説明

電力変換装置

【課題】電力変換装置の小型化を図ることであり、電力変換装置の容積に対する変換する最大電力量の比を増大することである。
【解決手段】流路形成体12にコンデンサモジュール500を固定し、前記コンデンサモジュール500の外周に沿って形成された冷媒流路に両面冷却構造のパワー半導体モジュール300を複数個挿入し、前記コンデンサモジュール500や前記パワー半導体モジュール300の上にバスバーアッセンブリ800を配置し、上記バスバーアッセンブリ800を前記流路形成体12に固定するようにした。この構造によりコンデンサモジュール500とパワー半導体モジュール300とをコンパクトに配置することができ、さらにバスバーアッセンブリ800が必要する空間を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流電力を交流電力に変換しあるいは交流電力を直流電力に変換するために使用する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電力変換装置は、直流電源から直流電力を受ける平滑用のコンデンサモジュールとコンデンサモジュールから直流電力を受けて交流電力を発生するインバータ回路とインバータ回路を制御するための制御回路を備えている。前記交流電力は例えばモータに供給され、供給された交流電力に応じてモータは回転トルクを発生する。前記モータは一般的には発電機としての機能を有しており、外部からモータに対して機械エネルギが供給されると、前記モータは供給される機械エネルギに基づいて交流電力を発生する。上記電力変換装置は交流電力を直流電力に変換する機能も備えている場合が多く、モータが発生する交流電力は直流電力に変換される。直流電力から交流電力への変換、あるいは交流電力から直流電力への変換は上記制御装置によって制御される。例えば上記モータが同期電動機の場合には、同期電動機の回転子の磁極位置に対する固定子が発生する回転磁界の位相を制御することにより、上記電力変換に係る制御を行うことができる。電力変換装置の一例は特開2009−2192170号公報に開示されている。
【0003】
電力変換装置は、例えば自動車に搭載され、同じく自動車に搭載された二次電池から直流電力を受け、走行用の回転トルクを発生する電動機に供給するための交流電力を発生する。また車の回生制動運転時には制動力を発生するために電動機は走行エネルギに基づき交流電力を発生し、発生した交流電力は電力変換装置によって直流電力に変換され、上記二次電池に蓄電され、再び車両走行用などの電力として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−219270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境対策などの観点から、モータを駆動するために直流電力を交流電力に変換する電力変換装置の重要性が益々増大している。電力変換装置に対してはさらなる小型化のニーズが大きい。つまり電力変換装置の容積に対する変換電力の比をより大きくすることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、より小型化が可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を解決するための構成の1つは次の通りである。
【0008】
電力変換装置のハウジングの内に、冷却媒体を流すための冷媒流路を形成する流路形成体と直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを少なくとも1つ内蔵する複数のパワー半導体モジュールと平滑用のコンデンサモジュールとを備える。前記パワー半導体モジュールは半導体チップに電流を流すための直流端子や前記チップの動作を制御するための制御端子や交流電力を取り出す交流端子を有する。前記ハウジングの縦方向において、前記冷媒流路や前記コンデンサモジュールに対して空間を介して一方側に交流バスバーアッセンブリを配置し、前記交流バスバーアッセンブリのさらに一方側にドライバ回路を配置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力変換装置の容積に対する変換電力の比をより大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ハイブリッド自動車のシステムを示すシステム図である。
【図2】図1に示す電気回路の構成を示す回路図である。
【図3】電力変換装置の構成を説明するための分解斜視図である。
【図4】電力変換装置の全体構成を説明するために構成要素に分解した斜視図である。
【図5】流路形成体12を説明するために、図4に示す流路形成体12を底側から見た図である。
【図6】(a)は、パワー半導体モジュール300aの外観を示す斜視図である。(b)は、パワー半導体モジュール300aの断面図である。
【図7】(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いたパワー半導体モジュール300aの内部断面図である。(b)は、パワー半導体モジュール300aの内部構成を説明するための斜視図である。
【図8】(a)は、図7(b)の構造の理解を助けるための分解図である。(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。
【図9】(a)は、インダクタンスの低減効果を説明する回路図である。(b)は、インダクタンスの低減作用を説明するための説明図である。
【図10】(a)は補助モールド体600の斜視図である。(b)は補助モールド体600の透過図である。
【図11】コンデンサモジュール500の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図12】流路形成体12にパワー半導体モジュールとコンデンサモジュールとバスバーアッセンブリを組み付けた状態の外観斜視図である。
【図13】図12の破線で示す部分Aの拡大図である。
【図14】パワー半導体モジュールとコンデンサモジュールを組み付けた流路形成体12とバスバーアッセンブリ800との関係を示す分解斜視図である。
【図15】保持部材803を除いたバスバーアッセンブリ800の外観斜視図である。
【図16】パワー半導体モジュールとコンデンサモジュールとバスバーアッセンブリ800と補機用モジュール350を組み付けた流路形成体12の外観斜視図である。
【図17】説明のために制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の斜視図である。
【図18】図17の破線Bでの断面を、矢印Cの方向から見た断面図である。
【図19】図4に示す冷却部407の部分での断面図である。
【図20】流路形成体12に他の構成のパワー半導体モジュールとコンデンサモジュールとを組み付けた上面図である。
【図21】図20に示すパワー半導体モジュールと交流バスバーの接続状態を示す上面図である。
【図22】図20に示す流路形成体にバスバーアッセンブリを取り付けた状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する本発明が適用された実施の形態に記載の電力変換装置およびこの装置を使用したシステムは、製品化のために解決することが望ましい色々な課題を解決している。これら実施の形態が解決している色々な課題の一つに、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した小型化の課題があり、また上述の発明の効果の欄に記載した小型化の効果がある。すなわち以下に詳述する電力変換装置およびこの電力変換装置を使用したシステムは、製品化のために解決することが望ましい色々な課題を解決していて、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した小型化の課題があり、また上述の発明の効果の欄に記載した小型化の効果に止まらず、上記課題や効果以外に色々な課題を解決し、色々な効果を達成することができる。さらに、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した小型化の課題、また上述の発明の効果の欄に記載した小型化の効果を達成する構成についても、上述の課題を解決するための手段の欄に記載した構成だけで無く、他の構成によっても上記課題が解決でき、上記効果を得ることができる。すなわち小型化の課題や効果に関して上述した構成以外の構成によって、大きくは小型化に関する課題解決や効果達成につながるが、より具体的に見れば異なっている観点において課題が解決され、効果が得られている。以下その代表的なものを幾つか列挙する。さらにそれ以外については実施の形態の説明の中で述べる。
【0012】
より小型化が望ましい課題を解決するための構成1を次に記載する。構成1は、ハウジング内に、冷媒流路と平滑用のコンデンサモジュールを配置し、さらに前記冷媒流路に沿って縦長形状のパワー半導体モジュールを配置し、前記コンデンサモジュールから前記パワー半導体モジュールに直流電流を流すための直流バスバーを配置し、直流バスバーの縦方向における上側に交流バスバーを配置し、前記交流バスバーの上に前記パワー半導体モジュールを制御するための制御信号線を配置する構成である。この構成により、電力変換装置の全体構成をより整然とした状態で配置でき、電力変換装置の小型化が可能となる。また冷媒流路を横切る横方向における、すなわち、電力変換装置の横方向のサイズをより小さくできる効果を得ることができる。上記効果は特にインバータの上下のアームの直列回路を内蔵したパワー半導体モジュールを使用する場合に大きな効果が得られるが、上下のアームのどちらか1つのアームを挿入したパワー半導体モジュールを使用する場合であっても効果が達成できる。ただし、1つのアームを挿入したパワー半導体モジュールを使用する場合には、インバータの上アーム用と下用のパワー半導体モジュールを別々に使用するため、これらアーム接続するためのバスバー構成が増加する。
【0013】
上述の構成1において、さらにまた、直流バスバーや交流バスバーを電力変換装置のハウジング内のより側部側に配置し、これらバスバーの中央側に併設して前記コンデンサモジュールを配置でき、コンデンサモジュールの上部を有効に利用できる。例えばその他の回路をコンデンサモジュールの上部を配置でき、例えば実施の形態の如くコンプレッサなどの補機用の電動機を駆動する交流電力を発生するための補機用の半導体モジュールをこの部分に配置することができる。これらにより、電力変換装置の小型化を実現できる。さらに加えて、前記コンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの接続距離が短くなり、低インダクタンス化において効果がある。さらに溶接により電気的に接続する場合には、溶接器具を使用する空間が確保し易く、生産性が向上する。
【0014】
さらに上述の構成1において、コンデンサモジュールの外形に沿って冷媒流路を形成する流路形成体を設け、前記コンデンサモジュールを前記流路形成体に固定する構成とすることで、前記冷媒流路により前記パワー半導体モジュールと前記コンデンサモジュールとを合せて冷却できる。さらに直流バスバーや交流バスバーを側部の方に寄せて配置できるので、前記コンデンサモジュールの上側に配置した前記他の回路を流路形成体に接近して配置できる。前記パワー半導体モジュールと前記コンデンサモジュールとに加え、前記他の回路を効率的に冷却できる。前記他の回路とは回路を構成するためのいろいろな部品であっても良い。特に上述の通り、補機用の半導体モジュールを他の回路としてこの部分に配置することで、装置全体をより小型化でき、さらに補機用の半導体モジュールを効率的に冷却でき、信頼性の向上にもつながる。
【0015】
より小型化が望ましいとの課題を解決するための他の構成である構成2を次に記載する。構成2は、パワー半導体モジュールから交流電力を出力するための、あるいはモータが発生した交流電力をパワー半導体モジュールに供給するための複数の交流バスバーを幅広の導体で構成し、各交流バスバーの幅の狭い面をハウジングの縦方向に沿うように、幅の広い面を互いに対向するように並べて配置したことである。この構成により、複数の交流バスバーが占める体積を小さくできる効果がある。
【0016】
また上述の構成2に加え、上記複数の交流バスバーを交流バスバーアッセンブリとして一体化する構成とする。交流バスバーアッセンブリが、固定部を有する保持部材を有していて、前記保持部材に前記複数の交流バスバーを固定することにより前記複数の交流バスバーを一体化する構成とする。この構成により全体がより小型化できる。さらに交流バスバーアッセンブリの固定部を固定することで、前記複数の交流バスバーを固定でき、生産性が向上する。さらに他の回路やハウジング内面との緩衝の可能性も低減でき、信頼性の向上につながる。
【0017】
また上述の構成2に加え、ハウジングの側部に沿って冷媒を流すための流路を配置し、前記冷媒の流路に沿って交流バスバーを配置するようにすれば、さらに電力変換装置の小型化の達成が容易と成る。また前記冷媒の流路に沿ってパワー半導体モジュールを配置することとなるので、電気的な接続も容易となる。
【0018】
より小型化が望ましいとの課題を解決するための他の構成である構成3を次に記載する。構成3は;パワー半導体モジュールから交流電力を出力するための、あるいはモータが発生した交流電力をパワー半導体モジュールが受けるための、複数の交流バスバーを幅広の導体で構成し;各交流バスバーを、ハウジングの両側部の方にそれぞれ配置された冷媒流路に沿って配置し;両側部の前記交流バスバーに対してこれより中央の位置に、他の回路を配置したことである。他の回路としては、例えば実施の形態の如くコンプレッサなどの補機用の電動機を駆動する交流電力を発生するための補機用の半導体モジュールを配置することができる。これらにより、電力変換装置の小型化を実現できる。またこの効果に加え、補機用の半導体モジュールなどの他の回路を、冷媒流路を構成する流路形成他に直接あるいは接近して固定でき、パワー半導体モジュールに加え補機用の半導体モジュールなどの他の回路を効率良く冷却できる。
【0019】
より小型化が望ましいとの課題を解決するための他の構成である構成4を次に記載する。構成4は;冷媒の流路に沿って配置したパワー半導体モジュールから突出する信号端子の接続位置を直流端子や交流端子より、縦方向のより一方側の方の位置に設け;前記縦方向において、コンデンサモジュールや交流バスバーよりドライバ回路を縦方向においてより一方側の位置に配置したことである。このような構成とすることで、大電流を流す直流や交流バスバーを配置する位置と前記信号端子に信号を供給する配線の位置とを、縦方向において分けることができ、配線を整理して配置できる。このことは電力変換装置の小型化の実現につながる。さらに大電流を流す直流や交流バスバーを溶接接続工程により接続し、前記信号端子の接続を半田接続工程で行う場合に、溶接工程と半田工程とを分けることができ、生産性の向上につながる。
【0020】
より小型化が望ましいとの課題を解決するための他の構成である構成5を次に記載する。構成5は、電力変換装置を略直方体の構造とし、その上面の四角形の長辺側に沿って冷媒を流す冷媒流路を配置し、冷媒の流路に沿ってパワー半導体モジュールを配置し、さらに交流バスバーを幅広導体で構成すると共に、各交流導体の幅の狭い面を縦方向に、幅広面が互いに対向するようにして前記冷媒の流路に沿って伸びるように配置し、これら冷媒流路に沿って伸びる交流バスバーを前記電力変換装置の略四角形の短辺側に揃え、この短辺から交流電力を出力する構造としたことである。このような構造とすることで、交流バスバーの占める空間を小さくでき、また他の回路との配置関係が整い、電力変換装置をより小型にすることが可能となる。
【0021】
生産性の向上に係る課題を解決するための構成6を次に記載する。構成6は、電力変換装置のハウジングの内部に冷媒流路を形成するための冷媒流路形成体にコンデンサモジュールやパワー半導体モジュールを固定し、さらにその上に交流バスバーアッセンブリを配置する構造としている。このような構造とすることで、コンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの接続を容易に行うことができ、次にパワー半導体モジュールと交流バスバーアッセンブリとの接続を容易に行うことができる。このことにより、生産性が向上する。特にコンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの接続部には大電流が流れるため、溶接により電気的な接続を行うことが多い。先ずコンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとを溶接により接続し、次に交流バスバーアッセンブリを固定してパワー半導体モジュールと交流バスバーアッセンブリとを溶接により接続することが可能となる。溶接による接続では溶接の器具を溶接部分に導くことが必要となり、上記の構造では、溶接器具を溶接部分に導くことが可能となる。また先に溶接による接続を行い、次に半田による接続を行うことで、作業性が向上する。上記構造は小型化に寄与するだけでなく、溶接工程により電気的な接続を行う場合には、生産性が向上する。さらにコンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの電気的な接続やパワー半導体モジュールと交流バスバーアッセンブリとの電気的な接続に溶接工程を使用することで、パワー半導体モジュールの端子部分にねじ止めのための面積を確保することが不要となり、パワー半導体モジュールをより小型にでき、このことは電力変換装置の小型化につながる。
【0022】
生産性の向上に係る課題を解決するための他の構成7を次に記載する。構成7は;上述の構成4で説明した構成と基本的に同じであり;冷媒の流路に沿って配置したパワー半導体モジュールから突出する信号端子の接続部を直流端子や交流端子の接続部より、縦方向のより一方側の方に配置し;前記縦方向において、コンデンサモジュールや交流バスバーよりドライバ回路を縦方向におけるより一方側の方に配置したことである。このような構成とすることで、大電流を流すバスバーを配置する位置と前記信号端子に信号を供給する配線の位置とを、縦方向において分け配置することで、縦方向に順に組み立てることができ、さらに縦方向に順に接続作業を行うことができる。このことにより、生産性が向上する。
【0023】
上記構成7においてさらに、大電流を流すバスバーに関係する電気的な接続を溶接接続により行い、信号端子に関する配線の接続を半田接続により行うことで、溶接工程を半田工程と分け、直流バスバーの溶接工程と交流バスバーの溶接工程とを近づけて行うことができる。このことにより、生産性が向上する。
【0024】
信頼性の向上に係る課題を解決するための構成8を次に記載する。構成8は;金属性のハウジング内に、冷媒を流すための冷媒流路を形成する流路形成体を配置し;前記流路形成体に交流電流を流すための交流バスバーを固定し;前記交流バスバーを流れる電流を検出するための電流センサをバスバーに固定する構造である。前記流路形成体に固定されるバスバーに電流センサを配置することで、冷媒により冷却された流路形成体を介して交流バスバーを冷却し、モータ側から伝達される熱による交流バスバーの温度上昇を押さえ、電流センサの温度上昇を抑えることができる。
【0025】
例えば、電力変換装置を車両のトランスミッションの如く高温度になる可能性の有る部材に固定する場合には、ハウジングを介して熱が伝達されてくる。またモータに交流電力を供給する交流バスバーは材料が銅であるため、良好な熱伝導体である。このためモータの熱が交流バスバーを介して伝えられ、電流センサの温度を高める可能性がある。構成8では、冷媒流路を形成する前記流路形成体に交流バスバーを固定し、前記交流バスバーに電流センサを固定したので、電流センサの温度上昇を抑制でき、信頼性が向上する。
【0026】
信頼性の向上に係る課題を解決するための他の構成9を次に記載する。構成9は、上述の構成8において、固定部材および保持部材を有する交流バスバーアッセンブリを設け、この交流バスバーアッセンブリの前記保持部材により、前記交流バスバーを保持し固定する構成である。交流バスバーアッセンブリの固定手段により交流バスバーアッセンブリを前記流路形成体に固定する構成としている。交流バスバーアッセンブリ自身は上記固定部材により前記流路形成体に固定される。
【0027】
この構成により交流バスバーアッセンブリの組み付けが容易と成ると共に、交流バスバーアッセンブリを前記流路形成体により冷却することができる。交流バスバーを効率的に冷却することができる。電流センサの温度上昇を抑制できるので電流センサ信頼性および電力変換装置全体の信頼性が向上する。電流センサは高温に弱い温度特性を有しており、電流センサの熱対策は重要な解決されるべき課題である。
【0028】
信頼性の向上に係る課題を解決するための他の構成10を次に記載する。構成10は、冷媒の流れによりパワー半導体モジュールを冷却するための冷媒流路に加え、冷媒通路の外周面で冷却する構成を設け、前記外周面に冷却したい回路を配置する構成とした。より具体的には、冷媒の流れにより冷却するためにパワー半導体モジュールを冷媒流路内に挿入し、外周面により冷却するために冷却したい回路を前記外周面に密着させる構成とした。冷却したい回路としては、例えば実施の形態に説明の如く、車載コンプレッサなどの車載の補機用の電動機に供給する交流電力を発生するための補機用の半導体モジュールがあり、前記補機用の半導体モジュールを冷却のための前記外周面に固定する構成としている。
【0029】
以下の実施の形態では、前記冷媒流路を形成する流路形成体に、冷媒である水を溜める空間を形成し、流路形成体の外周面の内の前記水を溜める空間の外周面に前記補機用の半導体モジュールを配置している。この構成により、パワー半導体モジュールを冷却すると共に前記補機用の半導体モジュールを効率的に冷却できる。
【0030】
前記構成10に加え、流路形成体に平滑用のコンデンサモジュールを収納する窪みを形成し、流路形成体に前記コンデンサモジュールを固定することで、前記パワー半導体モジュールと前記補機用の半導体モジュールと前記コンデンサモジュールを効率良く冷却できると共に、これらをコンパクトに配置でき、電力変換装置のより小型化と効率の良い冷却とを両立できる。さらにこれらを流路形成体に固定したので電力変換装置の組み体制にも優れている。
【0031】
次に図面を使用して本発明に係る実施の形態を説明する。図1は本発明に係る電力変換装置を、エンジンとモータの両方を使用して走行するいわゆるハイブリッド用自動車に適用したシステムズである。本発明に係る電力変換装置はハイブリッド用車両のみならず、モータのみで走行するいわゆる電気自動車にも適用可能であり、また一般産業機械に使用されているモータを駆動するための電力変換装置としても使用可能である。しかし上述あるいは以下に説明のとおり、本発明に係る電力変換装置は特に上記ハイブリッド用自動車や上記電気自動車に適用すると、小型化の観点あるいは信頼性の観点、その他、いろいろの観点で優れた効果が得られる。ハイブリッド用自動車に適用した電力変換装置は電気自動車に適用した電力変換装置と略同じ構成であり、代表例としてハイブリッド自動車に適用した電力変換装置について説明する。
【0032】
図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。エンジンEGNおよびモータジェネレータMG1,モータジェネレータMG2は車両の走行用トルクを発生する。またモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMG1あるいはモータジェネレータMG2に外部から加えられる機械エネルギを電力に変換する機能を有する。
【0033】
モータジェネレータMG1あるいはMG2は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。モータジェネレータMG1あるいはMG2を自動車に搭載する場合に、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジュームなどの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また永久磁石型の同期電動機は、誘導電動機に比べて回転子の発熱が少なく、この観点でも自動車用として優れている。
【0034】
エンジンEGNの出力側及びモータジェネレータMG2の出力トルクは動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMG1に伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMG1が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達され。一方回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータMG1に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述するように電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギとして使用される。また高電圧用のバッテリ136の蓄電している電力が少なくなった場合に、エンジンEGNが発生する回転エネルギをモータジェネレータMG2により交流電力に変換し、次に交流電力を電力変換装置200により直流電力に変換し、バッテリ136を充電することができる。エンジンEGNからモータジェネレータMG2への機械エネルギの伝達は動力分配機構TSMによって行われる。
【0035】
次に電力変換装置200について説明する。インバータ回路140と142は、バッテリ136と直流コネクタ138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140あるいは142との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータMG1をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流端子188を介してモータジェネレータMG1に供給する。モータジェネレータMG1とインバータ回路140からなる構成は第1電動発電ユニットとして動作する。同様にモータジェネレータMG2をモータとして動作させる場合には、インバータ回路142は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流端子159を介してモータジェネレータMG2に供給する。モータジェネレータMG2とインバータ回路142からなる構成は第2電動発電ユニットとして動作する。第1電動発電ユニットと第2電動発電ユニットは、運転状態に応じて両方をモータとしてあるいは発電機として運転する場合、あるいはこれらを使い分けて運転する場合がある。また片方を運転しないで、停止することも可能である。なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータMG1の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0036】
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機用のモータとしては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136から直流電力が補機用モジュール350に供給され、補機用モジュール350で交流電力を発生し、交流端子120を介して補機用モータ195に供給される。補機用モジュール350はインバータ回路140や142と基本的には同様の回路構成および機能を持ち、補機用モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。補機用モータ195の容量がモータジェネレータMG1や194の容量より小さいので、補機用モジュール350の最大変換電力がインバータ回路140や142より小さいが、上述の如く補機用モジュール350の基本的な構成や基本的な動作はインバータ回路140や142と略同じである。なお、電力変換装置200は、インバータ回路140やインバータ回路142,インバータ回路350Bに供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
【0037】
電力変換装置200は上位の制御装置から指令を受けたりあるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。コネクタ21からの指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータMG1やモータジェネレータMG2,補機用モータ195の制御量を演算し、さらにモータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、ドライバ回路174や補機用モジュール350のドライバ回路350Bへ、上記制御パルスを供給する。補機用モジュール350は専用の制御回路を有しても良い、この場合はコネクタ21からの指令に基づいて上記専用の制御回路が制御パルスを発生し、補機用モジュール350のドライバ回路350Bへ供給する。上記制御パルスに基づいてドライバ回路174がインバータ回路140やインバータ回路142を制御するための駆動パルスを発生する。また補機用モジュール350のインバータ回路350Bを駆動するための制御パルスをドライバ回路350Aが発生する。
【0038】
次に、図2を用いてインバータ回路140やインバータ回路142の電気回路の構成を説明する。図1に示す補機用モジュール350のインバータ350Bの回路構成も基本的にはインバータ回路140の回路構成と類似しているので、図2においてインバータ350Bの具体的な回路構成の説明は省略し、インバータ回路140を代表例として説明する。ただし、補機用モジュール350は出力電力が小さいので、以下に説明する各相の上アームや下アームを構成する半導体チップや該チップを接続する回路が補機用モジュール350の中に集約されて配置されている。
【0039】
さらにインバータ回路140やインバータ回路142は回路構成も動作も極めて類似しているので、インバータ回路140で代表して説明する。
【0040】
なお以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。インバータ回路140は、上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アームの直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相,V相,W相からなる3相に対応して備えている。これらの3相はこの実施の形態では、モータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、前記直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流が出力され、この交流電流は交流端子159及び交流コネクタ188を通して、モータジェネレータMG1への交流電力線である以下に説明の交流バスバー802や804と接続する。
【0041】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504にそれぞれ電気的に接続されている。
【0042】
上述のように、制御回路172は上位の制御装置からコネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいてインバータ回路140を構成する各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、この変換された電力はモータジェネレータMG1に供給される。
【0043】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としてはIGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
【0044】
コンデンサモジュール500は、複数の正極側のコンデンサ端子506と複数の負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、コンデンサモジュール500の複数の正極側のコンデンサ端子506や複数の負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140やインバータ回路142,補機用モジュール350へ供給される。一方交流電力からインバータ回路140やインバータ回路142によって変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサモジュール500に供給され、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
【0045】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報として、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
【0046】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータMG1のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0047】
また、制御部170は、異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極155及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0048】
図3は、本発明に係る実施の形態としての電力変換装置200の分解斜視図を示す。電力変換装置200は、トランスミッションTMに固定された電力変換装置200の回路部品を収納するためのアルミニウム製の底を有するハウジング10と蓋8とを有する。電力変換装置200は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。流路形成体12は、後述するパワー半導体モジュール300及びコンデンサモジュール500を保持するとともに、冷却媒体によってこれらを冷却する。また、流路形成体12は、ハウジング10に固定され、かつハウジング10の底部に入口配管13と出口配管14が設けられている。入口配管13から冷却媒体である水が流路形成体12に流入し、冷却に使用した後と出口配管14から流出する。
【0049】
蓋8は、電力変換装置200を攻勢する回路部品を収納し、ハウジング10に固定される。蓋8の内側の上部には、制御回路172を実装した制御回路基板20が配置されている。蓋8には、外部に繋がる第1開口202と第2開口204とが設けられており、第1開口202を介して前記コネクタ21が外部の制御装置と接続され、制御回路基板20に設けられた制御回路172と上位の制御装置などの外部の制御装置との間で信号伝送を行う。電力変換装置200内の制御回路を動作させる低電圧の直流電力は、前記コネクタ21から供給される。第2開口204には、バッテリ136との間で直流電力を送受するための直流コネクタ138が設けられており、電力変換装置200内部に高電圧直流電力を供給するための負極側電力線510と正極側電力線512は、バッテリ136と直流電力の授受を行う直流コネクタ138とコンデンサモジュール500などとを電気的に接続する。
【0050】
コネクタ21と負極側電力線510や正極側電力線512は、蓋8の底面に向かって延ばされ、コネクタ21は第1開口202から突出し、また負極側電力線510や正極側電力線512の先端部は、第2開口204から突出して直流コネクタ138の端子を構成する。蓋8には、その内壁の第1開口202及び第2開口204の周りにシール部材(不図示)が設けられる。コネクタ21等の端子の嵌合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から嵌合面を上向きにして出すことが好ましい。特に、本実施形態のように、電力変換装置200が、トランスミッションTMの上方に配置される場合には、トランスミッションTMの配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。また、コネクタ21は外部の雰囲気からシールする必要があるが、コネクタ21に対して蓋8を上方向から組付ける構成となることで、蓋8がハウジング10に組付けられたときに、蓋8と接触するシール部材がコネクタ21を押し付けることができ、気密性が向上する。
【0051】
図4は、電力変換装置200のハウジング10の内部に収納される構成を理解を助けるために分解した斜視図である。流路形成体12には、図5に示す冷媒流路19が両サイドに沿うように形成されている。該冷媒流路19の一方側の上面には、開口部400a〜400cが冷媒の流れ方向418に沿って形成され、また該冷媒流路19の他方側の上面には、開口部402a〜402cが冷媒の流れ方向422に沿って形成されている。開口部400a〜400cは、挿入されたパワー半導体モジュール300a〜300cによって塞がれる、また開口部402a〜402cは挿入されたパワー半導体モジュール301a〜301cによって塞がれる。
【0052】
流路形成体12が形成する一方と他方の流路の間には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成され、コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納される。これにより、冷媒流路19内に流れる冷媒によってコンデンサモジュール500は冷やされる。コンデンサモジュール500は、冷媒の流れ方向418を形成するための冷媒流路19と、冷媒の流れ方向422を形成するための冷媒流路19に挟まれるため、効率良く冷却することができる。またコンデンサモジュール500の外側面に沿って冷媒を流す流路が形成されているので、冷却効率が向上すると共に、冷媒流路やコンデンサモジュール500やパワー半導体モジュール300と301との配置が整然と整い、全体がより小型と成る。また冷媒流路19がコンデンサモジュール500の長辺に沿って配置されており、冷媒流路19と冷媒流路19に挿入固定されるパワー半導体モジュール300と301との距離が略一定となるので、平滑コンデンサとパワー半導体モジュール回路との回路定数が3相の各層においてバランスし易くなり、スパイク電圧を低減し易い回路構成となる。本実施の形態では、冷媒としては水が最も適している。しかし、水以外であっても利用できるので、以下冷媒と記す。
【0053】
流路形成体12には、入口配管13と出口配管14と対向する位置に冷媒の流れを変える空間を内部に備える冷却部407が設けられている。冷却部407は、流路形成体12と一体に形成され、この実施の形態では、補機用モジュール350を冷却するために利用される。補機用モジュール350は冷却部407の外周面である冷却面に固定され、前記冷却面の内側に形成された空間に冷媒を蓄え、この冷媒によって冷却部407が冷却され、補機用モジュール350の温度上昇が抑えられる。前記冷媒は前記冷媒流路19内を流れる冷媒であり、パワー半導体モジュール300や301とコンデンサモジュール500と共に補機用モジュール350が冷却される。補機用モジュール350の両側部には、後述するバスバーアッセンブリ800が配置される。バスバーアッセンブリ800は、交流バスバー186や保持部材を備えており、電流センサ180を保持し、固定している。詳細は後述する。
【0054】
このように流路形成体12の中央部にコンデンサモジュール500の収納空間405を設け、その収納空間405を挟むように冷媒流路19を設け、それぞれの冷媒流路19に車両駆動用のパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cを配置し、さらに流路形成体12の上面に補機用モジュール350を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。
【0055】
また流路形成体12の冷媒流路19の主構造を流路形成体12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、冷媒流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで流路形成体12と冷媒流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。なお、パワー半導体モジュール300a〜300cとパワー半導体モジュール301a〜301cを冷媒流路19に固定することで冷媒流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用モジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。このように、電力変換装置200の底部に流路形成体12を配置し、次にコンデンサモジュール500,補機用モジュール350,バスバーアッセンブリ800,基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
【0056】
ドライバ回路基板22は、補機用モジュール350及びバスバーアッセンブリ800の上方、すなわち蓋側に配置される。またドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置され、金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。さらに制御回路基板20の機械的な共振周波数を高める作用をする。すなわち金属ベース板11に制御回路基板20を固定するためのねじ止め部を短い間隔で配置することが可能となり、機械的な振動が発生した場合の支持点間の距離を短くでき、共振周波数を高くできる。トランスミッションから伝わる振動周波数に対して制御回路基板20の共振周波数を高くできるので、振動の影響を受け難く、信頼性が向上する。
【0057】
図5は流路形成体12を説明するための説明図で、図4に示す流路形成体12を下から見た図ある。流路形成体12とこの流路形成体12の内部にコンデンサモジュール500の収納空間405(図4参照)に沿って形成された冷媒流路19は一体に鋳造されている。流路形成体12の下面には、1つに繋がった開口部404が形成され、該開口部404は、中央部に開口を有する下カバー420によって塞がれる。下カバー420と流路形成体12の間には、シール部材409a及びシール部材409bが設けられ気密性を保っている。
【0058】
下カバー420には、一方の端辺の近傍であって当該端辺に沿って、入口配管13(図4参照)を挿入するための入口孔401と、出口配管14(図4参照)を挿入するための出口孔403が形成される。また下カバー420には、トランスミッションTMの配置方向に向かって突出する凸部406が形成される。凸部406は、パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cに対応して設けられている。冷媒は、点線で示す流れ方向417の方向に、入口孔401を通って、流路形成体12の短手方向の辺に沿って形成された第1流路部19aに向かって流れる。第1流路部19aは冷媒の流れを変える空間を形成しており、該空間で冷却部407の内面に衝突し、流れの方向を変える。この衝突時に冷却部407の熱を奪う作用を為す。そして冷媒は、流れ方向418のように、流路形成体12の長手方向の辺に沿って形成された第2流路部19bを流れる。また冷媒は、流れ方向421のように、流路形成体12の短手方向の辺に沿って形成された第3流路部19cを流れる。第3流路部19cは折り返し流路を形成する。また、冷媒は、流れ方向422のように、流路形成体12の長手方向の辺に沿って形成された第4流路部19dを流れる。第4流路部19dは、コンデンサモジュール500を挟んで第2流路部19bと対向する位置に設けられる。さらに、冷媒は、流れ方向423のように、流路形成体12の短手方向の辺に沿って形成された第5流路部19e及び出口孔403を通って出口配管14に流出する。
【0059】
第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19c,第4流路部19d及び第5流路部19eは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。パワー半導体モジュール300a〜300cが、流路形成体12の上面側に形成された開口部400a〜400cから挿入され(図4参照)、第2流路部19b内の収納空間に収納される。なお、パワー半導体モジュール300aの収納空間とパワー半導体モジュール300bの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408aが形成される。同様に、パワー半導体モジュール300bの収納空間とパワー半導体モジュール300cの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408bが形成される。中間部材408a及び中間部材408bは、その主面が冷媒の流れ方向に沿うように形成される。第4流路部19dも第2流路部19bと同様にパワー半導体モジュール301a〜301cの収納空間及び中間部材を形成する。また、流路形成体12は、開口部404と開口部400a〜400c及び402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
【0060】
下カバー420には、ハウジング10と当接し、電力変換装置200を支持するための支持部410a及び支持部410bが設けられる。支持部410aは下カバー420の一方の端辺に近づけて設けられ、支持部410bは下カバー420の他方の端辺に近づけて設けられる。これにより、電力変換装置200の流路形成体12を、トランスミッションTMやモータジェネレータMG1の円柱形状に合わせて形成されたハウジング10の内壁に強固に固定することができる。
【0061】
また、支持部410bは、抵抗器450を支持するように構成されている。この抵抗器450は、乗員保護やメンテナンス時における安全面に配慮して、コンデンサセルに帯電した電荷を放電するためのものである。抵抗器450は、高電圧の電気を継続的に放電できるように構成されているが、万が一抵抗器もしくは放電機構に何らかの異常があった場合でも、車両に対するダメージを最小限にするように配慮した構成とする必要がある。つまり、抵抗器450がパワー半導体モジュールやコンデンサモジュールやドライバ回路基板等の周辺に配置されている場合、万が一抵抗器450が発熱,発火等の不具合を発生した場合に主要部品近傍で延焼する可能性が考えられる。
【0062】
そこで本実施形態では、パワー半導体モジュール300a〜300cやパワー半導体モジュール301a〜301cやコンデンサモジュール500は、流路形成体12を挟んで、トランスミッションTMを収納したハウジング10とは反対側に配置され、かつ抵抗器450は、流路形成体12とハウジング10との間の空間に配置される。これにより、抵抗器450が金属で形成された流路形成体12及びハウジング10で囲まれた閉空間に配置されることになる。なお、コンデンサモジュール500内のコンデンサセルに貯まった電荷は、図4に示されたドライバ回路基板22に搭載されたスイッチング手段のスイッチング動作によって、流路形成体12の側部を通る配線を介して抵抗器450に放電制御される。本実施形態では、スイッチング手段によって高速に放電するように制御される。放電を制御するドライバ回路基板22と抵抗器450の間に、流路形成体12が設けられているので、ドライバ回路基板22を抵抗器450から保護することができる。また、抵抗器450は下カバー420に固定されているので、冷媒流路19と熱的に非常に近い位置に設けられているので、抵抗器450の異常な発熱を抑制することができる。
【0063】
図6乃至図10を用いてインバータ回路140およびインバータ回路142に使用されるパワー半導体モジュール300a〜300cおよびパワー半導体モジュール301a〜301cの詳細構成を説明する。上記パワー半導体モジュール300a〜300cおよびパワー半導体モジュール301a〜301cはいずれも同じ構造であり、代表してパワー半導体モジュール300aの構造を説明する。尚、図6乃至図10において信号端子325Uは、図2に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは、図2に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また直流正極端子315Bは、図2に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは、図2に開示した負極端子158と同一のものである。また交流端子321は、図2に開示した交流端子159と同じものである。
【0064】
図6(a)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aの斜視図である。図6(b)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aの断面図である。
【0065】
上下アームの直列回路150を構成するパワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)が、図7乃至図9に示す如く、導体板315や導体板318によって、あるいは導体板316や導体板319によって、両面から挟んで固着される。これら導体板には、信号端子325Uや信号端子325Lである信号配線を一体成型して成る補助モールド体600が組みつけられる。導体板315等は、その放熱面が露出した状態で第一封止樹脂348によって封止され、当該放熱面に絶縁シート333が熱圧着される。第一封止樹脂348により封止されたモジュール一次封止体302は、モジュールケース304の中に挿入して絶縁シート333を挟んで、CAN型冷却器であるモジュールケース304の内面に熱圧着される。ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。
【0066】
モジュールケース304は、アルミ合金材料例えばAl,AlSi,AlSiC,Al−C等から構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。モジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306は、フランジ304Bよって、その外周を囲まれている。また、図6(a)に示されるように、他の面より広い面を有する第1放熱面307A及び第2放熱面307Bがそれぞれ対向した状態で配置され、当該対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面は、当該第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が図6(a)に示す如く曲面を成していても良い。
【0067】
このような形状の金属性のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷媒が流れる冷媒流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。また、対向した第1放熱面307Aと第2放熱面307Bに、フィン305がそれぞれ均一に形成される。さらに、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている湾曲部304Aが形成されている。湾曲部304Aは、フィン305を加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
【0068】
モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第二封止樹脂351を充填される。また、図8及び図9に示されるように、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315B(157)と直流負極端子319B(158)が形成されている。モータジェネレータMG1あるいは194に交流電力を供給するための交流配線320が設けられており、その先端に交流端子321(159)が形成されている。本実施形態では、直流正極配線315Aは導体板315と一体成形され、直流負極配線319Aは導体板319と一体成形され、交流配線320は導体板316と一体成形される。
【0069】
上述のように導体板315等を絶縁シート333を介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、導体板とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305へ伝達できる。さらに絶縁シート333にある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁シート333で吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
【0070】
図7(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いた内部断面図である。図7(b)は、内部斜視図である。図8(a)は、図7(b)の構造の理解を助けるための分解図である。図8(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。また、図9(a)は、インダクタンスの低減効果を説明する回路図であり、図9(b)は、インダクタンスの低減作用を説明するための電流の流れを示す斜視図である。
【0071】
まず、パワー半導体素子(IGBT328,IGBT330,ダイオード156,ダイオード166)と導体板の配置を、図8(b)に示された電気回路と関連付けて説明する。図7(b)に示されるように、直流正極側の導体板315と交流出力側の導体板316は、略同一平面状に配置される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板316には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。同様に、交流導体板318と導体板319は、略同一平面状に配置される。交流導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えばはんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。
【0072】
各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。図7(a)に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板316と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板316と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。また、導体板316と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。
【0073】
直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、樹脂材料で成形された補助モールド体600を介して対向した状態で略平行に延びる形状を成している。信号端子325Uや信号端子325Lは、補助モールド体600に一体に成形されて、かつ直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。補助モールド体600に用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aと信号端子325Uと信号端子325Lとの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。さらに、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aを略平行に対向するように配置したことにより、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。
【0074】
低インダクタンス化が生じる作用について、図9(a)を用いて説明する。図9(a)において、下アーム側のダイオード166が順方向バイアス状態で導通している状態とする。この状態で、上アーム側IGBT328がON状態になると、下アーム側のダイオード166が逆方向バイアスとなりキャリア移動に起因するリカバリ電流が上下アームを貫通する。このとき、各導体板315,316,318,319には、図9(b)に示されるリカバリ電流360が流れる。リカバリ電流360は、点線で示されるとおり、直流負極端子319B(158)と対向に配置された直流正極端子315B(157)を通り、続いて各導体板315,316,318,319により形成されるループ形状の経路を流れ、再び直流正極端子315B(157)と対向に配置された直流負極端子319B(158)を介して実線に示すように流れる。ループ形状経路を電流が流れることによって、モジュールケース304の第1放熱面307A及び第2放熱面307Bに渦電流361が流れる。この渦電流361の電流経路に等価回路362が発生する磁界相殺効果によって、ループ形状経路における配線インダクタンス363が低減する。
【0075】
なお、リカバリ電流360の電流経路がループ形状に近いほど、インダクタンス低減作用が増大する。本実施形態では、ループ形状の電流経路は点線で示す如く、導体板315の直流正極端子315B(157)側に近い経路を流れ、IGBT328及びダイオード156内を通る。そしてループ形状の電流経路は実線で示す如く、導体板318の直流正極端子315B(157)側より遠い経路を流れ、その後、点線で示す如く導体板316の直流正極端子315B(157)側より遠い経路を流れ、IGBT330及びダイオード166内を通る。さらにループ形状の電流経路は実線で示す如く、導体板319の直流負極配線319A側に近い経路を流れる。このようにループ形状の電流経路が、直流正極端子315B(157)や直流負極端子319B(158)に対して、近い側や遠い側の経路を通ることで、よりループ形状に近い電流経路が形成される。
【0076】
図10(a)は補助モールド体600の斜視図、図10(b)は補助モールド体600の透過図である。
【0077】
補助モールド体600は、信号導体324をインサート成形により一体化している。ここで、信号導体324は、上アーム側のゲート電極端子154やエミッタ電極端子155及び上アーム側のゲート電極端子164やエミッタ電極端子165(図2参照)、さらにはパワー半導体素子の温度情報を伝達するための端子が含まれる。本実施形態の説明では、これらの端子を総称して、信号端子325U,325Lと表現する。
【0078】
信号導体324は、一方の端部に信号端子325Uや325Lを形成し、他方の端部に素子側信号端子326Uや326Lを形成する。素子側信号端子326Uや326Lは、パワー半導体素子の表面電極に設けられた信号パッドと、例えばワイヤにより接続される。第1封止部601Aは、図8(a)に示された直流正極配線315Aや直流負極配線319Aあるいは交流配線320の形状の長軸に対してこれを横切る方向に延びる形状を成す。一方、第2封止部601Bは、直流正極配線315Aや直流負極配線319Aあるいは交流配線320の形状の長軸に対して略平行な方向に延びる形状を成す。また、第2封止部601Bは、上アーム側の信号端子325Uを封止するための封止部と、下アーム側の信号端子325Lを封止するための封止部とにより構成される。
【0079】
補助モールド体600は、その長さが、横に並べられた導体板315と316との全体の長さ、あるいは横に並べられた導体板319と320との全体の長さより長く形成される。つまり、横に並べられた導体板315と316の長さ、あるいは横に並べられた導体板319と320の長さが、補助モールド体600の横方向の長さの範囲内に入っている。
【0080】
第1封止部601Aは、窪み形状を成しておりかつ当該窪みに直流負極配線319Aを嵌合するための配線嵌合部602Bを形成する。また第1封止部601Aは、窪み形状を成しておりかつ当該窪みに直流正極配線315Aを嵌合するための配線嵌合部602Aを形成する。さらに第1封止部601Aは、配線嵌合部602Aの側部に配置されおり、かつ窪み形状を成し、さらに当該窪みに交流配線320を嵌合するための配線嵌合部602Cを形成する。これら配線嵌合部602A〜602Cに各配線が嵌合されることにより、各配線の位置決めが為される。これにより、各配線を強固に固定した後に樹脂封止材の充填作業を行うことが可能となり、量産性が向上する。
【0081】
また、配線絶縁部608が、配線嵌合部602Aと配線嵌合部602Bの間から、第1封止部601Aから遠ざかる方向に突出する。板形状を成す配線絶縁部608が直流正極配線315Aと直流負極配線319Aの間に介在することにより、絶縁性を確保しながら、低インダクタンス化のための対向配置が可能となる。
【0082】
また、第1封止部601Aには、樹脂封止する際に用いられる金型と接触する金型押圧面604が形成され、かつ金型押圧面604は、樹脂封止する際の樹脂漏れを防止するための突起部605が第1封止部601の長手方向の外周を一周して形成される。突起部605は、樹脂漏れ防止効果を高めるために、複数設けられる。さらに、これら配線嵌合部602Aと配線嵌合部602Bにも突起部605が設けられているので、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aの周囲から樹脂封止材が漏れるのを防止できる。ここで、第1封止部601A,第2封止部601B、及び突起部605の材料としては、150〜180℃程度の金型に設置されることを考慮すると、高耐熱性が期待できる熱可塑性樹脂の液晶ポリマーやポリブチレンテレクタレート(PBT)やポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)が望ましい。
【0083】
また、第1封止部601Aの短手方向のパワー半導体素子側には、図10(b)に示される貫通孔606が長手方向に複数設けられる。これにより、貫通孔606に第一封止樹脂348が流入して硬化することにより、アンカー効果が発現して、補助モールド体600は第一封止樹脂348に強固に保持され、温度変化や機械的振動によって応力がかかっても両者は剥離しない。貫通孔の変わりに凸凹の形状としても剥離しがたくなる。また、第1封止部601Aにポリイミド系のコート剤を塗布するか、あるいは表面を粗化することでもある程度の効果が得られる。
【0084】
モジュール一次封止体302における第1封止樹脂348の封止工程では、まず各配線を支持した補助モールド体600を、150〜180℃程度に余熱された金型に挿入する。本実施形態では、補助モールド体600,直流正極配線315A,直流負極配線319A,交流配線320,導体板315,導体板316,導体板318,導体板319が、それぞれ強固につながっているため、補助モールド体600を所定の位置に設置することで主要回路およびパワー半導体素子が所定の位置に設置される。従って生産性が向上すると共に、信頼性が向上する。
【0085】
また、第2封止部601Bは、モジュールケース304近傍からドライバ回路基板22近傍まで延ばされるように形成される。これにより、強電配線の間をかいくぐってドライバ回路基板22との配線を行う際に、高電圧にさらされても正常にスイッチング制御信号を伝達できるようになる。また、直流正極配線315A,直流負極配線319A,交流配線320,信号端子325U及び信号端子325Lが、モジュールケース304から同一方向に突出しても、電気的絶縁を確保することができ、信頼性を確保できる。
【0086】
図11は、コンデンサモジュール500の内部構造を説明するための分解斜視図である。積層導体板501は、板状の幅広導体で形成された負極導体板505及び正極導体板507、さらに負極導体板505と正極導体板507に挟まれた絶縁シート517により構成されている。積層導体板501は以下に説明の如く、各相の上下アームの直列回路150を流れる電流に対して磁束を互いに相殺しあうので、上下アームの直列回路150を流れる電流に関して低インダクタンス化が図られる。積層導体板501は、略長方形形状を成す。負極側の電源端子508及び正極側の電源端子509は、積層導体板501の短手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成され、それぞれ正極導体板507と負極導体板505に接続されている。正極側の電源端子509及び負極側の電源端子508には、図2で説明した如く、直流コネクタ138を介して直流電力が供給される。
【0087】
コンデンサ端子503a〜503cは、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で、各パワー半導体モジュール300の正極端子157(315B)及び負極端子158(319B)に対応して形成される。また、コンデンサ端子503d〜503fは、積層導体板501の長手方向の他方の辺から立ち上げられた状態で、各パワー半導体モジュール301の正極端子157(315B)及び負極端子158(319B)に対応して形成される。なお、コンデンサ端子503a〜503fは、積層導体板501の主面を横切る方向に立ち上げられている。コンデンサ端子503a〜503cは、パワー半導体モジュール300a〜300cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503d〜503fは、パワー半導体モジュール301a〜301cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503aを構成する負極側コンデンサ端子504aと正極側コンデンサ端子506aとの間には、絶縁シート517の一部が設けられ、絶縁が確保されている。他のコンデンサ端子503b〜503fも同様である。なお、本実施形態では、負極導体板505,正極導体板507,バッテリ負極側端子508,バッテリ正極側端子509,コンデンサ端子503a〜503fは、一体に成形された金属製板で構成され、上下アームの直列回路150を流れる電流に対してインダクタンス低減の効果を有する。
【0088】
コンデンサセル514は、積層導体板501の下方であるコンデンサモジュール500の内部側に、複数個設けられる。本実施の形態では、8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べられ、かつさらに別の8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べられ、合計16個のコンデンサセルが設けられる。積層導体板501の長手方向のそれぞれの辺に沿って並べられたコンデンサセル514は、図11に示される点線AAを境にて対称に並べられる。これにより、コンデンサセル514によって平滑化された直流電流をパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cに供給する場合に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化され、積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができる。また、電流が積層導体板501にて局所的に流れることを防止できるので、熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
【0089】
コンデンサセル514が冷媒流路に沿った方向に多数配置されているので、冷媒流路に沿って配置されるパワーモジュール300やパワー半導体モジュール301のU相,V相,W相の上下アームの直列回路150に対して均一化し易い傾向となる。また各コンデンサセル514を冷媒により均一に冷却できる効果がある。またコンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化されて積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができ、かつ熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
【0090】
コンデンサセル514は、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にアルミなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極,負極としたフィルムコンデンサを用いる。コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極,負極電極となり、スズなどの導電体を吹き付けて製造される。
【0091】
コンデンサケース502は、コンデンサセル514を収納するための収納部511を備え、上記収納部511は、図に記載の上面及び下面が略長方形状を成す。コンデンサケース502には、コンデンサモジュール500を流路形成体12に固定するための固定手段例えば螺子を貫通させるための孔520a〜520hが設けられる。パワー半導体モジュールとの間に、孔520b,孔520c,孔520f,孔520gが設けられることで、パワー半導体モジュールと冷媒流路19との気密性を向上させている。収納部511の底面部513は、円筒形のコンデンサセル514の表面形状に合わせるように、なめらかな凹凸形状若しくは波形形状を成している。これにより、積層導体板501とコンデンサセル514が接続されたモジュールをコンデンサケース502に位置決めされることが容易になる。また、積層導体板501とコンデンサセル514がコンデンサケース502に収納された後に、コンデンサ端子503a〜503fと負極側の電源端子508及び正極側の電源端子509を除いて、積層導体板501が覆われるようにコンデンサケース502内に充填材(不図示)が充填される。底面部513がコンデンサセル514の形状に合わせて波形形状となっていることにより、充填材がコンデンサケース502内に充填される際に、コンデンサセル514が所定位置からずれることを防止できる。
【0092】
また、コンデンサセル514は、スイッチング時のリップル電流により、内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜,内部導体の電気抵抗により発熱する。そこで、コンデンサセル514の熱を、コンデンサケース502を介して逃がし易くするために、コンデンサセル514を充填材でモールドする。さらに樹脂製の充填材を用いることにより、コンデンサセル514の耐湿も向上させることができる。本実施形態では、コンデンサモジュール500の収納部511の長手方向に沿って冷媒流路が設けられており、冷却効率が向上する。さらに、本実施形態では、コンデンサモジュール500は、収納部511の長手方向の辺を形成する側壁が冷媒流路19に挟まれように配置されているので、コンデンサモジュール500を効率良く冷やすことができる。また、コンデンサセル514は、当該コンデンサセル514の電極面の一方が収納部511の長手方向の辺を形成する内壁と対向するように配置されている。これにより、フィルムの巻回軸の方向に熱が伝達し易いので、熱がコンデンサセル514の電極面を介してコンデンサケース502に逃げやすくなっている。
【0093】
以下の説明で、直流正極端子315Bと図2に記載の正極端子157は同じものである。また直流負極端子319Bと図2に記載の負極端子158は同じものである。図12は、流路形成体12にパワー半導体モジュールとコンデンサモジュールとバスバーアッセンブリを組み付けた外観斜視図である。図13は、図12の部分Aの拡大図である。図11および図12,図13において、直流正極端子315B(157),直流負極端子319B(158),交流端子321(159)及び第2封止部601Bは、ハウジング10の縦方向に蓋側に向けて延びている。直流正極端子315B(157)及び直流負極端子319B(158)の電流経路の面積は、積層導体板501の電流経路の面積より非常に小さい。そのため、電流が積層導体板501から直流正極端子315B(157)及び直流負極端子319B(158)に流れる際には、電流経路の面積が大きく変化することになる。つまり、電流が直流正極端子315B(157)及び直流負極端子319B(158)に集中することになる。また、直流正極端子315B(157)及び直流負極端子319B(158)が積層導体板501を横切る方向に突出する場合、言い換えると、直流正極端子315B(157)及び直流負極端子319B(158)が積層導体板501とねじれの関係にある場合、新たな接続用導体が必要になり生産性低下やコスト増大の可能性がある。
【0094】
そこで、本実施形態では、負極側コンデンサ端子504aは、積層導体板501から立ち上がっている立ち上がり部を有し、その先端部に接続部542を有している。また、正極側コンデンサ端子506aは、積層導体板501から立ち上がっている立ち上がり部を有し、その先端部に接続部545を有している。前記接続部542と前記接続部545との間にパワー半導体モジュール300や301の直流負極端子319B(158)や直流正極端子315B(157)が挟まれるようにして接続されている。これにより、コンデンサ端子504aや506aが接続部542や545の直前まで絶縁シートを介した積層構造を成すため、電流が集中する当該コンデンサ端子504aや506aの配線部分のインダクタンスを低減することができる。さらに、直流負極端子319B(158)の先端と接続部542の側辺とは溶接により接続され、同様に直流正極端子315B(157)の先端と接続部545の側辺とは溶接により接続される。このため、低インダクタンス化による特性改善に加え生産性を向上させることができる。
【0095】
パワー半導体モジュール300や301の交流端子321(159)の先端は交流バスバー802aの先端とは溶接により接続される。溶接をするための生産設備において、溶接機械を溶接対象に対して複数方向に可動できるように作ることは、生産設備を複雑化させることにつながり生産性及びコスト的な観点から好ましくない。そこで、本実施形態では、交流端子321(159)の溶接箇所と直流負極端子319B(158)の溶接箇所は、流路形成体12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。これにより、溶接機械を一方向に可動する間に、複数の溶接を行うことができ、生産性が向上する。
【0096】
さらに、図4及び図12に示されるように、複数のパワー半導体モジュール300a〜300cは、流路形成体12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。これにより、複数のパワー半導体モジュール300a〜300cを溶接する際に、更に生産性を向上させることができる。
【0097】
図14は、パワー半導体モジュールとコンデンサモジュールを組み付けた流路形成体12とバスバーアッセンブリ800の分解斜視図である。図15は、保持部材803を除いたバスバーアッセンブリ800の外観斜視図である。図14及び図15において、バスバーアッセンブリ800は、それぞれ両サイドに配置された第1と第2交流バスバーを保持し固定するための保持部材803と、上記両サイドに設けられた第1交流バスバー802a〜802fと、第2交流バスバー804a〜804fと、を備えている。前記バスバーアッセンブリ800にはさらに両サイドに設けられた第1および第2交流バスバー802と804を流れる交流電流を検出するための電流センサ180が設けられている。両サイドに設けられた上記第1および第2交流バスバー802,804はそれぞれ幅広導体で作られており、電流センサ180a又は電流センサ180bの設置箇所まで両サイドの第1交流バスバー802a〜802fは、幅広面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように配置されている。第1交流バスバー802a〜802fは電流センサ180aあるいは180bの貫通孔の手前で、それぞれ略直角に折り曲げられ、これら交流バスバーの幅広面が積層導体板501の主面と略平行の状態になる。電流センサ180aや電流センサ180bの孔を貫通後、第2交流バスバー804a〜804fと接続される。第2交流バスバー804a〜804fは大部分が幅広面をコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直の状態、すなわち交流バスバーの幅狭面が電力変換装置の縦方向を向く状態を成している。図15に記載の如く、第1交流バスバー802a〜802fは前記電流センサ180aや電流センサ180bの孔を貫通後、第1交流バスバー802a〜802fに形成された接続部805a〜805f(接続部805d〜805fは不図示)で、第2交流バスバー804a〜804fと接続される。
【0098】
上述の如く、第2交流バスバー804a〜804fは、接続部805a〜805fの近傍で、コンデンサモジュール500側に向かって略直角に折り曲げられる。これにより、第2交流バスバー804a〜804fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。さらに第2交流バスバー804a〜804fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの近傍から、図12や図14,図15に示す如く、流路形成体12の短手方向の一方の辺12aに向かって延ばされ、当該辺12aを横切るように形成される。つまり、複数の第2交流バスバー804a〜804fの主面が向かい合った状態で、当該第2交流バスバー804a〜804fが辺12aを横切るように形成される。
【0099】
交流バスバー802a,802b,802d,802eが、ハウジング10の内側両サイドに配置された冷媒流路に沿って両サイドに配置されていることにより、装置全体の大型化を低減できる。また幅広導体の幅狭面が装置の縦方向を向くようにそろえて配置しているので、第1交流バスバー802や第2交流バスバー804が占める空間を小さくでき、装置全体の大型化を低減できる。さらにまた流路形成体12の一面側から複数の交流バスバーを突出させることで、電力変換装置200の外部での配線の取り回しが容易になり、生産性が向上する。
【0100】
図14に示されるように、第1交流バスバー802a〜802f,電流センサ180a,180b及び第2交流バスバー804a〜804fは、樹脂で構成された保持部材803によって、保持及び絶縁されている。この保持部材803により、第2交流バスバー804a〜804fが金属製の流路形成体12及びハウジング10との間の絶縁性を向上させる。
【0101】
バスバーアッセンブリ800は、保持部材803によって流路形成体12に固定される構造になっている。仮にハウジング10に外部から熱が伝達されても、冷却媒体の流路が形成されている流路形成体12は温度上昇が抑えられる。この流路形成体12にバスバーアッセンブリ800を固定することで、バスバーアッセンブリ800の温度上昇を抑えることができるのみならず、バスバーアッセンブリ800に保持された電流センサ180の温度上昇を抑えることができる。電流センサ180は熱に弱い特性を有しており、上記構造により、電流センサ180a,180bの信頼性を向上させることができる。さらに本実施例の如く、電力変換装置をトランスミッションに固定する場合には、ハウジング10にトランスミッションTM側から熱が伝達されるだけでなく、モータジェネレータ側から第2交流バスバー804a〜804fを介して熱が伝達される。これらの熱を流路形成体12で遮断し、あるいは熱を冷媒に逃がすことができ、電流センサ180a,180bの温度上昇を抑えることができ、信頼性を向上させることができる。
【0102】
図14に示されるように、保持部材803は、図4に示されたドライバ回路基板22を指示するための支持部材807a及び支持部材807bを備えている。支持部材807aは、複数設けられ、かつ流路形成体12の長手方向の一方の辺に沿って形成される。また、支持部材807bは、複数設けられ、かつ流路形成体12の長手方向の他方の辺に沿って並べて形成される。支持部材807a及び支持部材807bの先端部には、ドライバ回路基板22を固定するための螺子穴が形成されている。
【0103】
さらに、保持部材803は、電流センサ180a及び電流センサ180bが配置された箇所から上方に向かって延びる突起部806a及び突起部806bを有している。突起部806a及び突起部806bは、それぞれ電流センサ180a及び電流センサ180bを貫通するように構成される。図15に示されるように、電流センサ180a及び電流センサ180bは、ドライバ回路基板22の配置方向に向かって延びる信号線182a及び信号線182bを有する。信号線182a及び信号線182bは、ドライバ回路基板22の配線パターンと半田によって接合される。本実施形態では、保持部材803,支持部材807a,807b及び突起部806a,806bは、樹脂で一体に形成される。
【0104】
これにより、保持部材803が電流センサ180とドライバ回路基板22との位置決め機能を備えることになるので、信号線182aとドライバ回路基板22との間の組み付け及び半田接続作業が容易になる。また、電流センサ180とドライバ回路基板22を保持する機構を保持部材803に設けることで、電力変換装置全体としての部品点数を削減できる。
【0105】
本実施の形態では、電力変換装置200はトランスミッションTMに設けられたハウジング10に固定されるので、トランスミッションTMからの振動の影響を大きく受ける。そこで、保持部材803は、ドライバ回路基板22の中央部の近傍を指示するための支持部材808を設けて、ドライバ回路基板22に加わる振動の影響を低減している。例えば支持部材808によってドライバ回路基板22の中央部を指示することで、ドライバ回路基板22の共振周波数をトランスミッションTMから伝達されてくる振動の周波数より高くすることができ、ドライバ回路基板22に加わるトランスミッションTMの振動の影響を低減できる。なお、バスバーアッセンブリ800の保持部材803は流路形成体12に螺子により固定される。
【0106】
また、保持部材803は、補機用モジュール350の一方の端部を固定するためのブラケット809を設ける。また図4に示されるように、補機用モジュール350は冷却部407に配置されることにより、当該補機用モジュール350の他方の端部が当該冷却部407に固定される。これにより、補機用モジュール350に加わる振動の影響を低減するとともに、固定用の部品点数を削減することができる。
【0107】
図16は、パワー半導体モジュールとコンデンサモジュールとバスバーアッセンブリ800と補機用モジュール350を流路形成体12に組み付けた状態の外観斜視図である。電流センサ180は、約100℃以上の温度になるとセンサとして使用できないことがある。車載用の電力変換装置では使用される環境が非常に厳しく、高温になる場合があり、電流センサ180を熱から保護することが重要な課題の1つである。特に、本実施の形態では、電力変換装置200はトランスミッションTMに搭載されるので、当該トランスミッションTMから発せられる熱の影響から電流センサ180を保護することが重要な課題となる。
【0108】
そこで、本実施の形態では、電流センサ180a及び電流センサ180bは、流路形成体12を挟んでトランスミッションTMとは反対側に配置される。これにより、トランスミッションTMが発する熱が電流センサに伝達しづらくなり、電流センサの温度上昇を抑えられる。さらに、第2交流バスバー804a〜804fは、図5に示された第3流路19cを横切るように形成される。そして、電流センサ180a及び電流センサ180bは、第3流路部19cを横切る第2交流バスバー804a〜804fの部分よりもパワーモジュールの交流端子321(159)に近い側に配置される。これにより、第2交流バスバー804a〜804fが冷媒によって間接的に冷却され、交流バスバーから電流センサ、更にはパワーモジュール内の半導体チップに伝わる熱を和らげることができるため、信頼性が向上する。
【0109】
図16に示される流れ方向811は、図5にて示された第4流路19dを流れる冷媒の流れ方向を示す。同様に、流れ方向812は、図5にて示された第2流路19bを流れる冷媒の流れ方向を示す。本実施の形態では、電流センサ180a及び電流センサ180bは、電力変換装置200の上方から投影したときに、電流センサ180a及び電流センサ180bの投影部が冷媒流路19の投影部に囲まれるように配置される。これにより電流センサをトランスミッションTMからの熱から更に保護することができる。
【0110】
図17は、理解を助けるために制御回路基板20と金属ベース板11を分離した状態の斜視図である。図16に示すように、電流センサ180は、コンデンサモジュール500の上方に配置される。ドライバ回路基板22は、図16の電流センサ180の上方に配置され、さらに図14に示されたバスバーアッセンブリ800に設けられる支持部材807a及び807bによって支持される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22の上方に配置され、この実施の形態では、流路形成体12から立設された複数の支持部材15によって支持される。制御回路基板20は、金属ベース板11の上方に配置され、上記金属ベース板11に固定される。
【0111】
電流センサ180とドライバ回路基板22と制御回路基板20が高さ方向に階層的に配置され、また制御回路基板20が強電系のパワー半導体モジュール300及び301から最も遠い場所に配置されるので、スイッチングノイズ等が混入を抑制することができる。さらに、金属ベース板11は、グランドに電気的に接続された流路形成体12に電気的に接続されている。この金属ベース板11によって、ドライバ回路基板22から制御回路基板20に混入するノイズを低減している。
【0112】
電流センサ180とドライバ回路基板22を電気的に繋ぐ際の、配線コネクタを用いると接続工程の煩雑さや、接続ミスを防止することが望ましい。図17では、ドライバ回路基板22には、当該ドライバ回路基板22を貫通する第1孔24及び第2孔26が形成される。また第1孔24にはパワー半導体モジュール300の信号端子325U及び信号端子325Lが挿入され、信号端子325U及び信号端子325Lはドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。さらに第2孔26には電流センサ180の信号線182が挿入され、信号線182はドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。なお、流路形成体12との対向面とは反対側のドライバ回路基板22の面側から半田接合が行われる。
【0113】
これにより、配線コネクタを用いることなく信号線が接続できるので生産性を向上させることができる。また、パワー半導体モジュール300の信号端子325と電流センサ180の信号線182を、同一方向から半田により接合されることにより、生産性を更に向上させることができる。また、ドライバ回路基板22に、信号端子325を貫通させるための第1孔24や、信号線182を貫通させるための第2孔26をそれぞれ設けることにより接続ミスの危険性を少なくすることができる。
【0114】
また、本実施形態のドライバ回路基板22は、流路形成体12と対向する面側に、ドライバICチップ等の駆動回路(不図示)を実装している。これにより、半田接合の熱がドライバICチップ等に伝わることを抑制して、半田接合によるドライバICチップ等の損傷を防止している。また、ドライバ回路基板22に搭載されているトランスのような高背部品が、コンデンサモジュール500とドライバ回路基板22との間の空間に配置されるので、電力変換装置200全体を低背化することが可能となる。
【0115】
本実施の形態においては、冷媒流路19に流れる冷媒によって、冷媒流路19内に挿入され固定されたパワー半導体モジュール300及び301を冷却すると共に、コンデンサモジュール500を冷却する。さらに、補機用モジュール350も発熱による温度上昇を抑えるため、冷却することが望ましい。ハウジング10内で冷却できる部分が限られているので、冷却方法や冷却構造の工夫が必要である。
【0116】
そこで、本実施の形態では、補機用モジュール350の金属ベースで形成された放熱面が、図4に示す冷却部407と対向するように配置される。図4の冷却部407は補機用モジュール350を冷却するために設けられている。冷却部407の裏側は図5に示されている。また冷却部407の部分での断面図を図19に示す。図4,図5,図19において、補機用モジュール350はその放熱面が冷却部407の外周面に接するようにして固定される。前記冷却部407が入口配管13の上方に形成されているので、下方から流入する冷媒が冷却部407の内壁に衝突して、効率良く補機用モジュール350から熱を奪うことができる。図19の破線で示す入口配管13から流入した冷媒が冷却部407の内部に形成された冷媒溜め19fの上面に衝突して流れの方向が変えられ、このとき冷却部407の熱を奪う。方向を変えられた冷媒は、流路19aから図4や図5に示す流路19bに流れ込み、パワー半導体モジュール300及び301を冷却する。パワー半導体モジュール301を冷却した冷媒は、流路19eに流入し、破線で示す出口配管14から排出される。流路19eの上部には冷媒溜り19gが形成され、冷媒溜り19gの冷媒により冷却部407が冷却される。冷媒流路の流体抵抗を適切な状態とするため、流入側の冷媒溜め19fを出口側の冷媒溜り19gより大きくしている。このような構造により、効率良く補機用モジュール350を冷却することができる。
【0117】
図18は、図17の破線Bで示す面の、電力変換装置200をC方向から見た断面図である。モジュールケース304に設けられたフランジ304Bは、流路形成体12の流路の開口に押し付けられ、流路形成体12にモジュールケース304を押しつけることにより、冷媒流路19の気密性を向上させることができる。パワー半導体モジュール300の冷却効率を向上させるために、冷媒流路19内の冷媒をフィン305が形成された領域に流すようにする必要がある。モジュールケース304は湾曲部304Aのスペースを確保するために、モジュールケース304の下部にはフィン305が形成されていない。そこで下カバー420は、モジュールケース304の下部が、当該下カバー420に形成された凹部430に嵌合されるように形成される。これにより、冷却フィンが形成されていない空間に冷媒が流れ込むことを防止することができる。
【0118】
図6から図10に記載の如く、上記実施の形態では、パワー半導体モジュール300や301は図2に示す上下アームの直列回路150を内蔵し、インダクタンスの低減を図っている。インダクタンスの低減の観点では特性が低下するが、上アームと下アームを別々のパワー半導体モジュールで構成し、パワー半導体モジュールの外部で上アームと下アームを直列に接続する構成が考えられる。これら他の実施の形態として、図20から図22に上アームと下アームを別々のパワー半導体モジュールで構成した実施の形態を示す。図20はパワー半導体モジュールに上あるいは下アームを収納したパワー半導体モジュールを使用し、これらパワー半導体モジュールを流路形成体12に収納した状態の上面図である。
【0119】
図20において、流路形成体12には、図5で説明のごとく、長辺に沿って冷媒の流路が両側に形成されており、上アームを収納した上アーム半導体モジュール150Aと下アームを収納した下アーム半導体モジュール150Bとが交互に前記冷媒流路に挿入されている。上アーム半導体モジュール150Aは図2に示す正極端子157と交流電流を取り出す交流端子169Aと制御のための端子154と155とを備えている。また下アーム半導体モジュール150Bは負極端子158と交流電流を取り出す交流端子169Bと制御のための端子154と155とを備えている。流路形成体12の中央にコンデンサモジュール500が図4に示されているのと同様に収納されており、正極側のコンデンサ端子506が正極端子157に接続され、負極側のコンデンサ端子504が負極端子158に接続されている。コンデンサには正極側の電源端子509と負極側の電源端子508に図1のバッテリ136から直流コネクタ138を介して直流電力が供給され、コンデンサモジュール500は上アーム半導体モジュール150Aの正極端子157と下アーム半導体モジュール150Bの負極端子158にそれぞれ直流電力を供給する。ここで上アーム半導体モジュール150Aの交流端子169Aと下アーム半導体モジュール150Bの交流端子169Bとを接続すると上下アームの直列回路150が作られる。
【0120】
図21は、上アーム半導体モジュール150Aの交流端子169Aと下アーム半導体モジュール150Bの交流端子169Bとバスバー802a〜802cとの接続関係を示す図であり、図22は上アーム半導体モジュール150Aの交流端子169Aと下アーム半導体モジュール150Bの交流端子169Bとバスバーアッセンブリ800との接続関係を示す図である。図20において、上アーム半導体モジュール150Aの交流端子169Aと下アーム半導体モジュール150Bの交流端子169Bとの接続を、図21および図22では交流バスバー802a〜802fで行う。例えば図21において、交流バスバー802aにより、交流端子169Aと交流端子169Bとを接続する。交流バスバー802aは上アーム半導体モジュール150Aと下アーム半導体モジュール150Bとの直列接続の機能と直列接続点からの交流電流の取り出しの2つの機能を果している。同様に交流バスバー802bから交流バスバー802fはそれぞれ対応する上アーム半導体モジュール150Aと下アーム半導体モジュール150Bとの直列接続の機能と直列接続点からの交流電流の取り出しの2つの機能をそれぞれ果している。図22は交流バスバー802a〜802fを保持するための保持部材803を備えている。
【0121】
図20から図22の実施の形態は、コンデンサモジュール500やパワー半導体モジュール,電流センサ180,バスバーアッセンブリ800の冷却、および組立て方法については、図3から図5および図11〜図19の実施の形態と基本的には同じである。従って図3から図5および図11〜図19の実施の形態で説明した課題の解決や効果は同様に得ることができる。
【符号の説明】
【0122】
10 ハウジング
11 金属ベース板
12 流路形成体
13 入口配管
14 出口配管
19 冷媒流路
20 制御回路基板
136 バッテリ
140,142 インバータ回路
150 上下アームの直列回路
150A 上アーム半導体モジュール
150B 下アーム半導体モジュール
174 ドライバ回路
180 電流センサ
200 電力変換装置
350 補機用モジュール
407 冷却部
500 コンデンサモジュール
504 負極側のコンデンサ端子
506 正極側のコンデンサ端子
508 負極側の電源端子
509 正極側の電源端子
514 コンデンサセル
800 バスバーアッセンブリ
802,805 交流バスバー
803 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を有し、他方側が底によりふさがれている金属性のハウジングと、
前記ハウジングの縦方向における底側であって、前記ハウジングの内部の側部に沿って冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを内蔵し、前記半導体チップに電流を流すための直流端子と前記半導体チップの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けられている複数のパワー半導体モジュールと、
前記ハウジングの側部に沿って形成された冷媒流路に対して中央側に配置され、直流端子を備えたコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジングの縦方向における蓋側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
前記交流バスバーアッセンブリに対して、縦方向における蓋側に配置されたドライバ回路と、を有し、
前記各パワー半導体モジュールは、前記冷媒流路に挿入された状態で流路形成体に固定され、
前記交流バスバーアッセンブリは、前記各パワー半導体モジュールによって発生する交流電流を流すための複数の交流バスバーと該交流バスバーアッセンブリを固定するための複数の固定部とを有し、前記複数の交流バスバーは前記冷媒流路に沿って伸びる形状を成し、前記交流バスバーアッセンブリは前記複数の固定部によって固定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記コンデンサモジュールは略長方形の形状をなし、前記長方形の長辺に沿って前記冷媒流路が形成され、前記交流バスバーアッセンブリの複数の固定部は、前記冷媒流路に沿って配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記コンデンサモジュールの外周に沿って前記冷媒流路が形成され、
前記ドライバ回路はドライバ基板に形成されており、前記ドライバ基板は固定するための複数のドライバ固定部を有しており、前記ドライバ固定部は前記冷媒流路に沿って配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を有し、他方側に底を有する金属性のハウジングと、
前記ハウジングの縦方向における底側に冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを内蔵し、前記半導体チップに電流を流すための直流端子と交流電流を流すための交流端子と前記半導体チップの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けられている複数のパワー半導体モジュールと、
前記冷媒流路に併設して配置され、直流端子を備えたコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジングの縦方向における蓋側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
前記パワー半導体モジュールの制御端子に半導体チップの制御信号を供給するドライバ回路と、有し、
前記コンデンサモジュールの直流端子と前記各パワー半導体モジュールの直流端子とが電気的に接続され、
前記交流バスバーアッセンブリは、前記冷媒流路に沿って伸びる幅広導体からなる複数の交流バスバーと該交流バスバーアッセンブリを固定するための複数の固定部とを有し、
前記幅広導体からなる各交流バスバーは、それぞれ幅広導体の狭い面が縦方向を向き、幅広面が縦方向を横切る方向を向いていて、前記各交流バスバーの幅広面が空間を介して対向するように配置されており、
前記交流バスバーアッセンブリの各交流バスバーは対応するパワー半導体モジュールの交流端子に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記交流バスバーアッセンブリより蓋側に、前記ドライバ回路を有する基板が配置され、
前記パワー半導体モジュールの交流端子と対応する前記交流バスバーアッセンブリとが溶接により接続され、前記ドライバ回路を有する基板と前記パワー半導体モジュールの制御端子とが半田により接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を、他方側に底を有する金属性のハウジングと、
前記ハウジング内の底側であって、前記ハウジング内部の両側部のそれぞれに沿って、第1と第2の冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを内蔵し、前記半導体チップに電流を流すための直流端子と交流電流を流すための交流端子と前記半導体チップの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けられているパワー半導体モジュールと、
前記第1と第2の冷媒流路に挟まれて配置され、直流端子を備えたコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジング内の蓋側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
前記パワー半導体モジュールの制御端子に制御信号を供給するドライバ回路と、を有し、
前記第1と第2の冷媒流路にそれぞれ挿入されて、複数の前記パワー半導体モジュールが配置され、
前記コンデンサモジュールの直流端子と対応する前記パワー半導体モジュールの直流端子とが電気的に接続され、
前記交流バスバーアッセンブリは、前記第1と第2の冷媒流路に沿ってそれぞれ配置された、幅広形状の交流バスバーをそれぞれ複数有する第1と第2の交流バスバーの組と、該交流バスバーアッセンブリを固定するための複数の固定部とを有し、
前記各交流バスバーの組は、幅広形状の交流バスバーのそれぞれの狭い面が縦方向を向き、幅広面が縦方向を横切る方向を向いて固定されており、第1の交流バスバーの組は第1の冷媒流路に沿って配置され、第2の交流バスバーの組は第2の冷媒流路に沿って配置され、
前記第1と第2の交流バスバーの組の間に電気回路を配置したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置において、
前記第1と第2の交流バスバーの組の間に配置された電気回路は補機用モータを駆動する交流電力を発生するための補機用のインバータ回路であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
内部に収納空間を有する金属性のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置され、直流端子を備えた平滑用のコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールに沿って冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための上下アームの直列回路を内蔵し、前記上下アームの直列回路に電流を流すための直流端子と交流電力を出力するための交流端子と前記上下アームの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けられているパワー半導体モジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジングの縦方向における一方側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
前記交流バスバーアッセンブリに対してさらに縦方向の一方側に配置されたドライバ回路と、有し、
前記冷媒流路に挿入されて複数の前記パワー半導体モジュールが配置され、
前記コンデンサモジュールの直流端子から前記パワー半導体モジュールの直流端子に直流電力が供給されるように電気的に接続され、
前記交流バスバーアッセンブリは、前記冷媒流路に沿って伸びる複数の幅広の交流バスバーと該交流バスバーアッセンブリを固定するための固定部とを有し、
前記パワー半導体モジュールは、両面に冷却面を有し、前記縦方向に細長くしかも流路に沿って細長い形状をなす半導体モジュールケースと前記半導体モジュールケースから前記縦方向の一方側に突出する前記直流端子と前記交流端子とを有し、さらに前記直流端子や前記交流端子に対してさらに前記縦方向の一方側に長く突出する前記制御端子とが設けられており、
前記交流バスバーアッセンブリは対応する前記パワー半導体モジュールの交流端子に電気的に接続され、
前記ドライバ回路は対応する前記パワー半導体モジュールの制御端子に上アームあるいは下アームを制御するための制御信号を供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置であって、
前記交流バスバーアッセンブリの前記幅広の交流バスバーはそれぞれ狭い面が縦方向となり、前記冷媒流路に沿ってそれぞれ伸びる形状をなしており、交流バスバーアッセンブリを構成する交流バスバーの幅広面が空間を介して互いに対向するように配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項8あるいは請求項9の内の一に記載の電力変換装置であって、
前記交流出力端は、前記冷媒流路に沿ってそれぞれ伸び方向に設けられていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
内部に収納空間を有する金属性のハウジングと、
直流端子を備え、前記ハウジング内に設けられた平滑用のコンデンサモジュールと
前記ハウジング内において前記コンデンサモジュールに沿うように冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを内蔵し、前記半導体チップに電流を流すための直流端子と交流電流を流すための交流端子と前記半導体チップの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けられているパワー半導体モジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジングの縦方向における一方側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
前記交流バスバーアッセンブリに対して、縦方向における一方側に配置されたドライバ回路と、を有し、
前記コンデンサモジュールの直流端子と前記各パワー半導体モジュールの直流端子とが溶接によって接続され、
前記交流バスバーアッセンブリは、前記冷媒流路に沿って伸びる複数の交流バスバーと該交流バスバーアッセンブリを固定するための固定部とを有し、該固定部によって前記交流バスバーアッセンブリが前記流路形成体に固定されている、ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電力変換装置において、
前記各パワー半導体モジュールの交流端子は対応する前記パワー半導体モジュールの交流端子と溶接により接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を有し、他方側が底によりふさがれている金属性のハウジングと、
前記ハウジングの内部の側部に沿って冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを内蔵し、前記半導体チップに電流を流すための直流端子と交流電流を流すための交流端子と前記半導体チップの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けらたパワー半導体モジュールと、
前記冷媒流路に対して中央側に配置されて前記流路形成体に固定され、直流端子を備えたコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジングの縦方向における一方側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
ドライバ回路と、を有し、
複数の前記パワー半導体モジュールが冷媒流路に挿入されて固定されており、
前記交流バスバーアッセンブリは幅広の複数の交流バスバーと前記交流バスバーアッセンブリを固定するための固定部とを備えており、
交流バスバーはそれぞれ幅の狭い面が縦方向を向いており、前記それぞれの幅広面が互いに空間を介して対向するように配置されており、
前記固定部により前記交流バスバーアッセンブリが前記流路形成体に固定され、
前記ドライバ回路が前記流路形成体に固定されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を有し、他方側が底によりふさがれている金属性のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置され、前記ハウジングの側部に沿って冷媒流路を形成する流路形成体と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を構成するための半導体チップを内蔵し、前記半導体チップに電流を流すための直流端子と交流電流を流すための交流端子と前記半導体チップの動作を制御するための制御端子とが外部に突出するように設けられ、前記冷媒流路に挿入されて固定されている複数のパワー半導体モジュールと、
前記冷媒流路に対して中央側に配置されて前記流路形成体に固定され、直流端子を備えた平滑用のコンデンサモジュールと、
前記コンデンサモジュールや前記冷媒流路より、前記ハウジングの縦方向における一方側に配置された交流バスバーアッセンブリと、
前記パワー半導体モジュールの制御端子に制御信号を供給するドライバ回路と、を有し、
前記コンデンサモジュールの直流端子は、前記コンデンサモジュールから突出して対応する前記パワー半導体モジュールの前記直流端子の方に伸び、その端部が前記パワー半導体モジュールの電流端子に沿って縦方向における一方側に伸びる形状をなし、前記コンデンサモジュールの直流端子の端部が前記パワー半導体モジュールの直流端子に溶接により接続され、
交流バスバーアッセンブリが有する幅広形状をなす交流バスバーは、前記パワー半導体モジュールの交流端子の方に伸び、その端部が前記交流端子に沿って縦方向における一方側に伸びる形状を成し、前記端部が前記交流端子に溶接により接続され、
前記ドライバ回路は前記パワー半導体モジュールの制御端子に半田により接続されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項14に記載の電力変換装置において、
前記コンデンサモジュールから突出して対応する前記パワー半導体モジュールの直流端子に接続される直流バスバーは、前記コンデンサモジュールから前記パワー半導体モジュールの電流端子の方にのびる第1の部分と、その端部が前記直流端子に沿って縦方向における一方側に伸びる第2の部分とを有し、前記第2の部分で溶接により前記パワー半導体モジュールの直流端子に接続されており、
交流バスバーアッセンブリが有する幅広導体の交流バスバーは、前記パワー半導体モジュールの交流端子の方にのびる第1の部分と、その端部が前記交流端子に沿って縦方向における一方側に折れ曲がって伸びる第2の部分とを有し、前記第2の部分で溶接によりパワー半導体モジュールの交流端子に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を有し、他方側が底により塞がれているとともに前記自動車用変速機に固定するための固定部を他方側の外部に有する金属性のハウジングと、
前記金属性のハウジングの内部に配置され、冷媒を流すための冷媒流路を形成する流路形成体と、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ回路を構成する半導体チップを内蔵するパワー半導体モジュールと、直流端子を有するコンデンサモジュールと、前記パワー半導体モジュールが発生する交流電流を流すための交流バスバーアッセンブリと、電流センサと、を有し、
前記コンデンサモジュールに沿って前記冷媒流路が配置されるように前記コンデンサモジュールと前記冷媒流路とを並べて配置し、
前記交流バスバーアッセンブリは前記コンデンサモジュールに対して前記縦方向における一方側に配置され、
前記交流バスバーアッセンブリは、交流電流を流すための複数の交流バスバーと、前記複数の交流バスバーを保持すると共に固定用の固定部を有する保持部材と、を備えており、前記交流バスバーアッセンブリは前記保持部材の前記固定部によって前記流路形成体に固定され、
前記交流バスバーを流れる電流を計測するための前記電流センサを前記交流バスバーアッセンブリに固定したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項17】
内部に収納空間を有し、縦方向の一方側に蓋を有し、他方側が底によりふさがれているとともに前記変速機に固定するための固定部を他方側の外部に有する金属性のハウジングと、
前記金属性のハウジングの内部の両側部にそれぞれ冷媒を流すための冷媒流路を形成する流路形成体と、直流電力を交流電力に変換するパワー半導体モジュールと、前記平滑用のコンデンサモジュールとを配置し、
前記コンデンサモジュールに対して、前記縦方向における一方側に交流電流を流すための交流バスバーアッセンブリを配置し、
前記交流バスバーを流れる電流を計測するための電流センサを、前記コンデンサモジュールより、前記縦方向における一方側であって、前記冷媒を流す軸方向に対して、両側部に配置された前記冷媒流路によって挟まれる範囲内に、配置したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項18】
請求項17に記載の電力変換装置において、
前記交流バスバーアッセンブリは前記パワー半導体モジュールとコンデンサモジュールとに対して、前記縦方向における一方側に配置されており、
前記交流バスバーアッセンブリはさらに前記流路形成体に固定され、
前記流路形成体が前記ハウジングに収納されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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