説明

電力変換装置

【課題】広い入力電流域および出力電流域を持ち、広い範囲での入力電流の変動に対応して最大電力を出力し、かつ、小型化・低コスト化が可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流電力として入力される入力電力を電力変換して出力電力を出力する電力変換装置100であって、入力電力の電流である入力電流を検出する入力電流検出部2と、入力電力を電力変換するものであり、入力電流範囲が互いに異なりかつ隣合う入力電流範囲とは重複する部分を有する複数の電力変換回路部4〜6と、複数の電力変換回路部4〜6のうち、入力電流検出部2により検出された入力電流において最も大きい出力電力が得られる1つの電力変換回路部を選択する電力変換制御部1とを備え、電力変換制御部1は、1つの電力変換回路部を選択するに際し、切換え直前の電力変換回路部の出力電圧と、切換え直後の電力変換回路部の出力電圧とが互いに一致するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力として入力される入力電力を、電力変換して出力する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇に対応するため、環境への配慮の必要性等から、再生可能な自然エネルギーの普及が望まれている。特に太陽電池は、環境への影響が少なく、今後の一層の発展が期待される。太陽電池により発電された電力は、蓄電池に蓄電されたり、電力会社に売電されることにより、有効に利用されている。太陽電池は日射量により出力が変動することから、天候等により出力が左右されるため、電力の供給量を制御することは困難である。太陽電池は、出力の変動幅の全域において、高い変換効率で出力が取り出されることが好ましい。
【0003】
図16は、一般的な太陽電池の特性の例を示すグラフである。図16において、横軸は、太陽電池の出力電圧を示し、縦軸は太陽電池の出力電流を示す。図16に示されているように、太陽電池の出力特性は、日射量により大きく変動する。出力電流幅が特に大きく変動することから、太陽電池に接続してその出力を取り出す電力変換装置は、広い入力電流域において高い変換効率を有することが好ましい。
【0004】
電力変換回路において、広い入力電流域に対して高い変換効率を維持するためには、出力電流域が広い場合であっても高い変換効率が要求される。出力電圧を一定の値に維持する場合には、所定の範囲の出力電流において高い変換効率を有する電力変換回路を作製することは可能であるが、広い出力電流域において高い変換効率を維持する電力変換回路を作製することは困難である。従来の電力変換回路においては、出力電流が所定の範囲から外れると、電力変換回路の変換効率が低下することになる。つまり、出力電流として大電流が必要な場合には、出力電流が大電流である場合に高い変換効率を有する電力変換回路を用いればよいが、その電力変換回路により小電流を出力させる場合には、変換効率が低下する可能性がある。
【0005】
単一の電力変換回路により、大電流の出力電流および小電流の出力電流のいずれにおいても高い変換効率を実現するために、出力電流の範囲に応じて電力変換における周波数、制御方式(PWM・PFM)等の制御条件を変更することが行われている。例えば、出力電流が大きい場合は周波数一定のPWM制御とし、出力電流が小さい場合にはON幅一定のPFM制御として回路を制御する。
【0006】
また、特許文献1には、同じ構成の電力変換回路を複数持ち、出力電流に応じて、使用する回路数を増減する電源装置が開示されている。この電源装置は、複数の回路を組み合わせることで、出力電流に応じた電力変換回路を構成し、単一の電力変換回路を用いる場合よりも広い出力電流域において高い変換効率を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−232587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、単一の電力変換回路において、周波数、制御方式(PWM・PFM)等を変更することで、ある程度の範囲の出力電流域において高い変換効率を維持することは可能である。しかし、その出力電流域の範囲には限界があり、太陽電池の出力を効率よく取り出すには十分な範囲とは言えない。
【0009】
特許文献1の電源装置は、組み合わせる回路の数を増やすことにより、高い変換効率を維持できる出力電流域の範囲を広げることができるが、その範囲にも限界があり、太陽電池の出力を効率よく取り出すには十分な範囲とは言えない。特許文献1の電源装置は、同じ構成の回路を組み合わせることから、必要とする回路の数が比較的多くなるため、電源装置が大型化、高コスト化するという問題がある。また、同じ構成の回路を組み合わせることにより、広い出力電流域において最適の電力変換回路を構成するには、回路の設計が複雑になり、回路設計にかかる時間が長くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされた発明であり、その目的は、広い入力電流域および出力電流域を持ち、広い範囲での入力電流の変動に対応して効率よく電力を出力し、かつ、小型化・低コスト化が可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電力変換装置は、直流電力として入力される入力電力を電力変換して出力電力を出力する電力変換装置であって、前記入力電力の電流である入力電流を検出する入力電流検出部と、前記入力電力を電力変換するものであり、入力電流範囲が互いに異なりかつ隣合う入力電流範囲とは重複する部分を有する複数の電力変換回路部と、前記複数の電力変換回路部のうち、前記入力電流検出部により検出された入力電流において最も大きい出力電力が得られる1つの電力変換回路部を選択し、選択した電力変換回路部に対して最も大きい出力電力が得られる制御条件で制御を行う、電力変換制御部と、を備え、前記電力変換制御部は、前記1つの電力変換回路部を選択するに際し、その選択により電力変換回路部が切換えられる場合に、切換え直前の電力変換回路部の出力電圧と、切換え直後の電力変換回路部の出力電圧とが互いに一致するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電力変換装置によれば、広い入力電流域および出力電流域を持ち、広い範囲での入力電流の変動に対応して効率よく電力を出力し、かつ、小型化・低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る電力変換装置を用いた太陽光発電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る電力変換装置の構成の一例の一部を回路図とした説明図である。
【図4】本実施形態に係る電力変換装置の各電力変換回路部の入力電流と出力電力との関係を示すグラフである。
【図5】電力変換回路部における出力電流と変換効率との関係の例を示すグラフである。
【図6】第1電力変換回路部に関する効率対出力電流データの一例を示す図である。
【図7】第2電力変換回路部に関する効率対出力電流データの一例を示す図である。
【図8】第3電力変換回路部に関する効率対出力電流データの一例を示す図である。
【図9】電力変換回路部を切換える際に出力電力が連続する場合の一例における出力電圧と時間との関係を示す図である。
【図10】電力変換回路部の切換え時における出力電圧の変化について説明するための図である。
【図11】電力変換回路部を切換える際に出力電圧を制御する場合の一例における出力電圧と時間との関係を示す図である。
【図12】電力変換回路部の切換え処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】1つの電力変換回路部を選択する選択処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】図12の#12の工程の一例を示すフローチャートである。
【図15】電力変換回路部を切換える際に出力電圧を制御する場合の他の一例における出力電圧と時間との関係を示す図である。
【図16】太陽電池の特性の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置を用いた太陽光発電システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置100および太陽電池PVを用いて、商用電力系統と連系して使用される太陽光発電システムを実現することができる。この太陽光発電システムは、太陽電池PVと、太陽電池PVに接続された電力変換装置100と、電力変換装置100により電力変換された出力をさらに変圧したり、直流−交流変換等することで商用電力系統に整合させるための連系用整合装置200とを備え、連系用整合装置200は商用電力系統に接続されている。
【0015】
太陽電池PVは日射量に応じて発電を行い、電力を出力する。
【0016】
電力変換装置100は、入力された電力を高い変換効率で変換して出力する。電力変換装置100の詳細については、後述する。
【0017】
連系用整合装置200は、例えばDC−ACインバータ回路を備え、電力変換装置100からの出力を商用電力系統に送電できるように、100V程度の交流電圧へと変換する。
【0018】
太陽光が入射されることで発電した太陽電池PVから出力された電力が、電力変換装置100に入力される。電力変換装置100では、太陽電池PVからの出力を入力とし、その入力電流値の範囲にかかわらず高い変換効率で電力変換して出力する。電力変換装置100により変換された電力は連系用整合装置200に入力され、商用電力系統で伝送されるように適宜変換され、商用電力系統へと送電される。このように、太陽電池PVからの出力を有効に売電することができる。
【0019】
また、電力変換装置100の入力側は太陽電池PVに接続した状態で、出力側を充電池に接続して、太陽電池PVにより発電された電力を蓄電池に蓄電することもできる。
【0020】
本実施形態に係る電力変換装置100を用いることにより、太陽電池PVからの出力を高い変換効率で取り出すことができる太陽光発電システムを構成することができる。本実施形態に係る電力変換装置100について、図面を参照して説明する。
【0021】
図2は本実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示すブロック図である。図3は本実施形態に係る電力変換装置の構成の一例の一部を回路図とした説明図であって、電力変換装置100に太陽電池PVが接続されている。図2に示すように、電力変換装置100は、電力変換制御部1と、入力電力Pinの電流である入力電流Iinを検出する入力電流検出部2と、入力電力Pinの電圧である入力電圧Vinを検出する入力電圧検出部3と、電力変換を行う第1電力変換回路部4、第2電力変換回路部5および第3電力変換回路部6と、出力電力Poutの電流である出力電流Ioutを検出する出力電流検出部7と、出力電力Poutの電圧である出力電圧Voutを検出する出力電圧検出部8と、警報信号を出力する警報出力部9とを備えている。
【0022】
第1〜3電力変換回路部4〜6は、それぞれ入力電力を変換して出力するように構成された回路であって、これらは互いに入力電流範囲が異なる。第1〜3電力変換回路部4〜6には、電力変換装置100に入力された電力が入力されるが、その入力は電力変換制御部1により制御されている。
【0023】
図3に示すように、第1〜3電力変換回路部4〜6は、スイッチング素子FET1、FET2、FET3と、転流ダイオードD1、D2、D3と、電力変換時にエネルギーを蓄積するためのインダクタであるコイル(リアクトル)L1、L2、L3と、コンデンサC1、C2、C3とを備えている。
【0024】
スイッチング素子FET1〜3は、いずれもMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属−酸化物−半導体電界効果型トランジスタ)とすればよい。転流ダイオードD1〜3は、通常のダイオードであってもツェナーダイオードであってもよい。第1〜3電力変換回路部4〜6は、降圧型のDC/DCコンバーターを構成している。スイッチング素子FET1〜3のゲートは、それぞれ電力変換制御部1に接続されていて、電力変換制御部1から送信される駆動信号S1〜3により、ON、OFFが制御される。電力変換制御部1により、太陽電池PVの出力を変換するために第1〜3電力変換回路部4〜6のいずれを用いるかを選択することができ、さらに電力変換制御部1により、第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれが制御される。
【0025】
第1〜3電力変換回路部4〜6において、各コイルL1〜3のインダクタンスは互いに異なる値を有しており、それぞれにおける入力電流に対する出力電力の値が互いに異なる。
【0026】
図4を用いて、第1〜3電力変換回路部4〜6の入力電流Iinと出力電力Poutとの関係について説明する。図4は本実施形態に係る電力変換装置の各電力変換回路部の入力電流と出力電力との関係を示すグラフである。図4に示すように、第1〜3電力変換回路部4〜6は、それぞれ入力電流Iinに対する出力電力Poutの特性が異なる。各第1〜3電力変換回路部4〜6におけるピークの出力電力を得るときの入力電流の値も各電力変換回路部において互いに異なる。
【0027】
第1〜3電力変換回路部4〜6の各入力電流範囲が互いに異なり、かつ隣合う入力電流範囲とは重複する部分を有している。つまり、図4に示しているように、第1電力変換回路部4および第2電力変換回路5の入力電流範囲は隣合っていて、これらの電流範囲は重複している(図4において破線で示した部分を参照)。同様に、第2電力変換回路部5および第3電力変換回路部6の入力電流範囲は隣合っていて、これらの電流範囲は重複している(図4において破線で示した部分を参照)。
【0028】
第1〜3電力変換回路部4〜6のいずれか1つを用いて電力変換を行う場合に、最も大きな出力電力Poutを得ることができる各電力変換回路部の入力電流Iinの境界が、しきい値th1〜2であり、小電流側に位置するものを小電流側しきい値th1とし、大電流側に位置するものを大電流側しきい値th2とする。
【0029】
第1〜3電力変換回路部4〜6は、入力電流Iinおよび出力電流Ioutの値により変換効率が変化する。特に、コイルL1〜3のインダクタンスおよび直流抵抗により変換効率の高低が決まってくる。図5は、電力変換回路部における出力電流と変換効率との関係の例を示すグラフである。図5(A)は出力電流Ioutが比較的大きい場合に好ましい電力変換回路部に関するグラフであり、図5(B)は出力電流Ioutが比較的小さい場合に好ましい電力変換回路部に関するグラフである。変換効率ηは入力電力Pinに対する出力電力Poutの比であり、変換効率ηが大きいほど高い効率の電力変換が可能な電力変換部であるといえる。
【0030】
図5(A)および図5(B)において用いた電力変換回路部は、いずれも、第1〜3電力変換回路部4〜6と同様の回路構成を有する電力変換回路部であるが、それぞれのコイルのインダクタンスは互いに異なる。
【0031】
図5(A)の電力変換回路部は、入力電圧120V、出力電圧100V、出力電流が0.2A〜10A程度の条件において動作し、入力電流が10A付近において最も高い変換効率ηを得ることができるように設計されている。この電力変換回路部には、大電流出力が可能なコイルが選択される。一般的に大電流型のコイルはL値が0.1μH〜数μHと比較的小さく、300KHz〜1MHzの高周波でPWMスイッチング制御することにより、出力電流が10A付近で変換効率90%以上を実現できる。しかし、出力電流が1A以下では自己回路損失が大きいため50%程度まで変換効率ηが落ちる。
【0032】
図5(B)の電力変換回路部は、入力電圧120V、出力電圧100V、出力電流0〜1A程度の条件において動作し、入力電流が1A付近において最も高い変換効率ηを得ることができるように設計されている。この電力変換回路部には、小電流出力が可能なコイルが選択される。一般的に小電流型のコイルはL値が数十μH〜数百μHで、300KHz以下の比較的低い周波数でPWMスイッチング制御することにより、0.01A〜1A程度の電流域において変換効率90%前後を実現できる。しかし、出力電流が1Aを超えると出力が低下し、大電流を出力することができない。
【0033】
第1〜3電力変換回路部4〜6は、それぞれ異なる入力電流の範囲において高い変換効率の電力変換がなされ、それらの入力電流の範囲により、電力変換装置100に入力されることが予定されている入力電流の範囲をカバーできる。
【0034】
なお、第1〜3電力変換回路部4〜6は、それぞれ入力電流の範囲が異なるコンバーターであればよく、図3に示した回路構成に限定されるわけではない。電力変換装置100の使用目的に応じてそれぞれ設計されればよい。例えば、スイッチング素子としてMOSFETの代わりにバイポーラトランジスタを用いてもよい。また、転流ダイオードの代わりに、MOSFETまたはバイポーラトランジスタといったスイッチング素子を用いて同期整流式としても、第1〜3電力変換回路部4〜6と同様の動作をする電力変換回路部を構成することができる。また、第1〜3電力変換回路部4〜6とは異なる構成の電力変換回路部を用いてもよく、例えば昇圧型でもよい。また、電力変換回路部の数は複数であればよく、3個に限定されるわけではない。電力変換回路部の回路構成およびその数は、電力変換装置100に接続される電力源の出力等に応じて決定される電力変換装置100の入力電流の範囲等に応じて適宜調整すればよい。
【0035】
入力電流検出部2は、入力電流Iinの値を随時検出し、電力変換制御部1に送信する。入力電流検出部2は例えば電流検出用の抵抗等を用いて構成され、A/D変換器を有し、アナログ信号の検出値をデジタル信号へと変換して電力変換制御部1に送信する。
【0036】
入力電圧検出部3は、入力電圧Vinの値を随時検出し、電力変換制御部1に送信する。入力電圧検出部3は例えば分圧抵抗等を用いて構成され、A/D変換器を有し、アナログ信号の検出値をデジタル信号へと変換して電力変換制御部1に送信する。
【0037】
出力電流検出部7は、出力電流Ioutの値を随時検出し、電力変換制御部1に送信する。出力電流検出部7は例えば電流検出用の抵抗等を用いて構成され、A/D変換器を有し、アナログ信号の検出値をデジタル信号へと変換して電力変換制御部1に送信する。
【0038】
出力電圧検出部8は、出力電圧Voutの値を随時検出し、電力変換制御部1に送信する。出力電圧検出部8は例えば分圧抵抗等を用いて構成され、A/D変換器を有し、アナログ信号の検出値をデジタル信号へと変換して電力変換制御部1に送信する。
【0039】
図2において、電力変換制御部1は、効率対出力電流データ格納部11と、出力電力取得部12と、選択部13と、切換電圧算出部14とを備えている。電力変換制御部1は、例えばCPU、不揮発性メモリ等を用いて構成することが可能である。電力変換制御部1は、第1〜3電力変換回路部4〜6のうち、入力電流検出部2により検出された入力電流Iinに基づいて最も大きい電力が得られる1つの電力変換回路部を選択し、選択した電力変換回路部が最も大きい出力電力Poutを得ることができるような制御条件で電力変換回路部を制御する。
【0040】
効率対出力電流データ格納部11は、例えば不揮発性メモリであって、図6〜8に示すような効率対出力電流データTD1〜3を格納している。効率対出力電流データTD1〜3は、第1〜3電力変換回路部4〜6ごとに予め測定により求められたデータであって、第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれにおける変換効率ηと出力電流Ioutとの関係を示すデータである。効率対出力電流データTD1〜3は、図6〜8に示すように入力電流Iinおよび出力電圧Voutをパラメータとするテーブル形式とされる、変換効率ηと出力電流Ioutとの関係を示すグラフで表すことができる。図6〜8は、それぞれ、第1〜3電力変換回路部に関する効率対出力電流データの一例を示す図である。
【0041】
効率対出力電流データTD1〜3は、各電力変換回路部における、入力電流Iinごとおよび出力電圧Voutごとのデータであり、例えば入力電流Iinは1〜9Aの範囲で2A刻みに5点選択され、出力電圧は80〜120Vであり10V刻みに5点選択されている。図6〜8に示すように、効率対出力電流データTD1〜3は、入力電流Iinおよび出力電圧Voutにより区分されたテーブル形式のデータである。
【0042】
効率対出力電流データTD1〜3における入力電流Iinの範囲は、電力変換装置100において実際に使用することが予定されている入力電流Iinの範囲である。効率対出力電流データTD1〜3における出力電圧Voutの範囲は、電力変換装置100において実際に使用することが予定されている出力電圧Voutの範囲である。これらの範囲において、上記複数のグラフが多ければ多いほど、より高精度の電力変換ができるといえる。効率対出力電流データTD1〜3を測定により求める際に、入力電流Iinの刻みの度合いおよび出力電圧Voutの刻みの度合いをより小さくすることで、効率対出力電流データTD1〜3の量が増加し、より高精度の電力変換が可能となる。
【0043】
出力電力取得部12は、入力電流検出部2により検出した入力電流Iinの検出値および入力電圧Vinを用いて、効率対出力電流データ格納部11に格納された第1〜3電力変換回路部4〜6ごとの効率対出力電流データTD1〜3から、第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれが出力できる最大の出力電力(回路最大出力電力Ph)を取得する。なお、入力電圧Vinが固定である場合は、検出せずにその値を用いればよいし、入力電圧Vinが変動する場合は、入力電圧検出部3により入力電圧Vinを検出し、その検出値を用いればよい。
【0044】
選択部13は、出力電力取得部12により取得された各回路最大出力電力Phを互いに比較して、第1〜3電力変換回路部4〜6のうちから最も大きい出力電力が得られる1つの電力変換回路部を選択する。
【0045】
切換電圧算出部14は、出力電圧検出部8により検出された出力電圧Voutの検出値および出力電圧の目標値Vmに基づいて、電力変換回路部の切換えの前後における出力電圧Voutの目標値である切換電圧Vchを算出する。出力電圧の目標値Vmとは、選択された電力変換回路部において最も大きい出力電力Poutが得られる際の出力電圧Voutのことである。出力電圧の目標値Vmは選択処理において求められている。
【0046】
切換電圧Vchは、切換え前の電力変換回路部の出力電圧Voutの検出値および切換後の電力変換回路部の出力電圧の目標値Vmの間の値であり、例えば、これらの値の平均値とすればよい。切換電圧Vchとしては、例えば、切換え前の電力変換回路部の出力電圧Voutの検出値としてもよいし、切換後の電力変換回路部の出力電圧の目標値Vmとしてもよい。
【0047】
警報出力部9は、電力変換制御部1からの信号を受けて電力変換装置100の動作に異常が生じていることを操作者に知らせるために警報信号を出力する。警報出力部9としては、警報音を鳴らすことで異常を操作者に知らせるブザー、点灯または点滅により異常を操作者に知らせる警報灯(ランプ)、異常であることを表示画面に文字等を表示することにより操作者に知らせる表示装置等とすればよい。
【0048】
電力変換装置100において、切換え時において出力電力Poutが変化しないように電力変換回路部を切換えると、高い変換効率ηを維持し続けることができるが、切換え前後において出力電圧Voutが大きく変化する可能性がある。
【0049】
図9は、電力変換回路部を切換える際に出力電力が連続する場合の一例における出力電圧と時間との関係を示す図である。図9において横軸は時間であり、縦軸は出力電圧Voutであり、切換え時において入力電流Iinが一定の状態で、切換え前後の各電力変換回路部において最も大きな出力電力Pout(変換効率η)を得るように切換えた場合における出力電圧Voutの変化を示している。出力電圧Vfは切換え前の電圧変換回路部における切換え時の出力電圧Voutであり、出力電圧Vaは切換え後の電圧変換回路部における切換え時の出力電圧Voutである。切換え前後の電力変換回路部において、変換効率ηが最も大きくなるようにすると、出力電圧Vfと出力電圧Vaとが異なる可能性があり、出力電圧Vfおよび出力電圧Vaの差が大きいと、図9に示すように、切換え時に出力電圧Voutが大きく変化することになる。図10を参照して、出力電圧Vfと出力電圧Vaとの差が大きくなる理由について以下に説明する。
【0050】
図10は、電力変換回路部の切換え時における出力電圧の変化について説明するための図であり、電力変換回路部の切換え動作の前後における出力電流Ioutと変換効率ηとの関係を示す図である。電力変換装置100において、出力電圧Voutの範囲が制限されることにより、図10に示すように出力電流Ioutの範囲も制限されている。また、切換え前の電力変換回路部が最大となる変換効率ηを得ることができるのは、曲線CV1の頂点である点Fの位置である。また、切換え後の電力変換回路部が最大となる変換効率ηを得ることができるのは、曲線CV2の頂点である点Aの位置である。各電力変換回路部において、太陽電池PVからの出力の変動により、出力電流Ioutは制限された範囲内で変動し得るが、それぞれ点Fの位置および点Aの位置を維持するように制御(例えば、最大電力追従制御)されることで、各電力変換回路部が最大となる変換効率ηを得ることができる。
【0051】
切換え前の電力変換回路部において、切換え時は変換効率ηが最大である状態(点Fの付近にある状態)である。また、切換え後の電力変換回路部においても、切換え時は変換効率ηが最大である状態(点Aの付近にある状態)である。つまり、電力変換回路部を切換えることにより、点Fから点Aに移動することになる。図10に示すように、点Fと点Aとでは出力電流Ioutの差が大きいことから、切換えにより出力電流Ioutが急激に増加するといえる。そのため、出力電圧Voutは、図9に示すように急激に減少する。
【0052】
出力電圧Voutが急激に変化すると、電力変換装置100の出力側に接続される連系用整合装置200においては入力電圧が急激に変化することになり、これによって連系用整合装置200に誤動作が生じる可能性がある。
【0053】
しかし、本実施形態では、電力変換回路部が切換えられる場合に、切換え直前の電力変換回路部の出力電圧Voutと、切換え直後の電力変換回路部の出力電圧Voutとが互いに一致するように制御する。図11は、電力変換回路部を切換える際に出力電圧を制御する場合の一例における出力電圧と時間との関係を示す図であり、横軸は時間であり、縦軸は出力電圧Voutである。本実施形態では、切換電圧Vchを設定し、切換え前の電力変換回路部の出力電圧Voutが、出力電圧Voutの検出値から切換電圧Vchに変化するように制御し、切換え後の電力変換回路部の出力電圧Voutが切換電圧Vchを維持したままで電力変換回路部の切換えを行う。切換えが終わった後に、切換え後の電力変換回路部の出力電圧Voutが、切換電圧Vchから出力電圧の目標値Vmに変化するように制御(段階制御)する。これにより、切換え時において出力電圧Voutの変化がなだらかに行われるため、電力変換装置100の出力側に接続される機器の誤動作が生じにくくなる。
【0054】
上記段階制御は、電力変換装置100において、最大の出力電力を得るような制御、例えば最大電力追従制御と並行して行ってもよく、または、一時的に、最大の出力電力を得るような制御に代えて行うようにしてもよい。
【0055】
次に、電力変換装置100の動作について説明する。図1に示す太陽光発電システムにおいて、太陽電池PVで発電された電力が電力変換装置100に入力されている。電力変換装置100において、電力変換制御部1は、所定の時間が経過する度ごとに、第1〜3電力変換回路部4〜6のうちから最も大きい出力電力が得られる1つの電力変換回路部を選択する処理(選択処理)を行う。所定の時間として、例えば10〜100ms、100〜1000msまたは1〜10秒等とすることが可能である。
【0056】
電力変換制御部1は、選択した電力変換回路部に対してPWM(Pulse Width Modulation)スイッチング制御を行った場合に、最も大きい出力電力が得られる制御条件を求め、その制御条件により、選択した1つの電力変換回路部を制御する。制御条件としては、スイッチング周波数、出力電圧の目標値Vm、ON−OFFのデューティー比等がある。
【0057】
選択した電力変換回路部が、現状において使用されている電力変換回路部である場合には、電力変換制御部1は、最も大きい出力電力Poutが得られるように引き続きその電力変換回路部の制御を続ける。しかし、選択した電力変換回路部が現状において使用されている電力変換回路部と異なる場合には、電力変換制御部1により、選択した電力変換回路部に入力電力Pinが入力されるように切換えられて、選択された電力変換回路部が制御される。
【0058】
図12〜図14を参照して、電力変換装置100の動作について具体的に説明する。図12は、電力変換回路部の切換え処理の一例を示すフローチャートであり、図13は、1つの電力変換回路部を選択する選択処理の一例を示すフローチャートであり、図14は、図12の#12の工程の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図12に示すように、電力変換制御部1により、例えば所定の時間(1〜10秒程度)ごとに電力変換回路部の切換えが必要か否かについて判断される(♯11)。後述する電力変換回路部の選択処理の結果に基づいて、現状において使用している電力変換回路部とは異なる電力変換回路部を電力変換制御部1が選択した場合には、電力変換回路部の切換えが必要である(#11でYes)。
【0060】
電力変換回路部の切換えは、電力変換制御部1の駆動信号S1〜3により行われる。例えば、現状は第1電力変換回路部4が選択されているとすると、駆動信号S2および駆動信号S3がOFFであり、駆動信号S1のみが発信されている。駆動信号S1は、第1電力変換回路部4がPWMスイッチング制御を行うための信号であり、ONとOFFとを一定の周期で繰り返す信号である。駆動信号S2および駆動信号S3がOFFであることから、第2電力変換回路部5および第3電力変換回路部6には入力電力Pinは入力されない。第1電力変換回路部4にのみ入力電力Pinが入力され、出力電力Poutが出力される。
【0061】
選択処理において、第2電力変換回路部5が選択されたとすると、電力変換制御部1は駆動信号S1をOFFにし、駆動信号S2のみを発信する。駆動信号S1および駆動信号S3がOFFであることから、第1電力変換回路部4および第3電力変換回路部6には入力電力Pinは入力されない。第2電力変換回路部5にのみ入力電力Pinが入力され、出力電力Poutが出力される。このようにして、電力変換回路部の切換えが行われる。
【0062】
電力変換制御部1により、第1電力変換回路部4に代えて第2電力変換回路部5において出力電圧の目標値Vmが設定される(#12)。出力電圧の目標値Vmが設定されるとは、出力電圧の目標値Vmが得られるように、第2電力変換回路部5が制御されることをいう。
【0063】
電力変換制御部1が、検出された値の入力電流Iinが第2電力変換回路部5に入力されたとした場合に、PWMスイッチング制御において、出力電圧の目標値Vmを得ることができるようなスイッチング周波数およびデューティー比を算出する。電力変換制御部1は駆動信号S2を送信して、算出した制御条件(スイッチング周波数およびデューティー比)により第2電力変換回路部5を制御する。これにより、第2電力変換回路部5が、上記出力電圧の目標値Vm周辺の出力電圧Voutを出力することになり、最も大きい出力電力Poutが得られる。
【0064】
電力変換制御部1により、出力電圧検出部8により検出された出力電圧Voutの検出値と、出力電圧の目標値Vmとが比較される(#13)。なお、#11でNoの場合は、現状選択されている第1電力変換回路部4により電力変換を行っておけばよいので、#12を行わずに#13に進む。#13において比較した結果に基づいて電力変換制御部1により、検出された出力電圧Voutの検出値と、出力電圧の目標値Vmとを合わせるようにフィードバック制御により、デューティー比が調整される(#14)。
【0065】
デューティー比が調整された後、出力電圧の目標値Vmの再設定が必要であるか、電力変換制御部1により判断される(#15)。具体的には、電力変換制御部1により、現在の入力電流Iinの検出値と、第2電力変換回路部5を選択する際に用いた入力電流Iinの検出値とが比較される。選択処理時の入力電流Iinの検出値と、現在の入力電流Iinの検出値とが異なり、その差が予め設定された所定値以上である場合には、出力電圧の目標値Vmの再設定が必要であると判断される(#15のYes)。出力電圧の目標値Vmが、第2電力変換回路部5が選択された時の値に比べて大きく変化している可能性があると考えられるためである。
【0066】
電力変換制御部1により、図7に示す第2電力変換回路部5の効率対出力電流データTD2に基づいて出力電圧の目標値Vmを再度取得し、再設定される(#16)。つまり、電力変換制御部1が、入力電流Iinが第2電力変換回路部5に流れた場合に、PWMスイッチング制御により、再度取得した出力電圧の目標値Vmを得ることができるようなスイッチング周波数およびデューティー比を算出し、この制御条件により第2電力変換回路部5を制御する。
【0067】
出力電圧の目標値Vmの再設定が不要である場合(#15のNo)、および出力電圧の目標値Vmの再設定(#16)後は、#11へと戻り、上記工程を繰り返す。
【0068】
図12において、電力変換回路部の制御は、フィードバックにより自動制御が行われている。
【0069】
図13を参照して、最も大きい出力電力Poutが得られる1つの電力変換回路部を選択する選択処理について説明する。入力電流検出部2により、入力電流Iinが検出される(#21)。入力電流Iinの検出値と、効率対出力電流データ格納部11に格納されている第1〜3電力変換回路部4〜6の効率対出力電流データTD1〜3とに基づいて、所定の時間(例えば1〜10秒程度)ごとに、出力電力取得部12により、第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれに、入力電流Iinが流れると仮定した場合の出力電力Poutが、出力電圧Voutごとに取得される(#22)。
【0070】
出力電力取得部12により、第1〜3電力変換回路部4〜6における出力電圧Voutごとの出力電力Poutから、出力電圧Voutが取り得る範囲において、第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれにおける回路最大出力電力Phが取得される(#23)。出力電圧Voutの取り得る範囲とは、電力変換装置100に接続される電力源の出力等に応じて決定される値であり、電力変換装置100が用いられる出力電圧Voutの範囲である。また、回路最大出力電力Phとは、各電力変換回路部において出力できる最も大きい出力電力をいう。
【0071】
電力変換制御部1の選択部13により、各電力変換回路部の回路最大出力電力Phが互いに比較され、最も大きな出力電力が得られる1つの電力変換回路部、すなわち最も大きな回路最大出力電力Phを有する電力変換回路部が選択される(#24)。電力変換制御部1は選択された電力変換回路部に応じて、切換えが必要か否かを判断する(図12の#11)。
【0072】
上述した、図13における選択処理について具体的に説明する。例えば、検出された入力電流Iinが5Aであると仮定する(#21)。
【0073】
出力電力取得部12により、効率対出力電流データ格納部11から、図6〜8に示す第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれに対応する効率対出力電流データTD1〜3が取得される。そして、例えば、出力電圧Voutの取り得る範囲が80〜120Vであれば、各効率対出力電流データTD1〜3において、5Aの行の80V、90V、100V、110V、120Vの5つのデータのそれぞれにおいて、出力電流Ioutが取り得る範囲における変換効率ηが最大になるデータが選択される。出力電流Ioutの取り得る範囲とは、電力変換装置100に接続される電力源の出力等に応じて決定される値であり、電力変換装置100において用いられる出力電流Ioutの範囲である。
【0074】
出力電力取得部12により、入力電流Iin(5A)と各入力電圧Vinとを乗じることにより入力電力Pinが算出される(Iin×Vin=Pin)。算出された入力電力Pinに、選択された最大となる変換効率ηを乗じることで出力電圧Voutごとの出力電力Poutが算出される(Pin×η=Pout)。このようにして、出力電圧Voutごとの出力電力Poutが取得される(#22)。なお、入力電圧Vinが固定である場合は、検出せずにその値を用いればよいし、入力電圧Vinが変動する場合は、入力電圧検出部3により検出された値を用いればよい。
【0075】
出力電力取得部12により、出力電圧Voutごとの出力電力Poutが互いに比較され、電力変換回路部ごとの回路最大出力電力Phが取得される(#23)。第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれにおいて出力電力が最大となるときの変換効率が、それぞれηMAX1、ηMAX2、ηMAX3であるとする。検出された入力電流Iinと入力電圧Vinとを乗じた値がPinなので、第1電力変換回路部4の回路最大出力電力PhはηMAX1×Pinであり、第2電力変換回路部5の回路最大出力電力PhはηMAX2×Pinであり、第3電力変換回路部6の回路最大出力電力PhはηMAX3×Pinである。
【0076】
これら3つのうち、例えば第2電力変換回路部5の回路最大出力電力Ph(ηMAX2×P)が最大であれば、選択部13により第2電力変換回路部5が選択される(#24)。
【0077】
第2電力変換回路部5の回路最大出力電力Ph(ηMAX2×Pin)を得ることができる際の出力電圧Voutが出力電圧の目標値Vmとなる。また、スイッチング周波数およびデューティー比については、入力電流Iinが第2電力変換回路部5に流れた場合に、出力電圧の目標値Vmを得ることができるような値とすればよい。
【0078】
選択処理について説明したが、この方法以外に、図4に示す入力電流Iinと出力電力Poutの関係より、入力電流Iinのしきい値th1〜2を定義し、このしきい値th1〜2により電力変換回路部を選択することもできる。例えば、入力電流検出部2により検出された入力電流Iinと、しきい値th1〜2とを比較することにより、最も大きい出力電力が得られる1つの電力変換回路部を選択してもよい。
【0079】
また、第1〜3電力変換回路部4〜6における、入力電流Iinに対する最大となる出力電力Poutを予め測定により求めておき、これらの値についても格納しておけば、選択された電力変換回路部と入力電流Iinの検出値とにより、最大となる出力電力Poutを求め、さらに出力電流Ioutの検出値より、出力電圧の目標値Vmを求めることができる。電力変換制御部1は、入力電流Iinの検出値と出力電圧の目標値Vmとに基づいて、デューティー比、スイッチング周波数等を求めて、その制御条件により、選択された電力変換回路部を制御すればよい。
【0080】
また、電力変換制御部1が第1〜3電力変換回路部4〜6のそれぞれについて上述の効率対出力電流データTD1〜3も格納しており、選択された電力変換回路部の効率対出力電流データに基づいて、入力電流Iinの検出値において最も大きな変換効率ηを有する出力電圧Voutを取得し、その出力電圧Voutを出力電圧の目標値Vmとして、デューティー比、スイッチング周波数等を求めて、その制御条件により、選択された電力変換回路部を制御してもよい。
【0081】
次に、図12の#12の工程について図14を用いて説明する。図14は、図12の#12の工程の一例を示すフローチャートである。現在は第1電力変換回路部4が選択されて動作していて、次に第2電力変換回路部5が選択された状態であり、第1電力変換回路部4から第2電力変換回路部5への切換えが必要と判断されているとする(#11)。
【0082】
切換電圧設定部14により、切換電圧Vchが算出される(#31)。具体的には、切換え前の出力電圧Voutの検出値と、上記選択処理において求められた出力電圧の目標値Vmとの平均値が算出される。この平均値が切換電圧Vchである。
【0083】
なお、出力電圧Voutの検出値は、切換え直前の第1電力変換回路部4(切換え前の電力変換回路部)において最も大きい出力電力が得られる出力電圧Vfに相当する。また、出力電圧の目標値Vmは、切換え直後の第2電力変換回路部5(切換え後の電力変換回路部)において最も大きい出力電力が得られる出力電圧Vaに相当する。
【0084】
切換電圧設定部14により、第1電力変換回路部4に切換電圧Vchが設定される(#32)。具体的には、第1電力変換回路部4が切換電圧Vchを出力するように、切換電圧設定部14により制御条件が変更される。
【0085】
制御条件が変更された後に、切換電圧設定部14により、切換電圧Vchと出力電圧Voutの検出値とが比較され(#33)、これらの値が異なれば(#33でNo)、これらの値が一致するようにデューティー比が調整され(#34)、再び#33が行われ、フィードバック制御がなされる。
【0086】
切換電圧Vchと出力電圧Voutの検出値とが一致すれば(#33でYes)、切換電圧設定部14により、出力電圧Voutが切換電圧Vchのままで、第1電力変換回路部4から第2電力変換回路部5に切換えが行われる(#35)。具体的には、第2電力変換回路部5が切換電圧Vchを出力するように、切換電圧設定部14により制御される。
【0087】
切換えられた後に、切換電圧設定部14により、切換電圧Vchと出力電圧Voutの検出値とが比較され(#36)、これらの値が異なれば(#36でNo)、これらの値が一致するようにデューティー比が調整され(#37)、再び#36が行われ、フィードバック制御がなされる。
【0088】
切換電圧Vchと出力電圧Voutの検出値とが一致すれば(#36でYes)、切換電圧設定部14により、第2電力変換回路部5に出力電圧の目標値Vmが設定される(#38)。具体的には、切換電圧Vchが設定される出力電圧Voutが出力電圧の目標値Vmとなるように、制御条件が変更される。
【0089】
そして、図12の#13へと進む。
【0090】
電力変換回路部の切換え時に、上述のように出力電圧Voutを制御することにより、図11に示すように、出力電圧Voutの変化がなだらかになる。なお、電力変換装置100は、電力変換回路部の切換え時において、出力電力Poutが若干低下する可能性があるが、それ以外においては高い変換効率ηを維持することができる。
【0091】
切換電圧Vchは、出力電圧Voutの検出値と出力電圧の目標値Vmとの平均値としたが、これに限定されるわけではなく、出力電圧Voutの検出値と出力電圧の目標値Vmとの間の値とすればよい。
【0092】
また、出力電圧Voutと出力電圧の目標値Vmとの差が所定値以上である場合は、切換え時において、これらの値の間で出力電圧Voutの変化が段階的に行われることとしてもよい。図15は、電力変換回路部を切換える際に出力電圧を制御する場合の他の一例における出力電圧と時間との関係を示す図である。図15に示すように、切換電圧Vch以外に、出力電圧Voutの検出値と出力電圧の目標値Vmとの間の値であって、切換電圧Vchよりも大きい切換近傍電圧Vchm1と、切換電圧Vchよりも小さい切換近傍Vchm2とを設定し、電力変換回路部の切換え時において、出力電圧Voutが段階的に変化していくようにしてもよい。これにより、出力電圧Voutの検出値と出力電圧の目標値Vmとの差が比較的大きい場合でも、出力電圧Voutをなだらかに変化させることができる。なお、段階的制御を行う基準となる差電圧の所定値として、絶対値または割合値を求めることができる。例えば、所定値として1V〜数V程度の範囲の出力電圧Voutの値、数%〜10%程度の範囲の値を用いることができる。
【0093】
電力変換装置100において、第1〜3電力変換回路部4〜6の制御は、PWMスイッチング制御を用いたが、電力変換を行うことができればよく、PFM制御等の他の制御法を用いてもよい。また、入力電圧Vinが固定値である場合は入力電圧検出部3を設ける必要がないが、入力電圧検出部3を設けて入力電圧Vinを検出することにより、より正確な値を用いることができて精度の高い制御が可能である。
【0094】
また、入力電圧Vinの変化が大きい場合は、なんらかの異常が発生している可能性がある。電力変換制御部1により、入力電圧検出部3で検出された入力電圧Vinの所定時間当たりの変動幅を算出し、予め記憶されている所定の設定値と比較し、この設定値以上の場合は警報出力部9に信号を送信し、警報出力部9が警報信号を出力し、操作者に知らせることとすればよい。例えば、ランプが点灯したり、警報音が鳴ったり、表示画面に警告表示がなされることとすればよい。
【0095】
また、電力変換制御部1により、出力電流検出部7で検出された出力電流Ioutと、出力電圧検出部8で検出された出力電圧Voutとを乗じることで出力電力Poutを随時算出しておき、出力電力Poutの値が予め設定された所定の値よりも小さくなった場合には、警報出力部9に信号が送信されることとしてもよい。
【0096】
上述の説明では、選択処理において、電力変換制御部1が、第1〜3電力変換回路部4〜6のすべての回路最大出力電力Phを取得した上で、いずれかの電力変換回路部を選択している。しかし、電力変換回路部の切換えは、通常、隣合う入力電流範囲を有する電力変換回路部の間でなされることから、現在選択されている電力変換回路部と、その電力変換回路部の入力電流範囲と隣合う入力電流範囲を有する電力変換回路部との回路最大出力電力Phを取得し、それらの中からいずれか1つの電力変換回路部を選択してもよい。これにより、選択処理の工程が減少し、時間も短縮される。
【0097】
つまり、第1電力変換回路部4が現在選択されている場合は、第1電力変換回路部4および第2電力変換回路部5のそれぞれについて回路最大出力電力Phを求めて、それらを比較することで電力変換回路部を選択すればよい。また、第2電力変換回路部5が現在選択されている場合は、第1電力変換回路部4、第2電力変換回路部5および第3電力変換回路部6のそれぞれについて回路最大出力電力Phを求めて、それらを比較することで電力変換回路部を選択すればよい。また、第3電力変換回路部6が現在選択されている場合は、第2電力変換回路部5および第3電力変換回路部6のそれぞれについて回路最大出力電力Phを求めて、それらを比較することで電力変換回路部を選択すればよい。
【0098】
上述の電力変換装置100の説明では、電力変換制御部1は、第1〜3電力変換回路部4〜6のいずれかを選択する選択処理を所定時間ごとに行うこととしたが、これ以外のタイミングでこの処理を実行することとしてもよい。例えば、電力変換制御部1は、前回に新しい1つの電力変換回路部を選択する選択処理を実行したときに入力電流検出部2により検出された入力電流Iinと、最新に検出された入力電流Iinとの差異を算出し、この差異の値が所定の設定値を越えた場合に、第1〜3電力変換回路部4〜6のいずれかを選択する選択処理を実行することとしてもよい。
【0099】
本実施形態に係る電力変換装置100によれば、異なる入力電流−出力電力特性を有する電力変換回路部を持ち、それらを切換えることで広い入力電流域において高い変換効率を維持することができる。そのため、構成が複雑でなく、簡素化でき、回路設計も容易である。また、同一の回路を複数有して、それらを組み合わせることで広い入力電流域に対応する電力変換装置に比べて、回路を構成するための部品点数の増加量を抑えて、広い入力電流域に対して、効率よく出力を得ることができる。そのため、小型化・低コスト化が可能である。また、出力電圧Voutの変化が急激に変化しにくいので、出力側に接続される連系用整合装置200が誤動作しにくい。出力側に蓄電池を接続した場合には、効率よく蓄電池が蓄電される。
【0100】
上に述べた実施形態において、電力変換装置100の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質、組成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0101】
上に述べた実施形態の電力変換装置100は、広い入力電流域および出力電流域を持ち、広い範囲の入力電流の変動に対応して全電流域で最大電力を出力することができる。また、小型化・低コスト化が可能である。例えば、太陽電池に接続することで、太陽電池により発電された電力をより有効に取り出すことができる。したがって、太陽光発電システムの構成部品として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 電力変換制御部
2 入力電流検出部
3 入力電圧検出部
4 第1電力変換回路部
5 第2電力変換回路部
6 第3電力変換回路部
7 出力電流検出部
8 出力電圧検出部
9 警報出力部
11 効率対出力電流データ格納部
12 出力電力取得部
13 選択部
14 切換電圧設定部
100 電力変換装置
200 連系用整合装置
L1〜3 コイル
C1〜3 コンデンサ
FET1〜3 スイッチング素子
D1〜3 転流ダイオード
PV 太陽電池
TD1〜3 効率対出力電流データ
th1 小電流側しきい値
th2 大電流側しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力として入力される入力電力を電力変換して出力電力を出力する電力変換装置であって、
前記入力電力の電流である入力電流を検出する入力電流検出部と、
前記入力電力を電力変換するものであり、入力電流範囲が互いに異なりかつ隣合う入力電流範囲とは重複する部分を有する複数の電力変換回路部と、
前記複数の電力変換回路部のうち、前記入力電流検出部により検出された入力電流において最も大きい出力電力が得られる1つの電力変換回路部を選択し、選択した電力変換回路部に対して最も大きい出力電力が得られる制御条件で制御を行う、電力変換制御部と、を備え、
前記電力変換制御部は、前記1つの電力変換回路部を選択するに際し、その選択により電力変換回路部が切換えられる場合に、切換え直前の電力変換回路部の出力電圧と、切換え直後の電力変換回路部の出力電圧とが互いに一致するように制御する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換制御部は、
前記1つの電力変換回路部を選択するに際し、その選択により前記電力変換回路部が切換えられる場合であって、
切換え前の前記電力変換回路部において最も大きい出力電力が得られるときの出力電圧と、切換え後の前記電力変換回路部において最も大きい出力電力が得られるときの出力電圧との差が、所定の値以上であるときは、
前記電力変換回路部の切換えの前後における出力電圧の変化が段階的に行われるように制御する、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換制御部は、
前記複数の電力変換回路部のうち、現在選択されている電力変換回路部、および、この電力変換回路部の入力電流範囲と隣合う入力電流範囲を有する電力変換回路から、前記入力電流検出部により検出された入力電流に基づいて1つの電力変換回路部を選択する、
請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記入力電力の電圧である入力電圧を検出する入力電圧検出部と、
前記入力電圧検出部で検出された入力電圧の変化が大きいときに警報信号を出力する警報出力部と、
を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191824(P2012−191824A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55574(P2011−55574)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】