説明

電力変換装置

【課題】リアクトルの搭載性に優れていると共に、製造工程の簡素化、製造効率の向上を図ることができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、積層体2とリアクトル5とを備えている。積層体2の積層方向Xの一端側には、リアクトル5が配置され、コイル51は、巻回部511と一対の取出部512とを有する。各半導体モジュール部20には、パワー端子211が設けられており、積層体2には、パワー端子211からなる端子列29が形成されている。一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの両端部に配置され、異なる端子列29に対して略直線状となるように配置されている。一対の取出部512の一方は、バスバ6を介して半導体モジュール部20のパワー端子211に接続されている。バスバ6は、取出接続部61と端子接続部62と連結部63とを有する。連結部63は、端子列29の外側を通るように積層方向Xに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成する半導体モジュールやその冷却手段等を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載され、直流電力と交流電力との間で電力変換を行う電力変換装置が知られている(特許文献1参照)。
電力変換装置としては、例えば、図6に示すごとく、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール921と半導体モジュール921を冷却する冷媒を流通させる複数の冷却管(冷媒流路)922とを積層してなる積層体92と、通電により磁束を発生する筒状のコイル(図示略)と樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共にコイルを内部に埋設してなるコア952とを有するリアクトル95とを備えた電力変換装置91がある。
【0003】
同図に示すごとく、リアクトル95のコイルは、導体線を巻回してなる巻回部(図示略)と、巻回部から導体線を取り出してなると共にその一部をコア952から突出させた一対の取出部951とを有する。一対の取出部951のうち、一方の取出部951は、バスバ96を介して電力変換回路の昇圧回路の一部を構成する半導体モジュール921のパワー端子923に接続されている。また、他方の取出部951は、バスバ(図示略)を介してコンデンサ等に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−118423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構造の電力変換装置91には、以下のような問題があった。
すなわち、図6に示すごとく、コイルの一対の取出部951は、積層体92の積層方向Xと取出部951の突出方向との双方に直交する直交方向Yの一端側において、互いに近接して配置されている。そのため、図6に示すような右ハンドル仕様の電力変換装置91に搭載したリアクトル95を、図7に示すような左右対称の形状、構造を有する左ハンドル仕様の電力変換装置91に適用した場合、コイルの一対の取出部951と積層体92との位置関係が大きく異なったものとなる。
【0006】
そのため、コイルの一方の取出部951と半導体モジュール921のパワー端子923との間を接続しているバスバ96の長さ、形状等を大幅に変更しなければならないという問題が生じる。例えば、図7のように、一方の取出部951とその取出部951に接続される半導体モジュール921のパワー端子923との間の距離が長くなれば、バスバ96を長くしなければならず、これによってコストの増加、発熱の増加等の問題が生じることになる。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、リアクトルの搭載性に優れていると共に、製造工程の簡素化、製造効率の向上を図ることができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール部と、該半導体モジュール部を冷却する冷媒を流通させる複数の冷媒流路とを積層してなる積層体と、
通電により磁束を発生する筒状のコイルと、樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共に上記コイルを内部に埋設してなるコアとを有するリアクトルとを備え、
上記積層体の積層方向の一端側には、上記リアクトルが配置されており、
該リアクトルの上記コイルは、導体線を巻回してなる巻回部と、該巻回部から上記導体線を取り出してなると共にその一部を上記コアから同一方向に突出させた一対の取出部とを有し、
上記積層体の上記各半導体モジュール部には、上記取出部と同じ方向に突出させたパワー端子が複数設けられており、
上記積層体には、上記積層方向に略直線状に並んで配置された複数の上記パワー端子からなる端子列が、上記積層方向と上記取出部の突出方向との双方に直交する直交方向に複数形成されており、
上記コイルの上記一対の取出部は、上記コアの上記直交方向の両端部に配置され、かつ、それぞれが上記積層体の異なる上記端子列に対して略直線状となるように配置されており、
上記一対の取出部のいずれか一方は、バスバを介して一部の上記半導体モジュール部における所定の上記パワー端子に接続されており、
上記バスバは、上記取出部に接続される取出接続部と、上記パワー端子に接続される端子接続部と、上記取出接続部と上記端子接続部との間をつなぐ連結部とを有し、
該連結部は、上記直交方向における上記複数の端子列の外側を通るように、上記積層方向に形成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置において、積層体の積層方向の一端側には、リアクトルが配置されている。また、リアクトルのコイルは、導体線を巻回してなる巻回部と、該巻回部から導体線を取り出してなると共にその一部をコアから突出させた一対の取出部とを有する。そして、コイルの一対の取出部は、コアの直交方向の両端部に配置されている。
よって、例えば、右ハンドル仕様の電力変換装置に搭載するリアクトルを左右対称の形状、構造を有する左ハンドル仕様の電力変換装置に適用しても、コイルの一対の取出部と積層体との位置関係を大きく変更することなく、リアクトルを搭載することができる。
【0010】
すなわち、例えば、右ハンドル仕様の電力変換装置に搭載するリアクトルを、その直交方向の向きを反対にして左ハンドル仕様の電力変換装置に搭載すれば、コイルの一対の取出部は、同様にコアの直交方向の両端部に配置され、コイルの一対の取出部と積層体との位置関係も大きく変更されることがない(後述する実施例の図1、図4参照)。そのため、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とでバスバの本体部を直交方向における同じ側に配置する場合には、そのバスバの長さ、形状等を大きく変更する必要がない。これにより、従来のようなバスバの長さ、形状等の大幅な変更によるコストの増加、発熱の増加等を抑制することができ、リアクトルの搭載性に優れたものとなる。
【0011】
また、コイルの一対の取出部は、それぞれが積層体の異なる端子列に対して略直線状となるように配置されている。そのため、積層体の端子列を形成するパワー端子とそれに接続されるバスバ等との溶接及びコイルの取出部とそれに接続されるバスバ等との溶接を積層方向において連続的に行うことができる。これにより、溶接工程を容易かつ効率よく行うことができ、製造工程の簡素化、製造効率の向上を図ることができる。
【0012】
このように、リアクトルの搭載性に優れていると共に、製造工程の簡素化、製造効率の向上を図ることができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例における、リアクトルを搭載した右ハンドル仕様の電力変換装置を示す説明図。
【図2】実施例における、リアクトルを示す平面図。
【図3】実施例における、リアクトルを示す斜視図。
【図4】実施例における、リアクトルを搭載した左ハンドル仕様の電力変換装置を示す説明図。
【図5】実施例における、別例のリアクトルを示す平面図。
【図6】背景技術における、リアクトルを搭載した右ハンドル仕様の電力変換装置を示す説明図。
【図7】背景技術における、リアクトルを搭載した左ハンドル仕様の電力変換装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記電力変換装置において、上記半導体モジュール部は、半導体素子を内蔵した1又は複数の半導体モジュールにより構成することができる。
また、上記コイルの上記巻回部の外形としては、例えば、円形状、オーバル形状等を採用することができる。
【0015】
また、上記コイルの上記一対の取出部は、上記コアの上記直交方向の外端位置からの距離が略同じである構成とすることができる(請求項2)。
この場合には、例えば、右ハンドル仕様の電力変換装置に搭載するリアクトルを、その直交方向の向きを反対にして左ハンドル仕様の電力変換装置に搭載すれば、コイルの一対の取出部と積層体との位置関係の変更を非常に小さくすることができる。特に、一対の取出部の直交方向における位置を略同じとすることができる。これにより、リアクトルの搭載性をさらに高めることができる。
【0016】
また、上記コイルの上記一対の取出部は、上記直交方向において略対向して配置されている構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、例えば、右ハンドル仕様の電力変換装置に搭載するリアクトルを、その直交方向の向きを反対にして左ハンドル仕様の電力変換装置に搭載すれば、コイルの一対の取出部と積層体との位置関係の変更を非常に小さくすることができる。特に、一対の取出部の積層方向における位置を略同じとすることができる。これにより、リアクトルの搭載性をさらに高めることができる。
なお、上記直交方向において略対向した位置とは、直交方向に対向する位置又は直交方向に近い方向において対向する位置(直交方向に対向する位置に近接する位置)をいう。
【0017】
また、上記コイルの上記一対の取出部は、上記コアの上記積層体側の端部に配置されている構成とすることができる(請求項4)。
この場合には、コイルの一方の取出部とその取出部がバスバを介して接続される積層体の半導体モジュール部のパワー端子との間の距離を短くすることができる。これにより、バスバの長さを短くすることができ、バスバの発熱を抑制することができる。
なお、上記コアの積層体側の端部とは、コアにおける積層方向の中間位置よりも積層体側の部分をいう。
【実施例】
【0018】
電力変換装置に係る実施例について、図を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1〜図3に示すごとく、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール部20と、半導体モジュール部20を冷却する冷媒を流通させる複数の冷却管(冷媒流路)22とを積層してなる積層体2と、通電により磁束を発生する筒状のコイル51と、樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共にコイル51を内部に埋設してなるコア52とを有するリアクトル5とを備えている。
【0019】
積層体2の積層方向Xの一端側には、リアクトル5が配置されている。リアクトル5のコイル51は、導体線510を巻回してなる巻回部511と、巻回部511から導体線510を取り出してなると共にその一部をコア52から同一方向に突出させた一対の取出部512とを有する。
積層体2の各半導体モジュール部20には、取出部512と同じ方向に突出させたパワー端子211が複数設けられている。積層体2には、積層方向Xに略直線状に並んで配置された複数のパワー端子211からなる端子列29が、積層方向Xと取出部512の突出方向との双方に直交する直交方向Yに複数形成されている。
【0020】
コイル51の一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの両端部に配置され、かつ、それぞれが積層体2の異なる端子列29に対して略直線状となるように配置されている。一対の取出部512のいずれか一方は、バスバ6を介して一部の半導体モジュール部20における所定のパワー端子211に接続されている。
バスバ6は、取出部512に接続される取出接続部61と、パワー端子211に接続される端子接続部62と、取出接続部61と端子接続部62との間をつなぐ連結部63とを有する。連結部63は、直交方向Yにおける複数の端子列29の外側を通るように、積層方向Xに形成されている
以下、これを詳説する。
【0021】
図1に示すごとく、本例の電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載され、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うものであり、右ハンドル仕様のものである。
電力変換装置1において、積層体2は、複数の半導体モジュール部20と複数の冷却管22とを交互に積層してなる。
各半導体モジュール部20は、2個の半導体モジュール21からなり、積層方向Xの両側から冷却管22によって挟持されている。また、半導体モジュール21は、IGBT等のスイッチング素子やFWD等のダイオードを内蔵している(図示略)。
【0022】
複数の冷却管22は、その長手方向(直交方向Y)の両端部において、隣り合う冷却管22同士が変形可能な連結管23によって連結されている。また、積層方向Xの前端に配設された冷却管22の両端部には、外部から冷媒を導入する冷媒導入管24と、外部に冷媒を排出する冷媒排出管25とが連結されている。冷媒導入管24及び冷媒排出管25は、その一部をフレーム4の外側に突出させている。
【0023】
冷媒導入管24から導入された冷媒は、冷媒導入管24側の連結管23を適宜通り、各冷却管22に分配されると共にその長手方向(直交方向Y)に流通する。そして、冷媒は、各冷却管22を流れる間に、半導体モジュール21との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷媒は、冷媒排出管25側の連結管23を適宜通り、冷媒排出管25から排出される。
【0024】
なお、冷却管22等に流通させる冷媒としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0025】
また、同図に示すごとく、積層体2の各半導体モジュール部20には、後述するリアクトル5のコイル51の取出部512と同じ方向に突出させた4つのパワー端子211(211a〜211d)が設けられている。
また、積層体2には、積層方向Xに略直線状に並んで配置された複数のパワー端子211(211a〜211d)からなる4つの端子列29(29a〜29d)が直交方向Yに並んで形成されている。
【0026】
また、積層体2の一端側には、リアクトル5が配置されている。積層体2の一端は、リアクトル1のケース54に当接している。
また、積層体2の他端側には、平板状の板ばねである弾性部材31と、弾性部材31を支承する一対の支承ピン32と、弾性部材31と積層体2との間に配置された当接プレート33とからなる加圧部材3が配設されている。一対の支承ピン32は、弾性部材31の両端部と後述するフレーム4との間に配置されている。
【0027】
また、積層体2、加圧部材3及びリアクトル5は、積層体2を四方から囲むように形成されたフレーム4の内側に収容されている。
また、加圧部材3の弾性部材31は、積層体2に当接している当接プレート33と支承ピン32との間において、積層方向Xに弾性変形した状態で挟持されている。また、弾性部材31は、当接プレート33を介して積層体2を押圧している。これにより、積層体2は、弾性部材31の付勢力によって積層方向Xに加圧(圧縮)された状態で、フレーム4内に保持されている。
【0028】
図2、図3に示すごとく、リアクトル5は、通電により磁束を発生するコイル51と、コイル51への通電によって発生した磁束の磁路を構成するコア52とを備えている。
コイル51は、銅線からなる導体線510を螺旋状に巻回してなる円筒状の巻回部511と、巻回部511から導体線510を取り出してなる一対の取出部512とを有する。巻回部511の外形は、オーバル形状である。また、コイル51は、コア52の内部に埋設されており、一対の取出部512の一部をコア52から同一方向に突出させている。
コア52は、絶縁樹脂としてのエポキシ樹脂に磁性粉末としての鉄粉を混合した磁性粉末混合樹脂からなる。コア52は、コイル51全体を覆うように配設されている。
【0029】
同図に示すごとく、コイル51の内周側には、コイル51及びコア52に発生した熱を伝達して放熱すると共に、リアクトル5を固定するための円柱状の中芯部材53が配設されている。
コイル51、コア52及び中芯部材53は、有底箱型形状のケース54の内側に収容されている。ケース54には、中芯部材53が固定されている。また、ケース54の開口部541は、図示を省略したが、板状の蓋部によって塞がれている。
【0030】
図1に示すごとく、コイル51の一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの両端部に配置されている。
図2に示すごとく、一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの外端位置Aからの距離が同じである。本例では、一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの外端位置A、すなわちコア52の直交方向Yの両端面521、522からの距離L1、L2が同じである。
【0031】
図1に示すごとく、コイル51の一対の取出部512は、コア52の積層体2側の端部に配置されている。すなわち、コア52における積層方向Xの中間位置よりも積層体2側の部分に配置されている。
また、一対の取出部512は、それぞれが積層体2の異なる端子列29(29a〜29d)に対して直線状となるように配置されている。本例では、一方の取出部512は、端子列29aに対して直線状に配置されている。また、他方の取出部512は、端子列29dに対して直線状となるように配置されている。
【0032】
同図に示すごとく、コイル51の一対の取出部512のうち、一方の取出部512は、バスバ6を介して電力変換回路の昇圧回路を構成する一部の半導体モジュール部20(半導体モジュール21)のパワー端子211a、211dに接続されている。
また、他方の取出部512は、バスバ(図示略)を介してコンデンサ等に接続されている。
【0033】
バスバ6は、リアクトル5のコイル51の一方の取出部512に接続される取出接続部61と、一部の半導体モジュール部20(半導体モジュール21)のパワー端子211に接続される端子接続部62と、取出接続部61と端子接続部62との間をつなぐ連結部63とを有する。
連結部63は、直交方向Yにおける複数の端子列29の外側を通るように、積層方向Xに形成されている。また、取出接続部61及び端子接続部62は、連結部63の積層方向Xの両端部から直交方向Yに形成されている。
【0034】
次に、本例の電力変換装置1における作用効果について説明する。
本例の電力変換装置1において、積層体2の積層方向Xの一端側には、リアクトル5が配置されている。また、リアクトル5のコイル51は、導体線510を巻回してなる巻回部511と、巻回部511から導体線510を取り出してなると共にその一部をコア52から突出させた一対の取出部512とを有する。そして、コイル51の一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの両端部に配置されている。
よって、右ハンドル仕様の電力変換装置1(図1)に搭載するリアクトル5を、図4に示すごとく、左右対称の形状、構造を有する左ハンドル仕様の電力変換装置1に適用しても、コイル51の一対の取出部512と積層体2との位置関係を大きく変更することなく、リアクトル5を搭載することができる。
【0035】
すなわち、右ハンドル仕様の電力変換装置1(図1)に搭載するリアクトル5を、図4に示すごとく、その直交方向Yの向きを反対にして左ハンドル仕様の電力変換装置1に搭載すれば、コイル51の一対の取出部512は、同様にコア52の直交方向Yの両端部に配置され、コイル51の一対の取出部512と積層体2との位置関係も大きく変更されることがない。そのため、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とでバスバ6の連結部63を直交方向Yにおける同じ側に配置する場合には、そのバスバ6の長さ、形状等を大きく変更する必要がない。これにより、従来のようなバスバ6の長さ、形状等の大幅な変更によるコストの増加、発熱の増加等を抑制することができ、リアクトル5の搭載性に優れたものとなる。
【0036】
また、コイル5の一対の取出部512は、それぞれが積層体2の異なる端子列29に対して略直線状となるように配置されている。そのため、積層体2の端子列29を形成するパワー端子211とそれに接続されるバスバ(バスバ6を含む)等との溶接及びコイル51の取出部512とそれに接続されるバスバ(バスバ6を含む)等との溶接を積層方向Xにおいて連続的に行うことができる。これにより、溶接工程を容易かつ効率よく行うことができ、製造工程の簡素化、製造効率の向上を図ることができる。
【0037】
また、本例では、コイル51の一対の取出部512は、コア52の直交方向Yの外端位置Aからの距離L1、L2が同じである。そのため、右ハンドル仕様の電力変換装置1(図1)に搭載するリアクトル5を、図4に示すごとく、その直交方向Yの向きを反対にして左ハンドル仕様の電力変換装置1に搭載すれば、コイル5の一対の取出部512と積層体2との位置関係の変更を非常に小さくすることができる。特に、一対の取出部512の直交方向Yにおける位置を同じとすることができる。これにより、リアクトル5の搭載性をさらに高めることができる。
【0038】
また、コイル51の一対の取出部512は、コア52の積層体2側の端部に配置されている。そのため、コイル51の一方の取出部512とその取出部512がバスバ6を介して接続される積層体2の半導体モジュール部20(半導体モジュール21)のパワー端子211との間の距離を短くすることができる。これにより、バスバ6(連結部63)の長さを短くすることができ、バスバ6の発熱を抑制することができる。
【0039】
このように、本例によれば、リアクトル5の搭載性に優れていると共に、製造工程の簡素化、製造効率の向上を図ることができる電力変換装置1を提供することができる。
【0040】
また、本例において、リアクトル5におけるコイル51の一対の取出部512は、図1、図2に示すごとく、積層方向Xにおいて少しずれた位置に配置されているが、図5に示すごとく、直交方向Yにおいて対向して配置することもできる。
この場合には、例えば、右ハンドル仕様の電力変換装置1(図1)に搭載するリアクトル5を、その直交方向Yの向きを反対にして左ハンドル仕様の電力変換装置1(図4)に搭載すれば、コイル5の一対の取出部512と積層体2との位置関係の変更を非常に小さくすることができる。特に、一対の取出部512の積層方向Xにおける位置を同じとすることができる。これにより、リアクトル5の搭載性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 電力変換装置
2 積層体
20 半導体モジュール部
211 パワー端子
22 冷却管(冷媒流路)
29 端子列
5 リアクトル
51 コイル
511 巻回部
512 取出部
52 コア
6 バスバ
61 取出接続部
62 端子接続部
63 連結部
X 積層方向
Y 直交方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール部と、該半導体モジュール部を冷却する冷媒を流通させる複数の冷媒流路とを積層してなる積層体と、
通電により磁束を発生する筒状のコイルと、樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなると共に上記コイルを内部に埋設してなるコアとを有するリアクトルとを備え、
上記積層体の積層方向の一端側には、上記リアクトルが配置されており、
該リアクトルの上記コイルは、導体線を巻回してなる巻回部と、該巻回部から上記導体線を取り出してなると共にその一部を上記コアから同一方向に突出させた一対の取出部とを有し、
上記積層体の上記各半導体モジュール部には、上記取出部と同じ方向に突出させたパワー端子が複数設けられており、
上記積層体には、上記積層方向に略直線状に並んで配置された複数の上記パワー端子からなる端子列が、上記積層方向と上記取出部の突出方向との双方に直交する直交方向に複数形成されており、
上記コイルの上記一対の取出部は、上記コアの上記直交方向の両端部に配置され、かつ、それぞれが上記積層体の異なる上記端子列に対して略直線状となるように配置されており、
上記一対の取出部のいずれか一方は、バスバを介して一部の上記半導体モジュール部における所定の上記パワー端子に接続されており、
上記バスバは、上記取出部に接続される取出接続部と、上記パワー端子に接続される端子接続部と、上記取出接続部と上記端子接続部との間をつなぐ連結部とを有し、
該連結部は、上記直交方向における上記複数の端子列の外側を通るように、上記積層方向に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記コイルの上記一対の取出部は、上記コアの上記直交方向の外端位置からの距離が略同じであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記コイルの上記一対の取出部は、上記直交方向において略対向して配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、上記コイルの上記一対の取出部は、上記コアの上記積層体側の端部に配置されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38834(P2013−38834A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170482(P2011−170482)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】