。また、冷房運転時においては凝縮器として機能し、四方弁303側から流入した圧縮機301において圧縮された冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させる。熱源側熱交換器304には、冷媒と空気との熱交換を効率よく行うため、熱源側ファン305が設けられている。熱源側ファン305についても、上述の各実施の形態1に記載した電力変換装置を介して電力供給を行い、例えば負荷9となるインバータ装置においてファンモータの運転周波数を任意に変化させてファンの回転速度を細かく変化させるようにしてもよい。
【0090】
冷媒間熱交換器308は、冷媒回路の主となる流路を流れる冷媒と、その流路から分岐してバイパス絞り装置309(膨張弁)により流量調整された冷媒との間で熱交換を行う。特に冷房運転時において冷媒を過冷却する必要がある場合に、冷媒を過冷却して負荷側ユニット400に供給するものである。バイパス絞り装置309を介して流れる液体は、バイパス配管を介してアキュムレータ306に戻される。アキュムレータ306は例えば液体の余剰冷媒を溜めておく手段である。熱源側制御装置310は、例えばマイクロコンピュータ等からなる。負荷側制御装置404と有線又は無線通信することができ、例えば、冷凍空気調和装置内の各種検知手段(センサ)の検知に係るデータに基づいて、インバータ回路制御による圧縮機301の運転周波数制御等、冷凍空気調和装置に係る各手段を制御して冷凍空気調和装置全体の動作制御を行う。また、上述の実施の形態において説明した制御手段6が行う処理を熱源側制御装置310が行うようにしてもよい。
【0091】
一方、負荷側ユニット400は、負荷側熱交換器401、負荷側絞り装置(膨張弁)402、負荷側ファン403及び負荷側制御装置404で構成される。負荷側熱交換器401は冷媒と空気との熱交換を行う。例えば、暖房運転時においては凝縮器として機能し、ガス配管500から流入した冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮させて液化(又は気液二相化)させ、液配管600側に流出させる。一方、冷房運転時においては蒸発器として機能し、負荷側絞り装置402により低圧状態にされた冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒に空気の熱を奪わせて蒸発させて気化させ、ガス配管500側に流出させる。また、負荷側ユニット400には、熱交換を行う空気の流れを調整するための負荷側ファン403が設けられている。この負荷側ファン403の運転速度は、例えば利用者の設定により決定される。負荷側絞り装置402は、開度を変化させることで、負荷側熱交換器401内における冷媒の圧力を調整するために設ける。
【0092】
また、負荷側制御装置404もマイクロコンピュータ等からなり、例えば熱源側制御装置310と有線又は無線通信することができる。熱源側制御装置310からの指示、居住者等からの指示に基づいて、例えば室内が所定の温度となるように、負荷側ユニット400の各装置(手段)を制御する。また、負荷側ユニット400に設けられた検知手段の検知に係るデータを含む信号を送信する。
【0093】
以上のように実施の形態4の冷凍空気調和装置では、上述した実施の形態における電力変換装置を用いて圧縮機301、熱源側ファン305等への電力供給を行うようにしたので、高効率、高信頼性の冷凍空気調和装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
前述した実施の形態4では、本発明に係る電力変換装置を冷凍空気調和装置に適用する場合について説明したが、これに限定するものではない。ヒートポンプ装置、冷蔵庫等の冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を利用する装置、エレベータ等の搬送機器等、照明器具(システム)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 電源、2 昇圧手段、3 平滑手段、4 転流手段、5 電圧検出手段、6 制御手段、7 駆動信号伝達手段、8 転流信号伝達手段、9 負荷、10 電流検出素子、11 電流検出手段、21 リアクトル、22 昇圧用スイッチ、23 昇圧用整流器、41 変圧器、42 転流用整流器、43 変圧器駆動回路、44 転流用スイッチ、45 変圧器用電源、51a,51b,51c,51d 整流器、101,102 フィードバック制御器、201 基準信号生成手段、202 第1の三角波信号生成手段、203 第2の三角波信号生成手段、211 PWM信号生成手段、212 PWM信号発生手段、221 転流信号生成手段、222 転流信号発生手段、300 熱源側ユニット、301 圧縮機、302 油分離器、303 四方弁、304 熱源側熱交換器、305 熱源側ファン、306 アキュムレータ、307 熱源側絞り装置、308 冷媒間熱交換器、309 バイパス絞り装置、310 熱源側制御装置、400 負荷側ユニット、401 負荷側熱交換器、402 負荷側絞り装置、403 負荷側ファン、404 負荷側制御装置、500 ガス配管、600 液配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電圧を所定の電圧に変化させる電圧可変手段と、
該電圧可変手段を流れる電流を別経路に流す転流動作を行うための転流手段と、
前記電圧可変手段及び前記転流手段の出力に係る電圧を平滑した電力を負荷側に供給する平滑手段と、
前記電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、前記電圧可変手段の電圧可変に係る制御及び前記転流手段の前記転流動作の制御を行う制御手段と
を具備することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
印加される電圧を所定の電圧に変化させる電圧可変手段と、
該電圧可変手段を流れる電流を別経路に流す転流動作を行うための転流手段と、
前記電圧可変手段及び前記転流手段の出力に係る電圧を平滑した電力を負荷側に供給する平滑手段と、
前記電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、前記電圧可変手段の電圧可変に係る制御を行う第1の制御手段と、
前記電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、前記転流手段の前記転流動作の制御を行う第2の制御手段と
を具備することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記電圧可変手段は、リアクトルと、該リアクトルに蓄放電をさせるための開閉を行う電圧可変用スイッチと、電圧可変用整流器とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記転流手段は、
前記制御手段の指示に基づいて、前記転流動作を行う転流動作手段と、
前記電圧可変手段からの転流に係る電流を整流する転流用整流器と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記転流動作手段は、
1次巻線側の電圧に基づいて前記別経路上の2次巻線側に電圧を印加させ、前記転流動作を行う変圧器と、
前記制御手段の指示に基づいて、前記変圧器の1次巻線への電圧印加を制御する変圧器駆動装置と
を有することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記変圧器に印加する電圧を電圧可変手段の出力電圧よりも低くすることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記転流用整流器は、ワイドバンドギャップ半導体を用いた素子であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドを材料とすることを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記電圧可変用スイッチを閉じる前に前記転流手段に前記転流動作を開始させることを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記電圧可変用スイッチを閉じるタイミングを含む所定時間内に、前記転流手段に転流動作を終了させるようにすることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、PWM信号を生成するための基準とする基準信号を生成する基準信号生成手段と、
第1の三角波信号を生成する第1の三角波信号生成手段と、
前記基準信号と前記第1の三角波信号に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
前記PWM信号を送り出すPWM信号発生手段と
を有し、前記電圧可変スイッチの開閉制御をすることを特徴とする請求項3〜10のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記転流手段は、開閉により前記転流動作を制御するための転流用スイッチを有し、
また、前記制御手段は、
前記電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、PWM信号である転流信号を生成するための基準とする基準信号を生成する基準信号生成手段と、
第1の三角波信号を生成する第1の三角波信号生成手段と、
第2の三角波信号を生成する第2の三角波信号生成手段と、
前記基準信号、前記第1の三角波信号及び前記第2の三角波信号に基づいて転流信号を生成する転流信号生成手段と、
前記転流信号を送り出す転流信号発生手段と
を有し、前記転流用スイッチの開閉制御をすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記転流手段は、開閉により前記転流動作を制御するための転流用スイッチを有し、
また、前記制御手段は、
前記電圧可変手段に係る電圧及び電流の少なくとも一方に基づいて、PWM信号である転流信号を生成するための基準とする第1の基準信号及び前記第1の基準信号と所定の間隔を有する第2の基準信号を生成する基準信号生成手段と、
第1の三角波信号を生成する第1の三角波信号生成手段と、
前記第1の基準信号、前記第2の基準信号、前記第1の三角波信号に基づいて転流信号を生成する転流信号生成手段と、
前記転流信号を送り出す転流信号発生手段と
を有し、前記転流用スイッチの開閉制御をすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記転流手段に転流動作させるための電源と前記電圧可変手段の電圧可変動作をさせるための電源とを共通にすることを特徴とする請求項1〜13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記転流手段に転流動作させるための電源と前記制御手段の動作電源とを共通にすることを特徴とする請求項1〜14に記載の電力変換装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の電力変換装置を、圧縮機または送風機の少なくとも一方を駆動するために備えることを特徴とする冷凍空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−70580(P2012−70580A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214867(P2010−214867)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】