説明

電力変換装置

【課題】 より信頼性の高い電力変換装置を提供する。
【解決手段】 複数の半導体チップ2と、前記複数の半導体チップ2の正極側と負極側に接合し、前記複数の半導体チップ2との接合面と対向する面に接触面3aが形成された複数のバスバー3と、前記複数のバスバー3と接合している絶縁シート4と、前記複数の半導体チップ2の熱を放熱する放熱手段5と、前記接触面3aと接する位置決め部材6aが形成され、前記放熱手段5上に設けられているケース6とを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタ、IGBT、サイリスタなどの半導体チップを用いて直流電力を交流電力に変換するインバータや、交流電力を直流電力に変換するコンバータなどを構成している電力変換装置が知られている。これらの電力変換装置では、大電力用の半導体チップを用いると半導体チップからの放熱量が大きくなり、冷却器を具備させて冷却を行う必要がある。
【0003】
このように冷却器を備える半導体装置は、バスバーにはんだ付けにより半導体チップが実装されいる。また、バスバーは絶縁シートを介して冷却器に当接するように、設けられている。このため、半導体チップで発生する熱は、バスバーと絶縁シートとを介して冷却器に伝達して、冷却器で放熱されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−224236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電力変換装置では、半導体チップが発熱すると、バスバーと絶縁シートの線膨張係数差があるため、バスバーと絶縁シートとの間に応力がはたらき、クラックが入りやすかった。そのため、半導体チップから発生する熱が放熱しにくくなるため、半導体チップの性能が十分に発揮しにくくなり、また寿命が短くなることから、信頼性が低くなってしまっていた。
【0006】
そこで本発明では、より信頼性の高い電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、実施形態の電力変換装置は、複数の半導体チップと、複数の半導体チップの正極側と負極側に接合し、複数の半導体チップとの接合面と対向する面に接触面が形成された複数のバスバーと、複数のバスバーと接合している絶縁シートと、複数の半導体チップの熱を放熱する放熱手段と、接触面と接する位置決め部材が形成され、放熱手段上に設けられているケースとを有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置を示す断面図。
【図2】本発明の応用例に係る電力変換装置の断面図。
【図3】バスバーの断面形状と熱伝導との関係を例示するための模式グラフ図。
【図4】本発明の応用例に係る電力変換装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る電力変換装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明の実施形態に係る電力変換装置について、図1,図2を参照して説明する。図1に示すように、電力変換装置1は、複数の半導体チップ2と、複数のバスバー3と、絶縁シート4と、放熱手段5と、ケース6と、樹脂7とで構成されている。
【0011】
半導体チップ2は、IGBT、パワーMOSFET、パワーBJT、サイリスタ、GTOサイリスタ、SIサイリスタ、ダイオード等の種々のパワーデバイスが使用可能である。また、半導体チップ2は複数のバスバー3に直接はんだHを介して接合してされるものとしても良いし、端子板や緩衝板等(図示せず)を介してバスバー3に接合されるものとしてもよい。
【0012】
バスバー3は、半導体チップ2の正極側と負極側に接合され、電気的に接続されている。バスバー3の材質としては、導電性の金属であればよいが、銅等の金属が好適である。また、表面にニッケル等のメッキ処理が施されていても良い。そして、各導体を更に複数に分割した構成としても良い。
【0013】
また、バスバー3は、後述するケース6の位置決め部材6aと接するため、半導体チップ2とバスバー3との接合面と対向する面側が面取りされており、接触面3aが形成されている。本実施形態ではこの接触面3aは、半導体チップ2とバスバー3との接合面と、バスバー3と絶縁シート4との接合面に対して非並行な面になるように形成されている。
【0014】
なお、本実施形態では接触面3aは、 半導体チップ2とバスバー3との接合面と、バスバー3と絶縁シート4との接合面に対して非並行な面になるように形成されているが、これに限られることはなく、図2(a)に示すように接触面3aの一部が半導体チップ2とバスバー3との接合面に対して平行となる面M1、もしくは図2(b)に示すようにバスバー3と絶縁シート4との接合面に対して並行となる面M2が形成されていてもく、また図2(c)に示すようにどちらの接合面に対しても平行となる面が形成されていてもよい。
【0015】
図3は、バスバー3の断面形状と熱伝導との関係を例示するための模式グラフ図である。なお、図3(a)はバスバー3の断面形状が矩形の場合、すなわち接触面3aが形成されない場合であり、図3(b)はバスバーの断面形状が三角形の場合、すなわち接触面3aが形成されている場合である。また、図3は、温度分布をモノトーン色の濃淡で表し、温度が高い程濃く、温度が低いほど淡くなるように表示した。
【0016】
図3(a)、(b)から分かるように、バスバー3の断面形状を三角形としても温度分布はほぼ同様となっている。この様にバスバー3の場合は、熱伝導に必要な断面積が十分にあるためバスバー3の断面積を減らすようにしても熱伝導への影響は少ない。そのため、例えば、バスバー3の断面形状を三角形にするなどすれば、放熱性を維持したままバスバーの体積を減らすことができるので、低価格化、軽量化などを図ることができる。
【0017】
図1に示すように、絶縁シート4は、バスバー3と放熱手段5との間に設けられ、例えば熱伝導性のエポキシ樹脂や、分子レベルで有機成分と無機成分が均一に混合されている無機・有機ハイブリッド材料等から形成されたものを用いている。
【0018】
放熱手段5は、絶縁体シート4 を介して複数バスバー3に接着されている。このとき、放熱手段5は、複数の半導体チップ2と複数のバスバー3との接合面に対して非平行(例えば、略垂直)な面で複数のバスバー3と接着され、複数の半導体チップ2の熱を放熱する。放熱手段5は、例えばアルミニウム等の金属体で形成された空冷や水冷のヒートシンクである。
【0019】
ケース6は、バスバー3と絶縁シート4との間、特に半導体チップ2とバスバー3との接合面に接する所Sにはたらく応力を低減させるため、位置決め部材6aを備えている。
【0020】
位置決め部材6aは、バスバー3の接触面3aと接するように形成されている。すなわち、半導体チップ2とバスバー3との接合面と、バスバー3と絶縁シート4との接合面に対して非並行な面となるように形成されている。このような面を形成することにより、熱によりバスバー3が膨張しても、バスバー3を半導体チップ2とバスバー3との接合面方向へと圧縮させることが可能となる。また、同時にバスバー3と絶縁シート4との接合面方向に対しても圧縮させる事が可能となる。その結果、バスバー3と絶縁シート4との間にクラックが入りにくくなる。
【0021】
なお、本実施形態では位置決め部材6aは、 半導体チップ2とバスバー3との接合面と、バスバー3と絶縁シート4との接合面に対して非並行な面になるように形成されているが、これに限られることはなく、位置決め部材6aの一部が 半導体チップ2とバスバー3との接合面、もしくはバスバー3と絶縁シート4との接合面に対して並行となる面が形成されていてもく、どちらに対しても平行となる面が形成されていてもよい。
【0022】
また、ケース6は、後述する樹脂7を保持しており、放熱手段5上に設けられ、またバスバー3の高さより高くなるように形成されている。ケース6の材質としては、樹脂から形成されており、例えばガラス繊維入りの強化プラスチック等、強度が高い樹脂材料を用いている。
【0023】
樹脂7は、半導体チップ2、バスバー3、絶縁シート4を覆うように設けられており、熱により膨張する前の位置を固定するために設けられている。そのため、熱によりバスバー3が膨張しても、バスバー3と絶縁シート4との間にクラックが入ることを抑制することができる。
【0024】
また、本発明の実施例に係る電力変換装置は、複数のバスバー3との間に中間バスバー3bを配置した構成とすることもできる。図4は複数のバスバー3の間に中間バスバー3bを配置した電力変換装置1aの断面構成図である。この電力変換装置1aは、半導体チップ2aの正極側と、半導体チップ2bの負極側にバスバー3が接合され、半導体チップ2aの負極側及び半導体チップ2bの正極側に中間バスバー3bが接合されている。その他の構成は、図1及び図2に示した電力変換装置1と同様である。
【0025】
以上、本実施形態によれば、電力変換装置1は、複数の半導体チップ2と、複数の半導体チップ2の正極側と負極側に接合し、半導体チップ2との接合面と対向する面に接触面3aが形成された複数のバスバー3と、複数のバスバー3と接合している放熱シート4と、半導体チップ2の熱を放熱する放熱手段5と、接合面3aと接する位置決め部材6aが形成され、放熱手段5上にケース6が設けられている。これにより、熱によりバスバー3が膨張しても、バスバー3を半導体チップ2とバスバー3との接合面方向へと圧縮させることが可能となる。また、同時にバスバー3と絶縁シート4との接合面方向に対しても圧縮させる事が可能となる。その結果、バスバー3と絶縁シート4との間にクラックが入りにくくなるため、より信頼性を高くすることが出来る。
【0026】
また、ケース6に保持され、複数の半導体チップ2、複数のバスバー3、絶縁シート4を覆うように樹脂7が設けられている。これにより、熱により膨張する前の位置を固定することが可能となるため、よりクラックが入りにくくなるため、更に信頼性を高くすることが出来る。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1,1a…電力変換装置
2,2a,2b…半導体チップ
3…バスバー
3a…接触面
3b…中間バスバー
4…絶縁シート
5…放熱手段
6…ケース
6a…位置決め部材6a
7…樹脂
H…はんだ
M1,M2…面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップと、
前記複数の半導体チップの正極側と負極側に接合し、前記複数の半導体チップとの接合面と対向する面に接触面が形成された複数のバスバーと、
前記複数のバスバーと接合している絶縁シートと、
前記複数の半導体チップの熱を放熱する放熱手段と、
前記接触面と接する位置決め部材が形成され、前記放熱手段上に設けられているケースと、
を有する電力変換装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、前記複数の半導体チップと前記複数のバスバー3との前記接合面と、前記複数のバスバーと前記絶縁シートとの前記接合面に対して非並行な面であることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記接触面は、前記複数の半導体チップと前記複数のバスバー3との前記接合面と、前記複数のバスバーと前記絶縁シートとの前記接合面に対して非並行な面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
更に、前記ケースに保持され、前記複数の半導体チップと、前記複数のバスバーと、前記絶縁シートを覆う樹脂が設けられている請求項1乃至請求項3に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−80755(P2013−80755A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218759(P2011−218759)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】