説明

電力変換装置

【課題】出力線を短縮できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】多相交流電力を交流電力に直接変換する電力変換装置3であって、前記多相交流電力の各相R,S,Tに接続されて双方向への通電を切り換え可能にする複数の第1スイッチング手段311,313,315と、前記各相に接続されて双方向への通電を切り換え可能にする複数の第2スイッチング手段312,314,316とを有する変換回路と、前記変換回路に接続された出力線331,332と、を備え、前記複数の第1スイッチング手段と前記複数の第2スイッチング手段は、それぞれの出力端子がそれぞれ一列に並んで配置され、前記出力線は、前記出力端子に接続されて一方向に引き出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用周波数の交流電力を任意の交流電力に直接変換する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装置を構成する部品点数が少なく、装置の小型化が可能で、交流電力を交流電力に直接かつ高効率に変換する電力変換装置としてマトリックスコンバータが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−333590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のマトリックスコンバータでは、複数のIGBTを直列状に配置し、各IGBTからの出力線を集約してつなげているため出力線が長くなるという問題がある。特に出力線に高周波交流電流が流れる電力変換装置においては、配線長が長いとL成分の影響を受け易い。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、出力線を短縮できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電力変換回路を構成する複数のスイッチング手段を、出力線が一方向に引き出されるように並べて配置することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のスイッチング手段を並べて配置することにより出力線を一方向に引き出すことができるので、出力線を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した電力変換システムを示す電気回路図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る電力変換装置を示す平面図及び側面図並びに組立途中の平面図である。
【図3】図2の電力変換装置のIGBT及びフィルタコンデンサのレイアウトを示す平面図及び側面図である。
【図4A】図3のIGBT及びフィルタコンデンサの他のレイアウトを示す平面図である。
【図4B】図4Aの側面図である。
【図5】図3のIGBT及びフィルタコンデンサのさらに他のレイアウトを示す平面図及び側面図である。
【図6】図3のIGBT及びフィルタコンデンサの他のレイアウトを示す平面図及び側面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態を適用した電力変換システムを示す電気回路図である。
【図8】図7の電力変換装置のIGBT及びフィルタコンデンサのレイアウトを示す平面図及び側面図である。
【図9】図7の電力変換装置のIGBT及びフィルタコンデンサの他のレイアウトを示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《電力変換システム1の概要》
最初に本発明の一実施の形態を適用した電力変換システムの概要について図1を参照して説明する。本例の電力変換システム1は、三相交流電源2から供給される三相交流電力を本発明の一実施の形態に係る電力変換装置3により単相交流電力に直接変換し、これをトランス4により適宜の電圧に昇圧又は降圧させたのち、整流器5により直流電力に変換して二次電池6を充電するシステムである。なお、7は平滑回路である。
【0010】
本例の電力変換システム1において、三相交流電源2から三相交流電力が供給される出力線(R相,S相,T相で示す)の各相には、ノイズ対策として高調波を減衰させるフィルタ回路8が設けられている。本例のフィルタ回路8は、各相R,S,Tに接続された3つのフィルタリアクトル81と、各相R,S,Tの間に接続された6つのフィルタコンデンサ82L,82Rとを備える。フィルタコンデンサ82L,82R(図3〜図6においてはフィルタコンデンサ821〜836で示す)のレイアウトについては後述する。
【0011】
本例の電力変換システム1において、フィルタ回路8を経由して三相交流電力が電力変換装置3に供給され、単相交流電力に変換される。本例の電力変換装置3は、R相,S相,T相に対応してマトリックス状に配列された6つの双方向スイッチング素子31を備える。以下、一つの双方向スイッチング素子を総称する場合は符号31を用いて説明する一方、図1に示すように6つの双方向スイッチング素子のうちの特定の素子を示す場合は311〜316を用いて説明する。
【0012】
本例の双方向スイッチング素子31のそれぞれは、半導体スイッチング素子であるIGBTを還流ダイオードと組み合わせて逆並列に接続したIGBTモジュールで構成されている。なお、一つの双方向スイッチング素子31の構成は、図示するものに限定されず、これ以外にもたとえば逆阻止型IGBTの2素子を逆並列に接続した構成であってもよい。
【0013】
双方向スイッチング素子31のそれぞれには、当該双方向スイッチング素子31のON/OFF動作にともない発生するサージ電圧から当該双方向スイッチング素子31を保護するために、双方向スイッチング素子31の入力側及び出力側に1つのスナバコンデンサと3つのダイオードを組み合わせたスナバ回路32が設けられている。以下、一つのスナバ回路を総称する場合は符号32を用い、図1に示すように6つのスナバ回路のうち特定のスナバ回路を示す場合は321〜326を用いる。
【0014】
本例の電力変換システム1は、電力変換装置3の双方向スイッチング素子31のそれぞれをON/OFF制御するためにマトリックスコンバータ制御回路9を備える。マトリックスコンバータ制御回路9は、三相交流電源2から供給される電圧値、現在出力中の直流電流値及び目標電流指令値を入力し、これらに基づいて双方向スイッチング素子31のそれぞれのゲート信号を制御し、トランス4へ出力する単相交流電力を調整することで、目標と一致する直流電力を得る。
【0015】
トランス4は、電力変換装置3で変換された単相交流電力の電圧を所定値に昇圧又は降圧する。整流器5は4つの整流ダイオードを備え、調圧された単相交流電力を直流電力に変換する。また、平滑回路7はコイルとコンデンサとを備え、整流された直流電流に含まれる脈流をより直流に近い状態に平滑化する。
【0016】
以上のように構成された本例の電力変換システム1により、三相交流電源2から供給される三相交流電力は、電力変換装置3により単相交流電力に直接変換され、適宜の電圧に調圧されたのち直流電力に変換される。これにより二次電池6が充電される。なお、上述した電力変換システム1は、本発明に係る電力変換装置3を適用した一例であり、本発明は当該電力変換システム1への適用にのみ限定されることはない。すなわち、変換元又は変換先の少なくとも一方の電力が多相交流電力であれば、他の電力変換システムにも適用することができる。
【0017】
《電力変換装置3の部品配置》
次に、図1の電力変換装置3を構成する部品の配置構成について、図2〜図6を参照して説明する。なお、図1と同じ部品には同一の符号を付すことで互いの対応関係を示すものとする。
【0018】
図2において、右下の図は、ヒートシンク10の上面に6つの双方向スイッチング素子31(その一つをIGBTモジュールともいう。)を実装した組付け途中の状態を示す平面図、右上の図は、これに各双方向スイッチング素子31の端子を接続するバスバーを実装した組付け途中の状態を示す平面図、左上の図は、これにスナバ回路32を構成する3つのダイオードとフィルタ回路8のフィルタコンデンサ82のうち左側の3つのフィルタコンデンサを実装した組付け途中の状態を示す平面図、左下の図は、その側面図である。本例の電力変換装置3を構成する部品が平面視において互いに重なり合っているため、以下の説明では要部を別図に示すことにする。
【0019】
本例の双方向スイッチング素子31は、図2及び図3に示すようにモジュールパッケージの上面に双方向スイッチング素子31の入力側端子と、出力側端子と、対をなす2つのIGBTの中間点端子とが設けられている。図3に示す6つの双方向スイッチング素子311〜316のうちの左側の3つの双方向スイッチング素子311,313,315の左端の端子が入力端子、右端の端子が出力端子、中央の端子が中間点端子である。また、図3に示す6つの双方向スイッチング素子311〜316のうちの右側の3つの双方向スイッチング素子312,314,316の右端の端子が入力端子、左端の端子が出力端子、中央の端子が中間点端子である。なお、双方向スイッチング素子31のゲート端子はモジュールパッケージの他の部分に設けられているがその図示は省略する。
【0020】
図2及び図3に示すように、6つの双方向スイッチング素子311〜316は、ヒートシンク10の上面にボルトなどの固定手段により固定されている。これら6つの双方向スイッチング素子311〜316は、同図に示すように、対をなす双方向スイッチング素子311と312、双方向スイッチング素子313と314、双方向スイッチング素子315と316がそれぞれ中心線CLの左右に並んで配置されている。換言すれば、一つの双方向スイッチング素子31の3つの端子(入力端子,中間点端子,出力端子)の延在方向に沿って対をなす2つの双方向スイッチング素子311と312、双方向スイッチング素子313と314、双方向スイッチング素子315と316がそれぞれ中心線CLの左右に並んで配置されている。以下この配列を、「中心線CL又は出力端子を結ぶ出力線P,Nに対して並列に配置」されているともいう。本発明において、後述する図5の配列に対する配列である。なお、対をなす双方向スイッチング素子とは、入力線の同じ相R,S,Tに接続された一対の双方向スイッチング素子をいう。
【0021】
このように、対をなす双方向スイッチング素子311と312、双方向スイッチング素子313と314、双方向スイッチング素子315と316がそれぞれ中心線CLの左右に並んで配置することにより、出力線P,N(バスバー331,332)を一方向へ最短距離で引き出すことができるレイアウトになる。高周波交流電力が出力される配線長が長いとL成分の影響を受け易いので、本例の配置によればL成分の影響を抑制することができる。これは図5の他例に係る配列に対する有利な効果となる。すなわち、トランス4に至るまでほぼ直線に近い状態の出力線P,Nとなる。
【0022】
また、上述したとおり中心線CLより左側の双方向スイッチング素子311,313,315の右端の端子は全て出力端子であり、左端の端子は全て入力端子である。逆に、中心線CLより右側の双方向スイッチング素子312,314,316の左端の端子は全て出力端子であり、右端の端子は全て入力端子である。
【0023】
そして、中心線CLより左側の双方向スイッチング素子311,313,315の左端の入力端子には、三相交流電源2の入力線から分岐した一方の入力線R,S,Tが中心線CLに向かって接続される一方で、中心線CLより右側の双方向スイッチング素子312,314,316の右端の入力端子には、三相交流電源2の入力線から分岐した他方の入力線R,S,Tが中心線CLに向かって接続されている。すなわち、双方向スイッチング素子311,312の入力端子にはR相、双方向スイッチング素子313,314の入力端子にはS相、双方向スイッチング素子315,316の入力端子にはT相がそれぞれ接続されている。左右の入力線R,S,Tの接続方向をいずれも中心線CLに向かう方向にすることで、図6に示す他例に係る配列に比べてヒートシンク10の左右方向の距離を短くすることができる。
【0024】
なお図1において、三相交流電源2から電力変換装置3に至る入力線R,S,Tはフィルタリアクトル81とフィルタコンデンサ82L,82Rとの間で分岐するよう構成したが、フィルタリアクトル81の上流側で分岐させ、分岐後の入力線R,S,Tのそれぞれにフィルタリアクトル81を設けてもよい。
【0025】
また、中心線CLより左側の双方向スイッチング素子311,313,315の右端の出力端子には、電力変換装置3の出力線Pを構成する1本のバスバー331が接続される一方で、中心線CLより右側の双方向スイッチング素子312,314,316の左端の出力端子には、電力変換装置3の出力線Nを構成する1本のバスバー332が接続されている。これらのバスバー331,332の先端側がトランス4に接続される。なお、これらのバスバー331,332を含めて、以下のバスバーは銅などの導電性に優れた導体により構成されている。
【0026】
中心線CLの左右に配置された対をなす双方向スイッチング素子311と312の入力端子間はバスバー333で接続され、双方向スイッチング素子313と314の入力端子間はバスバー334で接続され、双方向スイッチング素子315と316の入力端子間はバスバー335で接続されている。図1の等価回路にもバスバーに相当する配線を同じ符号で示す。なお、電力変換装置3の機能上、これらバスバー333〜335は必須ではないので省略してもよい。
【0027】
これらバスバー333〜335は、出力線P,Nを構成するバスバー331,332と平面視において交差することになるが、図3の側面図に示すように入力端子間を接続するバスバー333〜335が出力線P,Nのバスバー331,332より高い位置に設定されることで、両者が立体交差して干渉しないように構成されている。
【0028】
中心線CLの左右に配置された対をなす双方向スイッチング素子311と312,双方向スイッチング素子313と314,双方向スイッチング素子325と316をそれぞれ接続することにより、各相間に設けられたフィルタコンデンサ82L,82Rを互いに共用できる。すなわち、図3の左側のR相とS相との間にはフィルタコンデンサ821が設けられ、右側のR相とS相との間にはフィルタコンデンサ824が設けられているが、R相が入力される双方向スイッチング素子311,312の入力端子はバスバー333で接続されている。したがって、三相交流電源2のR相のノイズは、2つのフィルタコンデンサ821,824が協働してフィルタリングすることになるので、一つのフィルタコンデンサを小容量化でき、結果的にフィルタコンデンサを小型化できることになる。S相及びT相についても同様のことが言える。
【0029】
本例において、フィルタ回路8は6つのフィルタコンデンサ821〜826を含み、図3に示すように中心線CLの左側と右側の入力線にそれぞれ3個ずつ配置されている。左側のフィルタコンデンサ821は、双方向スイッチング素子311の入力端子に対応したR相とS相との間に設けられている。同様に、左側のフィルタコンデンサ822は、双方向スイッチング素子313の入力端子に対応したS相とT相との間に設けられ、左側のフィルタコンデンサ823は、双方向スイッチング素子315の入力端子に対応したT相とR相との間に設けられている。また、右側のフィルタコンデンサ824は、双方向スイッチング素子312の入力端子に対応したR相とS相との間に設けられ、右側のフィルタコンデンサ825は、双方向スイッチング素子314の入力端子に対応したS相とT相との間に設けられ、右側のフィルタコンデンサ826は、双方向スイッチング素子316の入力端子に対応したT相とR相との間に設けられている。
【0030】
このように中心線CLの左右に3つずつ配置された6つの双方向スイッチング素子311〜316に対して、中心線CLの左右に3個ずつ6個のフィルタコンデンサ821〜826をそれぞれ対応するように配置することで、フィルタコンデンサ821〜826と双方向スイッチング素子311〜316とのそれぞれの接続配線の取り廻し距離を短くすることができる。
【0031】
本例において、左右それぞれ3個ずつのフィルタコンデンサ821〜826は、6つの双方向スイッチング素子311〜316が設けられた領域よりも中心線CLに対して外側に配置されている。具体的には、図2の左下の図に示すようにバスバーの上部に固定されている。フィルタコンデンサ821〜826を双方向スイッチング素子311〜316より外側に配置することにより、左右の双方向スイッチング素子31L,31Rの左右方向の間隔を最短にできるため、ヒートシンク10の左右方向の距離を最短距離に設定でき、その結果、図4Aの他例に係る配列に比べてヒートシンク10を小型化することができる。
【0032】
次に、中心線CLの左右にそれぞれ3個ずつ設けられたフィルタコンデンサ821〜826の実装状態を、図2の実機の平面図及び側面図に基づいて説明する。
【0033】
その前にバスバーの接続構成について説明すると、図2の右上図に示すように、バスバー331は、双方向スイッチング素子311,313,315の出力端子を接続してトランス4に至る出力線Pであり、バスバー332は、双方向スイッチング素子312,314,316の出力端子を接続してトランス4に至る出力線Nである。バスバー333は、双方向スイッチング素子311と312の入力端子を接続するバスバーであり、両入力端子より左右外側に延在し、ここにフィルタコンデンサ823と826をそれぞれ接続するためのバスバー336と337が接続されている(フィルタコンデンサ823,826との接続状態については図2の左上図及び図3を参照)。このバスバー333の両端に接続されたバスバー336,337は、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線、すなわち図2の左上図において上下方向に延在する線に対して傾斜して設けられている。
【0034】
バスバー334は、双方向スイッチング素子313と314の入力端子を接続するバスバーであり、両入力端子より左右外側に延在し、ここにフィルタコンデンサ821,822,824,825をそれぞれ接続するためのバスバー338と339が接続されている(フィルタコンデンサ821,822,824,825との接続状態については図2の左上図及び図3を参照)。このバスバー334の両端に接続されたバスバー338,339は、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線、すなわち図2の左上図において上下方向に延在する線に沿って延在する。
【0035】
バスバー335は、双方向スイッチング素子315と316の入力端子を接続するバスバーであり、両入力端子より左右外側に延在し、ここにフィルタコンデンサ823と826をそれぞれ接続するためのバスバー340と341が接続されている(フィルタコンデンサ823,826との接続状態については図2の左上図及び図3を参照)。このバスバー335の両端に接続されたバスバー340,341は、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線、すなわち図2の左上図において上下方向に延在する線に対して傾斜して設けられている。
【0036】
これらバスバー333,334,335は、図2の左下図に示すように、双方向スイッチング素子311〜316の入力端子に数枚のバスバー345,346を介して接続され、出力線P,Nを構成するバスバー331,332より高い位置に設置される。これにより、バスバー333〜335とバスバー331,332は干渉することなく高さ方向に所定の隙間をもって立体交差することになる。
【0037】
フィルタコンデンサ821,822,823は、図2の左上図に点線で示すように、中心線CLに対して外側に配置され、かつ一つの頂点が外方向に向かう三角形(二等辺三角形又は正三角形がより好ましい)の各頂点にフィルタコンデンサ821,822,823の中心が位置するように配置されている。3つのフィルタコンデンサ821,822,823を三角形の各頂点に配置することで、各コンデンサ間の配線長を最短距離に設定することができ、電力変換装置3の小型化を図ることができ、またコンデンサ間の同調をとることができる。また、一つの頂点が外方向に向かう配置とすることで、一つの頂点が内方向に向かう配列に比べて各コンデンサに接続する配線のバランスが向上するとともに各バスバー333,334,335までの距離も短くなる。
【0038】
さらに、R相とS相との間に接続されるフィルタコンデンサ821は、バスバー342の上面に実装され、S相とT相との間に接続されるフィルタコンデンサ822は、バスバー343の上面に実装されている。これらの2つのバスバー342,343は、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線、すなわち図2の左上図において上下方向に延在する線に対して傾斜して接続されている。また、これらの2つのバスバー342,343は、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線、すなわち図2の左上図において上下方向に延在する線を跨いで、バスバー333,342,335に接続されている。なお、中心線CLの右側に実装されるフィルタコンデンサ824,825についても中心線CLに対して対称に設けられている。
【0039】
バスバー342,343を双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線に対して傾斜して設けることにより、R相とT相との間に接続されたフィルタコンデンサ823の配線距離に極力等しくできるので、フィルタコンデンサ821,822,823間で同調をとることができる。また、バスバー342,343を、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線を跨ぐように設けることにより、フィルタコンデンサ821,822とバスバー333,334,335との接続距離を短くすることができ、電力変換装置3の小型化を図ることができる。さらに、各フィルタコンデンサ821〜826をバスバーの上面、換言すればバスバーに対して双方向スイッチング素子311〜316とは反対側にフィルタコンデンサ821〜826を配置することで、フィルタコンデンサ821〜826のレイアウトの設計自由度が大きくなる。
【0040】
なお、R相とT相との間に接続されるフィルタコンデンサ823は、バスバー336と340との間に接続されたバスバー344の上面に実装され、このバスバー344は、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線に対して平行に設けられている。
【0041】
次に、図1に示す一つのスナバ回路32を構成する3つのダイオードと1つのスナバコンデンサの実装例を説明する。図1に示すように、たとえば双方向スイッチング素子311のスナバ回路321は、一つの端子が双方向スイッチング素子311の入力端子に接続され、他の一つの端子が双方向スイッチング素子311の中間点端子に接続され、さらに他の端子が双方向スイッチング素子311の出力端子にそれぞれ接続される。このため、3つのダイオードは、図2の左上図及び左下図に示すように、各双方向スイッチング素子31L,31Rの中間点端子に接続された導体からなるブラケット351〜356にそれぞれ固定及び接続されている。図2の左下図にはブラケット355のみを示す。
【0042】
また本例では、スナバコンデンサに比較的大型の電解コンデンサを使用して、6つのスナバ回路321〜326に共通のスナバコンデンサ327をとしている(図3参照)。そして、このスナバコンデンサ327と3つのダイオードとを接続するためにバスバー347,348が、出力線P,Nを構成するバスバー331,332の間に同方向に沿って設けられている。
【0043】
スナバコンデンサ327に接続される2つのバスバー347,348は、図2の左下図及び図3に示すように、出力線P,Nを構成するバスバー331,332よりも高い位置であってバスバー333,334,335よりも低い位置に固定されている。なお、これら2つのバスバー347,348は、ヒートシンク10又はこれ以外の基台(不図示)に支持されている。なお、バスバー333,334,335との短絡を防止するために、バスバー347,348の表面を絶縁被覆してもよい。
【0044】
出力線P,Nを構成するバスバー311,312とスナバコンデンサ327へのバスバー347,348との配置に関しては、バスバー311,312の間にバスバー347,348を配置することにより、出力線P,N及びスナバコンデンサ327への配線距離をともに短くすることができる。また、バスバー347,348をバスバー311,312より高い位置に設定することで、各スナバ回路321〜326のダイオードからの距離を短くすることができる。
【0045】
以上の実施の形態によれば、以下の効果を有する。
1)本例では、中心線CLの左右に3つずつ配置された6つの双方向スイッチング素子311〜316に対して、中心線CLの左右に3個ずつ6個のフィルタコンデンサ821〜826をそれぞれ対応して配置したので、フィルタコンデンサ821〜826と双方向スイッチング素子311〜316とのそれぞれの接続配線の取り廻し距離を短くすることができる。
【0046】
2)本例では、対をなす双方向スイッチング素子311と312、双方向スイッチング素子313と314、双方向スイッチング素子315と316が、それぞれ中心線CLの左右に並んで配置されているので、出力線P,N(バスバー331,332)を一方向へ短く引き出すことができるレイアウトになる。したがって、高周波交流電力が出力される配線長が長いとL成分の影響を受け易いが、本例の配置によればL成分の影響を抑制することができる。
【0047】
3)本例では、左右それぞれ3個ずつのフィルタコンデンサ821〜826は、6つの双方向スイッチング素子311〜316が設けられた領域よりも中心線CLに対して外側に配置されているので、左右の双方向スイッチング素子31L,31Rの左右方向の間隔を最短にできる。したがって、ヒートシンク10の左右方向の距離を最短距離に設定でき、その結果、ヒートシンク10を小型化することができる。
【0048】
4)本例では、中心線CLの左右に配置された対をなす双方向スイッチング素子311と312,双方向スイッチング素子313と314,双方向スイッチング素子325と316の入力端子が、それぞれバスバー333,334,335で接続されているので、各相間に設けられたフィルタコンデンサ82L,82Rを互いに共用できる。したがって、一つのフィルタコンデンサを小容量化でき、結果的にフィルタコンデンサを小型化できる。
【0049】
5)本例では、双方向スイッチング素子31L,31Rの入力端子に対して、左右の入力線R,S,Tの接続方向をいずれも中心線CLに向かう方向にしているので、ヒートシンク10の左右方向の距離を短くすることができる。
【0050】
6)本例では、各フィルタコンデンサ821〜826をバスバーの上面、換言すればバスバーに対して双方向スイッチング素子311〜316とは反対側にフィルタコンデンサ821〜826を配置したので、フィルタコンデンサ821〜826のレイアウトの設計自由度が大きくなる。
【0051】
7)本例では、出力線P,Nを構成するバスバー311,312とスナバコンデンサ327へのバスバー347,348との配置について、バスバー311,312の間にバスバー347,348を配置したので、出力線P,N及びスナバコンデンサ327への配線距離をともに短くすることができる。
【0052】
8)本例では、バスバー347,348をバスバー311,312より高い位置に設定したので、各スナバ回路321〜326のダイオードからの距離を短くすることができる。
【0053】
9)本例では、3つのフィルタコンデンサ821,822,823を三角形の各頂点に配置したので、各コンデンサ間の配線長を最短距離に設定することができ、電力変換装置3の小型化を図ることができ、またコンデンサ間の同調をとることもできる。
【0054】
10)本例では、三角形に配置した3つのフィルタコンデンサの一つの頂点が外方向に向かう配置にしたので、一つの頂点が内方向に向かう配列に比べて各コンデンサに接続する配線のバランスが向上するとともに、各バスバー333,334,335までの距離も短くなる。
【0055】
11)本例では、バスバー342,343を双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線に対して傾斜して設けたので、R相とT相との間に接続されたフィルタコンデンサ823の配線距離に極力等しくできる。したがって、フィルタコンデンサ821,822,823間で同調をとることができる。
【0056】
12)本例では、バスバー342,343を、双方向スイッチング素子311,313,315の入力端子を結ぶ線を跨ぐように設けたので、フィルタコンデンサ821,822とバスバー333,334,335との接続距離を短くすることができ、電力変換装置3の小型化を図ることができる。
【0057】
《他の実施の形態》
本発明は、上述した実施の形態以外にも適宜改変することができる。以下に本発明の変形例を説明するが、本発明は上述した実施の形態及び以下の実施の形態にのみ限定される趣旨ではない。なお、上述した実施の形態と共通する部材には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0058】
上述した実施の形態では、図3に示すように左右それぞれ3つずつのフィルタコンデンサ82L,82Rを、中心線CLに対して双方向スイッチング素子311,313,315及び312,314,316の外側に配置したが、図4A,4Bに示すように中心線CLに対して左右に配列された双方向スイッチング素子311,313,315及び312,314,316の間に配置することもできる。
【0059】
また上述した実施の形態では、図3に示すように、6つの双方向スイッチング素子311〜316を、中心線CLに対して左側に双方向スイッチング素子311,313,315を配置し、右側に双方向スイッチング素子312,314,316に配置したが、図5に示すように中心線CLに沿って、双方向スイッチング素子311,313,315と、双方向スイッチング素子312,314,316とを配置してもよい。
【0060】
また上述した実施の形態では、図3に示すように、6つの双方向スイッチング素子311〜316を、中心線CLに対して左側に双方向スイッチング素子311,313,315を配置し、右側に双方向スイッチング素子312,314,316に配置し、各双方向スイッチング素子の入力端子及び出力端子を中心線CLに対して線対称に設けたが、図6に示すように、中心線CLに対して左側に双方向スイッチング素子311,313,315を配置し、右側に双方向スイッチング素子312,314,316に配置し、各双方向スイッチング素子の入力端子及び出力端子を同じ配置としてもよい。この場合には、2系統の入力線R,S,Tをそれぞれ同じ方向(図示する例では左から右)に向かって各双方向スイッチング素子の入力端子に接続する。
【0061】
また上述した実施の形態では、図3に示すように、6つの双方向スイッチング素子311〜316のそれぞれに対して一つずつ対応するようにフィルタコンデンサ821〜826を各相間に設けたが、図7に示すように、6つの双方向スイッチング素子311〜316のそれぞれに対して複数(図示する例では二つ)ずつ対応するようにフィルタコンデンサ821〜826を各相間に設けてもよい。
【0062】
この場合において、フィルタコンデンサの配置は、図8に示すように電力変換装置3の中央でもよいし、図9に示すように電力変換装置3の外側でもよい。図8に示すように電力変換装置3の中央に配置すると空きスペースが利用できるので電力変換装置3の大きさを可能な限り抑制することができる。
【0063】
上記双方向スイッチング素子311,313,315は本発明に係る第1スイッチング手段に相当し、上記双方向スイッチング素子312,314,316は本発明に係る第2スイッチング手段に相当し、上記電力変換装置3は本発明に係る変換回路に相当し、上記バスバー331,332は本発明に係る出力線に相当する。
【符号の説明】
【0064】
1…電力変換システム
2…三相交流電源
3…電力変換装置
31,311〜316…双方向スイッチング素子
32,321〜326…スナバ回路
327…スナバコンデンサ
331〜348…バスバー
351〜356…ブラケット
4…トランス
5…整流器
6…二次電池
7…平滑回路
8…フィルタ回路
81…フィルタリアクトル
82L,82R,821〜826,831〜836…フィルタコンデンサ
9…マトリックスコンバータ制御回路
10…ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相交流電力を交流電力に直接変換する電力変換装置であって、
前記多相交流電力の各相に接続されて双方向への通電を切り換え可能にする複数の第1スイッチング手段と、前記多相交流電力の各相に接続されて双方向への通電を切り換え可能にする複数の第2スイッチング手段と、を有する変換回路と、
前記変換回路に接続された出力線と、を備え、
前記複数の第1スイッチング手段と前記複数の第2スイッチング手段は、それぞれの出力端子がそれぞれ一列に並んで配置され、
前記出力線は、前記出力端子に接続されて一方向に引き出されている電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の第1スイッチング手段と前記複数の第2スイッチング手段のそれぞれの入力端子にそれぞれ接続された入力線をさらに備え、
前記出力線は、前記入力端子より内側に設けられた出力端子に接続されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記変換回路に接続された複数のコンデンサをさらに備え、
前記複数のコンデンサは、前記第1スイッチング手段及び前記第2スイッチング手段に対して外側に配置されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング手段に接続されたコンデンサと、前記第2スイッチング手段に接続されたコンデンサとが、接続されている請求項3に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253859(P2012−253859A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122852(P2011−122852)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】