説明

電力平準化装置

【課題】充放電動作を行わないとき、蓄電池から放電の抑制と直流中間電圧の維持とを可能とする電力平準化装置を提供する。
【解決手段】第1の電力変換器5は、蓄電池4とコンデンサ9との間で電力の授受を行うことによってコンデンサ9の電圧を所定値に維持する第1の定電圧制御動作を行い、第2の電力変換器6は、発電設備1と負荷2とで構成される電力系統とコンデンサ9との間で電力の授受を行う充放電制御動作を行う電力平準化装置において、第2の電力変換器6が充放電動作を行わないとき、第1の電力変換器5は第1の定電圧制御動作を停止し、第2の電力変換器6がコンデンサ9の電圧を所定値に維持する第2の定電圧制御動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源と負荷とからなる電源システムにおいて、交流電源から見た負荷の大きさが所定値に維持されるように機能する電力平準化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力平準化装置として特許文献1に開示されている装置構成を図5に示す。1は発電設備、2は負荷であり、発電設備1と負荷2とは三相三線の電力系統ラインで接続されている。電力平準化装置は、充放電電力演算部3、蓄電池4、直流電力変換器5、交流電力変換器6、直流中間電圧制御手段7、充放電電力制御手段8および直流中間コンデンサ(以下では、単にコンデンサとも言う。)9で構成されている。
【0003】
この電力平準化装置は、発電設備1から供給される電力が負荷2で消費される電力よりも多いとき、電力系統に生じる余剰電力を交流電力変換器6で直流電力に変換してコンデンサ9に充電する。さらに、コンデンサ9に充電された電力を直流電力変換器5で降圧して蓄電池4に充電する。一方、発電設備1から供給される電力が負荷2で消費される電力よりも少ないとき、蓄電池4に蓄えられている電力を直流電力変換器5で昇圧してコンデンサ9に充電する。さらに、コンデンサ9に充電された電力を交流電力変換器6で三相交流電圧に変換して、発電設備1の電力系統に給電する。
【0004】
このような機能を果たすため、充放電電力演算部3は、電流検出器301、電圧検出器302、位相検出手段303および電力演算手段304を備えている。電流検出器301は、発電設備1と負荷2との間の電力系統に設けられて、負荷2に流れる電流を検出し、これに相当する信号を出力する。電圧検出器302は三相電力系統の線間電圧を検出し、これに相当する信号を出力する。位相検出手段303は、電圧検出器302から出力される信号を入力として、電力系統電圧の位相に同期する位相信号を出力する。電力演算手段304は、電流検出器301から出力される信号と電圧検出器302から出力される信号とを入力として、負荷に供給されている負荷電力値を算出する。
【0005】
充放電電力制御手段8は、所定電力値と電力演算手段304で算出された負荷電力値とを用いて、直流電力変換器5を制御するための直流電流指令値を算出する。この所定電力値は、発電設備1から見て一定とされるべき電力値であって、発電設備1と負荷2との関係で、予め定められた電力値である。
【0006】
直流電力変換器5は、2個の半導体スイッチング素子を直列に接続したチョッパ回路501、リアクトル502、コンデンサ503、電流検出器504および直流電流制御手段505を備えた昇降圧型のチョッパである。チョッパ回路501の下アームに位置する半導体スイッチング素子の両端には、リアクトル502と蓄電池4とを直列に接続した回路が接続されている。蓄電池4の両端には、コンデンサ503が接続されている。チョッパ回路501の両端には、コンデンサ9が接続されている。
【0007】
直流電流制御手段505は、充放電電力制御手段8から出力される直流電流指令値に対して電流検出器504で検出される電流値が一致するようにチョッパ回路501の制御信号を生成する。チョッパ回路501の半導体スイッチング素子は、直流電流制御手段505からの制御信号に基づいてオン・オフ動作をする。チョッパ回路501の半導体スイッチング素子のオン・オフ動作により、蓄電池4とコンデンサ9との間で、直流電力の授受が行われる。
【0008】
直流中間電圧制御手段7は、電圧検出器901によって検出されたコンデンサ9の電圧(直流中間電圧)が所定値となるように交流電力変換器6に対する交流電流指令値を生成する。
【0009】
交流電力変換器6は、半導体スイッチング素子を三相ブリッジ構成した三相ブリッジ回路601、三相リアクトル602,604と三相コンデンサとからなる三相交流フィルタおよび交流電流制御手段606を備えている。三相ブリッジ回路601の直流側端子はコンデンサ9の両端に接続されている。三相ブリッジ回路601の交流側端子は、三相交流フィルタを介して、発電設備1と負荷2とを結ぶ電力系統に接続されている。
【0010】
交流電流制御手段606は、電流検出器605で検出される電流が直流中間電圧制御手段7からの交流電流指令値と一致するように交流電力変換器6の半導体スイッチング素子をオン・オフ動作させる制御信号を生成する。交流電流制御手段606から出力される制御信号は、位相制御手段303から出力される位相信号に同期した信号である。
【0011】
交流電力変換器6の半導体スイッチング素子が交流電流制御手段606から出力される制御信号に基づいてオン・オフ動作をすることで、コンデンサ9の電圧が所定値に維持される。すなわち、直流電力変換器5が蓄電池4の電力をコンデンサ9に充電する動作を行うとき、コンデンサ9の電圧が所定値以上に上昇する。このとき、交流電力変換器6は、コンデンサ9の直流電力を交流電力に変換して、蓄電池4からの電力を発電設備1の電力系統に放電する。一方、直流電力変換器5が蓄電池4を充電する動作を行うとき、コンデンサ9の電圧が所定値以下に低下する。このとき、交流電力変換器6は、交流電力を直流電力に変換して、発電設備1の電力系統に生じる余剰電力をコンデンサ9に充電し、コンデンサ9の電圧を所定値に維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−199588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した電力平準化装置は、蓄電池4から充放電される電力が充放電電力制御手段8で算出された電力値と一致するように動作する。このとき、蓄電池4と電力系統との間の電力のやり取りは、直流電力変換器5と交流電力変換器6とを通して行われる。
【0014】
ところが、直流電力変換器5および交流電力変換器6では、それぞれが内蔵する半導体スイッチング素子の動作により電力損失が発生する。そのため、実際に交流電力変換器6から電力系統に放電される電力は、充放電電力制御手段8で算出される放電電力値から直流電力変換器5と交流電力変換器6とで発生する損失分を差し引いた電力となる。すなわち、実際に電力系統に放電される電力は、電力系統が必要とする電力に対して不足し、発電設備1からみた負荷の大きさが安定しないという問題がある。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、充放電電力制御手段8で指令される電力値に等しい電力を交流電力変換器6から電力系統に放電する。それによって、発電設備1からみた負荷電力の大きさを安定させることができる電力平準化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、発電設備と該発電設備から電力の供給を受ける負荷とからなる電力系統に接続された電力平準化装置において、前記電力平準化装置は、蓄電池と、前記蓄電池に接続された第1の電力変換器(直流電力変換器)と、前記電力系統に接続された第2の電力変換器(交流電力変換器)と、前記第1の電力変換器と前記第2の電力変換器との間に接続されたコンデンサとを備え、前記第1の電力変換器は、前記蓄電池と前記コンデンサとの間で電力の授受を行うことによって前記コンデンサの電圧を第1の所定値に維持するための第1の定電圧制御動作を行い、前記第2の電力変換器は、前記負荷で消費される電力が所定の電力下限値より小さくなったとき前記電力下限値と前記負荷の消費電力との差に相当する電力を前記電力系統から前記コンデンサに充電するための充電動作と、前記負荷で消費される電力が所定の電力上限値より大きくなったときその超過電力に相当する電力を前記コンデンサから前記電力系統に放電するための放電動作とを行うようにするものである。
【0017】
本発明により、第1の電力変換器が直流中間回路の電圧を第1の所定値に維持するように動作し、第2の電力変換器が電力系統との間で必要な電力の充放電を行うように動作する。その結果、電力系統で不足する電力に相当する電力を電力平準化装置から放電することができ、発電設備から見た負荷の大きさを安定させることができる。
【0018】
第2の発明は、上記電力平準化装置において、第2の電力変換器が充電動作または放電動作を行うときのみ、第1の電力変換器が第1の定電圧制御動作を行うようにするものである。
【0019】
すなわち、第2の電力変換器が充電動作または放電動作を行うときのみ第1の電力変換器を動作させ、それ以外のときは第1の電力変換器を動作させないようにする。このように第2の電力変換器が充放電動作を行わないとき、第1の電力変換器の動作を停止させることにより、蓄電池に充電された電荷の放電を防止することができる。
【0020】
第3の発明は、上記電力平準化装置において、第1の電力変換器は内蔵する半導体スイッチング素子をオン・オフ動作させることによって第1の定電圧制御動作を行うものであり、第2の電力変換器が充電動作および放電動作のいずれの動作も行わないとき、第1の電力変換器の半導体スイッチング素子はオフ状態に維持されるようにするものである。
【0021】
このように、第2の電力変換器が充電動作および放電動作のいずれの動作も行わないとき、第1の電力変換器の半導体スイッチング素子をオフ状態に維持すれば、この期間において第1の電力変換器で発生する半導体スイッチング素子の導通損失およびスイッチング損失を零にすることができる。
【0022】
第4の発明は、上記電力平準化装置において、第2の電力変換器が充電動作および放電動作を行わないとき、第2の電力変換器は電力系統とコンデンサとの間で電力を授受することによってコンデンサの電圧を第2の所定値に維持する第2の定電圧制御動作を行うようにするものである。
【0023】
この発明によれば、第2の電力変換器が充電動作および放電動作を行わないとき、第2の電力変換器は、第1の電力変換器に代わってコンデンサの電圧を第2の所定値に維持する。コンデンサの電圧が第2の所定値に維持されているので、電力平準化装置と電力系統との間で電力の充放電が必要になったとき、第2の電力変換器は第2の定電圧制御動作から充放電動作に速やかに移行することができる。
【0024】
第5の発明は、上記電力平準化装置において、第1の電力変換器が第1の定電圧制御動作によりコンデンサの電圧を維持するための電圧は、第2の電力変換器が充電動作を行うときは第3の所定値であり、第2の電力変換器が放電動作を行うときは第4の所定値となるようにする。さらに、第2の電力変換器が第2の定電圧制御動作によりコンデンサの電圧を維持するための電圧は、第1の電力変換器が第1の定電圧制御動作を行うとき第3の所定値よりも大きい第5の所定値と第4の所定値よりも小さい第6の所定値とし、第2の電力変換器が第2の定電圧制御動作を行うとき第3の所定値よりも小さい第7の所定値と第4の所定値よりも大きい第8の所定値とするものである。
【0025】
この発明によれば、第1の電力変換器が第1の定電圧制御動作を行うとき、コンデンサの電圧は第3の所定値と第4の所定値の間の電圧に維持される。一方、第1の電力変換器が第1の定電圧制御動作を行わないとき、コンデンサの電圧は、第2の電力変換器の第2の定電圧制御動作により、第7の所定値と第8の所定値の間の電圧に維持される。さらに、第1の所定値から第8の所定値は、蓄電池4の電圧および電力系統の電圧の振幅値よりも大きい値である。
【0026】
したがって、第1の電力変換器が動作を停止しても、蓄電池4に蓄えられた電荷がコンデンサ9側に放電することがない。また、コンデンサの電圧は常に所定値に維持されているため、第1の電力変換器は停止状態と第1の定電圧制御動作との間を速やかに移行することができ、第2の電力変換器は第2の定電圧制御動作と充放電動作との間を速やかに移行することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1の電力変換器が直流中間回路の電圧を所定値に維持するように動作し、第2の電力変換器が電力系統との間で必要電力の充放電を行うように動作するので、電力系統で不足する電力に等しい電力を電力平準化装置から放電することができ、発電設備から見た負荷の大きさを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電力平準化装置の第1の実施形態を説明するための図である。
【図2】本発明に係る電力平準化装置の第2の実施形態を説明するための図である。
【図3】本発明に係る電力平準化装置の第3の実施形態を説明するための図である。
【図4】本発明に係る電力平準化装置の第4の実施形態を説明するための図である。
【図5】従来技術に係る電力平準化装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る電力変換装置の実施の形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。なお、図1〜図4において、図5に示した構成要素と同じ構成要素には同符号を付し、その説明を省略している。
【0030】
図1は、本発明に係る電力平準化装置の第1の実施形態を説明するための図である。本図において、電力平準化装置は、充放電電力演算部3a、蓄電池4、直流電力変換器5(第1の電力変換器)、交流電力変換器6(第2の電力変換器)、直流中間電圧制御手段7a、充放電電力制御手段8および直流中間コンデンサ9で構成されている。直流電力変換器5は、2つの半導体スイッチング素子を直列接続するとともにその接続中点にインダクタを接続してなる昇降圧型のチョッパである。また、交流電力変換器6は、半導体スイッチング素子を三相ブリッジ接続にしてなるコンバータ回路である。
【0031】
このように構成された第1の実施形態に係る電力平準化装置の特徴は、直流電力変換器5が定電圧制御動作をすることによりコンデンサ9の電圧を第1の所定値に維持するとともに、交流電力変換器6が充放電動作をすることにより発電設備1から見た電力系統の負荷変動を抑制するように機能するところにある。
【0032】
具体的には、直流電力変換器5は、蓄電池4とコンデンサ9との間で電力を授受することにより、コンデンサ9の電圧を第1の所定値に維持する。また、交流電力変換器6は、負荷2で消費される電力が所定の電力下限値より小さくなったとき、この電力下限値と負荷2の消費電力との差に相当する電力を電力系統からコンデンサ9に充電する。さらに、交流電力変換器6は、負荷2で消費される電力が所定の電力上限値より大きくなったとき、この超過電力に相当する電力をコンデンサ9から電力系統に放電する。
【0033】
以下、図1に示した各要素によって、上記機能がどのように実現されているかを説明する。
まず、充放電電力演算部3aは、発電設備1と負荷2との間に接続されている。充放電電力演算部3aには、図5に示した充放電電力演算部3にさらに充放電電力演算手段305が付加されている。
【0034】
充放電電力演算手段305は、電流検出器301で検出された電流値と電圧検出器302で検出された系統電圧値とを用いて負荷で消費される電力値を算出する。次に、算出した負荷の電力値が所定の電力下限値よりも小さいとき、充放電電力演算手段305は、所定の電力下限値から算出した負荷の電力値を減じて得た値を充電電力指令値として出力する。一方、算出した負荷の電力値が所定の電力上限値よりも大きいとき、充放電電力演算手段305は、負荷の電力値から所定の電力上限値を減じて得た値を放電電力指令値として出力する。
【0035】
また、充放電電力演算部3aの位相検出手段303は、電圧検出器302で検出された系統電圧値から基準の位相信号を生成して出力する。
充放電電力制御手段8は、充放電電力演算手段305から出力される充電電力指令値または放電電力指令値を用いて、有効電力指令値IRを生成する。
【0036】
交流電力変換器6の交流電流制御手段606では、充放電電力制御手段8から出力される有効電力指令値IRと位相検出手段303から出力される基準位相信号とから、交流電力変換器601から出力される三相交流電流指令値が算出される。次に、電流検出器605で検出された三相電流値が三相交流電流指令値と一致するように、比例積分演算などを用いて、コンバータ回路601の出力電圧指令値が生成される。生成された出力電圧指令値は電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値に基づいて正規化され、パルス幅変調制御を行うための変調信号に変換される。さらに、このようにして得られた変調信号とキャリア信号とが比較演算され、コンバータ回路601の制御信号が生成される。すなわち、コンバータ回路601の制御信号は、電流検出器605で検出された三相電流値が充放電電力演算手段3aから出力される充放電電力指令値に基づいて算出された三相交流電流指令値と一致するように調整されている。
【0037】
コンバータ回路606の半導体スイッチング素子は、交流電流制御手段606から出力される制御信号に基づいてオン・オフ動作を行う。このコンバータ回路606の動作により、発電設備1と負荷2との間の電力系統とコンデンサ9との間で、電力の授受が行われる。具体的には、充放電電力演算部3aから充電電力指令値が出力されるとき、発電設備1と負荷2との間の電力系統に生じた余剰電力がコンデンサ9に充電される。一方、充放電電力演算部3aから放電電力指令値が出力されるとき、コンデンサ9から電力系統に電力が放電される。
【0038】
直流中間電圧制御手段7aは、予め定められた直流中間回路電圧の指令値と電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値とを用いて、直流電流指令値Irを生成する。直流電流指令値Irは、比例積分調節器702を用いて、コンデンサ9の電圧が所定の直流中間電圧指令値と一致するように調節されている。なお、直流中間回路電圧の指令値は、蓄電池4の電圧よりも高い電圧であって、かつ発電設備1と負荷2との間の三相系統電圧の振幅値よりも大きい値に設定されている。
【0039】
直流電流制御手段505は、直流中間電圧制御手段7aから出力される直流電流指令値Irと電流検出器504で検出された直流電流値とを用いて、チョッパ回路501の制御信号を生成する。チョッパ回路501の制御信号は、蓄電池4と直流電力変換器5との間を流れる電流が直流電流指令値Irと一致するように調節されている。
【0040】
上記直流電力変換器5の動作により、コンデンサ9の電圧が第1の所定値よりも大きいとき、コンデンサ9の電力が蓄電池4に充電される。一方、コンデンサ9の電圧が第1の所定値よりも小さいとき、蓄電池4の電力がコンデンサ9に放電される。
【0041】
以上より、第1の実施形態において、負荷で消費される電力が所定の下限値より小さくなったとき、充放電電力演算手段305から出力される充電電力指令値に基づく電力(電力系統の余剰電力に相当する電力)が交流電力変換器6によって直流中間回路のコンデンサ9に充電される。直流中間回路に充電された電力は、さらに直流電力変換器5によって蓄電池4に充電される。
【0042】
一方、負荷で消費される電力が所定の上限値を超えたとき、充放電電力演算手段305から出力される放電電力指令値に基づく電力(電力系統で不足する電力)が交流電力変換器6によって直流中間回路から電力系統に放電される。直流中間回路から電力が放電されると直流中間回路の電圧が低下する。直流中間回路の電圧を第1の所定値に維持するため、直流電力変換器5によって蓄電池4に蓄えられている電力が直流中間回路に放電される。
【0043】
その結果、電力系統に充放電される電力は充放電電力演算手段305により算出された電力値に一致することになる。すなわち、電力系統において必要とされる充放電電力と実際に交流電力変換器6から充放電される電力との間にずれが生じることがない。
【0044】
なお、この実施形態において、直流電力変換器5によってコンデンサ9の電圧を第1の所定値に維持する機能は、交流電力変換器6が充放電電力演算手段305からの充電電力指令値または放電電力指令値に基づいて動作するときのみ働くようにするのが好適である。すなわち、充放電電力演算手段305からの充電電力指令値および放電電力指令値のいずれもが出力されていないとき、直流電力変換器5のチョッパ回路501の動作を停止する。具体的には、チョッパ回路501の半導体スイッチング素子の制御信号をオフにし、半導体スイッチング素子がオン・オフ動作をしないようにする。
【0045】
このようにすることにより、電力系統と電力平準化装置との間で電力の充放電を行う必要がないとき、直流電力変換器5のチョッパ回路501の半導体スイッチング素子で発生する導通損失とスイッチング損失とを零にすることができる。また、蓄電池4に蓄えられたエネルギーがコンデンサ9側に放電されることもない。
【0046】
図2は、本発明に係る電力平準化装置の第2の実施形態を説明するための図である。この実施形態の特徴は、直流中間電圧制御手段7aが動作しないとき、すなわち直流電力変換器5が動作しないときに、交流電力変換器6がコンデンサ9の電圧を第2の所定値に維持するように動作することである。
【0047】
このような動作を可能とするため、この実施形態では、図1に示した第1の実施形態に新たに直流中間電圧制御手段7bが付加されている。そして、直流中間電圧制御手段7bの出力と充放電電力制御手段8の出力が加算器801によって加算され、これによって得られた結果が交流電流制御手段606に入力される有効電流指令値Ipとなるように構成されている。なお、直流中間電圧制御手段7bは、直流中間電圧制御手段7aと同様、直流中間電圧指令値と電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値との偏差を比例積分調節器に入力して電流指令値を得るように構成することができる。
【0048】
このように構成することにより、交流電力変換器6は、直流電力変換器5が動作しないときに、コンデンサ9の電圧を所定値に維持するように動作する。この動作により、コンバータ回路601の半導体スイッチング素子のオン・オフ動作により損失が発生するものの、コンデンサ9の電圧が蓄電池4の電圧よりも高い所定の電圧に維持される。その結果、蓄電池4からの放電を防止することができる。また、コンデンサ9の電圧が所定値に維持されていることにより、負荷2の消費電力が急変した場合でも、直流電力変換器5および交流電力変換器6が素早く応答することができる。
【0049】
なお、電力系統と電力平準化装置との間で電力の充放電を行う必要がないとき、直流電力変換器5のチョッパ回路501の半導体スイッチング素子で発生する導通損失とスイッチング損失とを零にすることができる。したがって、蓄電池4に蓄えられたエネルギーが無駄に消費されることがない。
【0050】
図3は、本発明に係る電力平準化装置の第4の実施形態を説明するための図である。図2に示した実施形態と異なるところは、直流中間電圧制御手段7aに対応する直流中間電圧制御手段7cが、直流中間回路の電圧指令値として上限指令値と下限指令値とを有し、直流中間電圧制御手段7bに対応する直流中間電圧制御手段7dが、直流中間回路の電圧指令値として上限指令値と下限指令値とを有していることである。
【0051】
この実施形態において、直流中間電圧制御手段7cは、直流中間電圧上限指令値B(第3の所定値)と直流中間電圧下限値B(第4の所定値)とを有する。そして、直流電流指令値Irは、直流中間電圧上下限指令値Bと電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値との偏差を比例積分調節器705,707に入力することにより得られる。なお、比例積分調節器705は、電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値が直流電圧下限指令値Bよりも小さいときに直流電流指令値Irを出力する。一方、比例積分調節器707は、電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値が直流電圧上限指令値Bよりも大きいときに直流電流指令値Irを出力する。したがって、電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値が直流電圧下限指令値Bと直流電圧上限指令値Bとの間にあるとき、直流電流指令値Irは零となる。
【0052】
直流中間電圧制御手段7dは、直流中間電圧上限指令値A(第5の所定値),C(第7の所定値)と直流中間電圧下限指令値A(第6の所定値),C(第8の所定値)とを有する。直流中間電圧制御手段7dは、充放電電力演算手段305の出力が零以外のとき、制御判定手段703の出力にしたがって直流中間電圧下限指令値Aをコンデンサ9の電圧の下限指令値とし、直流中間電圧上限指令値Aをコンデンサ9の電圧の上限指令値とする。一方、直流中間電圧制御手段7dは、充放電電力演算手段305の出力が零のとき、制御判定手段703の出力にしたがって直流中間電圧下限指令値Cをコンデンサ9の電圧の下限指令値とし、直流中間電圧上限指令値Cをコンデンサ9の電圧の上限指令値とする。
【0053】
ここで、直流中間電圧上限指令値はA>B>Cの関係に設定されており、直流中間電圧上限指令値は関係にC>B>Aの関係に設定されている。したがって、充放電電力演算手段305の出力が零以外のとき、直流中間電圧制御手段7cの直流中間電圧下限指令値Bと上限指令値Bとからなる電圧範囲が、直流中間電圧制御手段7dの直流中間電圧下限指令値Aと上限指令値Aとからなる電圧範囲の内側にある。この場合、直流中間電圧制御手段7cから出力される直流電流指令値Irが有効となり、直流電力変換器5の動作によってコンデンサ9の電圧が所定値に維持される。そして、電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値は常に直流中間電圧下限指令値Aと上限指令値Aとからなる電圧範囲の内側にあるため、直流中間電圧制御手段7dの出力は零となる。したがって、交流電力変換器6は、充放電電力制御手段8の出力である有効電流指令値Ipにしたがって、充放電動作を行う。
【0054】
一方、充放電電力演算手段305の出力が零のとき、充放電電力制御手段8の出力は零となる。また、直流中間電圧制御手段7dの直流中間電圧下限指令値Cおよび上限指令値Cが、直流中間電圧制御手段7cの直流中間電圧下限指令値Bおよび上限指令値Bよりも内側の値となる。この場合、交流電力変換器6が、直流中間電圧制御手段7dの出力である有効電流指令値Ipにしたがって、コンデンサ9の電圧を所定値に維持するように動作する。そして、電圧検出器901で検出されたコンデンサ9の電圧値は常に直流中間電圧下限指令値Bと上限指令値Bとからなる電圧範囲の内側にあるため、直流中間電圧制御手段7cから出力される直流電流指令値Irは零となり、直流電力変換器5は動作を停止する。
【0055】
直流中間電圧制御手段7dをこのように構成しても、交流電力変換器6は、直流電力変換器5が動作しないときに、コンデンサ9の電圧を所定値に維持するように動作する。この動作により、コンバータ回路601の半導体スイッチング素子のオン・オフ動作により損失が発生するものの、コンデンサ9の電圧が蓄電池4の電圧よりも高い所定の電圧に維持される。その結果、蓄電池4からコンデンサ9側への放電を防止することができる。また、コンデンサ9の電圧が所定値に維持されていることにより、負荷2の消費電力が急変した場合でも、直流電力変換器5および交流電力変換器6が素早く応答することができる。
【0056】
なお、電力系統と電力平準化装置との間で電力の充放電を行う必要がないとき、チョッパ回路501の半導体スイッチング素子で発生する導通損失とスイッチング損失とを零にすることができる。したがって、蓄電池4に蓄えられたエネルギーが無駄に消費されることがない。
【0057】
図4は、本発明に係る電力平準化装置の第3の実施形態を説明するための図である。図3に示した実施形態と異なるところは、充放電電力演算手段305の出力が直流電流制御手段505に入力されているところである。
【0058】
この実施形態の交流電力変換器6は、図3に示した実施形態と同様、直流電力変換器5が動作しないときに、コンデンサ9の電圧を所定値に維持するように動作する。この動作により、コンバータ回路601の半導体スイッチング素子のオン・オフ動作により損失が発生するものの、コンデンサ9の電圧が蓄電池4の電圧よりも高い所定の電圧に維持される。その結果、蓄電池4からの放電を防止することができる。また、コンデンサ9の電圧が所定値に維持されていることにより、負荷2の消費電力が急変した場合でも、直流電力変換器5および交流電力変換器6が素早く応答することができる。
【0059】
さらに、充放電電力演算手段305の出力を直流電流制御手段505に入力することにより、充放電電力演算手段305の出力が零のとき、直流電流制御手段505は、直接、チョッパ回路501の半導体スイッチング素子のオン・オフ動作を停止させることができる。このようにすれば、直流中間電圧制御手段7cの出力である直流電流指令Irが零のとき、電流検出器504の出力にオフセット等の誤差が生じても、チョッパ回路501の半導体スイッチング素子のオン・オフ動作を確実に停止させることができる。その結果、チョッパ回路501の半導体スイッチング素子で発生する導通損失とスイッチング損失とを確実に零にすることができる。したがって、蓄電池4に蓄えられたエネルギーが無駄に消費されることがない。
【符号の説明】
【0060】
1・・・発電設備、2・・・負荷、3,3a,3b,3c・・・充放電電力演算部、4・・・蓄電池、5・・・直流電力変換器(第1の電力変換器)、6・・・交流電力変換器(第2の電力変換器)、7,7a〜7f・・・直流中間電圧制御手段、8・・・充放電電力制御手段、9・・・直流中間コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備と該発電設備から電力の供給を受ける負荷とからなる電力系統に接続された電力平準化装置において、
前記電力平準化装置は、蓄電池と、前記蓄電池に接続された第1の電力変換器と、前記電力系統に接続された第2の電力変換器と、前記第1の電力変換器と前記第2の電力変換器との間に接続されたコンデンサとを備え、
前記第1の電力変換器は、前記蓄電池と前記コンデンサとの間で電力の授受を行うことによって前記コンデンサの電圧を第1の所定値に維持するための第1の定電圧制御動作を行い、
前記第2の電力変換器は、前記負荷で消費される電力が所定の電力下限値より小さくなったとき前記電力下限値と前記負荷の消費電力との差に相当する電力を前記電力系統から前記コンデンサに充電するための充電動作と、前記負荷で消費される電力が所定の電力上限値より大きくなったときその超過電力に相当する電力を前記コンデンサから前記電力系統に放電するための放電動作とを行う
ことを特徴とする電力平準化装置。
【請求項2】
前記第1の電力変換器は、前記第2の電力変換器が前記充電動作または前記放電動作を行うときのみ、前記第1の定電圧制御動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力平準化装置。
【請求項3】
前記第1の電力変換器は内蔵する半導体スイッチング素子をオン・オフ動作させることによって前記第1の定電圧制御動作を行うものであり、前記第2の電力変換器が前記充電動作および前記放電動作のいずれの動作も行わないとき、前記第1の電力変換器の半導体スイッチング素子はオフ状態に維持されていることを特徴とする請求項2に記載の電力平準化装置。
【請求項4】
前記第2の電力変換器が前記充電動作および前記放電動作を行わないとき、前記第2の電力変換器は前記電力系統と前記コンデンサとの間で電力を授受することによって前記コンデンサの電圧を第2の所定値に維持する第2の定電圧制御動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の電力平準化装置。
【請求項5】
前記第1の電力変換器が前記第1の定電圧制御動作により前記コンデンサの電圧を維持するための電圧は、
前記第2の電力変換器が前記充電動作を行うときは第3の所定値であり、
前記第2の電力変換器が前記放電動作を行うときは第4の所定値であって、
前記第2の電力変換器が前記第2の定電圧制御動作により前記コンデンサの電圧を維持するための電圧は、
前記第1の電力変換器が前記第1の定電圧制御動作を行うとき、前記第3の所定値よりも大きい第5の所定値と前記第4の所定値よりも小さい第6の所定値であり、
前記第2の電力変換器が前記第2の定電圧制御動作を行うとき、前記第3の所定値よりも小さい第7の所定値と前記第4の所定値よりも大きい第8の所定値である
ことを特徴とする請求項4に記載の電力平準化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate