説明

電力変換装置

【課題】交流電源を直接スイッチングして電力変換を行う双方向スイッチ群3への異常電圧印加を防止するため、双方向スイッチ群の入力側の電流検出により負荷に供給される電流を正確に推定する。
【解決手段】電力変換装置において、交流電源1の電圧を検出する第1の電圧検出部8と、充電部6の電圧を検出する第2の電圧検出部9と、双方向スイッチ群3の入力電流を検出する電流検出部10と、第1の電圧検出部8の検出値と制御部7による双方向スイッチ群3の動作スイッチングパターンに同期した第2の電圧検出部9と電流検出部10の検出値を用いて負荷2に供給される電流を推定する電流推定部11を備えることで、充電部6への充電電流を考慮した負荷電流を推定することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置における電流検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置のブロック図を図7に示す。電源15を入力とし、入出力電流が連続となる複数のトランジスタで構成されるスイッチ群16により電力変換されたものを負荷2へ出力する。制御部7は、スイッチ群16を構成するトランジスタのオン、オフを制御し、スイッチ群16の動作スイッチングパターンに基づいて、スイッチ群16への入力電流を検出する電流検出部10の検出値から出力電流値を推定する。例えば制御部7によりスイッチ群16が図8に示す動作スイッチングパターンで動作しているときに電流検出部10により検出される入力電流は、出力側のU相電流と等しくなる。V相、W相の電流は前後の動作スイッチングパターンをもとに推定することができる(特許文献1参照)。
【0003】
このようにそれぞれの動作スイッチングパターン毎に入力側の電流検出部10の検出値から出力電流値を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2563226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交流電源を直接スイッチングして交流出力を得る電力変換装置では、スイッチ群(双方向スイッチ群)への異常電圧印加による半導体スイッチの耐圧破壊防止のためサージ電圧等を吸収するスナバコンデンサなどの充電部が、双方向スイッチ群に並列接続される。特に交流電源が単相交流電源で負荷がモータ等の誘導性の負荷の場合、供給電力が電源半周期毎に低下するため、負荷が発電機として作用し回生電力が充電部に流れ込む。このため双方向スイッチ群の動作スイッチングパターン同期した双方向スイッチ群への入力電流検出値からでは負荷に供給される電流を正確に推定することができないとういう問題があった。
【0006】
本発明は、双方向スイッチ群に並列接続される充電部を有する電力変換装置において、負荷に供給される電流を入力電流から正確に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、交流電源と、負荷と、交流電源と負荷との間に配置され入出力電流が連続となる双方向スイッチ群と、双方向スイッチ群の入出力に接続した第1の全波整流ダイオード群4と第2の全波整流ダイオード群5を介して並列接続される充電部6と、双方向スイッチ群の双方向スイッチのオン、オフを制御する制御部7と、交流電源の電圧を検出する第1の電圧検出部と、充電部の電圧を検出する第2の電圧検出部と、双方向スイッチ群の入力電流を検出する電流検出部と、第2の電圧検出部及び電流検出部の検出値を用いて負荷2に供給される電流を推定する電流推定部とを備えたものである。
【0008】
電流推定部は、充電部の充電容量と第2の電圧検出部の検出値の時間変化から充電部への充電電流を考慮した負荷電流を推定することで、負荷電流検出部のない電力変換装置において負荷電流を正確に推定することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電力変換装置は、出力側の負荷電流を入力側の電流検出により正確に推定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電力変換装置を示す図
【図2】本発明の実施例の電力変換装置を示す図
【図3】本発明の実施例の電力変換装置における入出力電流の関係を示す図
【図4】本発明の実施例の電力変換装置における交流電源及び充電部の電圧波形図
【図5】本発明の実施例の電力変換装置の充電部を示す図
【図6】本発明の実施例の電力変換装置の充電部の開閉器の状態を示す図
【図7】従来の電力変換装置を示す図
【図8】従来の電力変換装置における各電流の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明の電力変換装置は、交流電源と、負荷と、前記交流電源と前記負荷との間に配置され、入出力電流が連続となる双方向スイッチ群と、前記双方向スイッチ群の入力側に接続される第1の全波整流ダイオード群と、前記双方向スイッチ群の出力側に接続される第2の全波整流ダイオード群と、前記第1の全波整流ダイオード群と前記第2の全波整流ダイオード群とを介して前記双方向スイッチ群に並列接続される充電部と、前記双方向スイッチ群の双方向スイッチのオン、オフを制御する制御部と、前記交流電源の電圧を検出する第1の電圧検出部と、前記充電部の電圧を検出する第2の電圧検出部と、前記双方向スイッチ群の入力電流を検出する電流検出部と、前記第1の電圧検出部と前記第2の電圧検出部と電流検出部の検出値を用いて双方向スイッチ群の出力電流を推定する電流推定部と、を備える。
【0012】
これにより充電部への充電電流を考慮した負荷に供給される正確な出力電流を推定することができる。
【0013】
第2の発明は、前記充電部は、第1の充電部と、第2の電圧検出部の検出値により開閉する開閉器を介して第1の充電部に並列接続される第2の充電部で構成されることにより、双方向スイッチ群への異常電圧印加防止と充電部への充電電流を考慮した負荷に供給される正確な出力電流の推定を両立することが出来る。
【0014】
第3の発明は、前記第1の充電部は、第2の充電部より充電容量を小さくすることにより、双方向スイッチ群への異常電圧印加防止と充電部への充電電流を考慮した負荷に供給される正確な出力電流の推定を両立することが出来る。
【0015】
第4の発明は、前記開閉器は第2の電圧検出部の検出値が第1の所定の値以上で開から閉へ移行し、第2の所定の値未満で閉から開へ移行し、第1の所定値と第1の充電部の充電容量の積は第2の所定値と第1および第2の充電部の合成容量との積より大きくすることにより、双方向スイッチ群への異常電圧印加防止と充電部への充電電流を考慮した負荷に供給される正確な出力電流の推定を両立するための開閉器の開閉動作による充電電圧変動によって生じる開閉器のハンチング動作を防止することができる。
【0016】
第5の発明は、前記双方向スイッチ群がGanを用いた半導体スイッチにより構成されることにより、高速スイッチング及び低い通電損失によりシステム全体の損失低減を図ることが出来る。
【0017】
第6の発明は、前記交流電源に単相交流電源、負荷に誘導性モータを用いることにより電源半周期毎に負荷が発電機として作用するシステムにおいて、入力側の電流検出により正確な出力側の電流を推定することが出来る。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図2は本発明における実施の形態における電力変換装置を示す。
【0020】
単相交流電源である交流電源1は、双方向スイッチ群3により直接スイッチングされた電力を、負荷2であるモータに供給する。双方向スイッチ群3は制御部7により双方向スイッチのオン・オフを制御され、任意の周波数および振幅に可変調整された電圧をモータへ供給される。
【0021】
双方向スイッチ群3の入力電圧は第1の全波整流ダイオード群4によって全波整流され、双方向スイッチ群3の出力電圧は第2の全波整流ダイオード群5により全波整流される。充電部6は第1の全波整流ダイオード群4及び第2の全波整流ダイオード群5に並列に接続される。電流推定部11は、交流電源1(本実施の形態では単相交流電源として説明する)の電圧検出を行う第1の電圧検出部8の検出値と、制御部7による双方向スイッチ群3の動作スイッチングパターンに同期して双方向スイッチ群3の入力電流検出を行う電流検出部10の検出値と充電部6の電圧検出を行う第2の電圧検出部9の検出値を用いて、モータに供給される電流を推定する。
【0022】
推定方法について以下に説明する。図3は双方向スイッチ群3がある動作スイッチングパターンで動作しているときの各電流、図4は充電部6の充電電圧の時間変化を示している。図3に示すように双方向スイッチ群3への入力電流Iinはモータ電流Imと充電電流Icの和になる。双方向スイッチ群3の動作スイッチングパターンに同期した電流検出部10による入力電流Iinを検出することで、そのときのモータ電流Imと充電電流Icの和を推定できる。
【0023】
充電電流Icは充電部6の充電容量をCとすると第2の電圧検出部9で検出される充電電圧値の時間変化により算出することが出来る。充電電流Icが流れない場合、充電電圧は第1の電圧検出部8により検出される単相交流電源電圧の最大値Vmaxと等しくなり、充電電流Icによる充電部6への充電は電圧値Vmaxからの増加電圧にあらわれる。図4の時間t0からt1では充電電圧はVmaxと等しいため充電電流Icは流れない。時間t1からt2では電荷量C*(V2−Vmax)が充電部6に流れ込むため、充電電流IcはC*(V2−Vmax)/(t2−t1)となる。時間t2からt3の充電電流IcはC*(V1−Vmax)/(t3−t2)となる。時間t3からt4では充電電圧がVmaxと等しくなるため充電電流Icは流れない。このように双方向スイッチ群3の動作スイッチングパターンに同期した電流検出部10による入力電流値と第2の電圧検出部9による充電電圧の時間変化より充電電流を算出、考慮することでモータ電流Imを正確に推定することができる。
【0024】
更に、充電部6の容量を第2の電圧検出部9の検出結果により切替えることで、より正確なモータ電流の推定が可能になる。図5に容量を切替えられる充電部6を示す。この充電部6は開閉器14を介して充電容量C1の第1の充電部12に充電容量C2の第2の充電部13を並列接続したものである。ここで充電容量C1と充電容量C2の合成容量は異常時において双方向スイッチ群3への異常電圧印加を防止できる値とし、充電容量C1は充電容量C2より小さく設定する。開閉器14は第2の電圧検出部9の検出値により開閉動作を行う。第2の電圧検出部9の検出値による開閉器14の開閉状態を図6に示す。開閉器14の「開」から「閉」への移行は充電電圧がVth1以上で行い、開閉器14の「閉」から「開」への移行は充電電圧がVth2未満で行う。Vth1とVth2の大小関係はVth2<C1*Vth1/(C1+C2)とする。これにより開閉器14の開閉動作に伴う充電電圧変動によるハンチング動作を防止する。このような充電部6の充電容量の切替えを行うことで、異常時には双方向スイッチ群3への異常電圧印加を防止しながら、同じ充電電流Icでも充電電圧の変化幅が大きくすることができるため、第2の電圧検出部9による充電電流Icの算出精度向上を容易に図ることが出来る。
【0025】
上記実施例では交流電源1に単相交流電源を用いた場合で説明を行ったが、三相交流電源を用いた場合でも、電流検出部10により2相分の双方向スイッチ群3への入力電流検出を行うことで同様のことを行うことが出来る。
【0026】
更に、双方向スイッチ群3をGanで構成される双方向スイッチで構成することで導通損失低減、スイッチング損失低減を図ることができシステム効率向上につながる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明は従来の電力変換装置と比較して、負荷電流を正確に推定することが可能であるため、負荷電流を用いた精度のよい制御を行う必要のあるエアコンや冷蔵庫等の圧縮機駆動用電力変換装置への応用が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 交流電源
2 負荷
3 双方向スイッチ群
4 第1の全波整流ダイオード群
5 第2の全波整流ダイオード群
6 充電部
7 制御部
8 第1の電圧検出部
9 第2の電圧検出部
10 電流検出部
11 電流推定部
12 第1の充電部
13 第2の充電部
14 開閉器
15 電源
16 スイッチ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、
負荷と、
前記交流電源と前記負荷との間に配置され、入出力電流が連続となる双方向スイッチ群と、前記双方向スイッチ群の入力側に接続される第1の全波整流ダイオード群と、
前記双方向スイッチ群の出力側に接続される第2の全波整流ダイオード群と、
前記第1の全波整流ダイオード群と前記第2の全波整流ダイオード群とを介して前記双方向スイッチ群に並列接続される充電部と、
前記双方向スイッチ群の双方向スイッチのオン、オフを制御する制御部と、
前記交流電源の電圧を検出する第1の電圧検出部と、
前記充電部の電圧を検出する第2の電圧検出部と、
前記双方向スイッチ群の入力電流を検出する電流検出部と、
前記第1の電圧検出部と前記第2の電圧検出部と前記電流検出部の検出値を用いて双方向スイッチ群の出力電流を推定する電流推定部と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記充電部は、第1の充電部と前記第2の電圧検出部の検出値により開閉する開閉器を介して第1の充電部に並列接続される第2の充電部で構成されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の充電部は、前記第2の充電部より充電容量が小さいことを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記開閉器は前記第2の電圧検出部の検出値が第1の所定の値以上で開から閉へ移行し、第2の所定の値未満で閉から開へ移行し、第1の所定値と第1の充電部の充電容量の積は第2の所定値と第1および第2の充電部の合成容量との積より大きくすることを特徴とする請求項2または請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記双方向スイッチ群は、Ganを用いた半導体スイッチにより構成される請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記交流電源に単相交流電源、前記負荷に誘導性モータを用いたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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