説明

電力変換装置

【課題】広い周波数領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】スイッチング周波数拡散パターンは、時間に対して2つの周波数f1、f2を規定したメイン拡散パターンと、互いに隣接する周波数の間隔がメイン拡散パターンより小さい、時間に対して3つの周波数f3、f4、f5を規定したサブ拡散パターンとを合成して構成されている。メイン拡散パターンによって、従来の同じようにスイッチング周波数を拡散できる。そのため、低周波領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。さらに、サブ拡散パターンによって、スイッチング周波数の高調波に当たる周波数におけるスイッチングノイズのピークを十分に拡散できる。そのため、高調波領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。従って、広い周波数領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング周波数を拡散させ、スイッチング素子のスイッチングを制御する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング周波数を拡散させ、スイッチング素子のスイッチングを制御する電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されている電力変換装置がある。
【0003】
この電力変換装置は、信号発生器と、信号選択手段と、分圧器と、比較器と、スイッチング素子とを備えている。
【0004】
信号発生器は、周波数が離散的に相異なる複数の信号を発生する。信号選択手段は、信号発生器の発生する複数の信号の中から予め設定された順序で指定された周波数の信号を順次選択して出力する。例えば、周波数の低い信号から順次周波数の高い信号を選択し、以降、これを繰返す。又は、周波数の低い信号から順次周波数の高い信号を選択し、その後、周波数の高い信号から順次周波数の低い信号を選択し、以降、これを繰返す。分圧器は、電力変換装置の出力電圧を分圧して出力する。比較器は、分圧器によって分圧された出力電圧と信号選択手段の出力信号を比較し、比較結果に応じたスイッチング信号を出力する。スイッチング素子は、比較回路の出力するスイッチング信号に従ってスイッチングする。
【0005】
つまり、この電力変換装置は、スイッチング周波数を拡散させ、スイッチング素子のスイッチングを制御する。スイッチングノイズは、周波数領域において、スイッチング周波数と、その高調波に当たる周波数にピークを有する。スイッチング周波数を拡散させることで、スイッチングノイズのピークを拡散させることができる。その結果、スイッチングノイズのエネルギーが分散され、ピーク値を抑えられる。従って、スイッチングノイズのレベルを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3718830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した電力変換装置では、低い次数の高調波に当たる周波数のスイッチングノイズのレベルを抑えるようにスイッチング周波数を拡散させても、高い次数の高調波に当たる周波数においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができない。逆に、高い次数の高調波に当たる周波数のスイッチングノイズのレベルを抑えるようにスイッチング周波数を拡散させても、低い次数の高調波にあたる周波数においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができない。つまり、低周波領域におけるスイッチングノイズのレベル低減と、高周波領域におけるスイッチングノイズのレベル低減を両立させることができないという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、広い周波数領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、スイッチング周波数拡散パターンに従ってスイッチング周波数を拡散させ、スイッチング素子のスイッチングを制御する電力変換装置において、スイッチング周波数拡散パターンを、時間に対して複数の周波数を規定したメイン拡散パターンと、互いに隣接する周波数間隔がメイン拡散パターンより小さい、時間に対して複数の周波数を規定した少なくとも1つのサブ拡散パターンとを合成して構成することで、広い周波数領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、スイッチング素子を有し、スイッチング素子をスイッチングすることで入力される電力を変換して出力する電力変換回路と、時間に対して複数の周波数を規定したスイッチング周波数拡散パターンに従ってスイッチング周波数を拡散させ、スイッチング素子のスイッチングを制御する制御回路と、を備えた電力変換装置において、スイッチング周波数拡散パターンは、時間に対して複数の周波数を規定したメイン拡散パターンと、互いに隣接する周波数の間隔がメイン拡散パターンより小さい、時間に対して複数の周波数を規定した少なくとも1つのサブ拡散パターンと、を合成してなることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、メイン拡散パターンによって、従来と同じように、低周波領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。さらに、サブ拡散パターンによって、高周波領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。従って、広い周波数領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載の電力変換装置は、メイン拡散パターンは、複数の周波数を規定した基本パターンを繰返し時間毎に繰返してなり、サブ拡散パターンは、繰返し時間毎に周波数が切替わることを特徴とする。この構成によれば、スイッチング周波数の高調波に当たる周波数におけるスイッチングノイズのピークをより確実に拡散させることができる。
【0013】
請求項3に記載の電力変換装置は、メイン拡散パターンの周波数及びサブ拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の高調波のうち隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されていることを特徴とする。この構成によれば、スペクトラムアナライザでスイッチングノイズを解析する際、メイン拡散パターン及びサブ拡散パターンよる効果を正確に解析することができる。
【0014】
請求項4に記載の電力変換装置は、電力変換回路は、入力される交流電力を変換して出力、又は、入力される電力を交流電力に変換して出力することを特徴とする。この構成によれば、入力される交流電力を変換して出力する場合には、入力される交流電流に含まれる高調波成分のレベルを、また、入力される電力を交流電力に変換して出力する場合には、出力する交流電流に含まれる高調波成分のレベルを抑えることができる。
【0015】
請求項5に記載の電力変換装置は、メイン拡散パターンのパターン繰返し周期の逆数である繰返し周波数は、入力される電流又は出力する電流の周波数の高調波のうち、対象とする高調波より高い周波数であることを特徴とする。この構成によれば、入力される交流電流又は出力する交流電流に含まれる、対象となる高周波成分を確実に抑えることができる。
【0016】
請求項6に記載の電力変換装置は、外部電源から車両に搭載された電源に電力を供給することを特徴とする。この構成によれば、外部電源から車両に搭載された電源に電力を供給する電力変換装置で、広い周波数帯域においてスイッチングノイズを抑えることができる。そのため、車両に搭載された電源に電力を供給する際に周辺の機器に与えるスイッチングノイズの影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における電源装置の回路図である。
【図2】メイン拡散パターン、サブ拡散パターン及びスイッチング周波数拡散パターンを示すパターン図である。
【図3】スイッチング周波数拡散させない場合、従来のようにスイッチング周波数を拡散させた場合、及び、本実施形態のようにスイッチング周波数を拡散させた場合における、スペクトラムアナライザによるスイッチングノイズの解析結果である。
【図4】従来におけるスイッチング周波数拡散パターンと、それに基づいてスイッチング周波数を拡散させた場合における入力される交流電流に含まれる高調波成分の解析結果である。
【図5】図2(c)のスイッチング周波数拡散パターンに基づいてスイッチング周波数を拡散させた場合における入力される交流電流に含まれる高調波成分の解析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、外部交流電源の出力する交流電力を直流電力に変換して、車両に搭載された高電圧バッテリを充電する電源装置に適用した例を示す。
【0019】
まず、図1を参照して本実施形態の電源装置の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態における電源装置の回路図である。
【0020】
図1に示す電源装置1(電力変換装置)は、外部交流電源AC1(外部電源)の出力する交流電圧を直流高電圧に変換して車両に搭載された高電圧バッテリB1(電源)に供給し、高電圧バッテリB1を充電する装置である。つまり、外部交流電源AC1の出力する交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリB1に供給する装置である。電源装置1は、フィルタ回路10と、整流回路11(電力変換回路)と、昇圧回路12(電力変換回路)と、制御回路13とを備えている。
【0021】
フィルタ回路10は、外部交流電源AC1の出力する交流電圧に含まれる高周波成分のノイズを除去するための回路である。フィルタ回路10の入力端子は外部交流電源AC1に、出力端子は整流回路11にそれぞれ接続されている。
【0022】
整流回路11は、フィルタ回路10の出力する高周波成分のノイズが除去された交流電圧を整流し、直流電圧に変換するための回路である。つまり、入力される交流電力を直流電力に変換するための回路である。整流回路11は、ダイオード110〜113を備えている。ダイオード110、111及びダイオード112、113はそれぞれ直列接続されている。具体的には、ダイオード110、112のアノードがダイオード111、113のカソードにそれぞれ接続されている。直列接続されたダイオード110、111及びダイオード112、113は並列接続されている。ダイオード110、112のカソード及びダイオード111、113のアノードは昇圧回路12にそれぞれ接続されている。また、直列接続されたダイオード110、111及びダイオード112、113の直列接続点はフィルタ回路10の出力端子にそれぞれ接続されている。
【0023】
昇圧回路12は、整流回路11の出力する直流電圧を昇圧するための回路である。つまり、入力される直流電力を高電圧の直流電力に変換する回路である。昇圧回路12は、コイル120と、IGBT121(スイッチング素子)と、ダイオード122と、平滑コンデンサ123とを備えている。
【0024】
コイル120は、電流が流れることによってエネルギーを蓄積する素子である。コイル120の一端はダイオード110、112のカソードに、他端はIGBT121及びダイオード122にそれぞれ接続されている。
【0025】
IGBT121は、スイッチングすることで、コイル120にエネルギーを蓄積、又は、コイル120からエネルギーを放出させるための素子である。IGBT121のコレクタはコイル100の他端に、エミッタはダイオード111、113のアノードにそれぞれ接続されている。また、IGBT121のゲートは制御回路13に接続されている。
【0026】
ダイオード122は、コイル120から放出されるエネルギーを平滑コンデンサ123に供給するとともに、逆流を防止するための素子である。ダイオード122のアノードはコイル120とIGBT121の接続点に、カソードは平滑コンデンサ123にそれぞれ接続されている。
【0027】
平滑コンデンサ123は、ダイオード122のカソードに現れる昇圧された直流高電圧を平滑するための素子である。平滑コンデンサ123の一端はダイオード122のカソードに、他端はIGBT121のエミッタにそれぞれ接続されている。また、平滑コンデンサ123の一端は高電圧バッテリB1の正極端子に、他端は高電圧バッテリB1の負極端子にそれぞれ接続されている。
【0028】
制御回路13は、昇圧回路12の出力電圧が、予め設定されている目標電圧になるようにIGBT121を制御する回路である。制御回路13は、昇圧回路12の出力電圧が目標電圧になるようにPWM信号を生成し、生成したPWM信号に基づいてIGBT121のスイッチングを制御する。具体的には、予め設定されているスイッチング周波数拡散パターンに従ってPWM信号の周波数を拡散させるとともに、目標電圧、昇圧回路12の入力電流及び出力電圧に基づいてPWM信号のデューティ比を決定する。そして、外部交流電源AC1の交流電圧のゼロクロス点を基準としてPWM信号を生成し、生成したPWM信号に基づいてIGBT121のスイッチングを制御する。
【0029】
制御回路13は、昇圧回路12の入力電流を検出するため、整流回路11と昇圧回路12の間に設けられた電流センサ130に接続されている。また、昇圧回路の出力電圧を検出するため、平滑コンデンサ123の両端に接続されている。さらに、外部交流電源AC1の交流電圧を検出するため、フィルタ回路10の入力端子に接続されている。加えて、IGBT121のゲートに接続されている。
【0030】
次に、図2を参照してスイッチング周波数拡散パターンについて説明する。ここで、図2は、メイン拡散パターン、サブ拡散パターン及びスイッチング周波数拡散パターンを示すパターン図である。
【0031】
図2(a)〜(c)に示すように、スイッチング周波数拡散パターンは、メイン拡散パターンと、1つのサブ拡散パターンを合成して構成されている。
【0032】
図2(a)に示すように、メイン拡散パターンは、時間に対して2つの周波数f1、f2(<f1)を規定して構成されている。具体的には、基本パターンを繰返し時間T1毎(繰返し時間毎)に繰返して構成されている。
【0033】
基本パターンは、時間に対して2つの周波数f1、f2を規定して構成されている。具体的には、時間T1/2の間、周波数をf1と規定し、その後、時間T1/2の間、周波数をf2と規定して構成されている。
【0034】
図2(b)に示すように、サブ拡散パターンは、時間に対して3つの周波数f3、f4(<f3)、f5(<f4)を規定して構成されている。具体的には、繰返し時間T1の間、周波数をf3と規定し、その後、繰返し時間T1の間、周波数をf4と規定し、その後、繰返し時間T1の間、周波数をf5と規定して構成されている。つまり、繰返し時間T1毎に周波数f3〜f5が切替わるように規定して構成されている。
【0035】
ここで、メイン拡散パターンの周波数は、入力される交流電流の周波数の高調波のうち、低減対象となる高調波より高い周波数、具体的には、対象となる40次の高調波より高い周波数に設定されている。
また、メイン拡散パターンの周波数及び前記サブ拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の高調波のうち隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されている。具体的には、メイン拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の低次の高調波が発生する周波数帯域において、隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されている。サブ拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の高次の高調波が発生する周波数帯域において、隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されている。例えば、分解能帯域幅が9kHzの場合には、9kHzより大きく、好ましくは15kHzより大きくなるように設定されている。
【0036】
次に、図1及び図2を参照して電源装置の動作について説明する。
【0037】
図1において、整流回路11は、フィルタ回路10の出力する高周波成分のノイズが除去された交流電圧を整流し、直流電圧に変換する。制御回路13は、図2(c)に示すスイッチング周波数拡散パターンに従ってPWM信号の周波数を拡散させるとともに、目標電圧、昇圧回路12の入力電流及び出力電圧に基づいてPWM信号のデューティ比を決定する。そして、外部交流電源AC1の交流電圧のゼロクロス点を基準としてPWM信号を生成する。IGBT121は、制御回路13の生成したPWM信号に基づいてスイッチングし、コイル120にエネルギーを蓄積、又は、コイル120からエネルギーを放出させる。コイル120から放出されるエネルギーは、ダイオード122を介して出力され、平滑コンデンサ123に平滑化される。このようにして、昇圧回路12は、整流回路11の出力する直流電圧を目標電圧に昇圧して高電圧バッテリB1に供給し、高電圧バッテリB1を充電する。
【0038】
次に、図2〜図5を参照して効果について説明する。ここで、図3は、スイッチング周波数拡散させない場合、従来のようにスイッチング周波数を拡散させた場合、及び、本実施形態のようにスイッチング周波数を拡散させた場合における、スペクトラムアナライザによるスイッチングノイズの解析結果である。図4は、従来におけるスイッチング周波数拡散パターンと、それに基づいてスイッチング周波数を拡散させた場合における入力される交流電流に含まれる高調波成分の解析結果である。図5は、図2(c)のスイッチング周波数拡散パターンに基づいてスイッチング周波数を拡散させた場合における入力される交流電流に含まれる高調波成分の解析結果である。
【0039】
スイッチング周波数を拡散させない場合、図3(a)に示すように、低周波領域から高周波領域にかけてレベルの高いスイッチングノイズを有する。従来のようにスイッチング周波数を拡散させた場合、図3(b)に示すように、低周波領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。しかし、高周波領域においてはスイッチングノイズのレベルを抑えることはできない。
【0040】
これに対し、本実施形態によれば、図2(a)〜(c)に示すように、スイッチング周波数拡散パターンは、時間に対して2つの周波数f1、f2を規定したメイン拡散パターンと、互いに隣接する周波数の間隔がメイン拡散パターンより小さい、時間に対して3つの周波数f3、f4、f5を規定した1つのサブ拡散パターンとを合成して構成される。
【0041】
そのため、メイン拡散パターンによって、従来の同じようにスイッチング周波数を拡散させることができる。従って、図3(c)に示すように、従来と同じように、低周波領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。さらに、サブ拡散パターンによって、スイッチング周波数の高調波に当たる周波数におけるスイッチングノイズのピークを十分に拡散させることができる。そのため、高周波領域においてもスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。従って、外部交流電源AC1の出力する交流電力を直流電力に変換して、車両に搭載された高電圧バッテリB1を充電する電源装置1で、広い周波数領域においてスイッチングノイズのレベルを抑えることができる。その結果、車両に搭載された高電圧バッテリB1を充電する際に周辺の機器に与えるスイッチングノイズの影響を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、図2(a)に示すように、メイン拡散パターンは、2つの周波数f1、f2を規定した基本パターンを繰返し時間T1毎に繰返して構成され、図2(b)に示すように、サブ拡散パターンは、繰返し時間T1毎に周波数が切替わる。そのため、スイッチング周波数の高調波に当たる周波数におけるスイッチングノイズのピークをより確実に拡散させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、メイン拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の低次の高調波が発生する周波数帯域において、隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されている。サブ拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の高次の高調波が発生する周波数帯域において、隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されている。そのため、スペクトラムアナライザでスイッチングノイズを解析する際、メイン拡散パターン及びサブ拡散パターンよる効果を正確に解析することができる。
【0044】
図4(a)に示す従来におけるスイッチング周波数拡散パターンに基づいてスイッチング周波数を拡散させ、入力される交流電力を直流電力に変換して出力する場合、図4(b)に示すように、フィルタ回路10に入力される交流電流、つまり入力される交流電流に含まれる高調波成分のレベルが高くなってしまう。これは、スイッチング周波数拡散パターンに含まれる周波数成分、具体的には、スイッチング周波数拡散パターンにおけるパターンの繰返し周期の逆数である繰返し周波数が、入力される交流電流に重畳し、歪みを発生させるからである。例えば、スイッチング周波数拡散パターンの繰返し周波数が2kHz程度である場合、40次付近の高調波成分のレベルが高くなってしまう。
しかし、図2(c)に示すように、スイッチング周波数拡散パターンを、メイン拡散パターンと、1つのサブ拡散パターンを合成し、周波数の拡散の仕方を変えることで、図5に示すように、入力される交流電流に含まれる高調波成分のレベルを抑えることができる。そのため、フィルタ回路10を小型化することができる。これは、周波数の拡散の仕方を変えることで、スイッチング周波数拡散パターンに含まれる周波数成分が変化するとともに、入力される交流電流への影響の仕方が変わるためである。図2に示すように、スイッチング周波数拡散パターンは、スイッチング周波数拡散パターンは、メイン拡散パターンにおけるパターンの繰返し周期(T1)の逆数である繰返し周波数と、サブ拡散パターンにおけるパターンの繰返し周期(3×T1)の逆数である繰返し周波数とを含んでいる。
【0045】

サブ拡散パターンの繰返し周波数が、スイッチング周波数拡散パターンの繰返し周波数に相当する。この場合、入力される交流電流に重畳される周波数は、サブ拡散パターンの繰返し周波数よりもメイン拡散パターンの繰返し周波数が支配的になる。そのため、メイン拡散パターンの繰返し周波数を調整することで、入力される交流電流に含まれる高調波成分のうち、対象となる高調波成分のレベルを抑えることができる。メイン拡散パターンの繰返し周波数を、入力される交流電流の周波数の40倍より高い周波数に設定することで、40次の高調波成分のレベルを確実に抑えることができる。また、メイン拡散パターンの繰返し周波数をより高く設定すれば、入力される交流電流に含まれる高調波成分もより高い周波数に移る。その結果、高調波成分の除去対策が容易になり、フィルタ回路10を小型化することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、入力される交流電力を直流電力に変換して出力する例を挙げているが、これに限られるものではない。スイッチング素子を有し、スイッチング素子をスイッチングすることで入力される電力を変換して出力する電力変換回路を備えた装置に広く適用することができる。この場合にも、広い周波数領域において、スイッチングノイズのレベルを抑えることができる。入力される電力を交流電力に変換して出力する場合には、出力する交流電流に含まれる高調波成分のレベルを抑えることもできる。
【0047】
また、本実施形態では、メイン拡散パターンが、時間に対して2つの周波数f1、f2を規定して構成され、サブ拡散パターンが、時間に対して3つの周波数f3、f4、f5を規定して構成される例を挙げているが、これに限られるものではない。メイン拡散パターン及びサブ拡散パターンは、時間に対して複数の周波数を規定して構成されていればよい。また、周波数の変化の仕方も、昇順又は降順に限られるものではない。ランダムに変化するように構成されていてもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、スイッチング周波数拡散パターンが、メイン拡散パターンと1つのサブ拡散パターンを合成して構成される例を挙げているが、これに限られるものではない。メイン拡散パターンと2つ以上のサブ拡散パターンを合成して構成してもよい。
少なくとも1つのサブ拡散パターンが合成されていればよい。
【0049】
加えて、本実施形態では、メイン拡散パターンの周波数が、入力される交流電流の周波数の高調波のうち、対象となる高調波より高い周波数に設定されている例を挙げているが、これに限られるものではない。入力される電力を交流電力に変換して出力する場合には、メイン拡散パターンの周波数が、出力する交流電流の周波数の高調波のうち、対象となる高調波より高い周波数に設定されていてもよい。出力する交流電流に含まれる、対象となる高周波成分を確実に抑えることができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・電源装置(電力変換装置)、10・・・フィルタ回路、11・・・整流回路(電力変換回路)、110〜113・・・ダイオード、12・・・昇圧回路(電力変換回路)、120・・・コイル、121・・・IGBT(スイッチング素子)、122・・・ダイオード、123・・・平滑コンデンサ、13・・・制御回路、130・・・電流センサ、AC1・・・外部交流電源(外部電源)、B1・・・高電圧バッテリ(電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を有し、前記スイッチング素子をスイッチングすることで入力される電力を変換して出力する電力変換回路と、
時間に対して複数の周波数を規定したスイッチング周波数拡散パターンに従ってスイッチング周波数を拡散させ、前記スイッチング素子のスイッチングを制御する制御回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記スイッチング周波数拡散パターンは、
時間に対して複数の周波数を規定したメイン拡散パターンと、
互いに隣接する周波数の間隔が前記メイン拡散パターンより小さい、時間に対して複数の周波数を規定した少なくとも1つのサブ拡散パターンと、
を合成してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記メイン拡散パターンは、複数の周波数を規定した基本パターンを繰返し時間毎に繰返してなり、
前記サブ拡散パターンは、前記繰返し時間毎に周波数が切替わることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記メイン拡散パターンの周波数及び前記サブ拡散パターンの周波数は、スイッチング周波数の高調波のうち隣接する高調波の間隔が、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅より大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換回路は、入力される交流電力を変換して出力、又は、入力される電力を交流電力に変換して出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記メイン拡散パターンのパターン繰返し周期の逆数である繰返し周波数は、入力される電流又は出力する電流の周波数の高調波のうち、対象とする高調波より高い周波数であることを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
外部電源から車両に搭載された電源に電力を供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−257370(P2012−257370A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128376(P2011−128376)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】