電力変換装置
【課題】半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供すること。
【解決手段】半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子21を有する複数の半導体モジュール2と、半導体モジュール2を冷却する複数の冷却管3とを積層配置してなり、複数の半導体モジュール2のパワー端子21を接続する電力ラインを構成するバスバー4を備えた電力変換装置1。半導体モジュール2のパワー端子21は、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3との積層方向Xに沿った接合面211を有すると共に、接合面211において、バスバー4と接合されている。
【解決手段】半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子21を有する複数の半導体モジュール2と、半導体モジュール2を冷却する複数の冷却管3とを積層配置してなり、複数の半導体モジュール2のパワー端子21を接続する電力ラインを構成するバスバー4を備えた電力変換装置1。半導体モジュール2のパワー端子21は、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3との積層方向Xに沿った接合面211を有すると共に、接合面211において、バスバー4と接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パワー端子を有する複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却管と、上記パワー端子に接続されるバスバーとを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図17、図18に示すごとく、複数の半導体モジュール92と、該半導体モジュール92を冷却する複数の冷却管93と、上記半導体モジュール92のパワー端子921に接続されるバスバー94とを備えた電力変換装置9がある(特許文献1参照)。
【0003】
該電力変換装置9においては、複数の半導体モジュール92と複数の冷却管93とを交互に積層してなると共に、複数の半導体モジュール92のそれぞれのパワー端子921をバスバー94に接合してなる。ここで、パワー端子921は、半導体モジュール92の主面と平行な板状体となっており、その主面は、半導体モジュール92と冷却管93との積層方向Xに直交する。それ故、パワー端子921とバスバー94とを接合する際には、積層方向Xに直交するパワー端子921の主面においてバスバー94と接合することとなる。そのため、バスバー94は、その長手方向(積層方向X)に直交する接合端941を複数設けた櫛歯形状に形成してある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−185063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような櫛歯形状のバスバー94を用いる場合、上記接合端941の位置が固定されている、すなわち接合端941の形成ピッチが固定されているため、複数の半導体モジュール92のパワー端子921の位置が、バスバー94の接合端941の位置に拘束されることとなる。そのため、半導体モジュール92の本体部の位置が設計どおりの位置からずれると、パワー端子921とバスバー94の接合端941との接合が困難となる。
【0006】
特に、上記のごとく、複数の半導体モジュール92と複数の冷却管93とを積層した構造をとると、個々の半導体モジュール92の厚みの公差や冷却管93の厚みの公差、更には、両者の間に介在させる絶縁層の厚みの公差などが積み重なる。この場合、すべての半導体モジュール92のパワー端子921をバスバー94の接合端941の位置に合わせることは、極めて困難となる。
【0007】
また、このような状態で、無理矢理パワー端子921をバスバー94に接合すると、例えば、パワー端子921を強制的に変形させたりすることとなり、引き剥がし方向の応力が作用した状態で接合されることとなる。その結果、接続信頼性を充分に得ることが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子を有する複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却管とを積層配置してなり、上記複数の半導体モジュールの上記パワー端子を接続する電力ラインを構成するバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールの上記パワー端子は、上記複数の半導体モジュールと上記複数の冷却管との積層方向に沿った接合面を有すると共に、該接合面において、上記バスバーと接合されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0010】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記半導体モジュールの上記パワー端子は、上記積層方向に沿った接合面を有すると共に、該接合面において上記バスバーと接合されている。そのため、上記半導体モジュールが所定の位置から上記積層方向にずれて配置されても、上記パワー端子の接合面は、その面に沿った方向にずれるのみである。それゆえ、パワー端子とバスバーとの接合に支障を来たすことはない。したがって、半導体モジュールの位置が積層方向にずれても、パワー端子とバスバーとを容易に接合することができる。その結果、製造容易な電力変換装置を得ることができる。
【0011】
また、上記のごとく、半導体モジュールの位置が積層方向にずれても、パワー端子とバスバーとの接合面は、略同一平面内においてずれるのみであるため、パワー端子を変形させるなどすることなくバスバーに接合することができる。すなわち、パワー端子とバスバーとの接合を無理に行う必要がない。そのため、接合後の状態においても、パワー端子とバスバーとの接合部に無理な応力が作用することはなく、その接続信頼性を向上させることができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明(請求項1)において、「上記複数の半導体モジュールと上記複数の冷却管との積層方向に沿った接合面」は、上記接合面が上記積層方向に平行である場合の他に、これに準ずる場合、例えば上記接合面が上記積層方向に対して2°以下となる場合も含まれる。
【0014】
また、上記接合面は、上記半導体モジュールにおける上記パワー端子の立設方向に平行であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記パワー端子と上記バスバーとの接合部の端部を、パワー端子の立設方向の先端側に配置することができる。これにより、この立設方向の先端側に配された接合部の端部を溶接等によって接合する作業を容易に行うことができる。
【0015】
また、上記パワー端子は、上記半導体モジュールの本体部から立設した立設部と、該立設部の先端部の側方から上記積層方向へ向かって屈曲した屈曲部とからなり、該屈曲部に上記接合面が形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記接合面を容易に形成することができる。
【0016】
また、上記パワー端子は、長方形状の板状体に側方から切込を入れると共に該切込よりも先端側部分を折り曲げることにより、上記立設部と上記屈曲部とを形成してなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記長方形状の板状体から上記立設部と上記屈曲部とを形成することができるため、材料費を低減することができる。
【0017】
また、上記半導体モジュールの組付け前の状態において、上記屈曲部は、上記立設部に対して鈍角となる状態に屈曲しており、上記半導体モジュールの組付け後の状態において、上記屈曲部は、上記バスバーを押圧する方向に付勢されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記パワー端子の上記屈曲部を、上記バスバーに容易かつ確実に接触させることができる。
【0018】
また、上記パワー端子は、上記立設部と上記屈曲部との間の折り曲げ線の一部に沿って、スリットを形成してなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記屈曲部の形成を容易に行うことができると共に、上記屈曲部の付勢力が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0019】
また、上記バスバーは、上記パワー端子の一部を挿通することができる開口部を複数設けてなり、該開口部の内側面に、上記パワー端子の上記接合面が接合されていてもよい(請求項7)。
この場合にも、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を得ることができる。
【0020】
また、上記パワー端子と上記バスバーとは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池は上記バスバーに形成されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記パワー端子と上記バスバーとの接合信頼性をより高くすることができる。すなわち、溶融池を上記バスバーに設けることにより、上記パワー端子を溶融させ過ぎることなくバスバーとパワー端子とを接合することができる。これにより、一般的に厚みの小さいパワー端子が溶融しすぎて接合信頼性が低下することを防ぐことができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図6を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子21を有する複数の半導体モジュール2と、該半導体モジュール2を冷却する複数の冷却管3とを積層配置してなり、上記複数の半導体モジュール2のパワー端子21を接続する電力ラインを構成するバスバー4を備えている。
【0022】
半導体モジュール2のパワー端子21は、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3との積層方向Xに沿った接合面211を有すると共に、該接合面211において、バスバー4と接合されている。
図3に示すごとく、接合面211は、半導体モジュール2におけるパワー端子21の立設方向に平行である。
【0023】
パワー端子21は、半導体モジュール2の本体部20から立設した立設部212と、該立設部212の先端部の側方から積層方向Xへ向かって屈曲した屈曲部213とからなる。そして、屈曲部213に上記接合面211が形成されている。パワー端子21は、例えば厚み0.5mm程度の銅からなる薄い板を折り曲げ加工してなる。
【0024】
図3に示すごとく、半導体モジュール2は、半導体素子を内蔵する本体部20を有する。本体部20は、一対の主面201と二対の端面202とを有するカード状の直方体形状を有する。そして、対向する一対の端面202のうちの一方から2本のパワー端子21が立設されており、他方から5本の制御端子22が立設されている。また、一対の主面201には、放熱板23が露出している。
【0025】
図1、図5に示すごとく、電力変換装置1においては、半導体モジュール2の一対の主面201に密着するように冷却管3が配設されており、半導体モジュール2と冷却管3とが交互に積層されている。また、隣り合う一対の冷却管3の間には、二個の半導体モジュール2が並列的に配置されている。
【0026】
また、隣り合う冷却管3同士は、それらの長手方向の両端部において、連結管31によって連結されている。また、図1に示すごとく、積層方向Xの一端に配される冷却管3には、その長手方向Yの両端部に、冷媒導入管321と冷媒排出管322とがそれぞれ接続されている。これらの冷媒導入管321、冷媒排出管322、連結管31、及び冷却管3には、それぞれ冷却媒体を流通させる冷媒流路が形成されている。
【0027】
これにより、冷媒導入管321から導入された冷却媒体が連結管31を通じて、複数の冷却管3にそれぞれ供給される。そして、該冷却管3に放熱板23を密着させるように配された半導体モジュール2が、冷却媒体との間で熱交換を行うことにより冷却される。半導体モジュール2から受熱した冷却媒体は、冷却管3から連結管31、冷媒排出管322を介して排出される。そして、この冷却媒体は外部の冷却手段によって冷却された後、再び冷却導入管321から導入され、同様に冷却管3内を循環する。
【0028】
図5に示すごとく、半導体モジュール2におけるパワー端子21及び制御端子22は、積層方向Xから見たとき、冷却管3の長手方向に直交する方向に、冷却管3の外形から両側に突き出ている。半導体モジュール2に設けた二本のパワー端子21は、何れも上述した接合面211を有している。この接合面211を構成する屈曲部213は、各パワー端子21の立設部212における、他方のパワー端子21とは反対側の側方から屈曲されている。
【0029】
そして、複数の半導体モジュール2を複数の冷却管3と共に積層配置したとき、複数の半導体モジュール2は、積層方向Xに二列、直線的に並ぶ。このとき、各列における半導体モジュール2の二本のパワー端子21の接合面211は、それぞれ同一平面上に配される。
このように同一平面上に配された複数の接合面211に、厚みを有する板棒状の導体からなるバスバー4の側面41を当接させる。バスバー4は、例えば厚みが2mm程度の銅からなる板棒状体からなる。半導体モジュール2における冷却管3の長手方向の中央側に位置するパワー端子21は、上記長手方向の中央に配されたバスバー4aの側面41に接合される。このバスバー4aは、両方の側面41にそれぞれ半導体モジュール2のパワー端子21が接合されている。
【0030】
また、半導体モジュール2における冷却管3の長手方向Yの両端側に位置するパワー端子21は、上記長手方向Yの両端にそれぞれ配されたバスバー4bの側面41に接合される。このバスバー4bは、一方の側面41にのみ半導体モジュール2のパワー端子21が接合されている。
また、バスバー4の側面41は、積層方向Xに沿って、直線状に形成されている。
また、図6に示すごとく、パワー端子21とバスバー4とは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池11はバスバー4に形成されている。
【0031】
本例の電力変換装置1を組み立てるに当っては、図5に示すごとく、まず、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを交互に積層した状態の積層体10を構成する。
次いで、半導体モジュール2と冷却管3との密着性を確保するために、積層体10を積層方向Xに加圧する。これにより、積層体10における半導体モジュール2の位置が、それぞれ移動し、所定の位置で固定される。このとき、図1に示すごとく、冷媒導入管321及び冷媒排出管322を取り付けた第1段目の冷却管3の外側の主面3aが固定される固定面を基準とした場合、積層体10の最後段の冷却管3の外側の主面3b側に行くに従って各冷却管3及び半導体モジュール2の積層方向Xにおける厚み寸法公差が積上げられ、半導体モジュール2のパワー端子21の積層方向Xにおける位置は、当初設計した所定位置に対して公差分大きくずれることになる。
【0032】
加圧した後に、バスバー4を、半導体モジュール2のパワー端子21に、アーク溶接によって接合する。このアーク溶接は、パワー端子21の当接面211を構成する屈曲部213の上端部と、バスバー4の側面41の上端部との接触部において行う。そして、図6に示すごとく、アークの照射は、上記接触部近傍のバスバー4に対して行い、この部分に溶融池11が形成されるようにする。これにより、バスバー4の一部が溶融して、その溶融金属がパワー端子21を覆うような状態となり、パワー端子21は溶融金属の熱で徐々に溶融されるため、アークの直接照射の様に溶融し過ぎること無くバスバー4とパワー端子21の接合部が形成される。
【0033】
また、積層体10における上記バスバー4を配置した側と反対側には、半導体モジュール2のスイッチングを制御するための制御回路を形成した制御回路基板12を配置し、該制御回路基板12を半導体モジュール2の制御端子22に接続する。すなわち、制御回路基板12に設けたスルーホール121に制御端子22を挿通すると共に半田によって接合する。
なお、制御端子22は、細い端子であって充分な可撓性を有するため、積層体10の加圧によって半導体モジュール2の位置が設計どおりの位置から多少ずれても、制御回路基板12との接続に支障を来たすことはない。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記半導体モジュール2のパワー端子21は、上記積層方向Xに沿った接合面211を有すると共に、該接合面211においてバスバー4と接合されている。そのため、半導体モジュール2が所定の位置から積層方向Xにずれて配置されても、パワー端子21の接合面211は、その面に沿った方向にずれるのみである。それゆえ、パワー端子21とバスバー4との接合に支障を来たすことはない。したがって、半導体モジュール2の位置が積層方向Xにずれても、パワー端子21とバスバー4とを容易に接合することができる。その結果、製造容易な電力変換装置1を得ることができる。
【0035】
また、上記のごとく、半導体モジュール2の位置が積層方向Xにずれても、パワー端子21とバスバー4との接合面211は、略同一平面内においてずれるのみであるため、パワー端子21を変形させるなどすることなくバスバー4に接合することができる。すなわち、パワー端子21とバスバー4との接合を無理に行う必要がない。そのため、接合後の状態においても、パワー端子21とバスバー4との接合部に無理な応力が作用することはなく、その接続信頼性を向上させることができる。
【0036】
また、接合面211は、半導体モジュール2におけるパワー端子21の立設方向に平行であるため、図2、図4に示すごとく、パワー端子21とバスバー4との接合部の端部13を、パワー端子21の立設方向の先端側に配置することができる。これにより、この立設方向の先端側に配された接合部の端部13を溶接等によって接合する作業を容易に行うことができる。
また、パワー端子21は、立設部212と屈曲部213とからなり、該屈曲部213に接合面211が形成されているため、接合面211を容易に形成することができる。
【0037】
また、図6に示すごとく、パワー端子21とバスバー4とは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池11はバスバー4に形成されている。これにより、パワー端子21とバスバー4との接合信頼性をより高くすることができる。すなわち、溶融池11をバスバー4に設けることにより、パワー端子21を溶融させ過ぎることなくバスバー4とパワー端子21とを接合することができる。これにより、一般的に厚みの小さいパワー端子21が溶融しすぎて接合信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0038】
以上のごとく、本例によれば、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供することができる。
【0039】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、板棒状のバスバー4を、その主面42において半導体モジュール2のパワー端子21の接合面211に接合した例である。
すなわち、実施例1においては、図4に示すごとく、バスバー4の端面41をパワー端子21の接合面211に接合した例を示したが、本例においては、バスバー4の主面42を、パワー端子21の立設方向と平行にした状態にして、接合面211に接合している。
その他は、実施例1と同様である。
【0040】
本例の場合には、バスバー4とパワー端子21との接触面積を大きく確保することができるため、半導体モジュール2とバスバー4との接続信頼性をより向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0041】
(実施例3)
本例は、図8〜図10に示すごとく、パワー端子21が、長方形状の板状体に側方から切込214を入れると共に該切込214よりも先端側部分を折り曲げることにより、上記立設部212と屈曲部213とを形成してなる例である。
そして、図9、図10に示すごとく、この屈曲部213に形成される接合面211に、バスバー4を接合する。ここで、実施例1と同様に、接合面211には、図9に示すごとく、バスバー4の側面41を当接させてもよいし、図10に示すごとく、主面42を当接させてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0042】
本例の場合には、長方形状の板状体から立設部212と屈曲部213とを形成することができるため、材料費を低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(実施例4)
本例は、図11〜図14に示すごとく、バスバー4に、パワー端子4の一部を挿通することができる開口部43を複数設け、開口部43の内側面431に、パワー端子21の接合面211を接合した例である。
図11に示すごとく、バスバー4には、四角形状の開口部43を複数、バスバー4の長手方向に並べて形成してある。この開口部43の大きさは、図13に示すごとく、パワー端子4の先端部を遊嵌可能な大きさであって、バスバー4の長手方向に沿った開口部43の長さは、半導体モジュール2が積層方向Xにずれたときにも充分に屈曲部213を挿嵌することができる程度の遊びが形成できる程度の長さとする。
【0044】
また、図14に示すごとく、本例の電力変換装置1において、各半導体モジュール2における冷却管3の長手方向Yの中央側に位置するパワー端子21は、上記長手方向Yの中央に配されたバスバー4aに接合される。そして、この中央のバスバー4aは、開口部43を二列形成している。
その他は、実施例1と同様である。
【0045】
本例の場合にも、半導体モジュール2とバスバー4との接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置1を得ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0046】
(実施例5)
本例は、図15、図16に示すごとく、半導体モジュール2の組付け前の状態において、屈曲部213は、立設部212に対して鈍角となる状態に屈曲している例である。そして、図16(B)に示すごとく、半導体モジュール2の組付け後の状態において、屈曲部213は、バスバー4を押圧する方向に付勢されている。
【0047】
また、図15に示すごとく、パワー端子21は、立設部212と屈曲部213との間の折り曲げ線の一部に沿って、スリット214を形成してなる。
図16(A)に示すごとく、組付け前の状態の半導体モジュール2のパワー端子21は、立設部212と屈曲部213とのなす角度θが鈍角であり、より好ましくは、θは135°以下の鈍角とする。
【0048】
そして、図16(B)に示すごとく、この状態のパワー端子21の屈曲部213に、バスバー4の側面42を当接させると共に押圧する。これにより、バスバー4に屈曲部213の反力を受けながら、屈曲部213を、立設部212とのなす角度が小さくなる方向に変形させる。そして、立設部212と屈曲部213とのなす角度θ1が90°に近い角度となる。この角度θ1は、必ずしも90°である必要はなく、例えば、鈍角であってもよい。ただし、θ1<θを満たす。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
本例の場合には、上記角度θが鈍角であることにより、パワー端子21の屈曲部213を、バスバー4に容易かつ確実に接触させることができる。
また、パワー端子21が上記スリット214を形成してなるため、屈曲部213の形成を容易に行うことができると共に、屈曲部213の付勢力が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例1における、半導体モジュールの斜視図。
【図4】実施例1における、パワー端子とバスバーとの接合部の斜視図。
【図5】実施例1における、電力変換装置の展開斜視図。
【図6】実施例1における、溶融池の形成位置を示す電力変換装置の平面説明図。
【図7】実施例2における、パワー端子とバスバーとの接合部の斜視図。
【図8】実施例3における、半導体モジュールの斜視図。
【図9】実施例3における、パワー端子とバスバーの側面との接合部の斜視図。
【図10】実施例3における、パワー端子とバスバーの主面との接合部の斜視図。
【図11】実施例4における、バスバーの斜視図。
【図12】実施例4における、パワー端子とバスバーとの接合部の斜視図。
【図13】実施例4における、パワー端子とバスバーとの接合部の平面図。
【図14】実施例4における、電力変換装置の展開斜視図。
【図15】実施例5における、パワー端子の斜視図。
【図16】実施例5における、(A)バスバーを当接する前のパワー端子の説明図、(B)バスバーを当接させた状態のパワー端子の説明図。
【図17】従来例における、電力変換装置の部分平面図。
【図18】図17のB−B線矢視断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
21 パワー端子
211 接合面
3 冷却管
4 バスバー
【技術分野】
【0001】
本発明は,パワー端子を有する複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却管と、上記パワー端子に接続されるバスバーとを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図17、図18に示すごとく、複数の半導体モジュール92と、該半導体モジュール92を冷却する複数の冷却管93と、上記半導体モジュール92のパワー端子921に接続されるバスバー94とを備えた電力変換装置9がある(特許文献1参照)。
【0003】
該電力変換装置9においては、複数の半導体モジュール92と複数の冷却管93とを交互に積層してなると共に、複数の半導体モジュール92のそれぞれのパワー端子921をバスバー94に接合してなる。ここで、パワー端子921は、半導体モジュール92の主面と平行な板状体となっており、その主面は、半導体モジュール92と冷却管93との積層方向Xに直交する。それ故、パワー端子921とバスバー94とを接合する際には、積層方向Xに直交するパワー端子921の主面においてバスバー94と接合することとなる。そのため、バスバー94は、その長手方向(積層方向X)に直交する接合端941を複数設けた櫛歯形状に形成してある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−185063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような櫛歯形状のバスバー94を用いる場合、上記接合端941の位置が固定されている、すなわち接合端941の形成ピッチが固定されているため、複数の半導体モジュール92のパワー端子921の位置が、バスバー94の接合端941の位置に拘束されることとなる。そのため、半導体モジュール92の本体部の位置が設計どおりの位置からずれると、パワー端子921とバスバー94の接合端941との接合が困難となる。
【0006】
特に、上記のごとく、複数の半導体モジュール92と複数の冷却管93とを積層した構造をとると、個々の半導体モジュール92の厚みの公差や冷却管93の厚みの公差、更には、両者の間に介在させる絶縁層の厚みの公差などが積み重なる。この場合、すべての半導体モジュール92のパワー端子921をバスバー94の接合端941の位置に合わせることは、極めて困難となる。
【0007】
また、このような状態で、無理矢理パワー端子921をバスバー94に接合すると、例えば、パワー端子921を強制的に変形させたりすることとなり、引き剥がし方向の応力が作用した状態で接合されることとなる。その結果、接続信頼性を充分に得ることが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子を有する複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却管とを積層配置してなり、上記複数の半導体モジュールの上記パワー端子を接続する電力ラインを構成するバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールの上記パワー端子は、上記複数の半導体モジュールと上記複数の冷却管との積層方向に沿った接合面を有すると共に、該接合面において、上記バスバーと接合されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0010】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記半導体モジュールの上記パワー端子は、上記積層方向に沿った接合面を有すると共に、該接合面において上記バスバーと接合されている。そのため、上記半導体モジュールが所定の位置から上記積層方向にずれて配置されても、上記パワー端子の接合面は、その面に沿った方向にずれるのみである。それゆえ、パワー端子とバスバーとの接合に支障を来たすことはない。したがって、半導体モジュールの位置が積層方向にずれても、パワー端子とバスバーとを容易に接合することができる。その結果、製造容易な電力変換装置を得ることができる。
【0011】
また、上記のごとく、半導体モジュールの位置が積層方向にずれても、パワー端子とバスバーとの接合面は、略同一平面内においてずれるのみであるため、パワー端子を変形させるなどすることなくバスバーに接合することができる。すなわち、パワー端子とバスバーとの接合を無理に行う必要がない。そのため、接合後の状態においても、パワー端子とバスバーとの接合部に無理な応力が作用することはなく、その接続信頼性を向上させることができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明(請求項1)において、「上記複数の半導体モジュールと上記複数の冷却管との積層方向に沿った接合面」は、上記接合面が上記積層方向に平行である場合の他に、これに準ずる場合、例えば上記接合面が上記積層方向に対して2°以下となる場合も含まれる。
【0014】
また、上記接合面は、上記半導体モジュールにおける上記パワー端子の立設方向に平行であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記パワー端子と上記バスバーとの接合部の端部を、パワー端子の立設方向の先端側に配置することができる。これにより、この立設方向の先端側に配された接合部の端部を溶接等によって接合する作業を容易に行うことができる。
【0015】
また、上記パワー端子は、上記半導体モジュールの本体部から立設した立設部と、該立設部の先端部の側方から上記積層方向へ向かって屈曲した屈曲部とからなり、該屈曲部に上記接合面が形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記接合面を容易に形成することができる。
【0016】
また、上記パワー端子は、長方形状の板状体に側方から切込を入れると共に該切込よりも先端側部分を折り曲げることにより、上記立設部と上記屈曲部とを形成してなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記長方形状の板状体から上記立設部と上記屈曲部とを形成することができるため、材料費を低減することができる。
【0017】
また、上記半導体モジュールの組付け前の状態において、上記屈曲部は、上記立設部に対して鈍角となる状態に屈曲しており、上記半導体モジュールの組付け後の状態において、上記屈曲部は、上記バスバーを押圧する方向に付勢されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記パワー端子の上記屈曲部を、上記バスバーに容易かつ確実に接触させることができる。
【0018】
また、上記パワー端子は、上記立設部と上記屈曲部との間の折り曲げ線の一部に沿って、スリットを形成してなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記屈曲部の形成を容易に行うことができると共に、上記屈曲部の付勢力が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0019】
また、上記バスバーは、上記パワー端子の一部を挿通することができる開口部を複数設けてなり、該開口部の内側面に、上記パワー端子の上記接合面が接合されていてもよい(請求項7)。
この場合にも、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を得ることができる。
【0020】
また、上記パワー端子と上記バスバーとは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池は上記バスバーに形成されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記パワー端子と上記バスバーとの接合信頼性をより高くすることができる。すなわち、溶融池を上記バスバーに設けることにより、上記パワー端子を溶融させ過ぎることなくバスバーとパワー端子とを接合することができる。これにより、一般的に厚みの小さいパワー端子が溶融しすぎて接合信頼性が低下することを防ぐことができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図6を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子21を有する複数の半導体モジュール2と、該半導体モジュール2を冷却する複数の冷却管3とを積層配置してなり、上記複数の半導体モジュール2のパワー端子21を接続する電力ラインを構成するバスバー4を備えている。
【0022】
半導体モジュール2のパワー端子21は、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3との積層方向Xに沿った接合面211を有すると共に、該接合面211において、バスバー4と接合されている。
図3に示すごとく、接合面211は、半導体モジュール2におけるパワー端子21の立設方向に平行である。
【0023】
パワー端子21は、半導体モジュール2の本体部20から立設した立設部212と、該立設部212の先端部の側方から積層方向Xへ向かって屈曲した屈曲部213とからなる。そして、屈曲部213に上記接合面211が形成されている。パワー端子21は、例えば厚み0.5mm程度の銅からなる薄い板を折り曲げ加工してなる。
【0024】
図3に示すごとく、半導体モジュール2は、半導体素子を内蔵する本体部20を有する。本体部20は、一対の主面201と二対の端面202とを有するカード状の直方体形状を有する。そして、対向する一対の端面202のうちの一方から2本のパワー端子21が立設されており、他方から5本の制御端子22が立設されている。また、一対の主面201には、放熱板23が露出している。
【0025】
図1、図5に示すごとく、電力変換装置1においては、半導体モジュール2の一対の主面201に密着するように冷却管3が配設されており、半導体モジュール2と冷却管3とが交互に積層されている。また、隣り合う一対の冷却管3の間には、二個の半導体モジュール2が並列的に配置されている。
【0026】
また、隣り合う冷却管3同士は、それらの長手方向の両端部において、連結管31によって連結されている。また、図1に示すごとく、積層方向Xの一端に配される冷却管3には、その長手方向Yの両端部に、冷媒導入管321と冷媒排出管322とがそれぞれ接続されている。これらの冷媒導入管321、冷媒排出管322、連結管31、及び冷却管3には、それぞれ冷却媒体を流通させる冷媒流路が形成されている。
【0027】
これにより、冷媒導入管321から導入された冷却媒体が連結管31を通じて、複数の冷却管3にそれぞれ供給される。そして、該冷却管3に放熱板23を密着させるように配された半導体モジュール2が、冷却媒体との間で熱交換を行うことにより冷却される。半導体モジュール2から受熱した冷却媒体は、冷却管3から連結管31、冷媒排出管322を介して排出される。そして、この冷却媒体は外部の冷却手段によって冷却された後、再び冷却導入管321から導入され、同様に冷却管3内を循環する。
【0028】
図5に示すごとく、半導体モジュール2におけるパワー端子21及び制御端子22は、積層方向Xから見たとき、冷却管3の長手方向に直交する方向に、冷却管3の外形から両側に突き出ている。半導体モジュール2に設けた二本のパワー端子21は、何れも上述した接合面211を有している。この接合面211を構成する屈曲部213は、各パワー端子21の立設部212における、他方のパワー端子21とは反対側の側方から屈曲されている。
【0029】
そして、複数の半導体モジュール2を複数の冷却管3と共に積層配置したとき、複数の半導体モジュール2は、積層方向Xに二列、直線的に並ぶ。このとき、各列における半導体モジュール2の二本のパワー端子21の接合面211は、それぞれ同一平面上に配される。
このように同一平面上に配された複数の接合面211に、厚みを有する板棒状の導体からなるバスバー4の側面41を当接させる。バスバー4は、例えば厚みが2mm程度の銅からなる板棒状体からなる。半導体モジュール2における冷却管3の長手方向の中央側に位置するパワー端子21は、上記長手方向の中央に配されたバスバー4aの側面41に接合される。このバスバー4aは、両方の側面41にそれぞれ半導体モジュール2のパワー端子21が接合されている。
【0030】
また、半導体モジュール2における冷却管3の長手方向Yの両端側に位置するパワー端子21は、上記長手方向Yの両端にそれぞれ配されたバスバー4bの側面41に接合される。このバスバー4bは、一方の側面41にのみ半導体モジュール2のパワー端子21が接合されている。
また、バスバー4の側面41は、積層方向Xに沿って、直線状に形成されている。
また、図6に示すごとく、パワー端子21とバスバー4とは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池11はバスバー4に形成されている。
【0031】
本例の電力変換装置1を組み立てるに当っては、図5に示すごとく、まず、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3とを交互に積層した状態の積層体10を構成する。
次いで、半導体モジュール2と冷却管3との密着性を確保するために、積層体10を積層方向Xに加圧する。これにより、積層体10における半導体モジュール2の位置が、それぞれ移動し、所定の位置で固定される。このとき、図1に示すごとく、冷媒導入管321及び冷媒排出管322を取り付けた第1段目の冷却管3の外側の主面3aが固定される固定面を基準とした場合、積層体10の最後段の冷却管3の外側の主面3b側に行くに従って各冷却管3及び半導体モジュール2の積層方向Xにおける厚み寸法公差が積上げられ、半導体モジュール2のパワー端子21の積層方向Xにおける位置は、当初設計した所定位置に対して公差分大きくずれることになる。
【0032】
加圧した後に、バスバー4を、半導体モジュール2のパワー端子21に、アーク溶接によって接合する。このアーク溶接は、パワー端子21の当接面211を構成する屈曲部213の上端部と、バスバー4の側面41の上端部との接触部において行う。そして、図6に示すごとく、アークの照射は、上記接触部近傍のバスバー4に対して行い、この部分に溶融池11が形成されるようにする。これにより、バスバー4の一部が溶融して、その溶融金属がパワー端子21を覆うような状態となり、パワー端子21は溶融金属の熱で徐々に溶融されるため、アークの直接照射の様に溶融し過ぎること無くバスバー4とパワー端子21の接合部が形成される。
【0033】
また、積層体10における上記バスバー4を配置した側と反対側には、半導体モジュール2のスイッチングを制御するための制御回路を形成した制御回路基板12を配置し、該制御回路基板12を半導体モジュール2の制御端子22に接続する。すなわち、制御回路基板12に設けたスルーホール121に制御端子22を挿通すると共に半田によって接合する。
なお、制御端子22は、細い端子であって充分な可撓性を有するため、積層体10の加圧によって半導体モジュール2の位置が設計どおりの位置から多少ずれても、制御回路基板12との接続に支障を来たすことはない。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記半導体モジュール2のパワー端子21は、上記積層方向Xに沿った接合面211を有すると共に、該接合面211においてバスバー4と接合されている。そのため、半導体モジュール2が所定の位置から積層方向Xにずれて配置されても、パワー端子21の接合面211は、その面に沿った方向にずれるのみである。それゆえ、パワー端子21とバスバー4との接合に支障を来たすことはない。したがって、半導体モジュール2の位置が積層方向Xにずれても、パワー端子21とバスバー4とを容易に接合することができる。その結果、製造容易な電力変換装置1を得ることができる。
【0035】
また、上記のごとく、半導体モジュール2の位置が積層方向Xにずれても、パワー端子21とバスバー4との接合面211は、略同一平面内においてずれるのみであるため、パワー端子21を変形させるなどすることなくバスバー4に接合することができる。すなわち、パワー端子21とバスバー4との接合を無理に行う必要がない。そのため、接合後の状態においても、パワー端子21とバスバー4との接合部に無理な応力が作用することはなく、その接続信頼性を向上させることができる。
【0036】
また、接合面211は、半導体モジュール2におけるパワー端子21の立設方向に平行であるため、図2、図4に示すごとく、パワー端子21とバスバー4との接合部の端部13を、パワー端子21の立設方向の先端側に配置することができる。これにより、この立設方向の先端側に配された接合部の端部13を溶接等によって接合する作業を容易に行うことができる。
また、パワー端子21は、立設部212と屈曲部213とからなり、該屈曲部213に接合面211が形成されているため、接合面211を容易に形成することができる。
【0037】
また、図6に示すごとく、パワー端子21とバスバー4とは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池11はバスバー4に形成されている。これにより、パワー端子21とバスバー4との接合信頼性をより高くすることができる。すなわち、溶融池11をバスバー4に設けることにより、パワー端子21を溶融させ過ぎることなくバスバー4とパワー端子21とを接合することができる。これにより、一般的に厚みの小さいパワー端子21が溶融しすぎて接合信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0038】
以上のごとく、本例によれば、半導体モジュールとバスバーとの接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置を提供することができる。
【0039】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、板棒状のバスバー4を、その主面42において半導体モジュール2のパワー端子21の接合面211に接合した例である。
すなわち、実施例1においては、図4に示すごとく、バスバー4の端面41をパワー端子21の接合面211に接合した例を示したが、本例においては、バスバー4の主面42を、パワー端子21の立設方向と平行にした状態にして、接合面211に接合している。
その他は、実施例1と同様である。
【0040】
本例の場合には、バスバー4とパワー端子21との接触面積を大きく確保することができるため、半導体モジュール2とバスバー4との接続信頼性をより向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0041】
(実施例3)
本例は、図8〜図10に示すごとく、パワー端子21が、長方形状の板状体に側方から切込214を入れると共に該切込214よりも先端側部分を折り曲げることにより、上記立設部212と屈曲部213とを形成してなる例である。
そして、図9、図10に示すごとく、この屈曲部213に形成される接合面211に、バスバー4を接合する。ここで、実施例1と同様に、接合面211には、図9に示すごとく、バスバー4の側面41を当接させてもよいし、図10に示すごとく、主面42を当接させてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0042】
本例の場合には、長方形状の板状体から立設部212と屈曲部213とを形成することができるため、材料費を低減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(実施例4)
本例は、図11〜図14に示すごとく、バスバー4に、パワー端子4の一部を挿通することができる開口部43を複数設け、開口部43の内側面431に、パワー端子21の接合面211を接合した例である。
図11に示すごとく、バスバー4には、四角形状の開口部43を複数、バスバー4の長手方向に並べて形成してある。この開口部43の大きさは、図13に示すごとく、パワー端子4の先端部を遊嵌可能な大きさであって、バスバー4の長手方向に沿った開口部43の長さは、半導体モジュール2が積層方向Xにずれたときにも充分に屈曲部213を挿嵌することができる程度の遊びが形成できる程度の長さとする。
【0044】
また、図14に示すごとく、本例の電力変換装置1において、各半導体モジュール2における冷却管3の長手方向Yの中央側に位置するパワー端子21は、上記長手方向Yの中央に配されたバスバー4aに接合される。そして、この中央のバスバー4aは、開口部43を二列形成している。
その他は、実施例1と同様である。
【0045】
本例の場合にも、半導体モジュール2とバスバー4との接続信頼性に優れた製造容易な電力変換装置1を得ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0046】
(実施例5)
本例は、図15、図16に示すごとく、半導体モジュール2の組付け前の状態において、屈曲部213は、立設部212に対して鈍角となる状態に屈曲している例である。そして、図16(B)に示すごとく、半導体モジュール2の組付け後の状態において、屈曲部213は、バスバー4を押圧する方向に付勢されている。
【0047】
また、図15に示すごとく、パワー端子21は、立設部212と屈曲部213との間の折り曲げ線の一部に沿って、スリット214を形成してなる。
図16(A)に示すごとく、組付け前の状態の半導体モジュール2のパワー端子21は、立設部212と屈曲部213とのなす角度θが鈍角であり、より好ましくは、θは135°以下の鈍角とする。
【0048】
そして、図16(B)に示すごとく、この状態のパワー端子21の屈曲部213に、バスバー4の側面42を当接させると共に押圧する。これにより、バスバー4に屈曲部213の反力を受けながら、屈曲部213を、立設部212とのなす角度が小さくなる方向に変形させる。そして、立設部212と屈曲部213とのなす角度θ1が90°に近い角度となる。この角度θ1は、必ずしも90°である必要はなく、例えば、鈍角であってもよい。ただし、θ1<θを満たす。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
本例の場合には、上記角度θが鈍角であることにより、パワー端子21の屈曲部213を、バスバー4に容易かつ確実に接触させることができる。
また、パワー端子21が上記スリット214を形成してなるため、屈曲部213の形成を容易に行うことができると共に、屈曲部213の付勢力が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例1における、半導体モジュールの斜視図。
【図4】実施例1における、パワー端子とバスバーとの接合部の斜視図。
【図5】実施例1における、電力変換装置の展開斜視図。
【図6】実施例1における、溶融池の形成位置を示す電力変換装置の平面説明図。
【図7】実施例2における、パワー端子とバスバーとの接合部の斜視図。
【図8】実施例3における、半導体モジュールの斜視図。
【図9】実施例3における、パワー端子とバスバーの側面との接合部の斜視図。
【図10】実施例3における、パワー端子とバスバーの主面との接合部の斜視図。
【図11】実施例4における、バスバーの斜視図。
【図12】実施例4における、パワー端子とバスバーとの接合部の斜視図。
【図13】実施例4における、パワー端子とバスバーとの接合部の平面図。
【図14】実施例4における、電力変換装置の展開斜視図。
【図15】実施例5における、パワー端子の斜視図。
【図16】実施例5における、(A)バスバーを当接する前のパワー端子の説明図、(B)バスバーを当接させた状態のパワー端子の説明図。
【図17】従来例における、電力変換装置の部分平面図。
【図18】図17のB−B線矢視断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
21 パワー端子
211 接合面
3 冷却管
4 バスバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子を有する複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却管とを積層配置してなり、上記複数の半導体モジュールの上記パワー端子を接続する電力ラインを構成するバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールの上記パワー端子は、上記複数の半導体モジュールと上記複数の冷却管との積層方向に沿った接合面を有すると共に、該接合面において、上記バスバーと接合されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記接合面は、上記半導体モジュールにおける上記パワー端子の立設方向に平行であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、上記パワー端子は、上記半導体モジュールの本体部から立設した立設部と、該立設部の先端部の側方から上記積層方向へ向かって屈曲した屈曲部とからなり、該屈曲部に上記接合面が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3において、上記パワー端子は、長方形状の板状体に側方から切込を入れると共に該切込よりも先端側部分を折り曲げることにより、上記立設部と上記屈曲部とを形成してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、上記半導体モジュールの組付け前の状態において、上記屈曲部は、上記立設部に対して鈍角となる状態に屈曲しており、上記半導体モジュールの組付け後の状態において、上記屈曲部は、上記バスバーを押圧する方向に付勢されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5において、上記パワー端子は、上記立設部と上記屈曲部との間の折り曲げ線の一部に沿って、スリットを形成してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項において、上記バスバーは、上記パワー端子の一部を挿通することができる開口部を複数設けてなり、該開口部の内側面に、上記パワー端子の上記接合面が接合されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記パワー端子と上記バスバーとは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池は上記バスバーに形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
半導体素子を内蔵してなると共にパワー端子を有する複数の半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却管とを積層配置してなり、上記複数の半導体モジュールの上記パワー端子を接続する電力ラインを構成するバスバーを備えた電力変換装置であって、
上記半導体モジュールの上記パワー端子は、上記複数の半導体モジュールと上記複数の冷却管との積層方向に沿った接合面を有すると共に、該接合面において、上記バスバーと接合されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記接合面は、上記半導体モジュールにおける上記パワー端子の立設方向に平行であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2において、上記パワー端子は、上記半導体モジュールの本体部から立設した立設部と、該立設部の先端部の側方から上記積層方向へ向かって屈曲した屈曲部とからなり、該屈曲部に上記接合面が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3において、上記パワー端子は、長方形状の板状体に側方から切込を入れると共に該切込よりも先端側部分を折り曲げることにより、上記立設部と上記屈曲部とを形成してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、上記半導体モジュールの組付け前の状態において、上記屈曲部は、上記立設部に対して鈍角となる状態に屈曲しており、上記半導体モジュールの組付け後の状態において、上記屈曲部は、上記バスバーを押圧する方向に付勢されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5において、上記パワー端子は、上記立設部と上記屈曲部との間の折り曲げ線の一部に沿って、スリットを形成してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項において、上記バスバーは、上記パワー端子の一部を挿通することができる開口部を複数設けてなり、該開口部の内側面に、上記パワー端子の上記接合面が接合されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記パワー端子と上記バスバーとは互いに溶接によって接合されており、その接合部における溶融池は上記バスバーに形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−142000(P2009−142000A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313209(P2007−313209)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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