説明

電力変換装置

【課題】インバータの回路構成を簡略化し、半導体スイッチング素子の電流遮断動作時の電圧跳ね上がりに悪影響を与える配線インダクタンスを小さくできる5レベル以上の多レベル電力変換装置を提供する。
【解決手段】8個のスイッチングデバイスを直列接続した第1のスイッチングアーム13と並列に4個のコンデンサを直列接続したコンデンサアーム13を有し、第1のスイッチングアーム13の上から2段目と3段目との接続点と第1のスイッチングアーム13の上から6段目と7段目との接続点とを2個のスイッチングデバイスを直列接続した第2のスイッチングアーム14を有し、コンデンサアーム12の上下両端に直流電源を接続し、第2のスイッチングアーム14の中間点を交流出力点として動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流を3相交流に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流を交流に変換して3相誘導電動機を可変速制御するモータドライブや、3相交流から直流に変換して直流から交流に変換するインバータの直流電源となるコンバータ電力変換装置には、3相2レベルインバータが適用されてきた。3相2レベルインバータは、直流から3相交流を出力する電力変換装置を構成する上で必要最小限の半導体スイッチング素子6個で構成されるため、小型低コスト化を図ることができる。
【0003】
一方、その出力電圧波形は、入力直流電圧をVdcとしたとき、各相ごとに、+Vdc/2と、−Vdc/2の2値の切替をPWM(パルス幅変調)で行い、擬似的に交流波形が生成された波形となっており、高耐圧のスイッチング周波数を使用していてPWMスイッチング周波数を高く出来ない鉄道用モータドライブや、配電系統に接続される高圧モータドライブ、配電系統安定化用の無効電力補償装置などにおいては、スイッチング高調波に起因した電磁騒音が問題になる場合があった。配電系統接続機器においては、配電系統へ流出する高調波が規制値以下となるように、3相交流端にリアクトルとコンデンサからなるフィルタを挿入するが、このリアクトルとコンデンサの容量が大きくなっており、コスト向上と、重量増加を招いていた。
【0004】
これに対して、電力変換器トポロジーを工夫して、出力電圧波形がより正弦波に近づくように、3レベルインバータ、5レベルインバータなどが検討され始めている。ダイオードクランプ式5レベルインバータは2レベルインバータや3レベルインバータに比較して、出力波形がより正弦波に近づくため、電磁騒音低減に効果的であり、配電系統接続の機器に適用した場合には3相交流出力リアクトル容量の低減によるコスト低減、重量低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−219265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダイオードクランプ式5レベルインバータは、5レベルの出力電圧を作成するために、回路構成が複雑となり、部品実装上、回路の配線インダクタンスを小さくすることが出来なくなるため、半導体スイッチング素子による電流遮断時の電圧跳ね上がりが大きくなってしまい、半導体スイッチング素子の電圧定格を超過して素子破壊を起こす懸念があった。または、電圧跳ね上がりエネルギーを吸収するために、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの部品からなるスナバ付帯回路を新たに追加しなければならなくなり、インバータの高コスト化、大型化を招く懸念があった。
【0007】
本発明の実施形態は、インバータの回路構成を簡略化し、半導体スイッチング素子の電流遮断動作時の電圧跳ね上がりに悪影響を与える配線インダクタンスを小さくできる5レベル以上の多レベル電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、直流を3相交流に変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子と前記スイッチング素子に逆並列に接続されるダイオードとにより構成される8個のスイッチングデバイスを直列接続した第1のスイッチングアームを有する。前記第1のスイッチングアームと並列に4個のコンデンサを直列接続したコンデンサアームを有し、前記第1のスイッチングアームの上から4段目と5段目との接続点と前記コンデンサアームの上から2段目と3段目との接続点とを接続配線で短絡接続する。前記第1のスイッチングアームの上から1段目と2段目との接続点と前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点とをコンデンサアーム側から第1のスイッチングアーム側に電流が流れる方向に第1のダイオードを接続し、前記第1のスイッチングアームの上から3段目と4段目との接続点と前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点を第1のスイッチングアーム側からコンデンサアーム側に電流が流れる方向に第2のダイオードを接続し、前記第1のスイッチングアームの上から5段目と6段目との接続点と前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点をコンデンサアーム側から第1のスイッチングアーム側に電流が流れる方向に第3のダイオードを接続し、前記第1のスイッチングアームの上から7段目と8段目との接続点と前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点を第1のスイッチングアーム側からコンデンサアーム側に電流が流れる方向に第4のダイオードを接続する。さらに、前記第1のスイッチングアームの上から2段目と3段目との接続点と前記第1のスイッチングアームの上から6段目と7段目との接続点とを2個のスイッチングデバイスを直列接続した第2のスイッチングアームを有し、前記コンデンサアームの上下両端に直流電源を接続し、前記第2のスイッチングアームの中間点を交流出力点として動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の一例の構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の出力電圧のレベルを組み合わせて正弦波に近似した出力電圧とした場合の一例を示す波形図。
【図3】本発明の実施形態における電力変換装置で出力電圧を+Vdc/4から+Vdc/2に切り替える場合のスイッチングデバイスSu1、Su2、Su3のスイッチング状態を電流経路の説明図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の他の一例の構成図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の一例を示す構成図。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の一例を示す構成図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の他の一例を示す構成図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る電力変換装置の一例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の一例の構成図である。第1実施形態に係る電力変換装置は、直流を3相交流に変換するインバータであり、各相5レベルの電圧を出力する電力変換装置である。コンバータ11で得られた直流は、4個のコンデンサC1〜C4で構成されるコンデンサアーム12を介してU相、V相、W相の各相のスイッチングアーム13U、13V、13Wに入力され3相交流に変換される。スイッチングアーム13U、13V、13Wは同一構成であるので、スイッチングアーム13Uについて説明する。
【0011】
U相の第1のスイッチングアーム13Uは、8個のスイッチングデバイスSu1〜Su8が直列接続されて構成される。スイッチングデバイスSu1の下端とコンデンサC1の下端との間には、第1のダイオードDdu1がコンデンサC1からスイッチングデバイスSu1への導通が可能なように接続されている。同様に、スイッチングデバイスSu3の下端とコンデンサC1の下端との間には、第2のダイオードDdu2がスイッチングデバイスSu3からコンデンサC1への導通が可能なように接続されている。
【0012】
また、スイッチングデバイスSu5の下端とコンデンサC3の下端との間には、第3のダイオードDdu3がコンデンサC3からスイッチングデバイスSu5への導通が可能なように接続され、スイッチングデバイスSu7の下端とコンデンサC3の下端との間には、第4のダイオードDdu4がスイッチングデバイスSu7からコンデンサC3への導通が可能なように接続されている。
【0013】
そして、スイッチングデバイスSu2の下端とスイッチングデバイスSu6の下端とを2個のスイッチングデバイスSu9、Su10で接続して、第2のスイッチングアーム14Uが形成されている。すなわち、第2のスイッチングアーム14Uは、第1のスイッチングアーム13Uの上から2段目と3段目との接続点と、第1のスイッチングアームの上から6段目と7段目との接続点とを2個のスイッチングデバイスSu9、Su10で直列接続して形成されている。この第2のスイッチングアーム14UのスイッチングデバイスSu9、Su10の接続点からU相交流出力点を引き出す。V相、W相も同様の構成である。
【0014】
次に、出力電圧と各スイッチングデバイスのオン、オフ状態との相関を説明する。表1は、図1に示した電力変換装置の各スイッチングデバイスのオン、オフ状態と出力電圧との相関を示す表である。
【表1】

【0015】
いま、コンデンサアーム12の中間点、すなわちコンデンサC2とコンデンサC3との接続点を接地点(=電位ゼロ)のポイントとし、コンデンサアーム12の両端の電圧をVdcとすると、出力電圧は、+Vdc/2、+Vdc/4、0、−Vdc/4、−Vdc/2の5レベルの出力が可能になる。
【0016】
出力電圧+Vdc/2を出したいときは、表1に示すように、スイッチングデバイスSu1をオン、スイッチングデバイスSu2をオン、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオフ、スイッチングデバイスSu5をオフ、スイッチングデバイスSu6をオフ、スイッチングデバイスSu7をオフ、スイッチングデバイスSu8をオフ、スイッチングデバイスSu9をオン、スイッチングデバイスSu10をオフとしたスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスSu1〜Su10を制御する。
【0017】
出力電圧+Vdc/4を出したいときは、スイッチングデバイスSu1をオフ、スイッチングデバイスSu2をオン、スイッチングデバイスSu3をオン、スイッチングデバイスSu4をオフ、スイッチングデバイスSu5をオフ、スイッチングデバイスSu6をオフ、スイッチングデバイスSu7をオフ、スイッチングデバイスSu8をオフ、スイッチングデバイスSu9をオン、スイッチングデバイスSu10をオフのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0018】
次に、出力電圧0を出したいときは、以下の2つのスイッチング状態のいずれかを選択できる。それぞれ次のスイッチング状態への遷移を考慮に入れて最もスイッチング回数が小さくなるスイッチング状態を選択する。
【0019】
一つ目のスイッチング状態は、スイッチングデバイスSu1をオフ、スイッチングデバイスSu2をオフ、スイッチングデバイスSu3をオン、スイッチングデバイスSu4をオン、スイッチングデバイスSu5をオフ、スイッチングデバイスSu6をオフ、スイッチングデバイスSu7をオフ、スイッチングデバイスSu8をオフ、スイッチングデバイスSu9をオン、スイッチングデバイスSu10をオフのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0020】
二つ目のスイッチング状態は、スイッチングデバイスSu1をオフ、スイッチングデバイスSu2をオフ、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオフ、スイッチングデバイスSu5をオン、スイッチングデバイスSu6をオン、スイッチングデバイスSu7をオフ、スイッチングデバイスSu8をオフ、スイッチングデバイスSu9をオフ、スイッチングデバイスSu10をオンのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0021】
また、出力電圧−Vdc/4を出したいときは、スイッチングデバイスSu1をオフ、スイッチングデバイスSu2をオフ、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオフ、スイッチングデバイスSu5をオフ、スイッチングデバイスSu6をオン、スイッチングデバイスSu7をオン、スイッチングデバイスSu8をオフ、スイッチングデバイスSu9をオフ、スイッチングデバイスSu10をオンのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0022】
出力電圧−Vdc/2を出したいときは、スイッチングデバイスSu1をオフ、スイッチングデバイスSu2をオフ、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオフ、スイッチングデバイスSu5をオフ、スイッチングデバイスSu6をオフ、スイッチングデバイスSu7をオン、スイッチングデバイスSu8をオン、スイッチングデバイスSu9をオフ、スイッチングデバイスSu10をオンのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。V相、W相についても同様である。
【0023】
図2は、これらの出力電圧、+Vdc/2、+Vdc/4、0、−Vdc/4、−Vdc/2の5レベルを組み合わせて、正弦波に近似した出力電圧とした場合の一例を示す波形図である。
【0024】
次に、電流が負荷から電力変換装置(インバータ)へ流れ込む状態において、出力電圧を+Vdc/4から+Vdc/2に切り替える場合について説明する。
【0025】
図3は、本発明の実施形態における電力変換装置で出力電圧を+Vdc/4から+Vdc/2に切り替える場合のスイッチングデバイスSu1、Su2、Su3のスイッチング状態を電流経路の説明図である。図3(a)に示すように、出力電圧+Vdc/4を出力している状態においては、電流は、Su9、Su3、Ddu2、C1の順に負荷から電源(コンバータ)へ流れる経路E1となる。この状態で、出力電圧+Vdc/2に切り替えるときは、Su9、Su2、Su1の順に負荷から電源へ流れる経路E2となる。この場合、電圧レベル切替のためにSu3が電流を遮断することになるが、このときの電圧跳ね上がりは、電流切替経路E3の配線インダクタンスに依存する。そのため、電圧跳ね上がりを小さくするためには経路E3のインダクタンスが小さくなるように、経路E3を形成する素子を近接配置することが必要になる。
【0026】
一方、図3(b)は従来の電力変換装置で出力電圧を+Vdc/4から+Vdc/2に切り替える場合の電流経路の説明図である。従来のクランプダイオード型5レベルインバータにおいても同様に出力電圧を+Vdc/4から+Vdc/2に切り替えたとき、電流経路E1から電流経路E2に切り替わる。この電圧レベル切替に際して、上から5個目のスイッチングデバイスSu5が電流を遮断する。このときの電圧跳ね上がりは、電流切替経路E3には、配線インダクタンスに依存するため、同様にこの経路E3のインダクタンスが小さくなるように、経路E3を形成する素子を近接配置することが必要になる。
【0027】
しかしながら、この経路の中には、スイッチングデバイスが5個、クランプダイオードが3個が含まれ、それらを近接配置したとしても配線インダクタンスを小さくすることには限界がある。これに対して本発明の実施形態の回路構成における経路E3に含まれる部品点数は少ないため、より小さな配線インダクタンスにすることができる。
【0028】
以上の説明では、スイッチングデバイスSu9、Su10は、それぞれ単一のスイッチングデバイスで記述したが、耐電圧は、スイッチングデバイスSu1〜Su8に比べて2倍の電圧が印加されるため、2倍以上の高耐圧素子を準備する必要がある。
【0029】
そこで、図4に示すように、スイッチングデバイスSu9、Su10は、スイッチングデバイスSu1〜Su8と同一の耐圧素子を2直列のスイッチングデバイスSu9a、Su9b、Su10a、Su10bで構成する。これにより、電力変換装置に使うスイッチングデバイスが統一され、構成をより容易にすることが可能になる。
【0030】
第1の実施の形態によれば、第1のスイッチングアーム13の上から2段目と3段目との接続点と、第1のスイッチングアーム13の上から6段目と7段目との接続点とを2個のスイッチングデバイスSU9、Su10を直列接続した第2のスイッチングアーム14を形成するので、電圧レベル切替の際に形成する電流切替経路のインダクタンスをより小さいものにすることができる。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の一例を示す構成図である。この第2実施形態は、図4に示した第1実施形態に対し、4個のスイッチングデバイスSc1〜Sc4を直列接続した第3のスイッチングアーム15をコンデンサアーム12に並列に接続するとともに、コンデンサアーム12の上から1段目と2段目との接続点と第3のスイッチングアーム15の上から1段目と2段目との接続点とを接続する第1のリアクトルL1と、コンデンサアーム12の上から3段目と4段目との接続点と第3のスイッチングアーム15の上から3段目と4段目との接続点を接続する第2のリアクトルL2とを設け、第1のスイッチングアーム13Uの最上端とコンデンサアーム12の最上端とを接続し、第1のスイッチングアーム13Uの最下端とコンデンサアーム12の最下端とを接続したものである。図4と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0032】
第3のスイッチングアーム15、第1のリアクトルL1、第2のリアクトルL2は、チョッパ回路として動作する。スイッチングデバイスSc1、Sc2と、リアクトルL1は、コンデンサC1、C2の電圧アンバランスを抑制するようにスイッチング動作させる。同様に、スイッチングデバイスSc3、Sc4と、リアクトルL2は、コンデンサC3、C4の電圧アンバランスを抑制するためにスイッチング動作させる。
【0033】
コンデンサC1の電圧がコンデンサC2の電圧よりも大きいときは、スイッチングデバイスSc1をオンさせることにより、コンデンサC1のエネルギーはリアクトルL1に蓄積される。ここでスイッチングデバイスSc1をオフすると、リアクトルL1を流れる電流は、コンデンサC2、スイッチングデバイスSc2の逆導通ダイオードを通じて流れ続ける結果、コンデンサC2が充電される。
【0034】
逆にコンデンサC2の電圧がコンデンサ電圧のC1よりも大きいときは、スイッチングデバイスSc2をオンさせることにより、コンデンサC2のエネルギーはリアクトルL1に蓄積される。ここでスイッチングデバイスSc2をオフすると、リアクトルL1を流れる電流は、スイッチングデバイスSc2の逆導通ダイオード、コンデンサC1を通じて流れ続ける結果、コンデンサC1が充電される。
【0035】
第1実施形態では、コンデンサ容量が十分に大きくないとコンデンサ電圧にアンバランスが生じて運転継続ができなくなることがあるが、第2実施形態では、制御的にコンデンサ電圧のアンバランスを抑制することが可能になり、多レベル電力変換装置のコンデンサの容量を低減することができ装置の小型化が可能になる。
【0036】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図6は本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の一例を示す構成図である。この第3実施形態は、第2のスイッチングアーム14をコンバータに適用したものであり、各相5レベルの電圧を出力する電力変換装置である。
【0037】
コンバータを構成するU相、V相、W相の各相のスイッチングアーム13U、13V、13Wで得られた直流は、4個のコンデンサC1〜C4で構成されるコンデンサアーム12を介してインバータ16に入力される。コンバータのU相、V相、W相の各相のスイッチングアーム13U、13V、13Wは同一構成であるので、以下、U相の第1のスイッチングアーム13Uについて説明する。
【0038】
U相の第1のスイッチングアーム13Uは、4個のスイッチングデバイスSu1〜Su4及び4個のダイオードDdu5〜Ddu8が直列接続されて構成されている。
【0039】
ダイオードDdu5の下端とコンデンサC1の下端との間には、第1のダイオードDdu1がコンデンサC1からダイオードDdu5への導通が可能なように接続されている。スイッチングデバイスSu1の下端とコンデンサC1の下端との間には、第2のダイオードDdu2がスイッチングデバイスSu1からコンデンサC1への導通が可能なように接続されている。スイッチングデバイスSu3の下端とコンデンサC3の下端との間には、第3のダイオードDdu3がコンデンサC3からスイッチングデバイスSu3への導通が可能なように接続されている。ダイオードDdu7の下端とコンデンサC3の下端との間には、第4のダイオードDdu4がスイッチングデバイスSu7からコンデンサC3への導通が可能なように接続されている。
【0040】
そして、ダイオードDdu6の下端とスイッチングデバイスSu4の下端とを2個のダイオードDdu9、Ddu10とで接続して、第2のスイッチングアーム14Uが形成されている。すなわち、第2のスイッチングアーム14Uは、第1のスイッチングアーム13Uの上から2段目と3段目との接続点と、第1のスイッチングアーム13Uの上から6段目と7段目との接続点とを2個のダイオードDdu9、Ddu10で直列接続して形成されている。この第2のスイッチングアーム14UのダイオードDdu9、Ddu10の接続点からU相交流出力点を引き出す。V相、W相も同様の構成である。
【0041】
次に、出力電圧と各スイッチングデバイスのオン、オフ状態との相関を説明する。表2は、図6に示した電力変換装置の各スイッチングデバイスのオン、オフ状態と出力電圧との相関を示す表である。
【表2】

【0042】
いま、コンデンサアーム12の中間点、すなわちコンデンサC2とコンデンサC3との接続点を接地点(=電位ゼロ)のポイントとし、コンデンサアーム12の両端の電圧をVdcとすると、出力電圧は、+Vdc/2、+Vdc/4、0、−Vdc/4、−Vdc/2の5レベルの出力が可能になる。
【0043】
出力電圧+Vdc/2を出したいときは、表2に示すように、全スイッチングデバイスSu1〜Su4をオフにする。交流電圧が正で交流電流が正の状態なので、ダイオード通電により+Vdc/2が出力される。
【0044】
出力電圧+Vdc/4を出したいときは、スイッチングデバイスSu1をオン、スイッチングデバイスSu2をオフ、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオフのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0045】
出力電圧0を出したいときは、2つのスイッチング状態を選択できる。それぞれ次のスイッチング状態への遷移を考慮に入れて最もスイッチング回数が小さくなるスイッチング状態を選択する。
【0046】
一つ目のスイッチング状態は、スイッチングデバイスSu1をオン、スイッチングデバイスSu2をオン、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオフのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0047】
二つ目のスイッチング状態(V4)は、Su1オフ、Su2オフ、Su3オン、Su4オンのスイッチング状態組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0048】
出力電圧−Vdc/4を出したいときは、スイッチングデバイスSu1をオフ、スイッチングデバイスSu2をオフ、スイッチングデバイスSu3をオフ、スイッチングデバイスSu4をオンのスイッチング状態の組合せでスイッチングデバイスを制御する。
【0049】
出力電圧−Vdc/2を出したいときは、全スイッチングデバイスSu1〜Su4をオフにする。交流電圧が負で交流電流が負の状態なので、ダイオード通電により−Vdc/2が出力される。V相、W相についても同様である。
【0050】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、より小さな配線インダクタンスにすることが実装上可能になり、さらに第1実施形態よりもスイッチングデバイスの使用個数を減少させることが可能になるため、低コストで低高調波の整流回路を得ることが可能になる。
【0051】
第2のスイッチングアーム14を形成するダイオードDdu9及びダイオードDdu10は、それぞれ単一のスイッチングデバイスで記述したが、耐電圧は、ダイオードDdu1〜Ddu8に比べて2倍の電圧が印加されるため2倍以上の高耐圧素子を準備する必要がある。
【0052】
そこで、図7に示すように、ダイオードDdu9、Ddu10は、ダイオードDdu1〜Ddu8と同一の耐圧素子を2直列のスイッチングデバイスDdu9a、Ddu9b、Ddu10a、Ddu10bで構成する。これにより、電力変換装置に使うスイッチングデバイスが統一され、構成をより容易にすることが可能になる。
【0053】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。図8は本発明の第4実施形態に係る電力変換装置の一例を示す構成図である。この第4実施形態は、図7に示した第3実施形態に対し、1段目にスイッチングデバイスSc1を有し2段目及び3段目にダイオードDc1、Dc2を有し4段目にスイッチングデバイスSc2を有した第3のスイッチングアーム15をコンデンサアーム12に並列に接続するとともに、コンデンサアーム12の上から1段目と2段目との接続点と第3のスイッチングアーム15の上から1段目と2段目との接続点を接続する第1のリアクトルL1と、コンデンサアーム12の上から3段目と4段目との接続点と第3のスイッチングアーム12の上から3段目と4段目との接続点とを接続する第2のリアクトルL2とを設け、第1のスイッチングアーム13Uの最上端とコンデンサアーム12の最上端とを接続し、第1のスイッチングアームの最下端とコンデンサアーム12の最下端とを接続したものである。図7と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0054】
第3のスイッチングアーム15、第1のリアクトルL1、第2のリアクトルL2は、チョッパ回路として動作する。スイッチングデバイスSc1、ダイオードDc1、第1のリアクトルL1は、コンデンサC1、C2の電圧アンバランスを抑制するようにスイッチング動作させる。同様に、スイッチングデバイスSc2、ダイオードDc2、第2のリアクトルL2は、コンデンサC3、C4の電圧アンバランスを抑制するためにスイッチング動作させる。
【0055】
コンデンサC1の電圧がコンデンサC2の電圧よりも大きいときは、スイッチングデバイスSc1をオンさせることにより、コンデンサC1のエネルギーは第1のリアクトルL1に蓄積される。ここでスイッチングデバイスSc1をオフすると、第1のリアクトルL1を流れる電流は、コンデンサC2、ダイオードDc1を通じて流れ続ける結果、コンデンサC2が充電される。
【0056】
第3実施形態の電力変換装置(コンバータ)は、交流から直流への整流動作限定で、直流から交流への変換は原理的にできない。これに起因してコンデンサC1とコンデンサC2のバランスは、必ずコンデンサC1よりもコンデンサC2が小さくなる。よって、第4の実施形態の構成によりコンデンサC2への充電ができ、コンデンサのバランス制御が達成できる。
【0057】
第3実施形態でコンデンサ容量が十分に大きくないとコンデンサ電圧アンバランスが生じて、運転継続ができなくなることあるが、第4実施形態により、制御的にコンデンサ電圧アンバランスを抑制することが可能になり、多レベル電力変換装置のコンデンサの容量を低減することができ装置の小型化が可能になる。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
11…コンバータ、12…コンデンサアーム、13…第1のスイッチングアーム、14…第2のスイッチングアーム、15…第3のスイッチングアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を3相交流に変換する電力変換装置であって、
自己消弧能力を持つスイッチング素子と前記スイッチング素子に逆並列に接続されるダイオードとにより構成される8個のスイッチングデバイスを直列接続した第1のスイッチングアームと、
前記第1のスイッチングアームと並列に4個のコンデンサを直列接続したコンデンサアームと、
前記第1のスイッチングアームの上から4段目と5段目との接続点と前記コンデンサアームの上から2段目と3段目との接続点とを短絡接続する接続配線と、
前記第1のスイッチングアームの上から1段目と2段目との接続点と前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点とをコンデンサアーム側から第1のスイッチングアーム側に電流が流れる方向に接続した第1のダイオードと、
前記第1のスイッチングアームの上から3段目と4段目との接続点と前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点を第1のスイッチングアーム側からコンデンサアーム側に電流が流れる方向に接続した第2のダイオードと、
前記第1のスイッチングアームの上から5段目と6段目との接続点と前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点をコンデンサアーム側から第1のスイッチングアーム側に電流が流れる方向に接続した第3のダイオードと、
前記第1のスイッチングアームの上から7段目と8段目との接続点と前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点を第1のスイッチングアーム側からコンデンサアーム側に電流が流れる方向に接続した第4のダイオードと、
前記第1のスイッチングアームの上から2段目と3段目との接続点と前記第1のスイッチングアームの上から6段目と7段目との接続点とを2個のスイッチングデバイスを直列接続した第2のスイッチングアームとで構成され、
前記コンデンサアームの上下両端に直流電源を接続し、前記第2のスイッチングアームの中間点を交流出力点として動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第2のスイッチングアームは、2個のスイッチングデバイスの直列接続に代えて、
4個のスイッチングデバイスを直列接続したことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記コンデンサアームに並列に接続され4個のスイッチングデバイスを直列接続した第3のスイッチングアームと、
前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点と前記第3のスイッチングアームの上から1段目と2段目との接続点とを接続する第1のリアクトルと、
前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点と前記第3のスイッチングアームの上から3段目と4段目との接続点を接続する第2のリアクトルとを備え、
前記第1のスイッチングアームの最上端と前記コンデンサアームの最上端とを接続し、前記第1のスイッチングアームの最下端と前記コンデンサアームの最下端とを接続したことを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【請求項4】
3相交流を直流に変換する整流用電力変換装置であって、
4個直列に接続したコンデンサアームと、
自己消弧能力を持つスイッチング素子と前記スイッチング素子に逆並列に接続されるダイオードとにより構成される4個のスイッチングデバイスを直列接続し、前記スイッチングデバイスの直列接続の最上端から前記コンデンサアームの最上端とをスイッチングデバイス側からコンデンサアーム側に電流が流れるように第1の2直列ダイオードで接続し、前記スイッチングデバイスの直列接続の最下端から前記コンデンサアームの最下端とをコンデンサアーム側からスイッチングデバイス側に電流が流れるように第2の2直列ダイオードで接続して構成される第1のスイッチングアームと、
前記スイッチングアームの上から4段目と5段目との接続点と前記コンデンサアームの上から2段目と3段目との接続点とを短絡接続する接続配線と、
前記スイッチングアームの上から1段目と2段目との接続点と前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点をコンデンサアーム側から第1のスイッチングアーム側に電流が流れる方向に接続した第1のダイオードと、
前記スイッチングアームの上から3段目と4段目との接続点と前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点を第1のスイッチングアーム側からコンデンサアーム側に電流が流れる方向に接続した第2のダイオードと、
前記スイッチングアームの上から5段目と6段目との接続点と前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点をコンデンサアーム側から第1のスイッチングアーム側に電流が流れる方向に接続した第3のダイオードと、
前記スイッチングアームの上から7段目と8段目との接続点と前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点を第1のスイッチングアーム側からコンデンサアーム側に電流が流れる方向に接続した第4のダイオードと、
前記第1のスイッチングアームの上から2段目と3段目との接続点と前記第1のスイッチングアームの上から6段目と7段目との接続点とを2個直列接続したダイオードで接続する第2のスイッチングアームとで構成され、
前記コンデンサアームの上下両端に直流負荷を接続し、前記第2のスイッチングアームの中間点を交流電源を接続して動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
前記第2のスイッチングアームは、2個のダイオードの直列接続に代えて、4個のダイオードを直列接続したことを特徴とする請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記コンデンサアームに並列に接続され1段目にスイッチングデバイスを有し2段目及び3段目にダイオードを有し4段目にスイッチングデバイスを有しこれらを直列接続した第3のスイッチングアームと、
前記コンデンサアームの上から1段目と2段目との接続点と第3のスイッチングアームの上から1段目と2段目との接続点を接続する第1のリアクトルと、
前記コンデンサアームの上から3段目と4段目との接続点と前記第3のスイッチングアームの上から3段目と4段目との接続点とを接続する第2のリアクトルとを備え、
前記第1のスイッチングアームの最上端とコンデンサアームの最上端とを接続し、前記第1のスイッチングアームの最下端とコンデンサアームの最下端とを接続したことを特徴とする請求項4または5記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−253927(P2012−253927A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125178(P2011−125178)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】